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JP4793088B2 - ゴム補強用スチールコード及びそれを用いた空気入りラジアルタイヤの製造方法 - Google Patents

ゴム補強用スチールコード及びそれを用いた空気入りラジアルタイヤの製造方法 Download PDF

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JP4793088B2 JP2006134876A JP2006134876A JP4793088B2 JP 4793088 B2 JP4793088 B2 JP 4793088B2 JP 2006134876 A JP2006134876 A JP 2006134876A JP 2006134876 A JP2006134876 A JP 2006134876A JP 4793088 B2 JP4793088 B2 JP 4793088B2
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Description

本発明は、1回撚りによる3層構造を持つスチールコード及びそれを用いた空気入りラジアルタイヤの製造方法に関し、更に詳しくは、引張剛性を低下させることなくコード内部へのゴム浸透性を改善し、耐久性を向上することを可能にしたゴム補強用スチールコード及びそれを用いた空気入りラジアルタイヤの製造方法に関する。
例えば、重荷重用空気入りラジアルタイヤのカーカス層を構成するスチールコードとして、少なくとも1本の素線を含む第1層と、該第1層の外周側に位置して複数本の素線を含む第2層と、該第2層の外周側に位置して複数本の素線を含む第3層とを同時に撚り合わせてなる3層構造のスチールコードが使用されている(例えば、引用文献1〜3参照)。
しかしながら、通常、3層構造のスチールコードは第3層の素線間の隙間が小さいため、ゴム被覆後に加硫したとき、コード内部へのゴム浸透性が悪いという欠点がある。そして、コード内部へのゴム浸透率が低いと、コートゴムや外層素線による内層素線の拘束力が不十分になるため、内層素線が抗張材として十分に働かず、コードの耐久性が低下することになる。一方、ゴム浸透性を改善する目的で素線に過度な癖付けを施すと、コードの引張剛性が低下する。この場合、空気入りラジアルタイヤにおいては、操縦安定性が低下することになる。
特開平11−124781号公報 特開2004−9879号公報 特開2004−42791号公報
本発明の目的は、引張剛性を低下させることなくコード内部へのゴム浸透性を改善し、耐久性を向上することを可能にしたゴム補強用スチールコード及びそれを用いた空気入りラジアルタイヤの製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するための本発明のゴム補強用スチールコードは、少なくとも1本の素線を含む第1層と、該第1層の外周側に位置して複数本の素線を含む第2層と、該第2層の外周側に位置して複数本の素線を含む第3層とを同時に撚り合わせてなる3層構造のスチールコードにおいて、前記第1層と前記第2層との間に未加硫ゴム配合物を挿入すると共に、少なくとも前記第3層の素線に型付けを施し、全ての素線を最密状態に配置したときに形成されるコード輪郭の頂点でのコード径及び非頂点でのコード径に対して、前記第3層の前記頂点に位置する素線の型付率を90〜105%とし、前記第3層の前記非頂点に位置する素線の型付率を95〜110%としたことを特徴とするものである。
また、本発明の空気入りラジアルタイヤの製造方法は、上記ゴム補強用スチールコードをカーカス層に用いたグリーンタイヤを成形し、該グリーンタイヤを加硫することを特徴とするものである。
本発明では、1回撚りによる3層構造を持つスチールコードにおいて、第1層と第2層との間に未加硫ゴム配合物を挿入すると共に、少なくとも第3層の素線に型付けを施し、その型付率を適正化する。つまり、全ての素線を最密状態に配置したときに形成されるコード輪郭の頂点でのコード径及び非頂点でのコード径に対して、第3層を構成する素線のうち頂点に位置する素線の型付率を90〜105%とし、第3層を構成する素線のうち非頂点に位置する素線の型付率を95〜110%とする。このように第1層と第2層との間に未加硫ゴム配合物を挿入すると共に、第3層の素線に適度な型付けを施すことにより、加硫初期において第3層の素線間の隙間が大きくなるため第2層と第3層との間へのゴム浸透性が良好になる。その一方で、加硫後においては、加硫時のコード張力により第1層と第2層との間の未加硫ゴム配合物がコード径方向外側へ流れつつ第3層の素線がコード径方向内側へ収束するため良好な引張剛性を発揮することが可能になる。これにより、引張剛性を低下させることなくコード内部へのゴム浸透性を改善し、スチールコードの耐久性を向上することができる。更には、このようなスチールコードをカーカス層に用いて得られる空気入りラジアルタイヤの耐久性を向上することができる。
上記ゴム補強用スチールコードにおいて、未加硫ゴム配合物の最大挿入量は、全ての素線を最密状態に配置したときに第2層の素線に外接する多角形の内側に形成される空隙量以下にすることが好ましい。これにより、加硫後において十分な引張剛性を確保することができる。
上記ゴム補強用スチールコードには、例えば、第1層の素線本数を1本とし、第2層の素線本数を6本とし、第3層の素線本数を12本とした所謂1+18構造や1×19構造、或いは、第1層の素線本数を3本とし、第2層の素線本数を9本とし、第3層の素線本数を15本とした所謂3/24構造や1×27構造を採用することができる。このようなスチールコードは一般的にはゴム浸透性が悪いため、上記構成を採用することで顕著な作用効果が得られる。
上記空気入りラジアルタイヤの製造方法は、カーカス層の成形初期から加硫後までの周長増加率をタイヤ幅方向中央位置で70%以上にする場合に特に有効である。カーカス層の成形初期から加硫後までの周長増加率が大きいほど、タイヤ製造過程においてカーカス層のスチールコードに与えられる張力が大きくなり、第3層の素線間の隙間が閉じ易くなるため、上記構成を採用することで顕著な作用効果が得られる。なお、カーカス層の成形初期から加硫後までの周長増加率とは、円筒状に成形された1次グリーンタイヤにおけるカーカス層の周長をL1 とし、加硫後のタイヤにおけるカーカス層の周長をL2 としたとき、(L2 −L1 )/L1 ×100%である。
本発明のゴム補強用スチールコードは、空気入りラジアルタイヤのカーカス層に適用することが望ましいが、カーカス層以外のタイヤ構成部材やコンベヤベルト等にも適用することが可能である。
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態からなるゴム補強用スチールコード(1+18構造)を示すものである。図1において、スチールコード10は、1本の素線11を含む第1層Aと、該第1層Aの外周側に位置して6本の素線12を含む第2層Bと、該第2層Bの外周側に位置して12本の素線13を含む第3層Cとを同時に撚り合わせてなる3層構造を有している。つまり、第1層Aと第2層Bと第3層Cは同一の撚り工程において撚り合わされたものである。
第1層Aと第2層Bとの間には未加硫ゴム配合物Rが挿入されている。この未加硫ゴム配合物Rの最大挿入量は、全ての素線11〜13を最密状態に配置したときに第2層Bの素線12に外接する多角形の内側に形成される空隙量以下にすると良い。また、少なくとも第3層Cの素線13には螺旋状の型付けが施されている。この素線13の型付率は素線13の位置とその位置でのコード径に基づいて設定されている。
図2は図1のゴム補強用スチールコードにおける未加硫ゴム配合物の最大挿入量とコード径を説明するための図である。図2はスチールコード10の全ての素線11〜13を最密状態に配置した仮想の断面形状を描いている。図2において、全ての素線11〜13を最密状態に配置したときに第2層Bの素線12に外接する多角形の内側に形成される空隙量に相当する未加硫ゴム配合物Rが挿入されている。つまり、図2は最大挿入量まで未加硫ゴム配合物Rを充填した状態を示している。ここで、第1層Aと第2層Bとの間に挿入される未加硫ゴム配合物Rの挿入量が規定量を上回るとコード内部のゴムが過多となるため加硫後のコード引張弾性率が低下する。
図2において、全ての素線11〜13を最密状態に配置したときに形成されるコード輪郭の頂点でのコード径D1 及び非頂点でのコード径D2 に対して、第3層Cの頂点に位置する素線13の型付率は90〜105%とし、第3層Cの非頂点に位置する素線13の型付率は95〜110%とする。これら型付率は、頂点に位置する素線13の波高をH1 とし、非頂点に位置する素線13の波高をH2 としたとき(図11参照)、それぞれH1 /D1 ×100%及びH2 /D2 ×100%にて算出される。
このように第3層Cを構成する素線13の型付率を通常よりも大きく設定することにより、第3層Cの素線13,13間の隙間を十分に確保し、ゴム浸透性を改善することができる。ここで、第3層Cの素線13の型付率が下限値を下回るとコードの形状安定性が不十分になるためコード耐久性の改善効果が低下し、逆に上限値を上回ると加硫後のコード引張弾性率が低下する。
図3は図1のゴム補強用スチールコードをゴム被覆して加硫した状態を示すものである。図3において、コード外部に存在するコートゴムは省略する。図3に示すように、スチールコード10をゴム被覆してから加硫を行うと、コード外部からコード内部へ浸透した未加硫ゴム配合物とコード内部に予め挿入されていた未加硫ゴム配合物Rとが加硫されて加硫ゴム層R’を形成する。この加硫ゴム層R’はコード外部に存在する不図示のコートゴムに対して一体的に繋がり、かつ、第1層Aの素線11、第2層Bの素線12及び第3層Cの素線13を一体的に結合させるものとなる。その結果、コートゴムや外層素線13による内層素線11,12の拘束力が高くなり、内層素線11,12が抗張材として十分に働くようになる。
このように1回撚りによる3層構造を持つスチールコード10において、第1層Aと第2層Bとの間に未加硫ゴム配合物Rを挿入すると共に、少なくとも第3層Cの素線13に型付けを施し、その型付率を適正化することにより、引張剛性を低下させることなくコード内部へのゴム浸透性を改善し、コード耐久性を向上することができる。
ここで、対比のため、従来のゴム補強用スチールコードについて説明する。図4は従来のゴム補強用スチールコード(1+18構造)を示し、図5は図4のゴム補強用スチールコードをゴム被覆して加硫した状態を示すものである。図5において、コード外部に存在するコートゴムは省略する。図4に示すように、従来のスチールコード20はその内部に未加硫ゴム配合物が挿入されていない。このようなスチールコード20をゴム被覆してから加硫を行った場合、図5に示すように、コード内部に形成される加硫ゴム層R’は不十分となる。そして、コード内部へのゴム浸透率が低いと、コートゴムや外層素線13による内層素線11,12の拘束力が不十分になるため、内層素線11,12が抗張材として十分に働かず、コード耐久性が低下するのである。
図6は本発明の他の実施形態からなるゴム補強用スチールコード(3/24構造)を示すものである。図6において、スチールコード30は、3本の素線11を含む第1層Aと、該第1層Aの外周側に位置して9本の素線12を含む第2層Bと、該第2層Bの外周側に位置して15本の素線13を含む第3層Cとを同時に撚り合わせてなる3層構造を有している。つまり、第1層Aと第2層Bと第3層Cは同一の撚り工程において撚り合わされたものである。
第1層Aと第2層Bとの間には未加硫ゴム配合物Rが挿入されている。この未加硫ゴム配合物Rの最大挿入量は、全ての素線11〜13を最密状態に配置したときに第2層Bの素線12に外接する多角形の内側に形成される空隙量以下にすると良い。また、少なくとも第3層Cの素線13には螺旋状の型付けが施されている。この素線13の型付率は素線13の位置とその位置でのコード径に基づいて設定されている。
図7は図6のゴム補強用スチールコードにおける未加硫ゴム配合物の最大挿入量とコード径を説明するための図である。図7はスチールコード30の全ての素線11〜13を最密状態に配置した仮想の断面形状を描いている。図7において、全ての素線11〜13を最密状態に配置したときに第2層Bの素線12に外接する多角形の内側に形成される空隙量に相当する未加硫ゴム配合物Rが挿入されている。つまり、図7は最大挿入量まで未加硫ゴム配合物Rを充填した状態を示している。ここで、第1層Aと第2層Bとの間に挿入される未加硫ゴム配合物Rの挿入量が規定量を上回るとコード内部のゴムが過多となるため加硫後のコード引張弾性率が低下する。
図7において、全ての素線11〜13を最密状態に配置したときに形成されるコード輪郭の頂点でのコード径D1 及び非頂点でのコード径D2 に対して、第3層Cの頂点に位置する素線13の型付率は90〜105%とし、第3層Cの非頂点に位置する素線13の型付率は95〜110%とする。これら型付率は上記と同様に算出される。
このように第3層Cを構成する素線13の型付率を通常よりも大きく設定することにより、第3層Cの素線13,13間の隙間を十分に確保し、ゴム浸透性を改善することができる。ここで、第3層Cの素線13の型付率が下限値を下回るとコードの形状安定性が不十分になるためコード耐久性の改善効果が低下し、逆に上限値を上回ると加硫後のコード引張弾性率が低下する。
図8は図6のゴム補強用スチールコードをゴム被覆して加硫した状態を示すものである。図8において、コード外部に存在するコートゴムは省略する。図8に示すように、スチールコード30をゴム被覆してから加硫を行うと、コード外部からコード内部へ浸透した未加硫ゴム配合物とコード内部に予め挿入されていた未加硫ゴム配合物Rとが加硫されて加硫ゴム層R’を形成する。この加硫ゴム層R’はコード外部に存在する不図示のコートゴムに対して一体的に繋がり、かつ、第1層Aの素線11、第2層Bの素線12及び第3層Cの素線13を一体的に結合させるものとなる。その結果、コートゴムや外層素線13による内層素線11,12の拘束力が高くなり、内層素線11,12が抗張材として十分に働くようになる。
このように1回撚りによる3層構造を持つスチールコード30において、第1層Aと第2層Bとの間に未加硫ゴム配合物Rを挿入すると共に、少なくとも第3層Cの素線13に型付けを施し、その型付率を適正化することにより、引張剛性を低下させることなくコード内部へのゴム浸透性を改善し、コード耐久性を向上することができる。
ここで、対比のため、従来のゴム補強用スチールコードについて説明する。図9は従来のゴム補強用スチールコード(3/24構造)を示し、図10は図9のゴム補強用スチールコードをゴム被覆して加硫した状態を示すものである。図10において、コード外部に存在するコートゴムは省略する。図9に示すように、従来のスチールコード40はその内部に未加硫ゴム配合物が挿入されていない。このようなスチールコード40をゴム被覆してから加硫を行った場合、図10に示すように、コード内部に形成される加硫ゴム層R’は不十分となる。そして、コード内部へのゴム浸透率が低いと、コートゴムや外層素線13による内層素線11,12の拘束力が不十分になるため、内層素線11,12が抗張材として十分に働かず、コード耐久性が低下するのである。
図1に示す本発明のスチールコード10は1+18構造を有するものであり、図6に示す本発明のスチールコード30は3/24構造を有するものであるが、それ以外に、1×19構造、1×27構造等を採用することが可能である。1+18構造や3/24構造は素線11を素線12,13よりも太くしたものであるのに対し、1×19構造や1×27構造は素線11,12,13の太さを同一にしたものである。
図12は本発明のゴム補強用スチールコードを用いて得られる空気入りラジアルタイヤの一例を示し、1はトレッド部、2はサイドウォール部、3はビード部である。左右一対のビード部3,3間には複数本の補強コードをタイヤ径方向に配向してなるカーカス層4が装架され、そのカーカス層4の端部がビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されている。このカーカス層4には前述のスチールコード10(又は30)が使用されている。トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層のベルト層6が埋設されている。これらベルト層6は補強コードがタイヤ周方向に対して傾斜し、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。
上述のような空気入りラジアルタイヤを製造する場合、スチールコード10をカーカス層4に用いたグリーンタイヤを成形し、そのグリーンタイヤを加硫する。より具体的には、複数本のスチールコード10を含むカーカス層4を一対の環状のビードコア5,5間に装架してなる円筒状の1次グリーンタイヤを成形する一方で、ベルト層6を含むトレッドリングを成形し、一対のビードコア5,5の相互間隔を縮めながら1次グリーンタイヤの軸方向中央部を膨径させ、その1次グリーンタイヤの外周側にトレッドリングを貼り合わせることにより、2次グリーンタイヤを成形する。その後、2次グリーンタイヤを金型内で加硫する。
上記空気入りラジアルタイヤの製造過程において、カーカス層4を構成するスチールコード10には張力が与えられる。特に、カーカス層4の成形初期から加硫後までの周長増加率がタイヤ幅方向中央位置(タイヤ赤道位置)で70%以上となるような変形を伴う場合、スチールコード10に与えられる張力による影響が大きくなり、スチールコード10の第3層Cの素線13,13間の隙間が閉じ易くなる。しかしながら、スチールコード10の第1層Aと第2層Bとの間には上述の如く所定量の未加硫ゴム配合物Rが挿入され、しかも第3層Cの素線13には適度な型付けが施されているので、カーカス層4の成形初期から加硫後までの周長増加率がタイヤ幅方向中央位置で70%以上となる場合であっても、コード内部へのゴム浸透性を改善し、コード耐久性を向上し、延いては、空気入りラジアルタイヤの耐久性を向上することができる。
タイヤサイズ295/80R22.5の空気入りラジアルタイヤを製造するにあたって、カーカス層を構成するスチールコード(1×0.22+18×0.20)の第1層と第2層との間に予め未加硫ゴム配合物を挿入し、その未加硫ゴム配合物の断面積(以下、「ゴム被覆断面積」という。)を表1のように種々異ならせると共に、第3層の素線に型付けを施し、第3層の頂点及び非頂点に位置する各素線の型付率を表1のように種々異ならせた(実施例1〜2及び比較例1〜4)。対比のため、未加硫ゴム配合物を挿入していないスチールコード(1×0.22+18×0.20)をカーカス層に用いて同タイヤサイズの空気入りラジアルタイヤを製造した(従来例1)。
上記空気入りラジアルタイヤの製造工程において、1次グリーンタイヤ成形時のカーカス層のコード打ち込み密度は27本/50mmであり、加硫後のカーカス層のコード打ち込み密度はタイヤ幅方向中央位置で15本/50mmであった。つまり、カーカス層の成形初期から加硫後までの周長増加率はタイヤ幅方向中央位置で約80%である。
ゴム被覆断面積は、スチールコードを1000m以上製作し、未加硫ゴム配合物の比重とコード1000m当たりの消費量から求めた。上記スチールコードにおいて、全ての素線を最密状態に配置したときに第2層の素線に外接する多角形の内側に形成される空隙量、即ち、ゴム被覆断面積の最大値は0.018mm2 である。
第3層の頂点及び非頂点に位置する各素線の型付率は、以下の手順で求めた。先ず、コードを長さ10cmに切断し、カッターナイフでコード外側のゴムを取り除いた後、コードをアセトンに浸漬して加熱した。加熱時間は特に限定されるものではないが、コードを簡単にばらせるようになるまで加熱すれば良い。次に、素線位置(頂点又は非頂点)を確認し、素線を塑性変形させずに第3層の素線を分離した。次いで、投影機を用いて第3層の頂点及び非頂点に位置する各素線の波高H1 ,H2 (mm)を測定した。一方、全ての素線を最密状態に配置したときに形成されるコード輪郭の頂点及び非頂点でのコード径D1 ,D2 を求めた。そして、頂点に位置する素線の型付率をH1 /D1 ×100%から算出し、非頂点に位置する素線の型付率をH2 /D2 ×100%から算出した。コード10本について同様の試験を実施し、第3層の頂点及び非頂点に位置する各素線の型付率(%)の平均値を求めた。
上述のようにして得られた評価タイヤについて、下記の測定方法により、ゴム浸透率、加硫後初期引張弾性率指数、コード耐久性を評価し、その結果を表1に併せて示した。
ゴム浸透率:
評価タイヤからカーカスコードを全長にわたって採取し、カッターナイフでコード周りのゴムを取り除いた。第3層の素線を1本ずつ手で除去した後、顕微鏡を使用して第2層のゴム被覆率(%)を評価した。つまり、第2層がゴムで完全に覆われている状態はゴム被覆率が100%であり、第2層が完全に露出している状態はゴム被覆率が0%である。コード10本について同様の試験を実施し、その平均値を求めた。
加硫後初期引張弾性率指数:
評価タイヤからカーカスコードを全長にわたって採取し、そのカーカスコードに対して引張試験を実施して荷重10〜250N間の初期引張弾性率を求めた。コード10本について同様の試験を実施し、その平均値を求めた。評価結果は、従来例1を100とする指数にて示した。指数値が大きいほど加硫後初期引張弾性が大きいことを意味する。
コード耐久性:
評価タイヤからカーカスコードを全長にわたって採取し、145℃×25分の加硫条件で、幅10mm、厚さ5mm、長さ500mmのゴムブロック中央にカーカスコードを埋め込んだ試験片を作製した。この試験片を3ローラー試験機に装着し、ローラー径35mm、コード張力200Nの条件で疲労試験を実施した。つまり、3個のローラーにより試験片に歪みを与えつつローラーをコード長手方向に往復移動させ、コードに破断を生じるまでの往復回数を測定した。コード25本について同様の疲労試験を実施し、破断を生じるまでの往復回数の中央値を求めた。評価結果は、従来例1を100とする指数にて示した。指数値が大きいほどコード耐久性が良好であることを意味する。
Figure 0004793088
この表1から明らかなように、実施例1〜2はいずれも従来例1との対比において引張剛性を低下させることなくコード内部へのゴム浸透性を改善し、コード耐久性を向上することができた。一方、比較例1,3では第3層の頂点又は非頂点に位置する素線の型付率が低過ぎてコード形状が不安定になるためコード耐久性の改善効果が得られなかった。比較例2,4では第3層の頂点又は非頂点に位置する素線の型付率が高過ぎるためスチールコードの初期引張弾性率が従来例1よりも低下していた。初期引張弾性率が低下すると操縦安定性が低下することになる。
本発明の実施形態からなるゴム補強用スチールコード(1+18構造)を示す断面図である。 図1のゴム補強用スチールコードにおける未加硫ゴム配合物の最大挿入量とコード径を説明するための断面図である。 図1のゴム補強用スチールコードをゴム被覆して加硫した状態を示す断面図である。 従来のゴム補強用スチールコード(1+18構造)を示す断面図である。 図4のゴム補強用スチールコードをゴム被覆して加硫した状態を示す断面図である。 本発明の他の実施形態からなるゴム補強用スチールコード(3/24構造)を示す断面図である。 図6のゴム補強用スチールコードにおける未加硫ゴム配合物の最大挿入量とコード径を説明するための断面図である。 図6のゴム補強用スチールコードをゴム被覆して加硫した状態を示す断面図である。 従来のゴム補強用スチールコード(3/24構造)を示す断面図である。 図9のゴム補強用スチールコードをゴム被覆して加硫した状態を示す断面図である。 型付けが施された素線を示す投影図である。 本発明のゴム補強用スチールコードを用いて得られる空気入りラジアルタイヤの一例を示す子午線半断面図である。
符号の説明
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ベルト層
10,30 スチールコード
11,12,13 素線
A 第1層
B 第2層
C 第3層
R 未加硫ゴム配合物

Claims (6)

  1. 少なくとも1本の素線を含む第1層と、該第1層の外周側に位置して複数本の素線を含む第2層と、該第2層の外周側に位置して複数本の素線を含む第3層とを同時に撚り合わせてなる3層構造のスチールコードにおいて、前記第1層と前記第2層との間に未加硫ゴム配合物を挿入すると共に、少なくとも前記第3層の素線に型付けを施し、全ての素線を最密状態に配置したときに形成されるコード輪郭の頂点でのコード径及び非頂点でのコード径に対して、前記第3層の前記頂点に位置する素線の型付率を90〜105%とし、前記第3層の前記非頂点に位置する素線の型付率を95〜110%としたことを特徴とするゴム補強用スチールコード。
  2. 前記未加硫ゴム配合物の最大挿入量を、全ての素線を最密状態に配置したときに前記第2層の素線に外接する多角形の内側に形成される空隙量以下にしたことを特徴とする請求項1に記載のゴム補強用スチールコード。
  3. 前記第1層の素線本数を1本とし、前記第2層の素線本数を6本とし、前記第3層の素線本数を12本としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のゴム補強用スチールコード。
  4. 前記第1層の素線本数を3本とし、前記第2層の素線本数を9本とし、前記第3層の素線本数を15本としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のゴム補強用スチールコード。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のゴム補強用スチールコードをカーカス層に用いたグリーンタイヤを成形し、該グリーンタイヤを加硫することを特徴とする空気入りラジアルタイヤの製造方法。
  6. 前記カーカス層の成形初期から加硫後までの周長増加率をタイヤ幅方向中央位置で70%以上にしたことを特徴とする請求項5に記載の空気入りラジアルタイヤの製造方法。
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