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JP4576192B2 - アルミニウム電解コンデンサ用電極箔の製造方法 - Google Patents

アルミニウム電解コンデンサ用電極箔の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、アルミニウム電解コンデンサ用電極箔の製造方法に関するものであり、特に均一で溶解しにくい化成皮膜を形成するアルミニウム電解コンデンサ用電極箔の製造方法に関するものである。
一般に、駆動用電解液中の含水量が増加すると、アルミニウム電極箔の表面に形成された化成皮膜は、水和反応を起こして劣化しやすくなるだけでなく、溶質として添加されている各種有機カルボン酸の錯体形成反応が進みやすくなり、溶解反応による電極箔の劣化が促進される。
特に、アルミニウム電解コンデンサの駆動用電解液の含水量が30%を超える場合、使用する電極箔の耐水性向上と共に、化成皮膜の耐溶解性向上が求められ、より均一で溶解しにくい化成皮膜の形成が要求されるようになってきている。
従来、化成皮膜を安定化させるには、化成処理中に発生し、化成皮膜の均一性を阻害する皮膜欠陥部を除去する方法(例えば、熱処理、酸浸漬等。非特許文献1参照)や、アジピン酸アンモニウムで化成した後、リン酸アンモニウムで仕上化成を行い、化成皮膜の耐水性を向上させる方法(例えば、特許文献1参照)等が知られている。
また、化成前処理として、熱酸化皮膜や、水和酸化皮膜を予め形成しておくと、化成箔の容量や特性が向上することが知られており(例えば、非特許文献1、2参照)、化成箔の容量の向上、化成効率の改善(省電力)、漏れ電流の低減を目的として、抑制剤を溶解した沸騰水中に浸漬したり(例えば、特許文献2参照)、温水に浸漬して水和酸化皮膜を形成する方法や、大気中または、酸素分圧をコントロールした環境下で、加熱処理する方法(例えば、特許文献3〜5参照)、水蒸気雰囲気中で加熱処理する方法(例えば、特許文献6参照)が開示されている。
特開昭52−92360号公報 特公昭57−6250号公報 特開昭53−26960号公報 特許第3446115号公報 特開平11−340102号公報 特許第3407470号公報 永田伊佐也著、「電解液陰極アルミニウム電解コンデンサ(アルミニウム乾式電解コンデンサ増補改訂版)」、日本蓄電器工業株式会社、平成9年2月24日、第2版第1刷、P.192〜204、P.261〜314 永山政一,「第9回ARSコンファレンステキスト」,社団法人表面技術協会,平成4年,P.41
しかしながら、上記の化成前処理のいずれを用いても、駆動用電解液中の含水量が30%を超えるアルミニウム電解コンデンサや、含水量が30%以下であっても高信頼性を求められるアルミニウム電解コンデンサに対しては、化成皮膜の安定化が不十分であり、より均一で溶解しにくい化成皮膜を得ることができる電極箔の製造方法が求められていた。
本発明は上記課題を解決するもので、アルミニウム原箔をエッチングした後、化成処理するアルミニウム電解コンデンサ用電極箔の製造方法において、
化成処理前に、エッチング箔をアルカリ性溶液中に浸漬して、水洗し、250〜400℃で10秒〜5分間、第1の加熱処理を行い、次に、100〜250℃で10分〜5時間、第2の加熱処理を行い、その後、350〜500℃で10分〜5時間、第3の加熱処理を行った後、化成処理を行うことを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ用電極箔の製造方法である。
また、上記のアルカリ性溶液が、水酸化物イオン、アルミン酸イオン、または炭酸イオンを含む溶液であることを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ用電極箔の製造方法である。
さらに、上記アルカリ性溶液のpHが10〜12、温度が40〜60℃であることを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ用電極箔の製造方法である。
そして、第3の加熱処理を、露点30℃以下の雰囲気中で行うことを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ用電極箔の製造方法である。
また、第3の加熱処理を、窒素雰囲気中で行うことを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ用電極箔の製造方法である。
さらに、第3の加熱処理を、二酸化炭素雰囲気中で行うことを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ用電極箔の製造方法である。
エッチング箔に上記の化成前処理を施すことにより、均一で、耐溶解性に優れた化成皮膜を得ることができ、含水量30%を超える駆動用電解液に対しても適用可能な電極箔を製造することができる。
アルミニウム電解コンデンサ用のアルミニウム原箔をエッチングした後、化成処理前に、アルカリ性溶液中に浸漬する。
アルカリ性溶液中への浸漬は、エッチング箔の表面に残存する、薬品の混入した酸化皮膜を除去すると共に、エッチング箔表面に清浄な水酸化皮膜を形成する効果を有する。
使用するアルカリ性溶液としては、不純物元素を含有しない水酸化皮膜を得るため、ケイ酸イオンやリン酸イオン等、アルミニウムの結合しやすい陰イオンを含む溶液ではなく、水酸化物イオンや、アルミン酸イオン、または炭酸イオンのアルカリ性溶液の使用が望ましい。
アルカリ性溶液によるアルミニウム箔の溶解を最小限に抑えるため、アルカリ性溶液のpHを10〜12、温度を40〜60℃に設定することが望ましい。
上記のアルカリ性溶液中への浸漬後、エッチング箔を水洗する。
次に、第1の加熱処理を250〜400℃で10秒〜5分間行い、付着した水分を除去する。
この水分除去により、アルカリ性溶液に浸漬して、活性な状態にあるエッチング箔表面での新たな水和酸化皮膜の生成が抑えられる。
ここで、加熱処理条件を、250℃未満、10秒未満とすると、水分が完全に除去されず、好ましくない。
一方、400℃を超えると、エッチング箔表面の水酸化皮膜が変質し、また、新たな気中酸化皮膜が不均一で孤立した形態で形成されるため(図1参照)、その後の化成において、皮膜欠陥の発生の原因となり、不適である。
また、第1の加熱処理では、水分を多量に蒸発させるため、炉内の水蒸気分圧が高くなる。加熱処理時間が5分を超えると、エッチング箔表面に新たな水和酸化皮膜が生成し、特に、水蒸気により新たに形成される水和酸化皮膜は、エッチング箔のエッチングピット内で、不均一に形成されるため(図2参照)、その後の化成において、化成皮膜が均一でなくなることから、不適である。
その後、第2の加熱処理を温度100〜250℃で10分〜5時間行い、短時間の加熱(乾燥)では取り除くことができない、エッチング箔表面に吸着した水分を除去した。
この水分除去により、エッチング箔表面での新たな水和酸化皮膜の生成を抑えながら、微細なエッチングピットに吸着した未反応の水分が除去される。加熱温度は、水の沸点である100℃以上で、水和酸化皮膜の変質が起こらない250℃以下であることが望ましく、加熱時間は、吸着した水分を除去することができる、10分間以上であることが必要であるが、5時間を超えると水和酸化皮膜の溶解が起こるので、好ましくない。
次に、第3の加熱処理を温度350〜500℃で10分〜5時間行い、エッチング箔表面に均一に生成された水酸化皮膜を脱水し、均一な酸化皮膜に転移させる。
その加熱温度は、水酸化皮膜が酸化皮膜に転移する350℃以上で、新たに気中酸化皮膜の生成が起こらない500℃以下が望ましく、その時間は、酸化皮膜に転移するに必要な10分間以上であることが必要であるが、5時間を超えると酸化皮膜の溶解が起こり、漏れ電流大となるので、好ましくない。
そして、第3の加熱処理は、新たな水和皮膜の生成を抑えるために、露点30℃以下の雰囲気中で行うことが望ましい。
また、水酸化皮膜から酸化皮膜への転移は、高温で加熱処理する方が進むが、同時に、酸素との反応により新たな酸化皮膜を生成させるため、特に高温での加熱処理は、窒素雰囲気中または二酸化炭素雰囲気中で行うことが望ましい。
ここで、二酸化炭素は、均一に水酸化皮膜や、酸化皮膜が生成したエッチング箔に対しては、不活性なガスとして作用するが、水酸化皮膜や、酸化皮膜の弱体部では、地金のアルミニウムと反応して還元され、酸化皮膜の生成を促す作用を持つため、エッチング箔表面に、より均一な皮膜を形成する効果を有する。
その後、アジピン酸アンモニウム溶液中で化成処理を行うが、アジピン酸アンモニウムは、化成用薬品として一般的に使用される薬品のうちで、硼酸やリン酸アンモニウムより分子量が大きいため、化成皮膜への陰イオンの取り込みが抑えられ、均一で溶解しにくい化成皮膜の生成を促す。
以上のことから、本発明の電極箔の製造方法によれば、化成皮膜が均一で溶解しにくくなるため、駆動用電解液の含水量が30%を超えるアルミニウム電解コンデンサや高信頼性を要求されるアルミニウム電解コンデンサ用として、最適な電極箔を提供することができる。
ここで、得られた化成皮膜の均一性、耐溶解性は、リン酸4%、クロム酸2%、液温85℃の溶液に浸漬して、化成皮膜の溶解速度を測定すること(以下、リン酸クロム酸溶解試験と呼ぶ)により評価できる。
リン酸クロム酸溶解試験は、アルマイトをはじめ、アルミニウムの化成皮膜(陽極酸化皮膜)の評価に、広く利用されている方法で、基材のアルミニウム金属は溶解せず、化成皮膜のみを溶解するため、その重量変化より化成皮膜の均一性、耐溶解性を知ることができる。
図3は、リン酸クロム酸溶解試験を実施した場合の化成皮膜の溶解特性と、その皮膜溶解の状態を模式的に示したものである。
化成皮膜は均一であるが、全体的に溶けやすい皮膜である場合は、図3の曲線Aに示すとおり立ち上がりが急峻で、短時間で全溶する。
また、化成皮膜が均一で、かつ全体的に溶けにくい皮膜である場合は、図3の曲線Bに示すとおり、立ち上がりが緩やかであり、溶解に長時間を要する。
化成皮膜が不均一で、溶けやすい部分と溶けにくい部分が混在した皮膜である場合は、図3の曲線Cに示すとおり、まず、短時間で溶けやすい皮膜が溶解すると共に、溶け残った部分(溶けにくい部分)も一部剥離するため、最初に大きく溶解したあと、徐々に溶解する曲線となる。
また、全溶した場合の皮膜重量(全皮膜重量)に対する、図3に示すある一定の時間(t)での皮膜溶解重量の値を比較すると、この値の小さな条件は皮膜が溶けにくいことを示し、定量的に皮膜の均一性、耐溶解性を知ることができる。
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。
まず、第1〜第3の加熱処理条件の検討を行った。
公知の方法により、アルミニウム原箔に、エッチング(粗面化)、脱塩素処理を行って、エッチング箔のシート(20cm×50cm)を作製し、pH:11、液温:50℃の水酸化ナトリウムの溶液に3分間浸漬し、水洗した。
その後、表1〜3に示す条件で、第1〜第3の加熱処理条件の検討を順次行い、次いで、アジピン酸アンモニウム:150g/L、液温:85℃で、JEITA RC−2364A 1999年改訂(以下、JEITA法と呼ぶ)に準じて、30Vの定電圧化成を行った。
評価は、リン酸クロム酸溶解試験により行い、5分後の皮膜溶解量と、全溶した場合の皮膜重量(全皮膜重量)との比を重量%(以下、皮膜溶解度と呼ぶ)で表した。
[実施例1]第1加熱処理条件の検討、表1
第1段階の加熱処理条件は、250〜400℃、10秒〜5分の間で変えて比較した。
第2段階の加熱処理条件は、150℃で2時間、第3段階の加熱処理条件は、400℃で2時間(露点0℃)として固定した。
なお、比較例として、第1段階の温度200℃、450℃の場合、時間5秒、8分の場合についても調査した。
その結果を表1に示す。
Figure 0004576192
表1に示すとおり、第1段階の加熱処理は、200℃または5秒の加熱処理では、箔の乾燥が不十分で、不可のものが発生しており、また、450℃、または8分の加熱は、皮膜溶解度が大きくなり、皮膜の均一性、耐溶解性が損なわれている。
よって、第1段階の加熱処理条件は、250〜400℃で10秒〜5分間とするのが適当である。
[実施例2]第2加熱処理条件の検討、表2
第1段階の加熱処理条件は、350℃で1分、第3段階の加熱処理条件は、400℃で2時間(露点0℃)として固定し、第2段階の加熱処理条件を100〜250℃、10分〜5時間の間で変えて比較した。
なお、比較例として、第2段階の温度80℃、300℃の場合、時間5分、8時間の場合についても調査した。
その結果を表2に示す。
Figure 0004576192
表2に示すとおり、第2段階の加熱処理は、温度80℃、300℃では、皮膜溶解度が大きくなる。時間については、5分では、加熱温度の低い側で皮膜溶解度が大きくなるものが見られ、また、8時間の加熱処理では、加熱温度の高い側で、皮膜溶解度が大きくなるものが見られた。
よって、第2段階の加熱処理条件は、100〜250℃で10分〜5時間とするのが適当である。
[実施例3]第3加熱処理条件の検討、表3
第1段階の加熱処理条件は、350℃で1分、第2段階の加熱処理条件は150℃で2時間として固定し、第3段階の加熱処理条件を、350〜500℃、10分〜5時間(露点0℃)の間で変えて比較した。
なお、比較例として、第3段階の温度300℃、550℃の場合、時間5分、8時間の場合についても調査した。
その結果を表3に示す。
Figure 0004576192
表3に示すとおり、第3段階の加熱処理は、温度300℃では、皮膜溶解度が大きくなり、また、550℃の加熱では、皮膜溶解度が大きく、漏れ電流も増大した。時間については、5分では、加熱温度の低い側で、皮膜溶解度が大きくなるものが見られ、8時間の加熱処理では、加熱温度の高い側で、漏れ電流の大きくなるものが見られた。
よって、第3段階の加熱処理条件は、350〜500℃で10分〜5時間とするのが適当である。
次に、化成処理前に使用するアルカリ性溶液(種類、pH・温度)の検討を行った。
なお、エッチング箔試料の仕様、処理条件は、実施例1〜3と同様とした。
[実施例4]アルカリ性溶液(種類)の検討、表4
実施例1〜3で使用したものと同仕様のエッチング箔を、表4に示す条件のアルカリ性溶液に3分間浸漬し、水洗したのち、表4に示す条件で、第3段階の加熱処理を行った。アジピン酸アンモニウム150g/L、液温:85℃で、JEITA法に準じて、30Vの定電圧化成を行い、リン酸クロム酸溶解試験を行って、皮膜溶解度を評価した。
その結果を表4に示す。
Figure 0004576192
表4に示すとおり、比較例のケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、リン酸ナトリウムを使用した場合は、第3段階の加熱処理温度の高いもので皮膜溶解性がやや改善されているが、実施例の水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の水酸化物イオン、または、アルミン酸ナトリウムやアルミン酸カリウム等のアルミン酸イオン、炭酸ナトリウム等の炭酸イオンを含む溶液を使用したものと比較すると、皮膜溶解性が劣ることが分かる。
[実施例5]アルカリ性溶液のpH・温度検討、表5
実施例1〜3で使用したものと同仕様のエッチング箔を、表5に示す条件のアルカリ性溶液に3分間浸漬し、水洗した後、表5に示す条件で、第3段階の加熱処理を行った。その後の化成条件および皮膜溶解度評価方法は実施例1〜3と同様とした。アジピン酸アンモニウム:150g/L、液温:85℃で、JEITA法に準じて、30Vの定電圧化成を行い、リン酸クロム酸溶解試験を行って、皮膜溶解度を評価した。
その結果を表5に示す。
Figure 0004576192
表5に示すとおり、水酸化ナトリウム、および水酸化カルシウムのいずれの溶液においても、pH:9、液温35℃では、皮膜溶解度が大きくなり、pH:13、液温:70℃では、エッチング箔の溶解反応が進み、化成後の容量の低下が見られる。
よって、アルカリ性溶液のpHは10〜12、温度は40〜60℃とするのが適当である。
[実施例6]第3の加熱処理条件の露点検討、表6
実施例1〜3で使用したものと同仕様のエッチング箔を、pH:11、液温:50℃の水酸化ナトリウムの溶液に3分浸漬し、水洗したのち、表6に示す条件で、第3段階の加熱処理条件の露点を変えた試料を作製し、アジピン酸アンモニウム:150g/L、液温:85℃で、JEITA法に準じて、30Vの定電圧化成を行い、リン酸クロム酸溶解試験を行って、皮膜溶解度を評価した。
その結果を表6に示す。
Figure 0004576192
表6に示すとおり、露点−20〜30℃の水蒸気雰囲気中では、皮膜溶解度の値にほとんど変化は見られないが、露点35℃では、全般的に皮膜溶解度が悪化している。
よって、第3の加熱処理条件の露点は30℃以下が適当である。
[実施例7]第3の加熱処理条件(窒素雰囲気中)の検討、表7
実施例1〜3で使用したものと同仕様のエッチング箔を、pH:11、液温:50℃の水酸化ナトリウムの溶液に3分浸漬し、水洗したのち、表7に示す条件で、第3段階の加熱処理を行い、アジピン酸アンモニウム:150g/L、液温:85℃で、JEITA法に準じて、30Vの定電圧化成を行い、リン酸クロム酸溶解試験を行って、皮膜溶解度を評価した。
その結果を表7に示す。
Figure 0004576192
表7に示すとおり、窒素雰囲気中で行われた場合、温度500℃または5時間の加熱処理での皮膜溶解度が、空気雰囲気中で行われたものより優れていることが分かる。
[実施例8]第3の加熱処理条件(二酸化炭素雰囲気中)の検討、表8
実施例1〜3で使用したものと同仕様のエッチング箔を、pH:11、液温:50℃の水酸化ナトリウムの溶液に3分浸漬し、水洗したのち、表8に示す条件で、第3段階の加熱処理を行い、アジピン酸アンモニウム:150g/L、液温:85℃で、JEITA法に準じて、30Vの定電圧化成を行い、リン酸クロム酸溶解試験を行って、皮膜溶解度を評価した。
その結果を表8に示す。
Figure 0004576192
表8に示すとおり、二酸化炭素雰囲気中で行われた場合、全体的に空気雰囲気中で加熱処理したものと比較して、皮膜溶解度が優れ、温度500℃または5時間の加熱処理での皮膜溶解度の改善効果が、空気雰囲気中で行われたものより優れていることが分かる。
[実施例9]アルミニウム電極箔による信頼性確認
実施例1〜3で使用したものと同仕様のエッチング箔を表10に示す条件で、3段階の加熱処理を行い、アジピン酸アンモニウム:150g/リットル、液温:85℃で、JEITA法に皮膜安定化処理(欠陥除去、耐水性処理)を加えた条件にて、30Vの定電圧化成を行い、表9に示す駆動用電解液に、表9記載の条件で浸漬して、皮膜耐電圧の低下度合、ΔVt(初期の耐電圧−浸漬後の耐電圧、JEITA法に準ずる)と皮膜溶解度を比較評価した。
Figure 0004576192
Figure 0004576192
表10に示すとおり、本発明による化成箔を使用したものについて、駆動用電解液の含水量10〜50wt%で比較すると、含水量が多くなるほど特性が若干悪くなるが、従来例よりは格段に改善されていることが分かる。
よって、本発明による均一で溶解しにくい化成皮膜は、駆動用電解液の含水量が30%を超えるアルミニウム電解コンデンサにおいても、電極箔の皮膜劣化を抑えることができ、信頼性を向上したアルミニウム電解コンデンサを提供できる。
不均一で孤立した形態で形成された気中酸化皮膜を示す模式図である。 エッチング箔のエッチングピット内で、水蒸気により不均一に形成された水和酸化皮膜を示す模式図である。 リン酸クロム酸溶解試験を実施した場合の化成皮膜の溶解特性を示した図である。
符号の説明
1 エッチングピット
2 気中酸化皮膜
3 水和酸化皮膜
A 均一であるが、全体的に溶けやすい化成皮膜の溶解曲線
B 均一で、かつ全体的に溶け難い化成皮膜の溶解曲線
C 不均一で、溶けやすい部分と溶け難い部分が混在した化成皮膜の溶解曲線

Claims (6)

  1. アルミニウム原箔をエッチングした後、化成処理するアルミニウム電解コンデンサ用電極箔の製造方法において、
    化成処理前に、エッチング箔をアルカリ性溶液中に浸漬して、水洗し、
    250〜400℃で10秒〜5分間、第1の加熱処理を行い、
    次に、100〜250℃で10分〜5時間、第2の加熱処理を行い、
    その後、350〜500℃で10分〜5時間、第3の加熱処理を行った後、
    化成処理を行うことを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ用電極箔の製造方法。
  2. 請求項1記載のアルカリ性溶液が、水酸化物イオン、アルミン酸イオン、または炭酸イオンを含む溶液であることを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ用電極箔の製造方法。
  3. 請求項1、2記載のアルカリ性溶液のpHが10〜12、温度が40〜60℃であることを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ用電極箔の製造方法。
  4. 請求項1記載の第3の加熱処理を、露点30℃以下の雰囲気中で行うことを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ用電極箔の製造方法。
  5. 請求項1記載の第3の加熱処理を、窒素雰囲気中で行うことを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ用電極箔の製造方法。
  6. 請求項1記載の第3の加熱処理を、二酸化炭素雰囲気中で行うことを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ用電極箔の製造方法。
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