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JP4803240B2 - 非水電解質二次電池 - Google Patents

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JP4803240B2 JP2008301208A JP2008301208A JP4803240B2 JP 4803240 B2 JP4803240 B2 JP 4803240B2 JP 2008301208 A JP2008301208 A JP 2008301208A JP 2008301208 A JP2008301208 A JP 2008301208A JP 4803240 B2 JP4803240 B2 JP 4803240B2
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Description

本発明は、非水電解質二次電池に関する。特に集電体との密着性が良好で高い充放電特性を発揮することのできる負極合剤、負極、並びに該負極を有する非水電解質二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池等の電池に用いる電極は、通常金属等からなる集電体上に電極材料層を形成した構造を有する。前記電極は、少なくとも活物質及び結着剤(バインダー)を溶媒に分散又は溶解させた塗布液を集電体上に塗布、乾燥することによって製造されるのが一般的である。この製造方法は、一度に大面積の電極を製造することができるため、工業的に生産性が高い。
前記負極電極として、炭素系の活物質を用いる場合、バインダーとしてはポリフッ化ビニリデン(PVDF)やポリアクリロニトリル(PAN)、スチレンブタジエンラバー(SBR)などが広く利用されている。
前記負極電極として、炭素系の活物質を用いる場合、電池の高容量化の点などから高結晶性の天然黒鉛或いは人造黒鉛が利用されている。天然黒鉛は黒鉛の理論容量に近い容量が得られるが、その比表面積が人造黒鉛に比べて大きく、PVDFやSBRなどのバインダーでは負極集電体との結着性が十分でない場合が多く、生産性の低下や電極不良率の増加などが問題となる。負極集電体との密着性を改善するため、PVDFやSBRの添加量を増やすことで密着性が改善することができるが、充電時のLiイオン挿入の阻害や容量低下を引き起こす。一方、人造黒鉛は一般的に天然黒鉛に比べ比表面積が小さいため、PVDFなどのバインダーを使用しても負極集電体との密着性は確保できるが、その容量は天然黒鉛に比べて低い。バインダー量を削減することで、電池の高容量化は可能であるが、負極集電体との密着性が低下し、生産性の低下や不良率の増加が問題となる。
一方、バインダーにPANを用いると、天然黒鉛でも負極集電体との密着性を確保することができ、人造黒鉛でバインダー量を削減しても負極集電体との密着性を確保できることから、電池の高容量化が可能となる。
特許文献1には、「負極活物質と導電剤の分散性が向上されたリチウム2次電池用負極活物質スラリー及びそれを含むリチウム2次電池に関し、より詳細には、リチウムイオンが吸藏、脱離可能な炭素系負極活物質、スチレンーブタジエン系高分子樹脂を含む結着剤、セルロース系又はアクリルレート系樹脂を含む増粘剤、及び水を含む負極活物質スラリーに表面吸着可能な高分子主鎖と非イオン性界面活性剤の特性を有する側鎖を含む分散剤を少量添加すること」が記載されている。
特許文献2には、特定の正極活物質と、水分散性エラストマーと増粘剤としての水溶性高分子とからなるバインダー成分と、分散媒としての水と、分散剤とを含有してなる正極ペーストから形成した正極を用いて、集電体の腐食等により電池性能低下の問題が生じず、かつ塗工面に凹凸の発生のないリチウム電池用正極及びこれを用いたリチウム電池が記載されている。
特許文献3には、正極の平均一次粒子径10〜100nmであるカーボン材の少なくとも1種類以上とポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロパン共重合体などのバインダーとピロリドン骨格を有する化合物を含み、かつ電極の黒色度が1.20以上とし、電気特性に優れ、高温でも安定して作動する非水二次電池を提供し、さらに、塗料の貯蔵安定性を改善することにより、生産効率を向上させる旨の記載がある。
特許文献4には、N−メチル−2−ピロリドンを分散媒とし、これに平均粒径0.1〜1μmのカーボンブラックを3〜30質量%の割合で懸濁させると共に、ビニルピロリドン系ポリマーを0.1〜10質量%添加してなるリチウム二次電池電極用カーボンブラックスラリーとし、粒径を制御でき、また経日のスラリー安定性が良好で、スラリーの計量や輸送等のハンドリング性、また高濃度にすることで輸送コストを低減できる旨の記載がある。
特許文献5には、電池の電極製造に用いる塗布液であって、前記塗布液が、溶媒に、結着剤(バインダー)、及び炭素系物質を含有し、更に、前記塗布液が、窒素を含む五員環構造を側鎖に有する高分子を塗布液の全質量に対して1ppm以上、10000ppm以下含有する塗布液とし、粘度安定性が高く生産安定性に優れる電極製造用の塗布液、並びに前記塗布液を用いて製造した電極及び電池を提供する旨の記載がある。
ところで、PANをバインダーに使用すると、塗料の安定性が著しく悪化し、塗布液の固形分(主として炭素系材料)が凝集し、2〜10時間経過した後には容器の底に固い沈降物が発生し、塗工出来ない。塗布液の製造直後に塗工しても、経時的に塗布液が凝集することにより、塗布液中のバインダー分布が生じ、負極集電体との密着性が劣化する、または負極塗布量のばらつきによる負極電極容量低下などの不具合が生じ、安定的に塗工することができず、生産性や電極特性が著しく低下するという大きな問題があった。
特許文献5に記載の発明は、塗布液に窒素を含む五員環構造を側鎖にもつ高分子を添加することで、固形分の凝集、塗布液の粘度低下を抑制する技術であるが、塗布液を作製後から比較的短時間で起こる炭素系材料の凝集を抑制し、フィルターでの目詰まりを抑制するものである。本発明のような塗布液製造直後から比較的長時間経過した後に容器の底に固い沈降物が発生するような、ポリアクリロニトリルバインダー由来の凝集を抑制するものではない。PVDFやスチレンブタジエンゴムをバインダーに用いた場合には上記のような凝集は発生しない。
特表2006−516795号公報 特開2006−134777号公報 特開2003−331847号公報 特開2003−157846号公報 特開2004−63423号公報
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、ポリアクリロニトリル系樹脂を結着剤に使用する系において、負極合剤の負極集電体との密着性及び繰り返し充放電後の放電容量維持率に優れた非水電解質二次電池、該負極合剤、負極、並びに負極の製造方法を提供することにある。
本発明では、スラリーにシアノ基の分子間相互作用を抑制可能で立体障害を付与することができるポリマーを添加する事により、スラリーの安定性が向上し、負極合剤の負極集電体との密着性にも優れることを見出した。
すなわち本発明は下記の非水電解質二次電池及びスラリーを提供する。
[1]炭素系材料を含む負極活物質、少なくともポリアクリロニトリル系樹脂を含む結着剤、及びシアノ基の分子間相互作用を抑制可能で立体障害を付与することができるポリマーであるポリビニルピロリドン(PVP)およびポリエチレンオキサイド(PEO)の少なくとも一方を含有する負極合剤が負極集電体に積層された負極を有する非水電解質二次電池。
[2]炭素系材料を含む負極活物質、少なくともポリアクリロニトリル系樹脂を含む結着剤、及びシアノ基の分子間相互作用を抑制可能で立体障害を付与することができるポリマーであるポリビニルピロリドン(PVP)およびポリエチレンオキサイド(PEO)の少なくとも一方を含有する負極合剤。
[3]炭素系材料を含む負極活物質、少なくともポリアクリロニトリル系樹脂を含む結着剤、及びシアノ基の分子間相互作用を抑制可能で立体障害を付与することができるポリマーであるポリビニルピロリドン(PVP)およびポリエチレンオキサイド(PEO)の少なくとも一方を含有する負極合剤が負極集電体に積層された負極。
[4]炭素系材料を含む負極活物質と、溶媒と、少なくともポリアクリロニトリル系樹脂を含む結着剤と、シアノ基の分子間相互作用を抑制可能で立体障害を付与することができるポリマーであるポリビニルピロリドン(PVP)およびポリエチレンオキサイド(PEO)の少なくとも一方とを含有する負極合剤スラリーを負極集電体に塗布する塗布工程と、前記塗布工程の後に、負極合剤スラリーの溶媒を蒸発させる溶媒除去工程と、を備える負極の製造方法。
本願明細書において、負極合剤とは、負極の負極集電体上に積層され負極活物質を含む層を形成する合剤を意味し、負極合剤スラリー(以下、単に「スラリー」ともいう)は、負極合剤に、これを集電体上に塗布するためにスラリー状にしたものを意味する。また、ポリビニルピロリドン(PVP)およびポリエチレンオキサイド(PEO)のような、シアノ基の分子間相互作用を抑制可能で立体障害を付与することができるポリマーを「本発明の機能性ポリマー」ともいう。
本発明の機能性ポリマーは、ポリアクリルニトリル系樹脂を含む結着剤とともに用いられる。本発明の機能性ポリマーは、ポリアクリロニトリル系樹脂の存在下で分極してシアノ基に吸着可能である。
本発明によれば、スラリーの安定性が向上し、スラリーの凝集、沈降物の発生を大きく遅延させることができるので、省力的であり、負極合剤の負極集電体との密着性に優れるので安定した品質の非水電解質二次電池を提供することができる。
以下、本発明について詳述する。なお、本願明細書において、「%」は特記しない限り、質量%を意味する。
本発明は、負極の形成に本発明の機能性ポリマーを用いる。この本発明の機能性ポリマーについて説明する。
この本発明の機能性ポリマーは、負極作製時におけるスラリーの固形分の凝集を防ぎ、容器の底に固い沈降物が発生するのを防ぐ機能を有する。結着剤としてPANを用いると、上記凝集が生じる理由は以下のように考えられる。
1.炭素系材料にバインダーであるPANが吸着する。
2.炭素系材料に吸着したPAN同士がシアノ基の強い極性により分子間結合する。
3.PANにより引き寄せられた炭素材料が凝集する。
本発明の機能性ポリマーを用いることにより、上記凝集を抑制する理由としては、分子内の電荷の偏りから、PANのシアノ基に吸着する。そしてこのポリマー側鎖の立体障害効果により、炭素材料同士の接触を抑制するためと考えられる。
本発明において、本発明の機能性ポリマーは、上述の機能を有する。
このような機能を有する本発明の機能性ポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、でんぷん、天然ガムなどがある。上記、本発明の機能性ポリマーは単独で用いても良く、2種類以上を混合して使用しても良い。
本発明の機能性ポリマーの質量平均分子量は1000以上1000000以下が好ましく、更に好ましくは10000以上、500000以下である。分子量が小さすぎると立体障害効果としての機能が発現できず、分子量を大きくしすぎるとポリマーの溶解性が低下したり、スラリーの粘度上昇による生産性の悪化や電極形状不良などによる不良率増加などの問題が生じる場合がある。
本発明の機能性ポリマーの合計含有量は、負極合剤の全質量を基準として0.01〜5%であることが好ましく、0.01〜2%であることが好ましい。この範囲で上記機能を有効に発揮することができる。
次に結着剤について説明する。
結着剤は、ポリアクリロニトリル系樹脂、又はポリアクリロニトリル系樹脂とポリフッ化ビニリデン系樹脂を含むことが好ましい。
ポリアクリロニトリル系樹脂は、(メタ)アクリロニトリルの単独重合体もしくは(メタ)アクリロニトリルとその他のモノマーとの共重合体、または上記共重合体の変性物であって、(メタ)アクリレート共重合体であることが好ましく、中でも(メタ)アクリロニトリルの単独重合体が好ましい。本願明細書において、(メタ)アクリロニトリルとは、メタクリロニトリル及びアクリロニトリルを総称するもので、少なくとも何れか一方を意味する。(メタ)アクリレートも上記と同様である。
(メタ)アクリロニトリルとその他のモノマーとの共重合体としては、(メタ)アクリロニトリルに、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アミノメチル(メタ)アクリレート、N−メチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、スチレンビニルトルエン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、酢酸イソプロペニル等のビニル誘導体、マレイン酸、フマル酸等の不飽和二塩基酸などを共重合したものが挙げられる。
また、結着剤としては、下記式(1)で表されたエステル結合を有する化合物を含むことが望ましい。式(1)で表された単量体としては、特に限定されないが、R1はHまたはCHであるのが望ましい。R2は、2価の炭化水素基であるものが好ましい。ここで2価の炭化水素基としては、例えば、炭素数4〜100のアルキレン基、炭素数6〜50のアルキレン基、炭素数8〜15のアルキレン基であることが適当である。このアルキレン基は、直鎖または分枝鎖であってもよい。また、アルキレン基は、一部フッ素、塩素、ヨウ素等のハロゲンや、窒素、リン、芳香環、炭素数3〜10のシクロアルカン等で置換されていてもより。式(1)中、R2は、1個の炭素数2〜6のアルキレン基、好ましくは、炭素数2〜4のアルキレン基であることが適当である。また、R2は、アルキレン基がエーテル結合および/またはエステル結合を介して連結した基であってもよい。ここで上記のアルキレン基は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲンや、窒素、リン、芳香環、炭素数3〜10のシクロアルカン等で置換されていてもよい。具体的には、モノエチレングリコールモノメタクリレートなどのトリエチレングリコールモノアクリレート等が挙げられる。
Figure 0004803240
また、上記共重合体の変性物であって、(メタ)アクリレート共重合体であるポリアクリロニトリル系樹脂において、変性物とはアルコール性水酸基、カルボキシル基等により変性させたものを意味する。アルコール性水酸基やカルボキシル基は、アルコール性水酸基やカルボキシル基等で他の基を置換したり、アルコール性水酸基やカルボキシル基等を有するモノマーを共重合させて導入することができる。
また、(メタ)アクリレートとしては、上記のものが挙げられる。
上記のポリアクリロニトリル系樹脂は単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
次にポリフッ化ビニリデン系樹脂について説明する。
ポリフッ化ビニリデン系樹脂は、フッ化ビニリデンの単独重合体もしくはフッ化ビニリデンとその他のモノマーとの共重合体、または上記共重合体の変性物であることが好ましく、中でもフッ化ビニリデンの単独重合体が好ましい。
フッ化ビニリデンとその他のモノマーとの共重合体としては、例えばフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、または、上記例示した共重合体に、さらに、他のエチレン性不飽和モノマーを共重合したものなどを挙げることができる。なお、共重合可能なエチレン性不飽和モノマーとしては、より具体的には、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン、ブタジエン、スチレン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、グリシジルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはメチルビニルエーテルなどを挙げることができる。
また、上記共重合体の変性物であるポリフッ化ビニリデン系樹脂において、変性物とはアルコール性水酸基、カルボキシル基等による変性させたものを意味する。アルコール性水酸基やカルボキシル基はアルコール性水酸基やカルボキシル基等で他の基を置換したり、アルコール性水酸基やカルボキシル基等を有するモノマーを共重合させて導入することができる。
本発明において、結着剤としては、上記以外のものを併用してもよい。併用し得るものとしては、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。
本発明において、ポリアクリロニトリル系樹脂含有量、又はポリアクリロニトリル系樹脂とポリフッ化ビニリデン系樹脂の合計含有量は、負極合剤の全質量を基準として0.1〜10%であることが好ましい。ポリアクリロニトリル系樹脂とポリフッ化ビニリデン系樹脂と混合する場合、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の配合比が多すぎると電極の密着性が得られない場合がある。柔軟性を確保が必要な場合や、ゲルポリマー電池に使用しゲルとの密着性を向上させる場合などにはポリフッ化ビニリデン系樹脂を混合する場合がある。結着剤成分中のポリアクリロニトリル系樹脂とポリフッ化ビニリデン系樹脂との比率が質量比で100:0〜10:90であることが好ましく、100:0〜30:70であることが更に好ましい。結着剤の負極合剤における配合比に関しては、1〜7質量%が好ましく、更に好ましくは、1.5〜5質量%である。少なすぎると電極の密着性を得ることが困難となり、多すぎると充電時のLiイオン挿入の阻害や容量低下を引き起こす場合がある。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る二次電池の断面構造を表すものである。この二次電池は、いわゆる円筒型といわれるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、帯状の正極21と負極22とがセパレータ23を介して巻回された巻回電極体20を有している。電池缶11は、例えばニッケル(Ni)のめっきがされた鉄(Fe)により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶11の内部には、巻回電極体20を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板12,13がそれぞれ配置されている。
電池缶11の開放端部には、電池蓋14と、この電池蓋14の内側に設けられた安全弁機構15および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient;PTC素子)16とが、ガスケット17を介してかしめられることにより取り付けられており、電池缶11の内部は密閉されている。電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の材料により構成されている。安全弁機構15は、熱感抵抗素子16を介して電池蓋14と電気的に接続されており、内部短絡あるいは外部からの加熱などにより電池の内圧が一定以上となった場合にディスク板15Aが反転して電池蓋14と巻回電極体20との電気的接続を切断するようになっている。熱感抵抗素子16は、温度が上昇すると抵抗値の増大により電流を制限し、大電流による異常な発熱を防止するものである。ガスケット17は、例えば、絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
巻回電極体20の中心には例えばセンターピン24が挿入されている。巻回電極体20の正極21にはアルミニウム(Al)などよりなる正極リード25が接続されており、負極22にはニッケルなどよりなる負極リード26が接続されている。正極リード25は安全弁機構15に溶接されることにより電池蓋14と電気的に接続されており、負極リード26は電池缶11に溶接され電気的に接続されている。
図2は図1に示した巻回電極体20の一部を拡大して表すものである。
正極21は、例えば、対向する一対の面を有する正極集電体21Aの両面に正極活物質層21Bが設けられた構造を有している。なお、図示はしないが、正極集電体21Aの片面のみに正極活物質層21Bを設けるようにしてもよい。正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。
正極活物質層21Bは、例えば、正極活物質として、電極反応物質であるリチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料のいずれか1種または2種以上を含んで構成されている。リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、リチウム酸化物、リチウム硫化物、リチウムを含む層間化合物、あるいはリチウムリン酸化合物などのリチウム含有化合物が挙げられる。中でも、リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物、またはリチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物が好ましく、特に遷移金属元素としてコバルト(Co),ニッケル,マンガン(Mn),鉄,アルミニウム,バナジウム(V),およびチタン(Ti)のうちの少なくとも1種を含むものが好ましい。その化学式は、例えば、LiMIOあるいはLiMIIPOで表される。式中、MIおよびMIIは1種類以上の遷移金属元素を含み、xおよびyの値は電池の充放電状態によって異なり、通常、0.05≦x≦1.10、0.05≦y≦1.10である。
リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物の具体例としては、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル複合酸化物(LiNiO)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(LiNi1−zCo(z<1))、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi(1−v−w)CoMn(v+w<1))、あるいはスピネル型構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(LiMn)などが挙げられる。リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物の具体例としては、例えばリチウム鉄リン酸化合物(LiFePO)あるいはリチウム鉄マンガンリン酸化合物(LiFe1−uMnPO(u<1))が挙げられる。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、また、他の金属化合物あるいは高分子材料も挙げられる。他の金属化合物としては、例えば、酸化チタン、酸化バナジウムあるいは二酸化マンガンなどの酸化物、または硫化チタンあるいは硫化モリブデンなどの二硫化物が挙げられる。高分子材料としては、例えば、ポリアニリンあるいはポリチオフェンが挙げられる。
正極活物質層21Bは、必要に応じて導電剤を含んでいてもよい。導電剤としては、例えば、黒鉛,カーボンブラックあるいはケッチェンブラックなどの炭素材料が挙げられ、1種または2種以上が混合して用いられる。また、炭素材料の他にも、導電性を有する材料であれば金属材料あるいは導電性高分子材料などを用いるようにしてもよい。
負極22は、例えば、対向する一対の面を有する負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bが設けられた構成を有している。なお、図示はしないが、負極集電体22Aの片面のみに負極活物質層22Bを設けるようにしてもよい。負極集電体22Aは、例えば、銅箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。
負極活物質層22Bは、例えば、負極活物質として、電極反応物質であるリチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種または2種以上を含んで構成されており、必要に応じて、例えば正極活物質層21Bと同様の導電剤を含んでいてもよい。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極活物質としては、例えば、黒鉛、難黒鉛化性炭素あるいは易黒鉛化性炭素などの炭素系材料が挙げられる。これらの炭素系材料は、充放電時に生じる結晶構造の変化が非常に少なく、高い充放電容量を得ることができると共に、良好な充放電サイクル特性を得ることができるので好ましい。特に、黒鉛は電気化学当量が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるので好ましい。
黒鉛としては、真密度が2.10g/cm以上のものが好ましく、2.18g/cm以上のものであればより好ましい。なお、このような真密度を得るには、(002)面のC軸結晶子厚みが14.0nm以上であることが必要である。また、(002)面の面間隔は、0.340nm未満であることが好ましく、0.335nm以上0.337nm以下の範囲内であればより好ましい。黒鉛は、天然黒鉛であってもよいし、人造黒鉛であってもよい。
難黒鉛化性炭素としては、(002)面の面間隔が0.37nm以上、真密度が1.70g/cm未満であると共に、空気中での示差熱分析(differential thermal analysis;DTA)において、700℃以上に発熱ピークを示さないものが好ましい。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、また、リチウムを吸蔵および放出することが可能であり、金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として含む負極材料も挙げられる。このような負極材料を用いれば、高いエネルギー密度を得ることができるからである。この負極材料は金属元素あるいは半金属元素の単体でも合金でも化合物でもよく、また、これらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもよい。なお、本発明において、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含める。また、非金属元素を含んでいてもよい。その組織には固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物あるいはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
この負極材料を構成する金属元素あるいは半金属元素としては、例えば、リチウムと合金を形成可能なマグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)あるいは白金(Pt)が挙げられる。これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
中でも、この負極材料としては、短周期型周期表における4B族の金属元素あるいは半金属元素を構成元素として含むものが好ましく、特に好ましいのはケイ素およびスズの少なくとも一方を構成元素として含むものである。ケイ素およびスズは、リチウムを吸蔵および放出する能力が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるからである。
スズの合金としては、例えば、スズ以外の第2の構成元素として、ケイ素、ニッケル、銅(Cu)、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン(Ti)、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン(Sb)、およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモンおよびクロムからなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
スズの化合物あるいはケイ素の化合物としては、例えば、酸素(O)あるいは炭素(C)を含むものが挙げられ、スズまたはケイ素に加えて、上述した第2の構成元素を含んでいてもよい。
セパレータ23は、正極21と負極22とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータ23は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどよりなる合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミック製の不織布などの無機材料よりなる多孔質膜により構成されており、これらの2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。中でも、ポリオレフィン製の多孔質膜は短絡防止効果に優れ、かつシャットダウン効果による電池の安全性向上を図ることができるので好ましい。特に、ポリエチレンは、100℃以上160℃以下の範囲内においてシャットダウン効果を得ることができ、かつ電気化学的安定性にも優れているので、セパレータ23を構成する材料として好ましい。また、ポリプロピレンも好ましく、他にも、化学的安定性を備えた樹脂であればポリエチレンあるいはポリプロピレンと共重合させたり、またはブレンド化したりすることで用いることができる。
セパレータ23には、電解液が含浸されている。電解液は、例えば、溶媒と、この溶媒に溶解された電解質塩とを含んでいる。
溶媒としては、例えば、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ビニレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピロニトリル、N,N−ジメチルフォルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、ジメチルスルフォキシド、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、あるいはエチレンスルフィドが挙げられる。中でも、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ビニレン、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルあるいはエチレンスルフィドは、優れた充放電容量特性および充放電サイクル特性を得ることができるので好ましい。溶媒には、上記に加えて、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドトリメチルヘキシルアンモニウムなどの常温溶融塩を含むようにしてもよい。
電解質塩としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドリチウム(Li(CSON)、過塩素酸リチウム(LiClO)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiSOCF)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(Li(CFSON)、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチルリチウム(LiC(SOCF)、塩化リチウム(LiCl)および臭化リチウム(LiBr)のうち、いずれか1種または2種以上の材料を混合したものを用いることができる。
この二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、正極活物質と、導電剤と、結着剤とを含むものを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーとする。続いて、この正極合剤スラリーを正極集電体21Aに塗布したのち溶剤を揮発させ、さらにロールプレス機などにより圧縮成型して正極活物質層21Bを形成し、正極21を作製する。
また、負極活物質および少なくともポリアクリロニトリル系樹脂を含む結着剤と、ポリビニルピロリドン等の本発明の機能性ポリマーとを含むものを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させてペースト状の負極合剤スラリーとする。この様に、ポリアクリロニトリル系樹脂を含む結着剤を用いる場合に本発明の機能性ポリマーを含ませたスラリーでは、本発明の機能性ポリマーによって、スラリーの経時的安定性が向上し、スラリーの凝集、沈降物の発生を大きく遅延させることができ、省力的である。
続いて、この負極合剤スラリーを負極集電体22Aに塗布し溶剤を乾燥させたのち、ロールプレス機などにより圧縮成型して負極活物質層22Bを形成し、負極22を作製する。
次いで、正極集電体21Aに正極リード25を溶接などにより取り付けると共に、負極集電体22Aに負極リード26を溶接などにより取り付ける。そののち、正極21と負極22とをセパレータ23を介して巻回し、正極リード25の先端部を安全弁機構15に溶接すると共に、負極リード26の先端部を電池缶11に溶接して、巻回した正極21および負極22を一対の絶縁板12,13で挟み電池缶11の内部に収納する。正極21および負極22を電池缶11の内部に収納したのち、電解液を電池缶11の内部に注入し、セパレータ23に含浸させる。そののち、電池缶11の開口端部に電池蓋14,安全弁機構15および熱感抵抗素子16をガスケット17を介してかしめることにより固定する。これにより、図1に示した二次電池が完成する。
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極活物質層21Bからリチウムイオンが放出され、電解液を介して負極活物質層22Bに吸蔵される。また、放電を行うと、例えば、負極活物質層22Bからリチウムイオンが放出され、電解液を介して正極活物質層21Bに吸蔵される。
本発明の具体的な実施例について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
<負極用スラリーの作製>
実施例1〜12、実施例15
炭素系材料の負極活物質として天然または人造黒鉛(表1に比表面積(SA)を示す)、結着剤としてPANを、ポリマーAとして本発明の機能性ポリマーのPVP(ポリビニルピロリドン)、PEO(ポリエチレンオキサイド)、またはPAA(ポリアクリル酸)を、溶媒としてNMPを各々用い、均質に混合して負極用スラリーを得た。表1に記載の添加量は、負極合剤に対する割合である。
実施例13〜14
炭素系材料の負極活物質として天然黒鉛(表1に比表面積(SA)を示す)、結着剤としてPANを、ポリマーAとしてPVPを用い、ポリマーBとしてPVDFを、溶媒としてNMPを各々用い、均質に混合して負極用スラリーを得た。表1に記載の添加量は、負極合剤に対する割合である。
得られた負極用スラリーを以下により評価した。
(安定性)
100ccポリカップにスラリー100ml採取し、10時間後の沈降度合いを確認した。
○ 沈降物なし
△ やや増粘気味
× 容器の底に固い沈降物あり
(密着性)
銅箔上にスラリーをコーティングし、熱風式乾燥機により120℃で乾燥し、負極活物質層に両面テープを接着させて銅箔と共に切り出して試験片とし、180℃にてピール試験を実施した。ピール試験は、試験片の両面テープの他面をSUS板にて固定し、負極活物質層を半分まで剥がし、引っ張り試験(180℃)としたものである。
○ 10mN/mm以上
△ 10mN/mm未満
× 測定不可能:電極と両面テープとを剥がす際にすべて剥がれてしまい、測定できなかった(0mN/mm)。
<正極用スラリーの作製>
正極活物質としてコバルト酸リチウム、導電材としてカーボンブラック、結着剤としてPVDF、溶媒としてNMPを各々用い、均質に混合して正極用スラリーを得た。
<負極の作製>
得られたスラリーを、厚み12μmの銅箔より成る負極集電体の両面に均一に塗布し、乾燥し、ロールプレスにより圧縮成形して、負極合剤層を形成し、負極を作製した。その後、負極にニッケルにより成る負極端子を取り付けた。
<正極の作製>
得られたスラリーを、厚み15μmのアルミニウム箔より成る正極集電体の両面に均一に塗布し、乾燥し、ロールプレス機で圧縮成形して、正極活物質層を形成し、正極を作製した。その後、正極にアルミニウムより成る正極端子を取り付けた。
<電池の作製>
正極と負極とを厚み22μmの微多孔性ポリエチレンフィルムよりなるセパレータを介して積層し、直径3.2mmのセンターピンの周囲に巻回することにより巻回電極体を作製した。次いで、巻回電極体を一対の絶縁板で挟み、負極リードを電池缶に溶接すると共に、正極リードを安全弁機構に溶接して、巻回電極体をニッケルめっきした鉄製の電池缶の内部に収納した。続いて、電池缶の内部に電解液を注入し、ガスケットを介して電池蓋を電池缶にかしめることにより円筒型の二次電池を作製した。
その際、電解液として、ビニレンカーボネート(VC)と、炭酸エチレン(EC)と、フルオロエチレンカーボネート(FEC)と、炭酸ジエチル(DEC)と、炭酸プロピレン(PC)とを、1:30:10:49:10の割合で混合した溶媒に、電解質塩として六フッ化リン酸リチウムを1.0mol/kgの割合で溶解させたものを用いた。
作製した二次電池について、充放電を行い、放電容量維持率を調べた。その際、充電は、0.7Cの定電流で、電池電圧が4.2Vに達するまで行なったのち、4.2Vの定電圧で、充電の総時間が4時間になるまで行い、放電は、0.5Cの定電流で電池電圧が3.0Vに達するまで行った。1Cというのは、理論容量を1時間で放電しきる電流値である。放電容量維持率は、1サイクル目の放電容量に対する100サイクル目の放電容量の割合、すなわち(100サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100(%)とし、それぞれ相対比で示した。結果を表1に示す。
比較例1〜13
正極は、上記実施例と同じものを用い、負極は、表1に記載のものを用いた以外は、実施例と同様にしてスラリー、電極、電池を作製し、上記と同様に評価した結果を表1に示す。なお、ポリマーBとして用いられた、比較例2〜4のPVDF、比較例5のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、比較例6のPVC(ポリ塩化ビニル)は、本発明の機能性ポリマーの機能は有しないものである。また、ポリマーAとして用いられた、比較例9及び10のPEO(ポリエチレンオキサイド)、比較例11のCTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロミド)、比較例12のSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、比較例13のVP(PVPのモノマー)は、シアノ基の分子間相互作用を抑制する機能を有するものであるが、分子量が本発明の機能性ポリマーの下限に満たず、その機能が不十分のものである。また、比較例8の結着剤はPANに代えてCMC(カルボキシメチルセルロース)、SBRを表1記載の量用いた。
Figure 0004803240
上表より、実施例は、スラリーに本発明の機能性ポリマーを添加することで、PAN由来の凝集を抑制し、塗料の安定性と負極活物質層の負極集電体との密着性との両立が達成されているが、本発明を満たさない比較例は、その両立を達成できないことが分かる。実施例は、PANが均一に存在し、PANの結着性を良好に生かすことができるから、比表面積の比較的大きいが高容量である天然黒鉛系材料を使用した場合でも電極との密着性を良好に維持することができ、それによりサイクル後の容量維持率が改善された。また、比表面積の小さい人造黒鉛系材料を使用した場合、結着剤量を低減することができるため、電極として高容量化することが可能である。
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は実施の形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。
また、上記実施の形態および実施例では、巻回構造を有する円筒型の二次電池について具体的に挙げて説明したが、本発明は、巻回構造を有する楕円型あるいは多角形型の二次電池、または、正極および負極を折り畳んだり複数積層したりするなど他の形状を有する二次電池についても同様に適用することができる。加えて、本発明は、コイン型,ボタン型,角形あるいはラミネートフィルム型などの他の形状を有する二次電池についても同様に適用することができる。
また、上記実施の形態および実施例では、液状の電解液を用いる場合について説明したが、電解液を高分子化合物などの保持体に保持させたゲル状として用いるようにしてもよい。このような高分子化合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル,ポリフッ化ビニリデン,フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体,ポリテトラフルオロエチレン,ポリヘキサフルオロプロピレン,ポリエチレンオキサイド,ポリプロピレンオキサイド,ポリフォスファゼン,ポリシロキサン,ポリ酢酸ビニル,ポリビニルアルコール,ポリメタクリル酸メチル,ポリアクリル酸,ポリメタクリル酸,スチレン−ブタジエンゴム,ニトリル−ブタジエンゴム,ポリスチレンあるいはポリカーボネートが挙げられる。特に電気化学的安定性の点からはポリアクリロニトリル,ポリフッ化ビニリデン,ポリヘキサフルオロプロピレンあるいはポリエチレンオキサイドが好ましい。電解液に対する高分子化合物の割合は、これらの相溶性によってもことなるが、通常、電解液の5質量%以上50質量%以下に相当する高分子化合物を添加することが好ましい。
本発明の実施の形態に係る二次電池の構成を表す断面図である。 図1に示した二次電池における巻回電極体の一部を拡大して表す断面図である。
符号の説明
11…電池缶、12,13…絶縁板、14…電池蓋、15…安全弁機構、15A…ディスク板、16…熱感抵抗素子、17…ガスケット、20…巻回電極体、21…正極、21A…正極集電体、21B…正極活物質層、22…負極、22A…負極集電体、22B…負極活物質層、23…セパレータ、24…センターピン、25…正極リード、26…負極リード。

Claims (10)

  1. 炭素系材料を含む負極活物質、少なくともポリアクリロニトリル系樹脂を含む結着剤、及びシアノ基の分子間相互作用を抑制可能で立体障害を付与することができるポリマーであるポリビニルピロリドン(PVP)およびポリエチレンオキサイド(PEO)の少なくとも一方を含有する負極合剤が負極集電体に積層された負極を有する非水電解質二次電池。
  2. 前記ポリマーは、質量平均分子量が1000から1000000である請求項1に記載の非水電解質二次電池。
  3. 結着剤は、ポリアクリロニトリル系樹脂、又はポリアクリロニトリル系樹脂とポリフッ化ビニリデン系樹脂を含み、上記ポリアクリロニトリル系樹脂含有量、又はポリアクリロニトリル系樹脂とポリフッ化ビニリデン系樹脂の合計含有量が、負極合剤の全質量を基準として0.1〜10%である請求項1に記載の非水電解質二次電池。
  4. 結着剤は、ポリアクリロニトリル系樹脂とポリフッ化ビニリデン系樹脂との比率が質量比で100:0〜10:90である請求項1に記載の非水電解質二次電池。
  5. ポリアクリロニトリル系樹脂は、(メタ)アクリロニトリルの単独重合体もしくは(メタ)アクリロニトリルとその他のモノマーとの共重合体、または上記共重合体の変性物であって、(メタ)アクリレート共重合体である請求項3に記載の非水電解質二次電池。
  6. ポリフッ化ビニリデン系樹脂は、フッ化ビニリデンの単独重合体もしくはフッ化ビニリデンとその他のモノマーとの共重合体、または上記共重合体の変性物である請求項3に記載の非水電解質二次電池。
  7. シアノ基の分子間相互作用を抑制可能で立体障害を付与することができるポリマーの合計含有量が、負極合剤の全質量を基準として0.01〜5%である請求項1に記載の非水電解質二次電池。
  8. 炭素系材料を含む負極活物質、少なくともポリアクリロニトリル系樹脂を含む結着剤、及びシアノ基の分子間相互作用を抑制可能で立体障害を付与することができるポリマーであるポリビニルピロリドン(PVP)およびポリエチレンオキサイド(PEO)の少なくとも一方を含有する負極合剤。
  9. 炭素系材料を含む負極活物質、少なくともポリアクリロニトリル系樹脂を含む結着剤、及びシアノ基の分子間相互作用を抑制可能で立体障害を付与することができるポリマーであるポリビニルピロリドン(PVP)およびポリエチレンオキサイド(PEO)の少なくとも一方を含有する負極合剤が負極集電体に積層された負極。
  10. 炭素系材料を含む負極活物質と、溶媒と、少なくともポリアクリロニトリル系樹脂を含む結着剤と、シアノ基の分子間相互作用を抑制可能で立体障害を付与することができるポリマーであるポリビニルピロリドン(PVP)およびポリエチレンオキサイド(PEO)の少なくとも一方とを含有する負極合剤スラリーを負極集電体に塗布する塗布工程と、前記塗布工程の後に、負極合剤スラリーの溶媒を蒸発させる溶媒除去工程と、を備える負極の製造方法。
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