JP4441467B2 - 曲げ加工性及び耐応力緩和特性を備えた銅合金 - Google Patents
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Description
先ず、前記各種用途用として、必要強度や導電率、更には、高い曲げ加工性や耐応力緩和特性を満たすための、本発明Cu−Fe−P系合金における化学成分組成を、以下に説明する。
Feは、銅合金中に、Fe−P系などの粒径が200nm以下の微細な晶・析出物粒子として析出して、強度や耐応力緩和特性を向上させるのに必要な元素である。0.01%未満の含有では、微細な晶・析出物粒子が不足するため、これらの効果を有効に発揮させるには、0.01%以上の含有が必要である。但し、1.0%を超えて過剰に含有させると、析出粒子の粗大化を招き、強度だけでなく曲げ加工性や耐応力緩和特性も低下する。したがって、Feの含有量は0.01〜1.0質量%の範囲とする。
Pは、脱酸作用を有する他、FeやMgと粒径が200nm以下の微細な晶・析出物を形成して、銅合金の強度や耐応力緩和特性を向上させるのに必要な元素である。0.01%未満の含有では本発明の微細な晶・析出物粒子が不足するため、耐応力緩和特性向上などの効果を有効に発揮させるには、0.01%以上の含有が必要である。但し、0.4%を超えて過剰に含有させると、析出粒子の粗大化を招き、曲げ加工性や耐応力緩和特性だけでなく、熱間加工性も低下する。したがって、Pの含有量は0.01〜0.4質量%の範囲とする。
Mgは、銅合金中に、Pと粒径が200nm以下の微細な晶・析出物を形成して、強度や耐応力緩和特性を向上させるのに必要な元素である。0.01%未満の含有では本発明の微細な晶・析出物粒子が不足するため、これらの効果を有効に発揮させるには、0.1%以上の含有が必要である。但し、1.0%を超えて過剰に含有させると、析出粒子の粗大化を招き、強度だけでなく、曲げ加工性や耐応力緩和特性も低下する。したがって、Mgの含有量は0.1〜1.0質量%の範囲とする。
銅合金に、更にNi、Coの一種または二種を0.01〜1.0%含有しても良い。Ni、Coは、Feと同様に、銅合金中に、(Ni、Co)−P系あるいは(Ni、Co)−Fe−P系、などの微細な晶・析出物粒子として析出して、強度や耐応力緩和特性を向上させる。これらの効果を有効に発揮させるには0.01%以上の含有が必要である。但し、1.0%を超えて過剰に含有させると、析出粒子の粗大化を招き、強度だけでなく曲げ加工性や耐応力緩和特性も低下する。したがって、選択的に含有させる場合のNi、Coの一種または二種の含有量は0.01〜1.0質量%の範囲とする。
銅合金に、更にZn、Snの一種または二種を含有しても良い。Znは、電子部品の接合に用いる、Snめっきやはんだの耐熱剥離性を改善し、熱剥離を抑制するのに有効な元素である。この様な効果を有効に発揮させるには、0.005%以上含有することが好ましい。しかし、過剰に含有すると却って溶融Snやはんだの濡れ広がり性を劣化させ、また、含有量が多くなると導電率を大きく低下させる。したがって、Znは、耐熱剥離性向上効果と導電率低下作用とを考慮した上で、0.005〜3.0質量%、好ましくは0.005〜1.5質量%の範囲で、選択的に含有させる。
Snは、銅合金中に固溶して強度向上に寄与する。この様な効果を有効に発揮させるには、0.01%以上含有することが好ましい。しかし、過剰に含有するとその効果が飽和し、また、含有量が多くなると導電率を大きく低下させる。したがって、Snは、強度向上効果と導電率低下作用とを考慮した上で、0.01〜5.0質量%、好ましくは0.01〜1.0質量%の範囲で、選択的に含有させる。
その他の元素は基本的に不純物であって、できるだけ少ない方が好ましい。例えば、Al、Cr、Ti、Be、V、Nb、Mo、Wなどの不純物元素は、粗大な晶・析出物が生成し易くなる他、導電率の低下も引き起こし易くなる。従って、総量で0.5質量% 以下の極力少ない含有量にすることが好ましい。この他、銅合金中に微量に含まれているB、C、Na、S、Ca、As、Se、Cd、In、Sb、Pb、Bi、MM(ミッシュメタル)等の元素も、導電率の低下を引き起こし易くなるので、これらの総量で0.1質量% 以下の極力少ない含有量に抑えることが好ましい。
より具体的には、(1)Mn、Ca、Zr、Ag、Cr、Cd、Be、Ti、Co、Ni、Au、Ptの含有量を、これらの元素全体の合計で1.0質量%以下、(2)Hf、Th、Li、Na、K、Sr、Pd、W、S、Si、C、Nb、Al、V、Y、Mo、Pb、In、Ga、Ge、As、Sb、Bi、Te、B、ミッシュメタルの含有量を、これらの元素全体の合計で0.1質量%以下とすることが好ましい。
次ぎに、特に、高い耐応力緩和特性や曲げ加工性を満たすための、本発明銅合金組織における、晶・析出物分布規定を以下に説明する。
銅合金組織における、粒径が200nmを超える粗大な晶・析出物粒子は、晶・析出物粒子の組成によらず、高温環境下での保持中に再結晶を促進して耐応力緩和特性を低下させるほか、変形時の破壊の起点となったり亀裂伝播を助長したりして、曲げ加工性をも劣化させる。したがって、本発明では、銅合金組織における、粒径が200nmを超える粗大な晶・析出物粒子の体積分率は、晶・析出物粒子の組成によらず、5%以下と、極力抑制する。
その一方で、粒径が200nm以下の晶・析出物の内、MgとPを含む晶・析出物粒子(Mg−P粒子)の平均粒径を5nm以上、50nm以下とする。これら微細なMg−P粒子は、転位の移動や結晶粒成長を抑制して、曲げ加工性及び耐応力緩和特性を向上させる効果が高い。
また、粒径が200nm以下の晶・析出物の内、FeとPを主に含む晶・析出物粒子(Fe−P粒子)は、平均粒径が1〜20nmの範囲で、転位の移動や消滅を抑制するピニング力が粗大な晶・析出物粒子よりも格段に大きい。このため、曲げ加工性及び耐応力緩和特性を更に向上させるためには、前記晶・析出物粒子の内、FeとPを含む晶・析出物粒子の平均粒径が1nm以上、20nm以下であることが好ましい。
次に、銅合金板組織を上記本発明規定の組織とするための、好ましい製造条件について以下に説明する。本発明銅合金は基本的に銅合金板であり、これを幅方向にスリットした条や、これら板条をコイル化したものが本発明銅合金の範囲に含まれる。上記本発明銅合金規定の組織とするための、冷間圧延と焼鈍工程における好ましい条件を除き、通常の製造工程自体を大きく変えることは不要で、常法と同じ工程で製造できる。
即ち、前記した通り、本発明における微細な晶・析出物粒子は、焼鈍によって新たに母相から微細に析出した化合物相である。このような微細な晶・析出物粒子を析出させるために、上記銅合金の製造工程において、熱延後の冷間圧延に続いて焼鈍を行なう。
銅合金板試料の硬さ測定は、マイクロビッカース硬度計にて、0.5kg の荷重を加えて4箇所行い、硬さはそれらの平均値とした。
銅合金板試料の導電率は、ミーリングにより、幅10mm×長さ300mm の短冊状の試験片を加工し、ダブルブリッジ式抵抗測定装置により電気抵抗を測定して、平均断面積法により算出した。
銅合金板試料の曲げ試験は、日本伸銅協会技術標準に従って行った。板材を幅10mm、長さ30mmに切出し、曲げ半径0.05mmでGood Way(曲げ軸が圧延方向に直角)曲げを行い、曲げ部における割れの有無を50倍の光学顕微鏡で目視観察した。割れの無いものを○、小荒れが生じたものを△、割れが生じたものを×と評価した。
日本電子材料工業会標準規格EMAS−3003に準じて、各試験片を150℃×1000時間の条件で加熱保持後の試験片の耐応力緩和特性を評価した。即ち、前記加熱保持後の試験片を片持ち張りし、初期応力として0.2%耐力の80%を負荷した際の応力を測定し、加熱保持前の試験片の応力との差の、加熱保持前の試験片の応力に対する比率(緩和率:%)を求めた。この試験は、端子材などに用いたときに、高温、長時間、一定歪みのもとでの応力変化を調べるものであり、緩和率が小さい合金ほど耐応力緩和特性が良好と見なされる。ここでは圧延方向と平行の耐応力緩和特性を評価した。
Claims (7)
- 質量%で、Fe:0.01〜1.0%、P:0.01〜0.4%、Mg:0.1〜1.0%を各々含有し、残部銅および不可避的不純物からなる銅合金であって、粒径が200nmを超える晶・析出物粒子の体積分率が5%以下であり、粒径が200nm以下の晶・析出物粒子の内、MgとPを含む晶・析出物粒子の平均粒径が5nm以上、50nm以下であることを特徴とする曲げ加工性及び耐応力緩和特性を備えた銅合金。
- 前記粒径が200nm以下の晶・析出物粒子の内、FeとPを含む晶・析出物粒子の平均粒径が1nm以上、20nm以下である請求項1に記載の銅合金。
- 前記銅合金が、更に、Ni、Coの一種または二種を0.01〜1.0%含有する請求項1または2に記載の銅合金。
- 前記銅合金が、更に、Zn:0.005〜3.0%を含有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の銅合金。
- 前記銅合金が、更に、Sn:0.01〜5.0%を含有する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の銅合金。
- 前記銅合金板が、Mn、Ca、Zr、Ag、Cr、Cd、Be、Ti、Co、Ni、Au、Ptの含有量を、これらの元素の合計で1.0質量%以下とした請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電気電子部品用銅合金板。
- 前記銅合金板が、Hf、Th、Li、Na、K、Sr、Pd、W、S、Si、C、Nb、Al、V、Y、Mo、Pb、In、Ga、Ge、As、Sb、Bi、Te、B、ミッシュメタルの含有量を、これらの元素の合計で0.1質量%以下とした請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電気電子部品用銅合金板。
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