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JP5759106B2 - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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JP5759106B2 JP2010039926A JP2010039926A JP5759106B2 JP 5759106 B2 JP5759106 B2 JP 5759106B2 JP 2010039926 A JP2010039926 A JP 2010039926A JP 2010039926 A JP2010039926 A JP 2010039926A JP 5759106 B2 JP5759106 B2 JP 5759106B2
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  • Control Of Throttle Valves Provided In The Intake System Or In The Exhaust System (AREA)
  • Output Control And Ontrol Of Special Type Engine (AREA)
  • Control Of Vehicle Engines Or Engines For Specific Uses (AREA)

Description

本発明は、内燃機関の自動停止時に、吸気弁の閉弁時期を変更可能なカム位相可変機構と、吸気量を調整するスロットル弁を制御する内燃機関の制御装置に関する。
従来の内燃機関の制御装置として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この内燃機関は、吸気量の調整手段として、吸気通路に設けられたスロットル弁と、吸気弁のリフトを変更する可変動弁機構を備えている。また、この制御装置では、アイドル運転状態において、内燃機関が停止する直前の状態であると判定されたときには、スロットル弁によって吸気量を調整するとともに、吸気弁のリフトを、スロットル弁により発生する吸入負圧が急激に変化しないようにしながら、所定の始動用リフトまで徐々に増加させる。以上のように、内燃機関の停止時に吸気弁のリフトが大きな始動用リフトに制御されることで、次回の始動時に必要な吸気量を確保し、始動性を向上させるようにしている。
特開2007−56711号公報
内燃機関が自動停止(アイドルストップ)状態から再始動される際には、停止時から再始動時までの時間が比較的短いため、気筒内の温度が高くなっている場合があり、その場合には自着火が発生しやすい。この制御装置では、吸気弁のリフトを始動に必要な吸気量が確保できるような始動用リフトまで増加させるにすぎないため、吸気弁のリフトが始動用リフトに設定されたときの吸気弁の閉弁時期が、ピストンが下死点に位置する時期に比較的近い場合には、内燃機関の再始動時に、有効圧縮比が高くなることで、自着火が発生するおそれがある。
また、内燃機関の始動性を向上させるために、内燃機関の停止時に、スロットル弁の開度を制御することによって、ピストンを吸気弁と排気弁とのバルブオーバーラップが発生しないような所定位置に停止させる停止位置制御が知られている。このような停止位置制御を従来の制御装置に適用した場合には、吸気弁のリフトが始動用リフトに達する前に内燃機関が停止され、その状態で停止位置制御が行われることがある。その場合には、そのときの吸気弁の閉弁時期に応じて有効圧縮比が変化し、それに応じてピストンの止まり方も変化するため、ピストンを所定位置に精度良く停止させることができない。
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、自動停止時にピストンを所定位置に精度良く停止させるとともに、自動停止後の再始動時における自着火の発生を防止することができる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明は、吸気弁8を駆動する吸気カム52のクランクシャフト3eに対するカム位相(実施形態における(以下、本項において同じ)吸気カム位相CAIN)を変更することによって、吸気弁8の閉弁時期(閉弁タイミングIVC)を変更可能な吸気位相可変機構(吸気カム位相可変機構60、吸気カム位相可変機構160)と、吸気通路(吸気管12)に設けられ、開度(目標スロットル弁開度TH_CMD)を変更することによって吸気量を調整するスロットル弁13aとを有し、所定の停止条件が成立したときに自動停止される内燃機関の制御装置1であって、内燃機関3が自動停止された後、スロットル弁13aの開度を制御することによって、内燃機関3のピストン3bの停止位置を所定位置に制御する停止位置制御手段(ECU2、THアクチュエータ13b、図13のステップ48)と、内燃機関3の気筒3a内の温度(推定筒内温度TENG)を取得する筒内温度取得手段(ECU2、図8のステップ6、図10)と、内燃機関3が自動停止された後、取得された気筒3a内の温度が所定温度(CAIN変更実施筒内温度TENGCAINCNG)以上である場合において、吸気弁8の閉弁時期がピストン3bが下死点に位置する時期(下死点時期BDC)よりも早いときに、吸気弁8の閉弁時期を進角側に制御し、内燃機関3が自動停止された後、取得された気筒3a内の温度が所定温度(CAIN変更実施筒内温度TENGCAINCNG)以上である場合において、吸気弁8の閉弁時期がピストン3bが下死点に位置する時期(下死点時期BDC)と一致しているとき、または吸気弁8の閉弁時期がピストン3bが下死点に位置する時期(下死点時期BDC)よりも遅いときに、吸気弁8の閉弁時期を遅角側に制御する停止時位相制御手段(ECU2、図8のステップ9〜11)と、吸気弁8のリフト(吸気リフトLIFTIN)を変更可能な吸気リフト可変機構50と、を備え、停止位置制御手段は、停止時位相制御手段によって制御された吸気弁8の閉弁時期に応じて、スロットル弁13aの開度を制御(図13のステップ48、図14)、吸気リフト可変機構50は、吸気弁8のリフトが大きくなるにつれて、吸気弁8の閉弁時期が遅角側に変化するように構成されており、内燃機関3が自動停止された後、停止時位相制御手段による吸気弁8の閉弁時期の進角側への制御が実行されるときに、吸気弁8のリフトを所定の最小リフト(低温時用リフトALCMDST_COLD)に制御するとともに、停止時位相制御手段による吸気弁8の閉弁時期の遅角側への制御が実行されるときに、吸気弁8のリフトを所定の最小リフト(低温時用リフトALCMDST_COLD)よりも大きな所定リフト(高温時用リフトALCMDST_HOT)に制御することを特徴とする。
この内燃機関の制御装置によれば、内燃機関が自動停止された後、気筒内の温度が所定温度以上である場合において、吸気弁の閉弁時期がピストンが下死点に位置する時期よりも早いときに、カム位相を変更することによって、吸気弁の閉弁時期を進角側に制御する。内燃機関の有効圧縮比は、吸気弁の閉弁時期がピストンが下死点に位置する時期(以下「下死点時期」という)に一致するときに最大になり、下死点時期から離れるほど、より低くなる。したがって、上記のように吸気弁の閉弁時期を進角側に制御することによって、自動停止後の再始動時における有効圧縮比が低下するので、気筒内の温度が高い場合でも、再始動時における自着火の発生を防止することができる。
また、内燃機関が自動停止された後、スロットル弁の開度を制御する。これにより、吸気量が調整され、ピストンで圧縮された吸気からピストンに作用する反力が調整されることによって、ピストンの停止位置が制御される。さらに、このときのスロットル弁の開度を進角側に変化する吸気弁の閉弁時期に応じて制御する。吸気弁の閉弁時期が変化すると、内燃機関の有効圧縮比が変化し、それに伴ってピストンに作用する反力も変化する。したがって、上記のように、スロットル弁の開度を吸気弁の閉弁時期に応じて制御することによって、吸気弁の閉弁時期に応じて変化する有効圧縮比をきめ細かく反映させながら、ピストンを所定位置に精度良く停止させることができる。
この場合、吸気弁の閉弁時期が下死点時期よりも早いときに、吸気弁の閉弁時期を遅角側に仮に制御すると、有効圧縮比は下死点時期まで一旦、増加した後に低下するため、そのように複雑に変化する有効圧縮比に応じて、スロットル弁の開度を制御する必要があり、停止位置制御が複雑になる。本発明によれば、前述したように、下死点時期よりも早いときに吸気弁の閉弁時期を進角側に制御するので、有効圧縮比が増加状態を経ずに単調に減少した状態で、停止位置制御を行うことができ、それにより、停止位置制御を単純化できるとともに、高い停止位置精度を容易に得ることができる。
また、この内燃機関の制御装置によれば、内燃機関が自動停止された後、気筒内の温度が所定温度以上である場合において、吸気弁の閉弁時期がピストンが下死点に位置する時期と一致しているとき、または吸気弁の閉弁時期がピストンが下死点に位置する時期よりも遅いときに、カム位相を変更することによって、吸気弁の閉弁時期を遅角側に制御する。内燃機関の有効圧縮比は、下死点時期に一致するときに最大になり、下死点時期から離れるほど、より低くなる。したがって、上記のように吸気弁の閉弁時期を遅角側に制御することによって、自動停止後の再始動時における有効圧縮比が低下するので、気筒内の温度が高い場合でも、再始動時における自着火の発生を防止することができる。
さらに、内燃機関が自動停止された後、スロットル弁の開度を制御する。これにより、吸気量が調整され、ピストンで圧縮された吸気からピストンに作用する反力が調整されることによって、ピストンの停止位置が制御される。さらに、このときのスロットル弁の開度を遅角側に変化する吸気弁の閉弁時期に応じて制御する。吸気弁の閉弁時期が変化すると、内燃機関の有効圧縮比が変化し、それに伴ってピストンに作用する反力も変化する。したがって、上記のように、スロットル弁の開度を吸気弁の閉弁時期に応じて制御することによって、吸気弁の閉弁時期に応じて変化する有効圧縮比をきめ細かく反映させながら、ピストンを所定位置に精度良く停止させることができる。
この場合、吸気弁の閉弁時期が下死点時期よりも遅いときに、吸気弁の閉弁時期を進角側に仮に制御すると、有効圧縮比は下死点時期まで一旦、増加した後に低下するため、そのように複雑に変化する有効圧縮比に応じて、スロットル弁の開度を制御する必要があり、停止位置制御が複雑になる。本発明によれば、前述したように、下死点時期よりも遅いときに吸気弁の閉弁時期を遅角側に制御するので、有効圧縮比が増加状態を経ずに単調に減少した状態で、停止位置制御を行うことができ、それにより、停止位置制御を単純化できるとともに、高い停止位置精度を容易に得ることができる。
自動停止の直後における吸気弁のリフトが大きいと、気筒内に流入する吸気が比較的多くなるため、気筒内に残留した燃料の後燃えが発生しやすくなる。この構成によれば、内燃機関が自動停止された後、吸気弁のリフトを最小リフトに制御するので、上記のような燃料の燃焼を抑制し、この燃焼に起因する内燃機関の回転数の上昇を防止できる。
この構成によれば、内燃機関が自動停止された後、気筒内の温度が所定温度以上のときに、吸気弁のリフトを所定の最小リフトよりも大きな所定リフトに制御する。このように吸気弁のリフトを大きな所定リフトに制御することによって、自動停止後の再始動時における有効圧縮比が低下するので、前述したように、吸気弁の閉弁時期を遅角側に制御することと併せて、有効圧縮比を速やかに低下させることができる。したがって、停止時から再始動時までの時間が比較的短い場合でも、再始動時における自着火の発生を防止することができる。
請求項に係る発明は、請求項1に記載の内燃機関の制御装置1において、内燃機関3の回転数(エンジン回転数NE)を検出する回転数検出手段(クランク角センサ22)をさらに備え、停止位置制御手段は、検出された内燃機関3の回転数が所定回転数以下(リフトアップ開始回転数NELIFTUP)になるまで、スロットル弁13aを閉弁側に制御し、内燃機関3の回転数が所定回転数以下になったときに、吸気弁8の閉弁時期に応じたスロットル弁13aの制御を開始する(ECU2、THアクチュエータ13b、図13のステップ44,49)ことを特徴とする。
内燃機関の自動停止後にスロットル弁の開度をすぐに大きくすると、気筒内への吸気量が増大し、それに伴って不快な振動や異音が発生することがある。この構成によれば、内燃機関の自動停止後にスロットル弁を一旦、閉じ側に制御するので、内燃機関の回転数を確実に低下させるとともに、不快な振動や異音の発生を防止することができる。また、内燃機関の回転数が所定回転数以下になったときに、吸気弁の閉弁時期に応じたスロットル弁の制御を開始するので、振動や異音が発生するおそれのない状態で、停止位置制御を行うことができ、それにより、停止位置制御の精度をさらに向上させることができる。
請求項に係る発明は、請求項1または2記載の内燃機関の制御装置1において、吸気位相可変機構は、カム位相を変更するための電動式のアクチュエータ(モータ64)を有することを特徴とする。
この構成によれば、内燃機関の停止後に、電動式のアクチュエータによって、カム位相を変更するので、自動停止に伴う内燃機関の停止の影響を受けることなく、停止前と同じ条件で吸気弁の閉弁時期を精度良く制御することができる。また、このように、内燃機関の停止後も吸気弁の閉弁時期が精度良く制御されることで、吸気弁および排気弁の両方が開いたバルブオーバーラップ状態が回避され、それにより、再始動時における内燃機関の始動性および排ガス特性の低下を確実に回避することができる。
請求項に係る発明は、請求項1ないしのいずれかに記載の内燃機関の制御装置1において、吸気位相可変機構は、油圧式のアクチュエータ(油圧ポンプ161、第2電磁弁162b、ドレン電磁弁162c)と、アクチュエータへの油圧の供給が停止されたときにカム位相CAINを所定のデフォルト状態に復帰させる復帰機構(リターンスプリング167a)と、をさらに有し、停止時位相制御手段は、復帰機構を用いて吸気弁の閉弁時期を制御することを特徴とする。
この構成によれば、油圧式のアクチュエータによってカム位相を変更するので、従来の油圧式のアクチュエータを備えた内燃機関に本発明を適用した場合でも、請求項1などによる前述した作用を同様に得ることができる。また、カム位相を所定のデフォルト状態に復帰させる復帰機構を用いて、吸気弁の閉弁時期を制御するので、アクチュエータが内燃機関で駆動力を利用して駆動される場合に、内燃機関の自動停止に伴って油圧の供給が停止されても、吸気弁の閉弁時期を支障なく制御することができる。
請求項に係る発明は、請求項1ないしのいずれかに記載の内燃機関の制御装置1において、内燃機関3に吸入される吸気の温度(吸気温TA)、および内燃機関3の温度(エンジン水温TW)の少なくとも一方を検出する温度検出手段(吸気温センサ29、水温センサ26)をさらに備え、筒内温度取得手段は、検出された吸気の温度および内燃機関の温度の少なくとも一方に応じて、気筒3a内の温度を算出する(図8のステップ6、図12のステップ36、図10)ことを特徴とする。
吸気の温度および内燃機関の温度は気筒内の温度を良好に反映する。この構成によれば、検出された吸気温および内燃機関の温度の少なくとも一方に応じて、気筒内の温度を算出するので、より正確な気筒内の温度を取得することができる。また、このようにして算出された正確な気筒内の温度に基づいて、上述した停止時位相制御や停止時リフト制御を実行することによって、自着火の発生をより確実に防止できるとともに、自着火の発生のおそれがないときには、吸気弁の閉弁時期やリフトが変更されることを回避でき、それにより、内燃機関の始動性および排ガス特性を向上させることができる。
請求項に係る発明は、請求項に記載の内燃機関の制御装置1において、停止時位相制御手段による吸気弁8の閉弁時期の変更を、停止位置制御手段による吸気弁8の閉弁時期に応じたスロットル弁13aの制御を開始する前に完了させる(図17、図18)ことを特徴とする。
この構成によれば、停止時位相制御手段による吸気弁の閉弁時期の変更を、吸気弁の閉弁時期に応じたスロットル弁の制御を開始する前に完了させるので、カム位相の変更に伴う閉弁時期の変化が生じない状態で、停止位置制御を行うことができ、それにより、停止位置制御を単純化することができる。
本発明の実施形態による内燃機関の制御装置を、内燃機関とともに概略的に示す図である。 吸気リフト可変機構の概略構成を示す模式図である。 吸気リフト可変機構による吸気リフトの変更に応じた吸気弁のバルブリフト曲線を示す図である。 第1実施形態による吸気カム位相可変機構の概略構成を模式的に示す断面図である。 第1実施形態による吸気カム位相可変機構の遊星歯車装置を図4のA−A線に沿う方向から見た図である。 吸気カム位相可変機構による吸気カム位相の変更に応じた吸気弁のバルブリフト曲線を示す図である。 吸気リフト可変機構および吸気カム位相可変機構による閉弁タイミングの変更に応じた有効圧縮比の変化を示す図である。 目標位相の設定処理を示すフローチャートである。 アイドルストップ条件の判定処理を示すフローチャートである。 推定筒内温度を算出するためのマップである。 閉弁タイミングを算出するためのマップである。 目標リフトの設定処理を示すフローチャートである。 目標スロットル弁開度の設定処理を示すフローチャートである。 目標スロットル弁開度を算出するためのマップである。 実施形態による内燃機関の制御処理によって得られる動作例を示す図である。 実施形態による内燃機関の制御処理によって得られる、図15と異なる動作例を示す図である。 変形例による内燃機関の制御処理によって得られる動作例を示す図である。 変形例による内燃機関の制御処理によって得られる、図17と異なる動作例を示す図である。 第2実施形態による吸気カム位相可変機構の概略構成を模式的に示す断面図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について説明する。図1は、本実施形態による制御装置1、およびこれを適用した内燃機関(以下「エンジン」という)3の概略構成を示している。
エンジン3は、車両(図示せず)に搭載された、例えば4つの気筒3a(1つのみ図示)を有するガソリンエンジンであり、自動変速機などを介して、駆動輪(いずれも図示せず)に連結されている。各気筒3aのピストン3bとシリンダヘッド3cの間には、燃焼室3dが形成されている。ピストン3bの上面の中央部には、凹部3eが形成されている。また、シリンダヘッド3cには、燃焼室3dに臨むように燃料噴射弁(以下「インジェクタ」という)4および点火プラグ5が取り付けられており、燃料は燃焼室3d内に直接、噴射される。すなわち、エンジン3は筒内噴射式のものである。
また、エンジン3は、アイドルストップ機能を備えており、所定のアイドルストップ条件が成立したときに、自動的に停止され、その後、アイドルストップ条件が解除されたときに、再始動される。アイドルストップ条件の詳細については、後述する。
自動変速機は、前進4段の自動変速機であり、L,2,D,N,R,Pの6つのシフトポジションを備えており、シフトレバー(図示せず)の操作により、1つのシフトポジションが選択される。
インジェクタ4は、シリンダヘッド3cの中央に配置されており、高圧ポンプで昇圧された後、レギュレータ(いずれも図示せず)で調圧された高圧の燃料を、ピストン3bの凹部3eに向かって噴射する。インジェクタ4の動作は、後述するECU2によって制御される。
また、点火プラグ5は、ECU2からの制御信号により、点火時期IGに応じたタイミングで高電圧が加えられることによって放電し、燃焼室3d内の混合気を燃焼させる。
エンジン3のシリンダヘッド3cには、気筒3aごとに、吸気管12および排気管14が接続されるとともに、一対の吸気弁8、8(1つのみ図示)および一対の排気弁9、9(1つのみ図示)が設けられている。吸気弁8は吸気側動弁機構40によって開閉され、排気弁9は排気側動弁機構70によって開閉される。
図2に示すように、吸気側動弁機構40は、吸気カムシャフト51、吸気カム52、吸気リフト可変機構50および吸気カム位相可変機構60などを備えている。本実施形態では、この吸気リフト可変機構50によって吸気弁8のリフトが無段階に変更される。なお、吸気弁8のリフト(以下「吸気リフトLIFTIN」という)は、吸気弁8の最大揚程を表すものとする。また、吸気カム位相可変機構60によって、クランクシャフト3fに対する吸気カム52の位相(以下「吸気カム位相」という)CAINが無段階に変更される。
吸気カムシャフト51は、吸気カム52を一体に有しており、遊星歯車装置61、吸気スプロケット51a(ともに図4参照)およびタイミングチェーン(図示せず)を介して、クランクシャフト3fに連結されており、クランクシャフト3fが2回転するごとに1回転する。
図2に示すように、吸気リフト可変機構50は、シリンダヘッド3cに軸55aを中心として回動自在に支持されたコントロールアーム55と、コントロールアーム55を回動させるコントロールカム57が一体に設けられたコントロールシャフト56と、コントロールアーム55に支軸53bを介して回動自在に支持され、吸気カム52に従動して回動するサブカム53と、サブカム53に従動し、吸気弁8を駆動するロッカアーム54とを備えている。ロッカアーム54は、コントロールアーム55にロッカアームシャフト54bを介して回動自在に支持されている。
サブカム53は、吸気カム52に当接するローラ53aを有し、吸気カムシャフト51の回転に伴い、軸53bを中心として回動する。ロッカアーム54は、サブカム53に当接するローラ54aを有し、サブカム53の動きが、ローラ54aを介して、ロッカアーム54に伝達される。
コントロールアーム55は、コントロールカム57に当接するローラ55bを有し、回動するコントロールシャフト56によって押圧され、軸55aを中心として回動する。コントロールシャフト56が最も反時計回り側に位置する図2(a)の状態では、サブカム53の動きはロッカアーム54にほとんど伝達されないため、吸気弁8はほぼ全閉の状態に維持される。一方、コントロールシャフト56が最も時計回り側に位置する同図(b)の状態では、サブカム53の動きがロッカアーム54を介して吸気弁8に伝達され、吸気リフトLIFTINは最大リフトLINMAXになる。
したがって、モータ58でコントロールシャフト56を回動させることにより、吸気リフトLIFTINは、図3に示す最大リフトLINMAXと最小リフトLINMINの間で、無段階に変更される。なお、吸気リフトLIFTINが最小リフトLINMINのときには、エンジン3の始動が可能な程度の最小限の吸気量GAIRが気筒3aに供給される。また、吸気弁8が閉弁する閉弁時期に相当するクランク角(以下「閉弁タイミング」という)IVCは、吸気リフトLIFTINが大きいほど遅くなる。
また、吸気リフト可変機構50は、モータ58を駆動するための電源として、バッテリ59を備えている。このバッテリ59は、クランクシャフト3fに接続されたジェネレータ(図示せず)に接続されている。このジェネレータがエンジン3で回転駆動されることによって発電が行われ、発電された電力はバッテリ59に充電される。
また、吸気リフト可変機構50には、コントロールシャフト56の回転角度(以下「CS角」という)ACSを検出するCS角センサ21が設けられており、その検出信号はECU2に出力される。ECU2は、その検出信号から、実際の吸気リフトLIFTINを求める。
吸気カム位相可変機構60は、電動式のものであり、図4および図5に示すように、遊星歯車装置61および駆動ユニット62などを備えている。この遊星歯車装置61は、吸気カムシャフト51と吸気スプロケット51aの間で回転を伝達するものであり、リングギヤ61a、3つのプラネタリピニオンギヤ61b、サンギヤ61cおよびプラネタリキャリア61dを備えている。このリングギヤ61aは、駆動ユニット62の後述するアウタケーシング63に一体に連結されている。また、サンギヤ61cは、吸気カムシャフト51の先端部に一体に連結されている。
一方、プラネタリキャリア61dは、ほぼ三角形に形成され、それらの3つの角部にシャフト61eがそれぞれ突設されている。プラネタリキャリア61dは、これらのシャフト61eを介して吸気スプロケット51aに一体に連結されている。また、各プラネタリピニオンギヤ61bは、プラネタリキャリア61dの各シャフト61eに回転自在に支持され、サンギヤ61cとリングギヤ61aに常に噛み合っている。
さらに、前述した駆動ユニット62は、アウタケーシング63およびモータ64で構成されている。アウタケーシング63は、中空に形成され、その中心をモータ64の駆動軸64aが貫通している。モータ64は、その基部がアウタケーシング63に取り付けられるとともに、駆動軸64aがプラネタリキャリア61dに一体に連結されている。
以上のように構成された吸気カム位相可変機構60の動作について説明する。吸気スプロケット51aが図5に矢印で示すR1方向に回転すると、プラネタリキャリア61dおよびリングギヤ61aが一体に回転することにより、プラネタリピニオンギヤ61bは回転せず、サンギヤ61cがプラネタリキャリア61dおよびリングギヤ61aと一体に回転する。すなわち、吸気スプロケット51aと吸気カムシャフト51が一体に回転する。
また、モータ64の駆動軸64aをR1方向に回動させると、アウタケーシング63が、プラネタリキャリア61dに対して、R1方向と反対のR2方向に相対的に回動する。これにより、リングギヤ61aがプラネタリキャリア61dに対して相対的にR2方向に回動し、それに伴い、プラネタリピニオンギヤ61bがR3方向に回動することで、サンギヤ61cがR4方向に回動する。その結果、吸気カムシャフト51が、吸気スプロケット51aに対して相対的にスプロケットの回転方向(R1方向)に回動することになり、それにより、吸気カム位相CAINが進角する。
したがって、モータ64でプラネタリキャリア61dを回動させることにより、図6に示すように、吸気カム位相CAINは、無段階に変更され、それに伴い閉弁タイミングIVCも変化する。また、前述したように、閉弁タイミングIVCは、吸気リフトLIFTINに応じても変化し、その結果、吸気リフトLIFTINおよび吸気カム位相CAINの両方に応じて定まる。
また、このように吸気弁8の閉弁タイミングIVCが変化すると、それに応じて、エンジン3の有効圧縮比ECRが変化する。具体的には、図7に示すように、有効圧縮比ECRは、下死点時期BDCに一致するときに最大値ECRMAXになる。また、閉弁タイミングIVCがピストン3bが下死点に位置する時期(以下「下死点時期」という(クランク角が180°になる時期))BDCよりも早い領域では、有効圧縮比ECRは、閉弁タイミングIVCが早いほど、より低くなり、閉弁タイミングIVCが最も早い時期(以下「最進角タイミング」という)IVCADのときに、値ECRADになる。閉弁タイミングIVCが下死点時期BDCよりも遅い領域では、有効圧縮比ECRは、閉弁タイミングIVCが遅いほど、より低くなり、閉弁タイミングIVCが最も遅い時期(以下「最遅角タイミング」という)IVCREのときに、値ECRREになる。
また、吸気カムシャフト51の吸気カム位相可変機構60と反対側の端部には、カム角センサ31が設けられている。このカム角センサ31は、吸気カムシャフト51の回転に伴い、パルス信号であるCAM信号を所定のカム角(例えば1゜)ごとにECU2に出力する。ECU2は、このCAM信号と後述するCRK信号およびTDC信号から、実際の吸気カム位相CAINを算出する。
一方、排気側動弁機構70は、カム駆動式のものであり、回転自在の排気カムシャフト81と、排気カムシャフト81に一体に設けられた排気カム82と、ロッカアームシャフト(図示せず)と、ロッカアームシャフトに回動自在に支持されるとともに、排気弁9,9の上端にそれぞれ当接する2つのロッカアーム(図示せず)などを備えている。
排気カムシャフト81は、排気スプロケットおよびタイミングチェーン(いずれも図示せず)を介して、クランクシャフト3fに連結されており、クランクシャフト3fが2回転するごとに1回転する。排気カムシャフト81が回転すると、ロッカアームが排気カム82で押圧され、ロッカアームシャフトを中心として回動することにより、排気弁9,9が開閉される。
また、前記クランクシャフト3fには、クランク角センサ22が設けられている。このクランク角センサ22は、クランクシャフト3fに取り付けられたマグネットロータ22aと、MREピックアップ22bで構成され、クランクシャフト3fの回転に伴い、パルス信号であるCRK信号およびTDC信号を出力する。
CRK信号は、所定のクランク角(例えば30゜)ごとに出力される。ECU2は、このCRK信号に基づき、エンジン3の回転数(以下「エンジン回転数」という)NEを算出する。TDC信号は、いずれかの気筒3aにおいてピストン3bが吸気行程開始時のTDC(上死点)付近の所定クランク角度位置にあることを表す信号であり、エンジン3が4気筒タイプの本例では、クランク角180゜ごとに出力される。
また、ECU2には、イグニッションスイッチ32から、そのオン/オフ状態を表す検出信号が出力される。なお、エンジン3の運転時に、イグニッションスイッチ32がオフされたときには、インジェクタ4から気筒3a内への燃料の供給が停止され、エンジン3が停止される。
また、ECU2には、ブレーキスイッチ33から、ブレーキペダル(図示せず)の踏み込み状態を表す検出信号が出力される。この検出信号は、ブレーキペダルが所定量以上、踏み込まれたときにオンになり、それ以外のときにオフになる。
さらに、ECU2には、車速センサ23から、車両の速度である車速VPを表す検出信号が、アクセル開度センサ24から、アクセルペダル(図示せず)の開度(以下「アクセル開度」という)APを表す検出信号が、シフトポジションセンサ25から、シフトレバーのシフトポジションを表す検出信号が、水温センサ26からエンジン3の冷却水の温度(以下「エンジン水温」という)TWを表す検出信号が、それぞれ出力される。
また、エンジン3の吸気管12には、スロットル弁13aが設けられている。このスロットル弁13aには、THアクチュエータ13bが連結されている。スロットル弁13aの開度は、ECU2からの制御信号により、THアクチュエータ13bを駆動することによって制御され、それにより、エンジン3に吸入される吸気量GAIRおよび吸気圧PBが制御される。
さらに、スロットル弁13aには、リターンスプリング(図示せず)が取り付けられている。THアクチュエータ13bへの電力供給が停止されたときに、スロットル弁13aの開度は、このリターンスプリングのばね力により、所定の初期開度THDEFに復帰する。
また、吸気管12には、スロットル弁13aの上流側に吸気量センサ27が設けられ、下流側には吸気圧センサ28および吸気温センサ29が設けられている。吸気量センサ27は吸気量GAIRを検出し、吸気温センサ29はスロットル弁13aの下流側の吸気の温度(以下「吸気温」という)TAを検出し、それらの検出信号はECU2に出力される。
また、吸気圧センサ28は、スロットル弁13aの下流側の吸気圧PBを絶対圧として検出し、その検出信号をECU2に出力する。ECU2は、吸気圧PBと大気圧センサ30で検出された大気圧PAとの差(=PA−PB)を、吸気負圧PBGAとして算出する。
また、ECU2は、CPU2a、RAM2b、ROM2cおよび入出力インターフェース(図示せず)などから成るマイクロコンピュータ(図示せず)で構成されている。前述したセンサ21〜31およびスイッチ32,33の検出信号はそれぞれ、ECU2に入力され、入力インターフェースでA/D変換や整形がなされた後、CPU2aに入力される。CPU2aは、これらの検出信号に応じ、ROM2cに記憶された制御プログラムなどに基づいて、各種の演算処理を実行する。例えば、ECU2は、アイドルストップの条件判定処理や、それに伴う制御処理を実行する。
なお、本実施形態では、ECU2は、停止位置制御手段、筒内温度取得手段、判定手段および停止時位相制御手段に相当する。
次に、図8〜図18を参照しながら、エンジン3の制御処理について説明する。本処理は、所定時間ごとに実行される。
図8は、吸気カム位相CAINの目標となる目標位相CAINCMDの設定処理を示す。この設定処理では特に、気筒3a内の温度が高いときに、アイドルストップからのエンジン3の再始動時における自着火を防止すべく、閉弁タイミングIVCを下死点時期BDCから離すように、目標位相CAINCMDが進角側または遅角側に設定される。
本処理ではまず、ステップ1(「S1」と図示。以下同じ)において、アイドルストップ条件の判定処理を実行する。図9は、そのサブルーチンを示す。本処理ではまず、ステップ21〜26において、以下の(a)〜(f)の条件が成立しているか否かをそれぞれ判別する。
(a)イグニッションスイッチ(SW)32がON状態であること
(b)エンジン回転数NEが所定値NEISTP以上であること
(c)車速VPが所定値VPREF以下であること
(d)アクセル開度APが所定値APREF以下であること
(e)シフトポジション(SP)がP,R,N以外であること
(f)ブレーキスイッチ(SW)33がON状態であること
これらのステップ21〜26の答のいずれかがNOで、(a)〜(f)の条件のいずれかが成立していないときには、アイドルストップ条件が成立していないと判定し、本処理を終了する。一方、ステップ21〜26のすべての答がYESのときには、アイドルストップ条件が成立していると判定し、そのことを表すために、ステップ27において、アイドルストップフラグF_IDLSTPを「1」にセットし、本処理を終了する。このようにアイドルストップフラグF_IDLSTPが「1」にセットされると、エンジン3を自動停止させるためのアイドルストップ制御が開始される。
図8に戻り、前記ステップ1に続くステップ2では、アイドルストップフラグF_IDLSTPが「1」であるか否かを判別する。この答がNOで、アイドルストップ制御中でないときには、ステップ3において、要求トルクPMCMDおよびエンジン回転数NEに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、目標位相CAINCMDを算出し、本処理を終了する。このマップでは、目標位相CAINCMDは、要求トルクPMCMDが大きいほど、また、エンジン回転数NEが高いほど、より大きな値に設定されている。なお、この要求トルクPMCMDは、エンジン回転数NEおよびアクセル開度APに応じて算出される。
一方、前記ステップ2の答がYESで、アイドルストップ制御中のときには、ステップ4において、エンジン回転数NEが所定のCAIN変更開始回転数NECAINCNG(例えば400rpm)以下であるか否かを判別する。この答がNOで、NE>NECAINCNGのときには、ステップ5において、目標位相CAINCMDを所定の低温時用位相CAINCMDST_COLDに設定し、本処理を終了する。このように、目標位相CAINCMDを低温時用位相CAINCMDST_COLDに設定することで、閉弁タイミングIVCが下死点時期BDCの付近に制御される。
一方、上記ステップ4の答がYESで、エンジン回転数NEがCAIN変更開始回転数NECAINCNG以下になったときには、ステップ6において、吸気温TAおよびエンジン水温TWに応じ、図10に示すマップを検索することによって、推定筒内温度TENGを算出する。この推定筒内温度TENGは、エンジン3が完全に停止したとき(NE=0)の気筒3a内の温度の推定値である。図10のマップでは、推定筒内温度TENGは、3つの吸気温TA1〜TA3(TA1>TA2>TA3)に対し、吸気温TAが高いほど、またエンジン水温TWが高いほど、より大きな値に設定されている。なお、吸気温TAが上記の3つの値以外のときには、推定筒内温度TENGは、補間計算によって算出される。
次に、ステップ7において、算出された推定筒内温度TENGが所定のCAIN変更実施筒内温度TENGCAINCNG(例えば100℃)以上であるか否かを判別する。この答がNOで、TENG<TENGCAINCNGのときには、気筒3aの温度が低いことで、再始動時に自着火が発生するおそれがないため、閉弁タイミングIVCの変更を実施しないものとして、前記ステップ5を実行し、目標位相CAINCMDを低温時用位相CAINCMDST_COLDに設定する。
一方、上記ステップ7の答がYESで、推定筒内温度TENGがCAIN変更実施筒内温度TENGCAINCNG以上のときには、気筒3aの温度が高いことで、再始動時に自着火が発生するおそれがあるため、閉弁タイミングIVCの変更を実施するものとして、ステップ8以降の処理を行う。まず、ステップ8では、吸気リフトLIFTINおよび吸気カム位相CAINに応じ、図11に示すマップを検索することによって、閉弁タイミングIVCを算出する。このマップでは、閉弁タイミングIVCは、5つの吸気リフトL1〜L5(L1<L2<L3<L4<L5)に対し、吸気カム位相CAINが進角側にあるほど、また吸気リフトLIFTINが小さいほど、より進角側に設定されている。なお、吸気リフトLIFTINが上記の5つの値以外のときには、閉弁タイミングIVCは、補間計算により算出される。
次に、ステップ9において、算出された閉弁タイミングIVCが下死点時期BDCよりも小さいか否かを判別する。この答がYESで、閉弁タイミングIVCが下死点時期BDCよりも早いときには、ステップ10において、目標位相CAINCMDを所定の高温時進角側位相CAINCMDST_HADに設定し、本処理を終了する。このように、目標位相CAINCMDを高温時進角側位相CAINCMDST_HADに設定することで、閉弁タイミングIVCが所定の進角側タイミングIVCAD(例えば150°)に制御される。
一方、上記ステップ9の答がNOで、閉弁タイミングIVCが下死点時期BDCに一致しているか、または、それよりも遅いときには、ステップ11において、目標位相CAINCMDを所定の高温時遅角側位相CAINCMDST_HREに設定し、本処理を終了する。このように、目標位相CAINCMDを高温時遅角側位相CAINCMDST_HREに設定することで、閉弁タイミングIVCが所定の遅角側タイミングIVCRE(例えば210°)に制御される。
図12は、吸気リフトLIFTINの目標となる目標リフトALCMDの設定処理を示す。この設定処理では、上述したように、目標位相CAINCMDを高温時遅角側位相CAINCMDST_HREに設定するときに、吸気リフトLIFTINを増大させる(以下「リフトアップ」という)ために、目標リフトALCMDがより大きな値に設定される。
本処理ではまず、ステップ31において、アイドルストップフラグF_IDLSTPが「1」であるか否かを判別する。この答がNOで、アイドルストップ制御中でないときには、ステップ32において、要求トルクPMCMDに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、目標吸気量GAIRCMDを算出する。このマップでは、目標吸気量GAIRCMDは、要求トルクPMCMDが大きいほど、より大きな値に設定されている。
次に、ステップ33において、算出された目標吸気量GAIRCMDに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、目標リフトALCMDを算出し、本処理を終了する。このマップでは、目標リフトALCMDは、目標吸気量GAIRCMDが大きいほど、より大きな値に設定されている。なお、図示しないが、エンジン3がアイドル運転状態であるときには、目標リフトALCMDは、最小リフトLINMINに等しいアイドル時リフトLINIDL(例えば1mm)に設定される。
一方、前記ステップ31の答がYESで、アイドルストップ制御中のときには、ステップ34において、エンジン回転数NEが所定のリフトアップ開始回転数NELIFTUP(例えば400rpm)以下であるか否かを判別する。この答がNOで、NE>NELIFTUPのときには、ステップ35において、目標リフトALCMDを最小リフトLINMINに等しい低温時用リフトALCMDST_COLD(例えば1mm)に設定し、本処理を終了する。
一方、上記ステップ34の答がYESで、エンジン回転数NEがリフトアップ開始回転数NELIFTUPを下回ったときには、ステップ36において、推定筒内温度TENGが所定のリフトアップ実施筒内温度TENGLIFTUP(例えば100℃)以上であるか否かを判別する。この答がNOで、TENG<TENGLIFTUPのときには、気筒3aの温度が低いことで、自着火が発生するおそれがないため、リフトアップを実施しないものとして、前記ステップ35を実行し、目標リフトALCMDを低温時用リフトALCMDST_COLDに設定する。
一方、上記ステップ36の答がYESで、推定筒内温度TENGがリフトアップ実施筒内温度TENGLIFTUP以上のときには、自着火が発生するおそれがあるとして、ステップ37において、閉弁タイミングIVCが下死点タイミングBDCよりも大きい否かを判別する。この答がYESで、閉弁タイミングIVCが下死点時期BDCよりも遅いときには、ステップ38において、目標リフトALCMDを低温時用リフトALCMDST_COLDよりも大きな所定の高温時用リフトALCMDST_HOT(例えば10mm)に設定することによって、リフトアップを実施し、本処理を終了する。前述したように、吸気リフトLIFTINが大きいほど、閉弁タイミングIVCは遅くなるので、ステップ38におけるリフトアップの実施により、前述した目標位相CAINCMDの遅角側への設定と協働して、有効圧縮比ECRをより速やかに低下させることができる。
以上のように吸気弁8の目標リフトALCMDが設定されると、それに対応するコントロールシャフト56のCS角ACSである目標CS角ACSCMDを設定するとともに、検出されたCS角ACSが目標CS角ACSCMDに収束するように、所定の時定数を用いたフィードバック制御によって、CS制御入力U_ACSを算出する。算出されたCS制御入力U_ACSによって、モータ58を駆動し、CS角ACSが目標CS角ACSCMDに収束するように制御され、それにより、吸気リフトLIFTINは、目標リフトALCMDに対して遅れを伴いながら、収束するように制御される。
一方、上記ステップ37の答がNOで、閉弁タイミングIVCが下死点時期BDCに一致しているか、または、それよりも遅いときには、前記ステップ35を実行し、目標リフトALCMDを低温時用リフトALCMDST_COLDに維持する。これは、この状態でリフトアップを仮に実施すると、閉弁タイミングIVCが遅くなり、前述した目標位相CAINCMDの進角側への設定による閉弁タイミングIVCの進角と干渉するので、それを回避するためである。
図13は、目標スロットル弁開度TH_CMDの設定処理を示す。本処理ではまず、ステップ41において、アイドルストップフラグF_IDLSTPが「1」であるか否かを判別する。この答がNOで、アイドルストップ制御中でないときには、ステップ42において、エンジン回転数NEに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、目標負圧PBGACMDを算出する。このマップでは、目標負圧PBGACMDは、エンジン回転数NEが高いほど、より小さな値に、すなわち負圧が小さくなるように設定されている。
次に、ステップ43において、吸気負圧PBGAが算出された目標負圧PBGACMDになるように、フィードバック制御によって目標スロットル弁開度TH_CMDを算出し、本処理を終了する。なお、図示しないが、エンジン3がアイドル運転状態であるときには、目標スロットル弁開度TH_CMDは、アイドル開度THIDLに設定される。このアイドル開度THIDLは、エンジン回転数NEが所定のアイドル回転数NEIDL(例えば800rpm)になるように、フィードバック制御によって設定される。
一方、上記ステップ41の答がYESで、アイドルストップ制御中のときには、ステップ44において、エンジン回転数NEが所定のリフトアップ開始回転数NELIFTUP以下であるか否かを判別する。なお、このリフトアップ開始回転数NELIFTUPは、前述したCAIN変更開始回転数NECAINCNGと同じ値(例えば400rpm)に設定されている。この答がNOで、NE>NELIFTUPのときには、ステップ45において、目標スロットル弁開度TH_CMDを小さな所定の1段目制御開度TH1(例えば1°)に設定し、本処理を終了する。
一方、上記ステップ44の答がYESで、エンジン回転数NEがリフトアップ開始回転数NELIFTUPを下回ったときには、ステップ46において、エンジン回転数NEが0であるか否かを判別する。この答がYESで、エンジン3が完全に停止したときには、ステップ47において、目標スロットル弁開度TH_CMDを初期開度THDEFに設定し、本処理を終了する。エンジン3が完全に停止すると、THアクチュエータ13bへの電力供給が停止され、リターンスプリングのばね力により、スロットル弁13aの開度が初期開度THDEFになる。
一方、上記ステップ46の答がNOで、エンジン3がまだ停止していないときには、ステップ48において、閉弁タイミングIVCに応じ、図14に示すマップを検索することによって、目標スロットル弁開度TH_CMDを算出し、本処理を終了する。
図7との比較から明らかなように、この図14のマップでは、目標スロットル弁開度TH_CMDは、閉弁タイミングIVCに応じ、前述した有効圧縮比ECRと逆の増減傾向になるように設定されている。具体的には、目標スロットル弁開度TH_CMDは、閉弁タイミングIVCが下死点時期BDCのときには、最小開度である1段目制御開度TH1に設定されている。また、閉弁タイミングIVCが下死点時期BDCよりも早い領域では、目標スロットル弁開度TH_CMDは、閉弁タイミングIVCが早いほど、より大きな値に設定され、最進角タイミングIVCADのときに、最進角タイミング用の2段目制御開度(以下「進角側2段目制御開度」という)TH2_ADに設定されている。閉弁タイミングIVCが下死点時期BDCよりも遅い領域では、目標スロットル弁開度TH_CMDは、閉弁タイミングIVCが遅いほど、より大きな値に設定され、最遅角タイミングIVCREのときに、最遅角タイミング用の2段目制御開度(以下「遅角側2段目制御開度」という)TH2_REに設定されている。
図15は、これまでに説明したエンジン3の制御処理によって得られる動作例を、推定筒内温度TENGが高く、かつ、アイドルストップ制御が開始されたときの閉弁タイミングIVCが下死点時期BDCよりも早い場合について示している。この例では、時点t1までは、車両は停止しており(VP=0)、また、アイドルストップ条件が成立していないため、アイドルストップフラグF_IDLSTPは「0」にセットされ、アイドル運転が行われている。このアイドル運転状態では、目標位相CAINCMDおよび目標リフトALCMDは、前述した低温時用位相CAINCMDST_COLDおよび低温時用リフトALCMDST_COLDにそれぞれ設定されており、それにより、吸気弁8の閉弁タイミングIVCは下死点時期BDCよりも若干早くなっている。また、目標スロットル弁開度TH_CMDはアイドル開度THIDLに設定されている。
この状態からアイドルストップ条件が成立すると(t1)、アイドルストップフラグF_IDLSTPが「1」にセットされ(ステップ27)、アイドルストップ制御が開始されることによって、エンジン3への燃料供給が停止され、それに伴い、エンジン回転数NEがアイドル回転数NEIDLから低下し始める。また、目標位相CAINCMDおよび目標リフトALCMDは引き続き、下死点時期BDC付近の低温時用位相CAINCMDST_COLDおよび低温時用リフトALCMDST_COLDにそれぞれ設定される。また、目標スロットル弁開度TH_CMDが1段目制御開度TH1に設定される(ステップ45)。
その後、エンジン回転数NEがCAIN変更開始回転数NECAINCNG(=リフトアップ開始回転数NELIFTUP)まで低下すると(t2)、このときの閉弁タイミングIVCが下死点時期BDCよりも早いので、目標位相CAINCMDは、より進角側の高温時進角側位相CAINCMDST_HADに設定される(ステップ9,10)。これに伴い、吸気カム位相CAINは、前述したフィードバック制御により、高温時進角側位相CAINCMDST_HADに向かって遅れを伴いながら次第に進角する(t2〜t3)。一方、エンジン回転数NEがリフトアップ開始回転数NELIFTUPを下回っても、閉弁タイミングIVCが下死点時期BDCよりも早いので、目標リフトALCMDは変更されず、リフトアップは実施されない(ステップ37,35)。したがって、閉弁タイミングIVCは、吸気カム位相CAINの進角に伴い、進角側タイミングIVCADに向かって進角する。
また、目標スロットル弁開度TH_CMDは、図14による設定により、次第に進角する閉弁タイミングIVCに応じて増加する(ステップ48)。そして、閉弁タイミングIVCが進角側タイミングIVCADに達したときに(t3)、目標スロットル弁開度TH_CMDは、1段目制御開度TH1よりも大きな進角側2段目制御開度TH2_ADに到達する。
その後、エンジン回転数NEが0になり(t4)、エンジン3が停止したときに、目標スロットル弁開度TH_CMDが初期開度THDEFに設定される(ステップ47)。一方、目標位相CAINCMDおよび目標リフトALCMDは、エンジン3の停止後においてもそれまでの値に保持され、それに応じて、閉弁タイミングIVCも進角側タイミングIVCADに保持され(t4以降)、その後の再始動時に用いられる。
図16は、実施形態によって得られる他の動作例を示している。この例では、低温時用位相CAINCMDST_COLDおよび低温時用リフトALCMDST_COLDが前述した図15の例と異なる値に設定されていることによって、アイドル運転時の閉弁タイミングIVCが下死点時期BDCよりも遅くなっている。
このため、アイドルストップ制御が開始され(t11)、エンジン回転数NEがCAIN変更開始回転数NECAINCNGおよびリフトアップ開始回転数NELIFTUPまで低下すると(t12)、目標位相CAINCMDは、より遅角側の高温時遅角側位相CAINCMDST_HREに設定される(ステップ9,11)とともに、リフトアップが実施される(ステップ38,39)。これに伴い、吸気カム位相CAINが、高温時進角側位相CAINCMDST_HADに向かって進角するとともに、吸気リフトLIFTINが、前述したフィードバック制御により、高温時用リフトALCMDST_HOTに向かって遅れを伴いながら次第に増加する(t12〜t13)。したがって、閉弁タイミングIVCは、吸気カム位相CAINの進角および吸気リフトLIFTINの増加に伴い、進角側タイミングIVCADに向かって遅角する。
また、目標スロットル弁開度TH_CMDは、図14による設定により、次第に遅角する閉弁タイミングIVCに応じて増加する。そして、閉弁タイミングIVCが遅角側タイミングIVCREに達したときに(t13)、目標スロットル弁開度TH_CMDは、1段目制御開度TH1よりも大きな遅角側2段目制御開度TH2_REに到達する。その後の動作は、図15の場合と同じである。
図17は、変形例による制御処理を図15と同じ条件に適用した場合の動作例を示す。図15との比較から明らかなように、この変形例では、CAIN変更開始回転数NECAINCNGが、リフトアップ開始回転数NELIFTUPよりも比較的大きな値(例えば600rpm)に設定されている。
このため、アイドルストップ制御が開始され(t21)、エンジン回転数NEがリフトアップ開始回転数NELIFTUPまで低下すると(t22)、目標位相CAINCMDは、より進角側の高温時進角側位相CAINCMDST_HADに設定される。これに伴い、吸気カム位相CAINが、高温時進角側位相CAINCMDST_HADに向かって進角し(t22〜t23)、吸気カム位相CAINが高温時進角側位相CAINCMDST_HADに到達すると(t23)、閉弁タイミングIVCは、進角側タイミングIVCADになる。
その後、エンジン回転数NEがリフトアップ開始回転数NELIFTUPまで低下しても(t24)、図15の場合と同様、目標リフトALCMDは変更されず、リフトアップは実施されない。また、この時点では、すでに閉弁タイミングIVCが進角側タイミングIVCADに達していることから、目標スロットル弁開度TH_CMDは、図15のような漸増する過程を経ることなく、すぐに進角側2段目制御開度TH2_ADに設定される(t25)。その後の動作は、図15の場合と同じである。
図18は、上記の変形例による制御処理を図16と同じ条件に適用した場合の動作例を示す。この変形例では、図17の場合と同様、CAIN変更開始回転数NECAINCNGが、リフトアップ開始回転数NELIFTUPよりも比較的大きな値に設定されている。このため、アイドルストップ制御が開始され(t31)、エンジン回転数NEがCAIN変更開始回転数NECAINCNGまで低下すると(t32)、目標位相CAINCMDは、より遅角側の高温時遅角側位相CAINCMDST_HREに設定される。これに伴い、吸気カム位相CAINが、高温時遅角側位相CAINCMDST_HREに向かって遅角し(t32〜t33)、閉弁タイミングIVCが遅角側に変更される。
その後、エンジン回転数NEがリフトアップ開始回転数NELIFTUPまで低下すると(t34)、リフトアップが実施され(ステップ38,39)、それに伴い閉弁タイミングIVCがさらに遅角側に変更され、吸気リフトLIFTINが高温時用リフトALCMDST_HOTになったとき(t35)に、遅角側タイミングIVCREになる。
また、それと同時に、目標スロットル弁開度TH_CMDは、次第に遅角する閉弁タイミングIVCに応じて増加し、1段目制御開度TH1よりも大きな遅角側2段目制御開度TH2_REに到達する。その後の動作は、図15の場合と同じである。
以上のように、本実施形態によれば、筒内推定温度TENGがCAIN変更実施筒内温度TENGCAINCNG以上のときに、閉弁タイミングIVCを、下死点時期BDCから離れた進角側タイミングIVCADまたは遅角側タイミングIVCREに制御することによって、アイドルストップからの再始動時における有効圧縮比ECRが低下するので、筒内推定温度TENGが高い場合でも、再始動時における自着火の発生を防止することができる。
また、目標スロットル弁開度TH_CMDを閉弁タイミングIVCに応じて制御することによって、閉弁タイミングIVCに応じて変化する有効圧縮比ECRをきめ細かく反映させながら、ピストン3bを吸気弁8と排気弁9とのバルブオーバーラップが発生しないような所定位置に精度良く停止させることができる。
さらに、アイドルストップ制御が開始されたときの閉弁タイミングIVCが、下死点時期BDCよりも早いときには、閉弁タイミングIVCを進角側タイミングIVCADに制御し、下死点時期BDC以降のときには、閉弁タイミングIVCを遅角側タイミングIVCADに制御するので、有効圧縮比ECRが増加状態を経ずに単調に減少した状態で、停止位置制御を行うことができ、それにより、停止位置制御を単純化できるとともに、高い停止位置精度を容易に得ることができる。
また、エンジン回転数NEがリフトアップ開始回転数NELIFTUP以下になるまで、吸気リフトLIFTINを低温時用リフトALCMDST_COLDに保持するので、気筒3b内に残留した燃料の後燃えを抑制し、この燃焼に起因するエンジン回転数NEの上昇を防止できる。
さらに、筒内推定温度TENGがCAIN変更実施筒内温度TENGCAINCNG以上で、かつ閉弁タイミングIVCが下死点時期BDC以降のときに、吸気リフトLIFTINを高温時用リフトALCMDST_HOTに制御することによって、自動停止後の再始動時における有効圧縮比を低下させるので、前述したように、閉弁タイミングIVCを遅角側タイミングIVCREに制御することと併せて、有効圧縮比ECRを速やかに低下させることができる。したがって、停止時から再始動時までの時間が比較的短い場合でも、再始動時における自着火の発生を防止することができる。
また、アイドルストップの開始直後に目標スロットル弁開度TH_CMDを一旦、1段目制御開度TH1に制御するので、エンジン回転数NEを確実に低下させるとともに、不快な振動や異音の発生を防止することができる。また、エンジン回転数NEがリフトアップ開始回転数NELIFTUP以下になったときに、閉弁タイミングIVCに応じた目標スロットル弁開度TH_CMDの設定を開始するので、振動や異音が発生するおそれのない状態で、停止位置制御を行うことができる。
さらに、アイドルストップの開始後に、モータ64によって吸気カム位相CAINを変更するので、アイドルストップに伴うエンジン3の停止の影響を受けることなく、停止前と同じ条件で閉弁タイミングIVCを精度良く制御することができる。また、このように、アイドルストップ後も閉弁タイミングIVCが精度良く制御されることで、バルブオーバーラップ状態が回避され、それにより、再始動時におけるエンジン3の始動性および排ガス特性の低下を確実に回避することができる。
また、吸気温TAおよびエンジン水温TWに応じて、推定筒内温度TENGを算出するので、より正確な推定筒内温度TENGを取得することができる。また、このようにして算出された推定筒内温度TENGに基づいて、上述した停止時位相制御や停止時リフト制御を実行することによって、自着火の発生をより確実に防止できるとともに、自着火の発生のおそれがないときには、閉弁タイミングIVCが進角側タイミングIVCADまたは遅角側タイミングIVCREに変更されることや、吸気リフトLIFTINが高温時用リフトALCMDST_HOTに増大されることを回避でき、それにより、エンジン3の始動性および排ガス特性を向上させることができる。
さらに、変形例のように、CAIN変更開始回転数NECAINCNGを、リフトアップ開始回転数NELIFTUPよりも比較的大きな値に設定した場合には、閉弁タイミングIVCに応じた目標スロットル弁開度TH_CMDの設定を開始する前に、目標位相CAINCMDの変更がすでに完了しているので、目標位相CAINCMDの変更に伴う閉弁タイミングIVCの変化が生じない状態で、停止位置制御を行うことができ、それにより、停止位置制御を単純化することができる。
次に、図19を参照しながら、本発明の第2実施形態による吸気カム位相可変機構160について説明する。前述した第1実施形態の吸気カム位相可変機構60が、モータ64を用いた電動式であるのに対し、本実施形態の吸気カム位相可変機構160は、エンジン3で駆動される油圧ポンプ161による油圧を用いた油圧式のものである。
同図に示すように、この吸気カム位相可変機構160は、ハウジング166、1枚のベーン167、油圧ポンプ161、第1電磁弁162a、第2電磁弁162b、ドレン電磁弁162c、減圧弁163および逆止弁164などを有している。このハウジング166は、吸気スプロケット51aと一体に構成されており、その内部には断面扇形のベーン室168が形成されている。ベーン167は、吸気カムシャフト51に回動自在に取り付けられるとともに、ベーン室168に収容されている。このベーン167により、ベーン室168は第1および第2ベーン室168a,168bに仕切られている。
また、ベーン167には、リターンスプリング167aの一端部が取り付けられており、リターンスプリング167aの他端部は、ハウジング166に連結されている。このリターンスプリング167aにより、ベーン167は、図19の反時計回りに、すなわち第1ベーン室168aの容積を小さくする方向に付勢されている。なお、吸気カム位相可変機構160は、ベーン167が反時計回りに回動するのに伴い、吸気カム位相CAINが遅角するように構成されている。したがって、第1ベーン室168a内の油圧が0のようなデフォルト状態では、ベーン167はリターンスプリング167aの付勢力により、最遅角位置に回動する。
また、油圧ポンプ161は、クランクシャフト3fに連結された機械式のものであり、クランクシャフト3fの回転に伴い、エンジン3のオイルパン3g(図1参照)に蓄えられた作動油を、油路165aを介して吸い込むとともに昇圧した後、油路165aの下流側(同図の左側)から分岐した第1油路165bおよび第2油路165cに供給する。第1油路165bには、これを開閉することで第1油路165bの作動油の流れを制御する第1電磁弁162aが設けられており、第2油路165cには、同様の第2電磁弁162bが設けられている。
さらに、第1油路165bの第1電磁弁162aよりも下流側には、減圧弁163および逆止弁164が順に設けられている。逆止弁164は下流側から上流側への作動油の流れを阻止するように設けられている。また、第1油路165bおよび第2油路165cの下流側端部は、供給油路165dにそれぞれ接続されている。供給油路165dは、その一端部が第1ベーン室168aに連通しており、他端部に接続されたドレン油路165eを介してオイルパン3gに連通している。また、ドレン油路165eには、オイルパン3gへの作動油の流れを制御するドレン電磁弁162cが設けられている。
また、第1電磁弁162a、第2電磁弁162bおよびドレン電磁弁162cの開閉は、ECU2によって制御される。なお、第1電磁弁162aおよび第2電磁弁162bは、電力の供給が停止されたときに閉状態になるノーマルクローズタイプのものであり、ドレン電磁弁162cは、電力の供給が停止されたときに開状態になるノーマルオープンタイプのものである。
以下、上記のように構成された吸気カム位相可変機構160の動作について説明する。まず、ベーン167がリターンスプリング167aの付勢力によって最も反時計回り側に位置しているとき、すなわち、吸気カム位相CAINが最遅角状態にあるときに、第1電磁弁162aを開弁するとともに、第2電磁弁162bおよびドレン電磁弁162cを閉弁する。これにより、第1油路165bを介して第1ベーン室168aに供給される油圧Psdが、減圧弁163によって、リターンスプリング167aの付勢力と釣り合う大きさに調整される。
この状態から、吸気カム位相CAINを進角させる場合には、第2電磁弁162bを開弁するとともに、第1電磁弁162aおよびドレン電磁弁162cを閉弁する。これにより、油圧ポンプ161からの油圧が第2油路165cおよび供給油路165dを介して、第1ベーン室168aに直接、供給されることで、油圧Psdがリターンスプリング167aの付勢力を上回り、ベーン167が時計回りに回動することによって、吸気カム位相CAINが進角する。
その後、ベーン167がさらに回動し、吸気カム位相CAINが目標位相CAINCMDに達したときに、第1電磁弁162aおよび第2電磁弁162bを閉弁する。これにより、すべての油路が閉じられ、作動油の流れが阻止されることによって、ベーン167が保持され、吸気カム位相CAINが目標位相CAINCMDに保持される。
この状態から、吸気カム位相CAINを遅角させる場合には、第1電磁弁162aおよび第2電磁弁162bを閉弁するとともに、ドレン電磁弁162cを開弁する。これにより、油圧ポンプ161からの油圧の供給が遮断されるとともに、ドレン油路165eが開放されることで、第1ベーン室168aから作動油が排出されるとともに、リターンスプリング167aの付勢力によってベーン167が反時計回りに回動することによって、吸気カム位相CAINが遅角する。その後、吸気カム位相CAINが目標位相CAINCMDに達したときに、ドレン電磁弁162cを閉弁することによって、吸気カム位相CAINが目標位相CAINCMDに保持される。
以上のように、油圧Psdとリターンスプリング167aの付勢力とのバランスにより、ベーン167が時計回りまたは反時計回りに回動する結果、吸気カム位相CAINが、所定範囲(例えばカム角CAM180°分の範囲)で進角側または遅角側に無段階に変更される。また、前述したように、最遅角状態において、油圧Psdがリターンスプリング167aの付勢力と釣り合うことによって、進角側への制御の応答性が確保される。
この吸気カム位相可変機構160を用いて前述した停止時位相制御を実行する場合には、アイドル運転時において、ベーン167は最遅角位置と最進角位置の中間の所定の位置に制御されており、それにより、閉弁タイミングIVCが下死点時期BDCよりも遅くなっている。その後、アイドルストップ制御が開始され、そのときの推定筒内温度TENGが低い場合には、エンジン3が停止された後にも、第1電磁弁162a、第2電磁弁162bおよびドレン電磁弁162cを引き続き閉弁状態に保持することで、吸気カム位相CAINが低温時用位相CAINCMDST_COLDに維持され、閉弁タイミングIVCが下死点時期BDCの付近に保持される。
一方、推定筒内温度TENGが高いときには、第1電磁弁162aおよび第2電磁弁162bの閉弁状態を維持するとともに、ドレン電磁弁162cを開弁する。これにより、リターンスプリング167aの付勢力によってベーン167が反時計回りに回動することによって、吸気カム位相CAINが遅角する。その後、吸気カム位相CAINが高温時遅角側位相CAINCMDST_HREに達したときに、ドレン電磁弁162cを閉弁することによって、吸気カム位相CAINが高温時遅角側位相CAINCMDST_HREに制御され、閉弁タイミングIVCが遅角側タイミングIVCREになる。
以上のように、本実施形態によれば、油圧ポンプ161から供給される油圧を、第1電磁弁162a、第2電磁弁162bおよびドレン電磁弁162cで調整することによって、ベーン167を回動させ、吸気カム位相CAINを変更するので、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、吸気カム位相CAINが最遅角側になるようにベーン167を付勢するリターンスプリング167aを用いて、吸気カム位相CAINに応じて定まる閉弁タイミングIVCを遅角側に制御するので、アイドルストップの開始に伴い、油圧ポンプ161が停止され油圧が確保できない状態でも、閉弁タイミングIVCを、有効圧縮比ECRの増加状態を経ることなく単調に減少させながら、遅角側タイミングIVCREに支障なく制御することができる。
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、吸気弁8の閉弁タイミングIVCを、吸気カム位相CAINおよび吸気リフトLIFTINに基づいて算出しているが、アイドルストップ制御の開始時の吸気カム位相CAINおよび吸気リフトLIFTINがそれぞれ所定値に定められており、そのときの閉弁タイミングIVCが既知の場合には、閉弁タイミングIVCの算出処理を省略することが可能である。
また、実施形態では、アイドルストップの開始後に目標位相CAINCMDとして設定される低温時用位相CAINCMDST_COLDを、アイドル運転時の目標位相CAINCMDと同じ値に設定しているが、これに限らず、この値と高温時進角側位相CAINCMDST_HAD(高温時遅角側位相CAINCMDST_HRE)との間に設定してもよい。
また、実施形態では、推定筒内温度TENGの算出を、吸気温TAおよびエンジン水温TWの両方に応じて行っているが、いずれか一方に応じて行ってもよい。また、エンジン3の温度としてエンジン水温TWを用いているが、これに代えて、エンジン3の温度を表す他の適当なパラメータ、例えば排気管14内の温度を検出し、その検出値を用いてもよい。
また、実施形態では、CAIN変更実施筒内温度TENGCAINCNGとリフトアップ実施筒内温度TENGLIFTUPを互いに同じ値に設定しているが、異なる値に設定してもよい。
また、実施形態では、低温時用位相CAINCMDST_COLD、高温時進角側位相CAINCMDST_HAD、高温時遅角側位相CAINCMDST_HRE、CAIN変更開始回転数NECAINCNG、リフトアップ開始回転数NELIFTUP、CAIN変更実施筒内温度TENGCAINCNG、リフトアップ実施筒内温度TENGLIFTUP、1段目制御開度TH1、進角側2段目制御開度TH2_ADおよび遅角側2段目制御開度TH2_REは所定値であるが、大気圧PAや吸気温TAに応じて補正してもよい。
また、第2実施形態では、吸気カム位相可変機構160は、エンジン3が停止された後、リターンスプリング167aによりベーン167がデフォルト位置に回動するのに伴い、吸気カム位相CAINが遅角するように構成されているが、吸気カム位相CAINが進角するように構成してもよい。その場合には、アイドル運転時の目標位相CAINCMDを、そのときの閉弁タイミングIVCが下死点時期BDCよりも早くなるように設定する。それにより、推定筒内温度TENGが高いときには、リターンスプリング167aにより閉弁タイミングIVCがアイドル運転時からさらに進角側に制御されることによって、有効圧縮比ECRを単調に減少させることができる。
また、実施形態は、本発明を車両に搭載されたガソリンエンジンに適用した例であるが、本発明は、これに限らず、ガソリンエンジン以外のディーゼルエンジンなどの各種のエンジンに適用してもよく、また、車両用以外のエンジン、例えば、クランク軸を鉛直に配置した船外機などのような船舶推進機用エンジンにも適用可能である。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
1 制御装置
2 ECU(停止位置制御手段、筒内温度取得手段、判定手段、停止時位相制御手 段)
3 エンジン(内燃機関)
3a 気筒
3b ピストン
8 吸気弁
12 吸気管(吸気通路)
13a スロットル弁
13b THアクチュエータ(停止位置制御手段)
22 クランク角センサ(回転数検出手段)
26 水温センサ(温度検出手段)
29 吸気温センサ(温度検出手段)
50 吸気リフト可変機構
60 吸気カム位相可変機構(吸気位相可変機構)
64 モータ(電動式のアクチュエータ)
160 吸気カム位相可変機構(吸気位相可変機構)
161 油圧ポンプ(油圧式のアクチュエータ)
162b 第2電磁弁(油圧式のアクチュエータ)
162c ドレン電磁弁(油圧式のアクチュエータ)
167a リターンスプリング(復帰機構)
IVC 閉弁タイミング(吸気弁の閉弁時期)
TH_CMD 目標スロットル弁開度(スロットル弁の開度)
GAIR 吸気量
TENG 推定筒内温度(気筒内の温度)
TENGCAINCNG CAIN変更実施筒内温度(所定温度)
BDC 下死点時期(ピストンが下死点に位置する時期)
LIFTIN 吸気リフト(吸気弁のリフト)
ALCMDST_COLD 低温時用リフト(最小リフト)
ALCMDST_HOT 高温時用リフト(所定リフト)
NE エンジン回転数(内燃機関の回転数)
NELIFTUP リフトアップ実施回転数(所定回転数)
ECR 有効圧縮比
TA 吸気温(吸気の温度)
TW エンジン水温(内燃機関の温度)

Claims (6)

  1. 吸気弁を駆動する吸気カムのクランクシャフトに対するカム位相を変更することによって、前記吸気弁の閉弁時期を変更可能な吸気位相可変機構と、吸気通路に設けられ、開度を変更することによって吸気量を調整するスロットル弁とを有し、所定の停止条件が成立したときに自動停止される内燃機関の制御装置であって、
    前記内燃機関が自動停止された後、前記スロットル弁の開度を制御することによって、前記内燃機関のピストンの停止位置を所定位置に制御する停止位置制御手段と、
    前記内燃機関の気筒内の温度を取得する筒内温度取得手段と、
    前記内燃機関が自動停止された後、前記取得された気筒内の温度が所定温度以上である場合において、前記吸気弁の閉弁時期が前記ピストンが下死点に位置する時期よりも早いときに、前記吸気弁の閉弁時期を進角側に制御し、前記内燃機関が自動停止された後、前記取得された気筒内の温度が前記所定温度以上である場合において、前記吸気弁の閉弁時期が前記ピストンが下死点に位置する時期と一致しているとき、または前記吸気弁の閉弁時期が前記ピストンが下死点に位置する時期よりも遅いときに、前記吸気弁の閉弁時期を遅角側に制御する停止時位相制御手段と、
    前記吸気弁のリフトを変更可能な吸気リフト可変機構と、を備え、
    前記停止位置制御手段は、前記停止時位相制御手段によって制御された前記吸気弁の閉弁時期に応じて、前記スロットル弁の開度を制御し、
    前記吸気リフト可変機構は、前記吸気弁のリフトが大きくなるにつれて、前記吸気弁の閉弁時期が遅角側に変化するように構成されており、前記停止時位相制御手段による前記吸気弁の閉弁時期の進角側への制御が実行されるときに、前記吸気弁のリフトを所定の最小リフトに制御するとともに、前記停止時位相制御手段による前記吸気弁の閉弁時期の遅角側への制御が実行されるときに、前記吸気弁のリフトを所定の最小リフトよりも大きな所定リフトに制御することを特徴とする内燃機関の制御装置。
  2. 前記内燃機関の回転数を検出する回転数検出手段をさらに備え、
    前記停止位置制御手段は、前記検出された内燃機関の回転数が所定回転数以下になるまで、前記スロットル弁を閉弁側に制御し、前記内燃機関の回転数が前記所定回転数以下になったときに、前記吸気弁の閉弁時期に応じた前記スロットル弁の制御を開始することを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
  3. 前記吸気位相可変機構は、前記カム位相を変更するための電動式のアクチュエータを有することを特徴とする、請求項1または2に記載の内燃機関の制御装置。
  4. 前記吸気位相可変機構は、
    前記カム位相を変更するための油圧式のアクチュエータと、
    当該アクチュエータへの油圧の供給が停止されたときに前記カム位相を所定のデフォルト状態に復帰させる復帰機構と、をさらに有し、
    前記停止時位相制御手段は、前記復帰機構を用いて前記吸気弁の閉弁時期を制御することを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
  5. 前記内燃機関に吸入される吸気の温度、および前記内燃機関の温度の少なくとも一方を検出する温度検出手段をさらに備え、
    前記筒内温度取得手段は、前記検出された吸気の温度および内燃機関の温度の少なくとも一方に応じて、前記気筒内の温度を算出することを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
  6. 前記停止時位相制御手段による前記吸気弁の閉弁時期の変更を、前記停止位置制御手段による前記吸気弁の閉弁時期に応じた前記スロットル弁の制御を開始する前に完了させることを特徴とする、請求項に記載の内燃機関の制御装置。
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