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JP4766546B2 - 超音波診断装置 - Google Patents

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JP4766546B2
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Description

本発明は超音波診断装置に関し、被検体を構成する組織の性状特性、特に、弾性率を計測する超音波診断装置に関する。
超音波診断装置は、超音波を被検体に照射し、そのエコー信号に含まれる情報を解析することにより、被検体を非侵襲的に検査する。従来から広く用いられている超音波診断装置は、エコー信号の強度を対応する画素の輝度に変換することにより、被検体の構造を断層画像として得ている。これにより、被検体の内部の構造を知ることができる。また、エコー信号のドップラーシフトを検出し、被検体の運動情報、たとえば、血流情報を画像表示する超音波診断装置も用いられてきた。
これに対し、近年、エコー信号の主に位相を解析することによって、被検体の組織の動きを精密に測定し、組織の歪みや弾性率、粘性率などの物理的(性状)特性を求めることが試みられている。
特許文献1は、エコー信号の検波出力信号の振幅および位相を用い、被検体の瞬間的な位置を決定することによって、被検体組織の追跡を高精度に行い、拍動している心臓組織に生じている微小振動を捕らえる方法を開示している。この方法によれば、被検体に対して同じ方向にΔTの間隔をおいて超音波パルスを複数回送信し、被検体において反射した超音波をそれぞれ受信する。図10に示すように受信したエコー信号をy(t)、y(t+ΔT)、y(t+2ΔT)とする。ある深度x1から得られるエコー信号の受信時刻t1は、パルス送信時刻をt=0とすると、t1=x1/(C/2)となる。ただし、Cは音速である。このとき、y(t1)とy(t1+ΔT)の間の位相偏移をΔθ、t1付近での超音波の中心周波数をfとすると、この期間ΔTにおけるx1の移動量Δxは、以下の式(1)で表される。
Δx=−C・Δθ/4πf (1)
移動量Δxをx1に加算することで、以下の式(2)に示すように、ΔT秒後のx1の位置x1’を求めることができ、この計算を繰り返すことにより、被検体の同一部位x1を追跡していくことができる。この方法は位相差トラッキング法と呼ばれている。
x1’=x1+Δx (2)
特許文献2は、特許文献1の方法をさらに発展させ、被検体組織、特に動脈壁の弾性率を求める方法を開示している。この方法によれば、まず、図11に示すように、探触子101から血管壁16へ向けて超音波を送信し、血管壁16上に設定した測定点AおよびBからのエコー信号を特許文献1の方法により解析することにより、測定部位AおよびBの動きを追跡する。図12は、測定点AおよびBの位置を示す追跡波形TAおよびTBを示している。また、心電波形ECGも合わせて示している。
図12に示すように、追跡波形TAおよびTBは心電波形ECGに一致した周期性を有している。これは、心臓の心拍周期に一致して、動脈が拡張および収縮することを示している。具体的には、心電波形ECG中にR波と呼ばれる大きなピークが見られる際、心臓の収縮が開始し、心臓の収縮によって、動脈中に血液が押し出される。この際の血圧変化によって急激に血管が拡張する。したがって、心電波形ECGにR波が現れた後、追跡波形TAおよびTBも急激に立ち上がり、動脈が急激に拡張する。その後、心臓はゆっくり拡張するので、追跡波形TAおよびTBも徐々に立ち下がり、動脈血管がゆっくり収縮する。このような動きを動脈は繰り返している。
追跡波形TAおよびTBの差は測定点AB間の厚さ変化波形Wとなる。厚さ変化波形WはAB間の歪み波形とみなすこともできる。最大厚さ変化量ΔWは、厚さ変化波形Wの最大値Wmaxと最小値Wminとの差から求めることができる。
ΔW=Wmax−Wmin (3)
測定点AB間の初期化時の基準厚さをWsとすると、測定点AB間の最大歪み量εは以下のようになる。
ε=ΔW/Ws (4)
また、血圧計などを用いて、このときの被検体の最高血圧Pmaxおよび最低血圧Pminを測定する。血圧差ΔPは以下の式で表される。
ΔP=Pmax−Pmin (5)
最大歪み量εは、血圧差ΔPにより発生したものと考えられる。弾性率Erは応力を歪みで除した値として定義されるので、測定点AB間の弾性率Erは以下の式で表される。
Er=ΔP/ε=ΔP・Ws/ΔW=ΔP・Ws/(Wmax−Wmin) (6)
非特許文献1は、血管が不均一な厚さをもつ管とした場合において、各部の弾性率を最大歪み量εおよび血圧差ΔPを用いて算出する方法を開示している。
これらの演算を断層画像上の複数点に対して行うことにより、弾性率Erの分布画像が得られる。図11に示すように、血管壁16中に粥腫11が生じている場合、粥腫とその周りの血管壁組織とでは弾性率が異なる。したがって、弾性率の分布画像が得られれば粥腫の生成やその位置を診断することが可能となる。
特開平10−5226号公報 特開2000−229078号公報 長谷川他著「不均一な壁厚を有する管の局所壁弾性率の計測法」、J Med Ultrasonics Vol.28 No.1(2001)
しかしながら、従来技術による弾性率の測定方法では、厚さ変化波形Wの最大値Wmaxと最小値Wminとの差を用いて弾性率を測定するため、ノイズ耐性が低いという問題がある。たとえば、図13に示す厚さ変化波形Wが得られた場合、時刻t1およびt2のときの値をそれぞれ最大値Wmaxおよび最小値Wminとして弾性率を求める。しかし、図に示すように、時刻t2における厚さ変化波形Wの値はノイズが混入しており、正しい値ではない。
また、上述したようにノイズの影響により誤った値の弾性率が求められた場合でもその値が不適切な値であるかどうかを他の情報から判断することは難しい。たとえば、図11に示すように、血管壁16中に粥腫11が生じている場合でも超音波による断層画像上では粥腫11が判別できないことがある。したがって、血管壁16の正常な部分の弾性率がノイズの影響によって粥腫11の弾性率と同程度に算出された場合、誤って粥腫であると判断する可能性もある。
本発明は、このような従来技術の問題を解決し、ノイズの影響を低減し、高い信頼性および精度で性状特性を計測することが可能な超音波診断装置を提供することを目的とする。
本発明の超音波診断装置は、応力によって周期的に変形する被検体へ超音波を送信するために、探触子を駆動する駆動信号を生成する送信部と、前記超音波が前記被検体において反射することにより得られるエコーを前記探触子により受信し、受信エコー信号を生成する受信部と、前記受信エコー信号に基づいて前記被検体中の任意の2つの測定部位間の距離変化を示す厚さ変化波形を算出する演算部と、基準波形を生成する基準波形発生部と、前記基準波形と前記厚さ変化波形とを比較することにより、最大厚さ変化量と前記厚さ変化波形および前記基準波形の一致する度合いを示す指標とを算出する厚さ変化量推定部と、前記指標に基づいて、前記最大厚さ変化量の信頼性を判定する信頼性判定部と、を備える。
ある好ましい実施形態において、前記厚さ変化量推定部は、前記厚さ変化波形および前記基準波形の一方と、係数を乗じた他方との整合残差が最小となるように、前記係数および前記係数を用いた場合の整合残差を算出し、前記係数および前記基準波形の振幅から前記厚さ変化波形の最大厚さ変化量を算出し、前記整合残差を前記指標として出力する。
ある好ましい実施形態において、前記基準波形発生部は、前記基準波形のデータを記憶した記憶部を含む。
ある好ましい実施形態において、前記基準波形は、あらかじめ複数の被検体から取得した厚さ変化波形を平均したものである。
ある好ましい実施形態において、超音波診断装置は、前記被検体の変形の周期に基づいて、前記厚さ変化波形の周期を調整する周期調整部をさらに備え、前記厚さ変化量推定部は、周期が調整された厚さ変化波形と前記基準波形とに基づいて前記厚さ変化波形の最大厚さ変化量を算出する。
ある好ましい実施形態において、超音波診断装置は、前記周期が調整された厚さ変化波形の複数周期における平均を求める平均化部をさらに備え、平均化された厚さ変化波形に基づいて、前記厚さ変化量推定部が前記係数、整合残差および最大厚さ変化量を算出する。
ある好ましい実施形態において、前記平均化部は、前記平均を用いて前記厚さ変化波形の分散を求め、前記信頼性判定部は、前記分散および前記整合残差に基づいて、前記最大厚さ変化量の信頼性を判定する。
ある好ましい実施形態において、前記信頼性判定部は、前記分散、前記係数および前記整合残差に基づいて、前記最大厚さ変化量の信頼性を判定する。
本発明の超音波診断装置は、応力によって周期的に変形する被検体へ超音波を送信するために、探触子を駆動する駆動信号を生成する送信部と、前記超音波が前記被検体において反射することにより得られるエコーを前記探触子により受信し、受信エコー信号を生成する受信部と、前記受信エコー信号に基づいて前記被検体中の任意の2つの測定部位間の距離変化を示す厚さ変化波形を算出する演算部と、前記被検体の変形の周期に基づいて、前記厚さ変化波形の周期を調整する周期調整部と、前記周期が調整された厚さ変化波形の複数周期における平均および分散を求める平均化部と、基準波形を生成する基準波形発生部と、前記基準波形と前記平均化された厚さ変化波形とを比較することにより、最大厚さ変化量を算出する厚さ変化量推定部と、前記分散に基づいて、前記最大厚さ変化量の信頼性を判定する信頼性判定部とを備える。
ある好ましい実施形態において、前記厚さ変化量推定部は、前記平均化された厚さ変化波形および前記基準波形の一方と、係数を乗じた他方との整合残差が最小となるように、前記係数を算出し、前記係数および前記基準波形の振幅から前記厚さ変化波形の最大厚さ変化量を算出する。
ある好ましい実施形態において、前記信頼性判定部は、前記分散および前記係数に基づいて、前記最大厚さ変化量の信頼性を判定する。
ある好ましい実施形態において、超音波診断装置は、前記被検体の変形周期において生じる前記応力の応力差の情報を受け取って、前記最大厚さ変化量から弾性率を求める弾性率算出部と、前記信頼性判定部から得られる信頼性の判定結果に基づき、前記弾性率を表示する表示部とをさらに備える。
本発明の超音波診断装置の制御方法は、超音波診断装置の制御部による超音波診断装置の制御方法であって、探触子を駆動して超音波を送信するステップ(A)と、応力によって周期的に変形する被検体において前記超音波が反射することにより得られるエコーを前記探触子により受信するステップ(B)と、前記受信エコー信号に基づいて前記被検体中の任意の2つの測定部位間の距離変化を示す厚さ変化波形を算出するステップ(C)と、基準波形を生成するステップ(D)と、前記基準波形と前記厚さ変化波形とを比較することにより、最大厚さ変化量と前記厚さ変化波形および前記基準波形の一致する度合いを示す指標とを算出するステップ(E)と、前記指標に基づいて、前記最大厚さ変化量の信頼性を判定するステップ(F)とを包含する。
ある好ましい実施形態において、前記ステップ(E)は、前記厚さ変化波形および前記基準波形の一方と、係数を乗じた他方との整合残差が最小となるように、前記係数および前記係数を用いた場合の整合残差を算出し、前記係数および前記基準波形の振幅から前記厚さ変化波形の最大厚さ変化量を算出し、前記整合残差を前記指標として出力する。
ある好ましい実施形態において、前記基準波形は、あらかじめ複数の被検体から取得した厚さ変化波形を平均したものである。
ある好ましい実施形態において、制御方法は、前記被検体の変形の周期に基づいて、前記厚さ変化波形の周期を調整するステップ(G)をさらに包含し、前記ステップ(C)は、周期が調整された厚さ変化波形と前記基準波形とに基づいて前記厚さ変化波形の最大厚さ変化量を算出する。
ある好ましい実施形態において、制御方法は、前記周期が調整された厚さ変化波形の複数周期における平均を求めるステップ(H)をさらに包含し、前記ステップ(F)は、平均化された厚さ変化波形に基づいて、前記厚さ変化量推定部が前記係数、整合残差および最大厚さ変化量を算出する。
ある好ましい実施形態において、前記ステップ(H)は、前記平均を用いて前記厚さ変化波形の分散をさらに求め、前記ステップ(F)は、前記分散および前記整合残差に基づいて、前記最大厚さ変化量の信頼性を判定する。
ある好ましい実施形態において、前記ステップ(F)は、前記分散、前記係数および前記整合残差に基づいて、前記最大厚さ変化量の信頼性を判定する。
本発明の超音波診断装置の制御方法は、超音波診断装置の制御部による超音波診断装置の制御方法であって、探触子を駆動して超音波を送信するステップと、応力によって周期的に変形する被検体において前記超音波が反射することにより得られるエコーを前記探触子により受信するステップと、前記受信エコー信号に基づいて前記被検体中の任意の2つの測定部位間の距離変化を示す厚さ変化波形を算出するステップと、前記被検体の変形の周期に基づいて、前記厚さ変化波形の周期を調整するステップと、前記周期が調整された厚さ変化波形の複数周期における平均および分散を求めるステップと、基準波形を生成するステップと、前記基準波形と前記平均化された厚さ変化波形とを比較することにより、最大厚さ変化量を算出するステップと、前記分散に基づいて、前記最大厚さ変化量の信頼性を判定するステップとを包含する。
ある好ましい実施形態において、前記最大厚さ変化量を算出するステップは、前記平均化された厚さ変化波形および前記基準波形の一方と、係数を乗じた他方との整合残差が最小となるように、前記係数を算出し、前記係数および前記基準波形の振幅から前記厚さ変化波形の最大厚さ変化量を算出する。
ある好ましい実施形態において、前記判定ステップは、前記分散および前記係数に基づいて前記最大厚さ変化量の信頼性を判定する。
ある好ましい実施形態において、制御方法は、前記被検体の変形周期において生じる前記応力の応力差の情報を受け取って、前記最大厚さ変化量から弾性率を求めるステップと、前記信頼性の判定結果に基づき、前記弾性率を表示するステップとをさらに包含する。
本発明によれば、基準波形および厚さ変化波形を比較することにより、最大厚さ変化量を推定する。波形を比較することにより厚さ変化波形に突発的なノイズなどが重畳しても、より正確な最大厚さ変化量および弾性率を求めることが可能となる。また、基準波形と厚さ変化波形との一致の度合いを示す指標から求めた弾性率の信頼性を判定するため、信頼性の高い弾性率を求めることができる。したがって、本発明の超音波診断装置によれば、高い信頼性および精度で弾性率を測定することが可能となる。
(第1の実施形態)
以下、本発明による超音波診断装置の第1の実施形態を説明する。図1は、超音波診断装置201の構成を示すブロック図である。超音波診断装置201は、送信部102、受信部103、演算部151、基準波形発生部117、厚さ変化量推定部118および信頼性判定部171を備えている。また、これら超音波診断装置201の各構成要素を制御するために、超音波診断装置201は制御部100を備えている。
送信部102は、制御部100の指令に基づいて、探触子101を所定のタイミングで駆動する駆動信号を生成する。探触子101は駆動信号に基づいて、超音波を送信する。送信された超音波は、応力によって周期的に変形している被検体へ到達し、被検体の内部において反射する。本実施形態では、被検体は動脈血管の血管壁を含み、超音波診断装置201は血管壁の弾性率を求める。動脈血管には心周期に一致した周期で血液が流れるため、血液から受ける応力によって血管壁は周期的に変形する。
受信部103は、被検体から反射するエコーを探触子101によって受信する。具体的には、エコーを探触子101が電気信号に変換し、受信部103は、電気信号を増幅して、受信エコー信号を生成する。また、受信エコー信号をデジタル信号に変換する。
送信部102および受信部103は、好ましくは、遅延時間制御部を含んでおり、駆動信号や受信エコー信号の遅延時間を制御することにより、被検体を走査するように超音波を送信し、所定の位置および方向からの超音波のみを検出する。また、探触子101は複数の超音波振動子が配列されたアレイ振動子を含むことが好ましい。
演算部151は、受信エコー信号を解析することにより、被検体の複数の測定部位の動きを追跡する。そして、被検体中の任意の2つの測定部位間の距離変化である厚さ変化波形を生成する。このために、演算部151は移動波形算出部115と厚さ変化波形算出部116とを含む。移動波形算出部115は、受信エコー信号を受け取って、被検体中に設定した複数の測定部位の位置変化である移動波形を式(1)および(2)にしたがって算出する。厚さ変化波形算出部116は、複数の測定部位から選ばれる2つの間の距離変化を示す厚さ変化波形を2つの測定部位の移動波形の差を求めることによって算出する。
測定部位は、送信する超音波の周波数などによって定まる解像度に応じて、1つの超音波ビーム上に複数設定することができる。したがって、超音波ビームを走査させることによって、2次元に配列された測定部位の各移動波形を取得することができる。
基準波形発生部117は、基準波形を生成する。この基準波形は、厚さ変化波形算出部116において算出する厚さ変化波形の基準となるものである。本実施形態では、基準波形はあらかじめ計測などによって求められており、基準波形のデータが基準波形発生部117に設けられた半導体メモリなどの記憶部に記憶されている。
厚さ変化量推定部118は、以下において詳細に説明するように、厚さ変化波形算出部116から得られる厚さ変化波形と基準波形発生部117から得られる基準波形とを比較することによって、厚さ変化波形の最大厚さ変化量を算出し、またこれら2つの波形がどの程度一致しているかを示す指標を算出する。より具体的には、厚さ変化量推定部118は、厚さ変化波形および基準波形の一方と、係数を乗じた他方との整合残差が最小となるように係数およびその係数を用いた場合の整合残差とを算出する。そして、係数および基準波形の振幅から厚さ変化波形の最大厚さ変化量を算出する。この点で、厚さ変化波形の最大値と最小値とから最大厚さ変化量を求める従来技術と本発明とは大きく異なっている。
信頼性判定部171は、厚さ変化量推定部118によって求められた整合残差を受け取り、整合残差の値に基づいて、最大厚さ変化量または弾性率の信頼性を判定する。
超音波診断装置201は、好ましくは、求めた最大厚さ変化量から弾性率を算出する弾性率算出部120をさらに備える。弾性率算出部120は、血圧計119など被検体に加えられた応力に関する情報を受け取る。たとえば、血圧計から、最高血圧と最低血圧との血圧差ΔPを受け取る。そして、式(6)にしたがって、血圧差ΔPと最大厚さ変化量ΔWとから弾性率Erを求める。ここで基準厚さWsは、厚さ変化波形を求めた2つの測定部位間の距離(たとえば400μm)であり、厚さ変化波形算出部116で選択した2つの測定部位の位置に応じて、あらかじめ設定される。このようにして、被検体の弾性率を求めることができる。
求めた弾性率は被検体の断層画像とともに表示することが好ましい。これにより、測定部位の位置を分りやすく示すことができるからである。このために、超音波診断装置201は、断層画像生成部104と、画像合成部105と、画像表示部106とをさらに備えていることが好ましい。断層画像生成部104は、フィルタおよび振幅検出器を含み、受信部103から受け取った受信エコー信号の振幅を主として解析し、被検体の内部の構造を画像化した断層画像の画像信号を生成する。
画像合成部105は、画像信号および弾性率算出部120から得られた弾性率のデータを受け取って、求めた弾性率が断層画像上の適切な位置にマッピングされるように、画像信号と弾性率のデータとを合成する。このとき、信頼性判定部171から弾性率を算出するために用いた最大厚さ変化量の信頼性に関する判定結果を受け取り、判定結果に基づき、弾性率を表示する。たとえば、信頼性が低いと判定された最大厚さ変化量に基づいて算出された弾性率を表示しないようにする。これにより、画像表示部106には、信頼性の高い弾性率だけが表示されるため、画像表示部106に示された弾性率に基づき、信頼性の高い診断を行うことができる。
次に、本発明の要部である基準波形発生部117、厚さ変化量推定部118および信頼性判定部171の動作をさらに詳しく説明する。図2は、基準波形発生部117の記憶部に記憶されている基準波形M(t)を示している。この波形は、あらかじめ、複数の被検者に対し厚さ変化波形の測定を行い、その一心周期分について平均を求めることによって得られている。基準波形M(t)は、超音波診断装置201によって測定する対象に応じてあらかじめ用意される。本実施形態では、動脈血管の血管壁の弾性率を求めるため、基準波形M(t)にも複数の被検者から得られた動脈血管の血管壁の基準波形を用いる。
基準波形M(t)の振幅であるΔWは、基準値、たとえば1μmとなるよう正規化されている。複数の被検者から得られたデータを平均化するため、実測したデータであってもノイズの影響等は低減されている。
本発明では、基準波形と測定値とを用いて最大厚さ変化量および弾性率を求めるため、適切な基準波形を用意することが重要である。測定する被検体の部位によって厚さ変化波形の時間方向の変化の様子が異なる場合には、部位に応じた基準波形を用意することが好ましい。具体的には、動脈血管の血管壁の弾性率を測定する場合には、血管壁の内膜、中膜および外膜に対してそれぞれ基準波形のデータを用意してもよい。複数の基準波形のデータを基準波形発生部117において記憶しておき、測定部位に合わせて基準波形のデータを切り換えることによって、より精密な厚さ変化量の推定が可能となる。
さらに、健常者用基準波形、糖尿病患者用基準波形、動脈硬化患者用基準波形等、被検者の状態ごとに複数の基準波形のデータを基準波形発生部117の記憶部に記憶しておき、操作者の指示により基準波形を選択することも可能である。これにより、より精密な厚さ変化量の推定が可能となる。
図3は、厚さ変化波形算出部116から得られた厚さ変化波形y(t)を示している。この厚さ変化波形は被検体を実際に計測することによって得られた波形の一心周期分である。tはサンプリング時刻を表しており、サンプリング点数をN個とすると、tはt=0、1、・・・N−1で表される整数である。
厚さ変化量推定部118は、基準波形M(t)および厚さ変化波形y(t)を受け取り、厚さ変化波形y(t)の振幅を何倍すると、基準波形M(t)に最も類似するかを最小2乗法により算出する。y(t)に乗じる係数をkとしたとき、M(t)とk・y(t)との差の2乗をRとすると、Rは式(7)で表される。
Figure 0004766546
係数kを変数として式(7)をkで偏微分し、偏微分した式が0となるとき、2乗差Rは最小となる。
Figure 0004766546
式(8)をkについて解くと、式(9)が得られる。
Figure 0004766546
式(9)により得られる係数kの値は、測定した厚さ変化波形y(t)をk倍すると、振幅1μmの基準波形M(t)との差の2乗が最小となり、2つの波形がもっとも一致することを意味している。したがって、測定した厚さ変化波形y(t)の振幅Aは、以下の式(10)により求められる。
A=1/k (μm) (10)
厚さ変化量推定部118は、さらに式(9)で求めたkの値を式(7)へ代入し、Rを求める。kは2乗差Rが最小となるように定められているので、このときのRをRminとする。つまり以下の式(11)によってRminを求める。
Figure 0004766546
Rminは、基準波形M(t)と係数kを乗じた厚さ変化波形y(t)との整合残差を示している。
なお、上述の演算と同様に、基準波形M(t)の振幅を何倍すれば実際の厚さ変化波形y(t)に近づくかを算出してもよい。この場合、基準波形M(t)に乗ずる係数をaとし、残差をR’とすれば、以下の式(12)で示される。
Figure 0004766546
R’をaで偏微分した値を0と置き(式(13))、係数aについて解くと式(14)が得られる。
Figure 0004766546
Figure 0004766546
この場合には、係数aは、振幅1μmの基準波形をa倍すると、実測の厚さ変化波形y(t)との差の2乗が最小となり、2つの波形がもっとも一致することを意味している。したがって厚さ変化波形y(t)の振幅A’は式(15)により求められる。
A’=a (μm) (15)
また、整合残差R’minは以下の式(16)によって求められる。
Figure 0004766546
このように、厚さ変化量推定部118は、基準波形M(t)および厚さ変化波形y(t)を受け取り、式(9)または式(13)を用いて、基準波形M(t)と厚さ変化波形y(t)の整合誤差が最小となる係数kまたは係数aを算出する。算出した係数kまたは係数aから、厚さ変化波形の振幅である最大厚さ変化量をさらに算出する。また、式(11)または式(16)を用いて、整合残差RminまたはR’minを算出し、信頼性判定部171へ出力する。
図4は、弾性率が異なる血管壁から得られる厚さ変化波形y0(t)およびy1(t)の一心周期分を模式的に示している。図4に示すように、弾性率が異なることによって、振幅が相違しているが、2つの厚さ変化波形の時間軸方向の変化は一致している。これは被検体が受ける応力変化である血圧の変化、あるいは、心臓の鼓動の様子は、理想的には、血管の硬さによらずほぼ一定であることを意味している。
図4に示すように、従来の方法によれば、厚さ変化波形の最大厚さ変化量を求める場合、厚さ変化波形の最大値Wmaxおよび最小値Wminを求める必要があった。これに対し、本発明では、厚さ変化波形と基準波形との整合性を解析することによって最大厚さ変化量を推定する。上述したように、弾性率の違いによって厚さ変化波形振幅のみが異なると仮定した場合において、一心周期分の厚さ変化波形から最大厚さ変化量を推定することを意味している。
図4の厚さ変化波形y0(t)において示しているように、厚さ変化波形の最大値Wmaxおよび最小値Wminは、厚さ変化波形y0(t)のそれぞれ一点で定まるものである。しかし、厚さ変化波形の最大値Wmaxおよび最小値Wminの間の傾斜部分a1、a2およびa3の傾きは、最大値Wmaxおよび最小値Wminに応じて変化する。つまり、傾斜部分a1、a2およびa3の傾きは、最大値Wmaxおよび最小値Wminに関する情報を含んでいる。このため、厚さ変化波形にノイズが重畳することによって、最大値Wmaxや最小値Wminが正しく得られない場合であっても、厚さ変化波形の形状が著しく変形するほどにノイズが重畳しない限り、傾斜部分a1、a2およびa3を含む厚さ変化波形から最大厚さ変化量を推定することが可能となる。したがって、本発明によれば、突発的に混入するようなスパイク状ノイズなどのノイズの影響を受けにくく、高い精度で最大厚さ変化量あるいは弾性率を求めることが可能となる。
なお、上述の説明から明らかなように傾斜部分a1、a2およびa3にそれぞれ最大値Wmaxや最小値Wminの情報が含まれているため、厚さ変化波形の一心周期の一部を用いても、従来よりもノイズの影響が低減された最大厚さ変化量を推定することができる。ただし、選択する区間が長いほど推定する最大厚さ変化量の精度が高まるため、厚さ変化波形の一心周期全体を用いて基準波形と比較し、最大厚さ変化量を求めることが最も好ましい。
なお、上述の説明から明らかなように、傾斜部分a1、a2およびa3にそれぞれ最大値Wmaxや最小値Wminの情報が含まれているため、厚さ変化波形の一心周期の一部を用いても、従来よりもノイズの影響が低減された最大厚さ変化量を推定することができる。ただし、選択する区間が長いほど推定する最大厚さ変化量の精度が高まるため、厚さ変化波形の一心周期全体を用いて基準波形と比較し、最大厚さ変化量を求めることが最も好ましい。このことは、式(14)を用いて以下のように説明できる。厚さ変化波形y(t)を厚さ変化s(t)とノイズn(t)の和で表すと式(14)は以下のように表すことができる。
Figure 0004766546
ノイズn(t)がスパイクノイズやランダムノイズである場合、加算区間が長いほど式(14’)の分子の第2項は第1項に比べて小さくなる。したがって、厚さ変化s(t)が基準波形と相似(s(t)=a’・M(t))であり、加算区間が十分に長く、かつ式(14’)の第2項が無視できる場合には、式(14’)は以下の式(14’’)と表せる。
Figure 0004766546
したがって、真の係数a’を推定できることになる。逆にこのことから、厚さ変化波形の全体を用いて基準波形と比較することによって、ノイズの影響が低減された厚さ変化量を推定できることが分かる。
信頼性判定部171は、整合残差RminまたはR’minを受け取って、整合残差RminまたはR’minの値から、厚さ変化量推定部118が算出した最大厚さ変化量または弾性率算出部120が算出した弾性率が信頼性の高いものであるかどうかを判定する。図5は、整合残差Rminを受け取った場合における信頼性判定部171の動作をフローチャートで示している。図5に示すように、信頼性判定部171は、整合残差Rminを受け取り、信頼性判定動作を開始する(ステップ301)。まず、信頼性判定部171は整合残差Rminと所定の閾値TH2とを比較する(ステップ302)。受け取った整合残差Rminが所定の閾値TH2よりも小さくない場合、基準波形M(t)と係数kを乗じた厚さ変化波形y(t)とが一致していないことを意味している。したがって、このとき求められた最大厚さ変化量および最大厚さ変化量を用いて計算された弾性率は正しい値でない可能性が高く、信頼性は低いと判定する(ステップ305)。
受け取った整合残差Rminが所定の閾値TH2よりも小さい場合、基準波形M(t)と係数kを乗じた厚さ変化波形y(t)とがよく一致していることを意味する。ただし、この場合、係数kが負の値をとることによって整合残差Rminが所定の閾値TH2よりも小さくなっていることが考えられる。つまり、基準波形M(t)と厚さ変化波形y(t)との振幅が互いに反転している。信頼性判定部171はこのような可能性を排除するため、好ましくは、厚さ変化量推定部118から係数kを受け取り、係数kの符号を判断する(ステップ303)。係数kが正でない場合には、上述したように基準波形M(t)と厚さ変化波形y(t)とが互いに反転しているので、このとき求められた最大厚さ変化量および最大厚さ変化量を用いて計算された弾性率は正しい値でない可能性が高く、信頼性は低いと判定する(ステップ306)。係数kが正である場合には、最大厚さ変化量および弾性率は正しい値であり、信頼性は高いと判定する(ステップ304)。
信頼性判定部171はこれらの判定結果を画像合成部105へ出力する。画像合成部105は判定結果に基づき、上述したように弾性率を表示する。弾性率を二次元で算出する場合には、各位置において、厚さ変化波形y(t)を算出し、上述した厚さ変化推定部118における演算および信頼性判定部171における判定を行うことによって、二次元で表示される各位置における弾性率について信頼性の判定を行う。
弾性率の表示方法は、任意に選択できる。たとえば、弾性率をその値に応じた諧調あるいは色調で表示し、信頼性が低いと判定された弾性率は、これらの諧調や色調とは異なる目立つ色調で表示してもよい。あるいは、信頼性が低いと判定された弾性率の領域がある場合、周囲の信頼性が高いと判定された弾性率の値を用いて補間を行い、補間によって求めた値を用いてその領域の弾性率を示してもよい。また、信頼性が低いと判定された弾性率の領域が全体に対して所定の割合以上含まれる場合には、その心周期の弾性率を示す画像全体を表示しないようにしてもよい。
超音波診断装置201によれば、基準波形と厚さ変化波形と比較することにより最大厚さ変化量を推定する。このため、厚さ変化波形に突発的なノイズなどが重畳しても、より正確な最大厚さ変化量および弾性率を求めることが可能となる。また、求めた弾性率の信頼性を基準波形M(t)と厚さ変化波形y(t)との整合残差によって判断するため、測定が正しく行われているかどうかを操作者が判断することができる。したがって、超音波診断装置201を用いて高い信頼性および精度で弾性率を測定することが可能となる。特に、断層画像上では判別し難い病変部位であっても、弾性率が周囲と異なっていれば、高い確度で病変部位を特定することができる。
(第2の実施形態)
以下、本発明による超音波診断装置の第2の実施形態を説明する。図6は、超音波診断装置202の構成を示すブロック図である。超音波診断装置202は、周期調整部140および平均化部170をさらに備えている点で第1の実施形態の超音波診断装置201とは異なっている。超音波診断装置202の送信部102、受信103、演算部151や厚さ変化量推定部118は、第1の実施形態の超音波診断装置201の対応する構成要素と同様に機能する。
周期調整部140は、厚さ変化波形算出部116で算出する厚さ変化波形の周期が基準波形発生部117で発生させた基準波形の周期と一致するよう、厚さ変化波形の周期を調節する。このために、超音波診断装置202は、被検体の応力変化の周期に関する情報を外部の周期検出部141から受け取る。被検体が動脈血管の血管壁である場合には、被検体の血圧変化、心電変化、心音変化などを用いることができる。たとえば、心臓の心拍周期を検出する心電計を周期検出部141として好適に用いることができる。
図7(a)、(b)および(c)は、周期検出部141から得られる心電波形、厚さ変化波形算出部116から得られる厚さ変化波形y(t)および基準波形発生部117から得られる基準波形M(t)を示している。図7(a)に示すように、心電波形にはR波が観測される。図7(a)および(b)から明らかなように、心電波形の周期と厚さ変化波形y(t)の周期Tyとは一致している。これは、動脈血管の血管壁の厚さ変化が心臓の鼓動によって生じる血圧変化によって引き起こされているからである。一方、図7(b)および(c)から明らかなように、基準波形M(t)の周期Tmは、厚さ変化波形y(t)の周期Tyとは一致していない。
周期調整部140は、基準波形M(t)および厚さ変化波形y(t)の周期の不一致を解消するため、周期検出部141から受け取る被検体の応力変化の周期に関する情報に基づき、厚さ変化波形y(t)の周期を調節する。本実施形態では、周期調整部140は心電波形のR波の周期を検出し、厚さ変化波形算出部116が算出した厚さ変化波形y(t)を時間方向に伸縮させる。時間方向に伸縮し、周期が調整された厚さ変化波形y’(t)は以下の式で示される。
y’(t)=M(t・Tm/Ty) (17)
ここでt×Tm/Tyが整数にならない場合には、tとy(t)との関係を用いて補間値を生成する。y(t)の値を十分細かなサンプリング単位で記憶しておき、最も近傍の値を代用値として用いることも可能である。
平均化部170は、周期が調整された厚さ変化波形y’(t)の複数周期における平均の波形を求める。平均の演算は、種々の方法から選択できる。たとえば、図8(a)に示すように、平均を求める複数の周期を逐次シフトさせる移動平均を用いる場合には、式(18)によって平均化後の厚さ変化波形um(t)を求めることができる。
Figure 0004766546
ここでy’i(t)は、i番目の周期が調整された厚さ変化波形を示し、Lは平均を求める心周期の数を示す。また、式(18)によってm番目の周期の厚さ変化波形が得られることを示している。また、図8(b)に示すように、L個ごとに平均を求める場合には、式(19)によって平均後の厚さ変化波形vm(t)を求めることができる。
Figure 0004766546
平均を行う心周期の数Lは任意に選択できる。また、式(18)および(19)では、単純な加算平均を求めているが、重み付け加算平均を求めてもよい。式(18)にしたがって平均を求める場合、平均化された厚さ変化波形u(t)は、厚さ変化波形y’(t)と同数の周期数を含み、式(19)にしたがって平均を求める場合、平均化された厚さ変化波形v(t)の周期数は、厚さ変化波形y’(t)の1/Lになる。
平均化部170は、さらに平均を求めた期間における各周期での信号の分散σ2を以下の式(20)または式(21)によって求める。
Figure 0004766546
Figure 0004766546
分散σ2は、平均を求めた期間における信号のばらつきの度合いを示す値であり、平均後の厚さ変化波形の周期毎に求められる。この分散σ2は、信頼性判定部171’へ入力される。
平均化部170において求められた平均化された厚さ変化波形u(t)(またはv(t))は、厚さ変化量推定部118へ入力され、y(t)の換わりにu(t)(またはv(t))を用いて第1の実施形態で説明したように最大厚さ変化量および整合残差Rminが算出される。
信頼性判定部171’は、第1の実施形態で説明した整合残差Rminに加え、分散σ2を用いて、最大厚さ変化量および弾性率の信頼性を判定する。図9は、整合残差Rminおよび分散σ2を受け取った場合における信頼性判定部171’の動作をフローチャートで示している。図9に示すように、信頼性判定部171’は、整合残差Rminおよび分散σ2を受け取り、信頼性判定動作を開始する(ステップ311)。まず、分散σ2と所定の閾値TH1とを比較する(ステップ312)。分散σ2が所定の閾値TH1よりも小さくない場合、弾性率を求めた平均化された厚さ変化波形u(t)において、心拍間でデータのばらつきが大きかったことを示している。したがって、得られた弾性率は信頼性が低いと判定する(ステップ316)。
分散σ2が所定の閾値TH1よりも小さい場合には、整合残差Rminと所定の閾値TH2との比較を行う(ステップ313)。整合残差Rminが所定の閾値TH2よりも小さくない場合、基準波形M(t)と係数kを乗じた厚さ変化波形y(t)とが一致していないことを意味している。したがって、このとき求められた最大厚さ変化量および最大厚さ変化量を用いて計算された弾性率は正しい値でない可能性が高く、信頼性は低いと判断する(ステップ317)。
整合残差Rminが所定の閾値TH2よりも小さい場合、基準波形M(t)と係数kを乗じた厚さ変化波形y(t)とがよく一致していることを示している。ただし、第1の実施形態で説明したように、係数kが負の値をとることによって整合残差Rminが所定の閾値TH2よりも小さくなっていることも考えられる。このため、信頼性判定部171は厚さ変化量推定部118から係数kを受け取り、係数kの符号を判断する(ステップ314)。係数kが正でない場合には、上述したように基準波形M(t)と係数kを乗じた厚さ変化波形y(t)とが互いに反転しているので、このとき求められた最大厚さ変化量および最大厚さ変化量を用いて計算された弾性率は正しい値でない可能性が高く、信頼性は低いと判断する(ステップ318)。係数kが正である場合には、最大厚さ変化量および弾性率は正しい値であり、信頼性は高いと判定する(ステップ315)。
信頼性判定部171’はこれらの判定結果を画像合成部105へ出力し、第1の実施形態で説明したように画像合成部105が判定結果に基づき、弾性率を表示する。
超音波診断装置202によれば、基準波形と厚さ変化波形との整合残差に加えて厚さ変化波形の分散に基づいて最大厚さ変化量および弾性率の信頼性を判定する。このため、より正確に最大厚さ変化量および弾性率の信頼性を判定することが可能となる。
なお、本実施形態では、基準波形と厚さ変化波形との整合残差および厚さ変化波形の分散に基づいて最大厚さ変化量および弾性率の信頼性を判定しているが、厚さ変化波形の分散にのみ基づいて最大厚さ変化量および弾性率の信頼性を判定してもよい。厚さ変化波形の分散が所定の閾値以下であるということは、基準波形と一致したばらつきの少ない厚さ変化波形が連続している可能性が高く、基準波形と一致しない不適切な厚さ変化波形が小さいばらつきで連続する可能性は少ないからである。また、この場合には、整合残差は求めなくてもよい。
また、上記各実施形態では、基準波形として、被検体中の任意の2つの測定部位間の距離(厚さ)変化波形を用いているが、被検体中の任意の2つの測定部位間の速度差波形を基準波形として用いても同様の効果が得られる。この場合、あらかじめ複数の被検体から2つの測定部位間の速度差波形を求めてもよいし、血管径波形を時間微分することによって速度差波形を求めてもよい。また、血圧波形を時間微分することによって速度差波形を求めてもよい。
また、上記各実施形態では、弾性率を表示しているが、信頼性判定部の判定結果に基づいて、最大厚さ変化量や歪み量を表示してもよい。
本発明の超音波診断装置は、被検体を構成する組織の厚さ変化量、歪み量、弾性特性などの性状特性を測定するに適している。
本発明による超音波診断装置の第1の実施形態を示すブロック図である。 図1の超音波診断装置の基準波形発生部において生成する基準波形を示している。 図1の超音波診断装置の厚さ変化波形算出部から出力される厚さ変化波形を示している。 厚さ変化波形に含まれる情報を説明する図である。 第1の実施形態の信頼性判定部の動作を説明するフローチャートである。 本発明による超音波診断装置の第2の実施形態を示すブロック図である。 (a)、(b)および(c)は、第2の実施形態において、周期検出部から得られる心電波形、厚さ変化波形算出部から得られる厚さ変化波形および基準波形発生部から得られる基準波形をそれぞれ示している。 (a)および(b)は厚さ変化波形の平均の求め方をそれぞれ示す図である。 第2の実施形態の信頼性判定部の動作を説明するフローチャートである。 超音波エコー信号の位相差から組織の追跡を行う方法を説明する図である。 探触子によって計測される被検体の断面を模式的に示している。 被検体組織の追跡波形から歪み量を求める方法を説明する図である。 厚さ変化波形にノイズが重畳している場合に最大厚さ変化量に誤差が生じることを説明する図である。
符号の説明
12 被検体
100 制御部
101 探触子
102 送信部
103 受信部
104 断層画像生成部
105 画像合成部
106 画像表示部
115 移動波形算出部
116 厚さ変化波形算出部
117 基準波形発生部
118 厚さ変化量推定部
119 血圧計
120 弾性率算出部
140 周期調整部
141 周期検出部
150 演算部
170 平均化部
171、171’ 信頼判定部
201、202 超音波診断装置


Claims (14)

  1. 応力によって周期的に変形する被検体へ超音波を送信するために、探触子を駆動する駆動信号を生成する送信部と、
    前記超音波が前記被検体において反射することにより得られるエコーを前記探触子により受信し、受信エコー信号を生成する受信部と、
    前記受信エコー信号に基づいて前記被検体中の任意の2つの測定部位間の距離変化を示す厚さ変化波形を算出する演算部と、
    基準波形を生成する基準波形発生部と、
    前記厚さ変化波形および前記基準波形の一方と、係数を乗じた他方との整合残差が最小となるように、前記係数および前記係数を用いた場合の整合残差を算出し、前記係数および前記基準波形の振幅から前記厚さ変化波形の最大厚さ変化量を算出し、前記整合残差を指標として出力する厚さ変化量推定部と、
    前記指標に基づいて、前記最大厚さ変化量の信頼性を判定する信頼性判定部と、
    を備えた超音波診断装置。
  2. 前記基準波形は、あらかじめ複数の被検体から取得した厚さ変化波形を平均したものである請求項に記載の超音波診断装置。
  3. 前記被検体の変形の周期に基づいて、前記厚さ変化波形の周期を調整する周期調整部をさらに備え、
    前記厚さ変化量推定部は、周期が調整された厚さ変化波形と前記基準波形とに基づいて前記厚さ変化波形の最大厚さ変化量を算出する請求項に記載の超音波診断装置。
  4. 前記周期が調整された厚さ変化波形の複数周期における平均を求める平均化部をさらに備え、平均化された厚さ変化波形に基づいて、前記厚さ変化量推定部が前記係数、整合残差および最大厚さ変化量を算出する請求項に記載の超音波診断装置。
  5. 前記平均化部は、前記平均を用いて前記厚さ変化波形の分散を求め、
    前記信頼性判定部は、前記分散および前記整合残差に基づいて、前記最大厚さ変化量の信頼性を判定する請求項に記載の超音波診断装置。
  6. 前記信頼性判定部は、前記分散、前記係数および前記整合残差に基づいて、前記最大厚さ変化量の信頼性を判定する請求項に記載の超音波診断装置。
  7. 前記被検体の変形周期において生じる前記応力の応力差の情報を受け取って、前記最大厚さ変化量から弾性率を求める弾性率算出部と、
    前記信頼性判定部から得られる信頼性の判定結果に基づき、前記弾性率を表示する表示部と、
    をさらに備える請求項1からのいずれかに記載の超音波診断装置。
  8. 超音波診断装置の制御部による超音波診断装置の制御方法であって、
    探触子を駆動して超音波を送信するステップ(A)と、
    応力によって周期的に変形する被検体において前記超音波が反射することにより得られるエコーを前記探触子により受信するステップ(B)と、
    前記受信エコー信号に基づいて前記被検体中の任意の2つの測定部位間の距離変化を示す厚さ変化波形を算出するステップ(C)と、
    基準波形を生成するステップ(D)と、
    前記厚さ変化波形および前記基準波形の一方と、係数を乗じた他方との整合残差が最小となるように、前記係数および前記係数を用いた場合の整合残差を算出し、前記係数および前記基準波形の振幅から前記厚さ変化波形の最大厚さ変化量を算出し、前記整合残差を指標として出力するステップ(E)と、
    前記指標に基づいて、前記最大厚さ変化量の信頼性を判定するステップ(F)と、
    を包含する超音波診断装置の制御方法。
  9. 前記基準波形は、あらかじめ複数の被検体から取得した厚さ変化波形を平均したものである請求項に記載の超音波診断装置の制御方法。
  10. 前記被検体の変形の周期に基づいて、前記厚さ変化波形の周期を調整するステップ(G)をさらに包含し、
    前記ステップ(C)は、周期が調整された厚さ変化波形と前記基準波形とに基づいて前記厚さ変化波形の最大厚さ変化量を算出する請求項に記載の超音波診断装置の制御方法。
  11. 前記周期が調整された厚さ変化波形の複数周期における平均を求めるステップ(H)をさらに包含し、
    前記ステップ(F)は、平均化された厚さ変化波形に基づいて、前記厚さ変化量推定部が前記係数、整合残差および最大厚さ変化量を算出する請求項10に記載の超音波診断装置の制御方法。
  12. 前記ステップ(H)は、前記平均を用いて前記厚さ変化波形の分散をさらに求め、
    前記ステップ(F)は、前記分散および前記整合残差に基づいて、前記最大厚さ変化量の信頼性を判定する請求項11に記載の超音波診断装置の制御方法。
  13. 前記ステップ(F)は、前記分散、前記係数および前記整合残差に基づいて、前記最大厚さ変化量の信頼性を判定する請求項12に記載の超音波診断装置の制御方法。
  14. 前記被検体の変形周期において生じる前記応力の応力差の情報を受け取って、前記最大厚さ変化量から弾性率を求めるステップと、
    前記信頼性の判定結果に基づき、前記弾性率を表示するステップと、
    をさらに包含する請求項8から13のいずれかに記載の超音波診断装置の制御方法。
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