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JP4378093B2 - スクリーン - Google Patents

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JP4378093B2
JP4378093B2 JP2003060855A JP2003060855A JP4378093B2 JP 4378093 B2 JP4378093 B2 JP 4378093B2 JP 2003060855 A JP2003060855 A JP 2003060855A JP 2003060855 A JP2003060855 A JP 2003060855A JP 4378093 B2 JP4378093 B2 JP 4378093B2
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  • Overhead Projectors And Projection Screens (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スクリーンに関するものである。詳しくは反射光でも透過光でも映像視認の機能を発揮し、スクリーン背面の風景が視認できるスクリーンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プレゼンテーションや宣伝の一手法として、スライドプロジェクター、オーバーヘッドプロジェクター、液晶プロジェクター等の投影装置により、映像をスクリーンに投影することが一般に行われている。この際、スクリーン上の映像は投影された面から反射光として見るのが一般的であり、映像を見ることができる範囲は一面に限られる。
【0003】
一方、透過光を利用するものとして、例えば特許文献1にホログラムディスプレイ装置が提案されている。しかしホログラムディスプレイ装置の場合、投影角度を特定の範囲にコントロールする必要があり、また視野角も限られるという不都合があった。さらに装置が高価であるという問題もあった。
【特許文献1】
特開2000−155374号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、スライドプロジェクター、オーバーヘッドプロジェクター、液晶プロジェクター等の投影装置より、映像をスクリーンに投影する際に、映像投影面側からと同時にスクリーンの背面側からも映像が明瞭に見える、すなわち反射光でも透過光でも映像視認の機能を発揮し、さらにスクリーン背面の風景が視認できる半透明なスクリーンを提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、反射光でも透過光でも映像視認の機能を発揮するスクリーンとして、特定の光学特性および構造を有するフィルム加工物を見出した。
すなわち本発明は、有機フィラーか無機微細粉末の少なくとも一方と熱可塑性樹脂とを含有する延伸フィルム層(A)を有するスクリーンであって、前記フィルム層(A)における前記有機フィラーおよび前記無機微細粉末の総含有量が5〜25重量%であり、前記フィルム層(A)の全光線透過率が30〜80%であり、前記フィルム層(A)の全光線反射率が20〜70%であり、前記フィルム層(A)の光沢度が60%以下であり、かつ前記フィルム層(A)の厚さ方向に貫通する開口径0.1〜8mmの貫通孔が、孔と孔との間の最短距離0.1〜5mmの間隔で該フィルム層(A)の平面方向に連続的に分布していることを特徴とするスクリーンを提供する。
貫通孔形成前のフィルム層(A)の不透明度は10〜75%であることが好ましい。貫通孔形成前のフィルム層(A)の厚さは20〜500μmであることが好ましく、空孔率は0.1〜25%であることが好ましい。フィルム層(A)は多層構造であることが好ましく、少なくとも一軸に延伸された層を含む多層構造であることがより好ましい。
フィルム層(A)の少なくとも片面にはコート層が設けられていることが好ましい。またフィルム層(A)の片面には、熱可塑性樹脂を含有し全光線透過率が88%以上であるフィルム層(B)が設けられていることが好ましい。フィルム層(B)の厚さは10〜1000μmであることが好ましい。
フィルム層(A)の少なくとも片面、またはフィルム層(B)には、粘着剤層または繰り返し貼り付け・剥離の可能な再剥離層が設けられていることが好ましい。再剥離層は吸着層、弱粘着層または静電気吸着層であることが好ましく、粘着剤層または再剥離層の表面には剥離可能な剥離物が積層されていることが好ましい。
フィルム層(A)及び/またはフィルム層(B)及び/またはコート層上には印刷が施されていることが好ましい。本発明に使用する熱可塑性樹脂はポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂を含むことが好ましく、フィルム層(A)の主要な熱可塑性樹脂はポリオレフィン系樹脂であることが好ましく、特にポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のスクリーンについて詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」は、その前後に記載される数値が下限値及び上限値を意味し、これらの下限値及び上限値も範囲内に含まれる。
本発明のスクリーンは、施工の場所や目的、施工方法によって様々な形態を取ることが可能である。以下の説明では、便宜上、タペストリー用スクリーン(垂れ幕のような形状を有しており、中空または壁面へ吊り下げた状態で映像投影に使用できるもの)やショウウィンドウ用スクリーン(少なくとも片面に粘着剤層または再剥離層を設けた形状で、ガラス面等に直接貼着して映像投影に使用できるもの)を念頭において行うが、これらの形態は本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができるものである。
【0007】
本発明のスクリーンを構成するフィルム層(A)の、貫通孔形成前の全光線透過率は30〜80%、好ましくは35〜80%、より好ましくは40〜80%であり、全光線反射率は20〜70%、好ましくは20〜65%、より好ましくは20〜60%である。全光線透過率が30%未満もしくは全光線反射率が70%より高い場合は、スクリーン背面側から見た時に映像が暗くて見にくい。また、全光線透過率が80%より高いかもしくは全光線反射率が20%未満である場合は、スクリーン映像投影面側からの映像が暗くて見にくい。
なお、本明細書でいう全光線透過率及び全光線反射率は、JIS−Z8722記載の方法に準拠して、波長400nm〜700nmの範囲で測定した各波長の透過率及び反射率の平均値を意味する。
【0008】
フィルム層(A)には、厚さ方向に貫通する開口径が0.1〜8mm、好ましくは0.2〜7mmの貫通孔を、孔と孔の間の最短距離が0.1〜5mm、好ましくは0.2〜4mmの間隔で、平面方向に連続的に分布している。
このような貫通孔を設けることによって、スクリーン背面の風景をも視認できるスクリーンとすることができる。
【0009】
本発明でいう開口径は、以下の意味で用いられている。
・形状が真円の場合は直径を意味する。
・形状が楕円の場合は短径および長径を意味する。
・形状が三角形の場合は最短および最長の垂線の長さを意味する。
・形状が台形を除く四角形以上の多角形の場合は最短および最長の対角線の長さを意味する。
・形状が台形の場合は高さ(垂線の長さ)を意味する。
・形状が不定形の場合は円相当径か孔周上の任意の1点と1点を結ぶ直線のうち最短および最長の長さのものを意味する。
前記の「短径および長径」はその両方が0.1〜8mmの範囲内にあることが必要とされる。前記の「最短および最長」の長さも同様である。
また、本発明でいう孔と孔の間の最短距離とは、フィルム層(A)に形成した貫通孔の開口縁と、その貫通孔の最も近くに形成した貫通孔の開口縁との最短距離を意味する。
【0010】
開口径が0.1mm未満もしくは孔と孔の間の最短距離が5mmを超えると、スクリーン背面の風景が見にくくなり、発明の効果が得られない。一方、開口径が8mmを超えるかもしくは孔と孔の間の最短距離が0.1mmに満たないと、投影映像が見にくくなる。
投影面上の開口径が上記の範囲を逸脱しない限り、フィルム層(A)を貫通する貫通孔形状が厚さ方向で変化しても差し支えない。また、貫通孔の開口形状はすべて同一であっても、異なっていてもよい。開口形状のうち好ましいのは、真円、正多角形であり、最も好ましいのは真円である。また、孔と孔の間の最短距離は、上記の範囲を逸脱しない限りすべての貫通孔について同一またはほぼ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0011】
フィルム層(A)の貫通孔形成前の不透明度は10〜75%であることが好ましく、20〜70%であることがより好ましく、30〜70%であることが特に好ましい。不透明度が10%未満であると映像投影面側からの映像が見にくくなり、75%より高いと背面側からの映像が見にくくなる傾向がある。
本明細書でいう不透明度は、JIS−P8138に記載の方法に準拠し、試料背面に黒色板を当てて測定した値を、同試料背面に白色板を当てて測定した値で徐した数値を百分率で表示したものである。
【0012】
フィルム層(A)の貫通孔形成前の光沢度は60%以下であり、50%以下であることが好ましい。光沢度が60%より高いと、スクリーン表面がハレーションを起こし、映像が見にくくなる傾向がある。
本明細書でいう光沢度は、JIS−P8142に記載の方法により測定したものである。
【0013】
フィルム層(A)の貫通孔形成前の厚さは、20〜500μmであることが好ましく、さらには30〜350μmであることが好ましい。厚さが20μm未満ではスクリーンそのものの機械的強度が弱くなり、大きなスクリーンを形成することが困難になる傾向があり、500μmより厚いとスクリーン背面側より見える映像が不明瞭になる傾向がある。
本発明のスクリーン全体の厚さは、上記と同様の理由により20〜2000μmであることが好ましく、30〜1000μmであることがより好ましく、50〜800μmであることが特に好ましい。
本明細書でいう厚さは、JIS−P8118に記載の方法により測定したものである。
【0014】
フィルム層(A)は、前記のような光学特性を付与するために、貫通孔形性前の該フィルム層内に空孔を形成してもよい。その場合、空孔率は0.1〜25%であることが好ましく、1〜20%であることがより好ましく、3〜15%であることが特に好ましい。空孔率が0.1%未満ではスクリーン映像投影面側からの映像が暗くて見にくい傾向にあり、25%より大きいとスクリーン背面側より見える映像が不明瞭となる傾向がある。
本明細書における空孔率とは、該フィルム層の断面を切り出して電子顕微鏡で観察し、その領域で空孔が占める面積割合を測定して百分率で表示したものである。
【0015】
フィルム層(A)
本発明のスクリーンを構成するフィルム層(A)は熱可塑性樹脂を含有する。典型的なフィルム層(A)は、熱可塑性樹脂に無機微細粉末か有機フィラーの少なくとも一方を配合しフィルム化することにより製造することができる。
熱可塑性樹脂としては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリメチル−1−ペンテン、エチレン−環状オレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレートやその共重合体、ポリエチレンナフタレート、脂肪族ポリエステル等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、アタクチックポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド等が挙げられる。これらは2種以上を混合して用いることもできる。
これらの中でもポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂を用いることが好ましく、ポリオレフィン系樹脂の中でもポリプロピレン系樹脂が特に好ましい。
【0016】
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体や、プロピレンとエチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンとの共重合体を用いることができる。立体規則性は特に制限されず、アイソタクチック又はシンジオタクチック及び種々の程度の立体規則性を示すものを用いることができる。
また共重合体は2元系でも3元系でも4元系でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。
フィルム層(A)の主要な熱可塑性樹脂(量的に最も多く使用される樹脂)は、好ましくはポリオレフィン系樹脂であり、より好ましくはポリプロピレン系樹脂である。
【0017】
無機微細粉末としては、炭酸カルシウム、焼成クレイ、シリカ、珪藻土、タルク、マイカ、合成マイカ、セリサイト、カオリナイト、酸化チタン、硫酸バリウム、アルミナ等を使用することができる。この中でも炭酸カルシウム、硫酸バリウムが好ましい。
【0018】
有機フィラーとしては、フィルム層の主成分である熱可塑性樹脂とは異なる種類の樹脂を選択することが好ましい。例えば、熱可塑性樹脂フィルムとしてポリオレフィン系樹脂を使用する場合、有機フィラーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ナイロン6、ナイロン6,6、環状オレフィンの単独重合体や環状オレフィンとエチレンなどとの共重合体(サイクリック・オレフィン・コポリマー(COC))等で、融点が120〜300℃、ないしはガラス転移温度が120〜280℃を有するものを選択することが好ましい。
また熱可塑性樹脂フィルムとしてポリエステル系樹脂を使用する場合、有機フィラーとしては、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ナイロン6、ナイロン6,6、ポリメチル−1−ペンテン、環状オレフィンの単独重合体や環状オレフィンとエチレンなどとの共重合体(COC)等で、融点が120〜300℃、ないしはガラス転移温度が120〜280℃を有するものを選択することが好ましい。
【0019】
フィルム層(A)には、上記の無機微細粉末か有機フィラーの少なくとも一方が含まれている限り、無機微細粉末又は有機フィラーの中から1種を選択して単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上を組み合わせる場合には、無機微細粉末と有機フィラーとを混合して使用してもよい。
【0020】
フィルム層(A)における無機微細粉末及び/又は有機フィラーの含有量は、5〜25重量%である。1重量%未満もしくは50重量%より多いと、全光線透過率、全光線反射率、不透明度のバランスが取れなくなる傾向がある。
【0021】
フィルム層(A)には、さらに必要により酸化防止剤、光安定剤、分散剤、滑剤等を配合してもよい。酸化防止剤としては、立体障害フェノール系やリン系、アミン系等のものを0.001〜1重量%、光安定剤としては、立体障害アミン系やベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等のものを0.001〜1重量%、無機微細粉末の分散剤としては、シランカップリング剤、オレイン酸やステアリン酸等の高級脂肪酸、金属石鹸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、またはそれらの塩等を0.01〜4重量%配合してもよい。
【0022】
熱可塑性樹脂、無機微細粉末及び/又は有機フィラーを含む配合物の成形方法としては、一般的な方法が使用できる。例えば、押し出し機に接続した単層又は多層のTダイやIダイを使用して溶融樹脂をフィルム状に押し出すキャスト成形法、またこのキャストフィルムをロール群の周速差を利用して縦延伸する一軸延伸フィルム成形法、この一軸延伸フィルムをさらにテンターオーブンを利用して横延伸する二軸延伸フィルム成形法や、テンターオーブンとリニアモーターとの組み合わせによる同時二軸延伸フィルム成形法等が挙げられる。
【0023】
延伸する場合の延伸温度は使用する熱可塑性樹脂の融点より2〜60℃低い温度であり、樹脂がプロピレン単独重合体(融点155〜167℃)のときは152〜164℃、高密度ポリエチレン(融点121〜134℃)のときは110〜120℃が好ましい。また延伸速度は20〜350m/minが好ましい。
【0024】
フィルム層(A)は単層構造であっても多層構造であってもよい。多層構造の場合、2層構造、3層以上の構造のものであってもよい。単層構造の場合、フィルムは、1軸延伸、2軸延伸のいずれであっても差し支えない。2層構造の場合、無延伸/1軸延伸、無延伸/2軸延伸、1軸延伸/1軸延伸、1軸延伸/2軸延伸、2軸延伸/2軸延伸のいずれの構造であっても差し支えない。3層以上の構造の場合は、上記単層構造と2層構造を組み合わせればよく、いずれの組み合わせでも差し支えない。また積層は、共押出しやラミネーション等、公知の方法で行うことができる。
【0025】
フィルム層(A)の表面には、投影映像に光学的な不都合を来さない範囲で、必要に応じ少なくとも片面に、オフセット印刷機、グラビア印刷機、フレキソ印刷機、スクリーン印刷機、レタープレス印刷機、レーザープリンター、熱転写プリンター、インクジェットプリンター等による印刷に対し、適性を有するコート層を設けてもよい。
このようなフィルムを用いれば、予めバックグラウンドとなる情報や画像を印刷したスクリーンとすることができる。
【0026】
またフィルム層(A)の裏面には、必要に応じて粘着剤層を設けてもよい。粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤を代表例として挙げることができる。ゴム系粘着剤としては、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴムとこれらの混合物、或いはこれらゴム系粘着剤にアビエチン酸ロジンエステル、テルペン・フェノール共重合体、テルペン・インデン共重合体等の粘着付与剤を配合したものが挙げられる。アクリル系粘着剤としては、2−エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸n−ブチル共重合体、2−エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸エチル・メタクリル酸メチル共重合体等のガラス転移温度が−20℃以下のものが挙げられる。これらの粘着剤は無色透明であることが好ましく、形態としては、溶剤型、エマルジョン型、ホットメルト型等が使用でき、一般的には溶剤型、エマルジョン型のものを公知の塗工法により塗工することにより積層できる。
【0027】
本発明のスクリーンは、粘着剤層を設けた場合、ショーウィンドウや窓ガラス等の被貼付体に貼り付けて使用できるが、粘着剤層を繰り返し貼り付け・剥離の可能な再剥離層に置き換えた場合、使用後に容易に且つ糊残り無く被貼付体から剥離することができ、そのスクリーンを繰り返し使用できる。また使用前貼付時の位置調整や失敗時の貼り直しも容易となり、空気の巻き込みも少なく美麗にスクリーンを使用できるため、商業上の利点は更に向上する。
再剥離層は被貼付体への繰り返し貼り付け・剥離を可能とするものであり、例えばゴム、塩化ビニール、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、エラストマー等を発泡加工して形成することができる吸着層を例示することができる。吸着層とは、発泡による表面および内部の微細孔(凹部)により吸着作用を有するものである。
【0028】
また再剥離層はこの吸着層の他に、例えば前述の粘着剤に表面突起物(スペーサー)となり得る粒子成分を配合するか、エンボス加工法やスクリーン印刷法、グラビア印刷法等の方法により粘着剤表面に微細な点状,線状,格子状,網目状等の連続パターンを持つ突起構造或いは糊殺しを形成した弱粘着層も例示できる。弱粘着層とは、表面に形成した突起構造(凸部)或いは糊殺しにより粘着剤の粘着力を低く調整したものである。
さらに再剥離層は吸着層、弱粘着層の他に、例えば誘電材料を主成分とし、帯電しやすく減衰しにくい組成物および構造からなる静電気吸着層も例示できる。
これらの再剥離層は本発明の趣旨を逸脱しないように調整される。
【0029】
フィルム層(A)の厚さ方向に貫通する孔の形成方法としては、化学的処理(エッチング等の溶出)、ダイヤモンド粒子付きローラー、抜き型等を利用した機械的穿孔法、熱針を用いた穿孔法、レーザー光穿孔法、電子線照射穿孔法、プラズマ穿孔法、高圧放電穿孔法等を挙げることができる。これらの孔の形成方法は組み合わせて用いてもよい。
孔の態様はスクリーン背面の風景をどの程度の面積で視認したいかに応じて適宜決定することができる。孔はスクリーンの全面積に形成してもよいし、一定面積部分にのみ形成してもよい。
【0030】
フィルム層(B)
本発明のスクリーンには、大型化等に対応してその機械的強度を補うために、必要に応じて熱可塑性樹脂を含有するフィルム層(B)を設けることができる。
特に上記のようにフィルム層(A)に貫通孔を設けた場合、スクリーン自体のコシや、引っ張り,引き裂き等に対する機械的強度が低下するため、大型化や取扱いが難しくなる傾向がある。これを補うために同じく必要に応じてフィルム層(B)を設けることができる。
【0031】
本発明のスクリーンを構成するフィルム層(B)の全光線透過率は88%以上であることが好ましく、さらに好ましくは90%以上である。全光線透過率が88%未満の場合は、スクリーン背面側から見た時に映像が暗くて見にくくなり、また貫通孔の効果であるスクリーン背面の風景が見にくくなる傾向がある。
【0032】
本発明のスクリーンを構成するフィルム層(B)の厚さは10〜1000μmであることが好ましく、20〜800μmであることがより好ましく、30〜500μmであることが特に好ましい。厚さが10μm未満では機械的強度が不充分であり、フィルム層(B)の機能を発揮できない傾向がある。1000μmより厚いとスクリーン全体の重さが過大となり取扱いが困難になる傾向がある。またスクリーン背面側より見える映像が不鮮明になる傾向がある。
【0033】
本発明のスクリーンを構成するフィルム層(B)の成形は、前記フィルム層(A)の成形に用いられるものと同様の熱可塑性樹脂、無機微細粉末、有機フィラー、添加剤および成形方法を用いて行なうことができる。フィルム層(B)に使用する熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂を用いることが好ましく、中でもポリエステル系樹脂が特に好ましい。フィルム層(B)は、単層構造であっても多層構造であってもよい。多層構造の場合、2層構造、3層以上の構造であってもよい。
【0034】
フィルム層(A)とフィルム層(B)との積層は、一般的なドライラミネーション、ウェットラミネーション、押し出し(サンド)ラミネーション、熱ラミネーションや、前述した粘着剤層と同様の粘着剤を設けて接着層とし感圧接着する方法により行うことができる。感圧接着する場合、接着層はフィルム層(B)のフィルム層(A)との積層面側に形成することが好ましい。また粘着剤は透明なものが好ましく、無色透明のものがより好ましい。
フィルム層(A)に貫通孔を形成する場合、フィルム層(A)とフィルム層(B)との積層は、フィルム層(A)への貫通孔形成後に行うことが好ましい。
【0035】
本発明のスクリーンは、例えば、フィルム層(A)およびフィルム層(B)を積層し、必要に応じていずれかの片面に粘着剤層または再剥離層を設けることにより製造することができる。この粘着剤層または再剥離層は、前述と同様の成分のものを用い、同様の方法にて形成できる。粘着剤層または再剥離層の形成は、フィルム層(A)とフィルム層(B)との積層の前に行っても構わない。
【0036】
前述の粘着剤層または再剥離層の表面には、剥離可能な剥離物を積層することが好ましい。剥離物は未使用時に粘着剤層または再剥離層を保護するためのものであり、使用時にはこの剥離物を剥がして使用する。
剥離物は粘着剤層または再剥離層との剥離性を良好にするため、粘着剤層または再剥離層に接触する面にシリコーン処理が施されるのが一般的である。剥離物には通常用いられる一般的なものが使用でき、上質紙やクラフト紙をそのまま、あるいはカレンダー処理したり樹脂を塗工したりフィルムラミネートしたもの、グラシン紙、コート紙、プラスチックフィルムなどにシリコーン処理を施したものが使用できる。
【0037】
【実施例】
以下に製造例、実施例、比較例、試験例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順、実施形態等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、製造例で使用した原料を表1に示す。
【0038】
【表1】
Figure 0004378093
【0039】
〔熱可塑性樹脂を含有するフィルム層の製造〕
(製造例1)
プロピレン単独重合体(PP2)87重量%、高密度ポリエチレン(HDPE)10重量%、及び炭酸カルシウム3重量%を押出機にて250℃で溶融混練した後、250℃に設定したダイに供給しフィルム状に押し出し、冷却ロールで冷却して無延伸フィルムを得た。この無延伸フィルムを135℃に加熱して縦方向に4倍の倍率で延伸し一軸延伸フィルムを得た。このフィルムを基材層(b)とした。
プロピレン単独重合体(PP1)52重量%、HDPE3重量%、及び炭酸カルシウム45重量%からなる混合物を別々の押出機にて250℃で溶融混練した後、250℃に設定したダイに供給しフィルム状に押し出し、表面層(a)、裏面層(c)として上記4倍延伸フィルムの両側に積層し、60℃まで冷却し三層構造の積層フィルム(a/b/c)を得た。
この積層フィルムを、164℃まで加熱してテンターで横方向に9倍の倍率で延伸した。次いで、160℃でアニーリング処理した後、60℃まで冷却し、耳部をスリットして厚さ92μm(a/b/c=22μm/48μm/22μm)の多層延伸樹脂フィルム層を得た。
【0040】
(製造例2)
PP2を87重量%、HDPE10重量%、及び炭酸カルシウム3重量%からなる混合物を基材層(b)とし、PP1を52重量%、HDPE3重量%、及び炭酸カルシウム45重量%からなる混合物を表面層(a)、裏面層(c)として、それぞれ別の押出機にて250℃で溶融混練した後、250℃に設定した一台の共押出ダイに供給し、ダイ内で積層したものをフィルム状に押し出し、これを冷却ロールで冷却して無延伸フィルムを得た。この無延伸フィルムを135℃に加熱して縦方向に4倍の倍率で延伸し一軸延伸フィルムを得た。
次いでこの延伸フィルムを、164℃まで加熱してテンターで横方向に9倍の倍率で延伸した。次いで、160℃でアニーリング処理した後、60℃まで冷却し、耳部をスリットして厚さ60μm(a/b/c=2μm/56μm/2μm)の多層延伸樹脂フィルム層を得た。
【0041】
(製造例3)
樹脂の押し出し量を変更した以外は、製造例1と同じ方法により厚さ77μm(a/b/c=18μm/41μm/18μm)の多層延伸樹脂フィルム層を得た。
この多層延伸樹脂フィルムの表面層(a)側に、下記の組成を有するインクジェット用コート剤を乾燥後の塗工層厚さが40μmとなるように塗工し、乾燥させてコート層を設けた。
微粒子シリカ(平均粒径0.3μm)(固形分量18%) 76重量%
ポリビニルアルコール(固形分量10%) 20重量%
メラミンホルマリン樹脂(固形分量30%) 2重量%
カチオン性アクリルポリマー(固形分量30%) 2重量%
【0042】
(製造例4)
PP2を87重量%、HDPE10重量%、及び炭酸カルシウム3重量%を押出機にて250℃で溶融混練した後、250℃に設定したダイに供給しフィルム状に押し出し、冷却ロールで冷却して無延伸フィルムを得た。この無延伸フィルムを135℃に加熱して縦方向に4倍の倍率で延伸し一軸延伸フィルムを得た。このフィルムを基材層(b)とした。
PP1を87重量%、HDPE10重量%、及び炭酸カルシウム3重量%からなる混合物を別々の押出機にて250℃で溶融混練した後、250℃に設定したダイに供給しフィルム状に押し出し、表面層(a)、裏面層(c)として上記4倍延伸フィルムの両側に積層し、60℃まで冷却し三層構造の積層フィルム(a/b/c)を得た。
この積層フィルムを、164℃まで加熱してテンターで横方向に9倍の倍率で延伸した。次いで、160℃でアニーリング処理した後、60℃まで冷却し、耳部をスリットして厚さ68μm(a/b/c=17μm/33μm/18μm)の多層延伸樹脂フィルム層を得た。
【0043】
(製造例5)
PP1を81重量%、HDPE3重量%、及び炭酸カルシウム16重量%を押出機にて250℃で溶融混練した後、250℃に設定したダイに供給しフィルム状に押し出し、冷却ロールで冷却して無延伸フィルムを得た。この無延伸フィルムを150℃に加熱して縦方向に5倍の倍率で延伸し一軸延伸フィルムを得た。このフィルムを基材層(b)とした。
PP2を54重量%と、炭酸カルシウム46重量%からなる混合物を別々の押出機にて250℃で溶融混練した後、250℃に設定したダイに供給しフィルム状に押し出し、表面層(a)、裏面層(c)として上記5倍延伸フィルムの両側に積層し、60℃まで冷却し三層構造の積層フィルム(a/b/c)を得た。
この積層フィルムを、155℃まで加熱してテンターで横方向に7.5倍の倍率で延伸した。次いで、165℃でアニーリング処理した後、60℃まで冷却し、耳部をスリットして厚さ95μm(a/b/c=19μm/57μm/19μm)の多層延伸樹脂フィルム層を得た。
【0044】
(実施例1)
製造例1のフィルム層に、レーザー光穿孔法を用いて直径0.5mmの真円状の貫通孔を、孔と孔の間の最短距離が1.0mmの間隔(貫通孔中心基準でピッチが1.5mm)となるように全面に設け、スクリーンとした。
【0045】
(実施例2)
製造例2のフィルム層に、レーザー光穿孔法を用いて直径0.5mmの真円状の貫通孔を、孔と孔の間の最短距離が1.0mmの間隔(貫通孔中心基準でピッチが1.5mm)となるように全面に設けた後、フィルム層の裏面層(c)側に透明なポリエステルフィルム(商品名:ダイアホイルT600E、厚さ50μm、全光線透過率90%、三菱化学ポリエステルフィルム(株)製、以下PETフィルムと表記)をドライラミネート法により積層し、スクリーンとした。
【0046】
(実施例3)
剥離物として上質紙の両面にポリエチレンフィルムをラミネートし、その片面にシリコーン処理を施した剥離紙のシリコーン処理面に、アクリル系粘着剤(商品名:オリバインBPS−1109、東洋インキ化学工業(株)製)を固形分量で25g/m2となるように塗工した後、乾燥させて粘着剤層を形成した。この剥離紙上の粘着剤層を、実施例1で得られたスクリーンの裏面層(c)上に積層させて、粘着剤層及び剥離物を有するスクリーンとした。
【0047】
(実施例4)
製造例3のコート層を設けたフィルム層に、精密な抜き型を用いて直径1.0mmの真円状の貫通孔を、孔と孔の間の最短距離が1.0mmの間隔(貫通孔中心基準でピッチが2.0mm)となるように全面に設けた後、裏面層(c)側にPETフィルムをドライラミネート法により積層し、積層物(I)とした。
この積層物(I)のPETフィルム側に、ウレタン系樹脂およびアクリル系樹脂を主成分とするエマルジョンを発泡機にてエマルジョン/空気=1/3容積比となるよう処理した発泡エマルジョンを、クリアランスで1mmとなるように塗工した後乾燥させて、繰り返し貼り付け・剥離の可能な再剥離層を形成した。表面にシリコーン処理を施し剥離性を付与したポリエステルフィルムを剥離物とし、この剥離物のシリコーン処理面と上記再剥離層とを積層し、積層物(II)とした。
更にこの積層物(II)のコート層側に、大判IJ用プリンター(商品名:MC−9000、セイコーエプソン(株)製)を用いてスクリーン周縁部に「額縁」の絵柄を印刷し、これをスクリーンとした。
得られたスクリーンはショーウィンドウに施工した際、印刷による意匠性が高く、「額縁」内の映像を室内外から鑑賞でき、且つ室内外の様子も視認できる、非常にアピール性の高いものであった。
また、施工時のガラス面への繰り返し貼付・剥離が容易で貼付時の空気の巻き込みは無く、剥離時の糊残りも見られない、優れた特性を有するものであった。
【0048】
(比較例1)
製造例1のフィルム層に、レーザー光穿孔法を用いて直径0.05mmの真円状の貫通孔を、孔と孔の間の最短距離が1.0mmの間隔(貫通孔中心基準でピッチが1.05mm)となるように全面に設け、スクリーンとした。
(比較例2、3)
製造例4、5のフィルム層に、それぞれレーザー光穿孔法を用いて直径0.5mmの真円状の貫通孔を、孔と孔の間の最短距離が1.0mmの間隔(貫通孔中心基準でピッチが1.5mm)となるように全面に設け、スクリーンとした。
【0049】
(試験例1)
上記製造例1〜5で得たフィルム層について、空孔率、全光線透過率、全光線反射率、不透明度、光沢度を前述の方法で測定した。
製造例3については、空孔率のみコート層を設ける前のフィルムで測定した。その他の項目はコート層を含むフィルム層にて測定した。
結果は表2に示す通りであった。
【0050】
(試験例2)
実施例1、2および比較例1、2、3で得た各スクリーンをタペストリーとして施工した。また、実施例3、4で得た粘着剤層または再剥離層を有する各スクリーンはガラス窓に貼着してショウウィンドウとして施工した。
【0051】
液晶プロジェクターよりスクリーン表面であるフィルム(A)面側に映像を投影し、その画像の鮮明さと、ハレーションの有無を以下の基準により評価した。
Figure 0004378093
さらに、各施工例におけるスクリーンとしての強度の比較を、施工作業を意識して以下の基準で行った。
Figure 0004378093
結果は表3に示す通りであった。
【0052】
【表2】
Figure 0004378093
【0053】
【表3】
Figure 0004378093
【0054】
【発明の効果】
本発明のスクリーンは、その両面において映像視認性を有し、画像が鮮明で、ハレーションもない。さらにスクリーン背面の風景の視認も可能となり、強度面の問題もない。このため、本発明のスクリーンは、映像投影用のスクリーンとして優れた機能を発揮することができ、産業上の利用価値は極めて大きい。

Claims (18)

  1. 有機フィラーか無機微細粉末の少なくとも一方と熱可塑性樹脂とを含有する延伸フィルム層(A)を有するスクリーンであって、前記フィルム層(A)における前記有機フィラーおよび前記無機微細粉末の総含有量が5〜25重量%であり、前記フィルム層(A)の全光線透過率が30〜80%であり、前記フィルム層(A)の全光線反射率が20〜70%であり、前記フィルム層(A)の光沢度が60%以下であり、かつ前記フィルム層(A)の厚さ方向に貫通する開口径0.1〜8mmの貫通孔が、孔と孔との間の最短距離0.1〜5mmの間隔で該フィルム層(A)の平面方向に連続的に分布していることを特徴とするスクリーン。
  2. フィルム層(A)の不透明度が10〜75%であることを特徴とする請求項1に記載のスクリーン。
  3. 反射光でも透過光でも映像を視認できることを特徴とする請求項1または2に記載のスクリーン。
  4. フィルム層(A)の厚さが20〜500μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のスクリーン。
  5. フィルム層(A)の空孔率が0.1〜25%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のスクリーン。
  6. フィルム層(A)が多層構造であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のスクリーン。
  7. フィルム層(A)が、少なくとも一軸に延伸された層を含む多層構造であることを特徴とする、請求項6に記載のスクリーン。
  8. フィルム層(A)の少なくとも片面にコート層を設けたことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のスクリーン。
  9. フィルム層(A)の片面に、熱可塑性樹脂を含有し全光線透過率が88%以上であるフィルム層(B)を設けたことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のスクリーン。
  10. フィルム層(B)の厚さが10〜1000μmであることを特徴とする、請求項9に記載のスクリーン。
  11. フィルム層(A)の少なくとも片面に、またはフィルム層(B)に、粘着剤層を設けたことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載のスクリーン。
  12. フィルム層(A)の少なくとも片面に、またはフィルム層(B)に、繰り返し貼り付け・剥離の可能な再剥離層を設けたことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載のスクリーン。
  13. 再剥離層が吸着層、弱粘着層または静電気吸着層であることを特徴とする、請求項12に記載のスクリーン。
  14. 粘着剤層または再剥離層の表面に剥離可能な剥離物を積層したことを特徴とする、請求項11〜13のいずれか1項に記載のスクリーン。
  15. フィルム層(A)及び/またはフィルム層(B)及び/またはコート層上に印刷を施したことを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載のスクリーン。
  16. 熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂を含むことを特徴とする、請求項1〜15のいずれか1項に記載のスクリーン。
  17. フィルム層(A)の主要な熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか1項に記載のスクリーン。
  18. ポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂であることを特徴とする、請求項17に記載のスクリーン。
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