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JP4942500B2 - 固体潤滑無給油チェーン - Google Patents

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Description

本発明は、伝動用ローラチェーン、搬送コンベヤチェーンなどに用いる固体潤滑無給油チェーンに係るものであって、特に、前後一対のブシュの両端部を左右一対の内プレートのブシュ圧入孔に圧入嵌合してなる内リンクと前記ブシュ内にそれぞれ貫通する前後一対の連結ピンの両端部を左右一対の外プレートのピン圧入孔に圧入嵌合してなる外リンクとがチェーン長手方向に交互に連結され、ブシュの内周面と連結ピンの外周面との間にグラファイト製潤滑スリーブが嵌合されている固体潤滑無給油チェーンに関する。
従来、2個の外リンクプレートの両端部をピンにて連結した外リンクと、2個の内リンクプレートをブシュにて連結した内リンクとを前記ピンをブシュに遊嵌することにより交互に連結し、かつピンとブシュとの間に注入されたグリース等の潤滑剤を封止するシール手段を備えてなるシールチェーンが知られている。
そして、このようなシールチェーンのシール手段は、ブシュの軸方向端面に接触するように配置されるリング部材と、このリング部材とそれに対向する外リンクプレートとの間に圧接される弾性シールリングとを備えている(例えば特許文献1参照。)。
特開2004−256262号公報(第4欄、図3)
前述したような従来のシールチェーンは、高温雰囲気、特に450℃〜600℃のような高温雰囲気で使用した場合には、グリース等の潤滑剤が熱により劣化するために、安定した潤滑性能を発揮できないという問題があり、また、塵埃雰囲気で使用した場合には、グリース等の潤滑剤が塵埃を吸収するために、安定した潤滑性能を発揮できないという問題があった。
また、ブシュと外リンクプレートとの間を密封してピンとブシュとの間に注入されたグリース等の潤滑剤のシール効果を持続させるために、リング部材と弾性シールリングとがブシュと外リンクプレートとの間に押圧状態で配置され、このような押圧状態の押圧力によって、外リンクプレートと内リンクプレートとの間の相対的な屈曲抵抗、すなわち、チェーン自体の屈曲抵抗が大きくなるという問題があった。
そして、リング部材と弾性シールリングが外リンクプレート等に対して摺接摩耗することによって生じるシール効果の低化を防止するために、リング部材及び弾性シールリングと接触する外リンクプレートの内側面とブシュの端面の表面粗さを小さくする表面仕上げ加工を施す必要があり、その表面仕上げ加工の加工負担が増加するという問題があった。
そこで、本発明は、従来の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、チェーン稼動時の高温雰囲気や塵埃雰囲気で優れた潤滑性能を発揮するとともにグラファイト製潤滑スリーブから発生する摩耗粉の外部飛散と外部塵埃の侵入を抑制してチェーン摩耗伸びを長期に亘って防止し、しかも、外プレートの強度低下を抑制して表面仕上げ加工を施すことなくチェーン製造負担を軽減してチェーン切り継ぎ等の分解組み付け作業負担が簡便な固体潤滑無給油チェーンを提供することである。
請求項1に係る本発明は、前後一対のブシュの両端部を左右一対の内プレートのブシュ圧入孔に圧入嵌合してなる内リンクと前記ブシュ内にそれぞれ貫通する前後一対の連結ピンの両端部を左右一対の外プレートのピン圧入孔に圧入嵌合してなる外リンクとがチェーン長手方向に交互に連結され、前記内プレートの外側面と外プレートの内側面との間にラビリンス構造が形成され、前記ブシュの内周面と連結ピンの外周面との間にグラファイト製潤滑スリーブが嵌合されている固体潤滑無給油チェーンであって、前記ラビリンス構造が、前記内プレートの外側面から一部突出したブシュ突出端部を前記外プレートの内側面から外側面に向けてオフセット状態でピン圧入孔と同軸で拡径して膨出形成した環状のブシュ軸支凹部でそれぞれ支持することで形成されていることにより、前述した課題を解決したものである。
請求項2に係る本発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記グラファイト製潤滑スリーブが、前記ブシュの内周面に加圧固定されていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
請求項3に係る本発明は、請求項1または請求項2に記載の構成に加えて、前記グラファイト製潤滑スリーブの加圧固定面に形成された多数の係合凸部が、前記ブシュの内周面に形成された係合凹部に係合されていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
請求項4に係る本発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の構成に加えて、前記グラファイト製潤滑スリーブが、1.0g/cm以上の密度を有していることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
なお、本発明の固体潤滑無給油チェーンで意味するところの「オフセット状態」とは、ブシュ軸支凹部とそれ以外のプレート部分とがずれて段差状を呈している状態のことである。
そこで、請求項1に係る本発明の固体潤滑無給油チェーンは、前後一対のブシュの両端部を左右一対の内プレートのブシュ圧入孔に圧入嵌合してなる内リンクとブシュ内にそれぞれ貫通する前後一対の連結ピンの両端部を左右一対の外プレートのピン圧入孔に圧入嵌合してなる外リンクとがチェーン長手方向に交互に連結され、内プレートの外側面と外プレートの内側面との間にラビリンス構造が形成され、ブシュの内周面と連結ピンの外周面との間にグラファイト製潤滑スリーブが嵌合されていることにより、グラファイト製潤滑スリーブが高温雰囲気で優れた耐熱性能を発揮するとともに塵埃雰囲気で塵埃の吸い込みを阻止して、優れた潤滑性能を発揮するため、外部からの無給油状態で長期にわたって円滑にチェーン駆動するばかりではなく、以下のような特有の効果を奏することができる。
特に、ラビリンス構造が、内プレートの外側面から一部突出したブシュ突出端部を外プレートの内側面から外側面に向けてオフセット状態でピン圧入孔と同軸で拡径して膨出形成した環状のブシュ軸支凹部でそれぞれ支持することで形成されていることにより、ブシュの内周面及び連結ピンの外周面との摺動接触に起因してグラファイト製潤滑スリーブが摩耗損傷しても、このようなブシュ突出端部とブシュ軸支凹部との間に形成されたラビリンス構造が、チェーン稼動時の周回走行によって生じる遠心力等でグラファイト製潤滑スリーブから発生する摩耗粉の外部飛散を抑制するとともに外部塵埃の侵入を抑制して、チェーンの摩耗伸びを長期にわたって防止することができる。
また、内プレートと外プレートとの間には、従来のシールチェーンのようなブシュと外リンクプレートとの間に押圧状態で配置したシール部材を別部品として設けていないので、チェーン稼動時に円滑に屈曲して周回走行するとともに、チェーンの部品点数が少なくチェーン切り継ぎ等の分解組み付け作業が容易である。
また、従来のシールチェーンでは、シール部材の摺接摩耗を防止して潤滑剤の密封性を維持するために内リンクプレートの外側面と外リンクプレートの内側面に表面粗さを小さくする表面仕上げ加工を施す必要があったが、本発明の固体潤滑無給油チェーンでは、従来のような表面仕上げ加工を施す必要がなく、チェーンの製造負担を軽減することができる。
そして、ブシュ軸支凹部が外プレートの内側面から外側面に向けてオフセット状態で膨出形成されているため、ブシュ軸支凹部の断面係数とそれ以外のプレート部分の断面係数とが同程度となり、ブシュ軸支凹部を形成することによる外プレートの強度低下を抑制することができる。
請求項2に係る本発明の固体潤滑無給油チェーンによれば、請求項1に記載の固体潤滑無給油チェーンが奏する効果に加えて、グラファイト製潤滑スリーブが、ブシュの内周面に加圧固定されていることにより、グラファイト製潤滑スリーブの密度が大きくなって潤滑性能が向上するので、チェーンの摩耗伸びをより一層抑制でき、また、グラファイト製潤滑スリーブがブシュと一体化されて、通常のブシュと同様に取り扱うことができるので、チェーン切り継ぎなどの分解組み付け作業を簡便に達成することができる。
請求項3に係る本発明の固体潤滑無給油チェーンによれば、請求項1または請求項2に記載の固体潤滑無給油チェーンが奏する効果に加えて、グラファイト製潤滑スリーブの加圧固定面に形成された多数の係合凸部が、ブシュの内周面に形成された係合凹部に係合されていることにより、グラファイト製潤滑スリーブがブシュまたは連結ピンと一体化されて、チェーンの分解組み付け作業を行う際に、グラファイト製潤滑スリーブがブシュから外れることを防止できるので、チェーン切り継ぎなどの分解組み付け作業をより簡便に達成することができる。
請求項4に係る本発明の固体潤滑無給油チェーンによれば、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の固体潤滑無給油チェーンが奏する効果に加えて、グラファイト製潤滑スリーブが1.0g/cm以上の密度を有していることにより、潤滑性能が著しく向上するので、チェーンの摩耗伸びをより一層抑制することができる。
本発明は、前後一対のブシュの両端部を左右一対の内プレートのブシュ圧入孔に圧入嵌合してなる内リンクと前記ブシュ内にそれぞれ貫通する前後一対の連結ピンの両端部を左右一対の外プレートのピン圧入孔に圧入嵌合してなる外リンクとがチェーン長手方向に交互に連結され、内プレートの外側面と外プレートの内側面との間にラビリンス構造が形成され、ブシュの内周面と連結ピンの外周面との間にグラファイト製潤滑スリーブが嵌合されている固体潤滑無給油チェーンであって、ラビリンス構造が、内プレートの外側面から一部突出したブシュ突出端部を外プレートの内側面から外側面に向けてオフセット状態でピン圧入孔と同軸で拡径して膨出形成した環状のブシュ軸支凹部でそれぞれ支持することで形成され、チェーン稼動時の高温雰囲気や塵埃雰囲気で優れた潤滑性能を発揮するとともにグラファイト製潤滑スリーブから発生する摩耗粉の外部飛散と外部塵埃の侵入を抑制してチェーン摩耗伸びを長期に亘って防止し、しかも、外プレートの強度低下を抑制して表面仕上げ加工を施すことなくチェーン製造負担を軽減してチェーン切り継ぎ等の分解組み付け作業負担が簡便なものであれば、その具体的な実施の形態は、如何なるものであっても何ら構わない。
すなわち、本発明の固体潤滑無給油チェーンは、ローラチェーン、ブシュチェーンのいずれのものがその対象であっても差し支えない。
また、本発明の固体潤滑無給油チェーンに組み込まれるグラファイト製潤滑スリーブの具体的形態については、優れた潤滑性能を備えたものであれば、天然黒鉛100%で形成されたもの、人造黒鉛100%で形成されたもの、これらの混合黒鉛100%で形成されたものなどのいずれであっても差し支えない。
また、外プレートの内側面と内プレートの外側面とが相互に近接対向するラビリンス構造形成粗面、いわゆる、ラビリンス構造を形成し得る粗面を備えている場合には、外プレートの内側面と内プレートの外側面との間にはラビリンス構造が形成されているので、連結ピンとブシュとの間に配置された潤滑剤のシール効果をより一層向上させることができ、潤滑剤の外部飛散を防止できるとともに外部から塵埃が侵入することを防止できるので、より好ましい。
また、本発明の固体潤滑無給油チェーンに組み込まれるブシュの係合凹部の具体的態様については、ディンプル状に形成された複数の凹部、軸方向に延びる複数の溝などのいずれであっても差し支えない。
以下、本発明の理解を助けるための参考例である固体潤滑無給油チェーン100を図面に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明の理解を助けるための参考例である固体潤滑無給油チェーンの一部を切り欠いた全体概要図であり、図2は、図1に示す固体潤滑無給油チェーンの連結状態を示す斜視図であり、図3は、図1に示す固体潤滑無給油チェーンを一部拡大視した断面図であり、図4は、図1に示す固体潤滑無給油チェーンに組み込まれるグラファイト製潤滑スリーブの作製説明図であり、図5は、グラファイト製潤滑スリーブの密度と摩耗量との関係を示す図であり、図6は、参考例の変形例で用いたグラファイト製潤滑スリーブの製作説明図である。
まず、本発明の理解を助けるための参考例である固体潤滑無給油チェーン100は、図1乃至図3に示すように、左右一対で離間して配置された内プレート110、110のブシュ圧入孔111、111にローラ120、120が遊嵌された前後一対のブシュ130、130の両端部を嵌入固定した内リンク140と、左右一対で離間して配置された外プレート150、150のピン圧入孔151、151に前後一対の連結ピン160、160の両端部を嵌入固定した外リンク170とを備え、内リンク140と外リンク170とが、ブシュ130に連結ピン160が遊嵌されることにより連結されている。
そこで、本参考例の固体潤滑無給油チェーン100が最も特徴とするグラファイト製潤滑スリーブ180及び外プレート150の具体的な形態について、図1乃至図4により詳しく説明する。
まず、グラファイト製潤滑スリーブ180は、図4に示すように、低密度の天然黒鉛100%のグラファイト製シート180aを圧縮して高密度のグラファイト製シート180bとした後、円筒状に形成したものであり、圧縮後のグラファイト製潤滑スリーブ180の密度は1.0g/cm以上になっている。
そして、グラファイト製潤滑スリーブ180は、ブシュ130の内周面131に加圧固定されている。
また、図1乃至図3に示すように、外プレート150の内側面152には、2つのピン圧入孔151、151と同軸の拡径状態で座ぐり加工してなる2つのブシュ軸支凹部152a、152aが設けられている。
そして、ブシュ130のブシュ突出端部132は、内プレート110の外側面112から突出して、ブシュ軸支凹部152aにそれぞれ支持されている。
このようにして得られた本発明の参考例である固体潤滑無給油チェーン100は、ブシュ130の内周面131と連結ピン160の外周面161との間にグラファイト製潤滑スリーブ180が嵌合されている。
したがって、固体潤滑無給油チェーン100は、高温雰囲気においてもグラファイト製潤滑スリーブ180が優れた耐熱性能を発揮して、また、塵埃雰囲気においてもグラファイト製潤滑スリーブ180が塵埃を吸収することはなく、優れた潤滑性能を発揮するので、外部からの無給油状態で長期にわたってチェーン駆動を達成している。
ここで、グラファイト製潤滑スリーブ180の密度とチェーンの摩耗伸びとの関係は、図5に示すように、グラファイト製潤滑スリーブ180の密度が0.7g/cm付近から摩耗量は急激に低下し、1.0g/cmからその勾配は緩くなる。
このように、グラファイト製潤滑スリーブ180が1.0g/cm以上の密度を有している場合には、潤滑性能が著しく向上して、チェーンの摩耗伸びをより一層抑制できる。
なお、図5は、グラファイト製潤滑スリーブ180の密度(g/cm)を横軸とし、摩耗勾配を縦軸としたものであり、摩耗勾配は、単位摺動回数当たりの摩耗伸び(mm/n、nは摺動回数を表す)で表している。
また、本発明の参考例では、上述したように、内周面131に何らの加工を施していないブシュ130を用いたが、図6に示すような、内周面131に多数のディンプル状の係合凹部131aが形成されたブシュ130を用いた変形例もある。
つぎに、本発明の実施例である固体潤滑無給油チェーン200について、図7及び図8に基づいて説明する。
また、本発明の実施例である固体潤滑無給油チェーン200における外プレート250以外の構成は、前述した本発明の参考例である固体潤滑無給油チェーン100と全く同じであるため、図1と図4乃至図6に示す100番台の符号を200番台の符号に読み替えることとする。
まず、本発明の実施例である固体潤滑無給油チェーン200は、図7及び図8に示すように、左右一対で離間して配置された内プレート210、210のブシュ圧入孔211、211にローラ220、220が遊嵌された前後一対のブシュ230、230の両端部を嵌入固定した内リンク240と、左右一対で離間して配置された外プレート250、250のピン圧入孔251、251に前後一対の連結ピン260、260の両端部を嵌入固定した外リンク270とを備え、内リンク240と外リンク270とが、ブシュ230に連結ピン260が遊嵌されることにより連結されている。
そこで、本実施例の固体潤滑無給油チェーン200が最も特徴とするグラファイト製潤滑スリーブ280及び外プレート250の具体的な形態について、図7及び図8により、詳しく説明する。
まず、グラファイト製潤滑スリーブ280は、低密度の天然黒鉛100%のグラファイト製シート280aを圧縮して高密度のグラファイト製シート280bとした後、円筒状に形成したものであり、圧縮後のグラファイト製潤滑スリーブ280の密度は1.0g/cm以上になっている。
そして、グラファイト製潤滑スリーブ280は、ブシュ230の内周面231に加圧固定されている。
また、図7及び図8に示すように、外プレート250の内側面252には、外プレート250の内側面252から外側面253に向けてオフセット状態で膨出させるプレス加工により、2つのピン圧入孔251、251と同軸の拡径状態で2つのブシュ軸支凹部252a、252aが形成されている。
なお、本発明の固体潤滑無給油チェーン200で意味するところの「オフセット状態」とは、ブシュ軸支凹部252aとそれ以外のプレート部分とがずれて段差状を呈している状態のことである。
そして、ブシュ230のブシュ突出端部232は、内プレート210の外側面212から突出して、ブシュ軸支凹部252aにそれぞれ支持されている。
このようにして得られた本実施例の固体潤滑無給油チェーン200は、ブシュ230の内周面231と連結ピン260の外周面261との間にグラファイト製潤滑スリーブ280が嵌合されている。
したがって、固体潤滑無給油チェーン200は、高温雰囲気においてもグラファイト製潤滑スリーブ280が優れた耐熱性能を発揮し、また、塵埃雰囲気においてもグラファイト製潤滑スリーブ280が塵埃を吸収することはなく、優れた潤滑性能を発揮するので、外部からの無給油状態で長期にわたってチェーン駆動することができる。
また、内プレート210の外側面212から一部突出したブシュ230のブシュ突出端部232が、外プレート250の内側面252から外側面253に向けてオフセット状態で膨出形成した環状のブシュ軸支凹部252aにそれぞれ支持されている。
したがって、ブシュ230の内周面231及び連結ピン260の外周面261との摺動接触に起因してグラファイト製潤滑スリーブ280が摩耗した際においても、このようなブシュ突出端部232とブシュ軸支凹部252aとの間に形成されたラビリンス構造Lが、チェーン稼動時の周回走行によって生じる遠心力等に起因したグラファイト製潤滑スリーブ280の摩耗粉の外部飛散を抑制するとともに外部塵埃の侵入を抑制して、チェーンの摩耗伸びを長期にわたって防止できる。
また、固体潤滑無給油チェーン200は、内プレート210と外プレート250との間にシール部材を別部品として何ら設けていない。
したがって、ブシュと外リンクプレートとの間にシール部材が押圧状態で配置された従来のシールチェーンと比べて、円滑に屈曲摺動するとともに、チェーンの部品点数が少なく、チェーン切り継ぎ等の分解組み付け作業が容易である。
そして、シール部材の摩耗を防止して潤滑剤の密封性を維持するために内リンクプレートの外側面と外リンクプレートの内側面の表面粗さを小さくする表面仕上げ加工を施す必要がある従来のシールチェーンとは異なり、このような表面仕上げ加工を施す必要がなく、チェーンの製造負担を軽減することができる。
そして、ブシュ軸支凹部252aが外プレート250の内側面252から外側面253に向けてオフセット状態で膨出形成されているため、ブシュ軸支凹部252aの断面係数とそれ以外のプレート部分の断面係数とが同程度となり、ブシュ軸支凹部252aを形成することによる外プレート250の強度低下を抑制できる。
また、固体潤滑無給油チェーン200は、グラファイト製潤滑スリーブ280がブシュ230の内周面231に加圧固定されている。
したがって、グラファイト製潤滑スリーブ280の密度が大きくなって潤滑性能が向上するので、チェーンの摩耗伸びをより一層抑制でき、また、グラファイト製潤滑スリーブ280がブシュ230と一体化されて、通常のブシュと同様に取り扱うことができるので、チェーン切り継ぎなどの分解組み付け作業を簡便に達成できる。
そして、グラファイト製潤滑スリーブ280が、1.0g/cm以上の密度を有している。
したがって、潤滑性能が著しく向上するので、チェーンの摩耗伸びをより一層抑制できる。
すなわち、グラファイト製潤滑スリーブ280の密度とチェーンの摩耗伸びとの関係は、グラファイト製潤滑スリーブ280の密度が0.7g/cm付近から摩耗量は急激に低下し、1.0g/cmからその勾配は緩くなる。
このように、グラファイト製潤滑スリーブ280が1.0g/cm以上の密度を有している場合には、潤滑性能が著しく向上して、チェーンの摩耗伸びをより一層抑制できる。
なお、本実施例では、上述したように、内周面231に何らの加工を施していないブシュ230を用いたが、内周面231に多数のディンプル状の係合凹部231aが形成されたブシュ230を用いた変形例もある。
この場合、プレス機Pを用いてグラファイト製潤滑スリーブ280をブシュ230の内周面231に加圧固定する際に、グラファイト製潤滑スリーブ280の加圧固定面281の一部がブシュ230の係合凹部231aに対応するように膨出し、このようにして形成されたグラファイト製潤滑スリーブ280の係合凸部281aとブシュ230の係合凹部231aとが互いに係合する。
したがって、グラファイト製潤滑スリーブ280がブシュ230と一体化されて、チェーンの分解組み付け作業を行う際に、グラファイト製潤滑スリーブ280がブシュ230から外れることを防止でき、チェーン切り継ぎなどの分解組み付け作業をより簡便に達成できる。
本発明の理解を助けるための参考例である固体潤滑無給油チェーンの一部を切り欠いた全体概要図。 図1に示す固体潤滑無給油チェーンの連結状態を示す斜視図。 図1に示す固体潤滑無給油チェーンを一部拡大視した断面図。 図1に示す固体潤滑無給油チェーンに組み込まれるグラファイト製潤滑スリーブの作製説明図。 グラファイト製潤滑スリーブの密度と摩耗量との関係を示した図。 参考例で用いた他のグラファイト製潤滑スリーブの製作説明図。 本発明の実施例である固体潤滑無給油チェーンの連結状態を示す斜視図。 図7に示す固体潤滑無給油チェーンを一部拡大視した断面図。
100 、200 ・・・ 固体潤滑無給油チェーン
110 、210 ・・・ 内プレート
111 、211 ・・・ 内プレートのブシュ圧入孔
112 、212 ・・・ 内プレートの外側面
120 、220 ・・・ ローラ
130 、230 ・・・ ブシュ
131 、231 ・・・ ブシュの内周面
131a、231a ・・・ 係合凹部
132 、232 ・・・ ブシュ突出端部
140 、240 ・・・ 内リンク
150 、250 ・・・ 外プレート
151 、251 ・・・ 外プレートのピン圧入孔
152 、252 ・・・ 外プレートの内側面
152a、252a ・・・ ブシュ軸支凹部
253 ・・・ 外プレートの外側面
160 、260 ・・・ 連結ピン
161 、261 ・・・ 外周面
170 、270 ・・・ 外リンク
180 、280 ・・・ グラファイト製潤滑スリーブ
180a、280a ・・・ 低密度のグラファイト製シート
180b、280b ・・・ 高密度のグラファイト製シート
181 、281 ・・・ 加圧固定面
181a、281a ・・・ 係合凸部
、L ・・・ ラビリンス構造
P ・・・ プレス機

Claims (4)

  1. 前後一対のブシュの両端部を左右一対の内プレートのブシュ圧入孔に圧入嵌合してなる内リンクと前記ブシュ内にそれぞれ貫通する前後一対の連結ピンの両端部を左右一対の外プレートのピン圧入孔に圧入嵌合してなる外リンクとがチェーン長手方向に交互に連結され、前記内プレートの外側面と外プレートの内側面との間にラビリンス構造が形成され、前記ブシュの内周面と連結ピンの外周面との間にグラファイト製潤滑スリーブが嵌合されている固体潤滑無給油チェーンであって、
    前記ラビリンス構造が、前記内プレートの外側面から一部突出したブシュ突出端部を前記外プレートの内側面から外側面に向けてオフセット状態でピン圧入孔と同軸で拡径して膨出形成した環状のブシュ軸支凹部でそれぞれ支持することで形成されていることを特徴とする固体潤滑無給油チェーン。
  2. 前記グラファイト製潤滑スリーブが、前記ブシュの内周面に加圧固定されていることを特徴とする請求項1に記載の固体潤滑無給油チェーン。
  3. 前記グラファイト製潤滑スリーブの加圧固定面に形成された多数の係合凸部が、前記ブシュの内周面に形成された係合凹部に係合されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の固体潤滑無給油チェーン。
  4. 前記グラファイト製潤滑スリーブが、1.0g/cm以上の密度を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の固体潤滑無給油チェーン。
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