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JP4620217B2 - スパークプラグ用絶縁体及びスパークプラグ - Google Patents

スパークプラグ用絶縁体及びスパークプラグ Download PDF

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JP4620217B2
JP4620217B2 JP2000153888A JP2000153888A JP4620217B2 JP 4620217 B2 JP4620217 B2 JP 4620217B2 JP 2000153888 A JP2000153888 A JP 2000153888A JP 2000153888 A JP2000153888 A JP 2000153888A JP 4620217 B2 JP4620217 B2 JP 4620217B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はスパークプラグ用絶縁体及びこれを用いたスパークプラグに関する。
更に詳しくは、高い耐電圧性と高い耐熱衝撃性とを併せ持つスパークプラグ用絶縁体及びこのスパークプラグ用絶縁体を備え、絶縁破壊及び割れ等を生じることのない高い耐久性を有するスパークプラグ、更には、小型化(小径化)した場合にもこの高い耐久性を保持するスパークプラグに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車エンジン等の内燃機関で用いられるスパークプラグは、中心電極と主体金具との間を絶縁するスパークプラグ用絶縁体(以下、単に「絶縁体」ともいう)を備える。この絶縁体は、内燃機関の燃焼室内にて生じる火花放電に起因した燃焼ガス温(約2000〜3000℃)の影響により、500〜700℃程度の熱間に曝される。そのために、絶縁体にあっては室温から上記高温にわたる範囲内にて十分な耐電圧性と耐熱衝撃性とを併せ持つ必要がある。とりわけ、近年では内燃機関の高出力化やエンジンの小型化に伴い吸排気バルブの占有面積の大型化や4バルブ化が検討されており、スパークプラグの小型化(小径化)が要求されている。そのために絶縁体についても肉厚を薄肉化することが要求されると同時に、これまで以上に優れた耐電圧性と耐熱衝撃性とを併せ持つことが必要とされている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、絶縁体は、従来より耐電圧性及び耐熱性に優れるアルミナを主成分としたアルミナ基焼結体により構成されている。そして、絶縁体(アルミナ基焼結体)を形成するにあたり、焼結性を向上させるためにSiO−MgO−CaOの三成分系焼結助剤が添加されるのが普通である。しかし、この三成分系焼結助剤を用いると上記3成分のうちのとりわけSi成分が、焼結後のアルミナ粒子の粒界に低融点ガラスとなって残存する。そのために、絶縁体が700℃程度の熱間に曝されると、この低融点ガラスの軟化により耐電圧性が低下するという問題がある。
【0004】
これに対して、特開昭63−190753号公報では、Si成分を含有させず、酸化ランタン、酸化イットリウム及びマグネシアの少なくとも1種を含有することで耐電圧性を向上させる技術が開示されている。しかし、この技術では高流動性の液相を発生させるSi成分を含有しないため、焼成時にアルミナ粒子が均一に且つスムーズに粒成長し難い。このため、絶縁体を複数個製造した際に得られる絶縁体毎に機械的強度や耐電圧性においてばらつきが生じるという問題がある。この理由としては焼成時にアルミナ粒子が均一に且つスムーズに粒成長し難いがために、液相(粒界相)によるアルミナ粒子同士の強固な結合を伴った粒成長が促進されないためと思われる。但し、一般に粒成長が促され過ぎると耐熱衝撃性が低下することも知られている。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、高い耐電圧性及び高い耐熱衝撃性を併せ持つスパークプラグ用絶縁体を提供することを目的とする。更に、この絶縁体を備え、絶縁破壊及び割れ等を生じない高い耐久性を有するスパークプラグ、更には、小型化した場合にもこの高い耐久性を保持するスパークプラグを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、焼結性を向上させることができるSi成分を含有しつつも、高濃度にAlを含有し、高い耐電圧性及び高い耐熱衝撃性を備える絶縁体を得るべく検討を行った。その結果、Si成分を含有する場合であっても希土類元素成分を含有することで耐電圧性と耐熱衝撃性とが両立される場合があることを見出した。更に、希土類元素成分とSi成分を含有する場合であっても、粒成長が過度に抑制され単に小さなアルミナ粒子からなる絶縁体では耐電圧性と耐熱衝撃性との両立は困難であることが分かった。そして、希土類元素成分及びSi成分を特定の割合で含有し、特有の組織構造を呈することで特に高いレベルで耐電圧性と耐熱衝撃性とを両立できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
本第1発明のスパークプラグ用絶縁体は、構成成分全体を100質量%とした場合に、Al成分の酸化物換算含有割合が95〜99.8質量%であり、且つ希土類元素成分及びSi成分を、希土類元素成分の酸化物換算含有割合(RRE)と、Si成分の酸化物換算含有割合(RSi)との比(RRE/RSi)が0.1〜1.0となるように含有し、更に、切断面1mmあたりに存在する最大長さが10μm以上であり且つアスペクト比が3以上であるアルミナ粒子が10個未満であり、
平均粒径が2〜50μmであることを特徴とする。
【0008】
上記「Al成分」は、主にAlとして絶縁体中に含有される。これにより高い耐電圧性及び耐熱性を備える。95質量%未満であると十分な耐電圧性と耐熱衝撃性の両方を兼ね備える難く、99.8%を超えると焼結が困難となり好ましくない。尚、Al成分の酸化物換算はAlとして行うものとする。
【0009】
上記「希土類元素」(以下、希土類元素すべてを表す元素記号とし「RE成分」を用いる)とは、スカンジウム、イットリウム及びランタノイド15種の合計17種の元素をいう。このRE成分が製造時に含有されていることにより、アルミナの粒成長が過度に生じないように抑制できる。上記「Si成分」は、製造時に含有されていることによりアルミナの焼結性を高め、アルミナ粒子の粒成長を促進できる。尚、RE成分のなかでも、Nd、La、Ce、Y、Pr及びDyのうちの少なくとも1種が含有されることが好ましく、特にNdが含有されることが好ましい。Ndを含有する絶縁体は、高温において(600〜800℃)耐電圧値のばらつきが小さいため好ましい。
【0010】
そして、これらSi成分及びRE成分は、Si成分の酸化物換算含有割合であるRSiと、希土類元素の酸化物換算含有割合であるRREとの比(以下、単に「RRE/RSi」という)が0.1〜1.0であるように含有される。このRRE/RSiが0.1未満となると粒成長を抑制する効果が得られないことがあり、一方、1.0を超えると過度に粒成長が生じることがあるために、耐電圧性及び耐熱衝撃性の少なくとも一方が低下する傾向にある。
【0011】
尚、上記Si成分の酸化物換算はSiOとして行う。また、その含有割合は、構成成分全体を100質量%とした場合の割合として算出する値である。更に、RE成分の酸化物換算は、CeはCeOとして、PrはPr11として行うが、これら以外の元素についてはREとして行う。また、その含有割合は、Si成分と同様な値である。
【0012】
また、Si成分は酸化物換算で0.1〜3質量%含有されることが好ましく、RE成分は酸化物換算で0.01〜1質量%含有されることが好ましい。
つまり、Si成分及びRE成分が同時に含有され、且つ特定の割合で含有されることにより、焼成時にアルミナ粒子の粒成長を適度に促進し、一方でその粒成長を適度に抑制できる。このため、後述するようなアスペクト比の大きなアルミナ粒子がほとんど存在せず、均一なアルミナ粒子による組織構造を呈する絶縁体を得ることができる。更に、RE成分とSi成分とは焼成時にお互いに相俟ってRE−Si系ガラス(希土類ガラス)を形成するものと考えられる。このRE−Siガラスは高融点であるため粒界相の融点を向上させ、絶縁体が700度程度の熱間に曝された場合にも、粒界相の軟化を効果的に抑制できるものと考えられる。従って、絶縁体は高い耐電圧性及び高い耐熱衝撃性を併せ有するものとなる。
【0013】
本発明の絶縁体にはAl成分、Si成分、RE成分の他にも、B及びTiの少なくとも1種が含有されてもよい。これらを含有する場合(構成成分全体を100質量%とする)BはB換算で0〜0.4質量%、TiはTiO換算で0〜0.1質量%の範囲であることが好ましい。これらB及びTiは製造時に配合されていることで焼結助剤として機能でき、焼結性を高める役割を果たすこととなる。
【0014】
更に、上記B及びTi以外にも、Ca、Ba及びSrのうちの少なくとも1種が含有されていてもよい。これらを含有する場合(構成成分全体を100質量%とする)CaはCaO換算で0.1〜2.5質量%、BaはBaO換算で0〜0.2質量%、SrはSrO換算で0〜2.5質量%の範囲であることが好ましい。これらCa、Ba、Srの含有により絶縁体の高温強度を向上させることができる。
【0015】
更に加えて、Mg、Mn及びNiのうちの少なくとも1種が含有されてもよい。これらを含有する場合(構成成分全体を100質量%とする)MgはMgO換算で0〜1質量%、MnはMnO換算で0〜1質量%、NiはNiO換算で0〜1質量%の範囲であることが好ましい。これらMg、Mn、Niは製造時に配合されていることにより焼成において希土類元素成分と共に、アルミナ粒子の過度な粒成長を抑制できる。
【0016】
一方、本発明の組織構造において、上記「アスペクト比」は、アルミナ粒子の最大長さと長辺とが等しくなるように、アルミナ粒子に外接する長方形を描いた場合に、この長方形の長辺の長さを短辺の長さで除した値である。最大長さが10μm以上であり且つアスペクト比が3以上であるアルミナ粒子が、切断面1mmあたりに存在する数は、5個以下であることが好ましい。このようなアルミナ粒子が、切断面1mmあたりに10個以上存在すると、熱衝撃によるクラックの進展が早いために、耐熱衝撃性が低下する傾向にある。
【0017】
また、本第1発明の絶縁体は、切断面1mmあたりに存在する最大長さが80μm以上であるアルミナ粒子が5個以下である組織構造を呈することが好ましい。
最大長さが80μm以上であるアルミナ粒子の数が少ないことにより耐電圧性が低下することなく、高い耐熱衝撃性を有する絶縁体が得られる。
【0018】
更に、切断面1mmあたりに存在する最大長さが50μm以上であるアルミナ粒子が30個以下である組織構造を呈することが好ましい。
最大長さが50μm以上であるアルミナ粒子の数が少ないことにより耐電圧性が低下することなく、高い耐熱衝撃性を有する絶縁体が得られる。
【0019】
また、第発明のように、平均粒径は2〜50μmであり、3〜30μmであることが好ましい。この平均粒径が2μm未満であると焼結が不十分であるために機械的強度が低下する傾向にあり、50μmを超えるとアルミナ粒子の異常粒成長により、絶縁体に絶縁破壊の起点となる粗大な気孔が生じ易くなる傾向にあり好ましくない。
【0020】
尚、本第1〜発明の絶縁体の形状は特に限定されないが、例えば、図1に示すものとすることができる。即ち、外形状は、後方側(図中上側)から順番に、滑らかな凹凸状に成形されたコルゲーション部2aを有し、コルゲーション部2aと絶縁体の中央部に形成されたフランジ部2cとの間は本体部2bにより形成され、次いでフランジ部2cを有し、フランジ部2cよりも前方側には本体部2bよりも細径に成形された第1軸部2eを有し、この第1軸部2eの更に前方側には更に細径の第2軸部2gを有する。また、絶縁体の内形状は、後方側(図中上側)から順番に、後述する端子電極7等を嵌め込むため大径部分と、後述する中心電極3を嵌め込むための細径部分とを備える貫通孔6を有する。
【0021】
また、その大きさは以下のものとすることが好ましい(図1参照)。即ち、全長L1は30〜75mm、第1軸部2eの長さL2は0〜30mm(但し、フランジ部2cとの接続部2dを含まず、第2軸部2gとの接続部2fを含む)、第2軸部2gの長さL3は2〜27mm、本体部2bの外径D1は9〜13mm、フランジ部2cの外径D2は11〜16mm、第1軸部2eの外径D3は5〜11mm、第2軸部2gの基端部外径D4は3〜8mm、第2軸部2gの先端部外径D5(但し、先端面外周縁にR乃至面取りが施される場合は、中心軸を含む断面においてR部ないし面取り部の基端位置における外径)は2.5〜7mm、本体部2bにおける貫通孔6の内径D6は2〜5mm、第2軸部2gにおける貫通孔6の内径D7は1〜3.5mm、第1軸部2eの肉厚t1は0.5〜4.5mm、第2軸部2gの基端部肉厚t2は0.3〜3.5mm、第2軸部2gの先端部肉厚t3(但し、先端面外周縁にR乃至面取りが施される場合は、中心軸を含む断面において、R部乃至面取り部の基端位置における肉厚)は0.2〜3mm、第2軸部2gの平均肉厚tA{=(t2+t3)/2}は0.25〜3.25mm。
【0022】
また、本第1〜発明の絶縁体の製造方法は特に限定されないが、例えば、以下のように製造することができる。即ち、中心粒径が0.1〜2μmのアルミナ粉末(Al純度99.8%以上)と、中心粒径が0.1〜10μmの希土類元素酸化物粉末(希土類酸化物純度99.8%以上)と、中心粒径が0.1〜2μmのシリカ粉末(SiO純度99.8%以上)と、必要であればその他の粉末(酸化ホウ素粉末、酸化チタン粉末、酸化カルシウム粉末、酸化バリウム粉末、酸化ストロンチウム粉末、酸化マグネシウム粉末、酸化ニッケル粉末等)を所定割合で配合し、次いで、親水性結合剤(ポリビニルアルコール、水溶性アクリル樹脂、アラビアゴム、デキストリン等を単独又は混合して用いることができる)と溶媒(水、アルコール等を単独又は混合して用いることができる)とを添加し、混合してスラリーを調合する。尚、上記中心粒径とはレーザー粒度分布計(株式会社日機装社製、形式「マイクロトラックFRA」)により粒度分布を計測し、この粒度分布における50%分布するアルミナ粒子の粒子径である。
【0023】
次いで、得られたスラリーをスプレードライ法等により噴霧乾燥して平均粒径130〜200μm(好ましくは50〜150μm)に造粒する。この造粒物を成形して成形体を得る。得られた成形体を必要に応じて切削、研磨等により所望の形状に加工し、その後、大気雰囲気で1400〜1800℃(より好ましくは1500〜1750℃)、1〜8時間(より好ましくは3〜7時間)焼成して絶縁体得る。
【0024】
上記アルミナ粉末の中心粒径が2μmを超えると十分に緻密化させることが困難であり、得られる絶縁体の耐電圧性が低下する傾向にある。更に、アルミナ以外の成分の配合においては、上記のように必ずしも酸化物として添加する必要はなく、複数の添加目的元素を含有する複合酸化物や、大気下における焼成後に酸化物となる各元素の水酸化物、炭酸塩、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等として配合してもよい。また、これらアルミナを除く各化合物の配合における各化合物の中心粒径は1μm以下とすることが好ましい。更に、溶媒及びバインダーの配合割合は、原料粉末を100質量部とした場合に、溶媒が水である場合は40〜120質量部(更には50〜100質量部)、バインダーは0.1〜5質量部(更には0.5〜3質量部)の各割合とすることができる。
【0025】
上記焼成温度は、1400℃未満では十分に緻密化させることができず、1800℃を超えると焼成中にアルミナ粒子が異常粒成長し易く、得られる絶縁体の耐電圧性及び機械的強度が共に低下する傾向にある。また、焼成時間が1時間未満であると十分に緻密化させることができず、8時間を超えると焼成中にアルミナ粒子が異常粒成長し、耐電圧性が低下する傾向にある。更に、上記焼成温度は上記焼成時間中一定であっても、また、上記範囲内で適宜変化させてもよい。
【0026】
発明のスパークプラグは、軸状の中心電極と、該中心電極の側周面に配置された主体金具と、該主体金具に一端側が連接し、他端側が該中心電極と対向するように配置された接地電極と、該中心電極及び該主体金具との間を絶縁するように配置された第1発明乃至第発明のうちのいずれかに記載のスパークプラグ用絶縁体とを備えることを特徴とする。
【0027】
スパークプラグの構成及び形状は上記以外には特に限定されないが、例えば、図2に示すようなスパークプラグとすることができる。即ち、絶縁体2の貫通孔6内には、軸状に伸びる中心電極3と、抵抗体8と、端子電極7とを備える。また、この絶縁体2の外周には炭素鋼(JIS−G3507)等により形成された主体金具4を備える。この主体金具4はその一端側が溶接等により連接され、他端側が中心電極3と僅かな隙間を介して対向するように配置された略L字状の接地電極5を備える。
【0028】
特に、本第1乃至第発明のうちのいずれか1項に記載の絶縁体を備えるため第6発明のように、通常、内燃機関にスパークプラグを取り付けるために主体金具4の一部に螺刻された取り付けネジ部4aの呼びがM12以下であるスパークプラグにおいても十分な耐電圧性及び耐熱衝撃性を備えることができる。このような取り付けネジ部4aの呼びがM12以下であるスパークプラグは、絶縁体も必然的に小径である。このため絶縁体はより薄肉な部分を有することとなるが、この様な場合にも十分な耐電圧性及び耐熱衝撃性を保持できる。尚、取り付けネジ部4aの呼びとは図2におけるD8である。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明する。
[1]スパークプラグ用絶縁体
(1)絶縁体の製造(実施例1〜32、比較例1〜8)
表1〜3に示す配合量で、アルミナ粉末(Al純度99.8%以上)、シリカ粉末(SiO)、酸化ホウ素粉末(B)、酸化チタン粉末(TiO)、酸化カルシウム粉末(CaO)、酸化バリウム粉末(BaO)、酸化ストロンチウム粉末(SrO)、酸化マグネシウム粉末(MgO)、酸化ニッケル粉末(NiO)、酸化ランタン粉末(La)、酸化セリウム粉末(CeO)、酸化ネオジウム粉末(Nd)、酸化イットリウム粉末(Y)を配合し原料粉末とした。その後、この原料粉末を100質量部として、ボリピニルアルコール2質量部と水70質量部とを添加し、アルミナ製ボールを用いたボールミルにて湿式混合してスラリーを調合した。
尚、用いたアルミナ粉末の中心粒径はいずれにおいても0.4μmである。また、これらのアルミナ粉末はいずれも純度が99.8%以上である。
【0030】
得られたスラリーをスプレードライ法により噴霧乾燥した後、ふるいにより粒径10〜355μmに整粒し、次いで、得られた造粒物をラバープレス型内に充填し、貫通孔6形成用のラバープレスピンを挿入しながら約100MPaに加圧するラバープレス成形を行って成形体を得た。得られた成形体の外周をレジノイド砥石等により切削加工し、図1に示すような所定の形状に加工し、その後、大気雰囲気下で表4〜8に示す温度で6時間焼成した。次いで、釉薬をかけて釉焼して絶縁体2(実施例1〜32、比較例1〜8の合計40種類)を得た。
【0031】
【表1】
Figure 0004620217
【0032】
【表2】
Figure 0004620217
【0033】
【表3】
Figure 0004620217
【0034】
(2)得られた絶縁体の形状及び寸法
(1)で得られた絶縁体2は貫通孔6を備える。この貫通孔6は、中心電極3が配置する細径部分と、その後方側(図中上方側)に位置し、抵抗体8及び端子電極7が配置する大径部分とからなる。また、細径部分と大径部分との間には、中心電極3の固定用凸部3aを受けるための受け面2hが曲面状に形成されている。更に、絶縁体の軸方向中央部にはフランジ部2cが形成されている。
【0035】
また、絶縁体の各部の寸法は以下の通りである。全長L1:約60mm、第1軸部2e長さL2:約10mm、第2軸部2gの長さL3:約14mm、本体部2bの外径D1:約11mm、フランジ部2cの外径D2:約13mm、第1軸部2eの外径D3:約7.3mm、第2軸部2gの基端部外径D4:5.3mm、第2軸部2gの先端部外径D5:4.3mm、本体部2bにおける貫通孔6の内径D6:3.9mm、第2軸部2gにおける貫通孔6の内径D7:2.7mm、第1軸部2eの肉厚t1:1.7mm、第2軸部2gの基端部肉厚t2:1.3mm、第2軸部2gの先端部肉厚t3:0.9mm、第2軸部2gの平均肉厚tA:1.1mm。
【0036】
(3)得られた絶縁体の組織構造
(1)で得られた実施例1〜32及び比較例1〜8の絶縁体を各々3mm四方の大きさで、厚さ1mmに切り出し、一面を鏡面研磨した。次いで、電子顕微鏡(株式会社日本電子社製、型式「JSM5800LV」)により300倍に拡大して、異なる二次電子像を撮影して実際の寸法において縦300μm、横400μmが映し出された電子顕微鏡写真(以下、単に「SEM写真」という)を4枚得た。その後、このSEM写真に映し出されているアルミナ粒子について、最大長さが10μm以上であり、且つアスペクト比が3以上であるアルミナ粒子の数、最大長さが50μm以上であるアルミナ粒子の数、最大長さが80μm以上であるアルミナ粒子の数、の各々を前記の方法で算出した。この結果を表4〜8に示し、平均を算出した。
更に、上記同様にして得られた異なる4視野のSEM写真上に、実寸法で100μmに相当する直線を1本づつ引き、各直線下に存在するアルミナ粒子の数と、それらアルミナ粒子の各最大長さを測定し、この最大長さを平均し、更に4視野分の平均値を平均粒径として算出する。前記の方法により平均粒径を算出した。この結果を表4〜8に併記した。
【0037】
【表4】
Figure 0004620217
【0038】
【表5】
Figure 0004620217
【0039】
【表6】
Figure 0004620217
【0040】
【表7】
Figure 0004620217
【0041】
【表8】
Figure 0004620217
【0042】
[2]スパークプラグ
(1)スパークプラグの製造
[1]で得られた絶縁体を用いて、図2に示すようなスパークプラグ100を製造した。即ち、絶縁体2の貫通孔6の細径部分に中心電極3を挿入した後、導電性ガラス粉末を充填し、その後、貫通孔6内に押さえ枠を挿入して充填したガラス粉末を予備圧縮し、導電性ガラス粉末層(加熱後、導電性ガラス層10)を形成する。次いで、貫通孔6の大径部分に抵抗体用原料粉末を充填して同様に予備圧縮し抵抗体8となる層を形成する。更に、上記と同様にして導電性ガラス粉末層(加熱後、導電性ガラス層9)を形成する。その後、釉薬層2iとなる釉薬を塗布し、組立体を得る。
【0043】
得られた組立体を炉内に入れてガラス軟化点以上である800〜950℃の所定温度に加熱し、その後、端子全具7を貫通孔6の大径部分内へ中心電極3と反対側から軸方向に圧入して導電性ガラス粉末層及び抵抗体8となる層を軸方向にプレスする。この時の加熱により、釉焼され釉薬層2iが同時に形成される。その後、得られた加熱後の組立体に、接地電極5等が固着された主体金具4を組み付け、主体金具4の後端を加締めることにより固定してスパークプラグ100を得る。
【0044】
(2)スパークプラグの構成
(1)で得られたスパークプラグ100は、図2に示すように、絶縁体2内に設けられた貫通孔6内に、中心電極3と、中心電極3と電気的に接続された導電性ガラス層10と、抵抗体8と、端子電極7と、端子電極7と電気的に接続された導電性ガラス層9とを備える。更に、絶縁体2の外周面の一部を覆うように主体金具4が配設されている。この主体金具4は、絶縁体2の第1軸部2eと第2軸部2gとが交わる部分において接続部2fが形成され、主体金具4内側の係合部4bと環状板パッキン11を介している。また、絶縁体2の軸方向中央部に形成されたフランジ部2c後方においては、環状P線パッキン12、粉末滑石13、環状線パッキン14をそれぞれ介している。
【0045】
[3]特性評価
(1)耐電圧性試験
[1]で得られた絶縁体を備える[2]で得られた40種類のスパークプラグから各1種につき4本を、排気量660cc、4気筒のガソリンエンジンに各々取り付けた。その後、エンジンのスロットルを全開にし、回転数6000rpm、放電電圧35kVに保ちながら連続運転させた。この状態においてエンジン始動時からスパークプラグに火花貫通が起こるまでの時間(最大40時間)を測定し、その結果を表4〜8に示した。表4〜8において、「△」は10時間以上40時間未満で火花貫通したことを示し、「○」は40時間以上経過しても火花貫通を生じなかったことを示す。
【0046】
(2)耐熱衝撃性試験
[1]で得られた絶縁体を備える[2]で得られた40種のスパークプラグを、図3に示すような耐熱衝撃性試験装置に取り付けた。その後、放射温度計20によりスパークプラグ100の第2軸部2gの部分の表面温度を測定しながら、この温度が1000℃に1分間保持されるようにバーナー21により加熱し、次いで、この温度が250℃に10秒間保持されるように送風口22より送風して冷却することを1サイクルとして10サイクルずつ繰り返した。各10サイクル毎に蛍光探傷検査を行いクラックの有無を検査した。その結果を表4〜8に示す。表4〜8における「×」は19サイクル以下でクラックを生じたことを示し、「△」は20〜39サイクルでクラックを生じたことを示し、「○」は40〜50サイクルでクラックを生じたことを示す。
【0047】
表4〜8の結果より、RRE/RSiが0.1〜1.0であり、且つアスペクト比が3以上であるアルミナ粒子が1mmあたりに10個以上存在しない絶縁体を備える実施例1〜32のスパークプラグは十分な耐電圧性を有していることがわかる。このようなスパークプラグでは耐熱衝撃性試験の評価はいずれも△又は○であり高い耐熱衝撃性を有していることが分かる。また、このような性能を発揮している絶縁体においては、その平均粒径がいずれも7〜17μmと比較的大きいことが分かる。更に、アスペクト比が3以上であるアルミナ粒子も多くの絶縁体で存在せず、存在しても多くて9個である。また、最大長さが50μm以上であるアルミナ粒子も多くの絶縁体で存在していない。更に、最大長さが80μm以上であるアルミナ粒子はいずれの絶縁体においても全く存在していない。
【0048】
これに対して、比較例1〜8では十分な耐電圧性又は十分な耐熱衝撃性の一方を有しているものはあるが、これら両方を同時に備えるものは認められない。比較例1〜8では、実施例1〜32と比べてアスペクト比が大きなアルミナ粒子、最大長さが50μm以上のアルミナ粒子、最大長さが80μm以上のアルミナ粒子の各々の数が多いことが分かる。
【0049】
尚、本発明においては、上記の具体的実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、スパークプラグ100における抵抗体8は備えなくてもよい。また、主体金具4に固着される接地電極5は1つに限らず、複数個備えた多極電極であってもよい。
【0050】
【発明の効果】
本第1発明によると、高い耐電圧性と高い耐熱衝撃性を備える優れたスパークプラグ用絶縁体を安定して得る。また、本第発明によると、上記のような優れた絶縁体をそなえる絶縁破壊及び割れ等を生じない高い耐久性を備えるスパークプラグを得る。更に、第発明によると、スパークプラグ自体が小径であっても絶縁破壊及び割れ等を生じない高い耐久性を備えるスパークプラグを得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスパークプラグ用絶縁体の一例の断面図である。
【図2】本発明のスパークプラグの一例の断面図である。
【図3】本実施例における耐熱衝撃試験の説明図である。
【符号の説明】
100;スパークプラグ、2;スパークプラグ用絶縁体、3;中心電極、4;主体金具、5;接地電極、20;放射温度計、21;バーナー、22;送風口。

Claims (5)

  1. 構成成分全体を100質量%とした場合に、Al成分の酸化物換算含有割合が95〜99.8質量%であり、且つ希土類元素及びSi成分を、希土類元素の酸化物換算含有割合(RRE)と、Si成分の酸化物換算含有割合(RSi)との比(RRE/RSi)が0.1〜1.0となるように含有し、更に、切断面1mmあたりに存在する最大長さが10μm以上であり且つアスペクト比が3以上であるアルミナ粒子が10個未満であり、
    平均粒径が2〜50μmであることを特徴とするスパークプラグ用絶縁体。
  2. 切断面1mmあたりに存在する最大長さが80μm以上であるアルミナ粒子は5個以下である請求項1記載のスパークプラグ用絶縁体。
  3. 切断面1mmあたりに存在する最大長さが50μm以上であるアルミナ粒子は30個以下である請求項1又は2に記載のスパークプラグ用絶縁体。
  4. 軸状の中心電極と、該中心電極の側周面に配置された主体金具と、該主体金具に一端側が連接し、他端側が該中心電極と対向するように配置された接地電極と、該中心電極及び該主体金具との間を絶縁するように配置された請求項1乃至のうちのいずれか1項に記載のスパークプラグ用絶縁体とを備えることを特徴とするスパークプラグ。
  5. 上記主体金具の取り付けネジ部の呼びがM12以下である請求項記載のスパークプラグ。
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