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JP4836597B2 - 消臭抗菌繊維製品 - Google Patents

消臭抗菌繊維製品 Download PDF

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Description

本発明は、消臭抗菌繊維製品に関する。また本発明は該消臭抗菌繊維製品を備えた吸収性物品に関する。
活性炭の吸着性能を利用した種々のシート状物が従来から知られている。例えば、特許文献1には活性炭微粒子を含有させた各種消臭用途に適用可能な活性炭含有パルプシートが記載されている。しかし、このシートには抗菌作用はない。また活性炭が脱落し易いという欠点がある。
消臭作用に加えて抗菌作用を有する物質として各種ゼオライトが知られている。ゼオライトをシートに担持させる方法の一つとして、使用する樹脂の中に練りこむ方法がある。しかしゼオライトの一部しか表面に露出しないので効率が悪い。一方シートの表面に付着させる場合、ゼオライトはパルプなどの繊維材料への付着性が良好でないことから、湿式抄造紙などの繊維材料からなるシートに多量に坦持させることが困難である。また多量に配合したとしても、効率の良い消臭抗菌効果を発現させられない。逆に言えば、少ない配合量であっても効果的に消臭抗菌効果を発現させられない。
特開平9−173429号公報
従って本発明の目的は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る消臭抗菌繊維製品並びに消臭及び抗菌作用を有する吸収性物品を提供することにある。
本発明は、抗菌性を有する金属を含むカンクリナイト様鉱物、粘土鉱物、針葉樹晒しクラフトパルプ及び広葉樹晒しクラフトパルプを含む消臭抗菌繊維製品を提供することにより前記目的を達成したものである。
また本発明は、表面シートと吸収体との間、該吸収体内、又は該吸収体と裏面シートとの間に、シート状の形態をした前記の消臭抗菌繊維製品を配した吸収性物品を提供するものである。
本発明の消臭抗菌繊維製品は、抗菌性を有する金属を含むカンクリナイト様鉱物及び粘土鉱物の相互作用に起因して、消臭能及び抗菌能が十分に高い。従って、本発明の消臭抗菌繊維製品を備えた吸収性物品は、排泄物に起因する悪臭の発生や雑菌の発生を効果的に防止することができる。また、前記カンクリナイト様鉱物及び粘度鉱物を、針葉樹晒しクラフトパルプ及び広葉樹晒しクラフトパルプと併用することで、本発明の消臭抗菌繊維製品の紙力強度が調整され、該製品を柔らかなものとすることができる。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の消臭抗菌繊維製品は、消臭抗菌剤が繊維材料に付着しているものである。消臭抗菌剤は、抗菌性を有する金属を含むカンクリナイト様鉱物(以下、これを金属置換カンクリナイト様鉱物という)及び粘土鉱物を含むものである。金属置換カンクリナイト様鉱物は、カンクリナイト様鉱物中の金属元素が、抗菌性を有する金属元素で置換されたものである。繊維材料は、針葉樹晒しクラフトパルプ(以下、NBKPともいう)及び広葉樹晒しクラフトパルプ(以下、LBKPともいう)を含んでいる。
カンクリナイト様鉱物は、アルミノシリケート系化合物に類似の構造を有するものである。本発明においてカンクリナイト様鉱物とは、JCPDS(ジョイント・コミッティ・オン・パウダー・ディフラクション・スタンダーズ)No.20−379、20−743、25−776、25−1499、25−1500、30−1170、31−1272、34−176、35−479、35−653、38−513、38−514、38−515及び45−1373からなる群より選ばれる1種以上のX線回折パターンを有するものをいう。X線回折パターンにおいて、d=0.365±0.015nmに主たるピークを有するものが好ましい。
金属置換カンクリナイト様鉱物は、広い消臭スペクトルをもち、種々の悪臭、例えばアンモニア、アミン、ピリジン等のアルカリ性臭、低級脂肪酸、メルカプタン等の酸性臭、その他エステル、ケトン、アルデヒド等の中性臭からなる悪臭に対して良好な消臭作用を有することが本発明者らの検討によって判明した。また、高い抗菌作用を示すことも判明した。つまり、金属置換カンクリナイト様鉱物は、その使用量が少なくても高い消臭抗菌作用を示すことが判明した。その上、金属置換カンクリナイト様鉱物の粒子は、テトラポッド状、金平糖状ないしウニ状の形状を有し、その形状に起因してパルプなどの繊維材料への付着性が極めて良いことも判明した。
しかし、金属置換カンクリナイト様鉱物を繊維材料に付着させる場合、特に湿式法において金属置換カンクリナイト様鉱物を内添させて繊維材料に付着させる場合には、金属置換カンクリナイト様鉱物が本来有する消臭抗菌作用が低下してしまうことが、本発明者らの検討によって判明した。この理由は明らかでないが、金属置換カンクリナイト様鉱物を繊維材料に付着させる場合に添加される各種添加剤(例えば湿潤紙力剤等)の影響によるものと考えられる。金属置換カンクリナイト様鉱物の消臭抗菌作用の低下防止を図るため、本発明者らが種々検討したところ、金属置換カンクリナイト様鉱物を粘土鉱物と併用することにより、金属置換カンクリナイト様鉱物を繊維材料に付着させても、その消臭抗菌作用の低下を防止し得ることが判明し、本発明を完成するに至ったものである。
その結果、本発明の消臭抗菌繊維製品は、多量の金属置換カンクリナイト様鉱物を付着させることができ、該繊維製品は極めて高い消臭能及び抗菌能を発揮する。もちろん付着量が少量であっても該繊維製品は十分に高い消臭能及び抗菌能を発揮する。
本発明の消臭抗菌繊維製品における粘土鉱物の量は、該粘土鉱物の種類にもよるが、繊維材料に対して1〜30重量%、特に1〜10重量%であることが、金属置換カンクリナイト様鉱物の消臭抗菌作用の低下防止の点から好ましい。粘土鉱物としては、例えばカンクリナイト様鉱物以外のケイ酸塩であるゼオライト、セピオライト、ベントナイト等を用いることができる。特に金属置換カンクリナイト様鉱物の消臭抗菌作用の低下防止効果が高い点から、ゼオライトを用いることが好ましい。ゼオライトには種々のものが知られているが、特にZSM−5型のものを用いることが好ましい。
粘土鉱物の使用量は、金属置換カンクリナイト様鉱物の付着量とも関係している。具体的には、粘土鉱物の量は、金属置換カンクリナイト様鉱物の量に対して100〜800重量%、特に200〜600重量%であることが、金属置換カンクリナイト様鉱物の消臭抗菌作用の低下防止の点から好ましい。
一方、本発明の消臭抗菌繊維製品における金属置換カンクリナイト様鉱物の繊維材料への付着量は、該繊維製品の具体的な用途に応じ広い範囲で調整することができる。例えば、繊維材料に対して0.01〜20重量%、特に0.2〜10重量%とすることができる。
本発明の消臭抗菌繊維製品における繊維材料は、NBKP及びLBKPを含んでいる。両者の組み合わせを用いることで、該繊維製品に適度な紙力強度を付与して、柔らかさを付与することができる。LBKPを用いずにNBKPだけを用いた場合には、消臭抗菌繊維製品が固くなる傾向にあり、例えば該繊維製品を加工機に組み込んで製品を製造する場合にトラブルが発生するおそれがある。逆にNBKPを用いずにLBKPだけを用いた場合には、消臭抗菌繊維製品の強度が低下する傾向にあり、やはり加工機で紙切れ等のトラブルが発生するおそれがある。これらの観点から、NBKP/LBKPの重量比は、95/5〜50/50とすることが好ましく、95/5〜60/40とすることが更に好ましい。
本発明の消臭抗菌繊維製品を湿式抄造で製造する場合、該抄造を首尾良く行う観点から、NBKP及びLBKPのブレンドパルプの叩解状態をコントロールして、該ブレンドパルプのカナダ標準ろ水度(JIS P8121、以下、CSFともいう)を、400〜600ml、特に450〜600mlとすることが好ましい。
本発明の消臭抗菌繊維製品における繊維材料は、NBKP及びLBKPのみから構成されていてもよく、或いはこれらに加えてレーヨンが含まれていてもよい。熱可塑性樹脂からなる熱融着性繊維を少量併用することもできる。
更に本発明の消臭抗菌繊維製品には、湿潤紙力剤を添加することが好ましい。これによって該繊維製品に高い湿潤強度を付与することができる。該繊維製品の湿潤強度を高めることは、該繊維製品を例えば使い捨ておむつ等の吸収性物品の構成材料として用いる場合に、尿等によって該繊維製品が濡れても破断しづらくなるという観点から有利である。また湿潤強度が高くなることは乾燥状態での強度も高くなることを意味している。従って、本発明の消臭抗菌繊維製品を加工機に組み込んで製品を製造する場合にトラブルが一層発生しづらくなる。例えば本発明の消臭抗菌繊維製品が例えばシート状である場合、その乾燥状態でのMDの引張強度は好ましくは400cN/25mm以上の高い値となる。引張強度の測定方法は、後述する実施例において説明する。湿潤紙力剤としては例えばポリアミドアミン・エピクロルヒドリン樹脂等を用いることができる。湿潤紙力剤は、繊維材料に対して0.01〜5重量%、特に0.1〜2.0重量%配合されることが、十分な湿潤強度を得る観点から好ましい。
金属置換カンクリナイト様鉱物としては、以下の組成式(1)で表されるものを用いることが好ましい。
sM(1)xy・tM(2)2O・Al23・uSiO2・vRmn・wH2O (1)
式中、M(1)は抗菌性を有する金属を表し、M(2)はNa、K及びHからなる群より選ばれる1種以上の元素を表し、RはNa、K、Ca及びMgからなる群より選ばれる1種以上の元素を表し、QはCO3、SO4、NO3、OH及びClからなる群より選ばれる1種以上の原子団を表し、sは0<s≦3、tは0≦t≦3(但し、s+t=0.5〜3である)、uは0.5≦u≦6、vは0<v≦2、wはw≧0、xは1≦x≦2、yは1≦y≦3、mは1≦m≦2、nは1≦n≦3を満たす。
式(1)中、M(1)は、含硫黄系悪臭に対する消臭能の高さから好ましくはAg、Zn又はCuであることが好ましく、特にAgであることが好ましい。M(1)は一種類でもよく或いは二種類以上の組み合わせでもよい。M(1)が二種類以上の組み合わせである場合、sM(1)xyの項は、各元素に対応した項ごとに分けて記載される。たとえば、M(1)が、金属元素D及びD'からなる場合、sM(1)xyは、s1x1y1・s2x2y2(ただし、x1+x2=x、y1+y2=y、s1+s2=sである)と表される。その他の項についても同様である。
M(2)は、高い消臭能の発現及び経済性の観点から、好ましくはNa及び/又はHである。Rは、M(2)と同様の観点から、好ましくはNa、Ca及びMgからなる群より選ばれる1種以上の金属元素であり、更に好ましくはNaである。Qは、粒子の形態制御の容易性の観点から、好ましくはCO3及び/又はNO3である。
sは、高い消臭能の発現及び経済性の観点から、好ましくは0<s≦2、更に好ましくは0<s≦1である。tは、金属置換カンクリナイト様鉱物の水分散液(後述の1重量%水分散液)のpHを良好に保つ観点から、好ましくは0≦t≦2、更に好ましくは0≦t≦1である。s+tは、好ましくは0.5〜1.8、更に好ましくは0.6〜1.5である。uは、高い消臭能の発現の観点から、好ましくは0.5≦u≦5、更に好ましくは0.5≦u≦4である。vは、粒子形態制御の容易性の観点から、好ましくは0<v≦1.5、更に好ましくは0<v≦1である。wは金属置換カンクリナイト様鉱物に含まれる水の含有率(モル比)であり、金属置換カンクリナイト様鉱物の存在形態、たとえば、粉末状、スラリー状などの形態によって変化する。xとy、及びmとnは、それぞれ、M(1)とOとの組み合わせにより、及びRとQとの組み合わせに応じて任意に決まる。
金属置換カンクリナイト様鉱物はその比表面積が、1m2/g以上70m2/g未満であることが好ましく、1〜65m2/gであることが更に好ましく、30〜65m2/gであることが一層好ましい。比表面積がこの範囲内であれば、抗菌性を有する金属を適度に固定又は担持させることができ、含硫黄系悪臭に対して優れた消臭能が発揮されるようになる。金属置換カンクリナイト様鉱物の比表面積は、例えば、後述するように、原料アルミノシリケート粒子(原料として用いられるアルミノシリケート粒子)を適度に酸処理することで、所定の範囲に調整することができる。比表面積は、フローソーブ2300型(島津製作所製)を使用して測定する。試料は0.1gとし、吸着ガスにN2/He=30/70(容積比)の混合ガスを用いる。
金属置換カンクリナイト様鉱物は、含硫黄系悪臭の消臭能を高める観点から、その1重量%水分散液のpHが7以上であることが好ましく、8以上であることが更に好ましく、9以上であることが一層好ましい。金属置換カンクリナイト様鉱物の1重量%水分散液のpHは、後述する方法によって求められる。
金属置換カンクリナイト様鉱物においては、M(1)成分が、含硫黄系悪臭を吸着することによって消臭能が発現する。従って、優れた消臭力を発現させる観点から、金属置換カンクリナイト様鉱物の表面近傍にM(1)成分が多く存在することが好ましい。M(1)成分の表面濃度は、ESCAにより測定した表面のM(1)成分原子とSi原子のモル比〔M(1)/Si〕やM(1)成分原子とAl原子のモル比〔M(1)/Al〕によって表すことができる。M(1)/Siは、好ましくは0.021以上、更に好ましくは0.040以上である。また、M(1)/Alは、好ましくは0.025以上、更に好ましくは0.040以上である。ESCAによる測定は、試料をプレス機により薄片状に成形し、島津製作所製ESCA−1000を用いて行うことができる。試料表面の元素を測定〔M(1)成分原子、Si、Al〕し、得られた元素のピーク面積から表面原子濃度比(モル比)を求める。
金属置換カンクリナイト様鉱物はその平均粒子径が、0.1〜1000μm、特に0.4〜600μm、とりわけ1〜100μmmであることが、消臭速度が高くなる点及び粉末流動性が良好になる点から好ましい。平均粒子径は、例えばレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製LA−920)を用い、相対屈折率1.16にて測定する。
金属置換カンクリナイト様鉱物は非晶質であっても結晶質であってもよい。含硫黄系悪臭の消臭能向上の観点からは結晶質であることが好ましい。金属置換カンクリナイト様鉱物は、その製造条件に応じて針状結晶、板状結晶、柱状結晶等の集合体として得られる。また、それらの結晶が集合して球状、テトラボッド状、塊状の集合体等を形成していてもよく、それらの二次凝集体でもよい。
針状の形態とは、太さが500nm以下で、長さが太さに対してアスペクト比で2.0以上のものをいう。板状の形態とは、厚さが300nm以下で、板径が厚さに対してアスペクト比で2.0以上のものをいう。柱状の形態とは、太さが50nm以上で、長さが太さに対してアスペクト比で1.0以上2.0未満のものをいう。
金属置換カンクリナイト様鉱物は、例えば、無水物の組成が、aM2O・Al23・bSiO2・cRmn(式中、MはNa及び/又はKを表し、RはNa、K、Ca及びMgからなる群より選ばれる1種以上の元素を表し、QはCO3、SO4、NO3、OH及びClからなる群より選ばれる1種以上の原子団を表し、aは0.5≦a≦3、bは0.5≦b≦6、cは0<c≦2、mは1≦m≦2、nは1≦n≦3を満たす)である原料アルミノシリケートを、該原料アルミノシリケート100g当たり0〜300meq(0〜300meq/100g)の酸を用いて酸処理する工程、並びに抗菌性を有するイオンでイオン交換する工程に付して得られたものであることが好ましい。
前記式中、Mは好ましくはNaである。MがNa及びKからなる場合、aM2Oは、a'Na2O・a"K2O(但し、a'+a"=aである)で表される。その他の項についても同様である。Rは好ましくはNa、Ca及びMgからなる群より選ばれる1種以上の元素であり、更に好ましくはNaである。Qは好ましくはCO3及び/又はNO3である。aは、好ましくは0.5≦a≦2.5であり、更に好ましくは0.5≦a≦2である。bは、好ましくは0.5≦b≦5であり、更に好ましくは0.5≦b≦4である。cは、好ましくは0<C≦1.5であり、更に好ましくは0<c≦1である。mとnは、RとQとの組み合わせに応じて任意に決まる。
原料アルミノシリケートの比表面積は、金属置換カンクリナイト様鉱物と同程度であることが好ましい。その平均粒子径も、金属置換カンクリナイト様鉱物と同程度であることが好ましい。更にその形態は、特に限定されるものではないが、例えば金属置換カンクリナイト様鉱物と同様な前記形態であることが好ましい。
原料アルミノシリケートを製造する方法には特に限定はない。例えばアルミナ原料とシリカ原料とをCO3 2-、SO4 2-、NO3 -、Cl-等の存在下、アルカリ溶液中で反応させる方法等が挙げられる。アルミナ原料としては、例えば酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム等が挙げられる。特にアルミン酸ナトリウムが好適である。シリカ原料としては、例えばケイ砂、ケイ石、水ガラス、ケイ酸ナトリウム、シリカゾル等が挙げられる。特に水ガラスが好適である。或いは、アルミナ原料及びシリカ原料の両者の原料となるものとして、例えばカオリン、モンモリロナイト、ベントナイト、マイカ、タルク等の粘土鉱物及びムライト等のアルミノケイ酸塩鉱物を用いてもよい。CO3 2-の原料としては、例えば炭酸ガス、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムカリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。特に炭酸ナトリウムが好適である。SO4 2-の原料としては、例えば硫酸、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウムカリウム等が挙げられる。特に硫酸や硫酸ナトリウムが好適である。NO3 -の原料としては、例えば硝酸、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が挙げられる。特に硝酸や硝酸ナトリウムが好適である。Cl-の原料としては、例えば塩酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム等が挙げられる。特に塩酸や塩化ナトリウムが好適である。アルカリ溶液のアルカリとしては、例えば酸化ナトリウム、酸化カリウム等の酸化物;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムカリウム等の炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸水素塩等が使用できる。所望により、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト等の炭酸塩;炭酸水素カルシウム、炭酸水素マグネシウム等の炭酸水素塩等を使用してもよい。
原料アルミノシリケートは、前記の各種化合物を所定の割合で配合し混合して反応させることにより得ることができる。配合の割合については、得られる所望の原料アルミノシリケートの組成に応じて適宜決定される。好適には、原料アルミノシリケートの原料となる成分の仕込み割合としては、各成分の構成元素に基づいて当該成分をM2O、Al23、SiO2、Rmnで表示した場合、モル比として、M2O/SiO2は好ましくは0.01〜100、更に好ましくは0.05〜80であり、Al23/SiO2は好ましくは0.01〜10、更に好ましくは0.05〜8であり、Rmn/SiO2は好ましくは0.01〜100、更に好ましくは0.05〜80であり、H2O/M2Oは好ましくは0.01〜100、更に好ましくは0.05〜80である。
原料アルミノシリケートを製造する際の反応温度は、原料アルミノシリケートの結晶性を高め、形態を安定させる観点並びに反応容器への化学的及び耐圧的負荷を低減させる観点から、好ましくは15〜300℃、更に好ましくは60〜150℃、一層好ましくは80〜130℃である。反応時間は、結晶化反応を完全に行わせる観点から、2時間以上48時間以下が好ましい。以上により、通常、水分散液(スラリー)として原料アルミノシリケートが得られる。該水分散液の固形分濃度は、0.1〜50重量%であることが好ましい。
次いで、得られた原料アルミノシリケートを、該原料アルミノシリケート100g当たり0〜300meq(0〜300meq/100g)の酸を用いて酸処理する。酸処理は、原料アルミノシリケートにM(1)成分をイオン交換によって固定又は担持させる際のスラリーのpH調整のために行う。その際、M(1)成分のイオン交換性の発現の観点から、スラリーのpHをpH7以下に調整することが好ましい。酸処理は、比表面積の調整のためにも行われる。酸処理量は消臭能の向上の観点から、6〜300meq/100gが好ましく、5〜250meq/100gが更に好ましく、20〜140meq/100gが一層好ましい。なお、0meq/100gの酸を用いて酸処理する場合とは、酸処理を行わない場合を意味する。例えば原料アミノシリケートが1m2/g以上70m2/g未満の比表面積を有するものである場合には原料アミノシリケートを酸処理に付さなくてもよい。酸処理には、塩酸、硫酸、硝酸などの強酸を用いることが好ましく、塩酸や硝酸を用いることが特に好ましい。酸処理は、前記酸を含む水溶液を原料アルミノシリケートに対し徐々に或いは一度に添加して、酸と原料アルミノシリケートとを接触させることにより行う。添加速度は原料アルミノシリケート100gに対して、好ましくは0.01〜100ml/分、更に好ましくは0.1〜10ml/分である。酸処理の際には、原料アルミノシリケートをスラリー状とすることが好ましい。スラリーの固形分濃度は、反応混合物の流動性を確保し且つ酸処理の偏りを防止して処理効率を向上させる観点から、好ましくは1〜50重量%である。酸処理時の温度は、比表面積の向上並びに反応容器への化学的及び圧力的負荷の軽減の観点から、好ましくは60〜150℃、更に好ましくは80〜120℃である。酸処理は適宜撹拌しながら行ってもよい。酸処理の時間は、酸と原料アルミノシリケートを接触させてから好ましくは0.01〜100時間、更に好ましくは0.1〜10時間である。酸処理後は、反応混合物を、例えば60〜150℃で0.1〜1時間程度適宜熟成させることが好ましい。
酸処理後の原料アルミノシリケートを、抗菌性を有する金属のイオンでイオン交換する。或いは、所望の比表面積を有する原料アルミノシリケートを酸処理することなく、そのままイオン交換してもよい。イオン交換は、例えば酸処理後の原料アルミノシリケートを水に懸濁し、そこに前記金属を含有する化合物(以下、金属含有化合物という)若しくは該化合物の水溶液を加えるか、又は金属含有化合物の水溶液中に原料アルミノシリケートを浸漬することにより実施することができる。なお、上述の通り、原料アルミノシリケートを酸処理した後にイオン交換しなければならないわけではなく、例えば酸処理時に金属含有化合物を共存させておけば、原料アルミノシリケートの酸処理とイオン交換とを同時に行うことができる。金属含有化合物としては、所望の金属を含む水溶性金属含有化合物であれば特に限定されず、例えば所望の金属を含む硝酸塩、硫酸塩、塩化物などを用いることができる。イオン交換は、通常、原料アルミノシリケートを水に懸濁し、撹拌下に行われる。イオン交換の効率を向上させる観点から、原料アルミノシリケートの水懸濁液の固形分濃度は好ましくは1〜50重量%である。イオン交換を行う際の温度は特に限定されるものではない。好ましくは20〜120℃、更に好ましくは80〜110℃である。イオン交換の時間は、原料アルミノシリケートと金属含有化合物とを接触させてから、好ましくは0.01〜2時間、更に好ましくは0.02〜1時間である。イオン交換を行う際の、原料アルミノシリケートと金属含有化合物との量比は、原料アルミノシリケート100重量部に対して、好ましくは0.1〜30重量部、更に好ましくは0.2〜10重量部、一層好ましくは0.5〜5重量部である。イオン交換後は、反応混合物を、例えば60〜150℃にて0.1〜10時間程度適宜熟成させることが好ましい。
金属含有化合物中の金属成分は、上述のようなイオン交換によってカンクリナイト様鉱物に固定又は担持されることが最も好ましい。しかし、イオン交換に代えて又はイオン交換に加えて、含浸法や沈殿法によって金属含有化合物中の金属成分を、カンクリナイト様鉱物に固定又は担持させてもよい。金属置換カンクリナイト様鉱物の製造工程において、(イ)原料アルミノシリケートを得た後、(ロ)酸処理の後、(ハ)イオン交換の後のそれぞれの時点で、原料アルミノシリケートを、不純物等を除くことを目的として適宜洗浄してもよい。特に、原料アルミノシリケートの製造工程の最終段階、例えば、原料アルミノシリケートを得た後およびイオン交換の後に洗浄することが好ましい。洗浄は、例えば原料アルミノシリケートの水懸濁液を濾過、水洗することにより行うことができる。濾過に使用する濾過器は特に限定されないが、たとえば、ヌツチェタイプ、フィルタープレスタイプ等が使用できる。
本発明においては、以上説明した金属置換カンクリナイト様鉱物に代えて、以下の組成式(2)で表されるカンクリナイト様鉱物においてMの一部が抗菌性を有する金属で置換されたもの(以下、第2の金属置換カンクリナイト様鉱物という)を用いることもできる。
s12O・Al23・u1SiO2・v1m1n1・w12O (2)
式中、MはNa、K及びHからなる群より選ばれる一種以上の元素を表し、RはNa、K、Ca及びMgからなる群より選択される一種以上の元素を表し、QはCO3、SO4、NO3、OH及びClからなる群より選択される一種以上の原子団を表す。s1は0<s1≦1、u1は1≦u1≦50、v1は0<v1≦2、w1はw1≧0、m1は1≦m1≦2、n1は1≦n1≦2を満たす。
以下、第2の金属置換カンクリナイト様鉱物について説明するが、該鉱物に関し特に説明しない点については、先に説明した金属置換カンクリナイト様鉱物に関する説明が適宜適用される。第2の金属置換カンクリナイト様鉱物は、組成式(2)で表されるカンクリナイト様鉱物においてMの一部が抗菌性を有する金属で置換されたものに相当する。組成式(2)で表されるカンクリナイト様鉱物における抗菌性を有する金属の置換量は、所望の消臭能及び抗菌能の発現並びに経済性の観点から、0.1〜30重量%、特に0.1〜10重量%であることが好ましい。これらの金属の量は、蛍光X線測定法によって測定できる。
第2の金属置換カンクリナイト様鉱物は、それに含まれているアルミニウムが酸によって溶出してその一部がアモルファス状態となっていることが好ましい。アルミニウムが溶出することで、第2の金属置換カンクリナイト様鉱物に多数の微細孔が形成され、消臭能が一層高まる。酸によるアルミニウムの溶出については更に後述する。
第2の金属置換カンクリナイト様鉱物は、その比表面積が70〜800m2/g、特に80〜600m2/g、とりわけ100〜500m2/gであることが、適度な消臭速度及び広い消臭スペクトルを発現する観点から好ましい。
第2の金属置換カンクリナイト様鉱物は、その酸量が、アルカリ性悪臭ガスの消臭能を向上させる観点から、20meq/100g以上、特に100meq/100g以上、とりわけ170meq/100g以上であることが好ましい。「酸量」とは、第2の金属置換カンクリナイト様鉱物の酸点の総量をいう。酸量は、試料0.5gを0.01mol/lのNaOH水溶液100ml中で1時間撹拌後、得られた試料懸濁液を遠心分離し(10000rpm×5分)、上澄み25mlを分取し、分取液を0.01mol/lのHNO3で滴定し消費されたNaOH量を求め、得られたNaOH量を元に算出する。
第2の金属置換カンクリナイト様鉱物は、その平均粒子径が好ましくは1〜500μm、更に好ましくは1〜300μm、一層好ましくは1〜100μmである。かかる範囲内であれば、適度な消臭速度が得られ、また取り扱い性も良好となる。
組成式(2)で表されるカンクリナイト様鉱物においては、Mは、高い消臭能の発現および経済性の観点から、好ましくはNa及び/又はHである。MがNa及びHからなる場合、s12Oは、s'lNa2O・s'22O(式中s'l+s'2=s1である)で表される。Rは、Mと同様の観点から、好ましくはNaである。Qは、粒子の形態制御の容易性の観点から、好ましくはCO3又はNO3である。
s1は、アルカリ性悪臭ガスの消臭能を向上させる観点から、好ましくは0<s1≦0.5であり、より好ましくは0<s1≦0.25である。u1は、酸性悪臭ガスの消臭能を向上させる観点から、好ましくは1≦u1≦40であり、より好ましくは1≦u1≦30である。v1は、高い消臭能の発現の観点から、好ましくは0<v1≦1、より好ましくは0<v1≦0.6、さらに好ましくは0<v1≦0.3である。w1は、前駆体に含まれる水の含有率(モル比)であり、前駆体の存在形態、例えば粉末状、スラリー状などの形態によって変化する。m1とn1はRとQの組み合わせに応じて任意に決まる。
第2の金属置換カンクリナイト様鉱物は、例えば原料アルミノシリケートを酸処理してカンクリナイト様鉱物を形成し、得られたカンクリナイト様鉱物を水に懸濁させ、そこに抗菌性を有する金属の水溶性塩の水溶液を加えてイオン交換することで好適に製造される。別法として、原料アルミノシリケートの酸処理時に、抗菌性を有する金属の水溶性塩を共存させてイオン交換することでも好適に製造される。
第2の金属置換カンクリナイト様鉱物に用いられる原料アルミノシリケートは、以下の組成式(3)で表される。
a12O・Al23・b1SiO2・c1m1n1・zH2O (3)
式中、M、R、Q、m1及びn1は組成式(2)における定義と同様であり、a1は0.1≦a1≦3、b1は0.2≦b1≦6、c1は0<c1≦2、zはz≧0を満たす。原料アルミノシリケート粒子を製造する方法に特に限定はなく、例えばアルミナ原料とシリカ原料をCO3 2-、SO4 2-、NO3 -、Cl-等の存在下、アルカリ溶液中で反応させる方法等が挙げられる。
原料アルミノシリケートを酸処理してカンクリナイト様鉱物を得るに際して用いられる酸としては、塩酸、硫酸、硝酸などの強酸を用いることが好ましい。特に、塩酸、硝酸を用いることが好ましい。原料アルミノシリケートを酸処理することで、原料アルミノシリケートの空孔中に存在するM2O及びRm1n1が溶出するのみならず、骨格を形成するAlも一部溶出する。これによって、比表面積、細孔容積及び酸点が増加し、また先に述べた通り、最終的に得られる第2の金属置換カンクリナイト様鉱物がアモルファス状態となる。酸処理の程度は、最終的に得られる第2の金属置換カンクリナイト様鉱物が所望の性質を有するよう適宜調節すればよい。酸処理は、前記酸を含む水溶液を原料アルミノシリケートに対して徐々に、或いは一度に添加して、酸と原料アルミノシリケートとを接触させることにより行う。添加速度は原料アルミノシリケート100gに対して、好ましくは0.01〜100ml/分、更に好ましくは0.1〜10ml/分である。
原料アルミノシリケートの酸処理によって得られたカンクリナイト様鉱物は、60〜150℃にて0.1〜10時間程度熟成させることが好ましい。次いで、スラリーを濾過し水洗して余分なイオン成分を取り除く。引き続き、濾別されたカンクリナイト様鉱物を水に懸濁させ、所定温度に加熱した状態下、抗菌性を有する金属の水溶性塩の水溶液を加え所定時間熟成させる。これにより、目的とする第2の金属置換カンクリナイト様鉱物が得られる。
本発明の消臭抗菌繊維製品は、その製造方法に応じて種々の形態をとり得る。例えばシート状若しくはその破断片状、粒状又は立体成形物状等の形態をとり得る。これらの形態は、本発明の消臭抗菌繊維製品を湿式法で製造することにより得ることができる。本発明の消臭抗菌繊維製品がシート状の形態である場合、シートは、金属置換カンクリナイト様鉱物を含む単層のシートの形態でもよく、或いは複数のシートが積層されてなる積層シートの形態であってもよい。単層のシートの形態である場合、該シートは、繊維材料及び金属置換カンクリナイト様鉱物の粒子を含むスラリーを原料とした湿式抄造法によって製造される。積層シートの形態である場合、該シートの一例としては図1に示される形態のシートが挙げられる。図1に示す消臭抗菌繊維製品1は、同サイズの長方形形状の2枚のパルプシート、即ち第1のパルプシート2及び第2のパルプシート3間に、これらのパルプシート2,3よりも幅方向の長さが短い長方形形状の内層シート4を介在させてなる積層シートである。内層シート4は金属置換カンクリナイト様鉱物の粒子を含む繊維材料のシートであり、このシートは先に述べた単層のシートと同様のものである。内層シート4は金属置換カンクリナイト様鉱物の混抄紙であり、2枚のパルプシート2,3間に幅方向中央部で挟持されている。内層シート4とパルプシート2,3とは、抄き合わせによって積層されている。
消臭抗菌繊維製品1の側部1a,1bには、その長さ方向全体に亘って内層シート4が介在されておらず、当該側部は2枚のパルプシート2,3が積層されてなる2層構造部分となっている。側部1a,1bにおけるパルプシート2,3同士がそれぞれ接合されることにより、消臭抗菌繊維製品1の両側端部が封止されて、側端部からの金属置換カンクリナイト様鉱物の脱落が防止される。側部1a,1bの幅は、好ましくは0.1〜20cm、更に好ましくは1〜6cmであることが、金属置換カンクリナイト様鉱物の脱落防止、及び金属置換カンクリナイト様鉱物の機能を十分に発現させる点から好ましい。
金属置換カンクリナイト様鉱物を含む繊維材料のシート(つまり前述した単層のシート及び内層シート)は、前述した通り、繊維材料及び金属置換カンクリナイト様鉱物の粒子を含むスラリーを原料とした湿式抄造法によって製造される。繊維材料への金属置換カンクリナイト様鉱物の付着量を高める観点から、スラリー中に凝集剤を添加することが好ましい。凝集剤としては例えばポリアクリルアミドや、アクリル(メタクリル)系共重合体(分子量500万〜5000万)が好適に用いられる。特にポリアクリルアミドや、アクリル(メタクリル)系共重合体(分子量1000万〜3000万)が好ましい。本発明の消臭抗菌繊維製品において、凝集剤は、繊維材料に対して0.01〜0.04重量%、特に0.01〜0.035重量%配合されることが、金属置換カンクリナイト様鉱物の付着量を十分に高め、また本発明の消臭抗菌繊維製品の強度を高める点から好ましい。
スラリー中における金属置換カンクリナイト様鉱物の量は、繊維材料に対して0.1〜10重量%、特に0.5〜5.0重量%であることが好ましい。粘土鉱物の量は繊維材料に対して0.1〜30重量%、特に0.1〜10重量%が好ましい。凝集剤は、金属置換カンクリナイト様鉱物及び粘土鉱物の繊維材料への付着量を高める観点から添加されることが好ましく、生産性の面から凝集剤の量は、繊維材料に対して0.001〜1.0重量%、特に0.001〜0.04重量%であることが好ましい。湿潤紙力剤の量は、繊維材料に対して0.1〜5重量%、特に0.1〜2.0重量%であることが好ましい。スラリー中における繊維材料の濃度は0.5〜5.0重量%、特に1.0〜3.0重量%であることが好ましい。
湿式抄造によって得られたシート(つまり前述した単層のシート及び内層シート)における金属置換カンクリナイト様鉱物の付着率は25%以上、特に凝集剤の選択によっては50%以上という高い値とすることができる。この理由は先に述べた通り、金属置換カンクリナイト様鉱物の形状に因るところが大きい。具体的な用途にもよるが、該シートはその坪量が10〜100g/m2、特に13〜70g/m2であることが好ましい。
本発明の消臭抗菌紙製品がシート状である場合、これを破断片状に小さく切り刻んで使用することもできる。例えば、破断片状の消臭抗菌紙製品を、後述する吸収性物品における吸収体の構成材料として用いることができる。
先に述べた通り、本発明の消臭抗菌紙製品は、シート状の他に、粒状や立体成形物状の形態もとり得る。粒状の形態の場合、金属置換カンクリナイト様鉱物を含む繊維材料の高濃度スラリーを押出機からストランド状に押し出し、所定の大きさに切断することで得ることができる。立体成形物状の形態である場合には、例えばボトル状、カップ状、トレー状等の種々の容器形状となすことができる。そのような立体成形物を製造するためにはパルプモールド法を用いることが好適である。パルプモールド法の詳細は、例えば本出願人の先の出願に係るWO99/42661に記載されている。
本発明の消臭抗菌繊維製品は各種場面での消臭・抗菌に効果的である。例えば、本発明の消臭抗菌繊維製品がシート状又はその破断片状である場合には、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、吸収性パッドなどの吸収性物品の構成材料、壁紙、シーツ、押入シート、箪笥シート、下駄箱シート、マット、靴インソール、マスク、フィルター類、ラッピング食品の中敷シートなどとして有用である。また、本発明の消臭抗菌繊維製品が、ビーズ状、ペレット状等の粒状である場合には、例えば猫砂等のペット用消臭剤として有用である。本発明の消臭抗菌繊維製品が、立体成形物状である場合には、例えば箱型に箱型に成形し抗菌消臭収納ケース等として有用である。
本発明の消臭抗菌繊維製品がシート状である場合、該シートを吸収性物品の構成材料として用いる場合には、該シートを、例えば表面シートと吸収体との間、該吸収体内、又は該吸収体と裏面シートとの間に配することができる。或いは、該シートで、パルプや高吸収性ポリマー等の吸収性素材を被覆して吸収体となし、該吸収体を吸収性物品に用いることができる。表面シートは、吸収性物品の使用時に使用者の肌に対向する側に配されるものであり、一般に液透過性である。吸収体は、表面シートと裏面シートとの間に配されるものであり、一般に液保持性である。裏面シートは、吸収体を挟んで、表面シートと反対の側、つまり使用者の肌から遠い側に配されるものであり、一般に撥水性ないし液不透過性である。
図2には、本発明の消臭抗菌シートを吸収性物品に適用した一例として、吸収性物品の吸収体を、本発明の消臭抗菌シートで被覆した状態が示されている。吸収体10は、高吸収性ポリマーの粒子とパルプ繊維とから構成されている。吸収体10は、消臭抗菌シート1の一側部1aと他側部1bとが重ね合わされるようにして、消臭抗菌シート1に被覆されている。この状態下、吸収体10は、図示しない表面シートと裏面シートとに挟持され、吸収性物品が形成される。従って、本形態においては、消臭抗菌シート1は、吸収性物品における表面シートと吸収体との間、及び裏面シートと吸収体との間に配されることになる。この場合、吸収性物品における何れかの部位に、悪臭の代表的な物質である硫化水素やメルカプタン類などの硫黄化合物の吸着物質を含ませておくと、金属置換カンクリナイト様鉱物中の金属と硫黄化合物とが結合することに起因する金属の抗菌性の低下が効果的に防止されるので、抗菌性の持続性という点で好ましい。また金属置換カンクリナイト様鉱物の消臭力も向上する。硫黄化合物の吸着物質としては酸化亜鉛が代表的なものとして挙げられる。硫黄化合物の吸着物質は、例えば本発明の消臭抗菌シートに付着させておくことができる他、吸収体中に含有させておくこともできる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明の範囲はかかる実施例に制限されるものではない。以下の例中、特に断らない限り「%」は、「重量%」を意味する。
〔実施例1〕
水酸化ナトリウム94gをイオン交換水1000mlに溶解し、さらに硝酸(61%)130gと、アルミン酸ナトリウム溶液(Na2O=19・8%、Al23=25.9%、H2O=54.3%)124gを混合した溶液に、水ガラス(Na2O=9.8%、SiO2=29.6%、H2O=60.6%)127gを1分間かけて投入し、100℃で8時間反応させた。反応後、生成したアルミノシリケート粒子を濾過洗浄し、105℃で12時間乾燥して原料アルミノシリケート粒子の粉末を得た。得られた原料アルミノシリケート粒子は針状結晶が集合した多孔質な球形形態を有していた。粉末X線回折装置〔(株)リガク製、RINT2500〕を用いてX線回折を行った結果、その回折パターンはJCPDS No.38−513に相当していた。得られた原料アルミノシリケート粒子はウニ形の粒子形態をしており、組成はNa2O・Al23・2SiO2・0.4NaNO3・0.7H2Oであった。比表面積は40m2/gであった。
得られた原料アルミノシリケート粒子100gを、イオン交換水900mlに懸濁させ100℃に保持した。撹拌下、61%硝酸を、1ml/分の速度で所定量滴下して酸処理を行った。次いで、硝酸銀3.94gをイオン交換水30gに溶解した硝酸銀水溶液を投入し、100℃で1時間保持してイオン交換を行った。その後、濾過、水洗し、105℃で12時間乾燥し、白色のAg置換カンクリナイト様鉱物を得た。得られたAg置換カンクリナイト様鉱物はウニ型の粒子形態をしており、組成は0.05Ag2O・0.9Na2O・Al23・2SiO2・0.4NaNO3・0.7H2Oであった。比表面積は44.7m2/gで、平均粒子径は8.3μmであった。また1%水分散液のpHは10.04であった。表面のAgの濃度は、Ag/Si=0.075、Ag/Al=0.070であった。
得られたAg置換カンクリナイト様鉱物をイオン交換水に懸濁させた。更にNBKP及びLBKPのブレンドパルプ、合成ゼオライト4Aタイプ(シルトンB 水澤化学社製)、湿潤紙力剤(カイメンWS547 日本PMC社製)、ポリアクリルアミド系高分子凝集剤(アコフロックA95 三井化学アクアポリマー社製)を添加混合しスラリーを得た。ブレンドパルプは叩解によってそのCSFが550mlに調整されたものを用いた。ブレンドパルプにおけるNBKP/LBKPの重量比は90/10であった。
スラリー中におけるブレンドパルプの濃度は2%、Ag置換カンクリナイト様鉱物の濃度はブレンドパルプに対して2%、ゼオライトの濃度はブレンドパルプに対して5%、湿潤紙力剤の濃度はブレンドパルプに対して0.5%、高分子凝集剤の濃度はブレンドパルプに対して0.025%であった。
このスラリーを原料として丸網抄紙機を用いて湿式抄造を行い、消臭抗菌繊維製品である消臭抗菌紙を得た。坪量は16g/m2であった。消臭抗菌紙におけるAg置換カンクリナイト様鉱物の量はブレンドパルプに対して1%であり、ゼオライトの量はブレンドパルプに対して2.5%であった。湿潤紙力剤の量はブレンドパルプに対して0.45%、凝集剤の量はブレンドパルプに対して0.018%であった。
図3に示すように、得られた消臭抗菌紙12の一方の面に、坪量20g/m2のエアスルー不織布の表面シート11を、また、他方の面に、坪量350g/m2のパルプと坪量120g/m2の高吸収性ポリマーの粒子からなる吸収体13を配置し、坪量15g/m2の吸収紙14で消臭抗菌紙12の両側部および吸収体13を被覆した。被覆された吸収体13の裏面に坪量15g/m2の液不透過性の裏面シート15を重ね合わせた。これによって長さ400mm幅150mmの吸収性パットを得た。なお、前記の不織布、パルプ、高吸収性ポリマー、吸収紙、液不透過性シートとしては、花王(株)製のリリーフ(登録商標)尿取りパット(商品名)で用いられている材料と同様のものを用いた。
〔実施例2及び3並びに比較例1及び2〕
スラリーの配合を表1に示す値とする以外は実施例1と同様にして消臭抗菌紙及び吸収性パッドを得た。
〔評価〕
得られた消臭抗菌紙に含まれるAg置換カンクリナイト様鉱物の付着率を以下の方法で測定した。また消臭抗菌紙の柔らかさ、引張強度(乾燥時及び湿潤時)、丸網抄紙機での生産性、加工機による加工性を、以下の方法で測定、評価した。更に、得られた吸収性パッドについて、硫化水素の消臭率及び抗菌能を、以下の方法で測定、評価した。これらの結果を表1に示す。
〔Ag置換カンクリナイト様鉱物の付着率〕
スラリー中でのAg置換カンクリナイト様鉱物の量と、消臭抗菌紙に含まれるAg置換カンクリナイト様鉱物の量から、Ag置換カンクリナイト様鉱物の付着率を求めた。尚、消臭抗菌紙に含まれるAg置換カンクリナイト様鉱物の量は、消臭抗菌紙を湿式分解した後、ICP発光分析装置でAgの量を測定し、その測定量から求めた。
〔柔らかさ〕
柔らかさは、(イ)バルクソフトネスの測定値及び(ロ)官能評価により評価した。それぞれの測定・評価方法は次の通りである。
(イ)バルクソフトネス
消臭抗菌紙をその流れ方向へ30mm、幅方向へ150mmの大きさにカットし矩形状の試験片5枚を得る。この試験片から、その短辺方向(30mmの方向)を高さ方向とする直径45mmの円筒を作る。円筒の円周方向の重なり幅は約9mmとする。重なった部分の上端及び下端をMAX製ステープラHD−10D、針No.10−1Mで固定する。このようにして得られた円筒状の測定サンプルを円筒の高さに方向に圧縮したときの最大荷重を圧縮試験機によって測定し、その値を流れ方向(MD)へのバルクソフトネスの値とする。圧縮試験機はオリエンテック(株)社製RTA−100型を用いた。圧縮速度は10mm/mimとする。幅方向(CD)へのバルクソフトネスは、消臭抗菌紙を、その流れ方向150mm、幅方向へ30mmの大きなにカットし、流れ方向(MD)へのバルクソフトネスの測定方法と同様の方法で測定する。
(ロ)官能評価
消臭抗菌紙を、その流れ方向へ300mm、幅方向へ200mmの大きさにカットした試験片を得る。この試験片をボックスの中に入れ見えない状態にして、10人のモニターに試験片を触らせ柔軟性を評価させる。比較例1の試験片を柔軟性の基準とし、比較例1よりも柔軟な場合を4、同じ場合を3、硬い場合を2、非常に硬くなっている場合を1として比較評価を行う。この平均値が3.5〜4の場合を○、2.5〜3.4の場合を△、2.4以下の場合を×とした。
〔乾燥時引張強度〕
消臭抗菌紙を幅25mm、長さ100mmの短冊状に裁断した後、速やかに万能圧縮引張試験機(オリエンティック社製 RTM−25)に装着し、破断時の強度を測定した。測定条件は、引張速度300mm/min、試験片つかみ間隔50mmとした。測定は、抄紙機の流れ方向(MD)及びそれに直交する方向(CD)の二方向について行った。
〔湿潤時引張強度〕
乾燥時引張強度の測定に用いた試験片と同寸の消臭抗菌紙を、大量の水に5秒間浸した後、10秒間水を切ってから、乾燥時引張強度と同様の方法で破断時の強度を測定した。
〔丸網抄紙機での生産性〕
丸網抄紙機で連続生産を行い、その状態を判断した。連続生産時に紙切れ、紙粉等のトラブルが発生しなかった場合を○、時々トラブルが発生した場合を△、たびたびトラブルが発生した場合を×と評価した。
〔加工機による加工性〕
吸収性パッドの組立てライン(加工機)を用いて、吸収性パッドの連続生産を行い、その状態を判断した。消臭抗菌紙の搬送中に紙切れ等のトラブルが発生せず生産が中断しない場合を○、時々中断した場合を△、たびたびトラブルが発生した場合を×と評価した。尚、消臭抗菌紙の乾燥時引張強度(MD)が400cN/25mm以下であると、加工時に紙切れ等のトラブルが発生する場合がある。
〔硫化水素の消臭率〕
容量500mlのスリ栓付三角フラスコに100×100mmの大きさに調整した吸収性パッドを入れ、そこに3.5ppm(初期濃度)になるように濃度調整した硫化水素ガスを注入した。10分経過後の三角フラスコ内の硫化水素濃度をガス検知管(ガステック株式会社製、硫化水素用4LT)によって測定し、測定値/初期濃度×100を消臭率とした。
〔抗菌能〕
大腸菌を混合した人工尿を吸収性パッドに注入し、30℃の環境で24時間保存した。この吸収性パッドを、その飽和吸収量よりも過剰量の生理食塩水中に浸漬し攪拌した。生理食塩水をろ過し、ろ液中の菌数を測定した。測定された菌数について、比較例1をベースとして以下の基準で抗菌効果を評価した。−:ベースよりも菌の増殖が抑制されている。+:ベースよりも菌が増殖するか同数である。
Figure 0004836597
表1に示す結果から明らかなように、各実施例(本発明品)の消臭抗菌紙は、柔らかなものであり、しかも十分な乾燥時引張強度を有し、抄紙試験機での生産性及び加工機による加工性に問題が無いことが判る。これに対して比較例1の消臭抗菌紙は、柔らかさに劣り、また抄紙試験機での生産でトラブル発生する場合があることが判る。
本発明の消臭抗菌繊維製品の一実施形態を示す斜視図である。 図1に示す消臭抗菌繊維製品で吸収体を被覆した状態を示す斜視図である。 実施例及び比較例で作製した吸収パッドの幅方向の断面図である。
符号の説明
1 消臭抗菌繊維製品
2,3 パルプシート
4 内層シート

Claims (5)

  1. 抗菌性を有する金属を含むカンクリナイト様鉱物、粘土鉱物、凝集剤、湿潤紙力剤、針葉樹晒しクラフトパルプ及び広葉樹晒しクラフトパルプを含む消臭抗菌繊維製品であって、
    針葉樹晒しクラフトパルプ/広葉樹晒しクラフトパルプの重量比が95/5〜50/50であり、
    針葉樹晒しクラフトパルプ及び広葉樹晒しクラフトパルプを含む繊維材料に対して、前記カンクリナイト様鉱物を0.01〜20重量%、前記粘土鉱物を1〜30重量%含み、
    針葉樹晒しクラフトパルプ及び広葉樹晒しクラフトパルプを含む繊維材料に対して、前記凝集剤を0.01〜0.04重量%、前記湿潤紙力剤を0.01〜5重量%含み、
    前記粘土鉱物がゼオライトであり、
    針葉樹晒しクラフトパルプ及び広葉樹晒しクラフトパルプのブレンドパルプのカナダ標準ろ水度(JIS P8121)が400〜600mlである消臭抗菌繊維製品
  2. 前記カンクリナイト様鉱物が以下の組成式(1)で表される請求項に記載の消臭抗菌繊維製品。
    sM(1)xy・tM(2)2O・Al23・uSiO2・vRmn・wH2O (1)
    (式中、M(1)は抗菌性を有する金属を表し、M(2)はNa、K及びHからなる群より選ばれる1種以上の元素を表し、RはNa、K、Ca及びMgからなる群より選ばれる1種以上の元素を表し、QはCO3、SO4、NO3、OH及びClからなる群より選ばれる1種
    以上の原子団を表し、sは0<s≦3、tは0≦t≦3(但し、s+t=0.5〜3である)、uは0.5≦u≦6、vは0<v≦2、wはw≧0、xは1≦x≦2、yは1≦y≦3、mは1≦m≦2、nは1≦n≦3を満たす。)
  3. シート状若しくはその破断片状、粒状又は立体成形物状の形態をしており、湿式法によって製造されたものである請求項1又は2に記載の消臭抗菌繊維製品。
  4. 前記カンクリナイト様鉱物を含む湿式抄造シートの各面にパルプシートが積層された積層シートからなり、該積層シートは少なくともその一側部の全体に亘って前記湿式抄造シートが介在していない請求項1ないし3の何れかに記載の消臭抗菌繊維製品。
  5. 表面シートと吸収体との間、該吸収体内、又は該吸収体と裏面シートとの間に、シート状の形態をした請求項1記載の消臭抗菌繊維製品を配した吸収性物品。
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