JP4545865B2 - 多層プリント配線板用回路基板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、多層プリント配線板の製造に供される両面回路基板および片面回路基板の製造方法についての提案である。
【0002】
【従来の技術】
最近の電子機器の小型・軽量・高速・高機能化の要求に応じて、従来のスルーホール構造の多層プリント配線板に代えて、高密度配線化に対応し易いインターステシャルビアホール構造(以下、IVH構造と略記する)を有する多層プリント配線板が提案されている。
【0003】
このIVH構造を有する多層プリント配線板というのは、積層体を構成する各層間絶縁層に、導体回路間を電気的に接続するビアホールが設けられている構造のプリント配線板である。このようなプリント配線板は、内層導体回路パターン相互間あるいは内層導体回路パターンと外層導体回路パターン間が、配線基板を貫通しないビアホール(ベリードビアホールあるいはブラインドビアホール)によって電気的に接続されていることが特徴である。それ故に、かかるIVH構造の多層プリント配線板は、スルーホールを形成するための領域を特別に設ける必要がなく、各層間接続を微細なビアホールだけで行うことができるため、電子機器の小型化、高密度化、信号の高速伝搬を容易に実現することができるものと期待されている。
【0004】
しかしながら、上記IVH構造の多層プリント配線板はその製造工程において、絶縁性樹脂基材として、ガラス布にエポキシ樹脂を含浸させたガラスエポキシプリプレグのような未硬化樹脂を採用していることに起因する問題点があった。すなわち、プリプレグ上に銅箔を熱プレスによって接着し、それをエッチングして導体回路を形成した回路基板の複数枚を接着剤を介して積層し、その後、積層された回路基板を一括して熱プレスすることによって多層化する際、硬化した樹脂が収縮するために、ビアホールの位置がXY方向にずれるという現象が見られた。このような位置ずれに対処するには、ビアランド径を予め大きくしておく必要があるため、精密配線が困難であった。
【0005】
なお、このような問題点について、本願の発明者らは先に、特願平第10-179192号特許出願によりその改善方法を提案した。
この改善提案は、従来のような未硬化樹脂からなる絶縁性基材ではなく、硬化した樹脂からなる樹脂基材をコア材とし、このコア材の片面または両面に導体回路を形成して、その導体回路間を充填ビアホールで接続した片面回路基板または両面回路基板についてのものであり、これらの複数枚を適宜組み合わせて積層し、一括加熱プレスすることによって多層プリント配線板を製造する技術である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記の改善提案については、なお次のような解決すべき課題が残されていた。すなわち、先行提案技術においては、絶縁性基材の両面に導体回路を有する回路基板の製造は、絶縁性基材に貫通孔を設け、その貫通孔内へ導電性ペーストを印刷等の方法で充填して充填ビアホールを形成した後、両面に銅箔を貼付け、その銅箔をエッチングすることによって両面に導体回路を形成していた。
【0007】
しかしながら、このような両面回路基板と片面回路基板とを積層して多層プリント配線板を製造する際には、両面回路基板と片面回路基板とを別個の製造ラインにおいて製造しなければならず、多層プリント配線板の製造コストを押し上げているという現実的な問題がある。
【0008】
さらに、両面/片面回路基板の製造工程においては、導電性ペーストの充填前の攪拌時あるいは印刷時において、導電性ペースト内に気泡が巻き込まれる、すなわち、気泡混入の問題がある。
この導電性ペーストへの気泡混入の程度は、一般的には、貫通孔内に充填するよりも非貫通孔内に充填する場合の方が大きいが、いずれの場合でも気泡混入を極力減少させることが層間接続抵抗を安定化させるためには必要である。
【0009】
気泡混入を減少させる技術として、導電性ペーストを充填しながらあるいは充填した後、充填されたペーストを減圧下において加圧することによって、導電性ペースト内に巻き込まれた気泡を除去する、いわゆる真空加圧脱泡という方法が提案されているが、このような技術を貫通孔内への充填に効率的に適用することは難しく、導電性ペースト内に混入した気泡の残留を完全に回避することは困難である。
【0010】
そこで、発明者らは絶縁性基材に設けた貫通孔内に導電性ペーストを充填する工程を採用しないで、両面回路基板と片面回路基板とで一部共通する製造工程、すなわち、一面に銅箔を貼付けた絶縁性基材に非貫通孔を設け、その非貫通孔に導電性ペーストを充填する工程、を含んだ製造方法を提案するものである。
本発明は、改善提案技術が抱える上記問題点に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、製造コストを低減させ、かつ層間接続抵抗を安定化させることができる多層プリント配線板用の回路基板の製造方法を提案することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、上掲の目的を実現するために鋭意研究した結果、以下の内容を要旨構成とする本発明に想到した。すなわち、
(A)本発明の多層プリント配線板用回路基板の製造方法は、
完全に硬化した硬質の樹脂材料から形成された硬質の絶縁性基材の両面に導体回路を有し、この絶縁性基材中に前記導体回路間を電気的に接続するビアホールが形成された多層プリント配線板用回路基板を製造するに当たって、その製造工程中に、少なくとも以下の(1)〜(4)の工程、すなわち、
(1)一面に銅箔が貼付けられた絶縁性基材の他の面に、樹脂フィルムを粘着させたのち、その樹脂フィルム上からレーザ照射を行って前記銅箔に達する非貫通孔を形成する工程、
(2)前記非貫通孔内に導電性ペーストを充填した後、前記絶縁性基材を減圧条件下において、前記充填された導電性ペーストの、前記絶縁性基材の他の面から露出した側の表面を加圧する工程、
(3)前記樹脂フィルムを絶縁性基材の表面から剥離させたのち、前記絶縁性基材の他の面から露出した導電性ペーストを半硬化させ、そのペーストを含んだ絶縁性基材の表面に、半硬化状態の樹脂接着剤層を形成し、その樹脂接着剤層を介して銅箔を加熱圧着して、前記導電性ペーストと銅箔とを電気的に接続させる工程、および
(4)前記絶縁性樹脂に貼付けられた銅箔をエッチングして、導体回路を形成する工程、
を含むことを特徴とする。
【0012】
(B)また、本発明の多層プリント配線板用回路基板の製造方法は、
完全に硬化した硬質の樹脂材料から形成された硬質の絶縁性基材の片面に導体回路を有し、この絶縁性基材中に前記導体回路に達する充填ビアホールが形成された多層プリント配線板用回路基板を製造するに当たって、その製造工程中に、少なくとも以下の(1)〜(3)の工程、すなわち、
(1)一面に銅箔が貼付けられた絶縁性基材にエッチング処理を施して導体回路を形成する工程、
(2)前記絶縁性基材の他の面に、樹脂フィルムを貼付け、その樹脂フィルム上からレーザ照射を行って前記導体回路に達する非貫通孔を形成する工程、および
(3)前記非貫通孔内に導電性ペーストを充填した後、前記絶縁性基材を減圧条件下において、前記充填された導電性ペーストの、前記絶縁性基材の他の面から露出した側の表面を加圧して、前記銅箔との電気的接続を行なう充填ビアホールを形成する工程、
を含むことを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明にかかる回路基板の製造方法の特徴は、全層がIVH構造を有する多層プリント配線板のコアとなる両面回路基板だけでなく、そのコア回路基板に積層される積層用回路基板として用いられるのに好適な片面回路基板を、硬質の絶縁性基材に貫通孔を設けることなく、両面回路基板と一部共通の工程にて製造することにある。
【0014】
すなわち本発明は、硬質の絶縁性基材の一方の面に銅箔を貼付け、その絶縁性基材の他方の面に樹脂フィルムを粘着させ、その樹脂フィルム上から銅箔に達する非貫通孔を形成した後に、その非貫通孔内に導電性ペーストを充填した後、絶縁性基材を減圧条件下において、充填された導電性ペーストの、絶縁性基材の他方の面から露出した側の表面を加圧して充填ビアホールを形成し、さらに樹脂フィルムを剥離させ、絶縁性基材の他方の面から露出する導電性ペーストを半硬化させ、そのペーストを覆って樹脂接着剤層を形成し、その樹脂接着剤を介して銅箔を絶縁性基材に貼付けた後に、絶縁性基材の両面に貼付けられた銅箔をエッチングすることによって、両面に導体回路を有する回路基板を製造することを特徴とする。
【0015】
また本発明は、硬質の絶縁性基材の一方の面に銅箔を貼付け、その絶縁性基材にエッチング処理を施して導体回路を形成し、絶縁性基材の他方の面に樹脂フィルムを粘着させ、その樹脂フィルム上から銅箔に達する非貫通孔を形成した後に、その非貫通孔内に導電性ペーストを充填した後、絶縁性基材を減圧条件下において、充填された導電性ペーストの、絶縁性基材の他方の面から露出した側の表面を加圧して充填ビアホールを形成し、さらに樹脂フィルムを剥離させ、絶縁性基材の他方の面から露出する導電性ペーストを半硬化させ、そのペーストを覆って樹脂接着剤層を形成することによって、片面に導体回路を有する回路基板を製造することを特徴とする。
このような構成によれば、両面回路基板だけでなく、それと一部共通な製造工程を経て片面回路基板も製造できるので、製造コストの低減を図ることができ、また、一面に銅箔(導体回路)が貼付けられた絶縁性基材に設けた非貫通孔内に、真空加圧脱泡によって導電性ペーストを充填することから、導電性ペーストへの気泡の残留を極力抑えることができるので、安定した層間接続抵抗を得ることができる。
【0016】
本発明の製造方法において用いられる絶縁性基材は、従来のような半硬化状態のプリプレグではなく、完全に硬化した樹脂材料から形成される硬質の絶縁性基材であり、このような材料を用いることによって、絶縁性基材上へ銅箔を加熱プレスによって圧着させる際に、プレス圧による絶縁性基材の最終的な厚みの変動がなくなるので、ビアホールの位置ずれを最小限度に抑えて、ビアランド径を小さくできる。したがって配線ピッチを小さくして配線密度を向上させることができる。また、基材の厚みを実質的に一定に保つことができるので、充填ビアホール形成用の非貫通孔をレーザ加工によって形成する場合には、そのレーザ照射条件の設定が容易となる。
【0017】
上記絶縁性基材としては、厚さが20〜600μmのガラス布エポキシ基材が用いられるのが好ましい。その理由は、20μm未満の厚さでは、強度が低下して取扱が難しくなるとともに、電気的絶縁性に対する信頼性が低くなり、600μmを超える厚さでは微細なビアホールの形成および導電性ペーストの充填が難しくなるとともに、基板そのものが厚くなるためである。
【0018】
上記絶縁性基材の一方の表面には、適切な樹脂接着剤を介して銅箔が貼り付けられ、エッチング処理によって導体回路が形成される。このような絶縁性基材上への銅箔の貼付に代えて、絶縁性基材上に予め銅箔が貼付られた片面銅張積層板を用いることもできる。
【0019】
本発明にかかる両面回路基板を製造する際には、まず上記銅箔が貼付けられた絶縁性基材の表面と反対側の表面に、樹脂フィルムからなる保護フィルムを貼付け、その保護フィルム上からレーザ照射を行って非貫通孔を形成するが、片面回路基板を製造する際には、まず上記銅箔をエッチングして導体回路を形成した後、この導体回路が形成された絶縁性基材の表面と反対側の表面に、樹脂フィルムからなる保護フィルムを貼付け、その保護フィルム上からレーザ照射を行って非貫通孔を形成する。
上記保護フィルムは、絶縁性基材の表面から銅箔に達する非貫通孔内に導電性ペーストを充填する際の印刷用マスクとして機能し、絶縁性基材に非貫通孔を形成した後は、絶縁性基材から剥離されるような粘着剤層を有する。この保護フィルムは、たとえば、粘着剤層の厚みが1〜20μmであり、フィルム自体の厚みが10〜50μmであるPETフィルムから形成されるのが好ましい。
【0020】
その理由は、PETフィルムの厚さに依存して、導電性ペーストの絶縁性基材表面からの突出量が決まるので、10μm未満の厚さでは突出量が小さすぎて接続不良になりやすく、逆に50μmを超えた厚さでは、溶融した導電性ペーストが接続界面において拡がりすぎるので、ファインパターンの形成ができないからである。
【0021】
上記範囲の厚さを有するガラスエポキシ基板上に、レーザ照射によって形成される非貫通孔は、パルスエネルギーが0.5〜100mJ、パルス幅が1〜100μs、パルス間隔が0.5ms以上、ショット数が3〜50の条件で照射される炭酸ガスレーザによって形成されることが好ましく、その口径は、50〜250μmの範囲であることが望ましい。
その理由は、50μm未満では非貫通孔内に導電性ペーストを充填し難くなると共に、接続信頼性が低くなるからであり、250μmを超えると、高密度化が困難になるからである。
【0022】
非貫通孔に導電性ペーストを充填する前に、非貫通孔の内壁面に残留する樹脂残滓を取り除くためのデスミア処理を行うことが接続信頼性確保の点から望ましく、たとえば、プラズマ放電やコロナ放電等を用いたドライデスミア処理や、過マンガン酸カリウム溶液等を用いたウエットデスミア処理のいずれでも可能である。
【0023】
上記絶縁性基材の非貫通孔に対するデスミア処理の後、真空加圧脱泡法によって、非貫通孔内に充填される導電性ペーストは、製造コストを低減させ、歩留まりを向上させるのに好適である。
上記導電性ペーストとしては、銀、銅、金、ニッケル、半田から選ばれる少なくとも1
種以上の金属粒子を含む導電性ペーストを使用できる。
【0024】
また、前記金属粒子としては、金属粒子の表面に異種金属をコーティングしたものも使用できる。具体的には銅粒子の表面に金、銀から選ばれる貴金属を被覆した金属粒子を使用することができる。
上記導電性ペーストとしては、金属粒子に、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリフェニレンスルフイド(PPS)などの熱可塑性樹脂を加えた有機系導電性ペーストを用いることもできる。
このような導電性ペーストの非貫通孔内への充填は、メタルマスクを用いた印刷による方法や、スクイージやディスペンサーを用いた方法等のいずれの方法でも可能である。
【0025】
また、減圧条件および印加する圧力は、導電性ペーストの粘度、溶剤の種類や量、スルーホールやビアホールの開口径および深さに応じて決定され、このような適切な条件下での導電性ペーストへの圧力印加は、例えば、公知のプレス装置やドライフィルム形成用の真空ラミネータを用いて行うことができる。
さらに、必要に応じて、開口内に充填された導電性ペーストを加熱して、その流動性を高めることによって、気泡排除の時間を短縮することができる。
【0026】
片面回路基板を製造する際には、上記絶縁性基材の非貫通孔内に導電性ペーストを充填した後、絶縁性基材から保護フィルムを剥離させることによって、充填ビアホールを形成するが、絶縁性基材表面に露出した導電性ペーストを覆った半硬化の樹脂接着剤を形成することが望ましい。
【0027】
また、両面回路基板を製造する際には、上記絶縁性基材の非貫通孔内に導電性ペーストを充填した後、保護フィルムを剥離して、絶縁性基材表面に露出した導電性ペーストを覆った半硬化状態の樹脂接着剤を形成し、この樹脂接着剤を介して絶縁性基材表面に銅箔を加熱プレスすることによって、導電性ペーストと銅箔とが電気的に接続される。
【0028】
上記樹脂接着剤は、たとえば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂から形成され、その厚みは10〜50μmの範囲が好ましい。
また、上記銅箔の厚さは、5〜18μmが望ましく、また加熱プレスは、適切な温度および加圧力のもとで行なわれる。より好ましくは、減圧下において加熱プレスが行なわれ、半硬化状態の樹脂接着剤層のみを硬化することによって、銅箔を絶縁性基材に対してしっかりと接着され得るので、従来のプリプレグを用いた回路基板に比べて製造時間が短縮される。
【0029】
上記絶縁性基材の一面に貼付けられた銅箔は、前述したように絶縁性基材の他の面に予め貼付けてある銅箔とともに、適切なエッチング処理が施されて、絶縁性基材の両面に導体回路が形成される。
【0030】
このように導体回路が絶縁性基材の両面に形成されるような回路基板は、多層プリント配線板を形成する際のコア基板として適切であるが、各ビアホールに対応した基板表面には、導体回路の一部としてのビアランド(パッド)が、その口径が50〜250μmの範囲に形成されるのが好ましい。
また、導体回路が絶縁性基材の片面に形成されるような回路基板は、積層用回路基板として適切であり、ビアホールに充填された導電性ペーストを基板表面から所定量だけ露出させて突起状導体を形成することが好ましい。
【0031】
以下、本発明にかかる多層プリント配線板用の両面回路基板の製造方法の一例について、図1を参照にして具体的に説明する。
(1)本発明にかかる両面回路板を製造するに当たって、絶縁性基材10の片面に銅箔12が貼付けられたものを出発材料として用いる(図1(a)参照)。
この絶縁性基材10は、たとえば、ガラス布エポキシ樹脂基材、ガラス布ビスマレイミドトリアジン樹脂基材、ガラス布ポリフェニレンエーテル樹脂基材、アラミド不織布−エポキシ樹脂基材、アラミド不織布−ポリイミド樹脂基材から選ばれるリジッド(硬質)な積層基材が使用され得るが、ガラス布エポキシ樹脂基材が最も好ましい。
【0032】
上記絶縁性基材10の厚さは、20〜600μmが望ましい。その理由は、20μm未満の厚さでは、強度が低下して取扱が難しくなるとともに、電気的絶縁性に対する信頼性が低くなり、600μmを超える厚さでは微細なビアホールの形成および導電性ペーストの充填が難しくなるとともに、基板そのものが厚くなるためである。
【0033】
また銅箔12の厚さは、5〜18μmが望ましい。その理由は、後述するようなレーザ加工を用いて、絶縁性基材にビアホール形成用の非貫通孔を形成する際に、薄すぎると貫通してしまうからであり、逆に厚すぎるとエッチングにより、ファインパターンを形成し難いからである。
上記絶縁性基材10および銅箔12としては、特に、エポキシ樹脂をガラスクロスに含潰させてBステージとしたプリプレグと、銅箔とを積層して加熱プレスすることにより得られる片面銅張積層板を用いることが好ましい。その理由は、銅箔12が後述するようにエッチングされた後の取扱中に、配線パターンやビアホールの位置がずれることがなく、位置精度に優れるからである。
【0034】
(2)このような絶縁性基材10の銅箔12が貼付けられた表面と反対側の表面に、保護フィルム16を貼付ける(図1(b)参照)。
この保護フィルム16は、後述する導電性ペーストの印刷用マスクとして使用され、たとえば、表面に粘着層を設けたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが使用され得る。
前記PETフィルム16は、粘着剤層の厚みが1〜20μm、フィルム自体の厚みが10〜50μmであるようなものが使用される。
【0035】
(3)ついで、絶縁性基材10上に貼付けられたPETフィルム16上からレーザ照射を行って、PETフィルム16を貫通して、絶縁性基材10の表面から銅箔12に達する非貫通孔18を形成する(図1(c)参照)。
このレーザ加工は、パルス発振型炭酸ガスレーザ加工装置によって行われる。加工条件は、パルスエネルギーが0.5〜100mJ、パルス幅が1〜100μs、パルス間隔が0.5ms以上、ショット数が3〜50の範囲内であることが望ましい。
このような加工条件のもとで形成され得る非貫通孔18の口径は、50〜250μmであることが望ましい。
【0036】
(4)前記(3)の工程で形成された非貫通孔18の内壁面に残留する樹脂残滓を取り除くために、デスミア処理を行う。このデスミア処理としては、プラズマ放電、コロナ放電等を用いたドライデスミア処理や過マンガン酸カリウム溶液等を用いたウエットデスミア処理が可能である。
【0037】
(5)次に、デスミア処理された非貫通孔18内に印刷によって導電性ペースト20を充填する(図1(d)参照)。
その後、基板全体を真空チェンバー(図示を省略)内のステージ上に固定し、1×103〜5×103Paの減圧下において、絶縁性基材10の導電性ペースト20の露出側の表面を適切なプレス装置(図示を省略)によって、数分間だけ加圧して、半硬化状態にする。
【0038】
(6)その後、PETフィルム16を絶縁性基材10の表面から剥離させたのち、半硬化状態の接着剤層、すなわちBステージの接着剤層14を配置し(図1(e)参照)、この接着剤層14を介して銅箔24を絶縁性基材10の表面に加熱プレスによって圧着して、接着剤層14を硬化させる(図1(f)参照)。
この接着剤14は、たとえば、エポキシ樹脂ワニスが使用され、その層厚は10〜50μmの範囲が望ましく、銅箔24の厚さは、5〜18μmが望ましい。上記加熱プレスによって、銅箔24は硬化した接着剤層14を介して絶縁性基材10に接着され、導電性ペースト20と銅箔24とが電気的に接続される。
【0039】
(7)ついで、絶縁性基材10の両面に貼付けられた銅箔12および24上に、それぞれエッチング保護フィルムを貼付けて、所定の回路パターンのマスクで披覆した後、エッチング処理を行って、導体回路26および28(ビアランドを含む)を形成する(図1(g)参照)。
この処理工程においては、先ず、銅箔12および24の表面に感光性ドライフィルムレジストを貼付した後、所定の回路パターンに沿って露光、現像処理してエッチングレジストを形成し、エッチングレジスト非形成部分の金属層をエッチングして、ビアランドを含んだ導体回路パターン26および28を形成する。
エッチング液としては、硫酸一過酸化水素、過硫酸塩、塩化第二銅、塩化第二鉄の水溶液から選ばれる少なくとも1種の水溶液が望ましい。
上記銅箔12および24をエッチングして導体回路26および28を形成する前処理として、ファインパターンを形成しやすくするため、あらかじめ、銅箔の表面全面をエッチングして厚さを1〜10μm、より好ましくは2〜8μm程度まで薄くすることができる。
導体回路の一部としてのビアランドは、その内径がビアホール径とほぼ同様であるが、その外径は、50〜250μmの範囲に形成されることが好ましい。
【0040】
(8)次に、前記(7)の工程で形成した導体回路26および28の表面を粗化処理して(粗化層の表示は省略する)、コア用の両面回路基板30を形成する。
この粗化処理は、多層化する際に、接着剤層との密着性を改善し、剥離(デラミネーション)を防止するためである。
粗化処理方法としては、例えば、ソフトエッチング処理や、黒化(酸化)一還元処理、銅−ニッケルーリンからなる針状合金めっき(荏原ユージライト製:商品名インタープレート)の形成、メック社製の商品名「メックエッチボンド」なるエッチング液による表面粗化がある。
【0041】
この実施形態においては、上記粗化層の形成は、エッチング液を用いて形成されるのが好ましく、たとえば、導体回路の表面を第二銅錯体と有機酸の混合水溶液からエッチング液を用いてエッチング処理することによって形成することができる。かかるエッチング液は、スプレーやバブリングなどの酸素共存条件下で、銅導体回路を溶解させることができ、反応は、次のように進行するものと推定される。
Cu+Cu(II)An →2Cu(I)An/2
2Cu(I)An/2 +n/4O2 +nAH (エアレーション)
→2Cu(II)An +n/2H2O
式中、Aは錯化剤(キレート剤として作用)、nは配位数を示す。
【0042】
この式に示されるように、発生した第一銅錯体は、酸の作用で溶解し、酸素と結合して第二銅錯体となって、再び銅の酸化に寄与する。本発明で用いられる第二銅錯体は、アゾール類の第二銅錯体がよい。この有機酸−第二銅錯体からなるエッチング液は、アゾール類の第二銅錯体および有機酸(必要に応じてハロゲンイオン)を、水に溶解して調製することができる。
このようなエッチング液は、たとえば、イミダゾール銅(II)錯体 10重量部、グリコール酸
7重量部、塩化カリウム 5重量部を混合した水溶液から形成される。
上記(1)〜(8)の工程にしたがって製造された、本発明にかかる多層プリント配線板用両面回路基板は、多層プリント配線板のコア用回路基板として好適である。
【0043】
次に、上記両面回路基板の表面および裏面にそれぞれ積層される片面回路基板の製造方法について、図2を参照にして説明する。
(1)まず、絶縁性基材10の片面に貼付けられた銅箔12上に、エッチング保護フィルムを貼付けて、所定の回路パターンのマスクで披覆した後、エッチング処理を行って、導体回路34(ビアランドを含む)を形成する(図2(a)〜図2(b)参照)。
この処理工程においては、先ず、銅箔12の表面に感光性ドライフィルムレジストを貼付した後、所定の回路パターンに沿って露光、現像処理してエッチングレジストを形成し、エッチングレジスト非形成部分の金属層をエッチングして、ビアランドを含んだ導体回路パターン34を形成する。
エッチング液としては、硫酸一過酸化水素、過硫酸塩、塩化第二銅、塩化第二鉄の水溶液から選ばれる少なくとも1種の水溶液が望ましい。
上記銅箔12をエッチングして導体回路34を形成する前処理として、ファインパターンを形成しやすくするため、あらかじめ、銅箔の表面全面をエッチングして厚さを1〜10μm、より好ましくは2〜8μm程度まで薄くすることができる。
【0044】
(2)導体回路34を絶縁性基材10の片面に形成した後、上記両面回路基板の(2)〜(5)の工程にしたがった処理を行ない(図2(c)〜図2(d)参照)、その後、PETフィルム16を絶縁性基材10の表面から剥離させた後、絶縁性基材10の樹脂面および突起状導体36を覆って接着剤層38を形成することによって、絶縁性基材10の片面に導体回路34が形成され、かつその導体回路34に電気的に接続された充填ビアホール22を備えた片面回路基板40が製造される(図2(e)参照)。
上記接着剤層38は、両面回路基板に片面回路基板を積層して多層プリント配線板を製造する際に、隣接する回路基板同士を接続するために設けられ、絶縁性基材10の樹脂面全体に塗布され、乾燥化された状態の未硬化樹脂からなる接着剤層38として形成され、取扱が容易になるため、プレキュアしておくことが好ましく、その厚さは、20〜30μmの範囲が望ましい。
【0045】
このように、上記(1)〜(2)の工程にしたがって製造される片面回路基板は、絶縁性基材10の一方の表面に導体回路34を有し、他方の表面には導電性ペーストの一部が露出して形成される突起状導体36を有するとともに、突起状導体を含んだ絶縁性基材表面を覆った樹脂接着剤層を有し、これらの複数枚の片面回路基板は、予め上記工程(1)〜(8)にしたがって製造されたコア用回路基板30に積層されて多層化される。
【0046】
図3は、コア用両面回路基板30の両面に、3枚の片面回路基板40、42および44が積層されてなる4層基板が、加熱温度150〜200℃、加圧力1M〜4MPaの条件下で、1度のプレス成形により一体化された多層プリント配線板を示している。
このように、加圧と同時に加熱することで、各片面回路基板が製造されて後、多層化する段階において設けた接着剤層38が硬化し、隣接する片面回路基板との間で強固な接着が行われる。なお、熱プレスとしては、真空熱プレスを用いることが好適である。
【0047】
上述した実施形態では、コア用両面回路基板と3層の片面回路基板とを用いて4層に多層化したが、5層あるいは6層を超える多層プリント配線板の製造にも適用できる。
【0048】
【実施例】
(実施例1)
(1)エポキシ樹脂をガラスクロスに含潰させてBステージとしたプリプレグと、銅箔とを積層して加熱プレスすることにより得られる片面銅張積層板を基板として用いる。絶縁性基材10の厚さは75μm、銅箔12の厚さは、12μmとした。
【0049】
(2)このような絶縁性基材10の銅箔12が貼付けられた表面と反対側の表面に、厚さ22μmのPETフィルム16を貼付ける。
上記PETフィルム16は、厚みが10μmの粘着剤層と、厚みが12μmのフィルムベースとからなる。
【0050】
(3)次いで、PETフィルム16上から、以下のようなレーザ加工条件でパルス発振型炭酸ガスレーザを照射して、ビアホール形成用の非貫通孔18を形成する。
〔レーザ加工条件〕
パルスエネルギー 4.0mJ
パルス幅 15μs
パルス間隔 2ms以上
ショット数 5
【0051】
(4)さらに、非貫通孔18の開口内壁に残留する樹脂を取り除くために、以下のような条件にて、プラズマ装置を用いたプラズマクリーニング処理を施す。
〔プラズマクリーンニング条件〕
電極冷却方式: 水冷
熱伝導性シート: 金属粒子入シリコーン樹脂
反応ガス: O2とCF4との混合ガス(O2:CF4=70:30)
チャンバー内真空度: 7.3×104Pa
出力: 500W
通電時間: 3分
回路基板温度: 60℃
【0052】
(5)次いで、導電性ペースト20を、PETフィルム16を印刷マスクとして、貫通孔18の内部に充填して、150μmφの充填ビアホール22を形成する。その際、以下のような条件で真空加圧脱泡を行う。
〔真空加圧脱泡条件〕
真空度: 2.5×103Pa
加圧力: 2MPa
【0053】
(6)PETフィルム16を剥離した後、ペースト20を100℃で30分間加熱して半硬化させ、さらにBステージのエポキシ樹脂からなる接着剤層14を設け、この接着剤層14を介して、厚さ12μmの銅箔24を、以下のような条件のもとで接着剤層14上に加熱プレスする。
〔加熱プレス条件〕
加熱温度: 180℃
加熱時間: 70分
圧力: 2MPa
真空度: 2.5×103Pa
その後、銅箔12および24に適切なエッチング処理を施して、導体回路26および28(ビアランドを含む)を形成して、両面回路基板30を作製した。
【0054】
(実施例2)
(1)上記実施例1の(1)の工程の後に、絶縁性基材10の一面に貼付けられた銅箔12に適切なエッチング処理を施して、導体回路34(ビアランドを含む)を形成する。
(2)次に、上記実施例1の(2)〜(5)の工程とほぼ同様の処理を行って、導電性ペースト20を非貫通孔18の内部に充填し、かつ硬化させて、150μmφの充填ビアホール22を形成し、さらに、PETフィルム16を剥離させた後に、突起状導体36を含んだ絶縁性基材10の表面に樹脂接着剤層38を形成して、片面回路基板40を作製した。
【0055】
(比較例1)
(1)硬化されたガラス布エポキシ樹脂基材(厚さ75μm)からなる絶縁性基材の両面に接着剤を塗布し、100℃で30分間の乾燥を行って厚さ20μmの接着剤層を形成し、さらにその接着剤層の上に、厚みが10μmの粘着剤層を有し、フィルム自体の厚みが12μmのPETフィルムをラミネートする。
【0056】
(2)次いで、PETフィルム上からパルス発振型炭酸ガスレーザを照射してビアホール形成用の貫通孔を形成し、さらにPETフィルムを印刷マスクとして、印刷によって貫通孔内部に導電性ペーストを充填して、150μmφの充填ビアホールを形成する。
【0057】
(3)PETフィルムを接着剤層から剥離した後、厚さ12μmの銅箔を、加熱温度180℃、加熱時間70分、圧力2MPa、真空度2.5×103Paの条件のもとで、接着剤層上に加熱プレスする。
(4)その後、基板両面の銅箔に適切なエッチング処理を施して、導体回路およびビアランドを形成して、コア用両面回路基板を作製した。
【0058】
上記実施例1、実施例2および比較例1によって製造された両面回路基板について、非貫通孔内に残留する樹脂残滓の程度とボイドレスの程度をX線顕微鏡(EV−1100PC2:ユニハイト製)によって調べた。
その結果、実施例1および実施例2においては、樹脂残滓はほとんど見当たらず、また500,000個のビアホール中のボイド数は0であったが、比較例1においては、若干の樹脂残滓が見受けられ、10,000個のビアホール中のボイド数は5であった。
【0059】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、両面回路基板と片面回路基板とを一部共通な製造工程を経て製造できるので、製造コストの低減を図ることができ、また、一面に銅箔が貼付けられた絶縁性基材に設けた非貫通孔内に、真空加圧脱泡によって導電性ペーストを充填するので、導電性ペーストへの気泡の残留を極力抑えることができ、層間接続抵抗の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多層プリント配線板用両面回路基板の製造工程の一部を示す図。
【図2】本発明の両面回路基板に積層される回路基板の製造工程の一部を示す図。
【図3】本発明による両面回路基板と片面回路基板とを積層した4層配線板を示す図。
【符号の説明】
10 絶縁性基材
12 銅箔
14 樹脂接着剤
16 PETフィルム
18 非貫通孔
20 導電性ペースト
22 充填ビアホール
24 銅箔
26、28 導体回路
30 コア用両面回路基板
34 導体回路
36 突起状導体
38 樹脂接着剤
40、42、44 積層用片面回路基板
Claims (2)
- 完全に硬化した硬質の樹脂材料から形成された硬質の絶縁性基材の両面に導体回路を有し、この絶縁性基材中に前記導体回路間を電気的に接続するビアホールが形成された多層プリント配線板用回路基板を製造するに当たって、その製造工程中に、少なくとも以下の(1)〜(4)の工程、すなわち、
(1)一面に銅箔が貼付けられた絶縁性基材の他の面に、樹脂フィルムを貼付け、その樹脂フィルム上からレーザ照射を行って前記銅箔に達する非貫通孔を形成する工程、
(2)前記非貫通孔内に導電性ペーストを充填した後、前記絶縁性基材を減圧条件下において、前記充填された導電性ペーストの、前記絶縁性基材の他の面から露出した側の表面を加圧する工程、
(3)前記樹脂フィルムを絶縁性基材の表面から剥離させたのち、前記絶縁性基材の他の面から露出した導電性ペーストを半硬化させ、そのペーストを含んだ絶縁性基材の表面に、半硬化状態の樹脂接着剤層を形成し、その樹脂接着剤層を介して銅箔を加熱圧着して、前記導電性ペーストと銅箔とを電気的に接続させる工程、および
(4)前記絶縁性基材に貼付けられた銅箔をエッチングして、絶縁性基材の両面に導体回路を形成する工程、
を含むことを特徴とする多層プリント配線板用回路基板の製造方法。 - 完全に硬化した硬質の樹脂材料から形成された硬質の絶縁性基材の片面に導体回路を有し、この絶縁性基材中に前記導体回路に達する充填ビアホールが形成された多層プリント配線板用回路基板を製造するに当たって、その製造工程中に、少なくとも以下の(1)〜(3)の工程、すなわち、
(1)一面に銅箔が貼付けられた絶縁性基材にエッチング処理を施して導体回路を形成する工程、
(2)前記絶縁性基材の他の面に、樹脂フィルムを貼付け、その樹脂フィルム上からレーザ照射を行って前記導体回路に達する非貫通孔を形成する工程、および
(3)前記非貫通孔内に導電性ペーストを充填した後、前記絶縁性基材を減圧条件下において、前記充填された導電性ペーストの、前記絶縁性基材の他の面から露出した側の表面を加圧して、前記銅箔との電気的接続を行なう充填ビアホールを形成する工程、
を含むことを特徴とする多層プリント配線板用回路基板の製造方法。
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