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JP4539117B2 - 紫外線硬化型防曇組成物 - Google Patents

紫外線硬化型防曇組成物 Download PDF

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JP4539117B2 JP2004049999A JP2004049999A JP4539117B2 JP 4539117 B2 JP4539117 B2 JP 4539117B2 JP 2004049999 A JP2004049999 A JP 2004049999A JP 2004049999 A JP2004049999 A JP 2004049999A JP 4539117 B2 JP4539117 B2 JP 4539117B2
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Description

本発明は、紫外線硬化型防曇組成物、とくに優れた防曇性能をもち、かつその防曇性能の耐久性に優れ、熱成形ができさらに耐磨耗性に優れた紫外線硬化型防曇組成物に関する。
各種プラスチック材料は、その軽量性、透明性、加工性および割れにくさと割れた場合の安全性の観点から、特にスポーツゴーグル、ヘルメットシールド、安全メガネ、安全シールド等の人体の保護具用途、また各種表示機器や計器カバー、レンズ、センサーカバー等の産業用途、住宅店舗における間仕切りやショーケース等の住設用途、自動車、鉄道車両等の間仕切りや棚、計器カバー、窓ガラス等の輸送関連用途に用いられている。これらの用途に使用されるプラスチック材料は、息のかかる近傍や、高温高湿の環境下、または表裏の温度差の大きい環境下で使用した場合、表面に結露や曇りが発生し、視野や視認性の低下、センサー類の誤作動など、便利性や安全性の低下を引き起こしやすいという欠点がある。
この欠点を解消するために、従来より種々の防曇処理に関する検討が進められてきた。例えば、基材表面に、界面活性剤を主成分とする組成物を塗布し防曇被膜を形成する方法がある。しかしながら、界面活性剤が水と接触するだけで容易に溶出してしまい防曇性が短期間で低下してしまい耐久性の点で実用性のないものであった。また、界面活性剤を有する被膜は、保管中にその界面や保護フィルムへの移動がおこり、製品の外観が著しくそこなわれるという問題も有していた。
そこで、防曇性の耐久性を向上すべく、ポリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどの親水性ポリマーを塗布し、熱硬化により硬化した被膜により防曇性をもたせる方法も提案されているが、耐久性の向上はみられるものの、充分な防曇性能とはいえず、さらに耐摩耗性などの機械的強度が実用上不足している、あるいは、ゴーグル等に熱成形すると、成形時の熱により防曇性が低下する、といった問題がある。
耐磨耗性を向上すべく、親水性重合体と架橋剤の組合せによる防曇被膜を形成する方法が提案されているが、防曇性の耐久性や、耐摩耗性が充分でなく、熱成形時に防曇性が極端に低下するなどの問題があった。さらに、有機珪素含有の防曇性組成物も提案されており、比較的高い耐磨耗性、および防曇性、その耐久性も有しているものの、熱成形そのものができず、ゴーグル等の加工品への応用ができないという問題があった。
特開昭56−090876号 特公昭53−018347号 特開昭53−028587号 特公昭52−047754号 特開平08−176466号
本発明は、上記問題を解決し、優れた防曇性能をもち、かつその防曇性能の耐久性に優れ、熱成形ができさらに耐磨耗性に優れた紫外線硬化型防曇組成物を提供することを目的とする。
第1の発明は、下記式(1)で示されるエトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(a)、親水性単官能モノマー(b)、極性希釈溶剤及び光重合開始剤の各成分少なくとも一種類からなり、固形分重量比(a)/(b)が60/40〜85/15であることを特徴とする紫外線硬化型防曇組成物を要旨とする。
(化1)
CH=CRCO(OC)-O-C C(CH)-O-(CO)OCR=CH (1)
(R1 は水素原子又はメチル基を示し、mとnはエチレンオキサイドの平均付加モル数を示し、m+nが10〜30である)
また、第2の発明は、上記請求項1に記載されたエトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(a)、親水性単官能モノマー(b)、極性希釈溶剤及び光重合開始剤に、さらにエチレンオキサイドの平均付加モル数が6〜20であるエトキシ化多官能アクリレート(c)を加えた各成分少なくとも一種類からなり、固形分重量比((a)+(b))/(c)が100/30〜100/1 (但し、ここで(a)/(b)は、60/40〜85/15)であることを特徴とする紫外線硬化型防曇組成物を要旨とする。
さらに、第3の発明は、上記請求項1に記載されたエトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(a)、親水性単官能モノマー(b)、極性希釈溶剤及び光重合開始剤に、さらに多官能アクリレート(d)、を加えた各成分少なくとも一種類からなり、固形分重量比((a)+(b))/(d)が100/10〜100/1 (但し、ここで(a)/(b)は、60/40〜85/15)であることを特徴とする紫外線硬化型防曇組成物を要旨とする。
本発明の紫外線硬化型防曇組成物は、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(a)、親水性単官能モノマー(b)、を主成分とし、さらにはエトキシ化多官能アクリレート(c)、あるいは多官能アクリレート(d)を添加し、それらの重量比(a)/(b)、あるいは((a)+(b))/(c)、((a)+(b))/(d)を特定の範囲とすることにより、優れた防曇性能をもち、かつその防曇性能の耐久性に優れ、熱成形ができさらに耐磨耗性に優れるという効果を奏する。
本発明のエトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(a)は、エチレンオキサイド鎖をもちかつビスフェノールAを中心骨格にもった構造をしている。親水性部分であるエチレンオキサイド鎖は良好な防曇性を有し、界面活性剤のように溶出により防曇性能が無くなるようなことはない。ただ、このエチレンオキサイド鎖は、柔軟な分子構造であるため、塗膜を柔らかくして耐摩耗性などの強度を低下させる影響を及ぼす。また、エチレンオキサイド鎖は、多くの樹脂基材との密着性が得にくい構造である。この欠点を補うのが、分子構造的に剛直で、塗膜の耐摩耗性、硬度、耐熱性などを向上させ、かつ多くの樹脂基材と密着性を得やすい中心構造のビスフェノールA骨格であり、このエチレンオキサイド鎖とビスフェノールA骨格とのバランスにより、防曇性と耐摩耗性などの塗膜強度および防曇性や塗膜自体の耐久性、密着性を得ることができるものである。
(a)成分の(メタ)アクリレートは、2官能である必要がある。単官能の場合は、硬化塗膜の架橋密度が低すぎ、充分な耐磨耗性のある塗膜を得られないからであり、3官能以上の場合は硬化塗膜の架橋密度が高くなりすぎて、充分な防曇性を得られにくいからである。
式(1)においてエチレンオキサイドの平均付加モル数、つまりm+nは10〜30の範囲である必要がある。m+nが10未満の場合、エチレンオキサイド鎖の長さが不十分で、充分な防曇性は得られない。逆にm+nが30を越えた場合、柔軟なエチレンオキサイド鎖が長くなりすぎ、塗膜の耐磨耗性に劣るからである。
親水性単官能モノマー(b)としては、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル(HEVE)、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)、4−ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(HBAGA)、ジエチレングリコールモノビニルエーテル(DEGV)、Nビニルピロリドン(NVP)、シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、N−ビニルホルムアミド(NVF)、アクリロイルモルホリン(ACMO)、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、下記式(2)で表されるエトキシモノ(メタ)アクリレートならびにアクリルアミド、下記式(3)で表されるアクリル酸アミド化合物を挙げることが出来る。
(化2)
CH=CRCO(OC)-O-R (2)
(Rは水素原子又はメチル基を示し、Rはメチル基またはフェニル基を示し、lは5〜20を示す)
(化3)
CH=CHCONHR (3)
(R は水素原子、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖をもったアルキル基、またはアルキルケトン基を示す)
エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(a)と親水性単官能モノマー(b)との重量比(a)/(b)は、60/40〜85/15である必要がある。(a)成分の割合が60重量%未満では、塗膜の耐磨耗性が著しく低下してしまい、外観も悪くなる。また、(a)成分の割合が85重量%を超えると、すなわち、(b)成分の割合が15重量%未満になると、初期の防曇性が極端に低下してしまう。また、基材との密着性が低下することもある。
第2の発明で用いられるエトキシ化多官能アクリレート(c)としては、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレートで、エチレンオキサイドの平均付加モル数が6〜20であるものを挙げることができる。この平均付加モル数が6未満の場合、エチレンオキサイド鎖の長さが不十分で、充分な防曇性は得られない。逆に20を越えた場合、柔軟なエチレンオキサイド鎖が長くなりすぎ、塗膜の耐磨耗性に劣る。
この第2の発明における固形分重量比、つまり((a)+(b))/(c)は、100/30〜100/1(但し、ここで(a)/(b)は、60/40〜85/15)の範囲にある必要がある。(c)成分の割合が30重量%を越えると、架橋密度が高くなりすぎて初期防曇性の低下が起こる。また(c)成分が1重量%未満では、(c)成分の架橋密度向上の効果が発現しない。さらに同時に(a)成分と(b)成分の比率において、(a)成分の割合が60重量%未満では(a)成分の特徴である強度の発現が不十分となり、塗膜強度が著しく低下してしまい、また、(a)成分の割合が85重量%を超えると、すなわち、(b)成分の割合が15重量%未満になると、防曇性が極端に低下してしまうことは、第1の発明の場合と同様である。
第3の発明で用いられる多官能アクリレート(d)としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセリントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスチトールテトラアクリレート、または、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート、およびエトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレートで、エチレンオキサイドの平均付加モル数が3〜4であるものを挙げることができる。
この第3の発明における固形分重量比、つまり((a)+(b))/(d)は、100/10〜100/1 (但し、ここで(a)/(b)は、60/40〜85/15)の範囲である必要がある。(d)成分の比率が10重量%を越えると、架橋密度が高くなりすぎ、また親水性基の比率が低下し過ぎて初期防曇性の低下が起こる。また(d)成分が1重量%未満では、(d)成分の架橋密度向上の効果が発現しない。さらに同時に(a)成分と(b)成分の比率において、(a)成分の割合が60重量%未満では(a)成分の特徴である強度の発現が不十分となり、塗膜強度が著しく低下してしまい、また、(a)成分の割合が85重量%を超えると、すなわち、(b)成分の割合が15重量%未満になると、防曇性が極端に低下してしまうことは、第1の発明の場合と同様である。
本発明で用いられる極性希釈溶剤は、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(a)、親水性単官能モノマー(b)の良溶媒で無くてはならず、また防曇組成物を基材に塗布して形成された塗膜を加熱乾燥させる際に、外観を悪化させず平滑性を保てる適度な速度にてかつ充分に乾燥される必要がある。
この極性希釈溶剤としては、例えば比較的乾燥速度の速いメタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、イソブタノールなど、比較的乾燥速度が中程度のメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、比較的乾燥速度の遅いn−ブタノール、ジアセトンアルコール、ブチルセロソルブなどを単独であるいは混合して使用することができる。またこれらの極性希釈溶剤に(a)、(b)の溶解性に影響を及ばさない程度の少量のケトン類、エステル類、芳香族炭化水素系の非極性溶剤を混合することも可能である。ケトン類、エステル類、芳香族炭化水素の非極性溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、キシレン、トルエンなどがある。
本発明で用いられる光重合開始剤は、光重合性化合物が紫外線によって硬化する際の重合開始剤としての機能を有しており、公知のものを使用することができる。例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン又はベンゾインアルキルエーテル類、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸等の芳香族ケトン類、ベンジル等のアルファ−ジカルボニル類、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール等のベンジルケタール類、アセトフェノン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパノン−1等のアセトフェノン類、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン等のアントラキノン類、2,4−ジメチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等のアルファ−アシルオキシム類、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等のアミン類等を使用することができる。これらのうち、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン−1−オン等のアセトフェノン類、ベンゾフェノン等の芳香族ケトン類が特に好ましい。
本発明の防曇組成物に、初期の防曇性能を若干高める目的で、補助的に界面活性剤を添加することも可能である。添加可能な界面活性剤としては、一般的な非イオン系界面活性剤、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両性イオン系界面活性剤等から選択することができる。これらのうち、特に非イオン系界面活性剤又は陰イオン系界面活性剤が好ましくこれらを組み合わせることも好ましい。
また、本発明においては、塗布時の塗膜の基材への濡れ性や均一性、表面の平滑性および硬化した塗膜の表面スリップ性を得るために、シリコーン系、アクリル共重合物系等の表面調整剤を添加することが好ましい。
シリコーン系表面調整剤としては、ポリジメチルシロキサンや、これを変性した変性シリコーン系のものが使用される。変性シリコーン系としてはポリエーテル変性体、アルキル変性体、ポリエステル変性体などが好ましく、特にポリエーテル変性体が好ましい。また、これらを組み合わせて使用することも可能である。
本発明の防曇組成物よりなる防曇塗膜は、組成物の混合〜希釈〜塗布〜乾燥〜硬化の工程にて得ることが出来る。塗膜の厚みは、60μm以下とする。防曇性の観点からは塗膜を厚くするほど良いが、60μmを超えると耐磨耗性が劣るものとなる。塗布方法としては、水平式の塗布搬送設備を有するロールコーター、スプレーコーター、カーテンフローコーター、スリットダイコーターなどが適している。
基材に本発明の防曇組成物を塗布した後、基材および雰囲気の温度を上げ、充分に希釈溶剤を蒸発させしかる後に紫外線を照射し塗膜を硬化させる。紫外線照射には、一般の有電極型や無電極型の高圧紫外線灯やメタルハライドランプが使用可能である。
基材としては、一般の透明プラスチックが使用可能ではあるが、本発明の用途として想定する、スポーツゴーグル、ヘルメットシールド、安全メガネ、安全シールド等の人体の保護具用途、また各種表示機器や計器カバー、レンズ、センサーカバー等の産業用途、住宅店舗における間仕切りやショーケース等の住設用途、自動車、鉄道車両等の間仕切りや棚、計器カバー、窓ガラス等の輸送関連用途においては、ポリカーボネート樹脂を基材とすることが、その軽量性、透明性、加工性および割れにくさと割れた場合の安全性の観点から最も好ましい。その他の、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル等の一般的な透明樹脂も使用可能である。
先ず、第一の発明について、実施例及び比較例をあげて具体的に説明する。
<実施例1>
用いた各成分は次の通りである。
(a):エチレンオキサイドの平均付加モル数10のエトキシ化ビスフェノールAジアクリレート
(b):Nビニル−2ピロリドン(NVP)
極性希釈溶剤:イソプロピルアルコールおよびメチルセロソルブの1:1溶液
光重合開始剤:2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンと1−[4−(2−ヒドロキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オンの1:1混合物、
また、シリコン系表面調整剤として、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン溶液(ビックケミー社製、商品名BYK−306)を使用した。
固形分重量比(a)/(b)が、60/40となるよう配合し、さらにこれらの成分が溶液中40重量%となるように、上記極性希釈溶剤で希釈した。この際、あらかじめメチルセロソルブに溶解していた光重合開始剤を固形分比4%となるように極性希釈溶剤の一部として添加した。さらに、組成物100重量部に対し、0.1重量部のシリコン系表面調整剤を添加した。組成物は充分に攪拌混合した後、密閉容器に保存した。
基材として板厚1.5mmの透明ポリカーボネートシート(筒中プラスチック工業株式会社製「ポリカエース」)を準備し、金属製バーコーターを用いて、乾燥膜厚が30μmとなるように組成物を塗布した。つぎに、塗布したポリカーボネートシートを50℃の熱風循環型オーブンに入れ乾燥した。10分間乾燥した後、160W/cmの高圧水銀灯(ウシオ電機株式会社製)を用い、速度5m/分のコンベア上にポリカーボネートシートを載せ、水銀灯とポリカーボネートシートとの距離15cmで、ポリカーボネートシートに紫外線照射を行い、組成物を硬化させた。防曇塗膜が形成されたシートについて次の通り性能を評価し、その結果を表1に示す。
<外観>
目視で、硬化した塗膜を観察し、次のように評価した。
◎:塗膜表面が平滑で、どの角度から見ても透明なもの
○:塗膜表面が平滑で、極端に斜めにするとやや透明性を損ない曇って見えるが実用的には問題の無いレベルのもの
△:塗膜表面が平滑性でないか、斜めから見ると曇って見え、実用上問題があるもの
×:塗膜表面が荒れているか、平面を正面から見ても曇りがあり、全く実用性のないもの。
<防曇性1>
欧州規格EN168に準じ防曇時間を測定し次のように評価した。
◎:防曇時間10秒超(優れた防曇性)
○:防曇時間5秒超〜10秒以下(実用的な防曇性)
△:防曇時間2秒超〜5秒以下(弱い防曇性で、用途が制限される)
×:防曇時間0秒〜2秒以下(防曇性無し、または非常に低い防曇性)
<防曇性2>
シートの表面に呼気を5回吹きかけて、目視にて曇りの度合いを観察し次のように評価した。
○:呼気を3回以上吹きかけても一切曇りは観察されない
△:呼気を1〜2回吹きかけたても呼気は観察されないが、呼気を3回以上吹きかけると曇りが観察される。
×:呼気を1回吹きかけると曇りが観察される。

<塗膜の初期密着性>
碁盤目テープ法(JIS K5400に準拠)を行い、剥がれなかった升目の数により次のように評価。
◎:100(非常に強い密着性)
○:90〜99(実用上全く問題のない密着性)
△:60〜89(実用上問題が発生する可能性が大きい)
×:10〜59(密着力が弱く全く実用性がない)
××:0〜9または碁盤目の外まで大きく剥離(密着性なし)
<塗膜の耐沸騰水密着性>
沸騰水中に試料を30分浸した後、水分をふき取り、室温中で2時間以上乾燥させた後で、上記碁盤目テープ法にて次のように評価。
◎:100(非常に強い密着性)
○:90〜99(実用上全く問題のない密着性)
●:60〜89(実用上、使用する環境などにやや制限が必要)
△:30〜59(実用上問題が発生する可能性が大きい)
×:0〜29(実用上問題となる)
××:塗膜の全部または一部が自然剥離して存在しないか、碁盤目の外まで大きく剥離するもの(密着性が悪くまったく実用性がない)
<塗膜の耐温水密着性>
60℃の温水中に試料を100時間浸した後、水分をふき取り、室温中で2時間以上乾燥させた後で、上記碁盤目テープ法にて次のように評価。
◎:100(非常に強い密着性)
○:90〜99(実用上全く問題のない密着性)
●:70〜89(実用上、使用する環境などにやや制限が必要)
△:40〜69(実用上問題が発生する可能性が大きい)
×:0〜39(実用上問題となる)
××:塗膜の全部または一部が自然剥離して存在しないか、碁盤目の外まで大きく剥離するもの(密着性がなく、まったく実用性がない)
<塗膜の耐熱密着性>
80℃の熱風循環式オーブン中に試料を100時間静置した後、室温中で2時間以上静置、冷却させた後で、上記碁盤目テープ法にて次のように評価。
◎:100(非常に強い密着性)
○:90〜99(実用上全く問題がない)
△:40〜89(実用上問題が発生する可能性が大きい)
×:0〜39(密着力が弱く全く実用性がない)
××:塗膜の全部または一部が自然剥離しているか、碁盤目の外まで大きく剥離するもの(密着性なし)
<耐磨耗性>
ASTM D1044に準じて、テーバー式摩耗試験(CS10F摩耗輪、荷重500g)を行い、発生したヘーズにより次のように評価。
◎:ヘーズの変化(ΔH)が10%未満(非常に優れた耐摩耗性)
○:ΔHが10%以上15%以下(優れた耐摩耗性)
●:ΔHが15%超20%以下(実用上大きな問題のない防曇性)
△:ΔHが20%超25%以下(実用上不十分な耐摩耗性)
×:ΔHが25%超、35%以下(耐摩耗性なし)
××:ΔHが35%超(耐摩耗性が低く、まったく使用できない)
<成形性>
試料を170℃設定の熱風循環型オーブンで7分間加熱し軟化させ、取り出した直後に塗膜面を外側にして半径30mmの木製円柱にネル布を介して添わせ、試料が室温付近に冷却されるまでそのままに保つことで単曲面成形をおこない、その後、外観を観察し、次のように評価した。
○:クラックや塗膜剥離の発生および外観の変化が無い(優れた成形性)
×:クラックや塗膜剥離の発生または白濁や表面の肌が荒れるなど外観の変化が発生する(成形性がない)
<成形品の防曇性>
成形品について、上記防曇性1の評価を行う。但し、防曇性1の評価結果が△あるいは×のものについては、この評価をしなかった。
◎:加熱成形前と同一の防曇性を示したもの(良好な防曇耐久性で、充分に熱成形に対応できる)
○:加熱成形前より1ランク低い防曇性(有る程度の防曇耐久性で、熱成形の条件により用途が制限される)
×:加熱成形前より2ランク以上低いまたは最低ランクの防曇性(熱成形に対応した防曇耐久性ではない)
<防曇性能の耐久性>
60℃の温水中に試料を100時間浸した後、上記防曇性1の評価を行う。但し、防曇性1の評価結果が△あるいは×のものについては、この評価をしなかった。
◎:初期と同一の防曇性を示したもの(良好な防曇耐久性)
○:初期より1ランク低い防曇性(有る程度の防曇耐久性で、用途が制限される可能性がある)
×:初期より2ランク以上低い、または最低ランクの防曇性(防曇耐久性に劣る)
<実施例2>
(a)/(b)を70/30とした以外実施例1と同様。
<実施例3>
(a)/(b)を85/15とした以外実施例1と同様。
<比較例1>
(a)/(b)を90/10とした以外実施例1と同様。
<比較例2>
(a)/(b)を55/45とした以外実施例1と同様。
<比較例3>
(a)の替わりに、エチレンオキサイドの平均付加モル数4のエトキシ化ビスフェノールAジアクリレートを用いた以外実施例1と同様。
<比較例4>
(a)の替わりに、下記式(4)で表される、エチレンオキサイドの平均付加モル数が9であるが骨格にビスフェノールA骨格を含有しない2官能アクリレートであるポリエチレングリコールジアクルレートを、(b)としてNビニルホルムアミド用いた以外実施例1と同様。
(化4)
CH=CHCO-O(OC)O-CO-CH=CH (4)
<比較例5>
(a)の替わりに、下記式(5)で表される、エチレンオキサイドの平均付加モル数が20であるがビスフェノールA骨格を含有しない3官能アクリレートであるエトキシ化グリセリントリアクリレートを、(b)としてNビニルホルムアミド用いた以外実施例1と同様。
Figure 0004539117
Figure 0004539117
表1に示されている通り、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(a)と親水性単官能モノマー(b)との重量比が本発明の範囲である実施例1〜実施例3では、呼気テストによる防曇性2はもちろん、より厳しいEN168の防曇テストによる防曇性1においても優れた防曇性を有していることがわかる。かつ、その防曇性が熱や湿度において失われない耐久性を有しており、さらに基材への充分な密着性や、成形性、耐磨耗性にも優れていることがわかる。これに対して、上記(a)と(b)との重量比が本発明の範囲を逸脱する比較例1あるいは比較例2では、初期防曇性の低下と密着性不足を起こし(比較例1)、外観および耐磨耗性の低下を起こし(比較例2)ている。
エチレンオキサイドの平均付加モル数が本発明の範囲を逸脱しているエトキシ化ビスフェノールAジアクリレートを使用した比較例3では、初期防曇性が得られなかった。
エチレンオキサイドの平均付加モル数においては本発明の範囲内であるものの、ビスフェノールAを含有しないジアクリレートを使用した比較例4では、初期防曇性は得られたものの、高温、高湿下での密着性がなく、防曇性の耐久性に劣り、耐磨耗性、成形性も無い結果となっている。また、エチレンオキサイドの平均付加モル数においては本発明の範囲内であるものの、3官能アクリレートを用いた比較例5では、初期防曇性に劣る結果となっている。
次いで、第2の発明について説明する。評価方法は第1の発明と同様である。
<実施例4>
次の成分(a)〜(c)を用い、(a)/(b)が75/25、((a)+(b))/(c)が、100/5となるように配合した以外は実施例1と同様。評価結果を表2に示す。

(a):エチレンオキサイドの平均付加モル数30のエトキシ化ビスフェノールAジアクリレート
(b):アクリロイルモルホリン(ACMO)
(c):エチレンオキサイドの平均付加モル数9のエトキシ化グリセリントリアクリレート(上記式(5)において、l+m+nが9)
<実施例5>
実施例4において、((a)+(b))/(c)を100/15とした以外実施例4と同様。
<実施例6>
実施例4において、((a)+(b))/(c)を100/25とした以外実施例4と同様。
<比較例6>
実施例4において、((a)+(b))/(c)を100/40とした以外実施例4と同様。
<比較例7>
実施例6において、(c)として、エチレンオキサイドの平均付加モル数3のエトキシ化グリセリントリアクリレート(式(5)において、l+m+nが3)を用いた以外実施例6と同様。
Figure 0004539117
表2に示されている通り、本発明の範囲である実施例4〜実施例6では、防曇性、防曇性の耐久性、耐磨耗性、成形性に優れている。これに対し、本発明の範囲を超えて(c)成分を添加した比較例7では、あるいはエチレンオキサイドの平均付加モル数が本発明の範囲を超えている比較例8では、初期防曇性を極端に低下させてしまっている。
第3の発明について説明する。評価方法は第1の発明と同様である。
<実施例7>
次の成分(a)(b)(d)を用い、(a)/(b)が75/25、((a)+(b))/(d)が、100/5となるように配合した以外は実施例1と同様。評価結果を表3に示す。

(a):エチレンオキサイドの平均付加モル数30のエトキシ化ビスフェノールAジアクリレート
(b):アクリロイルモルホリン(ACMO)
(d):エチレンオキサイドの平均付加モル数3のエトキシ化グリセリントリアクリレート(前記式(5)において、l+m+nが3)
<実施例8>
実施例7において、((a)+(b))/(d)を100/10とした以外実施例7と同様。
<実施例9>
(d)成分として、下記式(6)で表されるグリセリントリアクリレートを用いた以外は、実施例8と同様。
(化6)
CH=CHCO-O-CH-CH(OCOCH=CH)-CH-O-CO-CH=CH (6)
<比較例8>
(d)成分として、上記式(6)で表されるグリセリントリアクリレートを用い、((a)+(b))/(d)を100/20とした以外は、実施例8と同様。
Figure 0004539117
表3に示されている通り、本発明の範囲である実施例7〜9では、防曇性、防曇性の耐久性、耐磨耗性、成形性に優れている。これに対し、(d)成分を本発明の範囲を超えて添加した比較例9では、初期防曇性を喪失してしまっている。

Claims (3)

  1. 下記式(1)で示されるエトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(a)、親水性単官能モノマー(b)、極性希釈溶剤及び光重合開始剤の各成分少なくとも一種類からなり、固形分重量比(a)/(b)が60/40〜85/15であることを特徴とする紫外線硬化型防曇組成物。
    (化1)
    CH=CRCO(OC)-O-C C(CH)-O-(CO)OCR=CH (1)
    (R1 は水素原子又はメチル基を示し、mとnはエチレンオキサイドの平均付加モル数を示し、m+nが10〜30である)
  2. 請求項1に記載されたエトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(a)、親水性単官能モノマー(b)、極性希釈溶剤及び光重合開始剤に、さらにエチレンオキサイドの平均付加モル数が6〜20であるエトキシ化多官能アクリレート(c)を加えた各成分少なくとも一種類からなり、固形分重量比((a)+(b))/(c)が100/30〜100/1 (但し、ここで(a)/(b)は、60/40〜85/15)であることを特徴とする紫外線硬化型防曇組成物。
  3. 請求項1に記載されたエトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(a)、親水性単官能モノマー(b)、極性希釈溶剤及び光重合開始剤に、さらに多官能アクリレート(d)、を加えた各成分少なくとも一種類からなり、固形分重量比((a)+(b))/(d)が100/10〜100/1 (但し、ここで(a)/(b)は、60/40〜85/15)であることを特徴とする紫外線硬化型防曇組成物。
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