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JP4535761B2 - 非水電解質二次電池 - Google Patents

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Description

本発明は、負荷特性及び活物質と集電体との密着性の向上を目的とした非水電解質二次電池の負極の改良に関する。
近年、携帯電話やノートパソコン等の移動情報端末の小型・軽量化が急速に進展しており、その電源としての電池にはさらなる高容量化が要求されている。リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質二次電池は、高いエネルギー密度を有し、高容量であるので、上記のような移動情報端末の駆動電源として広く利用されている。
リチウムを吸蔵、放出する炭素材料を負極に使用したリチウムイオン二次電池は、リチウムが金属状態で存在しないため、樹枝状(デンドライト状)リチウムの析出がなく、安全性に優れ、かつ電池寿命も長い。特に、天然黒鉛や人造黒鉛等の黒鉛系炭素材料は、リチウムイオンを吸蔵、放出できる量が多いため、黒鉛系炭素材料を使用したリチウムイオン二次電池は、高容量化の要求に応えることができる。
ここで、黒鉛を主体とする活物質を用いた負極は、活物質である黒鉛と、結着剤と、溶剤とを混合して活物質スラリーとなした後、負極集電体に塗布・乾燥することによって作製される。ところが、黒鉛に付着した結着剤が当該黒鉛のリチウムイオンの吸蔵・脱離反応を阻害して、負荷特性等を劣化させるという問題があった。
その一方、結着剤の使用量を少なくすると上記弊害が解消されるが、結着剤量の減少によって負極集電体と活物質との密着性が低下し、負極の内部抵抗が大きくなる。また、充放電により活物質が負極集電体から脱落するという問題が生じる。
このような背景にあって、黒鉛粒子の細孔の大きさを規制する技術が提案されている(特許文献1)。
また、結着剤粒子の粒径を規制する技術が提案されている(特許文献2,3)。
特開平10−236809号公報(第2−3頁) 特開2000−48805号公報(第2頁) 特開2003−109581号公報(第2−3頁)
上記特許文献1は、102〜105Åの範囲の大きさの細孔の細孔体積が、黒鉛質量当たり0.4〜2.0cc/gである黒鉛粒子を負極に用いる技術である。この技術によると、サイクル特性が向上するとされる。
上記特許文献2は、粒径が0.05〜100μmの粒子状の樹脂からなる結着剤を用いる技術である。この技術によると、容量・充放電特性・サイクル特性が向上するとされる。
上記特許文献3は、粒径が0.2〜400μmの粒子状ポリマー結着剤を用いる技術である。この技術によると、サイクル特性が向上するとされる。
発明者らは、黒鉛(炭素材料)負極を用いた電池について、その負荷特性及び集電体と活物質との密着性について鋭意研究を行った。その結果、結着剤粒子が黒鉛の細孔に取り込まれ、当該細孔でのリチウムイオンの吸蔵脱離を阻害するために、負荷特性が劣化することを知った。また、結着剤粒子は、黒鉛の細孔に取り込まれることによって活物質と集電体とを結着させる作用を失うために、十分な結着力が得られなくなることを知った。
そして、黒鉛の細孔の大きさを、結着剤粒子の大きさ(粒径)と所定の関係に規制することにより、上述した問題を解消できることを見いだした。
本発明は以上の知見に基づき完成されたものであって、負荷特性に優れ、活物質と集電体との密着性の高い非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明は、正極と、細孔を有する炭素材料粒子群と水に分散する結着剤粒子群とを含む負極と、非水電解質と、を有する非水電解質二次電池において、前記細孔を有する炭素粒子群を、細孔直径の小さいものから大きいものへと積算するとき、全積算細孔直径が90%になる点における粒子細孔径D90が、前記結着剤粒子群の平均粒径よりも小さいことを特徴とする。
ここで、水に分散するとは、コロイド状態や、ディスパージョン状態で水に分散することを意味する。このような性質を有する結着剤としては、スチレン−ブタジエン共重合体・メチル(メタ)アクリレート・エチル(メタ)アクリレート・ブチル(メタ)アクリレート・(メタ)アクリロニトリル・ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和カルボン酸エステル、アクリル酸・メタクリル酸・イタコン酸・フマル酸・マレイン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸等を例示でき、これらを一種または二種以上混合して用いることができる。また、結着剤の混合比は、好ましくは活物質100質量部に対して0.5〜5質量部とする。
また、上記構成においては、前記結着剤粒子群の平均粒径と前記炭素材料粒子群の細孔径D90との差が、0.06μmより大きい構成とすることができる。
また、前記炭素材料が黒鉛である構成とすることができる。
本発明によると、細孔を有する炭素粒子群を、細孔直径の小さいものから大きいものへと積算するとき、全積算細孔直径が90%になる点における粒子細孔径D90が、結着剤粒子群の平均粒径よりも小さく構成されている。
このため、細孔内に結着剤が取り込まれる現象がほとんど生じなくなる。よって、結着剤の大部分が極板と活物質との密着性を高めるように作用し、炭素粒子の細孔で充放電が円滑に行われるようになる。したがって、負荷特性及び密着性が飛躍的に向上する。
また、結着剤粒子群の平均粒径と炭素材料粒子群の細孔径D90との差が、0.06μmより大きいと、細孔内に結着剤が取り込まれる現象をより効果的に抑制できる。
結着剤粒子の平均粒径と炭素材料の細孔径D90との差は、より好ましくは0.1μm以上とし、さらに好ましくは0.2μm以上とする。
また、炭素材料の中でも黒鉛はエネルギー密度が高い。このため、黒鉛を用いると、高エネルギー密度の電池が得られる。
本発明を実施するための最良の形態を、実施例を用いて詳細に説明する。本発明は下記実施の形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することができる。
(実施例1)
〈正極の作製〉
LiCoO2粉末と導電剤としての人造黒鉛粉末とを質量比9:1で混合して正極合剤となし、この正極合剤と、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)にポリフッ化ビニリデン(PVdF)を5質量%溶かした結着剤溶媒とを、固形分の質量比で正極合剤:PVdF=95:5となるように混練して正極活物質スラリーを調整した。
上記正極活物質スラリーを、正極集電体としてのアルミニウム箔の両面にドクターブレード法により塗布し、その後乾燥し、次いでこれを充填密度が3.4g/mlとなるように圧縮して正極を作製した。
〈黒鉛の作製〉
平均粒径5μmのコークス粉末に、石油ピッチ(軟化点:250℃)及びケイ素粒子を加熱しながら混合し、その後ペレット状に成型した。次いで、窒素(不活性ガス)雰囲気で3000℃まで昇温して前記ペレットを黒鉛化した。この黒鉛ペレットを粉砕、分級することにより、後述する測定方法で測定した、細孔の直径を小さいものから大きいものへと積算したときの量が90%になる細孔径D90が0.04μmである黒鉛粒子を作製した。
なお、黒鉛粒子の細孔は添加したケイ素粒子が触媒作用をして形成されるものであり、このケイ素は沸点が約2600℃であるので、3000℃の加熱処理を施すことにより黒鉛から揮発させ除去されている。
〈負極の作製〉
上記黒鉛粒子と、後述する測定方法で測定した、平均粒径が0.5μmのスチレンブタジエンゴム(SBR)の水ディスパージョンとを水に分散させ、さらに増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)を加えて、負極活物質スラリーを作製した。この負極活物質スラリーは乾燥後の固形分質量組成比が、活物質:SBR:CMC=100:3:2となるように調整されている。
上記スラリーをドクターブレード法により負極集電体としての銅箔の両面に塗布した後、乾燥し、次いでこれを圧縮して充填密度が1.6g/mlの負極を作製した。
〈電解液の調製〉
非水溶媒として、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)を体積比5:5で混合し、この混合溶媒に電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1モル/L濃度に溶かしたものを電解液とした。
上記正極板と負極板とを両者の間にポリプロピレン製微多孔膜からなるセパレータを介在させて巻回して電極体となし、これを金属製円筒型外装缶に収納した後、上記電解液を注液し、その後開口部を封口することにより、実施例1に係る円筒型電池(設計容量1800mAh)を作製した。
(実施例2〜4、比較例1〜5)
下記表1に示すように、黒鉛の細孔径D90及びスチレンブタジエンゴム(SBR)の平均粒径を下記表1に示すように変化させたこと以外は、上記実施例1と同様にして実施例2〜4、比較例1〜5に係る電池を作製した。なお、黒鉛の細孔径D90は、作製時に混合するケイ素粒子の粒径を変化させることによってそのサイズを制御した。
《黒鉛、SBRの物性試験》
黒鉛の細孔径D90は、(株)島津製作所製ASAP2010を用いて、窒素吸着法により測定した。
SBRの平均粒径は、(株)島津製作所製SLAD−2000Jを用いて測定した。
〔負荷特性試験〕
上記で作製した電池を1It(1800mA)で4.2Vまで定電流充電し、その後4.2Vで100mAまで定電圧充電した。その後、1Itで2.75Vまで放電し、電池容量を測定した。
この後、上記と同一の条件で充電した後、3It(5400mA)で2.75Vまで放電しその容量を測定した。
そして、以下の式により負荷特性を測定した。この結果を下記表1に示す。
負荷特性(%)=3It放電容量÷1It放電容量×100
〔密着性試験〕
上記で作製した負極に対し、JIS D0202試験法により、密着強度を測定した。具体的には、負極に1mm角の碁盤目を100個(10×10)作製し、当該碁盤目上にセロハンテープ(ニチバン社製CT24)を完全に貼り付け、直ちにテープの一端を負極と垂直に保ち、瞬間的に引き離し、100個の碁盤目中に占める活物質の剥がれが生じていない碁盤目の数を計測した。この密着性を、百分率として下記表1に示す。
Figure 0004535761
上記表1から、炭素材料である黒鉛の細孔径D90が、結着剤であるスチレンブタジエンゴム(SBR)の平均粒径よりも小さい実施例1〜4は、負荷特性が76〜85%、密着性が58〜77%であり、黒鉛の細孔径D90がSBRの平均粒径以上である比較例1〜5の負荷特性53〜63%、密着性27〜43%よりもそれぞれ優れていることがわかる。
このことは次のように考えられる。黒鉛の細孔径D90がSBRの平均粒径以上であると、黒鉛の細孔に結着剤粒子が取り込まれ、結着剤粒子が当該部分でのリチウムイオンの吸蔵脱離を阻害して、負荷特性を劣化させる。また、結着剤が細孔に取り込まれると、当該結着剤は活物質と集電体との密着に寄与できなくなり、活物質と集電体との密着性が低下する。
他方、黒鉛の細孔径D90がSBRの平均粒径より小さいと、黒鉛の細孔に結着剤が取り込まれるといった現象がほとんど生じないので、黒鉛の細孔でリチウムイオンが円滑に吸蔵脱離する。また、活物質と集電体との密着に寄与しない結着剤量が極めて少なくなるので、集電体と活物質との密着性が高まる。
また、実施例1〜4の比較から、黒鉛の細孔径D90とSBRの平均粒径との差が大ききなるにつれ、負荷特性、密着性ともに高くなる傾向があることがわかる。ここで、黒鉛の細孔径D90とSBRの平均粒径との差は、0.06μmより大きいことが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。
〔その他の事項〕
尚、上記実施の形態では角型外装缶を使用したが、円筒状、ラミネート外装体等種々の形状にすることができることは勿論である。また、固体高分子電解質電池にも適用することができる。
また、上記の実施の形態ではドクターブレードによりスラリーを塗布したが、ダイコーターであってもよい。また、活物質スラリーのかわりに活物質ペーストを用い、ローラコーティング法により塗布することもできる。また、アルミニウム箔のかわりにアルミニウムメッシュ、発泡ニッケルを用いても同様に作製することができる。
また、正極活物質としては、リチウム含有遷移金属複合酸化物から選択される一種の化合物、あるいは二種以上の化合物を混合して用いることができ、例えば、コバルト酸リチウム・ニッケル酸リチウム・マンガン酸リチウム・鉄酸リチウム、またはこれらの酸化物に含まれる遷移金属の一部を他の元素で置換した酸化物等が用いることができる。
また、負極活物質としては、細孔を有する炭素材料であればよく、例えば天然黒鉛・人造黒鉛・カーボンブラック・コークス・ガラス状炭素・炭素繊維、またはこれらの焼成体等の炭素材料、あるいはこれらの混合物を用いることができる。中でも、天然黒鉛や人造黒鉛を用いることが好ましい。
また、炭素材料粒子の空孔率は、1〜20%の範囲であることが好ましい。
また、炭素材料粒子の粒径は5〜50mmの範囲であることが好ましい。
また、負極活物質スラリーに用いる増粘剤しては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン等を単独で、もしくは二種以上混合して使用することができる。しかし、増粘剤は本発明の必須の構成要素ではない。
また、電解質に使用する非水溶媒としては、カーボネート類・ラクトン類・エーテル類・ケトン類・ニトリル類・アミド類・スルホン系化合物・エステル類・芳香族炭化水素等から選択される化合物の一種、あるいは二種以上混合して用いることができる。これらの内でも・カーボネート類・ラクトン類・エーテル類・ケトン類・ニトリル類が好ましく、特にカーボネート類がさらに好ましい。これらの具体例としては、エチレンカーボネート・プロピレンカーボネート・ブチレンカーボネート・ジエチルカーボネート・ジメチルカーボネート・エチルメチルカーボネート・γ−ブチロラクトン・1,2−ジメトキシエタン・テトラヒドロフラン・アニソール・1,4−ジオキサン・4−メチル−2−ペンタノン・シクロヘキサノン・アセトニトリル・プロピオニトリル・ジメチルホルムアミド・スルホラン・蟻酸メチル・蟻酸エチル・酢酸メチル・酢酸エチル・酢酸プロピル・プロピオン酸エチルなどがあげられる。
また、電解質塩としては、LiN(C25SO22・LiN(CF3SO22・LiCF3SO3・LiPF6・LiBF4・LiAsF6・LiClO4等のリチウム塩から選択される化合物の一種単独で、あるいは二種以上混合して使用することができる。また、前記非水溶媒に対する電解質塩の溶解量は0.5〜2.0モル/リットルとすることが好ましい。
上記の結果から明らかなように、本発明によると、負荷特性に優れ、活物質と集電体との密着性の高い非水電解質二次電池を提供できるという優れた効果を奏する。よって、産業上の利用可能性は大きい。

Claims (3)

  1. 正極と、
    細孔を有する炭素材料粒子群と水に分散する結着剤粒子群とを含む負極と、
    非水電解質と、
    を有する非水電解質二次電池において、
    前記細孔を有する炭素粒子群を、細孔直径の小さいものから大きいものへと積算するとき、全積算細孔直径が90%になる点における粒子細孔径D90が、前記結着剤粒子群の平均粒径よりも小さい、
    ことを特徴とする非水電解質二次電池。
  2. 請求項1に記載の非水電解質二次電池において、
    前記結着剤粒子群の平均粒径と前記炭素材料粒子群の細孔径D90との差が、0.06μmより大きい、
    ことを特徴とする非水電解質二次電池。
  3. 請求項1または2に記載の非水電解質二次電池において、
    前記炭素材料が黒鉛である、
    ことを特徴とする非水電解質二次電池。

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