したがって,本発明が解決しようとする課題は,リラクタンストルクを利用しながら強め及び弱め界磁制御を可能とするアキシャルギャップ構造の回転電機システム,磁束量制御方法を提供する事である。
本発明による回転電機システム及び磁束量制御方法は,一以上のアキシャルギャップを介して対向する電機子及び回転子と,電機子を流れる磁束量を制御する励磁部とを有する。回転子に於いて互いに隣り合う突極の一方である島状突極から電機子に流れる磁束の方向及び量を固定とし,他方の突極である磁性体突極から電機子に流れる磁束の方向及び量を可変として電機子を流れる磁束量を制御する。その具体的な構成は以下に規定される。
請求項1の発明による回転電機システムは,電機子との対向面に於いて島状突極及び磁性体突極を周方向に交互に有する回転子と,回転子との対向面に於いて軸と平行の軸心を持つ電機子コイルが周方向に配置された電機子と,一以上の電機子及び回転子が軸方向に対向して並ぶ回転電機装置の磁性体突極を軸と平行方向に一括して励磁する励磁部とを有する回転電機装置であって,島状突極から電機子側に流れる磁束が励磁部からの磁束の影響を受け難いよう軸方向に流れる磁束を流れ難くするよう島状突極内に配置された離隔部材である永久磁石及び或いは非磁性体の厚みは軸方向に流れる磁束を流れ難くするよう磁性体突極内に配置された離隔部材である永久磁石及び或いは非磁性体の厚みより大とされると共に島状突極は軸と略平行の同じ方向に磁化されるよう構成され,電機子コイルは電機子コイルが周方向に配置された第一電機子磁極群と,第二電機子磁極群とにグループ化され,第一電機子磁極群,第二電機子磁極群に於いてそれぞれ同一相に属する電機子コイル同士は一方が島状突極に対向する時に他方は磁性体突極に対向するよう配置されると共に互いに逆方向の磁束を発生するよう接続され,励磁部は界磁磁石と,界磁磁石の磁化を変更する励磁コイルとを有し,前記界磁磁石のN極或いはS極の何れか一方の磁極から流れる磁束は軸方向の一端に配置された回転子或いは電機子,中間に配置された回転子及び或いは電機子,軸方向の他端に配置された回転子或いは電機子を介して界磁磁石の他方の磁極に環流するよう構成され,回転電機装置の出力を最適化するように前記出力に応じて励磁コイルに磁化電流を供給して界磁磁石の磁化状態を不可逆的に変え,電機子に流れる磁束量が制御される事を特徴とする。
一以上の回転子と電機子とが軸方向に並ぶ回転電機装置であって,回転子の磁性体突極を流れる磁束量を一括して制御して電機子コイルと鎖交する磁束量を変える回転電機システムである。回転子は励磁部からの磁束が通る磁性体突極と励磁部からの磁束が通り難い島状突極とが周方向に交互に並ぶ構成として励磁部による磁束量制御を可能にする。島状突極は全体を離隔部材である永久磁石で構成され,或いは永久磁石,磁気的な空隙で離隔された磁性体で構成され,島状突極は磁性体突極に比して励磁部からの磁束が流れ難いよう構成される。永久磁石の比透磁率は空隙に近く,磁化した永久磁石からの磁束量はほぼ一定であるので,厚みが大の永久磁石を双方向の磁束の離隔部材と出来る。島状突極を磁気的に離隔された磁性体で構成する場合は磁石トルクに加えてリラクタンスを利用出来る。
電機子は回転子の隣り合う突極から流れる磁束量にアンバランスがある状態でも駆動トルク変動或いは発電電圧波形歪みが抑制されるよう構成される。すなわち,回転電機装置は第一電機子磁極群と第二電機子磁極群をそれぞれ同数有し,第一電機子磁極群と第二電機子磁極群に於いて,同じタイミングで駆動電流が供給される同一相に属する電機子コイル同士は一方が島状突極に対向する時に,他方が磁性体突極に対向するよう配置され,電流が流された時にそれぞれ逆方向の磁束を生じるよう接続される。電機子コイルは磁性体歯に巻回する構成,或いは空芯の何れの構成も使用できる。
電機子及び磁性体突極はアキシャルギャップを挟んで軸方向に磁路を形成し,励磁部は電機子,磁性体突極を介して流れるよう磁束を一括して供給し,電機子コイルと鎖交する磁束量を実効的に制御する。さらに回転電機の運転中或いは静止時に界磁磁石の磁化状態を不可逆的に変えて電機子に流れる磁束量を変更する。
電機子コイルにより誘起される磁束は電機子及び回転子近傍で環流し,界磁磁石は電機子コイルより離れて配置されるので電機子コイルの影響を受け難く,界磁磁石には低保持力の磁石を使用出来,励磁コイルによって容易に磁化状態が制御される。電機子コイルが磁性体歯に巻回される構成ではさらに電機子コイルにより誘起される磁束の分布領域が局所化されて界磁磁石への影響を小に出来る。
本発明に於いて,回転電機は電機子コイルへの電流を入力として回転力を出力とすれば電動機であり,回転力を入力として電機子コイルから電流を出力すれば発電機である。電動機或いは発電機に於いて最適の磁極構成は存在するが,可逆的であり,上記の回転電機システムは電動機,発電機の何れにも適用される。
請求項2の発明は,請求項1記載の回転電機システムに於いて,軸方向の終端部に配置された回転子は島状突極及び磁性体突極が磁性体基板に配置され,励磁部の一端は磁性体基板と磁気的に結合される事を特徴とする。励磁部は軸方向の終端に配置された回転子の磁性体基板,磁性体突極,電機子を含む磁路を流れる磁束を制御して電機子コイルと鎖交する磁束量を実効的に制御する。
請求項3の発明は,請求項1記載の回転電機システムに於いて,軸方向の終端部に配置された電機子は電機子コイルが磁気ヨークに配置され,励磁部の一端は磁気ヨークと磁気的に結合される事を特徴とする。励磁部は軸方向の終端に配置された電機子の磁気ヨーク,回転子の磁性体突極を含む磁路を流れる磁束を制御して電機子コイルと鎖交する磁束量を実効的に制御する。
請求項4の発明は,請求項1記載の回転電機システムに於いて,島状突極及び磁性体突極は電機子との対向面に於いて磁性体基板を略周方向磁化を持つ永久磁石及び集合磁石の何れかによって周方向に区分して形成されると共に互いに異極に磁化される事を特徴とする。両側に略同じ方向の磁化を持つ永久磁石が配置された磁性体は磁気的に永久磁石と等価な集合磁石である。回転子は磁性体を略周方向磁化を持つ永久磁石及び集合磁石の何れかによって周方向に区分された磁極構造として隣接する突極が互いに異極に磁化される。
請求項5の発明は,請求項1記載の回転電機システムに於いて,回転子は非磁性体及び或いは略周方向磁化を持つ永久磁石で周方向に区分して形成された島状突極と磁性体突極とを有して軸方向両端で電機子と対向し,島状突極から電機子側に流れる磁束が励磁部からの磁束の影響を受け難いよう島状突極の軸方向の両表面間に配置の永久磁石及び或いは非磁性体で構成される軸方向に流れる磁束に対する離隔部材の厚みは磁性体突極の軸方向の両表面間に配置の永久磁石及び或いは非磁性体で構成される軸方向に流れる磁束に対する離隔部材の厚みより大とされる事を特徴とする。
軸と平行な島状突極と磁性体突極とを周方向に交互に有する回転子構成が軸と平行な方向に流れる磁束の磁気抵抗を小としてエネルギー効率に優れる。島状突極を軸と平行な磁化を持つ磁石,磁性体突極を軸と平行な磁性体とする構成,或いは一様な磁性体を略周方向磁化を持つ永久磁石及び集合磁石の何れかによって周方向に区分された構成等が可能である。
請求項6の発明は,請求項1記載の回転電機システムに於いて,電機子は磁気ヨークの軸方向の一方の側に第一電機子磁極群を有すると共に他方の側に第二電機子磁極群を有して電機子の軸方向両側でそれぞれ回転子と対向し,第一電機子磁極群,第二電機子磁極群に於いてそれぞれ同一相に属する電機子コイル同士は一方が島状突極に対向する時に他方は磁性体突極に対向するよう配置されると共に互いに逆方向の磁束を発生するよう直列に接続される事を特徴とする。軸方向の両端でそれぞれ第一電機子磁極群,第二電機子磁極群が回転子と対向する電機子は第一電機子磁極群,第二電機子磁極群間に磁気ヨークを有して第一電機子磁極群,第二電機子磁極群内の電機子コイルが作る磁界が干渉し合わないように構成される。
請求項7の発明は,請求項1記載の回転電機システムに於いて,電機子は第一電機子磁極群,第二電機子磁極群の電機子コイルを周方向の異なる位置に有し,第一電機子磁極群,第二電機子磁極群に於いてそれぞれ同一相に属する電機子コイル同士は一方が島状突極に対向する時に他方は磁性体突極に対向するよう配置されると共に互いに逆方向の磁束を発生するよう直列に接続される事を特徴とする。電機子は回転子との対向面内に第一電機子磁極群,第二電機子磁極群の電機子コイルを周方向の異なる位置に有し,両群の電機子コイルに於いて同一相に属する電機子コイル同士は一方が島状突極に対向する時に他方が磁性体突極に対向するよう配置され,電流が流された時にそれぞれ逆方向の磁束を生じるよう直列に接続されるので回転子の隣り合う突極から流れる磁束量にアンバランスがある状態でも駆動トルクリップル或いは発電電圧波形歪みが抑制される。電機子は軸方向の一方の側で回転子と対向する構成,軸方向の両側でそれぞれ回転子と対向する何れの構成も可能である。
請求項8の発明は,請求項1記載の回転電機システムに於いて,界磁磁石は磁性体及び前記磁性体間に配置された磁化方向長さと抗磁力の積が異なる磁石要素を有し,前記磁性体により前記磁石要素を互いに並列接続して構成され,界磁磁石の各磁石要素は磁性体突極を島状突極の磁化方向と逆方向に磁化する第一磁化,第一磁化と逆方向の磁化である第二磁化の何れかの磁化状態である事を特徴とする。界磁磁石は磁化容易さの異なる一以上の磁石要素が並列に接続される構成,或いは断面内で磁化容易さ,すなわち,磁化方向長さと抗磁力の積が連続的に変わる磁石で構成される。励磁コイルによる起磁力(磁気ポテンシャル差)はほぼ均等に界磁磁石を構成する磁石要素に加えられ,起磁力を磁化方向長さで除した値が各磁石要素に加わる磁界強度となるので磁化方向長さと抗磁力の積の小さな磁石要素が磁化されやすく,励磁コイルに加えられる電流により並列接続された磁石要素の磁化状態は選択的に制御される。磁性体突極を島状突極の磁化方向と逆方向に磁化する場合は電機子コイルと鎖交する磁束量が増すので第一磁化の磁極面積を増すと電機子コイルと鎖交する磁束量が増す事になる。
請求項9の発明は,請求項1記載の回転電機システムに於いて,界磁磁石のN極或いはS極の何れか一方の磁極から流れる磁束が電機子と磁性体突極とを介して界磁磁石の他方の磁極に環流する主磁路と,界磁磁石の一方の磁極から出た磁束が主として励磁部内で界磁磁石の他方の磁極に環流する励磁磁路とが並列に界磁磁石に接続され,励磁コイルは励磁磁路に加えて界磁磁石を含む磁路に磁束を誘起するよう配置されていることを特徴とする。界磁磁石に励磁磁路及び主磁路を並列に接続し,励磁コイルは励磁磁路と界磁磁石とで構成する閉磁路に配置され,界磁磁石の着磁変更に際して電機子コイルへの影響を軽減できる構成としている。励磁磁路は交流磁束が流れやすく構成され,界磁磁石の構成及び界磁磁石の磁化変更に最適な磁路構成を実現できる。すなわち,励磁コイルが誘起する磁束は界磁磁石に集中されて界磁磁石の磁化状態は確実に変更される。
請求項10の発明は,請求項1記載の回転電機システムに於いて,界磁磁石は磁性体及び磁化変更に必要な磁界強度が互いに異なる第一界磁磁石及び第二界磁磁石を有し,前記磁性体により第一界磁磁石及び第二界磁磁石を互いに並列接続して構成され,励磁コイルは第一界磁磁石及び第二界磁磁石及び前記磁性体で構成する閉磁路に磁束を発生させるよう配置されていることを特徴とする。並列接続された第一界磁磁石及び第二界磁磁石同士は同時に直列接続として閉磁路を構成し,励磁コイルはその閉磁路に磁束を発生させるよう配置されるので第一界磁磁石及び第二界磁磁石は常に逆方向に励磁される。励磁コイルに磁化電流が供給された場合,直列に接続された各磁石内の磁界強度はほぼ等しいので第一界磁磁石及び第二界磁磁石それぞれで磁化反転に必要な磁界強度が異なるよう構成して界磁磁石は選択的に磁化変更される。磁化反転に必要な磁界強度を異ならせるには磁石素材の種類を変える,或いは同種の素材に於いて構成元素の組成比を変える等の手段で実現出来る。さらに第一界磁磁石及び第二界磁磁石,それぞれの界磁磁石を磁化容易さの異なる磁石の並列接続とする構成も可能である。
請求項11の発明は,請求項1記載の回転電機システムに於いて,界磁磁石に不可逆的な磁化変化を生ぜしめない程度の磁束調整電流を界磁磁石の各磁化状態に於いて励磁コイルに供給し,誘起された磁束を界磁磁石からの磁束に重畳して電機子を流れる磁束量を調整する事を特徴とする。界磁磁石からの磁束に磁束調整電流による磁束を重畳させて磁束量を制御する複合励磁である。界磁磁石の磁化変更は離散的に為される場合があり,また磁化の大きさを連続的に変更が可能であっても,界磁磁石の磁化変更は殆どの場合は間歇的に実施され,結果として電機子を流れる磁束量は離散的に制御される事が多い。本発明では界磁磁石の各磁化状態に於いて界磁磁石に不可逆的な磁化変化を生ぜしめない程度の磁束調整電流を励磁コイルに供給して磁束を発生させ,界磁磁石からの磁束に重畳させて電機子を流れる磁束量を精密に制御する。
請求項12の発明は,請求項1の回転電機システムに於いて,軸方向に流れる磁束を流れ難くするよう島状突極内に配置された離隔部材として永久磁石が配置され,第一電機子磁極群,第二電機子磁極群に於いてそれぞれ同一の相に属して島状突極が対向する電機子コイル及び磁性体突極が対向する電機子コイルに磁化電流を供給して永久磁石の磁化状態を変更し,電機子に流れる磁束量が制御される事を特徴とする。島状突極から電機子側へ流れる磁束量は一定であるので,島状突極が近傍の永久磁石により磁化されている場合には磁束量の制御範囲が限定される。本発明はさらに島状突極から電機子側に流れる磁束量を制御できるよう島状突極が離隔部材として有する永久磁石の磁化状態を変えて磁束量の制御範囲を拡大する。
第一電機子磁極群と第二電機子磁極群に於いて,同一相に属する電機子コイル同士は一方が島状突極に対向する時に,他方が磁性体突極に対向するよう配置され,電流が流された時にそれぞれ逆方向の磁束を生じるよう接続される。したがって,島状突極が対向する電機子コイルに磁化電流が供給すると誘起された磁束は磁性体突極を環流磁路として流れる。その際に他の相の電機子コイルには磁化電流が供給されないので副界磁磁石に大きな磁界強度の磁界が加えられ,磁化状態が変更される。
請求項13の発明は,請求項1の回転電機システムに於いて,電機子は回転子との対向面に於いて軸と平行の軸心を持つ電機子コイルが周方向に配置され,二つの回転子は電機子との対向面に於いて島状突極及び磁性体突極を磁性体基板に周方向に交互に有して電機子の軸方向両端にそれぞれ対向するよう配置され,励磁部は界磁磁石と,界磁磁石の磁化を変更する励磁コイルとを有して二つの回転子の磁性体基板と磁気的に結合され,前記界磁磁石のN極或いはS極の何れか一方の磁極から流れる磁束は一方の回転子の磁性体基板及び磁性体突極と,電機子と,他方の回転子の磁性体突極及び磁性体基板とを介して界磁磁石の他方の磁極に環流するよう構成される事を特徴とする。回転子,電機子,回転子と軸方向に並ぶ構成であって励磁部は両端の回転子の磁性体基板と磁気的に結合して磁性体突極を一括して励磁する。
請求項14の発明は,請求項1の回転電機システムに於いて,回転子は電機子との対向面に於いて島状突極及び磁性体突極が周方向に交互に配置され,二つの電機子は回転子との対向面に於いて軸と平行の軸心を持つ電機子コイルを磁気ヨークに周方向に有して回転子の軸方向両端にそれぞれ対向するよう配置され,励磁部は界磁磁石と,界磁磁石の磁化を変更する励磁コイルとを有して二つの電機子の磁気ヨークと磁気的に結合され,前記界磁磁石のN極或いはS極の何れか一方の磁極から流れる磁束は一方の電機子の磁気ヨークと,磁性体突極と,他方の電機子の磁気ヨークとを介して界磁磁石の他方の磁極に環流するよう構成される事を特徴とする。電機子,回転子,電機子と軸方向に並ぶ構成であって励磁部は両端の電機子の磁気ヨークと磁気的に結合して回転子の磁性体突極を一括して励磁する。
請求項15の発明は,請求項1から請求項14記載の何れかの回転電機システムに於いて,さらに制御装置を有し,回転力を入力とし,発電電力を出力とする回転電機システムであって,電機子コイルに誘起される発電電圧が所定の値より大の時は制御装置により界磁磁石内の第一磁化の磁極面積を減じるよう界磁磁石を磁化する極性の磁化電流が励磁コイルに供給されて第一磁化の磁極面積を減じて電機子を流れる磁束量が小とされ,電機子コイルに誘起される発電電圧が所定の値より小の時は制御装置により界磁磁石内の第一磁化の磁極面積を増すよう界磁磁石を磁化する極性の磁化電流が励磁コイルに供給されて第一磁化の磁極面積を増して電機子を流れる磁束量が大とされ,発電電圧が所定の値に制御される事を特徴とする。
請求項16の発明は,請求項1から請求項14記載の何れかの回転電機システムに於いて,さらに制御装置を有し,電機子コイルへの供給電流を入力とし,回転力を出力とする回転電機システムであって,回転速度が所定の値より大で電機子を流れる磁束量を減少させる時には制御装置により界磁磁石内の第一磁化の磁極面積を減じるよう界磁磁石を磁化する極性の磁化電流が励磁コイルに供給されて第一磁化の磁極面積を減じて電機子を流れる磁束量が小とされ,回転速度が所定の値より小で電機子を流れる磁束量を増大させる時には制御装置により界磁磁石内の第一磁化の磁極面積を増すよう界磁磁石を磁化する極性の磁化電流が励磁コイルに供給されて第一磁化の磁極面積を増して電機子を流れる磁束量が大とされ,回転力が最適に制御される事を特徴とする。
請求項17の発明は,請求項1から請求項14記載の何れかの回転電機システムに於いて,さらに制御装置を有し,電機子コイルへの供給電流を入力とし,回転力を出力とする回転電機システムであって,回転速度を減少させる場合には制御装置により電機子コイルにバッテリーを接続すると共に界磁磁石内の第一磁化に属する磁極面積を増すよう界磁磁石を磁化する極性の磁化電流が励磁コイルに供給されて第一磁化の磁極面積を増して電機子を流れる磁束量が大とされ,回転エネルギーが発電電力として取り出される事を特徴とする。
請求項18の発明による回転電機システムは,電機子との対向面に於いて島状突極及び磁性体突極を周方向に交互に有する回転子と,回転子との対向面に於いて軸と平行の軸心を持つ電機子コイルが周方向に配置された電機子と,一以上の電機子及び回転子が軸方向に対向して並ぶ回転電機装置の磁性体突極を軸と平行方向に一括して励磁する励磁部とを有する回転電機装置であって,島状突極から電機子側に流れる磁束が励磁部からの磁束の影響を受け難いよう軸方向に流れる磁束を流れ難くするよう島状突極内に配置された離隔部材である永久磁石及び或いは非磁性体の厚みは軸方向に流れる磁束を流れ難くするよう磁性体突極内に配置された離隔部材である永久磁石及び或いは非磁性体の厚みより大とされると共に島状突極は軸と略平行の同じ方向に磁化されるよう構成され,電機子コイルは電機子コイルが周方向に配置された第一電機子磁極群と,第二電機子磁極群とにグループ化され,第一電機子磁極群,第二電機子磁極群に於いてそれぞれ同一相に属する電機子コイル同士は一方が島状突極に対向する時に他方は磁性体突極に対向するよう配置されると共に互いに逆方向の磁束を発生するよう接続され,励磁部は励磁コイル及び励磁磁路部材を有し,軸方向の一端に配置された回転子或いは電機子,中間に配置された回転子及び或いは電機子,軸方向の他端に配置された回転子或いは電機子,励磁磁路部材を介する磁路に励磁コイルが磁束を誘起するよう構成され,回転電機装置の出力を最適化するように前記出力に応じて励磁コイルに励磁電流を供給して電機子に流れる磁束量が制御される事を特徴とする。
一以上の回転子と電機子とが軸方向に並ぶ回転電機装置であって,回転子の磁性体突極を流れる磁束量を一括して制御して電機子コイルと鎖交する磁束量を変える回転電機システムである。回転子は励磁部からの磁束が通る磁性体突極と励磁部からの磁束が通り難い島状突極とが周方向に交互に並ぶ構成として励磁部による磁束量制御を可能にする。島状突極は全体を離隔部材である永久磁石で構成され,或いは永久磁石,磁気的な空隙で離隔された磁性体で構成され,島状突極は磁性体突極に比して励磁部からの磁束が流れ難いよう構成される。永久磁石の比透磁率は空隙に近く,磁化した永久磁石からの磁束量はほぼ一定であるので,厚みが大の永久磁石を双方向の磁束の離隔部材と出来る。島状突極を磁気的に離隔された磁性体で構成する場合は磁石トルクに加えてリラクタンスを利用出来る。
電機子は回転子の隣り合う突極から流れる磁束量にアンバランスがある状態でも駆動トルク変動或いは発電電圧波形歪みが抑制されるよう構成される。すなわち,回転電機装置は第一電機子磁極群と第二電機子磁極群をそれぞれ同数有し,第一電機子磁極群と第二電機子磁極群に於いて,同じタイミングで駆動電流が供給される同一相に属する電機子コイル同士は一方が島状突極に対向する時に,他方が磁性体突極に対向するよう配置され,電流が流された時にそれぞれ逆方向の磁束を生じるよう接続される。電機子コイルは磁性体歯に巻回する構成,或いは空芯の何れの構成も使用できる。
電機子及び磁性体突極はアキシャルギャップを挟んで軸方向に磁路を形成し,励磁部は電機子,磁性体突極を介して流れるよう構成して磁束を供給し,電機子コイルと鎖交する磁束量を実効的に制御する。
本発明に於いて,回転電機は電機子コイルへの電流を入力として回転力を出力とすれば電動機であり,回転力を入力として電機子コイルから電流を出力すれば発電機である。電動機或いは発電機に於いて最適の磁極構成は存在するが,可逆的であり,上記の回転電機システムは電動機,発電機の何れにも適用される。
請求項19の発明は,請求項18記載の回転電機システムに於いて,軸方向の終端部に配置された回転子は島状突極及び磁性体突極が磁性体基板に配置され,励磁部の一端は磁性体基板と磁気的に結合される事を特徴とする。励磁部は軸方向の終端に配置された回転子の磁性体基板,磁性体突極,電機子を含む磁路を流れる磁束を制御して電機子コイルと鎖交する磁束量を実効的に制御する。
請求項20の発明は,請求項18記載の回転電機システムに於いて,軸方向の終端部に配置された電機子は電機子コイルが磁気ヨークに配置され,励磁部の一端は磁気ヨークと磁気的に結合される事を特徴とする。励磁部は軸方向の終端に配置された電機子の磁気ヨーク,回転子の磁性体突極を含む磁路を流れる磁束を制御して電機子コイルと鎖交する磁束量を実効的に制御する。
請求項21の発明は,請求項18記載の回転電機システムに於いて,島状突極及び磁性体突極は電機子との対向面に於いて磁性体基板を略周方向磁化を持つ永久磁石及び集合磁石の何れかによって周方向に区分して形成されると共に互いに異極に磁化される事を特徴とする。両側に略同じ方向の磁化を持つ永久磁石が配置された磁性体は磁気的に永久磁石と等価な集合磁石である。回転子は磁性体を略周方向磁化を持つ永久磁石及び集合磁石の何れかによって周方向に区分された磁極構造として隣接する突極が互いに異極に磁化され,同時に相隣る突極の一方である島状突極は励磁部からの磁束が通り難いよう構成される。
請求項22の発明は,請求項18記載の回転電機システムに於いて,回転子は非磁性体及び或いは略周方向磁化を持つ永久磁石で周方向に区分して形成された島状突極と磁性体突極とを有して軸方向両端で電機子と対向し,島状突極から電機子側に流れる磁束が励磁部からの磁束の影響を受け難いよう島状突極の軸方向の両表面間に配置の永久磁石及び或いは非磁性体で構成される軸方向に流れる磁束に対する離隔部材の厚みは磁性体突極の軸方向の両表面間に配置の永久磁石及び或いは非磁性体で構成される軸方向に流れる磁束に対する離隔部材の厚みより大とされる事を特徴とする。軸と平行な島状突極と磁性体突極とを周方向に交互に有する回転子構成が軸と平行な方向に流れる磁束の磁気抵抗を小としてエネルギー効率に優れる。島状突極を軸と平行な磁化を持つ磁石,磁性体突極を軸と平行な磁性体とする構成,或いは一様な磁性体を略周方向磁化を持つ永久磁石及び集合磁石の何れかによって周方向に区分された構成等が可能である。
請求項23の発明は,請求項18記載の回転電機システムに於いて,電機子は磁気ヨークの軸方向の一方の側に第一電機子磁極群を有すると共に他方の側に第二電機子磁極群を有して電機子の軸方向両側でそれぞれ回転子と対向し,第一電機子磁極群,第二電機子磁極群に於いてそれぞれ同一相に属する電機子コイル同士は一方が島状突極に対向する時に他方は磁性体突極に対向するよう配置されると共に互いに逆方向の磁束を発生するよう直列に接続される事を特徴とする。軸方向の両端でそれぞれ第一電機子磁極群,第二電機子磁極群が回転子と対向する電機子は第一電機子磁極群,第二電機子磁極群間に磁気ヨークを有して第一電機子磁極群,第二電機子磁極群内の電機子コイルが作る磁界が干渉し合わないように構成される。
請求項24の発明は,請求項18記載の回転電機システムに於いて,電機子は第一電機子磁極群,第二電機子磁極群の電機子コイルを周方向の異なる位置に有し,第一電機子磁極群,第二電機子磁極群に於いてそれぞれ同一相に属する電機子コイル同士は一方が島状突極に対向する時に他方は磁性体突極に対向するよう配置されると共に互いに逆方向の磁束を発生するよう直列に接続される事を特徴とする。電機子は回転子との対向面内に第一電機子磁極群,第二電機子磁極群の電機子コイルを周方向の異なる位置に有し,両群の電機子コイルに於いて同一相に属する電機子コイル同士は一方が島状突極に対向する時に他方が磁性体突極に対向するよう配置され,電流が流された時にそれぞれ逆方向の磁束を生じるよう直列に接続されて駆動トルクリップル或いは発電電圧波形歪みが抑制される。電機子は軸方向の一方の側で回転子と対向する構成,軸方向の両側でそれぞれ回転子と対向する何れの構成も可能である。
請求項25の発明は,請求項18記載の回転電機システムに於いて,回転電機装置の軸方向両端に配置された電機子の磁気ヨーク及び或いは回転子の磁性体基板と励磁磁路部材の両端とがそれぞれ磁気的に結合して形成する励磁磁路は磁気的な空隙を有し,島状突極を磁化する永久磁石からの磁束が励磁磁路で短絡し難いよう構成される事を特徴とする。本発明の回転電機システムに於いて,アキシャルギャップを介して島状突極及び電機子を含む第一磁路,磁性体突極及び電機子を含む第二磁路,励磁磁路部材を含む第三磁路が軸方向の両端で並列に接続されている。第三磁路には磁気的な空隙を配置して島状突極を磁化する永久磁石からの磁束が励磁磁路部材側に短絡し難いよう第三磁路は磁気的な空隙を有して磁気抵抗を大に設定する。第三磁路に設ける磁気的な空隙には永久磁石の配置も含まれる。永久磁石の比透磁率はほぼ空気と同じであり,磁気抵抗を調整しながら励磁部が供給する磁束量の固定部分を設定する事が出来る。
請求項26の発明は,請求項18の回転電機システムに於いて,電機子は回転子との対向面に於いて軸と平行の軸心を持つ電機子コイルが周方向に配置され,二つの回転子は電機子との対向面に於いて島状突極及び磁性体突極を磁性体基板に周方向に交互に有して電機子の軸方向両端にそれぞれ対向するよう配置され,励磁部は励磁コイル及び励磁磁路部材を有して励磁磁路部材の両端はそれぞれ二つの回転子の磁性体基板と磁気的に結合され,励磁コイルが誘起する磁束は一方の回転子の磁性体基板及び磁性体突極と,電機子と,他方の回転子の磁性体突極及び磁性体基板と,励磁磁路部材とで形成する磁路を流れるよう構成される事を特徴とする。回転子,電機子,回転子と軸方向に並ぶ構成であって励磁部は両端の回転子の磁性体基板と磁気的に結合して磁性体突極を一括して励磁する。
請求項27の発明は,請求項18の回転電機システムに於いて,回転子は電機子との対向面に於いて島状突極及び磁性体突極が周方向に交互に配置され,二つの電機子は回転子との対向面に於いて軸と平行の軸心を持つ電機子コイルを磁気ヨークに周方向に有して回転子の軸方向両端にそれぞれ対向するよう配置され,励磁部は励磁コイル及び励磁磁路部材を有して励磁磁路部材の両端はそれぞれ二つの電機子の磁気ヨークと磁気的に結合され,励磁コイルが誘起する磁束は一方の電機子の磁気ヨークと,磁性体突極と,他方の電機子の磁気ヨークと,励磁磁路部材とで形成する磁路を流れるよう構成される事を特徴とする。電機子,回転子,電機子と軸方向に並ぶ構成であって励磁部は両端の電機子の磁気ヨークと磁気的に結合して回転子の磁性体突極を一括して励磁する。
請求項28の発明は,電機子との対向面に於いて島状突極及び磁性体突極を周方向に交互に有する回転子と,回転子との対向面に於いて軸と平行の軸心を持つ電機子コイルが周方向に配置された電機子と,一以上の電機子及び回転子が軸方向に対向して並ぶ回転電機装置の磁性体突極を軸と平行方向に一括して励磁する励磁部とを有する回転電機装置の磁束量制御方法であって,島状突極から電機子側に流れる磁束が励磁部からの磁束の影響を受け難いよう軸方向に流れる磁束を流れ難くするよう島状突極内に配置された離隔部材である永久磁石及び或いは非磁性体の厚みは軸方向に流れる磁束を流れ難くするよう磁性体突極内に配置された離隔部材である永久磁石及び或いは非磁性体の厚みより大とすると共に島状突極を軸と略平行の同じ方向に磁化するよう構成し,励磁部は界磁磁石と,界磁磁石の磁化を変更する励磁コイルとを有し,前記界磁磁石のN極或いはS極の何れか一方の磁極から流れる磁束は軸方向の一端に配置された回転子或いは電機子,中間に配置された回転子及び或いは電機子,軸方向の他端に配置された回転子或いは電機子を介して界磁磁石の他方の磁極に環流するよう構成し,励磁コイルに磁化電流を供給して界磁磁石の磁化状態を不可逆的に変えて電機子を流れる磁束量を制御する磁束量制御方法である。
回転子は隣接する突極の一方である島状突極から電機子に流れる磁束の方向及び量を固定とし,他方の突極である磁性体突極を励磁部からの磁束が通るよう構成して励磁部により磁束量を制御する方法である。励磁部に於ける界磁磁石の磁化状態を励磁コイルにより不可逆的に変えて電機子に流れる磁束量を変更する。
請求項29の発明は,電機子との対向面に於いて磁性体基板を永久磁石及び集合磁石の何れかによって周方向に区分され且つ互いに異極に磁化された島状突極及び磁性体突極を周方向に交互に有する回転子と,回転子との対向面に於いて軸と平行の軸心を持つ電機子コイルが周方向に配置された電機子と,一以上の電機子及び回転子が軸方向に対向して並ぶ回転電機装置の磁性体突極を軸と平行方向に一括して励磁する励磁部とを有する回転電機装置の磁束量制御方法であって,島状突極を軸と略平行の同じ方向の磁化を持つよう構成すると共に島状突極から電機子側に流れる磁束が励磁部からの磁束の影響を受け難いよう軸方向に流れる磁束を流れ難くするよう島状突極内に配置された離隔部材である永久磁石及び或いは非磁性体の厚みは軸方向に流れる磁束を流れ難くするよう磁性体突極内に配置された離隔部材である永久磁石及び或いは非磁性体の厚みより大とするよう構成し,励磁部は励磁コイル及び励磁磁路部材を有し,軸方向の一端に配置された回転子或いは電機子,中間に配置された回転子及び或いは電機子,軸方向の他端に配置された回転子或いは電機子,励磁磁路部材を介する磁路に励磁コイルが磁束を誘起するよう構成し,励磁コイルに励磁電流を供給して電機子に流れる磁束量を制御する磁束量制御方法である。
回転子はリラクタンストルクを利用できる磁極構造としながら隣接する突極の一方である島状突極から電機子に流れる磁束の方向及び量を固定とし,他方の突極である磁性体突極を励磁部からの磁束が通るよう構成して励磁部により磁束量を制御する方法である。励磁部に於ける励磁コイルにより励磁磁束を供給して電機子に流れる磁束量を変更する。
以下に本発明による回転電機システムについて,その実施例及び原理作用等を図面を参照しながら説明する。
本発明による回転電機システムの第一実施例を図1から図5を用いて説明する。第一実施例は,アキシャルギャップ・ダブルロータ構造の回転電機システムであり,励磁部は回転電機の静止側に配置されている。
図1はアキシャルギャップ・ダブルロータ構造の回転電機に本発明を適用した実施例を示している。電機子は円環状磁気ヨーク15の軸方向両側に配置された第一電機子磁極群,第二電機子磁極群を有し,電機子支持体1sによりハウジング12に固定されている。第一電機子磁極群は円環状磁気ヨーク15から軸と平行に左に延びる磁性体歯14,磁性体歯14に巻回された電機子コイル16を有し,第二電機子磁極群は円環状磁気ヨーク15から軸と平行に右に延びる磁性体歯1c,磁性体歯1cに巻回された電機子コイル1dを有する。番号1uは磁性体歯14,磁性体歯1cの先端に配置された円環状の磁性体歯板を示す。電機子は第一電機子磁極群を有する第一電機子と第二電機子磁極群を有する第二電機子とが円環状磁気ヨークを共通として一体化された構成である。
回転軸11はベアリング13を介してハウジング12に回動可能に支持され,回転軸11と共に回転する第一回転子17及び第二回転子1eが電機子の軸方向両端にそれぞれ対向している。第一回転子17の磁性体基板18に島状突極19が配置され,磁性体基板18の一部である磁性体突極1aと島状突極19とが周方向に交互に並んで構成された第一表面磁極部が磁性体歯14の左に対向し,第二回転子1eの磁性体基板1fに島状突極1gが配置され,磁性体基板1fの一部である磁性体突極1hと島状突極1gとが周方向に交互に並んで構成された第二表面磁極部が磁性体歯1cの右に対向している。番号1tは島状突極19と磁性体基板18間,島状突極1gと磁性体基板1f間に配置された磁気的な間隙を示し,非磁性体が配置されている。島状突極19,1g,磁性体突極1a,1h内の矢印は図示していない永久磁石により磁化された方向をそれぞれ示す。
励磁部は,第一表面磁極部の磁性体基板18及び第二表面磁極部の磁性体基板1fを互いに異極に磁化するよう磁性体基板18に繋がる磁性体円板1b及び磁性体基板1fに繋がる磁性体円板1jと微小間隙を介して対向するよう電機子の内周側に配置されている。励磁部は回転軸11を周回し,主要部を界磁極1k,界磁極1m,第一界磁磁石1p,第二界磁磁石1n,励磁コイル1qとより構成されている。第一界磁磁石1p,第二界磁磁石1nはそれぞれほぼ等量の磁束を電機子側に流すようそれぞれの磁極表面積,飽和磁束密度等のパラメータが設定されている。磁性体円板1b,1jは交流磁束が通り難いよう軟鉄の円板で構成されている。番号1rは回転軸11を周回するよう配置された導体層であり,励磁コイル1qのインダクタンスを減少し且つ磁束を励磁磁路に集中させる為に設けられている。
図2(a)は第一表面磁極部を左から見て透視した平面図を示している。磁性体基板18の一部である磁性体突極1aと島状突極19とが周方向に交互に並び,図示していない永久磁石により互いに異極に磁化されている。図2(c)は第二表面磁極部を電機子側から見た平面図を示している。磁性体基板1fの一部である磁性体突極1hと島状突極1gとが周方向に交互に並び,図示していない永久磁石により互いに異極に磁化されている。島状突極19,1g,磁性体突極1a,1h内に示されたN,Sは電機子との対抗面に於けるそれぞれ磁化された極性を示す。
回転子の表面に於いて島状突極と磁性体突極は軸方向に短い磁性体で繋がって一体化されているので表面から島状突極と磁性体突極の境界は見えないが判りやすいように区分して示している。島状突極と磁性体突極の境界に於ける番号23は磁気的な間隙を示す。島状突極19と島状突極1gとが電機子を間に挟んで軸方向に対向し,磁性体突極1aと磁性体突極1hとが電機子を間に挟んで軸方向に対向するよう配置されている。磁性体基板18,1fは鉄粉を押し固めた比抵抗の大きな圧粉鉄心で構成されている。
電機子は第一電機子磁極群と第二電機子磁極群とが軸方向に並ぶ構成であり,図2(b)は電機子を左方向から見た第一電機子磁極群の平面図を示している。磁性体歯14の先端には磁性体歯板1uが配置されて回転子との対向し,それぞれ隣接する磁性体歯14延長部間に磁気的な空隙21を介して対向するよう構成されている。磁性体歯14には電機子コイル16が巻回され,本実施例では9個の電機子コイル16を有している。それらは周方向に順次U相,V相,W相として周方向に順次繰り返して配置されている。
第二電機子磁極群の平面図は図示されていないが第一電機子磁極群と同じ構成であり,9個の電機子コイル1dを有し,それらは周方向に順次U’相,V’相,W’相として配置されている。U相の電機子コイルが島状突極19と対向する際にU’相の電機子コイルは磁性体突極1hと対向するよう周方向に互いに偏倚して配置され,さらにU相の電機子コイルとU’相の電機子コイルは電流が流された時に互いに逆方向の磁束を発生するよう直列に結線されている。V相の電機子コイルとV’相の電機子コイル,W相の電機子コイルとW’相の電機子コイルも同様に結線され,全体として三相に結線されている。
番号22は磁性体歯板1uの表面に形成された凹部を示し,回転子と電機子間に生じる軸方向の磁気力を抑制する為に設けられている。磁性体歯14,磁性体歯1c,円環状磁気ヨーク15は鉄粉を押し固めた比抵抗の大きな圧粉鉄心で構成され,磁性体歯板1uは圧粉鉄心板と磁気的な空隙21である非磁性体とが一体として構成されている。
本実施例に於いて,磁性体歯14,1c,磁性体突極1a,1hは交流磁束が流れやすいよう比抵抗の大きな圧粉鉄心で構成されているが,これらを周方向に磁束が流れ難いよう磁気的な異方性のある構成,例えばケイ素鋼板を周方向に積層する構成として出力トルク,或いは発電電圧を改善する構成も可能である。
図3は第一表面磁極部及び電機子及び第二表面磁極部の周方向断面を図2に示したA−A’に沿って示す図である。同図により第一表面磁極部及び第二表面磁極部の構成,励磁部による磁束の流れを説明する。
第一表面磁極部及び第二表面磁極部の磁極構成はほぼ対称に構成され,第一表面磁極部側の永久磁石のみに番号が付されている。島状突極19の周方向両側面には永久磁石37,38が配置され,磁性体突極1aの周方向両側面には永久磁石39,3aが配置されている。これらの永久磁石37,38,39,3aは内周部から外周部に径方向に延びる形状であり,島状突極19をN極に,磁性体突極1aをS極に磁化するよう磁化方向が定められている。永久磁石38,39は略同方向の磁化方向であって中間の磁性体と併せて集合磁石を形成し,一様な磁性体基板18を集合磁石で周期的に区分して島状突極19,磁性体突極1aを形成している。
島状突極19にはさらに非磁性体で構成された磁気的な間隙1tが配置されている。したがって,島状突極19は永久磁石37,38及び磁気的な間隙1tを離隔部材として島状に離隔された部分である。磁性体突極1aは周方向側面に永久磁石39,3aが配置されても磁性体基板18の一部として相互に繋がっている。第二表面磁極部の磁極構成は第一表面磁極部を電機子に関して対称形状に構成され,永久磁石の磁化方向は逆として構成されいる。永久磁石37,38,39,3a内の矢印はそれぞれの磁化方向を示す。
回転子の磁性体基板は圧粉鉄心で構成され,永久磁石37,38,39,3aは磁性体基板に形成されたスロットに永久磁石ブロックを径方向に挿入し,磁気的な間隙1tに対応するスロットに非磁性体であるレジンブロックを挿入して構成される。また,磁性体基板の表面に永久磁石ブロック用のスロットを形成して表面から挿入して構成する事も出来る。
図3に於いて,第一電機子磁極群の電機子コイル16はU相,V相,W相の電機子コイルをそれぞれ電機子コイル31,32,33とし,第二電機子磁極群の電機子コイル1dはU’相,V’相,W’相の電機子コイルをそれぞれ電機子コイル34,35,36として示されている。U相の電機子コイル31が島状突極19に正対する時にはU’相の電機子コイル34は磁性体突極1hと正対するよう互いに偏倚して配置され,電流が流れた時にU相の電機子コイル31とU’相の電機子コイル34とは互いに逆方向の磁束を誘起するよう直列に接続されている。V相の電機子コイル32とV’相の電機子コイル35,W相の電機子コイル33とW’相の電機子コイル36もそれぞれ同様に接続され,全体として3相に結線されている。
電機子の円環状磁気ヨーク15,磁性体歯14,1cは一体として構成されて電機子コイル31,32,33,34,35,36がそれぞれ配置された後に磁性体歯板1uがそれぞれ回転子との対向面に配置されて電機子が構成される。磁性体歯板1uの平面図は図2(b)に示される形状で磁気的な空隙21以外は圧粉鉄心で構成されている。磁気的な空隙21には非磁性体であるレジンが配置されている。このように磁性体歯板1uを別体とする構成により電機子コイルの配置構成が容易となり,電機子コイルには低電気抵抗の太い銅線を使用できる。
島状突極19,1g,磁性体突極1a,1hの両側面に配置された永久磁石からの磁束を番号3bで示しているが,磁束3bがU相の電機子コイル31と鎖交して流れる方向と,永久磁石19,1gからの磁束がU’相の電機子コイル34と鎖交して流れる方向とは互いに逆方向で有る事が示され,V相の電機子コイル32とV’相の電機子コイル35,W相の電機子コイル33とW’相の電機子コイル36もそれぞれ同様である。したがって,磁束3bによる誘起電圧は3相の誘起電圧として正しく合成され,島状突極19と磁性体突極1aを介して流れる磁束量,島状突極1gと磁性体突極1hを介して流れる磁束量にアンバランスがあっても3相の電圧出力には現れない。
図3において,励磁部からの磁束を番号3cで示すように磁性体基板1fから磁性体基板18の方向に流れるよう供給すると,磁束3cはU’相の電機子コイル34,V相の電機子コイル32,W相の電機子コイル33と鎖交し,その方向は磁束3bと同じであるので励磁部が電機子コイル16,1dと鎖交する磁束量を島状突極19,1g,磁性体突極1a,1hの両側面に配置された永久磁石のみの場合より増大させる状態となる。
島状突極19,1gは磁気的な間隙1tにより励磁部からの磁束3cが流れず,磁束3cは専ら磁性体突極1a,1hを介して電機子側に流れ,各電機子コイルに誘起される電圧は一様ではない。しかし,上記の説明のように第一電機子磁極群,第二電機子磁極群の電機子コイルは周方向に配置され,第一電機子磁極群,第二電機子磁極群に於いて同じタイミングで駆動電流が供給される同一相に属する電機子コイル同士は一方が島状突極19に対向する時に,他方が磁性体突極1hに対向するよう配置され,電流が流された時にそれぞれ逆方向の磁束を生じるよう直列に接続されて駆動トルク変動或いは発電電圧波形歪みが抑制される。
励磁部は回転軸11を周回するよう構成され,その縦断面は図1に示されている。円筒状の界磁極1k,1m間に円筒状の第一界磁磁石1p,第二界磁磁石1nが配置され,励磁コイル1qが第一界磁磁石1p,第二界磁磁石1nを直列に繋ぐ励磁磁路に励磁磁束を発生させるよう配置されている。この場合,第一界磁磁石1p,第二界磁磁石1nは互いに他の励磁磁路の一部となっている。第一界磁磁石1p,第二界磁磁石1nからの磁束は界磁極1m,磁性体円板1j,磁性体基板1f,磁性体突極1h,磁性体歯1c,円環状磁気ヨーク15,磁性体歯14,磁性体突極1a,磁性体基板18,磁性体円板1b,界磁極1k等で構成される主磁路を流れて電機子コイル16,1dと鎖交する。
第一界磁磁石1pの長さをL1,磁化変更に要する磁界強度をH1とし,第二界磁磁石1nの長さをL2,磁化変更に要する磁界強度をH2としてそれらの関係は次のように設定されている。すなわち,L1はL2より小とし,H1*L1がH2*(L1+L2)より大となるよう設定されている。励磁コイル1qに供給する磁化電流のピーク値と巻回数との積をATとしてそれぞれの界磁磁石の磁化を変更するATは次のように設定されている。第一界磁磁石1pの磁化を変更するATはH1*L1より大に,第二界磁磁石1nの磁化を変更するATはH1*L1より小で且つH2*(L1+L2)より大とする。
励磁コイル1qは第一界磁磁石1p,第二界磁磁石1nを直列に繋ぐ励磁磁路に配置されて第一界磁磁石1p,第二界磁磁石1n内にはほぼ等しい磁界強度が加えられるが,それぞれの磁化変更に要する磁界強度は異なるので第一界磁磁石1p,第二界磁磁石1nの磁化状態はそれぞれ変更される。第一界磁磁石1pにはネオジウム磁石(NdFeB),第二界磁磁石1nにはアルニコ磁石(AlNiCo)を適用して上記条件に合う界磁磁石を構成している。
上記構成に於いて,第一界磁磁石1pの磁化変更に際して第二界磁磁石1nは常に励磁磁束の方向に従って速やかに磁化されて励磁磁束への磁気抵抗は小である。第二界磁磁石1nの磁化変更に際し,励磁磁束の方向が第一界磁磁石1pの磁化の方向と同じ場合には当然に励磁磁束への磁気抵抗は小であり,励磁磁束の方向が第一界磁磁石1pの磁化の方向と逆の場合にはその長さL1が小であるので第一界磁磁石1pを空隙と見なした励磁磁路の磁気抵抗は小である。
したがって,第一界磁磁石1p或いは第二界磁磁石1nの磁化変更に際しては互いに他の励磁磁路の一部となる構成であるが,励磁磁束に対する磁気抵抗は実効的に小さいので第一界磁磁石1p及び第二界磁磁石1nの磁化変更は容易である。更に,磁性体円板1b,1jを交流磁束が流れ難いように軟鉄ブロックで構成され,主磁路の交流磁束に対する磁気抵抗は大であるので励磁コイル1qが誘起するパルス状の励磁磁束は主磁路を流れ難い。
図4は励磁部の縦断面の上半分を示し,図4(a),(b),(c)はそれぞれ第一界磁磁石1p,第二界磁磁石1nの磁化方向の異なる組み合わせを示している。同図を用いて第一界磁磁石1p,第二界磁磁石1nの磁化を変更するステップを説明する。図3を用いて説明したように磁性体基板1fから磁性体基板18に励磁部から磁束を流すと,電機子コイル16,1dと鎖交する磁束量を増し,逆の場合は電機子コイル16,1dと鎖交する磁束量を減ずるので図1に於いて軸と平行に右方向の磁化を持つ第一界磁磁石1pが第一磁化であり,左方向の磁化を持つ第二界磁磁石1nが第二磁化に相当する。
図4(a)は第一界磁磁石1p,第二界磁磁石1n共に第一磁化であり,図3に示した状態に相当して電機子コイル16,1dと鎖交する磁束量は永久磁石37,38,39,3aのみの場合より増大される。励磁コイル1qに供給する磁化電流は第一界磁磁石1pを第一磁化に磁化する極性で且つATをH1*L1より大として第一界磁磁石1pを第一磁化とする。この時,第二界磁磁石1nは第二磁化となるので,さらに励磁コイル1qに供給する磁化電流は第二界磁磁石1nを第一磁化に磁化する極性で且つATをH1*L1より小でH2*(L1+L2)より大として第二界磁磁石1nを第一磁化とする。
図4(b)は第一界磁磁石1pは第一磁化,第二界磁磁石1nは第二磁化であり,励磁部から電機子側に磁束は供給されない状態である。図4(a)の状態で励磁コイル1qに第二界磁磁石1nを第二磁化に磁化する極性で且つATをH1*L1より小でH2*(L1+L2)より大とする磁化電流を供給して第二界磁磁石1nを第二磁化とする。
図4(c)は第一界磁磁石1p,第二界磁磁石1n共に第二磁化であり,電機子コイル16,1dと鎖交する磁束量は永久磁石37,38,39,3aのみの場合より減少される。励磁コイル1qに供給する磁化電流は第一界磁磁石1pを第二磁化に磁化する極性で且つATをH1*L1より大として第一界磁磁石1pを第二磁化とする。この時,第二界磁磁石1nは第一磁化となるので,さらに励磁コイル1qに供給する磁化電流は第二界磁磁石1nを第二磁化に磁化する極性で且つATをH1*L1より小でH2*(L1+L2)より大として第二界磁磁石1nを第二磁化とする。
導体層1rは回転軸11外周に配置された銅板で構成され,励磁コイル1qの作る磁束を励磁磁路に集中させ,励磁コイル1qのインダクタンスを実効的に減少させてパルス状の磁化電流を流れやすくする役割を持つ。励磁コイル1qにパルス状の磁化電流が供給されると,導体層1rには鎖交する磁束の変化を妨げる方向の電流が誘起され,これにより励磁コイル1qのインダクタンスを実効的に減少する。さらに誘起された電流により導体層1r内に励磁コイル1qの作る磁束が流れ難くなり励磁磁路に励磁コイル1qの作る磁束が集中させられる。励磁部を構成する磁性体部材である界磁極1k,1mには比抵抗が大である圧粉鉄心で構成している。
電機子を流れる磁束量はこのように励磁コイル1qに供給する磁化電流を変えて第一磁化,第二磁化にそれぞれ対応する磁石数を変える事で制御される。電機子を流れる磁束量と励磁コイル1qに供給する磁化電流との関係は設計段階でマップデータとして設定する。しかし,回転電機の量産段階では部材の寸法が公差範囲内でバラツキ,磁性体の磁気特性のバラツキも存在して電機子を流れる磁束量の精密な制御が困難になる場合がある。そのような場合には回転電機を組み立て後に回転電機個々に電機子を流れる磁束量と励磁コイル1qに供給する磁化電流との関係を検査し,前記マップデータを修正する。
さらに磁性体の特性は温度による影響を受けやすく,経時変化による影響も懸念される場合には運転中に加えられる磁化電流とその結果としての界磁磁石の磁化状態を監視し,回転電機の運転中に前記マップデータを修正する情報を学習的に取得する事も出来る。電機子を流れる磁束量を直接に把握する事は難しいが,電機子コイル16,1dに現れる誘起電圧を参照して電機子を流れる磁束量を推定する。
第一界磁磁石1p,第二界磁磁石1nの磁化状態は離散的であるが,本実施例ではさらに第一界磁磁石1p,第二界磁磁石1nの磁化状態を変更させない程度の磁束調整電流を励磁コイル1qに供給して磁束を発生させ,第一界磁磁石1p,第二界磁磁石1n及び永久磁石18,1gによる磁束に重畳させて電機子を流れる磁束量を制御する。磁束調整電流は第一界磁磁石1p,第二界磁磁石1nの各磁化状態の組み合わせに於いて磁束量を増減するよう磁束量の調整方向に応じて極性が変えられる。
磁束調整電流による磁束は第一界磁磁石1p,第二界磁磁石1nを共に含む閉磁路,第一界磁磁石1pと主磁路を含む閉磁路に誘起される。第一界磁磁石1pの長さL1を小に,第二界磁磁石1nの長さL2を大に設定しているが,さらに第二界磁磁石1nを空隙と見なした磁気抵抗が主磁路の磁気抵抗より大となるように設定し,磁束調整電流による磁束の殆どを主磁路に流れるよう構成して電機子コイル16,1dと鎖交させる。主磁路の磁気抵抗は磁性体突極と磁性体歯との相対位置により変動するが,本発明で主磁路の磁気抵抗は磁性体突極と磁性体歯間の各相対位置に関して平均化された値としている。
電機子に対向する回転子表面或いは磁極内には電機子コイルの作る磁界によって容易に非可逆減磁を生じないネオジウム磁石(NdFeB)が望ましいが,上記説明のように励磁部には電機子コイルが誘起する磁束は到達し難いので界磁磁石として磁化変更容易な磁石を使用する事が出来る。ネオジウム磁石(NdFeB)では着磁に必要な磁界強度が2400kA/m(キロアンペア/メートル)程度であり,アルニコ磁石(AlNiCo)の着磁に必要な磁界強度は240kA/m程度である。本実施例では第一界磁磁石1p,第二界磁磁石1nが直列に接続された回路に励磁磁束は誘起されるので抗磁力を変える必要があった。それぞれの界磁磁石には素材の異なる磁石を採用し,それぞれの界磁磁石の磁化容易さは抗磁力と厚みの積により調整している。
本実施例の回転電機装置に於いて,電機子コイル16によって誘起される磁束は,磁性体歯14,円環状磁気ヨーク15,島状突極19,磁性体突極1aを主として流れ,電機子コイル1dによって誘起される磁束は,磁性体歯1c,円環状磁気ヨーク15,島状突極1g,磁性体突極1hを主として流れる。さらに磁性体円板1b,1jは交流磁束を通り難いように軟鉄ブロックで構成したので第一界磁磁石1p,第二界磁磁石1nの磁化状態に影響を及ぼす可能性は少なく,第一界磁磁石1p,第二界磁磁石1nには磁化状態を容易に変更出来るよう低保持力の磁石素材を適用出来る。
また,励磁コイル1qが誘起するパルス状励磁磁束は磁性体円板1b,1jを通り難く,さらに第二界磁磁石1nは容易に磁化されるので前記パルス状励磁磁束は主磁路に流れ難く,電機子コイル16,1dに過大な電圧が発生する事を回避できる。
以上,図1から図4に示した回転電機に於いて,第一界磁磁石1p,第二界磁磁石1nの磁化状態を変える事で電機子に流れる磁束量を制御できることを説明した。本実施例は電機子を流れる磁束量を制御して出力を最適化するシステムであり,図5を用いて回転電機システムとしての制御を説明する。
図5は磁束量制御を行う回転電機システムのブロック図を示している。図5に於いて,回転電機51は入力52,出力53を有するとし,制御装置55は回転電機51の出力53及び回転子の位置,温度等を含む状態信号54を入力として制御信号56を介して磁束量を制御する。番号57は電機子コイル16,1dに駆動電流を供給する駆動回路を示す。回転電機51が発電機として用いられるのであれば,入力52は回転力であり,出力53は発電電力となる。回転電機51が電動機として用いられるのであれば,入力52は駆動回路57から電機子コイル16,1dに供給される駆動電流であり,出力53は回転トルク,回転速度となる。制御信号56は第一界磁磁石1p,第二界磁磁石1nの磁化状態を変更させる場合には切換スイッチ58により磁化制御回路5aを接続して励磁コイル1qに磁化状態変更の為の磁化電流を供給し,磁束量の微調整を行う場合には切換スイッチ58により磁束調整回路59を接続して磁束調整電流を励磁コイル1qに供給する。
回転電機が電動機として用いられる場合において,磁束量制御を行って回転力を最適に制御する。但し,電機子を流れる磁束量を増やす極性の磁束調整電流を正としている。制御装置55は出力53である回転速度が所定の値より大となり電機子に流れる磁束量を小とする時には磁束調整回路59により励磁コイル1qに供給する磁束調整電流を減じて電機子に流れる磁束量を小とし,磁束調整電流が予め定めた値より小である場合には第二磁化の磁石数を増す方向の磁化電流が磁化制御回路5aから励磁コイル1qに供給されて第一磁化の磁石数を減じると共に第二磁化の磁石数を増して電機子を流れる磁束量を小とする。
出力53である回転速度が所定の値より小となり電機子に流れる磁束量を大とする時には磁束調整回路59により励磁コイル1qに供給する磁束調整電流を増して電機子に流れる磁束量を大とし,磁束調整電流が予め定めた値より大である場合には第一磁化の磁石数を増す方向の磁化電流を磁化制御回路5aから励磁コイル1qに供給して第一磁化の磁石数を増すと共に第二磁化の磁石数を減じて電機子を流れる磁束量を大とする。
回転電機が発電機として用いられる場合において,磁束量制御を行って発電電圧を所定の電圧となるよう制御する定電圧発電システムを説明する。但し,電機子を流れる磁束量を増す極性の磁束調整電流を正としている。制御装置55は出力53である発電電圧が所定の値より大となり電機子に流れる磁束量を小とする時には磁束調整回路59により励磁コイル1qに供給する磁束調整電流を減じて電機子に流れる磁束量を小とし,磁束調整電流が予め定めた値より小である場合には第二磁化の磁石数を増す方向の磁化電流が磁化制御回路5aから励磁コイル1qに供給されて第一磁化の磁石数を減じると共に第二磁化の磁石数を増して電機子を流れる磁束量を小とする。
制御装置55は出力53である発電電圧が所定の値より小となり電機子に流れる磁束量を大とする時には磁束調整回路59により励磁コイル1qに供給する磁束調整電流を増して電機子に流れる磁束量を大とし,磁束調整電流が予め定めた値より大である場合には第一磁化の磁石数を増す方向の磁化電流を磁化制御回路5aから励磁コイル1qに供給して第一磁化の磁石数を増すと共に第二磁化の磁石数を減じて電機子を流れる磁束量を大とする。
本実施例に於いて,永久磁石37,38,39,3aにより島状突極及び磁性体突極を互いに異極に磁化し,磁気的な間隙1tを離隔部材として島状突極には励磁部からの磁束が流れ難いように構成している。この構成により磁石トルクに加えてリラクタンストルクの利用が可能である。磁気的な間隙1tの替わりに永久磁石を配置して全体の磁束量を増加させる事も出来る。島状突極19,1gと磁性体突極1a,1hとを介して流れる磁束量に差が有る場合でも,電機子のコイル構成はトルクリップル,誘起電圧波形歪みを抑制する構成であるので上記のように磁束量を増大させる構成でも不都合を生じる事はない。
さらに本実施例では円環状磁気ヨーク15から軸と平行に延びる磁性体歯14,1cに電機子コイル16,1dを巻回しているが,磁性体歯14,1cを持たずに電機子コイル16,1dを円環状磁気ヨーク15表面に配置する構成も可能である。磁性体歯14,1cを有する構成はエネルギー効率に優れ,リラクタンストルクの利用が可能である。磁性体歯14,1cを持たない構成はコギングトルクの発生が無く,振動騒音の面で利点がある。
また,第一,第二電機子磁極群に於いて,同相の電機子コイル同士は電流が流された時に互いに逆方向の磁束が誘起されるよう直列に接続されている。回転電機が電動機として用いられる場合,第一,第二電機子磁極群にそれぞれ接続される駆動回路を持ち,電機子コイルが島状突極或いは磁性体突極に対向するそれぞれの場合で駆動電流条件を切り替えてトルク変動を更に低減する構成も可能である。本発明は上記何れの構成にも適用可能であり,回転電機仕様に応じて構成を選択する。
本発明による回転電機システムの第二実施例を図6から図9を用いて説明する。第二実施例は,二つの回転子をアウターロータとして一体化させた回転電機システムである。図6はアウターロータ構造の回転電機に本発明を適用した実施例を示し,ロータハウジング62がベアリング63を介して固定軸61に回動可能に支持されている。固定軸61には励磁部及び電機子が固定され,電機子は電機子コイル66が巻回された軸と平行の磁性体歯64が電機子支持体65に周方向に配置されて構成されている。
電機子と軸方向に対向する第一,第二表面磁極部はロータハウジング62の内側側面に配置されている。第一表面磁極部を構成する磁性体基板67,島状突極69,磁性体突極6aはロータハウジング62の左側面に,第二表面磁極部を構成する磁性体基板6c,島状突極6e,磁性体突極6fはロータハウジング62の右側面に配置されている。番号68及び6dはそれぞれ磁性体基板67と島状突極69間,磁性体基板6cと島状突極6e間に配置された離隔部材を示して非磁性体が配置されている。磁性体突極6a,磁性体突極6fは軸方向に磁路を形成するよう電機子を介して軸方向に対向して配置されている。磁性体基板67,磁性体基板6cからそれぞれ内径方向に延びて微小間隙を介して励磁部と対向する磁性体円板6b及び磁性体円板6gには交流磁束を通り難くする為に表面に同心円状の凹凸6hが形成されている。
励磁部は固定軸61を周回するよう配置されて磁性体円板6b及び磁性体円板6gに微小間隙を介して磁気的に結合し,磁性体基板67,磁性体基板6cを互いに異極に磁化するよう構成されている。励磁部の主要部は界磁極6j,界磁極6k,励磁コイル6p,及び磁石要素である界磁磁石6m,界磁磁石6nとより構成される。界磁磁石6m,6nからの磁束は,磁性体円板6b,磁性体基板67,磁性体突極6a,磁性体歯64,磁性体突極6f,磁性体基板6c,磁性体円板6gを含む主磁路に流れる。番号6qは励磁磁路の磁気抵抗を調整する磁気的な空隙を示す。番号6rは固定軸61を周回するよう配置された導体層であり,励磁コイル6pのインダクタンスを減少し且つ磁束を界磁磁石6m,6nに集中させる為に設けられている。
図7(a)は第一表面磁極部を左から見て透視した平面図を示し,図7(b)は電機子を第一表面磁極部側から見た平面図を示し,図7(c)は第二表面磁極部を電機子側から見た平面図を示している。
図7(a)に示す第一表面磁極部は一様な磁性体基板67を略周方向磁化を持つ永久磁石71,72によってほぼ等間隔に区分されて形成されると共に互いに異極に磁化された島状突極69,磁性体突極6aを周方向に交互に有する。周方向に隣り合う永久磁石71,72は互いに磁化方向を反転して配置され,永久磁石71,72内の矢印はそれらの磁化方向を示し,島状突極69,磁性体突極6a内のN,Sはそれぞれ磁化された極性を示す。さらに島状突極69は電機子と対向しない側に離隔部材として非磁性体68を有している。永久磁石71,72からの磁束は非磁性体68を通り難く,専ら電機子側に流れるので島状突極69は軸と平行の右方向に磁化される事になる。回転子の表面に於いて島状突極と磁性体突極は軸方向に短い磁性体で繋がって一体化されているので表面から島状突極と磁性体突極間の永久磁石71,72は見えないが判りやすいように示している。
図7(c)に示す第二表面磁極部も第一表面磁極部と同様に構成されるが,島状突極6e,磁性体突極6fの極性が異なり,それぞれの島状突極6e,磁性体突極6fは電機子を介して軸方向に対向するよう配置されている。第二表面磁極部は一様な磁性体基板6cを略周方向磁化を持つ永久磁石74,75によってほぼ等間隔に区分されて形成されると共に互いに異極に磁化された島状突極6e,磁性体突極6fを周方向に交互に有する。周方向に隣り合う永久磁石74,75は互いに磁化方向を反転して配置され,永久磁石74,75内の矢印はそれらの磁化方向を示し,島状突極6e,磁性体突極6f内のS,Nはそれぞれ磁化された極性を示す。さらに島状突極6eは電機子と対向しない側に非磁性体6dを有している。永久磁石74,75からの磁束は非磁性体6dを通り難く,専ら電機子側に流れるので島状突極6eは軸と平行の右方向に磁化される事になる。
図7(b)に示す電機子は周方向に第一電機子磁極群と第二電機子磁極群それぞれに属する電機子コイル66及び磁性体歯64が配置されている。電機子コイル66は周方向にU相,V相,W相,U’相,V’相,W’相の電機子コイルが周方向に順次繰り返し配置され,回転子の6極に対して18個の電機子コイル66が配置されている。番号73は回転子と対向する面に於ける磁性体歯間の磁気的な空隙を示す。
U相,V相,W相の電機子コイルは第一電機子磁極群であり,U’相,V’相,W’相の電機子コイルは第二電機子磁極群である。U相の電機子コイルが島状突極69に正対した時にU’相の電機子コイルは磁性体突極6aに正対する関係にあり,電流が流れた時にU相の電機子コイル及びU’相の電機子コイルは互いに逆方向の磁束を発生するよう直列に接続されている。V相とV’相の電機子コイル,W相とW’相の電機子コイルもそれぞれ同様に接続され,全体として3相に結線されている。
磁性体歯64は交流磁束が流れやすいよう鉄粉を押し固めた比抵抗の大きな圧粉鉄心で構成されている。磁性体歯64を周方向に磁束が流れ難いよう磁気的な異方性のある構成,例えばケイ素鋼板を周方向に積層する構成として出力トルクの増加,或いは発電電圧の増加が期待できる。
図8は第一表面磁極部及び電機子及び第二表面磁極部の周方向断面を図7に示したB−B’に沿って示す図である。これらの図により永久磁石71,72,74,75と励磁部による磁束の流れを説明する。図8は励磁部が電機子コイル66と鎖交する磁束量を永久磁石71,72,74,75のみの場合より増大させる場合を示している。
図8に於いて,第一電機子磁極群のU相,V相,W相の電機子コイルをそれぞれ電機子コイル81,82,83として示している。第二電機子磁極群のU’相,V’相,W’相の電機子コイルをそれぞれ電機子コイル84,85,86として示している。U相の電機子コイル81が島状突極69,6eに正対する時にはU’相の電機子コイル84は磁性体突極6a,6fと正対するよう配置されている。電流が流された時にU相の電機子コイル81とU’相の電機子コイル84とは互いに逆方向の磁束を誘起するよう直列に接続されている。V相の電機子コイル82とV’相の電機子コイル85,W相の電機子コイル83とW’相の電機子コイル86もそれぞれ同様に配置されて接続され,全体として3相に結線されている。
点線87は永久磁石71,72,74,75からの磁束を代表して示している。同図に於いて,磁束87がU相,V相,W相の電機子コイル81,82,83を鎖交する方向と,U’相,V’相,W’相の電機子コイル84,85,86を鎖交する方向とは互いに逆方向である事が示されている。したがって,磁束87による誘起電圧は3相の誘起電圧として正しく合成され,島状突極69,6eと磁性体突極6a,6fとを介して流れる磁束量にアンバランスがあっても3相の電圧出力には現れない。
図8において,励磁部からの磁束を番号88で示すように島状突極69,6eには非磁性体68,6dにより阻害されて流れず,専ら磁性体突極6a,6fを介して電機子側に流れる。その方向を磁性体基板6cから磁性体基板67に磁束88が流れるよう供給すると,磁束88はW相の電機子コイル83,U’相の電機子コイル84,V’相の電機子コイル85と鎖交し,その方向は磁束87の方向と同じであるので励磁部が電機子コイルと鎖交する磁束量を永久磁石71,72,74,75のみの場合より増大させる状態となる。励磁部からの磁束88の流れる方向を図8とは逆方向にした場合は励磁部が電機子コイルと鎖交する磁束量を永久磁石71,72,74,75のみの場合より減少させる状態となる。
励磁部からの磁束88は専ら磁性体突極6a,6fを介して電機子側に流れ,各電機子コイルに誘起される電圧は一様ではない。しかし,上記の説明のように第一電機子磁極群,第二電機子磁極群の電機子コイルは周方向に配置され,第一電機子磁極群,第二電機子磁極群に於いて同じタイミングで駆動電流が供給される同一相に属する電機子コイル同士は一方が島状突極69,6eに対向する時に,他方が磁性体突極6a,6fに対向するよう配置され,電流が流された時にそれぞれ逆方向の磁束を生じるよう直列に接続されて駆動トルク変動或いは発電電圧波形歪みが抑制される。
図9は図6に示した励磁部の上半分を示した縦断面図であり,図6,9を用いて励磁部の構成,磁束量制御の動作原理を説明する。図6に於いて,磁性体円板6bに微小間隙を介して対向する界磁極6jと磁性体円板6gに微小間隙を介して対向する界磁極6kとの間は軸方向の間隙が径方向に異なる構成として長さの異なる界磁磁石6m,6nが並列に接続されるよう配置されている。図8を用いて説明したように磁性体基板6cから磁性体基板67に励磁磁束を流す場合が電機子コイル66に鎖交する磁束量を大とするので軸と平行に右方向の磁化を第一磁化,左方向の磁化を第二磁化とする。図6に於いて,界磁磁石6mは第一磁化に,界磁磁石6nは第二磁化に対応する。
界磁磁石6m,6nからはそれぞれ同量の磁束が電機子を流れるようようそれぞれの磁極表面積,飽和磁束密度は設定されている。したがって,図6に示される界磁磁石6m,6nの磁化状態では界磁磁石6m,6nからの磁束は相殺されて電機子コイル66には鎖交せず,電機子コイル66と鎖交する磁束は永久磁石71,72,74,75から流れる磁束のみである。
さらに界磁極6j,6kの一部は間隙6qを介して対向し,励磁コイル6pは界磁磁石6m,6n及び固定軸61に周回するよう巻回されている。励磁コイル6pにより誘起される磁束は界磁磁石6m,6n,界磁極6j,間隙6q,界磁極6kを流れ,励磁磁路を形成している。
界磁磁石6m,6nからの磁束は主磁路及び励磁磁路を流れるが,間隙6qに於ける対向面積及び間隙長さを磁気抵抗調整部分として励磁磁路の磁気抵抗を主磁路の磁気抵抗より大となるように設定している。主磁路の磁気抵抗は磁性体突極と磁性体歯との相対位置により変動するが,本発明で主磁路の磁気抵抗は磁性体突極と磁性体歯間の各相対位置に関して平均化された値としている。
一方では,励磁コイル6pが誘起する励磁磁束は励磁磁路を流れ,同時に主磁路側にも流れようとする。主磁路の一部である磁性体円板6b,磁性体円板6gは交流磁束が流れ難いように軟鉄で構成され,さらに表面には同心円上の凹凸6hを形成して主磁路の交流磁束に対する磁気抵抗は大としている。間隙6q部分に於ける磁気抵抗は主磁路の交流磁束に対する磁気抵抗より小に設定されて励磁磁束は専ら励磁磁路を流れる。
導体層6rは固定軸61外周に配置された銅板で構成され,励磁コイル6pにパルス状の磁化電流が供給されると,導体層6rには鎖交する磁束の変化を妨げる方向の電流が誘起され,導体層6r内に励磁コイル6pの作る励磁磁束が流れ難くなり,界磁磁石6m,6n側に励磁磁束が集中させられる。上記励磁部を構成する部材,界磁磁石6m,6n,界磁極6j,6k,励磁コイル6p等は固定軸61を周回する円環状,円筒状の形状であり,構成はシンプルに出来る。励磁部を構成する磁性体部材である界磁極6j,6kには比抵抗が大である圧粉鉄心で構成し,励磁コイル6pによるパルス状励磁磁束が通りやすい構成としている。
図6に示されるように界磁磁石6m,6nは軸方向の長さが変わり,長さの異なる永久磁石要素が並列に接続された状態である。励磁コイル6pに磁化電流が供給されると,界磁磁石6m,6nに接する界磁極6j,6k間の磁気ポテンシャル差(起磁力)はほぼ同じとして各磁石要素内では磁気ポテンシャル差を軸方向長さで除した値に相当する磁界強度の磁界が加えられる。したがって,短い磁石要素が磁化されやすく,長い磁石要素は磁化され難い。
界磁磁石6m,6nの磁化状態変更の方法を図9を用いて説明する。図9は図6に示された励磁部の上半分を示し,図9(a),図9(b),図9(c)は界磁磁石6m,6nの磁化状態が異なる場合を示しており,界磁磁石の磁化状態変更は以下のように実施される。
図6に於いて第一磁化の磁石数を増すには第二磁化の界磁磁石6nを右方向に磁化する振幅及び極性を持つパルス状磁化電流を励磁コイル6pに加える。この結果が図9(a)の磁化状態で有り,図8の状態に相当して電機子コイル66と鎖交する磁束量は永久磁石71,72,74,75から流れる磁束のみの場合より大となる。
図9(a)の磁化状態に於いて,第一磁化の磁石数を減じるには第一磁化の界磁磁石6m,6nに於いて最も長さの短い界磁磁石6nを左方向に磁化し,且つ界磁磁石6mに影響を与えない程度の振幅及び極性を持つ磁化電流を励磁コイル6pに加える。この結果が図9(b)の磁化状態となる。電機子コイル66と鎖交する磁束は永久磁石71,72,74,75から流れる磁束のみとなる。
図9(b)の磁化状態に於いて,第一磁化の磁石数を減じるには第一磁化の界磁磁石6mを左方向に磁化する振幅及び極性を持つ磁化電流を励磁コイル6pに加える。この結果が図9(c)の磁化状態で有り,電機子コイル66と鎖交する磁束量は永久磁石71,72,74,75から流れる磁束のみの場合より小となる。この図9(c)の磁化状態に於いて,電機子コイル66と鎖交する磁束量が実効的にゼロとなるように永久磁石71,72,74,75及び界磁磁石6m,6nの寸法,磁気特性を設定する事が出来る。
このようにして界磁磁石の磁化状態は変更されるが,上記ステップに従って,界磁磁石の磁化状態を変更するには各界磁磁石6m,6nの磁化状態を常に把握する必要がある。各界磁磁石6m,6nの磁化状態に関する情報が乱れた場合には磁化変更後に於いて電機子を流れる磁束量が期待に反する事になるが,この場合には界磁磁石6m,6nの全てを一方向,例えば左方向に磁化し,必要な磁石数のみを右方向に磁化させる。
界磁磁石6m,6nにはネオジウム磁石(NdFeB),アルニコ磁石(AlNiCo)等の種々の磁石素材を使用する事が出来るが,本実施例では長さを変えて磁化容易さが制御容易なアルニコ磁石(AlNiCo)で構成している。
本実施例では界磁磁石6m,6nの磁化状態を変えて電機子を流れる磁束量を制御する。界磁磁石からの磁束は主磁路及び励磁磁路に流れるが,励磁磁路の磁気抵抗を主磁路の磁気抵抗より大に設定して主磁路に流れる磁束量を大としている。励磁磁路の磁気抵抗を大にする事で励磁コイル6pが界磁磁石6m,6nを磁化する効率を低下させる事になるので励磁磁路の磁気抵抗設定は電機子側に流す磁束量範囲,励磁コイル6pへの電流供給能力等回転電機システムの仕様により設定する。
また,界磁磁石6m,6nから磁性体基板67,6cに至る磁性体円板6b,6gは軟鉄ブロックで構成して交流磁束が通り難くしている。さらに本実施例では同心円状の凹凸6hを磁性体円板6b,6g表面に形成して交流磁束を通り難い構成としている。一般に渦電流が存在する場合,交流磁束は磁性体の表面に沿って伝搬する。交流磁束が伝搬する領域は表面から一定の深さまでに集中し,その深さは交流磁束の角周波数ω,磁性体の導電率σ,透磁率μ等に反比例する表皮深さ(skin depth),すなわち2/ωσμの平方根として知られている。同心円状の凹凸6hの振幅及び四分の一周期を表皮深さより大となるよう設定する事が望ましい。本実施例で回転電機の回転速度は毎分数千回転程度と想定すれば,磁性体円板6b,6gを軟鉄で構成しているので上記寸法を1ミリメートル程度以上に設定する事で本実施例で関連する交流磁束の伝搬する磁路長さを大にして交流磁束を通り難く出来る。
したがって,主磁路に於いて励磁コイル6pによるパルス状励磁磁束に対する磁気抵抗が励磁磁路の磁気抵抗より大となるよう設定されて励磁コイル6pによる励磁磁束を界磁磁石6m,6nに集中させると共に電機子コイル66に及ぼす影響が抑制される。また,電機子コイル66によって誘起される磁束は,磁性体歯64,磁性体突極6a,島状突極69,磁性体突極6f,島状突極6eを主として流れ,界磁磁石6m,6nには流れ難いので界磁磁石6m,6nに低保持力の磁石素材を採用する事が出来る。
本実施例では島状突極69と磁性体基板67との間,島状突極6eと磁性体基板6cとの間には非磁性体68,6dを配置して励磁部からの磁束が島状突極69,6eを通り難いように構成したが,非磁性体68,6dに替えて永久磁石を配置して電機子を流れる磁束量を更に増大させる構成,或いは島状突極69と永久磁石71,72,島状突極6eと永久磁石74,75をそれぞれ一つの永久磁石とする構成も可能である。
さらに,回転子の第一,第二表面磁極部に於いて,島状突極同士,磁性体突極同士は軸方向に電機子を介して対向する構成であるが,第一,第二表面磁極部を周方向に若干偏倚させて配置すると,出力は若干低下するが,コギングトルクを抑制する効果が期待できる。またさらに本実施例では電機子コイルを集中巻きとして構成しているが,当然に分布巻きとする構成も可能である。本発明は何れの構成にも適用可能であり,回転電機仕様に応じて構成を選択する。
本発明による回転電機システムの第三実施例を図10を用いて説明する。第三実施例は,励磁部が界磁磁石を持たず,電流励磁とする回転電機システムである。図10に示す回転電機は図6に示した第二実施例の回転電機と電機子及び回転子の構造は同じとし,励磁部の構成を電流励磁としている。励磁部は励磁磁路部材である円筒状磁気コア101及び円筒状磁気コア101に巻回された励磁コイル6pから構成され,円筒状磁気コア101が磁性体基板67,6cと微小間隙を介して対向する構成である。励磁コイル6pにより誘起された磁束は円筒状磁気コア101から磁性体基板67,磁性体突極6a,磁性体歯64,磁性体突極6f,磁性体基板6cで構成される磁路を流れ,電機子コイル66と鎖交する磁束量を実効的に制御できる。
電機子及び回転子の構成は第二実施例と同じであるが,励磁部は界磁磁石を含まないので永久磁石71,72,74,75による磁束が励磁磁路部材を介して短絡する可能性が残る。すなわち,本実施例では磁性体基板67,島状突極69,磁性体歯64,島状突極6e,磁性体基板6cを通る第一磁路と,磁性体基板67,磁性体突極6a,磁性体歯64,磁性体突極6f,磁性体基板6cを通る第二磁路と,磁性体基板67,円筒状磁気コア101,磁性体基板6cを通る第三磁路とが並列に接続されている。第三磁路の磁気抵抗が小さい場合には島状突極69,6eを磁化する永久磁石71,72,74,75による磁束が短絡する可能性があり,第三磁路の磁気抵抗を第二磁路の磁気抵抗より大とするよう磁性体基板67,円筒状磁気コア101間の間隙長,円筒状磁気コア101,磁性体基板6c間の間隙長が設定されている。
第二実施例は励磁部に界磁磁石を含んでいたので永久磁石71,72,74,75による磁束が励磁磁路部材を介して短絡する可能性は少ないが,本実施例は界磁磁石を含まないので上記のように励磁部を通る磁路の磁気抵抗を設定して磁束短絡を抑制する。しかし,本実施例は励磁部構成以外は第二実施例と同じ構成であり,更なる説明は省略する。本実施例は励磁部に界磁磁石を有さないので永久磁石71,72,74,75による磁束に重畳して磁束を流す時には励磁コイルに電流を要してエネルギー効率を下げる可能性があるが,励磁部の構成をシンプルとしてコストの面で利点がある。
本実施例では,円筒状磁気コア101及び励磁コイル6pを電機子の内周領域に配置したが,円筒状磁気コア101をロータハウジング62の内周面に配置して両端を磁性体基板67,6cに接続し,励磁コイル6pを円筒状磁気コア101と電機子との間に配置する構成も可能である。その場合に円筒状磁気コア101と磁性体基板67,6cとは空隙を介さずに接続できるが,励磁磁路の磁気抵抗を調整する為に円筒状磁気コア101を構成する磁性体の透磁率,断面積等を選択する。或いは磁気的な空隙を配置して励磁磁路の磁気抵抗を設定する。本発明は何れの構成にも適用可能であり,回転電機仕様に応じて構成を選択する。
本発明による回転電機システムの第四実施例を図11から図14を用いて説明する。第四実施例は,アキシャルギャップ・ダブルステータ構造の回転電機システムであり,励磁部は回転電機の静止側に配置されている。図11はアキシャルギャップ・ダブルステータ構造の回転電機に本発明を適用した実施例を示している。回転軸111はベアリング113を介してハウジング112に回動可能に支持され,回転軸111と共に回転する回転子は軸と平行の同一方向に磁化された島状突極118,119と磁性体突極11bとが周方向に交互に並んで構成されている。番号11aは島状突極118,119間に配置された離隔部材である非磁性体を示し,番号11cは回転子支持体をを示す。
電機子は回転子の軸方向の左に対向する第一電機子,回転子の軸方向の右に対向する第二電機子がハウジング112に固定されている。第一電機子は円環状磁気ヨーク115から軸と平行に右に延びる磁性体歯114,磁性体歯114に巻回された電機子コイル116を有し,第二電機子は円環状磁気ヨーク11eから軸と平行に左に延びる磁性体歯11d,磁性体歯11dに巻回された電機子コイル11fを有する。
励磁部は,回転軸111を周回する構成でハウジング112と電機子との間に配置されている。主要部を界磁磁石(11g,11k),界磁極117,励磁コイル11mとより構成されている。界磁磁石(11g,11k)は界磁極117と円環状磁気ヨーク11e間に配置され,界磁極117の他端はさらにハウジング112の内周面に沿って延びて円環状磁気ヨーク115と接続されている。励磁コイル11mはハウジング112及び界磁極117の内周面に配置されている。図11に於いて,界磁磁石は番号11g,11kで示される領域に区分され,界磁磁石領域11g,11kはそれぞれ軸と平行に左及び右方向に磁化されている。
本実施例は回転子の左側に第一電機子,右側に第二電機子を配置し,第一電機子は第一電機子磁極群,第二電機子は第二電機子磁極群を有する。図12(a)は第一電機子を左から見て透視した平面図を示している。磁性体歯114には電機子コイル116が巻回され,本実施例では9個の電機子コイル116を有している。それらは周方向に順次U相,V相,W相として三相に結線されている。隣接する磁性体歯114は磁気的な空隙123を介して対向するよう構成されている。
図12(c)は第二電機子を回転子側から見た平面図を示している。第二電機子の構成は第一電機子と同じであり,9個の電機子コイル11fを有し,それらは周方向に順次U’相,V’相,W’相として三相に結線されている。U相の電機子コイルが島状突極118と対向する時にU’相の電機子コイルは磁性体突極11bと対向するよう互いに偏倚して配置され,電流が流れた時にそれぞれ逆方向の磁束を発生するようそれぞれ直列に接続されている。V相とV’相の電機子コイル,W相とW’相の電機子コイルの関係も同様になるよう配置されて接続され,全体として三相に結線されている。磁性体歯114,磁性体歯11d,円環状磁気ヨーク115,11eは比抵抗の大きな圧粉鉄心で構成されている。
図12(b)は回転子を第一電機子側から見た平面図を示している。回転子は軸方向両端で第一電機子,第二電機子と対向するが,第一電機子との対向面を第一表面磁極部,第二電機子との対向面を第二表面磁極部として図12(b)は第一表面磁極部を示している。第一表面磁極部は一様な磁性体基板を略周方向磁化を持つ永久磁石121,122によってほぼ等間隔で区分されて形成されると共に互いに異極に磁化された島状突極118,磁性体突極11bを周方向に交互に有する。周方向に隣り合う永久磁石121,122は互いに磁化方向を反転して配置され,永久磁石121,122内の矢印はそれらの磁化方向を示し,島状突極118,磁性体突極11b内のS,Nはそれぞれ磁化された極性を示す。
第二表面磁極部は図示されないが,第一表面磁極部と同様な構成を有する。第一表面磁極部,第二表面磁極部に於いて,磁性体突極11bは一様な磁性体として繋がっており,島状突極118,119は軸方向に並び,島状突極118,119間には非磁性体11aが配置されている。さらに島状突極118,119は互いに異極に磁化されるよう島状突極118,119の周方向両側の永久磁石の磁化方向が設定されている。
回転子の表面に於いて島状突極と磁性体突極は軸方向に短い磁性体で繋がって一体化されているので表面から島状突極と磁性体突極間の永久磁石121,122は見えないが判りやすいように示している。本実施例に於いて,磁性体歯114,11d,磁性体突極11bは交流磁束が流れやすいよう鉄粉を押し固めた比抵抗の大きな圧粉鉄心で構成されているが,これらを周方向に磁束が流れ難いよう磁気的な異方性のある構成,例えばケイ素鋼板を周方向に積層する構成として出力トルク,或いは発電電圧を改善する構成も可能である。
図13は第一電機子及び回転子及び第二電機子の周方向断面を図12に示したC−C’に沿って示す図である。図13により回転子の磁極構成及び励磁部による磁束の流れを説明する。回転子の第一表面磁極部は一様な磁性体基板を略周方向磁化を持つ永久磁石121,122によってほぼ等間隔で区分されて形成されると共に互いに異極に磁化された島状突極118,磁性体突極11bを周方向に交互に有する。周方向に隣り合う永久磁石121,122は互いに磁化方向を反転して配置され,永久磁石121,122内の矢印はそれらの磁化方向を示す。第二表面磁極部は一様な磁性体基板を略周方向磁化を持つ永久磁石137,138によってほぼ等間隔で区分されて形成されると共に互いに異極に磁化された島状突極119,磁性体突極11bを周方向に交互に有する。周方向に隣り合う永久磁石137,138は互いに磁化方向を反転して配置され,永久磁石137,138内の矢印はそれらの磁化方向を示す。
第一表面磁極部,第二表面磁極部に於いて,磁性体突極11bは一様な磁性体として繋がっており,島状突極118,119は軸方向に並び,島状突極118,119間には非磁性体11aが配置されている。互いに磁化方向が異なる永久磁石121と永久磁石137間,互いに磁化方向が異なる永久磁石122と永久磁石138間を非磁性体11aは磁気的に短絡し難くするので永久磁石からの磁束は専ら電機子側に流れ,島状突極118,119は共に軸と平行の右方向に磁化され,磁性体突極11bは軸と平行の左方向に磁化されている。
第一電機子の電機子コイル116に於いて,U相,V相,W相の電機子コイルをそれぞれ電機子コイル131,132,133とし,第二電機子の電機子コイル11fに於いてU’相,V’相,W’相の電機子コイルをそれぞれ電機子コイル134,135,136として示されている。U相の電機子コイル131が島状突極118に正対する時にはU’相の電機子コイル134は磁性体突極11bと正対するよう互いに偏倚して配置され,電流が流された時にU相の電機子コイル131とU’相の電機子コイル134とは互いに逆方向の磁束を誘起するよう直列に接続されている。V相の電機子コイル132とV’相の電機子コイル135,W相の電機子コイル133とW’相の電機子コイル136もそれぞれ同様に配置されて接続され,全体として3相に結線されている。
点線139は永久磁石121,122,137,138からの磁束を代表して示している。同図に於いて,磁束139がU相,V相,W相の電機子コイル131,132,133を鎖交する方向と,U’相,V’相,W’相の電機子コイル134,135,136を鎖交する方向とは互いに逆方向である事が示されている。したがって,磁束139による誘起電圧は3相の誘起電圧として正しく合成され,島状突極118,119,磁性体突極11bを介して流れる磁束量にアンバランスがあっても3相の電圧出力には現れない。
図13において,励磁部からの磁束を番号13aで示すように島状突極118,119には非磁性体11aにより阻害されて流れず,専ら磁性体突極11bを介して電機子側に流れる。その方向を円環状磁気ヨーク11eから円環状磁気ヨーク115に磁束13aが流れるよう供給すると,磁束13aはW相の電機子コイル133,V相の電機子コイル132,U’相の電機子コイル134と鎖交し,その方向は磁束139の方向と同じであるので励磁部が電機子コイルと鎖交する磁束量を永久磁石121,122,137,138のみの場合より増大させる状態となる。磁束13aの流れる方向を図13とは逆方向にした場合は励磁部が電機子コイルと鎖交する磁束量を永久磁石121,122,137,138のみの場合より減少させる状態となる。
励磁部からの磁束13aは専ら磁性体突極11bを介して電機子側に流れ,各電機子コイルに誘起される電圧は一様ではない。しかし,上記の説明のように第一電機子磁極群,第二電機子磁極群の電機子コイルは互いに周方向に偏倚して配置され,第一電機子磁極群,第二電機子磁極群に於いて同じタイミングで駆動電流が供給される同一相に属する電機子コイル同士は一方が島状突極118或いは島状突極119に対向する時に,他方が磁性体突極11bに対向するよう配置され,電流が流された時にそれぞれ逆方向の磁束を生じるよう直列に接続されて駆動トルク変動,発電電圧波形歪みが抑制される。
図11に示されるように界磁磁石領域11g,11kは軸方向の長さが径方向に変わり,同一の磁石要素が長さを変えて並列に接続された状態である。励磁コイル11mに磁化電流が供給されると,界磁磁石領域11g,11kに接する円環状磁気ヨーク11eと界磁極117間の磁気ポテンシャル差(起磁力)はほぼ同じとして各磁石要素内では磁気ポテンシャル差を軸方向長さで除した値に相当する磁界強度の磁界が加えられる。
したがって,軸方向に短い磁石要素が磁化されやすく,軸方向に長い磁石要素は磁化され難い。励磁コイル11mに供給する磁化電流により界磁磁石領域11g,11kを一括して励磁すると,磁束は磁界強度が大となる軸方向に短い側である界磁磁石の内周領域に磁束が集中し,磁界強度が抗磁力より大となる領域が磁化される。励磁コイル11mに供給する磁化電流を増やすと磁化される界磁磁石の領域は外周側に広がる。
上記説明のように界磁磁石領域11g,11kは円環状磁気ヨーク11eと界磁極117間に磁化容易さの異なる磁石要素が並列接続された構成である。励磁コイル11mに加えられる磁化電流の大きさにより磁化される領域の広さを変え,さらに磁化電流の極性により磁化される方向が変えられる。図11に示したように右方向の磁化を有する界磁磁石領域11k,左方向の磁化を有する界磁磁石領域11gが共存し,界磁磁石領域11g,11kの互いの領域の磁極面積の大きさを変える事により電機子側に流れる磁束量が変わる。また,界磁磁石領域11g,11kの一方を消磁状態とする状態も可能である。
図13を用いて説明したように円環状磁気ヨーク11eから円環状磁気ヨーク115の方向に磁束が流される場合が電機子コイルと鎖交する磁束量を永久磁石121,122,137,138のみの場合より増大させる状態となる。したがって,軸と平行の左方向の磁化である界磁磁石領域11gが第一磁化に,その逆方向の磁化である界磁磁石領域11kが第二磁化に相当する。
図14は図11に示した界磁磁石近傍の縦断面図の上半分を示した図であり,界磁磁石領域11g,11kの磁化状態変更のステップを説明する。励磁コイル11mに供給された磁化電流が界磁磁石内に加える磁界強度より小の抗磁力を持つ界磁磁石要素は全て同じ方向に磁化されるので界磁磁石の磁化状態変更は以下のように実施される。図14(a)は,図11に示した界磁磁石と同じ磁化状態を示す。
第一磁化である界磁磁石領域11gの磁化領域を減じると第二磁化である界磁磁石領域11kの磁化領域が拡大される。界磁磁石領域11kは界磁磁石領域11gより軸方向の長さが短いので図14(a)の状態から第一磁化である界磁磁石領域11gの磁化領域を減じるには界磁磁石領域11kの領域を増すよう磁化する振幅及び極性の磁化電流を励磁コイル11mに加える。すなわち,第二磁化の磁極面積増大分に相当する領域分を界磁磁石領域11kに加えた領域を第二磁化の方向に磁化する振幅及び極性の磁化電流を励磁コイル11mに加える。図14(b)の界磁磁石領域11k内の斜線部分141は界磁磁石領域11kの増大分(界磁磁石領域11gの減少分)を示す。
図14(a)の状態から第一磁化である界磁磁石領域11gの磁化領域を増すには,界磁磁石の軸方向長さの最も短い領域に於いて界磁磁石領域11gの増大させる磁極面積に相当する領域を第一磁化の方向に磁化する振幅及び極性の磁化電流を励磁コイル11mに加える。図14(c)の斜線部分142は第一磁化の増加分を示す。図14(c)の状態に於いて,第一磁化の磁極面積は界磁磁石領域11gの磁極面積と斜線部142の磁極面積との和になる。
本実施例に於いて,界磁磁石の磁化状態は連続的に変える事が出来るが,磁化状態の変更を間歇的に行う場合に界磁磁石の磁化状態は実質的に離散的に変えられる事になる。本実施例ではさらに界磁磁石の磁化状態を変更させない程度の磁束調整電流を励磁コイル11mに供給して磁束を発生させ,界磁磁石及び永久磁石121,122,137,138による磁束に重畳させて電機子を流れる磁束量を制御する。図5に於いて,制御信号56は切換スイッチ58,磁化制御回路5a,磁束調整回路59を制御し,界磁磁石の磁化状態を変更させる場合には切換スイッチ58により磁化制御回路5aを接続して励磁コイル11mに磁化状態変更の為の磁化電流を供給する。電機子を流れる磁束量の微調整を行う場合には切換スイッチ58により磁束調整回路59を接続して励磁コイル11mに磁束調整電流を供給して磁束を発生させる。磁束調整電流は界磁磁石の磁化状態を非可逆的に変更させない程度の大きさであり,磁束量の調整方向に応じて極性が変えられる。
電機子を流れる磁束量はこのように励磁コイル11mに供給する磁化電流の振幅及び極性を変えて界磁磁石領域11g,11kの磁極表面積を変える事で制御される。電機子を流れる磁束量と励磁コイル11mに供給する磁化電流との関係は設計段階でマップデータとして設定する。しかし,回転電機の量産段階では部材の寸法が公差範囲内でバラツキ,磁性体の磁気特性のバラツキも存在して電機子を流れる磁束量の精密な制御が困難になる場合がある。そのような場合には回転電機を組み立て後に回転電機個々に電機子を流れる磁束量と励磁コイル11mに供給する磁化電流との関係を検査し,前記マップデータを修正する。
さらに磁性体の特性は温度による影響を受けやすく,経時変化による影響も懸念される場合には運転中に加えられる磁化電流とその結果としての界磁磁石の磁化状態を監視し,回転電機の運転中に前記マップデータを修正する情報を学習的に取得する事も出来る。電機子を流れる磁束量を直接に把握する事は難しいが,電機子コイル116,11fに現れる誘起電圧を参照して電機子を流れる磁束量を推定できる。
電機子コイル116,11fに現れる誘起電圧の振幅は電機子コイル116,11fと鎖交する磁束量及び回転速度にほぼ比例する。界磁磁石領域11gの磁極表面積を増やすよう励磁コイル11mに磁化電流を加えた結果として誘起電圧の振幅の変化量が目標値より小の場合は同一条件に於ける磁化電流の振幅を大に,誘起電圧の振幅の変化量が目標値より大の場合は同一条件に於ける磁化電流の振幅を小にするよう磁化電流に係わるパラメータを修正する。
以上,図11から図14に示した回転電機に於いて,界磁磁石領域11g,11kの磁極表面積を変える事で電機子に流れる磁束量を制御できることを説明した。本実施例は電機子を流れる磁束量を制御して出力を最適化するシステムであり,図5を用いて回転電機システムとしての制御を説明する。
回転電機が電動機として用いられる場合に於いて,磁束量制御を行って回転力を最適に制御する。但し,電機子を流れる磁束量を増やす極性の磁束調整電流を正としている。制御装置55は出力53である回転速度が所定の値より大となり電機子に流れる磁束量を小とする時には磁束調整回路59により励磁コイル11mに供給する磁束調整電流を減じて電機子に流れる磁束量を小とし,磁束調整電流が予め定めた値より小である場合には第二磁化の磁極面積を増す方向の磁化電流が磁化制御回路5aから励磁コイル11mに供給されて第一磁化の磁極面積を減じると共に第二磁化の磁極面積を増して電機子を流れる磁束量を小とする。例えば,図14(a)の状態に於いて第二磁化の磁極面積を増すには,第二磁化の磁極面積増大分に相当する領域分(図14(b)の斜線部分141)を界磁磁石領域11kに加えた領域を第二磁化の方向に磁化する振幅及び極性の磁化電流を磁化制御回路5aから励磁コイル76に供給する。
出力53である回転速度が所定の値より小となり電機子に流れる磁束量を大とする時には磁束調整回路59により励磁コイル11mに供給する磁束調整電流を増して電機子に流れる磁束量を大とし,磁束調整電流が予め定めた値より大である場合には第一磁化の磁極面積を増す方向の磁化電流を磁化制御回路5aから励磁コイル11mに供給して第一磁化の磁極面積を増すと共に第二磁化の磁極面積を減じて電機子を流れる磁束量を大とする。例えば,図14(a)の状態に於いて第一磁化の磁極面積を増すには,第一磁化の磁極面積増加分に相当する領域分(図14(c)の斜線部分142)を第一磁化の方向に磁化する振幅及び極性の磁化電流を磁化制御回路5aから励磁コイル76に供給する。
回転電機が発電機として用いられる場合において,磁束量制御を行って発電電圧を所定の電圧となるよう制御する定電圧発電システムを説明する。但し,電機子を流れる磁束量を増やす極性の磁束調整電流を正としている。制御装置55は出力53である発電電圧が所定の値より大となり電機子に流れる磁束量を小とする時には磁束調整回路59により励磁コイル11mに供給する磁束調整電流を減じて電機子に流れる磁束量を小とし,磁束調整電流が予め定めた値より小である場合には第二磁化の磁極面積を増す方向の磁化電流が磁化制御回路5aから励磁コイル11mに供給されて第一磁化の磁極面積を減じると共に第二磁化の磁極面積を増して電機子を流れる磁束量を小とする。例えば,図14(a)の状態に於いて第二磁化の磁極面積を増すには,第二磁化の磁極面積増大分に相当する領域分(図14(b)の斜線部分141)を界磁磁石領域11kに加えた領域を第二磁化の方向に磁化する振幅及び極性の磁化電流を磁化制御回路5aから励磁コイル76に供給する。
制御装置55は出力53である発電電圧が所定の値より小となり電機子に流れる磁束量を大とする時には磁束調整回路59により励磁コイル11mに供給する磁束調整電流を増して電機子に流れる磁束量を大とし,磁束調整電流が予め定めた値より大である場合には第一磁化の磁極面積を増す方向の磁化電流を磁化制御回路5aから励磁コイル11mに供給して第一磁化の磁極面積を増すと共に第二磁化の磁極面積を減じて電機子を流れる磁束量を大とする。例えば,図14(a)の状態に於いて第一磁化の磁極面積を増すには,第一磁化の磁極面積増加分に相当する領域分(図14(c)の斜線部分142)を第一磁化の方向に磁化する振幅及び極性の磁化電流を磁化制御回路5aから励磁コイル76に供給する。
本実施例では非磁性体11aを島状突極118,119間に配置したが,非磁性体11aの替わりに永久磁石を配置して電機子を流れる磁束量を増大させる構成は可能であり,更に島状突極118,119を軸方向に磁化を有する永久磁石で置き換える事も可能である。更に本実施例で界磁磁石の軸方向長さが径方向に連続的に変わる構成であるが,周方向に変わる構成,或いは軸方向長さが離散的に異なる複数の界磁磁石要素を配置する構成の何れも可能である。
また,本実施例に於いて,第一電機子磁極群,第二電機子磁極群をそれぞれ異なる電機子として構成したが,左右の電機子内にそれぞれ第一電機子磁極群,第二電機子磁極群を共に配置する構成も可能である。また本実施例では,磁性体歯114,11dに電機子コイル116,11fを巻回しているが,磁性体歯114,11dを持たずに電機子コイル116,11fを円環状磁気ヨーク115,11e表面に配置する構成も可能である。磁性体歯114,11dを有する構成はエネルギー効率に優れ,リラクタンストルクの利用が容易である。磁性体歯114,11dを持たない構成はコギングトルクの発生が無く,振動騒音の面で利点がある。本発明は何れの構成にも適用可能であり,回転電機仕様に応じて構成を選択する。
本発明による回転電機システムの第五実施例を図15,16,17を用いて説明する。第五実施例は,第四実施例に於いて電機子は磁性体歯を持たず,励磁部を電流励磁とした回転電機システムに相当する。
図15はアキシャルギャップ・ダブルステータ構造の回転電機に本発明を適用した縦断面図を示している。図11に示した第四実施例と回転子構成はほぼ同じであるが,島状突極118,119間には永久磁石152が配置され,磁性体突極154,156間には永久磁石152より軸方向の厚みが小さい永久磁石155が配置されている。永久磁石152,155内の矢印は磁化方向を示している。永久磁石152は島状突極118,119間の離隔部材であると共に島状突極118,119を磁化し,永久磁石155は磁性体突極154,156間の離隔部材であると共に磁性体突極154,156を磁化している。
左端の電機子は円環状磁気ヨーク115の軸方向端面に電機子コイル151が配置され,右端の電機子は円環状磁気ヨーク11eの軸方向端面に電機子コイル153が配置されている。励磁部は磁性体で構成されたハウジング159,ハウジング159の内周面に配置された励磁コイル157,励磁磁路の磁気抵抗調整の為に配置された非磁性体158で構成され,磁束を円環状磁気ヨーク115,11eを介して供給する構成である。非磁性体158は熱伝導性の良いアルミブロックで構成しているが,他に熱伝導性が良く,比抵抗の大きいレジンブロックを使用しても良い。
図16(a)は左端の電機子を左から見て透視した平面図を示している。第一電機子磁極群の電機子コイルと第二電機子磁極群の電機子コイルとが周方向の位置を変えて円環状磁気ヨーク115に配置されている。第一電機子磁極群の電機子コイルU相,V相,W相の電機子コイル,第二電機子磁極群のU’相,V’相,W’相の電機子コイルが周方向に順次繰り返して配置されている。本実施例では6極の回転子磁極に対向して18個の電機子コイルが配置されている。U相の電機子コイルが島状突極118と対向する時にU’相の電機子コイルは磁性体突極154と対向するよう配置され,電流が流れた時にU相とU’相の電機子コイル同士はそれぞれ逆方向の磁束を発生するよう直列に接続されている。他の,V相とV’相の電機子コイル,W相とW’相の電機子コイルもそれぞれ同様に配置されて接続され,全体として3相に結線されている。第二電機子の平面図は示されていないが第一電機子と全く同じ構成である。
図16(b)は回転子を第一電機子側から見た平面図を示し,図12(b)と全く同じである。本実施例の回転子は島状突極118,119間に永久磁石152を配置し,磁性体突極154,156間に永久磁石155を配置した以外は第四実施例の回転子とほぼ同じ構成であり,平面図は同じであるので更なる説明は省略する。
図17は第一電機子及び回転子及び第二電機子の周方向断面を図16に示したD−D’に沿って示す図である。図17により回転子の磁極構成及び励磁部による磁束の流れを説明する。回転子の第一表面磁極部,第二表面磁極部の構成は図13に示した第四実施例の構成とほぼ同じであり,永久磁石152,永久磁石155を配置した点のみが異なっている。図17に於いて,第一電機子の電機子コイル151はU相,V相,W相,U’相,V’相,W’相の電機子コイルをそれぞれ電機子コイル171,172,173,174,175,176とし,周方向に円環状磁気ヨーク115上に順次繰り返して配置されている。第二電機子の電機子コイル153も同じ構成であり,各相の電機子コイルには同じ番号が付されている。
U相の電機子コイル171が島状突極118,119に正対する時にはU’相の電機子コイル174は磁性体突極154,156と正対するよう配置され,電流が流された時にU相の電機子コイル171とU’相の電機子コイル174とは互いに逆方向の磁束を誘起するよう直列に接続されている。V相の電機子コイル172とV’相の電機子コイル175,W相の電機子コイル173とW’相の電機子コイル176もそれぞれ同様に配置されて接続され,全体として3相に結線されている。
点線177は永久磁石121,122,137,138,152,155からの磁束を代表して示している。同図に於いて,磁束177がU相,V相,W相の電機子コイル171,172,173を鎖交する方向と,U’相,V’相,W’相の電機子コイル174,175,176を鎖交する方向とは互いに逆方向である事が示されている。したがって,磁束177による誘起電圧は3相の誘起電圧として正しく合成され,島状突極118,119,磁性体突極154,156を介して流れる磁束量にアンバランスがあっても3相の電圧出力には現れない。
励磁部から磁束を円環状磁気ヨーク115,11e間に流した場合,永久磁石152は永久磁石155より厚みが大であるので励磁部からの磁束は島状突極118,119には永久磁石152により阻害されて流れず,専ら磁性体突極154,156を介して流れる。一般に磁路の途中に永久磁石が存在する場合,永久磁石の飽和磁束量は一定であり,永久磁石の比透磁率は空隙に近いので,永久磁石の厚みが大である場合には外部からの磁束に対して永久磁石を双方向の磁束の離隔部材と出来る。本実施例で電機子に近い永久磁石121,122,137,138,152,155は抗磁力が大であるネオジウム磁石(NdFeB)で構成され,励磁部からの磁束は永久磁石121,122,137,138,152,155の磁化状態に影響を及ぼすほどには強くない。また,永久磁石155の厚みを永久磁石152の厚みより小に設定したので励磁部からの磁束は永久磁石155を通過し,永久磁石152を通過し難い。
図17において,励磁部からの磁束を番号178で示すように島状突極118,119には永久磁石152により阻害されて流れず,専ら磁性体突極154,156を介して電機子側に流れる。その方向を円環状磁気ヨーク11eから円環状磁気ヨーク115に励磁磁束が流れるよう供給すると,磁束178はU’相,V’相,W’相の電機子コイル174,175,176と鎖交し,その方向は磁束177の方向と同じであるので励磁部が電機子コイルと鎖交する磁束量を永久磁石121,122,137,138,152,155のみの場合より増大させる状態となる。磁束178の流れる方向を図17とは逆方向にした場合は励磁部が電機子コイルと鎖交する磁束量を永久磁石121,122,137,138,152,155のみの場合より減少させる状態となる。
励磁部からの磁束178は専ら磁性体突極154,156を介して電機子側に流れ,各電機子コイルに誘起される電圧は一様ではない。しかし,上記の説明のように第一電機子磁極群,第二電機子磁極群の電機子コイルは周方向に配置され,第一電機子磁極群,第二電機子磁極群に於いて同じタイミングで駆動電流が供給される同一相に属する電機子コイル同士は一方が島状突極118,119に対向する時に,他方が磁性体突極154,156に対向するよう配置され,電流が流された時にそれぞれ逆方向の磁束を生じるよう直列に接続されて駆動トルク変動或いは発電電圧波形歪みが抑制される。
励磁部の主要部は図15に示されるよう磁性体で構成されたハウジング159,ハウジング159の内周面に配置された励磁コイル157,励磁磁路の磁気抵抗調整の為に配置された非磁性体158で構成され,円環状磁気ヨーク115及び円環状磁気ヨーク11eと間に励磁コイル157の誘起する磁束を供給する構成である。励磁コイル157により誘起された磁束はハウジング159から円環状磁気ヨーク11e,磁性体突極156,154,円環状磁気ヨーク115で構成される磁路を流れる。
本実施例に於いて,軸方向には主として三つの磁路が存在して並列に接続されている。円環状磁気ヨーク115,島状突極118,永久磁石152,島状突極119,円環状磁気ヨーク11eで構成される第一磁路と,円環状磁気ヨーク115,磁性体突極154,永久磁石155,磁性体突極156,円環状磁気ヨーク11eで構成される第二磁路と,円環状磁気ヨーク115,ハウジング159,円環状磁気ヨーク11eで構成される第三磁路とである。永久磁石121,122,137,138からの磁束は図17に示されるように円環状磁気ヨーク115,円環状磁気ヨーク11eを介して小さな磁路で環流するが,永久磁石152,155からの磁束は第三磁路に流れる懸念が残る。永久磁石152,155からの磁束が第三磁路に流れて短絡しないように円環状磁気ヨーク11e,ハウジング159間に非磁性体158を配置し,非磁性体158の厚みにより第三磁路の磁気抵抗は大に設定されている。
本実施例は電機子に磁性体歯を持たないので電機子コイル151,153が誘起する磁束は軸方向に流れる成分が多く,第三磁路を介して流れる可能性もあるが,上記のように第三磁路の磁気抵抗を大にする事で第一磁路と第二磁路に集中させる事が出来る。
本実施例は電機子に磁性体歯を持たないので回転子の何れの位置に於いても永久磁石121,122,137,138,152,155と繋がる磁路の磁気抵抗変動は小さく,コギングトルクの発生は抑えられる。また,励磁部に界磁磁石を有さないので電機子コイルと鎖交する磁束量を変える時には励磁コイルに電流を要してエネルギー効率を下げる可能性があるが,励磁部の構成をシンプルとしてコストの面で利点がある。
本実施例では第三磁路の磁気抵抗を大に設定する為に非磁性体158を配置したが,非磁性体158に替えてほぼ同じ厚みのバイアス用永久磁石を配置する事も可能である。永久磁石の比透磁率は空隙とほぼ同じであるので第三磁路の磁気抵抗の設定は同じとしてバイアス磁石により任意の方向の磁束を励磁磁束の固定部分として供給できる。
また,本実施例ではハウジング159を磁性体で構成して励磁磁路の一部とし,励磁コイル157をハウジング159内周面に配置したので励磁コイル157の放熱は容易である。また,電機子コイル151,153は空芯としたので第三磁路の磁気抵抗は大に設定する為に非磁性体158の厚みを大に設定している。電機子コイル151,153を磁性体歯に巻回し,さらに島状突極,磁性体突極内の永久磁石152,155を非磁性体とした場合には,電機子コイル151,153の誘起する磁束,永久磁石121,122,137,138からの磁束は局所的に分布するので第三磁路を介して流れる可能性は小さくなり,非磁性体158の厚みを小に出来る。本発明は上記何れの構成にも適用可能であり,回転電機仕様に応じて構成を選択する。
本発明による回転電機システムの第六実施例を図18から図20を用いて説明する。第六実施例は,第二実施例に於いて島状突極内の非磁性体68,6dに替えて永久磁石である副界磁磁石を配置し,電機子コイルに供給する電流により副界磁磁石の磁化状態を変える回転電機システムである。
図18は第二実施例の図8に対応して第一回転子及び電機子及び第二回転子の周方向断面を示す図である。図8に示した第二実施例の電機子及び回転子の周方向断面とほぼ同じであるが,回転子に非磁性体68,6dに替えて副界磁磁石181,182が配置されている点が異なる。副界磁磁石181,182は永久磁石71,72,74,75より抗磁力と磁化方向の厚みの積が小に設定され,副界磁磁石181,182内の矢印は磁化方向を示す。番号183は永久磁石71,72,74,75と副界磁磁石181,182の磁気的な結合を調整する為に配置した非磁性体を示す。本実施例は島状突極内の非磁性体68,6dに替えて副界磁磁石181,182を配置した点が異なるのみであるので第二実施例と異なる点に集中して説明する。
図18から図20を用いて副界磁磁石の磁化状態変更の動作原理を説明する。最初に図18により副界磁磁石181,182を磁化する為に電機子コイルから誘起される磁束の流れを説明する。同図に於いて電機子コイル66は第一電機子磁極群に含まれるU相,V相,W相の各電機子コイルは番号81,82,83を付され,第二電機子磁極群に含まれるU’相,V’相,W’相の各電機子コイルは番号84,85,86を付されている。
同図に於いて,島状突極69,6eには電機子コイル81,82が巻回されている磁性体歯が対向し,磁性体突極6a,6fには電機子コイル84,85が巻回されている磁性体歯が対向している。電機子コイル81と電機子コイル84は互いに逆方向の磁束を誘起するよう接続され,電機子コイル82と電機子コイル85は互いに逆方向の磁束を誘起するよう接続されているので点線184で代表される磁束が副界磁磁石181,182,永久磁石71,72,74,75を通って流れる。
図20は電機子コイル81−86と駆動回路との結線状態の主要部を示している。電機子コイル81と電機子コイル84は互いに逆方向の磁束を誘起するよう直列に接続されて一方は中性点201に接続され,他方はスイッチ素子203及び204に接続されている。電機子コイル82と電機子コイル85は互いに逆方向の磁束を誘起するよう直列に接続されて一方は中性点201に接続され,他方はスイッチ素子205及び206に接続されている。電機子コイル83と電機子コイル86は互いに逆方向の磁束を誘起するよう直列に接続されて一方は中性点201に接続され,他方はスイッチ素子207及び208に接続されている。さらに中性点201はスイッチ素子209及び20aに接続されている。番号202は電池を示す。上記スイッチ素子をオンオフ制御する制御部は図示されていない。
回転電機の通常の動作時には中性点201に繋がるスイッチ素子209及び20aはオフとされ,回転子の位置に応じて各電機子コイルには3相の駆動電流が供給されて回転子は回転駆動される。図18に示したように副界磁磁石181,182の磁化状態を変更する為に島状突極69,6eと対向する電機子コイルに磁化電流を供給する場合には図示していない回転子の位置センサ出力により選定された電機子コイルに繋がるスイッチ素子と共にスイッチ素子209及び20aのオンオフ制御を行う。
図18に示した磁束184を誘起するよう電機子コイル81,82,84,85に磁化電流20b,20cを供給するにはスイッチ素子203及び205及び20aをオンとする。磁束184の流れを逆方向とするにはスイッチ素子204及び206及び209をオンとして磁化電流20d,20eを電機子コイル81,82,84,85に流す。磁化電流を流す為に通常より更に高い電圧を必要とする際には電池202の電圧を昇圧する装置を用いる事も出来る。
副界磁磁石181,182は共に軸と平行に右或いは左方向に磁化される。副界磁磁石181,182が軸と平行に右方向に磁化されている場合は図18に示すように永久磁石71,72,74,75及び副界磁磁石181,182が共に島状突極69,6eを軸と平行に右方向に磁化し,副界磁磁石181,182が島状突極69,6eから電機子側に流れる磁束量を強める場合を示している。その場合に永久磁石71,72,74,75及び副界磁磁石181,182から流れる磁束はほぼ点線184に沿う。
副界磁磁石181,182が軸と平行に左方向に磁化されている場合は図19に示すように永久磁石71,72,74,75及び副界磁磁石181,182が島状突極69,6eを互いに逆方向に磁化する状態であり,永久磁石71,72,74,75及び副界磁磁石181,182からの磁束は点線191で代表させて示すように閉磁路を構成して電機子側に流れる磁束量は減少される。永久磁石71,72,74,75及び副界磁磁石181,182から流れ出る磁束量をそれぞれの磁気特性,磁極面積等を設定し,島状突極69,6eから電機子側に流れる磁束量の最大値,最小値を設定できる。
本実施例は第二実施例とほぼ同じ構成であり,島状突極69,6e内の非磁性体68,6dに替えて副界磁磁石181,182を配置した点が異なるのみである。島状突極69,6eの機能,励磁部の動作原理等は第二実施例において説明されているので更なる説明は省略する。
第一実施例から第五実施例まで島状突極から電機子側に流れる磁束量は一定とし,磁性体突極を流れる磁束量を励磁部により制御するので電機子側に流れる磁束量の最小値には限界が存在した。本実施例は島状突極から電機子側に流れる磁束量を変えて電機子側に流れる磁束量の制御範囲を拡大出来る。
本発明による回転電機システムの第七実施例を図21を用いて説明する。第七実施例は,アウターロータ構成で複数の電機子及び回転子を持ち,励磁部により一括して軸方向に流れる磁束量を変えて電機子コイルと鎖交する磁束量を制御する回転電機システムである。図21は第二実施例の回転電機に第四実施例の回転子を軸方向に並べ,第一実施例の励磁部により磁束量制御を行う回転電機の縦断面図を示している。
本実施例では第一回転子214,電気子215,第三回転子216,電気子217,第二回転子218が軸方向に並んで構成されている。電気子215,電気子217の構成は第二実施例の電気子と同じ構成であり,第一回転子214,第二回転子218は第二実施例に於いて電機子の左,右にそれぞれ対向する第一,第二回転子と同じ構成である。第三回転子216は第四実施例に於ける回転子と同じ構成であり,ロータハウジング212に固定されている。番号211は固定軸を,番号212はロータハウジングを示し,ロータハウジング212は固定軸211にベアリング213を介して回動可能に支持されている。
上記構成に於いて,第一回転子214,第三回転子216,第二回転子218それぞれの島状突極同士は電機子を挟んで軸方向に並ぶと共に軸と平行の同じ方向に磁化されている。さらに電気子215,電気子217それぞれの磁性体歯同士は回転子216を介して軸方向に並ぶように構成されている。したがって,磁性体突極及び磁性体歯は軸方向の磁路を形成し,回転子内の永久磁石からの磁束,励磁部からの磁束が軸方向に通るよう構成されている。これらの回転子の磁極構成及び電機子の電機子コイル構成等は第二実施例及び第四実施例で説明されているので更なる説明は省略する。
励磁部は第一実施例と同じ構成であり,界磁極1kが左端に配置された第一回転子214の磁性体基板と繋がる磁気コア219と微小間隙を介して対向し,界磁極1mは右端に配置された第二回転子218の磁性体基板と繋がる磁気コア21aと微小間隙を介して対向している。界磁極1k,1m間には円筒状の第一界磁磁石1p,第二界磁磁石1nが配置され,励磁コイル1qが第一界磁磁石1p,第二界磁磁石1nを直列に繋ぐ励磁磁路に励磁磁束を発生させるよう配置されている。番号1rは導体層を示す。
励磁部からの磁束は左端に配置された第一回転子214の磁性体基板,右端に配置された第二回転子218の磁性体基板間を流れて電気子215,電気子217に於ける電機子コイルと鎖交する。本実施例で電機子及び回転子の数は異なるが,励磁部の構成は第一実施例と同じであり,電機子及び回転子周辺に於ける磁束の流れ,さらに励磁部の動作原理等の動作原理は同じであるので説明は省略する。また,本実施例と同じ構成で励磁部を界磁磁石を持たない電流励磁とする構成も可能である。
本発明の第八実施例による回転電機システムを図22を用いて説明する。第八実施例は第一実施例の回転電機システムをハイブリッドカーの発電機兼電動機システムとして用いた回転電機システムである。同図に於いて,番号221は第一実施例で示した回転電機を示し,回転電機221はハイブリッドカーのエンジン222と回転力を伝達するよう結合された回転軸229を持ち,回転軸229の回転力はトランスミッション223を介して駆動軸22aに伝えられる。制御装置224は上位制御装置からの指令22bを受け,駆動回路225を介して回転電機221を電動機として駆動し,磁束量制御回路226を介して電機子に流入する磁束量を制御する。更に制御装置224は上位制御装置からの指令22bを受け,電機子コイル16,1dの引き出し線22cに現れる発電電力を整流回路227を介して整流し,バッテリー228を充電する構成としている。
低回転速度域で磁石トルクを強化する必要がある場合は第一磁化の磁石数を増す方向の磁化電流を磁化制御回路5aにより励磁コイル1qに供給して第一磁化の磁石数を増すと共に第二磁化の磁石数を減じて電機子を流れる磁束量を大とする。高回転速度域で弱め界磁とする場合には第二磁化の磁石数を増す方向の磁化電流を磁化制御回路5aにより励磁コイル1qに供給して第一磁化の磁石数を減じると共に第二磁化の磁石数を増して電機子を流れる磁束量を小とする。
エンジン222の回転力のみでハイブリッドカーを駆動する時は,指令22bにより電機子コイル16,1dの引き出し線22cに現れる発電電力を整流回路227を介して直流に変え,バッテリー228を充電させる。その場合に制御装置224は発電電圧がバッテリー228を充電する最適な電圧より大である場合は磁束量制御回路226を介して磁束調整回路59により励磁コイル1qに供給する磁束調整電流を減じて電機子に流れる磁束量を小とし,磁束調整電流が予め定めた値より小となる場合には第二磁化の磁石数を増す方向の磁化電流を磁化制御回路5aにより励磁コイル1qに供給して第一磁化の磁石数を減じると共に第二磁化の磁石数を増して電機子を流れる磁束量を小とする。
制御装置224は発電電圧がバッテリー228を充電する最適な電圧より小である場合は磁束量制御回路226を介して磁束調整回路59により励磁コイル1qに供給する磁束調整電流を増して電機子に流れる磁束量を大とし,磁束調整電流が予め定めた値より大となる場合には第一磁化の磁石数を増す方向の磁化電流を磁化制御回路5aにより励磁コイル1qに供給して第一磁化の磁石数を増すと共に第二磁化の磁石数を減じて電機子を流れる磁束量を大とする。
バッテリー228に充電する場合に回転電機システムを定電圧発電機システムとする事で発電電圧を変換するコンバータは不要である。また,更にバッテリー228が電圧の種類の異なる複数種のバッテリーで構成される場合でも切り替え回路を付け加えてそれぞれのバッテリーに最適の発電電圧に制御する事で高価なコンバータを不要に出来る。
本実施例はまたハイブリッドカーの制動時に於けるエネルギー回収システムとしても有効に機能する。指令22bを通じて回生制動の指示を受けると,制御装置224は磁束量制御回路226を介して第一磁化の磁石数を増す方向の磁化電流を磁化制御回路5aにより励磁コイル1qに供給して第一磁化の磁石数を増すと共に第二磁化の磁石数を減じて電機子を流れる磁束量を大とし,発電電力でバッテリー228に充電させる。電機子コイル16,1dと鎖交する磁束量は増えるので取り出せる電力は大きく,電気二重層コンデンサ他の蓄電システムに一時的に蓄えて制動力の確保とエネルギー回収を大にする。回転電機221は駆動用電動機として用いられる体格であるので回生制動用の発電機として十分な制動力を発生できる。
本実施例はハイブリッドカーの発電機兼電動機として用いた回転電機システムであるが,電気自動車に於ける回転電機システムとする事も当然に可能である。その場合には上記実施例に於いてハイブリッドカーのエンジン222を取り除き,本発明による回転電機システムのみで電気自動車を駆動し,制動時に於けるエネルギー回収システムを構成する。
以上,本発明の回転電機システムについて,実施例を挙げて説明した。これらの実施例は本発明の趣旨,目的を実現する例を示したのであって本発明の範囲を限定するわけでは無い。例えば上記実施例に於ける回転子の磁極構成,電機子の構成,励磁部の構成等はそれぞれ組み合わせを変えて本発明の趣旨を実現する回転電機装置を構成できる事は勿論である。すなわち,第一実施例,第二実施例,第四実施例,第六実施例,第七実施例の励磁部は界磁磁石を有してその磁化状態を変更したが,第三実施例,第五実施例の励磁部のように電流励磁構成とする事は可能であり,第三実施例,第五実施例を界磁磁石を有する励磁部で置き換えて構成する事も可能である。