JP4803240B2 - 非水電解質二次電池 - Google Patents
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Description
前記負極電極として、炭素系の活物質を用いる場合、バインダーとしてはポリフッ化ビニリデン(PVDF)やポリアクリロニトリル(PAN)、スチレンブタジエンラバー(SBR)などが広く利用されている。
前記負極電極として、炭素系の活物質を用いる場合、電池の高容量化の点などから高結晶性の天然黒鉛或いは人造黒鉛が利用されている。天然黒鉛は黒鉛の理論容量に近い容量が得られるが、その比表面積が人造黒鉛に比べて大きく、PVDFやSBRなどのバインダーでは負極集電体との結着性が十分でない場合が多く、生産性の低下や電極不良率の増加などが問題となる。負極集電体との密着性を改善するため、PVDFやSBRの添加量を増やすことで密着性が改善することができるが、充電時のLiイオン挿入の阻害や容量低下を引き起こす。一方、人造黒鉛は一般的に天然黒鉛に比べ比表面積が小さいため、PVDFなどのバインダーを使用しても負極集電体との密着性は確保できるが、その容量は天然黒鉛に比べて低い。バインダー量を削減することで、電池の高容量化は可能であるが、負極集電体との密着性が低下し、生産性の低下や不良率の増加が問題となる。
一方、バインダーにPANを用いると、天然黒鉛でも負極集電体との密着性を確保することができ、人造黒鉛でバインダー量を削減しても負極集電体との密着性を確保できることから、電池の高容量化が可能となる。
特許文献1には、「負極活物質と導電剤の分散性が向上されたリチウム2次電池用負極活物質スラリー及びそれを含むリチウム2次電池に関し、より詳細には、リチウムイオンが吸藏、脱離可能な炭素系負極活物質、スチレンーブタジエン系高分子樹脂を含む結着剤、セルロース系又はアクリルレート系樹脂を含む増粘剤、及び水を含む負極活物質スラリーに表面吸着可能な高分子主鎖と非イオン性界面活性剤の特性を有する側鎖を含む分散剤を少量添加すること」が記載されている。
特許文献2には、特定の正極活物質と、水分散性エラストマーと増粘剤としての水溶性高分子とからなるバインダー成分と、分散媒としての水と、分散剤とを含有してなる正極ペーストから形成した正極を用いて、集電体の腐食等により電池性能低下の問題が生じず、かつ塗工面に凹凸の発生のないリチウム電池用正極及びこれを用いたリチウム電池が記載されている。
特許文献3には、正極の平均一次粒子径10〜100nmであるカーボン材の少なくとも1種類以上とポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロパン共重合体などのバインダーとピロリドン骨格を有する化合物を含み、かつ電極の黒色度が1.20以上とし、電気特性に優れ、高温でも安定して作動する非水二次電池を提供し、さらに、塗料の貯蔵安定性を改善することにより、生産効率を向上させる旨の記載がある。
特許文献4には、N−メチル−2−ピロリドンを分散媒とし、これに平均粒径0.1〜1μmのカーボンブラックを3〜30質量%の割合で懸濁させると共に、ビニルピロリドン系ポリマーを0.1〜10質量%添加してなるリチウム二次電池電極用カーボンブラックスラリーとし、粒径を制御でき、また経日のスラリー安定性が良好で、スラリーの計量や輸送等のハンドリング性、また高濃度にすることで輸送コストを低減できる旨の記載がある。
特許文献5には、電池の電極製造に用いる塗布液であって、前記塗布液が、溶媒に、結着剤(バインダー)、及び炭素系物質を含有し、更に、前記塗布液が、窒素を含む五員環構造を側鎖に有する高分子を塗布液の全質量に対して1ppm以上、10000ppm以下含有する塗布液とし、粘度安定性が高く生産安定性に優れる電極製造用の塗布液、並びに前記塗布液を用いて製造した電極及び電池を提供する旨の記載がある。
ところで、PANをバインダーに使用すると、塗料の安定性が著しく悪化し、塗布液の固形分(主として炭素系材料)が凝集し、2〜10時間経過した後には容器の底に固い沈降物が発生し、塗工出来ない。塗布液の製造直後に塗工しても、経時的に塗布液が凝集することにより、塗布液中のバインダー分布が生じ、負極集電体との密着性が劣化する、または負極塗布量のばらつきによる負極電極容量低下などの不具合が生じ、安定的に塗工することができず、生産性や電極特性が著しく低下するという大きな問題があった。
特許文献5に記載の発明は、塗布液に窒素を含む五員環構造を側鎖にもつ高分子を添加することで、固形分の凝集、塗布液の粘度低下を抑制する技術であるが、塗布液を作製後から比較的短時間で起こる炭素系材料の凝集を抑制し、フィルターでの目詰まりを抑制するものである。本発明のような塗布液製造直後から比較的長時間経過した後に容器の底に固い沈降物が発生するような、ポリアクリロニトリルバインダー由来の凝集を抑制するものではない。PVDFやスチレンブタジエンゴムをバインダーに用いた場合には上記のような凝集は発生しない。
すなわち本発明は下記の非水電解質二次電池及びスラリーを提供する。
[1]炭素系材料を含む負極活物質、少なくともポリアクリロニトリル系樹脂を含む結着剤、及びシアノ基の分子間相互作用を抑制可能で立体障害を付与することができるポリマーであるポリビニルピロリドン(PVP)およびポリエチレンオキサイド(PEO)の少なくとも一方を含有する負極合剤が負極集電体に積層された負極を有する非水電解質二次電池。
[2]炭素系材料を含む負極活物質、少なくともポリアクリロニトリル系樹脂を含む結着剤、及びシアノ基の分子間相互作用を抑制可能で立体障害を付与することができるポリマーであるポリビニルピロリドン(PVP)およびポリエチレンオキサイド(PEO)の少なくとも一方を含有する負極合剤。
[3]炭素系材料を含む負極活物質、少なくともポリアクリロニトリル系樹脂を含む結着剤、及びシアノ基の分子間相互作用を抑制可能で立体障害を付与することができるポリマーであるポリビニルピロリドン(PVP)およびポリエチレンオキサイド(PEO)の少なくとも一方を含有する負極合剤が負極集電体に積層された負極。
[4]炭素系材料を含む負極活物質と、溶媒と、少なくともポリアクリロニトリル系樹脂を含む結着剤と、シアノ基の分子間相互作用を抑制可能で立体障害を付与することができるポリマーであるポリビニルピロリドン(PVP)およびポリエチレンオキサイド(PEO)の少なくとも一方とを含有する負極合剤スラリーを負極集電体に塗布する塗布工程と、前記塗布工程の後に、負極合剤スラリーの溶媒を蒸発させる溶媒除去工程と、を備える負極の製造方法。
本願明細書において、負極合剤とは、負極の負極集電体上に積層され負極活物質を含む層を形成する合剤を意味し、負極合剤スラリー(以下、単に「スラリー」ともいう)は、負極合剤に、これを集電体上に塗布するためにスラリー状にしたものを意味する。また、ポリビニルピロリドン(PVP)およびポリエチレンオキサイド(PEO)のような、シアノ基の分子間相互作用を抑制可能で立体障害を付与することができるポリマーを「本発明の機能性ポリマー」ともいう。
本発明の機能性ポリマーは、ポリアクリルニトリル系樹脂を含む結着剤とともに用いられる。本発明の機能性ポリマーは、ポリアクリロニトリル系樹脂の存在下で分極してシアノ基に吸着可能である。
本発明は、負極の形成に本発明の機能性ポリマーを用いる。この本発明の機能性ポリマーについて説明する。
この本発明の機能性ポリマーは、負極作製時におけるスラリーの固形分の凝集を防ぎ、容器の底に固い沈降物が発生するのを防ぐ機能を有する。結着剤としてPANを用いると、上記凝集が生じる理由は以下のように考えられる。
1.炭素系材料にバインダーであるPANが吸着する。
2.炭素系材料に吸着したPAN同士がシアノ基の強い極性により分子間結合する。
3.PANにより引き寄せられた炭素材料が凝集する。
本発明の機能性ポリマーを用いることにより、上記凝集を抑制する理由としては、分子内の電荷の偏りから、PANのシアノ基に吸着する。そしてこのポリマー側鎖の立体障害効果により、炭素材料同士の接触を抑制するためと考えられる。
このような機能を有する本発明の機能性ポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、でんぷん、天然ガムなどがある。上記、本発明の機能性ポリマーは単独で用いても良く、2種類以上を混合して使用しても良い。
本発明の機能性ポリマーの質量平均分子量は1000以上1000000以下が好ましく、更に好ましくは10000以上、500000以下である。分子量が小さすぎると立体障害効果としての機能が発現できず、分子量を大きくしすぎるとポリマーの溶解性が低下したり、スラリーの粘度上昇による生産性の悪化や電極形状不良などによる不良率増加などの問題が生じる場合がある。
本発明の機能性ポリマーの合計含有量は、負極合剤の全質量を基準として0.01〜5%であることが好ましく、0.01〜2%であることが好ましい。この範囲で上記機能を有効に発揮することができる。
結着剤は、ポリアクリロニトリル系樹脂、又はポリアクリロニトリル系樹脂とポリフッ化ビニリデン系樹脂を含むことが好ましい。
ポリアクリロニトリル系樹脂は、(メタ)アクリロニトリルの単独重合体もしくは(メタ)アクリロニトリルとその他のモノマーとの共重合体、または上記共重合体の変性物であって、(メタ)アクリレート共重合体であることが好ましく、中でも(メタ)アクリロニトリルの単独重合体が好ましい。本願明細書において、(メタ)アクリロニトリルとは、メタクリロニトリル及びアクリロニトリルを総称するもので、少なくとも何れか一方を意味する。(メタ)アクリレートも上記と同様である。
(メタ)アクリロニトリルとその他のモノマーとの共重合体としては、(メタ)アクリロニトリルに、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アミノメチル(メタ)アクリレート、N−メチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、スチレンビニルトルエン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、酢酸イソプロペニル等のビニル誘導体、マレイン酸、フマル酸等の不飽和二塩基酸などを共重合したものが挙げられる。
また、結着剤としては、下記式(1)で表されたエステル結合を有する化合物を含むことが望ましい。式(1)で表された単量体としては、特に限定されないが、R1はHまたはCH3であるのが望ましい。R2は、2価の炭化水素基であるものが好ましい。ここで2価の炭化水素基としては、例えば、炭素数4〜100のアルキレン基、炭素数6〜50のアルキレン基、炭素数8〜15のアルキレン基であることが適当である。このアルキレン基は、直鎖または分枝鎖であってもよい。また、アルキレン基は、一部フッ素、塩素、ヨウ素等のハロゲンや、窒素、リン、芳香環、炭素数3〜10のシクロアルカン等で置換されていてもより。式(1)中、R2は、1個の炭素数2〜6のアルキレン基、好ましくは、炭素数2〜4のアルキレン基であることが適当である。また、R2は、アルキレン基がエーテル結合および/またはエステル結合を介して連結した基であってもよい。ここで上記のアルキレン基は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲンや、窒素、リン、芳香環、炭素数3〜10のシクロアルカン等で置換されていてもよい。具体的には、モノエチレングリコールモノメタクリレートなどのトリエチレングリコールモノアクリレート等が挙げられる。
また、(メタ)アクリレートとしては、上記のものが挙げられる。
上記のポリアクリロニトリル系樹脂は単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
ポリフッ化ビニリデン系樹脂は、フッ化ビニリデンの単独重合体もしくはフッ化ビニリデンとその他のモノマーとの共重合体、または上記共重合体の変性物であることが好ましく、中でもフッ化ビニリデンの単独重合体が好ましい。
フッ化ビニリデンとその他のモノマーとの共重合体としては、例えばフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、または、上記例示した共重合体に、さらに、他のエチレン性不飽和モノマーを共重合したものなどを挙げることができる。なお、共重合可能なエチレン性不飽和モノマーとしては、より具体的には、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン、ブタジエン、スチレン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、グリシジルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはメチルビニルエーテルなどを挙げることができる。
また、上記共重合体の変性物であるポリフッ化ビニリデン系樹脂において、変性物とはアルコール性水酸基、カルボキシル基等による変性させたものを意味する。アルコール性水酸基やカルボキシル基はアルコール性水酸基やカルボキシル基等で他の基を置換したり、アルコール性水酸基やカルボキシル基等を有するモノマーを共重合させて導入することができる。
図1は本発明の実施の形態に係る二次電池の断面構造を表すものである。この二次電池は、いわゆる円筒型といわれるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、帯状の正極21と負極22とがセパレータ23を介して巻回された巻回電極体20を有している。電池缶11は、例えばニッケル(Ni)のめっきがされた鉄(Fe)により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶11の内部には、巻回電極体20を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板12,13がそれぞれ配置されている。
正極21は、例えば、対向する一対の面を有する正極集電体21Aの両面に正極活物質層21Bが設けられた構造を有している。なお、図示はしないが、正極集電体21Aの片面のみに正極活物質層21Bを設けるようにしてもよい。正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。
正極活物質層21Bは、必要に応じて導電剤を含んでいてもよい。導電剤としては、例えば、黒鉛,カーボンブラックあるいはケッチェンブラックなどの炭素材料が挙げられ、1種または2種以上が混合して用いられる。また、炭素材料の他にも、導電性を有する材料であれば金属材料あるいは導電性高分子材料などを用いるようにしてもよい。
負極活物質層22Bは、例えば、負極活物質として、電極反応物質であるリチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種または2種以上を含んで構成されており、必要に応じて、例えば正極活物質層21Bと同様の導電剤を含んでいてもよい。
まず、正極活物質と、導電剤と、結着剤とを含むものを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーとする。続いて、この正極合剤スラリーを正極集電体21Aに塗布したのち溶剤を揮発させ、さらにロールプレス機などにより圧縮成型して正極活物質層21Bを形成し、正極21を作製する。
続いて、この負極合剤スラリーを負極集電体22Aに塗布し溶剤を乾燥させたのち、ロールプレス機などにより圧縮成型して負極活物質層22Bを形成し、負極22を作製する。
<負極用スラリーの作製>
実施例1〜12、実施例15
炭素系材料の負極活物質として天然または人造黒鉛(表1に比表面積(SA)を示す)、結着剤としてPANを、ポリマーAとして本発明の機能性ポリマーのPVP(ポリビニルピロリドン)、PEO(ポリエチレンオキサイド)、またはPAA(ポリアクリル酸)を、溶媒としてNMPを各々用い、均質に混合して負極用スラリーを得た。表1に記載の添加量は、負極合剤に対する割合である。
実施例13〜14
炭素系材料の負極活物質として天然黒鉛(表1に比表面積(SA)を示す)、結着剤としてPANを、ポリマーAとしてPVPを用い、ポリマーBとしてPVDFを、溶媒としてNMPを各々用い、均質に混合して負極用スラリーを得た。表1に記載の添加量は、負極合剤に対する割合である。
得られた負極用スラリーを以下により評価した。
(安定性)
100ccポリカップにスラリー100ml採取し、10時間後の沈降度合いを確認した。
○ 沈降物なし
△ やや増粘気味
× 容器の底に固い沈降物あり
(密着性)
銅箔上にスラリーをコーティングし、熱風式乾燥機により120℃で乾燥し、負極活物質層に両面テープを接着させて銅箔と共に切り出して試験片とし、180℃にてピール試験を実施した。ピール試験は、試験片の両面テープの他面をSUS板にて固定し、負極活物質層を半分まで剥がし、引っ張り試験(180℃)としたものである。
○ 10mN/mm以上
△ 10mN/mm未満
× 測定不可能:電極と両面テープとを剥がす際にすべて剥がれてしまい、測定できなかった(0mN/mm)。
<正極用スラリーの作製>
正極活物質としてコバルト酸リチウム、導電材としてカーボンブラック、結着剤としてPVDF、溶媒としてNMPを各々用い、均質に混合して正極用スラリーを得た。
<負極の作製>
得られたスラリーを、厚み12μmの銅箔より成る負極集電体の両面に均一に塗布し、乾燥し、ロールプレスにより圧縮成形して、負極合剤層を形成し、負極を作製した。その後、負極にニッケルにより成る負極端子を取り付けた。
<正極の作製>
得られたスラリーを、厚み15μmのアルミニウム箔より成る正極集電体の両面に均一に塗布し、乾燥し、ロールプレス機で圧縮成形して、正極活物質層を形成し、正極を作製した。その後、正極にアルミニウムより成る正極端子を取り付けた。
正極と負極とを厚み22μmの微多孔性ポリエチレンフィルムよりなるセパレータを介して積層し、直径3.2mmのセンターピンの周囲に巻回することにより巻回電極体を作製した。次いで、巻回電極体を一対の絶縁板で挟み、負極リードを電池缶に溶接すると共に、正極リードを安全弁機構に溶接して、巻回電極体をニッケルめっきした鉄製の電池缶の内部に収納した。続いて、電池缶の内部に電解液を注入し、ガスケットを介して電池蓋を電池缶にかしめることにより円筒型の二次電池を作製した。
正極は、上記実施例と同じものを用い、負極は、表1に記載のものを用いた以外は、実施例と同様にしてスラリー、電極、電池を作製し、上記と同様に評価した結果を表1に示す。なお、ポリマーBとして用いられた、比較例2〜4のPVDF、比較例5のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、比較例6のPVC(ポリ塩化ビニル)は、本発明の機能性ポリマーの機能は有しないものである。また、ポリマーAとして用いられた、比較例9及び10のPEO(ポリエチレンオキサイド)、比較例11のCTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロミド)、比較例12のSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、比較例13のVP(PVPのモノマー)は、シアノ基の分子間相互作用を抑制する機能を有するものであるが、分子量が本発明の機能性ポリマーの下限に満たず、その機能が不十分のものである。また、比較例8の結着剤はPANに代えてCMC(カルボキシメチルセルロース)、SBRを表1記載の量用いた。
また、上記実施の形態および実施例では、巻回構造を有する円筒型の二次電池について具体的に挙げて説明したが、本発明は、巻回構造を有する楕円型あるいは多角形型の二次電池、または、正極および負極を折り畳んだり複数積層したりするなど他の形状を有する二次電池についても同様に適用することができる。加えて、本発明は、コイン型,ボタン型,角形あるいはラミネートフィルム型などの他の形状を有する二次電池についても同様に適用することができる。
また、上記実施の形態および実施例では、液状の電解液を用いる場合について説明したが、電解液を高分子化合物などの保持体に保持させたゲル状として用いるようにしてもよい。このような高分子化合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル,ポリフッ化ビニリデン,フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体,ポリテトラフルオロエチレン,ポリヘキサフルオロプロピレン,ポリエチレンオキサイド,ポリプロピレンオキサイド,ポリフォスファゼン,ポリシロキサン,ポリ酢酸ビニル,ポリビニルアルコール,ポリメタクリル酸メチル,ポリアクリル酸,ポリメタクリル酸,スチレン−ブタジエンゴム,ニトリル−ブタジエンゴム,ポリスチレンあるいはポリカーボネートが挙げられる。特に電気化学的安定性の点からはポリアクリロニトリル,ポリフッ化ビニリデン,ポリヘキサフルオロプロピレンあるいはポリエチレンオキサイドが好ましい。電解液に対する高分子化合物の割合は、これらの相溶性によってもことなるが、通常、電解液の5質量%以上50質量%以下に相当する高分子化合物を添加することが好ましい。
Claims (10)
- 炭素系材料を含む負極活物質、少なくともポリアクリロニトリル系樹脂を含む結着剤、及びシアノ基の分子間相互作用を抑制可能で立体障害を付与することができるポリマーであるポリビニルピロリドン(PVP)およびポリエチレンオキサイド(PEO)の少なくとも一方を含有する負極合剤が負極集電体に積層された負極を有する非水電解質二次電池。
- 前記ポリマーは、質量平均分子量が1000から1000000である請求項1に記載の非水電解質二次電池。
- 結着剤は、ポリアクリロニトリル系樹脂、又はポリアクリロニトリル系樹脂とポリフッ化ビニリデン系樹脂を含み、上記ポリアクリロニトリル系樹脂含有量、又はポリアクリロニトリル系樹脂とポリフッ化ビニリデン系樹脂の合計含有量が、負極合剤の全質量を基準として0.1〜10%である請求項1に記載の非水電解質二次電池。
- 結着剤は、ポリアクリロニトリル系樹脂とポリフッ化ビニリデン系樹脂との比率が質量比で100:0〜10:90である請求項1に記載の非水電解質二次電池。
- ポリアクリロニトリル系樹脂は、(メタ)アクリロニトリルの単独重合体もしくは(メタ)アクリロニトリルとその他のモノマーとの共重合体、または上記共重合体の変性物であって、(メタ)アクリレート共重合体である請求項3に記載の非水電解質二次電池。
- ポリフッ化ビニリデン系樹脂は、フッ化ビニリデンの単独重合体もしくはフッ化ビニリデンとその他のモノマーとの共重合体、または上記共重合体の変性物である請求項3に記載の非水電解質二次電池。
- シアノ基の分子間相互作用を抑制可能で立体障害を付与することができるポリマーの合計含有量が、負極合剤の全質量を基準として0.01〜5%である請求項1に記載の非水電解質二次電池。
- 炭素系材料を含む負極活物質、少なくともポリアクリロニトリル系樹脂を含む結着剤、及びシアノ基の分子間相互作用を抑制可能で立体障害を付与することができるポリマーであるポリビニルピロリドン(PVP)およびポリエチレンオキサイド(PEO)の少なくとも一方を含有する負極合剤。
- 炭素系材料を含む負極活物質、少なくともポリアクリロニトリル系樹脂を含む結着剤、及びシアノ基の分子間相互作用を抑制可能で立体障害を付与することができるポリマーであるポリビニルピロリドン(PVP)およびポリエチレンオキサイド(PEO)の少なくとも一方を含有する負極合剤が負極集電体に積層された負極。
- 炭素系材料を含む負極活物質と、溶媒と、少なくともポリアクリロニトリル系樹脂を含む結着剤と、シアノ基の分子間相互作用を抑制可能で立体障害を付与することができるポリマーであるポリビニルピロリドン(PVP)およびポリエチレンオキサイド(PEO)の少なくとも一方とを含有する負極合剤スラリーを負極集電体に塗布する塗布工程と、前記塗布工程の後に、負極合剤スラリーの溶媒を蒸発させる溶媒除去工程と、を備える負極の製造方法。
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