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JP4515669B2 - ワンピースソリッドゴルフボール - Google Patents

ワンピースソリッドゴルフボール Download PDF

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JP4515669B2
JP4515669B2 JP2001253062A JP2001253062A JP4515669B2 JP 4515669 B2 JP4515669 B2 JP 4515669B2 JP 2001253062 A JP2001253062 A JP 2001253062A JP 2001253062 A JP2001253062 A JP 2001253062A JP 4515669 B2 JP4515669 B2 JP 4515669B2
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和久 伏原
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Sriスポーツ株式会社
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  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、加工性および耐久性を損なうことなく、優れた反発性能および良好な打球感を有するワンピースソリッドゴルフボールに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にゴルフボールは、ラウンド用と練習場用との2種類に大別される。これら2種類のゴルフボールに要求される性能は、必ずしも同じではない。即ち、ラウンド用ゴルフボールに要求される性能は、良好な打球感、優れた飛行性能である。しかしながら、このようなラウンド用ゴルフボールを練習場用ゴルフボールとして用いた場合、良好な打球感と優れた飛行性能は保持されるものの、繰り返し打撃される練習場用ゴルフボールとしては非常に耐久性の悪いものとなる。そのため練習場においては、打球感や飛行性能より耐久性を優先し、ラウンド用ゴルフボールより非常に耐久性の優れたゴルフボールが使用されている。
【0003】
また、この練習場用ゴルフボールも、それを使用する練習場の広さ、ネットの高さ等に応じて、低反発、低弾道、高弾道、水上練習用ボール等がある。更に、構造的にもワンピースゴルフボール、ツーピースゴルフボール等、種々のゴルフボールがあり、現在、練習場用ゴルフボールとして主に使用されているのは、ワンピースソリッドゴルフボールである。
【0004】
しかしながら、最近では、練習場用ゴルフボールにもラウンド用ゴルフボールにより近い打球感等の性能が求められるようになり、優れた耐久性を有する上記ワンピースソリッドゴルフボールにおいても良好な打球感や優れた飛行性能が要求されるようになった。しかしながら、打球感を向上するためにボールを軟らかくすると耐久性が低下したり、飛行性能を向上しようとすると耐久性が低下することとなり、耐久性を低下することなく打球感および飛行性能を向上することは非常に困難であった。
【0005】
一般的なワンピースゴルフボールの配合としては、ハイシスポリブタジエン、共架橋剤としてのメタクリル酸(またはメタクリル酸の金属塩)および有機過酸化物を含有するゴム組成物が広く用いられている。ツーピースゴルフボールのコア用ゴム組成物の共架橋剤に用いられているアクリル酸亜鉛を、ワンピースゴルフボールに用いると、反発性能は良好となるが耐久性が著しく悪くなるため通常は使用されない。
【0006】
そこで、耐久性および反発性を向上するために、高いムーニー粘度を有するポリブタジエンゴムを用いたり、硬度分布を平坦化したソリッドゴルフボールが提案されている(例えば、特開平2‐177973号公報、特許第2644226号公報等)。特開平2‐177973号公報には、高いムーニー粘度(48〜85ML1+4(100℃))を有するポリブタジエンを含むゴム組成物を加硫成形して得られ、硬度の最大値と最小値との差が15以下と硬度分布を平坦化したワンピースソリッドゴルフボールが記載されている。しかしながら、上記ゴルフボールにおいては、高いムーニー粘度を有するポリブタジエンゴムを用いているため分子量が高くて加工性が悪く、反発性は良好であるが耐久性が悪くなり、硬度分布を平坦化しているため打球感が悪くなるという問題があった。
【0007】
特許第2644226号公報には、ムーニー粘度(45〜90ML1+4(100℃))、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)を特定範囲内に規定したポリブタジエンを含有するゴム組成物を用いたソリッドゴルフボールが記載されている。しかしながら、上記公報と同様に高いムーニー粘度を有するポリブタジエンを用いているため、分子量が高くて加工性が悪く、反発性は良好であるが耐久性が悪くなるという問題があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような従来のワンピースソリッドゴルフボールの有する問題点を解決し、加工性および耐久性を損なうことなく、優れた反発性能および良好な打球感を有するワンピースソリッドゴルフボールを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、ニッケル系触媒を用いて合成されたポリブタジエンとコバルト系触媒を用いて合成されたポリブタジエンとの混合物および加硫安定剤としてのハイドロキノンまたはその誘導体を含有するゴム組成物を使用し、2種類のポリブタジエンのムーニー粘度および重量比、加硫安定剤の配合量、ゴルフボールの中心硬度(ゴルフボール硬度の最小値)、表面硬度およびゴルフボール中の硬度の最大値と最小値の差を特定範囲に規定することにより、加工性および耐久性を損なうことなく、優れた反発性能および良好な打球感を有するワンピースソリッドゴルフボールが得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、(i)シス‐1,4結合96%以上を含有し、ムーニー粘度50〜85ML1+4(100℃)を有し、重量平均分子量(Mw)70×10〜120×10を有するニッケル系触媒を用いて合成されたポリブタジエン(a)、および
(ii)シス‐1,4結合96%以上を含有し、ムーニー粘度30〜50ML1+4(100℃)を有し、重量平均分子量(Mw)55×10以上70×10未満を有するコバルト系触媒を用いて合成されたポリブタジエン(b)
の重量比(a)/(b)が95/5〜70/30であるポリブタジエン混合物から成る基材ゴム、不飽和カルボン酸および/またはその金属塩、有機過酸化物、無機充填剤、および加硫安定剤を含有するゴム組成物から成るワンピースソリッドゴルフボールであって、該加硫安定剤が基材ゴム100重量部に対してハイドロキノンまたはその誘導体0.05〜2.0重量部であり、該ゴルフボールがJIS‐C硬度による中心硬度55〜68、表面硬度75〜90を有し、該中心硬度が該ゴルフボールの硬度の最小値であり、該ゴルフボール中の硬度の最大値と最小値の差が16〜25であるワンピースソリッドゴルフボールに関する。
【0011】
更に、本発明を好適に実施するために、上記ハイドロキノンまたはその誘導体が2,5‐ジ‐t‐ブチルハイドロキノンであり、上記コバルト系触媒を用いて合成されたポリブタジエン(b)が、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)3.0〜5.0を有することが好ましい。
【0012】
本発明のワンピースソリッドゴルフボールは、基材ゴム、共架橋剤、有機過酸化物、無機充填剤、加硫安定剤、要すれば老化防止剤等を含有するゴム組成物の加硫一体成形物から成る。
【0013】
本発明のゴルフボールに用いられる基材ゴムとしては、
(i)シス‐1,4結合96%以上を含有し、ムーニー粘度50〜85ML1+4(100℃)を有し、重量平均分子量(Mw)70×10〜120×10を有するニッケル系触媒を用いて合成されたポリブタジエン(a)、および
(ii)シス‐1,4結合96%以上を含有し、ムーニー粘度30〜50ML1+4(100℃)を有し、重量平均分子量(Mw)55×10以上70×10未満を有するコバルト系触媒を用いて合成されたポリブタジエン(b)
を重量比(a)/(b)が95/5〜70/30であるポリブタジエン混合物から成ることを要件とする。
【0014】
本発明においてポリブタジエン(a)の合成に用いられるニッケル系触媒としては、例えば、担体としてのケイソウ土上にニッケルを付けたニッケルケイソウ土のような一成分系、ラネーニッケル/四塩化チタンのような二成分系、ニッケル化合物/有機金属/三フッ化ホウ素エーテラートのような三成分系触媒が挙げられる。ニッケル化合物の例としては、担体付還元ニッケル、ラネーニッケル、酸化ニッケル、カルボン酸ニッケル、有機ニッケル錯塩等が用いられる。また、有機金属の例としては、トリアルキルアルミニウム、例えばトリエチルアルミニウム、トリ‐n‐プロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ‐n‐ヘキシルアルミニウム等;アルキルリチウム、例えばn‐ブチルリチウム、s‐ブチルリチウム、t‐ブチルリチウム、1,4‐ブタンジリチウム等;ジアルキル亜鉛、例えばジエチル亜鉛、ジブチル亜鉛等;が挙げられる。
【0015】
これらのニッケル系触媒存在下におけるブタジエンの重合は、一般に、反応器にブタジエンモノマーを、オクタン酸ニッケルやトリエチルアルミニウム等の触媒を通常溶媒と共に加え、所望の特性が得られるように、反応温度を5〜60℃、反応圧力を1〜約70気圧の範囲内で調節して行う。
【0016】
本発明に用いられるポリブタジエン(a)は、シス‐1,4‐結合96%以上を含有し、ムーニー粘度50〜85ML1+4(100℃)を有することを要件とするが、好ましくは50〜70、より好ましくは55〜65ML1+4(100℃)を有する。上記ポリブタジエン(a)のシス‐1,4‐結合が96%未満では、十分な反発性能が得られない。上記ポリブタジエン(a)のムーニー粘度が50ML1+4(100℃)より低いと加工性は良好となるが、反発性能が低下し、85ML1+4(100℃)より高いと十分な反発性能は得られるが、加工性が低下して生産性が低下する。本発明に用いられるポリブタジエン(a)は、重量平均分子量(Mw)70×10〜120×10を有することを要件とするが、好ましくは80×10〜110×10、より好ましくは80×10〜100×10を有する。ポリブタジエン(a)のMwが70×10より小さいと反発性能が低下し、120×10より大きいと加工性が低下して生産性が低下する。
【0017】
本発明において、ポリブタジエン(a)は分子量分布の指数となる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)3.0〜6.0、好ましくは4.0〜5.5を有することが望ましい。Mw/Mnが、3.0より小さいと、分子量分布が狭くなり過ぎてポリブタジエン(b)との相溶性が悪くなり、6.0より大きいと低分子量成分が含まれるため反発性能が低下する。また、本発明のポリブタジエン(a)は数平均分子量(Mn)10×10〜30×10、好ましくは15×10〜25×10を有することが望ましい。上記ポリブタジエン(a)のMnが10×10より小さいと十分な反発性能が得られなくなり、30×10より大きいと加工性が悪くなる。
【0018】
上記ポリブタジエン(a)の具体例を商品名で例示すると、JSR(株)社から市販されているBR‐18等が挙げられる。
【0019】
ここで、「ムーニー粘度」とは、回転式可塑度計の1種であるムーニー粘度計で測定される工業的な粘度の指標であり、配合ゴム粘度の測定にゴム工業においてよく用いられる。円筒形のダイスとその中央においたロータによって形成される空隙に配合ゴムを密閉充填し、試験温度100℃、予備加熱時間1分間、ロータの回転時間4分間、回転数2rpmでロータを回転したときに生じるトルク値により得られる。単位記号としてML1+4(100℃)、ここでMはムーニー粘度、Lはロータの形状であり大ロータ(L形)を表し、(1+4)は予備加熱時間1分間、ロータの回転時間4分間を表し、100℃は試験温度を表す、を用いる(JIS K 6300)。
【0020】
本発明においてポリブタジエン(b)の合成に用いられるコバルト系触媒としては、コバルト元素およびラネーコバルト、塩化コバルト、臭化コバルト、ヨウ化コバルト、酸化コバルト、硫酸コバルト、炭酸コバルト、リン酸コバルト、不タル酸コバルト、コバルトカルボニル、コバルトアセチルアセトネート、コバルトジエチルジチオカルバメート、[(C)NCS]Co、コバルトアニリニウムナイトライト、[(CNH)・Co(NO)]、コバルトジニトロシルクロリド等が挙げられる。特に、これらのコバルト化合物と、ジアルキルアルミニウムモノクロリド(例えば、ジエチルアルミニウムモノクロリドおよびジイソブチルアルミニウムモノクロリド)、トリアルキルアルミニウム(例えば、トリエチルアルミニウム、トリ‐n‐プロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムおよびトリ‐n‐ヘキシルアルミニウム)および塩化アルミニウムとの組合せ、またはアルキルアルミニウムセスキクロリド(AlCl)(例えば、エチルアルミニウムセスキクロリド)および塩化アルミニウムとの組合せが、コバルト系触媒として好ましい。
【0021】
これらのコバルト系触媒存在下におけるブタジエンの重合は、ニッケル系触媒と同様に、一般に、反応器にブタジエンモノマーを、コバルト系触媒、通常溶媒と共に加え、所望の特性が得られるように、反応温度を5〜60℃、反応圧力を1〜約70気圧の範囲内で調節して行う。
【0022】
本発明に用いられるポリブタジエン(b)は、シス‐1,4‐結合96%以上を含有し、ムーニー粘度30〜50ML1+4(100℃)を有することを要件とするが、好ましくは33〜43ML1+4(100℃)を有する。上記ポリブタジエン(b)のシス‐1,4‐結合が96%未満では、十分な反発性能が得られない。上記ポリブタジエン(b)のムーニー粘度が30ML1+4(100℃)より低いと、加工性は良好となるが反発性能が低下し、50ML1+4(100℃)より高いと耐久性が低下し、加工性が著しく低下する。本発明に用いられるポリブタジエン(b)は重量平均分子量(Mw)55×10以上70×10未満を有することを要件とするが、好ましくは58×10〜65×10を有する。ポリブタジエン(b)のMwが55×10より小さいと反発性能が低下し、70×10以上となると耐久性が低下する。
【0023】
本発明において、ポリブタジエン(b)は分子量分布の指数となる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)3.0〜5.0、好ましくは2.5〜4.5を有することが望ましい。Mw/Mnが、3.0より小さいと高分子量成分が少なくかつ低分子量成分も少なくなり耐久性の向上が望めなくなり、5.0より大きいと分子量分布が広くなり過ぎて高分子量成分と低分子量成分が分離し、相溶性が低下し、加工性が悪くなる。
【0024】
モノマー濃度、触媒濃度、重合温度、溶媒の種類等の重合条件に依存して変化するが、コバルト系触媒を用いて合成されたポリブタジエンは概して、ニッケル系触媒を用いて合成されたポリブタジエンに比較すると、ブロードな分子量分布を有する傾向がある。従って、本発明では、よりブロードな分子量分布を有するコバルト系触媒を用いて合成されたポリブタジエン(b)のMw/Mnを上記のような特定範囲内に制御することにより、高分子量成分および低分子量成分の割合をコントロールして加工性や耐久性を向上させたものである。
【0025】
また、本発明のポリブタジエン(b)は数平均分子量(Mn)10×10〜30×10、好ましくは10×10〜25×10を有することが望ましい。上記ポリブタジエン(b)のMnが10×10より小さいと十分な反発性能が得られなくなり、30×10より大きいと加工性が悪くなる。
【0026】
上記ポリブタジエン(b)の具体例を商品名で例示すると、宇部興産(株)から市販されているBR230、BR230等が挙げられる。
【0027】
本発明において、ポリブタジエン混合物中のポリブタジエン(a)とポリブタジエン(b)の重量比(a)/(b)は、95/5〜70/30であることを要件とするが、好ましくは95/5〜80/20である。ポリブタジエン混合物の総重量に対して、ポリブタジエン(a)が70重量%未満およびポリブタジエン(b)が30重量%を越えると、反発性能が低下し、ポリブタジエン(b)が5重量%未満およびポリブタジエン(a)が95重量%を越えると、耐久性が低下する。
【0028】
一般的に、ポリブタジエンゴムのMwが大きくなると反発性は向上するが、耐久性や加工性が悪くなる傾向があり、逆にMwが小さくなれば加工性は良好となるが、反発性が低下する傾向がある。上記ポリブタジエンゴム(b)のみでは加工性は良好であるが反発性が低下し、上記ポリブタジエンゴム(a)のみでは反発性は向上するが加工性が悪くて生産性が低下する。上記ポリブタジエンゴム(a)および(b)を上記重量比の範囲内で併用することによって、反発性が向上し、加工性が良好で耐久性の優れたワンピースソリッドゴルフボールが得られる。
【0029】
本明細書中で用いられる「加工性」とは、ゴム組成物の混練時のロールへの巻き付き(噛み付き)および成形時に用いるプラグ(未加硫成形物)を押し出す際の生地の肌荒れにより評価する。加工性が悪いと、ロールへの巻き付きが悪く、生地の肌荒れがひどく、配合物の分散が不良となり、性能にばらつきを生じる。また、プラグの肌荒れにより外観が悪くなったり、離型剤が入り込んで耐久性が低下する。
【0030】
本発明に用いられる基材ゴムとしては、上記ポリブタジエンゴム(a)および(b)のみであってもよいが、所望により天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンポリブタジエンゴム、エチレン‐プロピレン‐ジエンゴム(EPDM)等を配合してもよく、使用する場合、上記ポリブタジエンゴム(a)および(b)の合計量が基材ゴムの総重量に対して80重量%以上、好ましくは90重量%であることが好ましい。上記ポリブタジエンゴム(a)および(b)が80重量%未満となると、反発性が低下し、また加工性が低下する。
【0031】
共架橋剤としては、アクリル酸またはメタクリル酸等のような炭素数3〜8個のα,β‐不飽和カルボン酸、またはその亜鉛、マグネシウム塩等の一価または二価の金属塩や、上記α,β‐不飽和カルボン酸と酸化亜鉛等の金属酸化物とをゴム組成物の混合中に反応させてα,β‐不飽和カルボン酸の金属塩にしたもの;トリメチロールプロパントリアクリレート等の多官能性アクリル酸エステル、トリメチルプロパントリメタクリレート等の多官能性メタクリル酸エステル等が挙げられる。得られるゴルフボールに優れた耐久性を付与するメタクリル酸、またはメタクリル酸の金属塩が好ましい。配合量は基材ゴム100重量部に対して、19〜29重量部、好ましくは22〜26重量部である。29重量部より多いと硬くなり過ぎて打球感が悪くなり、19重量部未満では、適当な硬さを得るために有機過酸化物の配合量を増加する必要があり、高い反発性が得られない。
【0032】
有機過酸化物は架橋剤または硬化剤として作用し、例えばジクミルパーオキサイド、1,1‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)‐3,3,5‐トリメチルシクロヘキサン、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ‐t‐ブチルパーオキサイド、2,2‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ブタン、過安息香酸‐t‐ブチルが挙げられ、ジクミルパーオキサイドが好適である。配合量は、基材ゴム100重量部に対して、0.1〜3.0重量部、好ましくは1.5〜2.0重量部である。0.1重量部未満では軟らかくなり過ぎて高い反発性が得られず、3.0重量部を越えると適当な硬さを得るために共架橋剤の配合量を減少する必要があり、高い反発性が得られない。かかる有機過酸化物は、熱により分解してラジカルを生じ、上記共架橋剤と基材ゴムとの間の架橋度を高めて反発性を向上させるものである。
【0033】
無機充填材としては、酸化亜鉛、酸化珪素、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、珪酸アルミニウムおよびそれらの混合物が挙げられる。これら無機充填材は、硬度や強度を向上する補強剤、また比重(重量)調整剤として用いられるが、特に好ましいのは、加硫助剤としての機能も発揮する酸化亜鉛である。配合量は、10〜60重量部、好ましくは12〜50重量部であり、60重量部を超えるとゴム成分の重量分率が小さくなり反発性が低下し、10重量部未満ではボール重量の調整が難しくなったり、耐久性が悪くなったりする。
【0034】
加硫安定剤としては、ハイドロキノンまたはその誘導体、例えば2,5‐ジ‐t‐ブチルハイドロキノン、2,5‐ジ‐t‐アミルハイドロキノン、2,6‐ジメチルハイドロキノン、ブロモハイドロキノン、2,3,5,6‐テトラクロロハイドロキノン等が挙げられる。毒性が低く、汎用品であり、適度なラジカル安定性を有するため、2,5‐ジ‐t‐ブチルハイドロキノンが好ましい。配合量は、0.05〜2.0重量部であることを要件とするが、好ましくは0.1〜1.0重量部、より好ましくは0.1〜0.5重量部である。0.05重量部未満では加硫安定剤としての効果が十分に得られず反発性が低下し、2.0重量部を超えると加硫の開始剤を多量に使用するため全体的に脆くなり耐久性が悪くなる。
【0035】
更に本発明のワンピースソリッドゴルフボールには、二酸化チタン等の顔料、老化防止剤またはしゃく解剤、軟化剤、その他ワンピースソリッドゴルフボールの製造に通常使用し得る成分を適宜配合してもよい。
【0036】
本発明のワンピースソリッドゴルフボールは上記のゴム組成物を、混練ロール、ニーダー等の適宜の混練機を用いて均一に混練し、金型内で加硫成形することにより得ることができる。この際の条件は特に限定されないが、通常は130〜240℃、圧力2.9〜11.8MPa、15〜60分間で行われる。また、必要に応じて二段階以上の温度を用いる多段階加硫を採用してもよい。
【0037】
上記ボール成形時には通常、ボール表面にディンプルを形成し、ボール成形後、ペイント仕上げ、スタンプ等も必要に応じて施し得る。
【0038】
本発明のワンピースソリッドゴルフボールのJIS‐C硬度による中心硬度は、55〜68であることを要件とするが、好ましくは58〜63、より好ましくは60〜63である。55より小さいと耐久性が悪く、打撃時に軟らか過ぎて頼りなく打球感が悪く、68より大きいと打撃時に芯が硬く感じられ打球感が悪くなる。
【0039】
本発明のワンピースソリッドゴルフボールのJIS‐C硬度による表面硬度は、75〜90であることを要件とするが、好ましくは80〜90、より好ましくは80〜87である。75より小さいと、打球感が重くなり、反発性が低下して飛距離が低下し、90より大きいと硬くなり過ぎて打球感が悪くなる。尚、本明細書中で用いられる中心硬度とは、加硫成形して作製したゴルフボールを、通常2等分切断し、その切断面の中心位置で測定した硬度を意味する。また、表面硬度とは、上記作製したゴルフボールの表面で測定した硬度を意味する。
【0040】
更に、本発明のワンピースソリッドゴルフボールでは、上記中心硬度がゴルフボールの硬度の最小値であり、かつゴルフボールの硬度の最大値と最小値の差が16〜25であることを要件とするが、好ましくは20〜25、より好ましくは22〜25である。上記硬度差が16より小さいと打球感が重くて悪く、また飛行性能が低下し、25より大きいと表面のみが硬くなり過ぎて逆に脆くなり耐久性が悪くなる。
【0041】
一般的には、反発性を向上するために、ポリブタジエンゴム(a)のようなMwの大きなポリブタジエンゴムを多く使用するが、中心硬度と表面硬度との差が大きくなって打球感は向上するが、ポリブタジエンゴム(a)のみでは耐久性が低下する。そこで、ポリブタジエンゴム(a)および(b)を併用することにより、反発性(飛行性能)、耐久性および加工性の優れたワンピースソリッドゴルフボールを得ることができ、加えてボール硬度の最大値と最小値との差を適当な範囲にコントロールすることによって打球感が良好となる。
【0042】
また、一般的に同様のコンプレッション(圧縮変形量)を有するゴルフボールでは、硬度の最大値と最小値の差が小さい程、即ち硬度分布が平坦である方が反発性が高い。しかしながら、上記硬度分布が平坦になると打球感が悪くなり、上記硬度差が大きい方が打球感が良好である。前述の先行技術(特開平2‐177973号公報)では、加硫安定剤を添加することによって硬度差の小さい平坦な硬度分布を実現しており、それにより得られたゴルフボールは反発性は優れるが打球感が悪いものとなる。これに対して、本発明では加硫安定剤であるハイドロキノンまたはその誘導体を添加して高温で加硫することにより反応速度を制御し、高反発でかつ硬度差の大きいゴルフボールを得ることを可能とした。また、本発明のゴルフボールは、同様のコンプレッション(圧縮変形量)を有するゴルフボールと比較すると、表面硬度が高くなっている。そのため、ゴルフボール表面に傷が入りにくくて傷に対する耐久性が著しく向上する。
【0043】
本発明のゴルフボールは初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでのコンプレッション(圧縮変形量)2.0〜4.0mm、好ましくは2.0〜3.0mmを有する。上記コンプレッションが2.0mmより小さいと硬過ぎて打球感が悪くなり、4.0mmより大きいと軟らか過ぎて反発性能が低下する。
【0044】
現在、ボール重量は、ラージサイズボールの場合ルール上45.92g以下と定められているが、下限についての規格はない。本発明のワンピースソリッドゴルフボールは、重量44.0〜45.8g、好ましくは44.2〜45.8gを有する。上記ボール重量が44.0gより軽いと飛行中の慣性を失い、飛行後半で失速して飛距離が低下し、45.8gより重いと打球感が重く悪くなる。
【0045】
また、本発明のワンピースゴルフボールの直径は、41.0〜44.0mmとすることができるが、ラージサイズボールの規格に適する42.67mm以上とするのがよく、通常は約42.75mmとする。
【0046】
本発明では、加工性および耐久性を損なうことなく、優れた反発性能および良好な打球感を有するワンピースソリッドゴルフボールを提供する。
【0047】
【実施例】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0048】
(実施例1〜3および比較例1〜6)
以下の表1および2に示した配合のゴム組成物を混合、混練し、半球状キャビティーを有する上下金型内で同表に示した加硫条件で加熱プレスして、直径42.75mmを有するワンピースゴルフボールを作製した。用いたポリブタジエンゴムのムーニー粘度、MwおよびMn、およびシス-1,4-ブタジエン含量を表3に示した。
【0049】
【表1】
Figure 0004515669
【0050】
【表2】
Figure 0004515669
【0051】
(注1)大内新興化学工業(株)から商品名「ノクラックNS-7」で市販の2,5‐ジ‐t‐ブチルハイドロキノン
【0052】
【表3】
Figure 0004515669
【0053】
(注2)測定方法:JIS K 6300準拠
(注3)測定方法:NMR(核磁気共鳴吸収法)
(注4)測定方法:Mw(重量平均分子量)およびMn(数平均分子量)は、溶離液に用いる有機溶媒としてテトラヒドロフランを用いてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定し、標準ポリスチレンによる検量線から算出して求めた。
【0054】
得られたワンピースソリッドゴルフボールのコンプレッション、反発係数、耐久性、JIS‐C硬度による中心硬度および表面硬度を含む硬度分布、および打球感を測定または評価し、その結果を表4および5に示した。上記ボール硬度の最大値および最小値の差を計算し、結果を同表に示した。試験方法は以下の通り行った。
【0055】
(試験方法)
▲1▼コンプレッション(圧縮変形量)
ゴルフボールに初期荷重98Nから終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮変形量を測定し、その逆数を比較例1を100としたときの指数で表した。これらの指数が大きい程、硬いことを示す。
【0056】
▲2▼反発係数
静止しているゴルフボールに198.4gの金属円筒物を40m/秒の速度で衝突させ、衝突前後の上記円筒物およびゴルフボールの速度を測定し、それぞれの速度および重量から算出した。測定は各ゴルフボールについて5回行って、その平均値を各ゴルフボールの反発係数とし、比較例1を100とした時の指数で表した。これらの指数が大きい程、反発性能に優れることを示す。
【0057】
▲3▼耐久性
ゴルフボールに連続的に同一の衝撃を与え(ゴルフボールを45m/秒の速度で鉄製平板に衝突させ)、ゴルフボールに破壊が生じるまでの打撃回数を測定し、比較例1を100とした時の指数で表した。この数値が大きい程、耐久性が優れていることを示す。
【0058】
▲4▼耐久性(傷付)
2ヵ所に予め傷をつけておいたゴルフボールを用いて、上記▲3▼と同様に耐久性を評価する。傷はゴルフボールのパーティングライン上と頂点部に深さ2mmで入れる。結果は上記▲3▼と同様に比較例1を100とした時の指数で表した。
【0059】
▲5▼硬度および硬度分布
ゴルフボールを2等分切断し、その切断面の中心、中心から5mm、10mmおよび15mmの位置、ボール表面において、JIS K 6301に規定されるスプリング式硬さ試験機JIS‐Cタイプを用いて20℃の環境下でJIS‐C硬度を測定することにより決定する。
【0060】
▲6▼打球感
トップアマ10人によるメタルヘッド製ドライバーでの実打テストにより、打球感を10点満点で評価する。点数が多いほど打球感が良好であることを示す。評価基準は以下の通りである。
判定基準
○:合計得点80点以上
△:合計得点60点以上80点未満
×:合計得点60点未満
【0061】
【表4】
Figure 0004515669
【0062】
【表5】
Figure 0004515669
【0063】
以上の結果より、実施例1〜3の本発明のゴルフボールは、比較例1〜6のゴルフボールに比較して、反発性能、耐久性および打球感に優れていることが認められた。
【0064】
これに対して、比較例1および2のゴルフボールは、先行技術(特開平2‐177973号公報、特許第2644226号公報)として挙げたものに相当するが、反発係数は実施例と同等または若干低い程度であるが、ボール硬度の最大値と最小値の差である硬度差が小さいため打球感が悪くなっている。また両者共に表面硬度が低いため表面に傷が生じ易く、傷付きの耐久性が非常に悪い。比較例1のゴルフボールでは、高いムーニー粘度を有するポリブタジエン(ポリブタジエン(a))単独使用であるため耐久性が悪くなっている。比較例2のゴルフボールは、低いムーニー粘度を有するポリブタジエン(ポリブタジエン(b))の配合量が多いため反発係数が低くなっている。
【0065】
比較例3のゴルフボールは、加硫安定剤を使用していないため、反発係数が低くなっている。比較例4のゴルフボールは、加硫安定剤の配合量が多いため、コンプレッションを調整するのに有機過酸化物を多量に配合することが必要となり、全体的に脆くなり耐久性が非常に悪くなっている。
【0066】
比較例5のゴルフボールは、実施例1と同配合で加硫条件が異なるため、結果的に上記硬度差が小さくなって打球感が悪くなっている。また表面硬度が低いため表面に傷が生じ易く、傷付きの耐久性が非常に悪くなっている。比較例6のゴルフボールは、上記硬度差は本発明の範囲内であるが、高いムーニー粘度を有するポリブタジエン(ポリブタジエン(a))単独使用であるため耐久性が悪くなっている。
【0067】
【発明の効果】
本発明のワンピースソリッドゴルフボールは、ニッケル系触媒を用いて合成されたポリブタジエンとコバルト系触媒を用いて合成されたポリブタジエンとの混合物および加硫安定剤としてのハイドロキノンまたはその誘導体を含有するゴム組成物を使用し、2種類のポリブタジエンのムーニー粘度および重量比、加硫安定剤の配合量、ゴルフボールの中心硬度(ゴルフボール硬度の最小値)、表面硬度およびゴルフボール中の硬度の最大値と最小値の差を特定範囲に規定することにより、加工性および耐久性を損なうことなく、反発性能および打球感を向上させ得たものである。

Claims (3)

  1. (i)シス‐1,4結合96%以上を含有し、ムーニー粘度50〜85ML1+4(100℃)を有し、重量平均分子量(Mw)70×10〜120×10を有するニッケル系触媒を用いて合成されたポリブタジエン(a)、および
    (ii)シス‐1,4結合96%以上を含有し、ムーニー粘度30〜50ML1+4(100℃)を有し、重量平均分子量(Mw)55×10以上70×10未満を有するコバルト系触媒を用いて合成されたポリブタジエン(b)
    の重量比(a)/(b)が95/5〜70/30であるポリブタジエン混合物から成る基材ゴム、共架橋剤、有機過酸化物、無機充填剤、および加硫安定剤を含有するゴム組成物から成るワンピースソリッドゴルフボールであって、該加硫安定剤が基材ゴム100重量部に対してハイドロキノンまたはその誘導体0.05〜2.0重量部であり、該ゴルフボールがJIS‐C硬度による中心硬度55〜68、表面硬度75〜90を有し、該中心硬度が該ゴルフボールの硬度の最小値であり、該ゴルフボールの硬度の最大値と最小値の差が18〜25であるワンピースソリッドゴルフボール。
  2. 前記ハイドロキノンまたはその誘導体が、2,5‐ジ‐t‐ブチルハイドロキノンである請求項1記載のワンピースソリッドゴルフボール。
  3. 前記コバルト系触媒を用いて合成されたポリブタジエン(b)が、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)3.0〜5.0を有する請求項1または2記載のワンピースソリッドゴルフボール。
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