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JP4445529B2 - ダンパー機構 - Google Patents

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JP4445529B2 JP2007184715A JP2007184715A JP4445529B2 JP 4445529 B2 JP4445529 B2 JP 4445529B2 JP 2007184715 A JP2007184715 A JP 2007184715A JP 2007184715 A JP2007184715 A JP 2007184715A JP 4445529 B2 JP4445529 B2 JP 4445529B2
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Description

本発明は、ダンパー機構、特に、動力伝達系において捩り振動を減衰するためのダンパー機構に関する。
車両に用いられるクラッチディスク組立体は、エンジンからトランスミッションへトルクを伝達および遮断するクラッチ機能と、フライホイールからの捩り振動を減衰および吸収するダンパー機能と、を有している。一般に車両の振動には、アイドル時異音(ガラ音)、走行時異音(加速・減速ラトル,こもり音)およびティップイン・ティップアウト(低周波振動)がある。ダンパー機能により、これらの異音や振動は取り除かれる。
アイドル時異音とは、信号待ち等でシフトをニュートラルに入れ、クラッチペダルを放したときにトランスミッションから発生する「ガラガラ」と聞こえる音である。この異音が生じる原因は、エンジンアイドリング回転付近ではエンジントルクが低く、エンジンでの爆発時のトルク変動が大きいことにある。このときにトランスミッションのインプットギアとカウンターギアとが歯打ち現象を起こしている。
ティップイン・ティップアウト(低周波振動)とは、アクセルペダルを急に踏んだり放したりしたときに生じる車体の前後の大きな振れである。駆動伝達系の剛性が低いと、タイヤに伝達されたトルクが逆にタイヤ側から車体側に伝わり、その揺り返しとしてタイヤに過大トルクが発生し、その結果、車体を過渡的に前後に大きく振らす前後振動となる。
アイドリング時異音に対しては、クラッチディスク組立体の捩り特性においてゼロトルク付近が問題となり、そこでの捩り剛性は低い方が良い。一方、ティップイン・ティップアウトの前後振動に対しては、クラッチディスク組立体の捩り特性をできるだけソリッドにすることが必要である。
以上の問題を解決するために、2種類のばね部材を用いることにより2段特性を実現したクラッチディスク組立体が提供されている。そこでは、捩り特性における1段目(低捩り角度領域)における捩り剛性およびヒステリシストルクを低く抑えているために、アイドリング時の異音防止効果がある。また、捩り特性における2段目(高捩り角度領域)では捩り剛性およびヒステリシストルクを高く設定しているため、ティップイン・ティップアウトの前後振動を十分に減衰できる。
さらに、例えば、エンジンの燃焼変動に起因する微小捩り振動が入力されたときに、2段目領域において高ヒステリシストルクの発生を抑制することで、微小捩り振動を効果的に吸収するダンパー機構も知られている。
この種のダンパー機構では、高捩り剛性ばね部材が圧縮された状態で、高捩り剛性ばね部材と高ヒステリシストルクを発生させる大摩擦機構との間に所定角度の回転方向隙間が確保されている(例えば、特許文献1を参照)。
特開2002−266943号公報
しかし、車両の特性によっては、この回転方向隙間が高ヒステリシストルクの本来の効果を阻害する場合もあり、必ずしも回転方向隙間を確保する構成が効果的であるとは言えない。このため、回転方向隙間が確保されたダンパー機構とともに、所望のヒステリシストルクを確実に発生させるために回転方向隙間を意図的になくしたダンパー機構も求められている。
本発明の課題は、所望のヒステリシストルクが確実に発生するダンパー機構を提供することにある。
第1の発明に係るダンパー機構は、第1回転体と、第2回転体と、第3回転体と、第1部材と、第2部材と、第3部材と、少なくとも1つの小コイルスプリングと、複数の第2コイルスプリングと、を備えている。第1回転体は、第1プレート部材と、第1プレート部材に固定され第1プレート部材と軸方向に対向するように配置された第2プレート部材と、を有している。第2回転体は、第1プレート部材および第2プレート部材の軸方向間に配置されており、第1回転体に対して第1角度の範囲内で回転可能に配置されている。第3回転体は第2回転体に対して第2角度の範囲内で回転可能に配置されている。第1プレート部材は、第2回転体に対して回転不能なように第2回転体に装着された部材であって、第1プレート部材および第2回転体の軸方向間に配置された第1部材本体と、第1部材本体から軸方向に延び第2回転体に嵌合する複数の第1突出部と、第1部材本体に固定され第1プレート部材と軸方向に当接する摩擦部材と、を有している。第2部材は、第2回転体と第1部材本体との軸方向間に第1部材本体と軸方向に当接するように配置されており、第1部材に対して回転不能なように第2回転体および第1部材のうち少なくとも一方に装着されている。第3部材は、第1部材と第2部材との軸方向間に配置されており、第3回転体と一体回転可能なように第3回転体に支持されている。第1コイルスプリングは、第1部材および第2部材の軸方向間に収容されており、回転方向に弾性変形可能なように第1部材および第2部材により保持されており、第1部材および第2部材のうち少なくとも一方と第3部材とを回転方向に弾性的に連結する。第2コイルスプリングは、第1コイルスプリングよりも剛性が高い部材であって第1回転体および第2回転体を回転方向に弾性的に連結する。第2回転体は、第2コイルスプリングが収容される複数の矩形の開口部と、各開口部の縁に形成されており、第1突出部が嵌め込まれる複数の第1凹部と、を有している。第1凹部は、開口部の半径方向内側の一方の隅に形成されている。回転軸に垂直な面における第1突出部の断面形状は、略半円である。回転軸に垂直な面における第1凹部の断面形状は、第1突出部と相補的な略半円である。
このダンパー機構では、第1回転体が第2回転体に対して回転すると、第1部材の摩擦部材が第1回転体と摺動する。このとき、第1および第2部材が第2回転体に対して回転不能であるため、第1回転体と第2回転体との相対回転角度が小さい場合であっても、第1および第2回転体の間でヒステリシストルクが発生する。これにより、このダンパー機構では所望のヒステリシストルクを確実に発生させることができる。
第2の発明に係るダンパー機構は、第1の発明に係るダンパー機構において、第2部材が複数の第1突出部により半径方向および回転方向に支持されている。
第3の発明に係るダンパー機構は、第1または第2の発明に係るダンパー機構において、第2部材が第2回転体および第1部材本体により軸方向に狭持されている。
第4の発明に係るダンパー機構は、第1から第3のいずれかの発明に係るダンパー機構において、第2部材が、第1部材本体と第2回転体との軸方向間に挟み込まれ第1コイルスプリングを保持する第2部材本体と、第2部材本体の外周部に形成され第1突出部が嵌め込まれる複数の第2凹部と、を有している。回転軸に垂直な面における第2凹部の断面形状は、第1突出部と相補的な略半円である。
第5の発明に係るダンパー機構は、第1から第4のいずれかの発明に係るダンパー機構において、第2部材が、第2部材本体から軸方向に延び第2回転体に嵌め込まれる複数の第2突出部をさらに有している。第2回転体は、各開口部の縁に形成され第2突出部が嵌め込まれる複数の第3凹部と、を有している。
第6の発明に係るダンパー機構は、第5の発明に係るダンパー機構において、第3凹部が、開口部の半径方向内側の他方の隅に配置されている。回転軸に垂直な面における第2突出部の断面形状は、略半円である。回転軸に垂直な面における第3凹部の断面形状は、第2突出部と相補的な略半円である。
第7の発明に係るダンパー機構は、第1から第6のいずれかの発明に係るダンパー機構において、第1部材は、第1部材本体から軸方向に延び第1突出部よりも短い複数の第3突出部を有している。第2部材は、第2部材本体の外周部に形成され第3突出部が嵌め込まれる複数の第4凹部を有している。
第8の発明に係るダンパー機構は、第7の発明に係るダンパー機構において、回転軸に垂直な面における第3突出部の断面形状は、略半円である。回転軸に垂直な面における第4凹部の断面形状は、第3突出部と相補的な略半円である。
第9の発明に係るダンパー機構は、第1から第8のいずれかの発明に係るダンパー機構において、第3部材は、第1コイルスプリングの端部の中心軸周辺を回転方向に押圧可能である。
第10の発明に係るダンパー機構は、第1から第9のいずれかの発明に係るダンパー機構において、第1部材および第2部材は、樹脂製である。
本発明に係るダンパー機構では、上記の構成を有しているため、所望のヒステリシストルクを確実に発生させることができる。
以下、図面に基づいて、本発明に係るダンパー機構の実施形態について説明する。ここでは、クラッチディスク組立体を例に説明する。
〔1.クラッチディスク組立体の全体構成〕

図1または図2を用いて、本発明に係るダンパー機構4が搭載されたクラッチディスク組立体1について説明する。図1にクラッチディスク組立体1の縦断面概略図、図2にクラッチディスク組立体1の平面概略図を示す。図1のO−O線は、クラッチディスク組立体1の回転軸線である。また、図1の左側にエンジンおよびフライホイール7が配置されており、図1の右側にトランスミッション(図示せず)が配置されている。さらに、図2のR1側がクラッチディスク組立体1の回転方向駆動側(正側)であり、R2側がその反対側(負側)である。
クラッチディスク組立体1は、車両の動力伝達系を構成するクラッチ装置に用いられる機構であり、クラッチ機能とダンパー機能とを有している。クラッチ機能とは、フライホイール7に対してプレッシャプレート(図示せず)によりクラッチディスク組立体1が押圧および押圧解除されることによってトルクの伝達および遮断をする機能である。ダンパー機能とは、コイルスプリング等によりフライホイール7側から入力される捩り振動を減衰および吸収する機能である。
図1および図2に示すように、クラッチディスク組立体1は主に、摩擦係合によりフライホイール7からトルクが入力されるクラッチディスク23と、クラッチディスク23から入力される捩り振動を減衰および吸収するダンパー機構4と、から構成されている。
クラッチディスク23は、フライホイール7に押し付けられる部分であり、主に、環状の1対の摩擦フェーシング25と、摩擦フェーシング25が固定されるクッショニングプレート24と、から構成されている。クッショニングプレート24は、環状部24aと、環状部24aの外周側に設けられ回転方向に並ぶ8つのクッショニング部24bと、環状部24aから半径方向内側に延びる4つの固定部24cと、から構成されている。各クッショニング部24bの両面には、摩擦フェーシング25がリベット26により固定されている。固定部24cはダンパー機構4の外周部に固定されている。
〔2.ダンパー機構〕
<2.1:ダンパー機構の概要> ダンパー機構4は、エンジンから伝達される捩り振動を効果的に減衰および吸収するために、図17に示す捩り特性を有している。具体的には、ダンパー機構4の捩り特性は、正側および負側において4段特性である。捩り特性の正側および負側では、1段目および2段目領域(捩り角度0〜θ1p、0〜θ1n)が低捩り剛性および低ヒステリシストルクの領域であり、3段目および4段目領域(捩り角度θ1p〜θ1p+θ3p、θ1n〜θ1n+θ3n)が高捩り剛性および高ヒステリシストルクの領域である。これらの捩り特性により、このダンパー機構4はアイドル時異音、ティップインおよびティップアウト(低周波振動)などの捩り振動を効果的に減衰および吸収させることができる。
<2.2:ダンパー機構の構成>

以上の捩り特性を実現するために、このダンパー機構4は以下のような構成を備えている。ここで、図1〜図16を用いてダンパー機構4を構成する各部材について詳細に説明する。図3〜図5はダンパー機構4の平面概略図である。図3はトランスミッション側(図1の右側)から見た平面概略図であり、図4はエンジン側(図1の左側)から見た平面概略図である。図5は図4の部分平面図である。図6〜図8はダンパー機構4の部分断面図である。図6および図7は図1(図2のA−A断面図)の上半分および下半分に対応している。図9はダンパー機構4を構成する一部の構成部材の概略斜視図である。図10はダンパー機構4を構成する一部の構成部材の分解斜視図である。便宜上、図10では後述するウェーブスプリング95が省略されている。図11はトランスミッション側から見た第3摩擦ワッシャ60の平面図である。図12はエンジン側から見たブッシュ70の平面図である。図13はトランスミッション側から見たブッシュ70の平面図である。図14はエンジン側から見た出力プレート90の平面図である。図15はウェーブスプリング95のトランスミッション側から見た平面図である。図16はダンパー機構4の機械回路図である。図16に示す機械回路図は、ダンパー機構4における各部材の回転方向の関係が模式的に描かれた図である。したがって、図16では一体回転する部材は同一の部材として取り扱われている。図16の左右方向が回転軸O−O回りの回転方向に対応している。
図1および図16に示すように、ダンパー機構4は主に、第1ダンパー4aと、第1ダンパー4aに対して直列に配置された第2ダンパー4bと、ヒステリシストルクを発生させる摩擦発生機構5と、から構成されている。クラッチディスク23は第1ダンパー4aの入力側部材(すなわち入力回転体2)に固定されている。
(2.2.1:第1ダンパー)
第1ダンパー4aは、3段目および4段目領域における高捩り剛性(図17参照)を実現しており、第1回転体としての入力回転体2と、第2回転体としてのハブフランジ6と、4組のコイルスプリングセット8(大コイルスプリング、第3弾性部材、第4弾性部材)と、を有している。
図1および図6〜図8に示すように、入力回転体2は、互いに固定されたクラッチプレート21およびリテーニングプレート22を有している。クラッチプレート21は、環状の第1本体部28aと、回転方向に並んで配置された4つの第1保持部35aと、を有している。リテーニングプレート22は、環状の第2本体部28bと、回転方向に並んで配置された第2保持部35bと、を有している。第1本体部28aおよび第2本体部28bは、4つの連結部31により連結されている。図1に示すように、第1本体部28aの外径L1は、第2本体部28bの外径L2よりも小さい。第2本体部28bの外径L2はハブフランジ6の外径とほぼ同じである。第1保持部35aおよび第2保持部35bの回転方向長さは、コイルスプリングセット8(大コイルスプリング8aおよび小コイルスプリング8b)の自由長とほぼ一致している。このため、入力回転体2およびコイルスプリングセット8は一体で回転する。
連結部31は、第2本体部28bの外周縁から第1本体部28aの外周縁へ軸方向に延びる当接部32と、当接部32の端部から半径方向内側へ延びる固定部33と、を有している(図7参照)。固定部33は、クラッチディスク23の固定部24cとともに、リベット27により第1本体部28aに固定されている。
図1〜図7に示すように、ハブフランジ6は、クラッチプレート21およびリテーニングプレート22の軸方向間に配置されており、コイルスプリングセット8によりクラッチプレート21およびリテーニングプレート22と回転方向に弾性的に連結されている。ハブフランジ6は、環状の本体部29と、本体部29の外周部に形成された開口部としての1対の第1窓孔41および1対の第2窓孔42と、本体部29の外周部に形成された4つの切欠き43と、を有している。1対の第1窓孔41および1対の第2窓孔42は、第1保持部35aおよび第2保持部35bに対応する位置に配置されている。1対の第1窓孔41は半径方向に対向して配置されており、1対の第2窓孔42は半径方向に対向して配置されている。
図3および図17に示すように、第1窓孔41および第2窓孔42には、コイルスプリングセット8が収容されている。第1窓孔41の回転方向長さはコイルスプリングセット8の自由長(保持部35の回転方向長さ)よりも長く設定されており、第2窓孔42の回転方向長さはコイルスプリングセット8の自由長(保持部35の回転方向長さ)とほぼ同じ長さに設定されている。第1窓孔41の円周方向両端には、コイルスプリングセット8の端部と当接可能な第1当接面44が形成されている。第2窓孔42の円周方向両端には、コイルスプリングセット8の端部と当接可能な第2当接面47が形成されている。中立状態において、コイルスプリングセット8の端部は第2当接面47と当接している。一方、中立状態において、コイルスプリングセット8のR1側の端部と第1当接面44との間には隙間角度θ2pが確保されており、コイルスプリングセット8のR2側の端部と第1当接面44との間には隙間角度θ2nが確保されている。これらの構成により、2つのコイルスプリングセット8が並列に圧縮される領域(正側および負側の3段目領域)と4つのコイルスプリングセット8が並列に圧縮される領域(正側および負側の4段目領域)とが実現される(図12)。また、トルクが入力されていない中立状態では、第2窓孔42に収容される2つのコイルスプリングセット8により入力回転体2とハブフランジ6との回転方向の相対位置が決まる。
図3に示すように、ダンパー機構4は、入力回転体2とハブフランジ6との相対回転を一定の範囲内に制限する第2ストッパ10を有している。具体的には、第2ストッパ10は、入力回転体2の連結部31と、ハブフランジ6の第1突出部49および第2突出部57と、により構成されている。ハブフランジ6の本体部29の外周縁には、半径方向外側へ延びる1対の第1突出部49および1対の第2突出部57が形成されている。第1突出部49および第2突出部57は、第1窓孔41および第2窓孔42の外周側に配置されており、回転方向両端にはストッパ面50,51が形成されている。ストッパ面50,51は連結部31と当接可能である。
図3に示す中立状態において、連結部31と第1突出部49および第2突出部57との回転方向間には、隙間が確保されている。連結部31のR1側に形成された隙間に対応する捩り角度は、隙間角度θ3pである。連結部31のR2側に形成された隙間に対応する捩り角度は、隙間角度θ3nである。これにより、隙間角度θ3pおよびθ3nの範囲内において、入力回転体2とスプラインハブ3との相対回転を許容する第2ストッパ10が実現されている。図17に示すように、隙間角度θ3pおよびθ3nにより高捩り剛性の範囲が決まる。
(2.2.2:第2ダンパー)
第2ダンパー4bは、1段目および2段目における低捩り剛性の捩り特性(図17参照)を実現しており、主に、第1部材としての第3摩擦ワッシャ60と、第2部材としてのブッシュ70と、第3部材としての出力プレート90と、2つの第1小コイルスプリング7a(第1弾性部材)と、2つの第2小コイルスプリング7b(第2弾性部材)と、第3回転体としてのスプラインハブ3と、を有している。第3摩擦ワッシャ60およびブッシュ70により第1小コイルスプリング7aおよび第2小コイルスプリング7bは弾性変形可能に保持されている。第1小コイルスプリング7aおよび第2小コイルスプリング7bは、小コイルスプリングの一例である。
第3摩擦ワッシャ60およびブッシュ70は、ハブフランジ6と一体回転するようにハブフランジ6に装着されている。具体的には、第3摩擦ワッシャ60は、第1部材本体としての第3摩擦ワッシャ本体61と、2つの第1収容部64と、2つの第2収容部65と、第2摩擦プレート69と、を有している。軸方向から見た場合、第3摩擦ワッシャ60およびブッシュ70は、第1窓孔41および第2窓孔42により囲まれた概ね四角形の部材であり、四角形の4隅がカットされている。
第1収容部64は第1小コイルスプリング7aを保持するための開口である。第2収容部65は第2小コイルスプリング7bを保持するための開口である。第3摩擦ワッシャ本体61は、概ね環状の樹脂製部材であり、エンジン側に第2摩擦プレート69が固定されている。第2摩擦プレート69はクラッチプレート21と軸方向に当接している。
第3摩擦ワッシャ本体61の4隅には、第3摩擦ワッシャ本体61からトランスミッション側へ突出した第3突出部としての4つの第1突起62が形成されている。第1突起62のR1側およびR2側には第1突出部としての第2突起63が2つずつ形成されている。第2突起63は、第3摩擦ワッシャ本体61からトランスミッション側に突出しており、第1突起62よりも長い。第1突起62および第2突起63は第3摩擦ワッシャ本体61と一体で形成されている。第1突起62および第2突起63の断面は半円形状である。
第2突起63の先端部はハブフランジ6に嵌め込まれている。具体的には、ハブフランジ6の第1窓孔41には、第3凹部としての第1切欠部44aと、第1凹部としての2つの第2切欠部44bとが形成されている。第2窓孔42には第3切欠部47aと2つの第4切欠部47bとが形成されている。第1切欠部44a、第2切欠部44b、第3切欠部47aおよび第4切欠部47bは半円形状である。第2突起63の先端部は第2切欠部44bおよび第4切欠部47bに嵌め込まれている。これにより、第3摩擦ワッシャ60とハブフランジ6との相対回転を確実に規制することが可能となる。
ブッシュ70は、概ね環状の樹脂製部材であり、第3摩擦ワッシャ60とハブフランジ6との軸方向間に挟み込まれている。ブッシュ70は、第2部材本体としてのブッシュ本体71と、2つの第1収容部72と、2つの第2収容部73と、を有している。第1収容部72は第1小コイルスプリング7aを保持するための開口である。第2収容部73は第2小コイルスプリング7bを保持するための開口である。
ブッシュ本体71の4隅(第2収容部73の半径方向外側部分)には4つの第1切欠部76aが形成されている。第1切欠部76aのR1側およびR2側には、第2凹部としての第2切欠部76bが2つずつ形成されている。第1切欠部76aは第3摩擦ワッシャ60の第1突起62と相補的な半円形状を有している。第2切欠部76bは第2突起63と相補的な半円形状を有している。第1切欠部76aには第1突起62が嵌め込まれており、第2切欠部76bには第2突起63が嵌め込まれている。より詳細には、第2突起63は第2切欠部76bを軸方向に貫通しており、第2突起63の先端部はハブフランジ6に嵌め込まれている。これにより、ブッシュ70と第3摩擦ワッシャ60との相対回転を確実に規制することが可能となる。
ブッシュ本体71の2つの隅(第1収容部72の半径方向外側部分)にはブッシュ本体71からトランスミッション側に突出する第2突出部としての2対の突起74が形成されている。1対の突起74は第1切欠部76aを挟んでR1側およびR2側に配置されている。突起74はハブフランジ6に形成された第1切欠部44aおよび第3切欠部47aに嵌め込まれている。これにより、ブッシュ70と第3摩擦ワッシャ60との相対回転を確実に規制することが可能となる。
図6〜図8および図13に示すように、ブッシュ70は、エンジン側に窪んだ環状の凹部77を有している。凹部77には、後述するウェーブスプリング95が収容されている。
また、第1収容部72の回転方向両端には、回転方向に円弧状に延びる開口78a、78bが形成されている。開口78a、78bは、後述するウェーブスプリング95の爪部98a、98bがブッシュ70に対して回転方向に移動するための窓である。第1収容部72のR1側には爪部98aに対応する開口78aが配置されており、第1収容部72のR2側には爪部98bに対応する開口78bが配置されている。開口78a、78bには、後述するウェーブスプリング95の爪部98a、98bがそれぞれ挿入されている。
第3摩擦ワッシャ60は、第3摩擦ワッシャ本体61からトランスミッション側へ突出する第1当接部67a、67b、67cおよび67dを半径方向外側部分に有している。ブッシュ70は、ブッシュ本体71からエンジン側へ突出する第2当接部77a、77b、77cおよび77dを半径方向外側部分に有している。軸方向の同じ側から見た場合に、第1当接部67a、67b、67cおよび67dと第2当接部77a、77b、77cおよび77dとは、ほぼ同じ形状であり、軸方向に互いに当接している。第1当接部67a、67b、67c、67dおよび第2当接部77a、77b、77c、77dにより、第3摩擦ワッシャ本体61とブッシュ本体71との軸方向間には、出力プレート90を収容できる空間が形成されている。
出力プレート90は、複数の内周歯91と、2つの第1開口部92と、2つの第2開口部93と、を有している。内周歯91はスプラインハブ3の第2外周歯54bとほぼ隙間がない状態で噛み合っている。このため、第3摩擦ワッシャ本体61およびブッシュ本体71により形成された空間内を、出力プレート90はスプラインハブ3と一体で回転する。
第1開口部92は第1収容部64、72に対応して配置されている。第1開口部92には第1小コイルスプリング7aが収容されている。第2開口部93は第2収容部65、73に対応して配置されている。第2開口部93には第2小コイルスプリング7bが収容されている。第1開口部92の回転方向長さは第1小コイルスプリング7aの自由長とほぼ同じ長さに設定されている。一方、第2開口部93の回転方向長さは第2小コイルスプリング7bの自由長よりも長く設定されている。図5に示すように、中立状態において、第2小コイルスプリング7bのR1側に形成される隙間に対応する捩り角度は、隙間角度θ4pである。第2小コイルスプリング7bのR2側に形成される隙間に対応する捩り角度は、隙間角度θ4nである。これらの構成により、2つの第1小コイルスプリング7aが並列に圧縮される領域(正側および負側の1段目領域)と2つの第2小コイルスプリング7bが並列に圧縮される領域(正側および負側の2段目領域)とが実現される(図17)。
中立状態では、第1開口部92に収容される2つの第1小コイルスプリング7aにより第3摩擦ワッシャ60(ブッシュ70)と出力プレート90との回転方向の相対位置が決まる。すなわち、第1小コイルスプリング7aにより中立状態におけるハブフランジ6とスプラインハブ3との回転方向の相対位置が決まる。
第1小コイルスプリング7aおよび第2小コイルスプリング7bのバネ定数は、コイルスプリングセット8のバネ定数に比べて大幅に小さく設定されている。すなわち、コイルスプリングセット8は第1小コイルスプリング7aおよび第2小コイルスプリング7bよりもはるかに剛性が高い。このため、1段目および2段目領域では、コイルスプリングセット8は圧縮されず、第1小コイルスプリング7aおよび第2小コイルスプリング7bが圧縮される。
スプラインハブ3は、クラッチプレート21およびリテーニングプレート22の内周側に配置されている。スプラインハブ3は、軸方向に延びる筒状のボス52と、ボス52から半径方向外側に延びるフランジ54と、を有している。ボス52の内周部には、トランスミッションの入力シャフト(図示せず)に係合するスプライン孔53が形成されている。
図1〜図7に示すように、フランジ54の外周部には複数の第1外周歯54aおよび第2外周歯54bが形成されている。第1外周歯54aは第2外周歯54bよりも半径方向外側に突出している。ハブフランジ6の内周部には複数の内周歯59が形成されている。第1外周歯54aは所定の隙間を介してハブフランジ6の内周歯59と噛み合っている。具体的には図5に示すように、トルクが入力されていない中立状態では、内周歯59のR1側に形成される隙間に対応する捩り角度は、隙間角度θ1pである。内周歯59のR2側に形成される隙間に対応する捩り角度は、隙間角度θ1nである。これらの構成により、隙間角度θ1pおよびθ1nの範囲内において、ハブフランジ6とスプラインハブ3との相対回転を許容する第1ストッパ9が実現されている。図17に示すように、隙間角度θ1pおよびθ1nにより低捩り剛性の範囲が決まる。
(2.2.3:摩擦発生機構)
ダンパー機構4は、捩り振動をより効果的に減衰および吸収させるために、摩擦抵抗を利用してヒステリシストルクを発生させる摩擦発生機構5をさらに有している。具体的には図6および図7に示すように、摩擦発生機構5は、第1摩擦ワッシャ79と、第2摩擦ワッシャ82と、前述の第3摩擦ワッシャ60と、第4摩擦ワッシャ89と、第2摩擦部材としてのウェーブスプリング95と、を有している。第1摩擦ワッシャ79および第4摩擦ワッシャ89により低ヒステリシストルクが実現されており、第2摩擦ワッシャ82および第3摩擦ワッシャ60により高ヒステリシストルクが実現されている。ウェーブスプリング95により2段目領域の低ヒステリシストルクが実現されている。
図6および図7に示すように、第1摩擦ワッシャ79はフランジ54とリテーニングプレート22との軸方向間に配置されている。第1摩擦ワッシャ79とリテーニングプレート22との間には第1コーンスプリング80が配置されている。第1摩擦ワッシャ79は第1コーンスプリング80によりフランジ54に押し付けられている。これにより、入力回転体2とスプラインハブ3との間で低ヒステリシストルクが発生する。
第4摩擦ワッシャ89はフランジ54とクラッチプレート21との軸方向間に配置されている。第4摩擦ワッシャ89は複数の外周歯89aを有しており、外周歯89aはクラッチプレート21の内周部に形成された複数のスリット21aに嵌め込まれている。このため、第4摩擦ワッシャ89はクラッチプレート21と一体回転する。フランジ54は第1コーンスプリング80により第4摩擦ワッシャ89に押し付けられている。これにより、入力回転体2とスプラインハブ3との間で低ヒステリシストルクが発生する。
第2摩擦ワッシャ82は、第1摩擦ワッシャ79の半径方向外側に一体回転するように配置されている。第2摩擦ワッシャ82および第1摩擦ワッシャ79はリテーニングプレート22と一体回転する。第2摩擦ワッシャ82は本体部29と当接する第1摩擦プレート83を有している。第2摩擦ワッシャ82とクラッチプレート21との間には第2コーンスプリング81が配置されている。第2コーンスプリング81により第2摩擦ワッシャ82の第1摩擦プレート83はハブフランジ6に押し付けられている。これにより、入力回転体2とハブフランジ6との間で高ヒステリシストルクが発生する。
第2コーンスプリング81により第2摩擦ワッシャ82を介してハブフランジ6がクラッチプレート21側へ押されている。このため、ハブフランジ6およびクラッチプレート21の軸方向間に前述の第3摩擦ワッシャ60およびブッシュ70が挟み込まれるとともに、第3摩擦ワッシャ60の第2摩擦プレート69がクラッチプレート21に押し付けられる。これにより、入力回転体2とハブフランジ6との間で高ヒステリシストルクが発生する。
以上の構成により、捩り特性の全域において発生する低ヒステリシストルクと、3段目および4段目領域において発生する高ヒステリシストルクと、を実現できる。
図6〜図8に示すように、ウェーブスプリング95は、2段目領域におけるヒステリシストルクを発生させるための部材である。具体的には、ウェーブスプリング95は、軸方向に弾性変形可能な環状の弾性体であり、軸方向に圧縮された状態でハブフランジ6とブッシュ70との間に配置されている。このため、ウェーブスプリング95は、ハブフランジ6およびブッシュ70に当接しており、ハブフランジ6およびブッシュ70に対して回転すると摩擦抵抗を発生する。
図15に示すように、ウェーブスプリング95は、環状の本体部96と、本体部96から半径方向外側へ延びる2対の爪部98a、98bと、を有している。爪部98a、98bの先端部は、軸方向に折り曲げられており、第2小コイルスプリング7bの両端部と回転方向に当接している。言い換えると、爪部98a、98bの回転方向間に第2小コイルスプリング7bが配置されている。爪部98a、98b間の回転方向の距離は、第2小コイルスプリング7bの自由長とほぼ一致している。これにより、第2小コイルスプリング7bによりウェーブスプリング95の回転方向の位置決めが行われるとともに、第2小コイルスプリング7bおよびウェーブスプリング95は一体で回転可能となっている。
また、本体部96の外周部には、2対の突出部99a、99bが形成されている。1対の突出部99aおよび1対の突出部99bは、回転軸を挟んで対向するように配置されている。突出部99a、99bによりウェーブスプリング95の摺動面積が確保されている。
さらに、本体部96の内周部には、複数の内周歯97が形成されている。内周歯97は、スプラインハブ3の第1外周歯54a同士の回転方向間に配置されており、第1外周歯54aと回転方向に当接可能である。ダンパー機構4の中立状態では、内周歯97のR1側およびR2側には隙間が確保されている。内周歯97のR1側の隙間に対応する捩り角度は、隙間角度θ5pであり、第2外周歯54bのR2側に形成される隙間に対応する捩り角度は、隙間角度θ5nである。ここでは、隙間角度θ5p、θ5nは、隙間角度θ4p、θ4nとほぼ同じ角度に設定されている。隙間角度θ5p、θ5nを確保することで、捩り特性の正側および負側において、1段目領域でウェーブスプリング95によるヒステリシストルクは発生しないが、2段目領域でウェーブスプリング95によるヒステリシストルクが得られる。
〔3.動作〕
図1〜図12を用いてクラッチディスク組立体1のダンパー機構4の動作および捩り特性について説明する。ここでは、捩り特性の正側を例に説明し、負側の動作についての説明は省略する。
<3.1:1段目および2段目領域>
捩り特性の正側では、図16に示す中立状態からスプラインハブ3に対して入力回転体2がR1側(駆動側)に捩られる。このとき、コイルスプリングセット8の剛性よりも第1小コイルスプリング7aおよび第2小コイルスプリング7bの剛性の方が大幅に小さいため、コイルスプリングセット8はほとんど圧縮されず、入力回転体2およびハブフランジ6は一体回転する。また、第3摩擦ワッシャ60およびブッシュ70がハブフランジ6と一体回転するため、第3摩擦ワッシャ60およびブッシュ70はスプラインハブ3に対して回転する。この結果、第1小コイルスプリング7aが第3摩擦ワッシャ60(ブッシュ70)と出力プレート90との間で圧縮される。入力回転体2およびハブフランジ6がスプラインハブ3に対してさらに回転すると、第1摩擦ワッシャ79がスプラインハブ3のフランジ54と摺動する。以上より、1段目領域において低捩り剛性および低ヒステリシストルクの捩り特性が得られる。
スプラインハブ3に対して入力回転体2がR1側に捩り角度θ4pだけ相対回転すると、第3摩擦ワッシャ60(ブッシュ70)と出力プレート90との間で第2小コイルスプリング7bの圧縮が開始される。これにより、2段目領域において低捩り剛性および低ヒステリシストルクの捩り特性を実現できる。第2小コイルスプリング7bは第1小コイルスプリング7aに対して並列に作用するため、2段目領域では1段目に比べて若干高い捩り剛性が得られる。
また、隙間角度θ5pが隙間角度θ4pとほぼ同じであるため、スプラインハブ3に対して入力回転体2がR1側に捩り角度θ4pだけ相対回転すると、ウェーブスプリング95の内周歯97とスプラインハブ3の第1外周歯54aとが当接する。スプラインハブ3に対して入力回転体2がさらに回転すると、第1外周歯54aにより内周歯97がR1側へ押され、ハブフランジ6およびブッシュ70に対してウェーブスプリング95が回転する。この結果、ウェーブスプリング95がハブフランジ6およびブッシュ70と摺動し、2段目領域においてヒステリシストルクが発生する。
スプラインハブ3に対する入力回転体2の捩り角度が角度θ1pになると、第1外周歯54aが内周歯59に当接し、第1ストッパ9が作動する。この結果、ハブフランジ6とスプラインハブ3との相対回転が停止する。このため、第1小コイルスプリング7aおよび第2小コイルスプリング7bの圧縮が停止する。また、ウェーブスプリング95によるヒステリシストルクの発生も停止する。
<3.2:3段目および4段目領域>
スプラインハブ3に対して入力回転体2がさらにR1側に回転すると、ハブフランジ6に対して入力回転体2が相対回転し、入力回転体2とハブフランジ6との間で第2窓孔42に収容される2つのコイルスプリングセット8の圧縮が開始される。捩り角度が角度θ1p+θ2pまでは、2つのコイルスプリングセット8が並列に圧縮される。このとき、第2摩擦ワッシャ82の第1摩擦プレート83がハブフランジ6と摺動し、第3摩擦ワッシャ60の第2摩擦プレート69がクラッチプレート21と摺動する。第3摩擦ワッシャ60は第2突起63によりハブフランジ6に対する相対回転が確実に規制されているため、入力回転体2がハブフランジ6に対して回転すると、第2摩擦プレート69がクラッチプレート21と必ず摺動し、入力される捩り角度に関係なく入力回転体2とハブフランジ6との間で高ヒステリシストルクが発生する。以上より、3段目領域において高捩り剛性および高ヒステリシストルクの捩り特性が得られる。
スプラインハブ3に対する入力回転体2の捩り角度が角度θ1p+θ2pになると、4つのコイルスプリングセット8の圧縮が開始される。入力回転体2の捩り角度が角度θ1p+θ3pに達すると、第2ストッパ10が作動し、入力回転体2とスプラインハブ3との相対回転が停止する。以上より、4段目領域において高捩り剛性および高ヒステリシストルクの捩り特性が得られる。
なお、ダンパー機構4が中立状態に戻る過程において、第2小コイルスプリング7bの端部が、ウェーブスプリング95の爪部98aをR2側へ押し、爪部98aを初期位置に導く。このため、ウェーブスプリング95の回転方向の位置は、爪部98a、98bにより初期設定位置に戻る。これにより、ダンパー機構4の捩り動作が繰り返されても、ウェーブスプリング95によるヒステリシストルクが2段目領域において確実に発生する。〔4.効果〕
ダンパー機構4により得られる効果は以下の通りである。
(1)
このダンパー機構4では、入力回転体2がハブフランジ6に対して回転すると、第3摩擦ワッシャ60に固定された第2摩擦プレート69がクラッチプレート21と摺動する。このとき、第3摩擦ワッシャ60およびブッシュ70がハブフランジ6に対して回転するのが確実に規制されているため、入力回転体2とハブフランジ6との相対回転角度が小さい場合であっても、入力回転体2とハブフランジ6との間で必ず高ヒステリシストルクが発生する。これにより、このダンパー機構4では、所望のヒステリシストルクを確実に発生させることができる。
(2)
このダンパー機構4では、第3摩擦ワッシャ60の第2突起63が第2切欠部44bおよび第4切欠部47bに嵌め込まれている。また、第2突起63がブッシュ70の第2切欠部76bに嵌め込まれている。さらに、第1突起62がブッシュ70の第1切欠部76aに嵌め込まれている。これらの構成により、第3摩擦ワッシャ60とハブフランジ6との相対回転、および第3摩擦ワッシャ60とブッシュ70との相対回転、を確実に規制することができる。
また、第3摩擦ワッシャ60の第2突起63に加えて、ブッシュ70の突起74がハブフランジ6の第1切欠部44aおよび第3切欠部47aに嵌め込まれている。これにより、ブッシュ70とハブフランジ6との相対回転を確実に規制することができる。
(3)
このダンパー機構4では、第2突起63が、第1窓孔41の縁に形成された第2切欠部44bおよび第2窓孔42の縁に形成された第4切欠部47bに嵌め込まれている。このため、第2突起63を嵌め込むための孔を第1窓孔41および第2窓孔42の半径方向内側に形成する場合に比べて、第2切欠部44bおよび第4切欠部47bをより半径方向外側へ配置することができる。これにより、回転軸O−Oから第2突起63までの有効半径を大きくすることができ、第2突起63に作用する回転方向の荷重を低減することができる。
(4)
このダンパー機構4では、第1切欠部44a、第2切欠部44b、第3切欠部47a、第4切欠部47b、第1切欠部76aおよび第2切欠部76bの断面形状が概ね半円である。このため、これらの切欠部への応力集中を抑制することができ、ハブフランジ6やブッシュ70の破損を防止できる。
(5)
このダンパー機構4では、第3摩擦ワッシャ60およびブッシュ70が樹脂製である。このため、第1小コイルスプリング7aおよび第2小コイルスプリング7bが第3摩擦ワッシャ60およびブッシュ70と摺動することにより発生するヒステリシストルクを低減でき、1段目および2段目領域のヒステリシストルクの増大を防止できる。
(6)
従来、この種のダンパー機構では、クラッチディスクが固定される1対のプレート部材がフライホイールに近接して配置される。このため、フライホイールにプレート部材が干渉しないように、ダンパー機構の外径を大きくすることができない。すなわち、従来のダンパー機構では設計の自由度が低下する。
しかし、このダンパー機構4では、フライホイール7に近接して配置されたクラッチプレート21の外径L1がリテーニングプレート22の外径L2よりも小さい。このため、クラッチプレート21がフライホイール7と干渉するのを防止できる。これにより、ダンパー機構4の設計の自由度を高めることができる。また、小型のフライホイール7に対してダンパー機構4を適用することができるため、ダンパー機構4の適用範囲を拡大することができる。
(7)
このダンパー機構4では、低捩り剛性の2段目領域においてウェーブスプリング95によりヒステリシストルクが発生する。このため、2段目から3段目にかけて回転方向の抵抗が大きくなり、ダンパー機構4の捩り角度が3段目領域まで達することなく2段目領域の範囲内で抑制されやすくなる。例えば、シフトをニュートラルに入れてクラッチペダルを放している状態で、エンジンでの燃焼変動に起因する捩り振動がダンパー機構4に入力されても、1段目領域を超えて2段目領域まで捩り角度が達したとしても、第1ストッパ9が作動する前に(スプラインハブ3の第1外周歯54aとハブフランジ6の内周歯59とが当接する前に)、捩り振動が減衰される。
このように、ウェーブスプリング95により2段目領域でヒステリシストルクを発生させることで、2段目および3段目領域の境界で第1ストッパ9が作動する音が発生するのを防止でき、捩り振動減衰性能を高めることができる。
(8)
このダンパー機構4では、2段目領域のヒステリシストルクを発生させる部材として、ウェーブスプリング95が採用されている。このため、摩擦部材に加えて弾性体を設ける必要がなく、簡素な構造により2段目領域のヒステリシストルクを実現することができる。
(9)
このダンパー機構4では、第2小コイルスプリング7bの端部と当接することでウェーブスプリング95は第2小コイルスプリング7bと一体回転可能である。より具体的には、ウェーブスプリング95が、本体部96の外周部から延びており第2小コイルスプリング7bの両端部と回転方向に当接可能な爪部98a、98bを有している。第2小コイルスプリング7bは爪部98a、98bの回転方向間に配置されている。このため、ダンパー機構4の中立状態において、ウェーブスプリング95の回転方向の位置を初期設定位置に戻すことができ、ダンパー機構4の捩り動作が繰り返されても、ウェーブスプリング95によるヒステリシストルクが2段目領域において確実に発生する。
(10)
このダンパー機構4では、爪部98a、98bの先端部が軸方向に貫通する円弧状の開口78bをブッシュ70が有しているため、構造の簡素化を図ることができる。
(11)
このダンパー機構4では、ブッシュ70の凹部77にウェーブスプリング95が収容されているため、軸方向の寸法を短縮することができる。
〔5.他の実施形態〕
本発明の具体的な構成は、前述の実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更および修正が可能である。
(1)
前述の実施形態では、ダンパー機構4が搭載されたクラッチディスク組立体1を例に説明しているが、これに限定されない。例えば、このダンパー機構は2マスフライホイールや流体式トルク伝達装置のロックアップ装置などの他の動力伝達装置にも適用可能である。
(2)
また、第1突起62、第2突起63、突起74の配置は前述の実施形態に限定されない。
クラッチディスク組立体の縦断面概略図 クラッチディスク組立体の平面概略図 ダンパー機構の平面概略図 ダンパー機構の平面概略図 ダンパー機構の平面概略図 ダンパー機構の部分断面図 ダンパー機構の部分断面図 ダンパー機構の部分平面図 ダンパー機構を構成する一部の構成部材の概略斜視図 ダンパー機構4を構成する一部の構成部材の分解斜視図 トランスミッション側から見た第3摩擦ワッシャ60の平面図 エンジン側から見たブッシュ70の平面図 トランスミッション側から見たブッシュ70の平面図 エンジン側から見た出力プレート90の平面図 トランスミッション側から見たウェーブスプリング95の平面図 ダンパー機構の機械回路図(中立状態) ダンパー機構の捩り特性線図
1 クラッチディスク組立体
2 入力回転体(第1回転体)
3 スプラインハブ(第3回転体)
4 ダンパー機構
5 摩擦発生機構
6 ハブフランジ(第2回転体)
7a 第1小コイルスプリング(第1コイルスプリング)
7b 第2小コイルスプリング(第1コイルスプリング)
8 コイルスプリングセット(第2コイルスプリング)
9 第1ストッパ
10 第2ストッパ
21 クラッチプレート(第1プレート部材)
22 リテーニングプレート(第2プレート部材)
41 第1窓孔(開口部)
42 第2窓孔(開口部)
44a 第1切欠部
44b 第2切欠部(第1凹部)
47a 第3切欠部(第3凹部)
47b 第4切欠部(第1凹部)
60 第3摩擦ワッシャ(第1部材、保持部材)
61 第3摩擦ワッシャ本体(第1部材本体)
62 第1突起(第3突出部)
63 第2突起(第1突出部)
64 第1収容部
65 第2収容部
69 第2摩擦プレート(第1摩擦部材、摩擦部材
70 ブッシュ(第2部材、保持部材)
71 ブッシュ本体(第2部材本体)
72 第1収容部
73 第2収容部
74 突起(第2突出部)
76a 第1切欠部(第4凹部)
76b 第2切欠部(第2凹部)
90 出力プレート
95 ウェーブスプリング(第2摩擦部材)
96 本体部
97 内周歯
98a、98b 爪部
99a、99b 突出部
L1 クラッチプレート21の外径
L2 リテーニングプレート22の外径
θ1p、θ1n 隙間角度(第2角度)
θ2p、θ2n 隙間角度
θ3p、θ3n 隙間角度(第1角度)
θ4p、θ4n 隙間角度
θ5p、θ5n 隙間角度(第3角度)

Claims (10)

  1. 第1プレート部材(21)と、前記第1プレート部材(21)に固定され前記第1プレート部材(21)と軸方向に対向するように配置された第2プレート部材(22)と、を有する第1回転体(2)と、
    前記第1プレート部材(21)および前記第2プレート部材(22)の軸方向間に配置され前記第1回転体(2)に対して第1角度の範囲内で回転可能に配置された第2回転体(6)と、
    前記第2回転体(6)に対して第2角度の範囲内で回転可能に配置された第3回転体(3)と、
    前記第2回転体(6)に対して回転不能なように前記第2回転体(6)に装着された部材であって、前記第1プレート部材(21)および前記第2回転体(6)の軸方向間に配置された第1部材本体(61)と、前記第1部材本体(61)から軸方向に延び前記第2回転体(6)に嵌合する複数の第1突出部(63)と、前記第1部材本体(61)に固定され前記第1プレート部材(21)と軸方向に当接する摩擦部材(69)と、を有する第1部材(60)と、
    前記第2回転体(6)と前記第1部材本体(61)との軸方向間に前記第1部材本体(61)と軸方向に当接するように配置され、前記第1部材(60)に対して回転不能なように前記第2回転体(6)および第1部材(60)のうち少なくとも一方に装着された第2部材(70)と、
    前記第1部材(60)と前記第2部材(70)との軸方向間に配置され、前記第3回転体(3)と一体回転可能なように前記第3回転体(3)に支持される第3部材(90)と、
    前記第1部材(60)および第2部材(70)の軸方向間に収容され、回転方向に弾性変形可能なように前記第1部材(60)および第2部材(70)により保持され、前記第1部材(60)および第2部材(70)のうち少なくとも一方と前記第3部材(90)とを回転方向に弾性的に連結する少なくとも1つの第1コイルスプリング(7a、7b)と、
    前記第1コイルスプリング(7a、7b)よりも剛性が高い部材であって前記第1回転体(2)および第2回転体(6)を回転方向に弾性的に連結する複数の第2コイルスプリング(8)と、を備え、
    前記第2回転体(6)は、前記第2コイルスプリング(8)が収容される複数の矩形の開口部(41、42)と、各前記開口部(41、42)の縁に形成され前記第1突出部(63)が嵌め込まれる複数の第1凹部(44b、47b)と、を有しており、
    前記第1凹部(44b、47b)は、前記開口部(41、42)の半径方向内側の一方の隅に形成されており、
    回転軸に垂直な面における前記第1突出部(63)の断面形状は、略半円であり、
    回転軸に垂直な面における前記第1凹部(44b、47b)の断面形状は、前記第1突出部(63)と相補的な略半円である、
    ダンパー機構。
  2. 前記第2部材(70)は、前記複数の第1突出部(63)により半径方向および回転方向に支持されている、
    請求項1に記載のダンパー機構。
  3. 前記第2部材(70)は、前記第2回転体(6)および前記第1部材本体(61)により軸方向に狭持されている、
    請求項1または2に記載のダンパー機構。
  4. 前記第2部材(70)は、前記第1部材本体(61)と前記第2回転体(6)との軸方向間に挟み込まれ前記第1コイルスプリング(7a、7b)を保持する第2部材本体(71)と、前記第2部材本体(71)の外周部に形成され前記第1突出部(63)が嵌め込まれる複数の第2凹部(76b)と、を有しており、
    回転軸に垂直な面における前記第2凹部(76b)の断面形状は、前記第1突出部(63)と相補的な略半円である、
    請求項1から3のいずれかに記載のダンパー機構。
  5. 前記第2部材(70)は、前記第2部材本体(71)から軸方向に延び前記第2回転体(6)に嵌め込まれる複数の第2突出部(74)をさらに有しており、
    前記第2回転体(6)は、各前記開口部(41、42)の縁に形成され前記第2突出部(74)が嵌め込まれる複数の第3凹部(47a)と、を有している、
    請求項1から4のいずれかに記載のダンパー機構。
  6. 前記第3凹部(47a)は、前記開口部(41、42)の半径方向内側の他方の隅に配置されており、
    回転軸に垂直な面における前記第2突出部(74)の断面形状は、略半円であり、
    回転軸に垂直な面における前記第3凹部(47a)の断面形状は、前記第2突出部(74)と相補的な略半円である、
    請求項5に記載のダンパー機構。
  7. 前記第1部材(60)は、前記第1部材本体(61)から軸方向に延び前記第1突出部(63)よりも短い複数の第3突出部(62)を有しており、
    前記第2部材(70)は、前記第2部材本体(71)の外周部に形成され前記第3突出部(62)が嵌め込まれる複数の第4凹部(76a)を有している、
    請求項1から6のいずれかに記載のダンパー機構。
  8. 回転軸に垂直な面における前記第3突出部(62)の断面形状は、略半円であり、
    回転軸に垂直な面における前記第4凹部(76a)の断面形状は、前記第3突出部(62)と相補的な略半円である、
    請求項7に記載のダンパー機構。
  9. 前記第3部材(90)は、前記第1コイルスプリング(7a、7b)の端部の中心軸周辺を回転方向に押圧可能である、
    請求項1から8のいずれかに記載のダンパー機構。
  10. 前記第1部材(60)および第2部材(70)は、樹脂製である、
    請求項1から9のいずれかに記載のダンパー機構。
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