JP4502558B2 - 易剥離性積層フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性樹脂よりなる基層(A)、層間剥離性層(B)、表面層(C)が順に積層され、層間剥離性層(B)の破壊により基層(A)と表面層(C)が容易に剥離可能である積層フィルムであって、表面層(C)の破断強度を弱くすることにより容易に剥離が開始することが可能である易剥離性積層フィルムに関する。
該易剥離性積層フィルムは糊残りが無い配送伝票、葉書や通帳の隠蔽シール、貼り替え防止用ラベル、改ざん防止シール、応募シール、クーポン等の基材として有用である。
【0002】
【従来の技術】
従来、スーパーマーケット、百貨店などの食品売場などで賞味期限切れが近い商品をバーゲン用にして貼った安い値札粘着ラベルを引き剥がし、これを通常価格の商品の値札ラベルに貼り替えて安い価格で商品を購入する輩がいるという問題があった。
このため、商品に剥離したラベルを貼り替えた後、これが剥離したものであることが容易に判る貼り替え防止用の粘着ラベル、或いは貼り替えることが不可能な粘着ラベルが要求されており、実用化されている。しかしこれらの貼り替え防止用粘着ラベルは、価格が高く、ラベルを剥がした時に剥離面上に接着剤が残りベトついたり、ゴミが付着するという問題があった。
【0003】
これらの問題を解決するため、特開平8−99377号公報には、第1の層を剥離剤にて第2の層から剥離せしめるに要する力をaとし、接着剤層の被貼着材との接着力をbとし、剥離シートを接着剤層より剥離せしめるに要する力をcとしたとき、次式、c<a<b、を満足する貼り替え防止用ラベルの製法であって、(a)剥離シートに接着剤層を形成するステップと、(b)第1の層の一方主面上にワックスを含む剥離剤層を積層するステップと、(c)前記第1の層の剥離剤層の表面上に、第2の層を形成するステップと、(d)前記剥離シートの接着剤層面と、前記第1の層に積層された第2の層の面とを重ね合わせ積層するステップとを含む、貼り替え防止用ラベルの製法、が提案されているが、この製法は複雑であると共に第1の層の表面材にパルプ抄造紙を用いた場合には耐水性が劣るため水に触れると容易に破壊し、被貼着基材より剥がれてしまう欠点があり、漬け物、豆腐、こんにゃく等の水封入容器用ラベルには向いていない。
一方、特開平8−30202号公報には、表面基材、凝集破壊層、しみ込み防止層及び、粘着剤層が順に積層されてなる張り替え防止ラベルが提案されている。しかしながらこの手法で得られる凝集破壊層は、基材表面に塗工により設けられており、凝集破壊層の破壊強度が幅、流れ、厚み方向でほぼ等しい為、剥離可能な強度の凝集破壊層を設置すると、しみ込み防止層側への印刷時やラベル加工時に凝集破壊層が剥離してしまったり、又、ラベルとして貼り付けた場合に剥がそうとしていなくても剥離を起こしてしまう可能性があった。またそれぞれの層を個別に設置する必要があり割高なものであった。
【0004】
又、特開平10−258476号公報には、無機微細粉末10〜80重量%、および熱可塑性樹脂90〜20重量%を含有する熱可塑性樹脂二軸延伸フィルムよりなる層間剥離層(B)の表裏面に肉厚10〜500μmの熱可塑性樹脂フィルムよりなる表面層(A)および裏面層(C)を融着積層し、耐水性の優れ、層間剥離性層(B)の層状剥離が容易に起きる貼り替え防止ラベル用フィルムを得る方法が提案されている。しかしながら、この方法で得られた易剥離性積層フィルムは一度剥離を開始すれば表面層(A)及び裏面層(C)を容易に剥離することが可能であるが、剥離を確実に開始させるためには裏面層(C)のみにノッチやスリットを入れる等の特殊な加工を必要とする欠点が判明した。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明はこれらの従来技術の問題点を解決し、極めて優れた特性を有する易剥離性積層フィルムを提供することを解決すべき課題とした。
すなわち本発明は、隠蔽シール、貼り替え防止用ラベル等の基材として耐水性に優れ、剥離を開始するための特殊な加工を必要としない易剥離性積層フィルムを提供することを解決すべき課題とした。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、これらの課題を解決するために鋭意検討を進めた結果、特定の層構成の熱可塑性樹脂フィルムを形成することによって所期の特性を有する易剥離性の隠蔽シール又は貼り替え防止用ラベルを提供し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、膜厚が10〜500μmであり、無機微細粉末及び/又は有機フィラー3〜70重量%、および熱可塑性樹脂97〜30重量%を含有する基層(A)、膜厚が0.1〜10μmであり、無機微細粉末及び/又は有機フィラー15〜80重量%、および熱可塑性樹脂85〜20重量%を含有する層間剥離性層(B)、膜厚が1μm以上10μm未満であり、熱可塑性樹脂よりなり、無機微細粉末及び/又は有機フィラーを30重量%以下含有するか、又は含有しない表面層(C)が順に積層された積層フィルムを含むものであって、層間剥離性層(B)に接する基層(A)の無機微細粉末及び/又は有機フィラーの含有量が、層間剥離性層(B)の含有量よりも8重量以上%少なく、更に、表面層(C)の無機微細粉末及び/又は有機フィラーの含有量が、層間剥離性層(B)の含有量よりも低く、層間剥離性層(B)の剥離強度が5〜150g/cm幅であり、表面層(C)の破断強度が500g/cm幅以下であって、積層フィルムの表面層(C)側に粘着剤層を有し、積層フィルム貼着後の基層(A)と表面層(C)との剥離が、表面層(C)の破断によって開始し、表面層(C)よりも強度の弱い層間剥離性層(B)に伝播して該層の破壊によって行われることにより、剥離を開始するための特殊な加工を必要としない易剥離性の隠蔽シール又は貼り替え防止用ラベルを提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の易剥離性積層フィルムついて、更に詳細に説明する。
本発明の積層フィルムは上述したように、基層(A)、層間剥離性層(B)および表面層(C)より構成されてなり、必要により粘着剤層、離型紙、または他の積層フィルムを設けても良い易剥離性積層フィルムである。
【0008】
[基層(A)]
基層(A)は熱可塑性樹脂からなり、それ自体の強度が後述の表面層(C)の強度よりも高く、(A)層を持って引き剥がしたときに、それ自体内は破断をしないものである。
基層(A)に用いる熱可塑性樹脂の種類は特に制限されない。例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、プロピレン系樹脂、ポリメチル−1−ペンテン等のポリオレフィン系樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、マレイン酸変性ポリエチレン、マレイン酸変性ポリプロピレン等の官能基含有ポリオレフィン系樹脂、ナイロン−6、ナイロン−6,6等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやその共重合体、ポリブチレンテレフタレート、脂肪族ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン等を使用することができる。これらの熱可塑性樹脂の中では、加工性に優れるポリオレフィン系樹脂、官能機含有ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。
ポリオレフィン系樹脂のより具体的な例としては、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、メチル−1−ペンテンなどのオレフィン類の単独重合体、及び、これらオレフィン類2種類以上からなる共重合体が挙げられる。
【0009】
官能基含有ポリオレフィン系樹脂のより具体的な例としては、前記オレフィン類と共重合可能な官能機含有モノマーとの共重合体があげられる。かかる官能機含有モノマーとしては、スチレン、αメチルスチレンなどのスチレン類、酢酸ビニル、ビニルアルコール、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ブチル安息香酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類、アクリル酸、メタクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−メタロール(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリル酸エステル類((メタ)アクリル酸エステルは、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルを指す)、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、フェニルビニルエーテルなどのビニルエーテル類が特に代表的である。これら官能機含有モノマーの中から必要に応じ1種類もしくは2種類以上を適宜選択し重合したものを用いることができる。
更にこれらポリオレフィン系樹脂及び官能機含有ポリオレフィン系樹脂を必要によりグラフト変性して使用することも可能である。
【0010】
グラフト変性には公知の手法がもちいることができ、具体的な例としては、不飽和カルボン酸またはその誘導体によるグラフト変性を挙げることができる。該不飽和カルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等を挙げることができる。また上記不飽和カルボン酸の誘導体としては、酸無水物、エステル、アミド、イミド、金属塩等も使用可能である。具体的には、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、フマル酸ジメチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、イタコン酸ジエチルエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、マレイン酸−N−モノエチルアミド、マレイン酸−N,N−ジエチルアミド、マレイン酸−N−モノブチルアミド、マレイン酸−N,N−ジブチルアミド、フマル酸モノアミド、フマル酸ジアミド、フマル酸−N−モノエチルアミド、フマル酸−N,N−ジエチルアミド、フマル酸−N−モノブチルアミド、フマル酸−N,N−ジブチルアミド、マレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、メタクリル酸カリウム等を挙げることができる。グラフト変性物はグラフトモノマーをポリオレフィン系樹脂及び官能機含有ポリオレフィン系樹脂に対して一般に0.005〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%グラフト変性したものである。
【0011】
基層(A)の熱可塑性樹脂としては、上記の熱可塑性樹脂の中から1種を選択して単独で使用してもよいし、2種以上を選択して組み合わせて使用してもよい。
更にこれらポリオレフィン系樹脂および官能機含有ポリオレフィン系樹脂の中でも、プロピレン系樹脂が、耐薬品性、コストの面などから好ましい。プロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体でありアイソタクティックないしはシンジオタクティック及び種々の程度の立体規則性を示すポリプロピレン、プロピレンを主成分とし、これと、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、4−メチル−1−ペンテン等のαオレフィンとを共重合させた共重合体を主成分として使用することが望ましい。この共重合体は、2元系でも3元系以上でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体であってもよい。プロピレン系樹脂には、プロピレン単独重合体よりも融点が低い樹脂を2〜25重量%配合して使用することが好ましい。そのような融点が低い樹脂として、高密度ないしは低密度のポリエチレンを例示することができる。
【0012】
基層(A)にする熱可塑性樹脂には、必要に応じて無機微細粉末、有機フィラー、安定剤、光安定剤、分散剤、滑剤などを添加することができる。無機微細粉末を添加する場合は、粒径が通常0.01〜15μm、好ましくは0.01〜5μmのものを使用する。具体的には、炭酸カルシウム、焼成クレ−、シリカ、けいそう土、白土、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、アルミナ、ゼオライト、マイカ、セリサイト、ベントナイト、セピオライト、バーミキュライト、ドロマイト、ワラストナイト、ガラスファイバーなどを使用することができる。
【0013】
有機フィラーを添加する場合は、主成分である熱可塑性樹脂とは異なる種類の樹脂を選択することが好ましい。例えば、熱可塑性樹脂フィルムがポリオレフィン系樹脂フィルムである場合には、有機フィラーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ナイロン−6、ナイロン−6,6、環状オレフィン、ポリスチレン、ポリメタクリレート等の重合体であって、ポリオレフィン系樹脂の融点よりも高い融点(例えば170〜300℃)ないしはガラス転移温度(例えば170〜280℃)を有し、かつ非相溶のものを使用することができる。
【0014】
安定剤を添加する場合は、通常0.001〜1重量%の範囲内で添加する。具体的には、立体障害フェノール系、リン系、アミン系等の安定剤などを使用することができる。光安定剤を使用する場合は、通常0.001〜1重量%の範囲内で使用する。具体的には、立体障害アミンやベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系の光安定剤などを使用することができる。分散剤や滑剤は、例えば無機微細粉末を分散させる目的で使用する。使用量は通常0.01〜4重量%の範囲内にする。具体的には、シランカップリング剤、オレイン酸やステアリン酸等の高級脂肪酸、金属石鹸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸ないしはそれらの塩等使用することができる。
【0015】
基層(A)の肉厚は10〜500μm、好ましくは20〜300μmの範囲である。10μm未満では基層(A)の破断強度が低く、基層(A)を持って表面層(C)から引き剥がした時に、途中で破断してしまい本発明の所期の性能を発揮しない。又、500μmを越えてしまうと易剥離性積層フィルムの腰が高くなり、隠蔽シール、貼り替え防止用ラベル等に使用する場合の加工、印刷適性が低下する。
基層(A)は、2層構造、3層以上の多層構造のものであってもよく、この多層構造の延伸軸数が1軸/1軸、1軸/2軸、2軸/1軸、2軸/2軸、1軸/1軸/2軸、1軸/2軸/1軸、2軸/1軸/1軸、1軸/2軸/2軸、2軸/2軸/1軸、2軸/2軸/2軸であっても良い。基層(A)の多層化により筆記性、印刷性、熱転写適性、耐擦過性、2次加工適性等の様々な機能の付加が可能となる。
【0016】
基層(A)を多層構造にする場合は、後述の層間剥離性層(B)に接する層である(A1)層の無機微細粉末及び/又は有機フィラーの含有量は層間剥離性層(B)よりも8重量%以上、好ましくは15重量%以上少ないことが望ましい。(A1)層の無機微細粉末及び/又は有機フィラーの含有量が層間剥離性層(B)に対して、8重量%以上低いことによって層間剥離性層(B)と(A1)層のボイド率に差ができ、層間剥離性層(B)のみに破壊伝播することができる。
【0017】
[層間剥離性層(B)]
本発明に於ける層間剥離性層(B)は、基層(A)および表面層(C)よりも強度が弱い層で、本発明の表面層(C)の剥離は、層間剥離性層(B)の破壊により行われる。
層間剥離性層(B)の好ましい形態は無機微細粉末及び/又は有機フィラー10〜80重量%、好ましくは15〜70重量%、熱可塑性樹脂90〜20重量%、好ましくは85〜30重量%を含有する熱可塑性樹脂延伸フィルムである。層間剥離性層(B)の無機微細粉末及び/又は有機フィラーの含有量が10重量%未満では、充分な剥離性が得られず、80重量%を越えては成形安定性が損なわれる。
熱可塑性樹脂としては、基層(A)項で挙げた熱可塑性樹脂を用いることができ、基層(A)と同様にポリオレフィン系樹脂及び官能機含有ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。無機微細粉末及び/又は有機フィラーとしては、基層(A)項で挙げたものが使用することができる。
【0018】
層間剥離性層(B)の厚みは0.1〜10μm、好ましくは0.2〜5μmの範囲である。0.1μm未満では、十分な剥離性が得られず、10μmを越えては剥離強度には問題はないが、剥離面が均一とはならず凸凹となるため剥離面に印字したり、剥がした基層(A)を管理票等としてバーコード印字する場合に問題となる。
層間剥離性層(B)は延伸樹脂フィルム層であることが好ましく、延伸成形により厚みが薄く、均一性の取れた層間剥離性層(B)を得る事が可能となる。更に無機及び/又は有機フィラーを含有する層間剥離性層(B)を延伸することにより層間剥離性層(B)に微細な空孔を形成し強度を低下することが可能となり、本発明の目的とする層間剥離性層(B)の剥離強度を得ることができる。さらに層間剥離性層(B)は延伸されることにより延伸方向の強度が強くなる。そのため延伸されていない方向である厚み方向の強度は、延伸方向の強度と比べて低くなることから、剥離が層間剥離性層(B)内部を伝播し易く本発明の目的とする剥離性が容易に得られ、又、不必要な剥離が発生しにくい易剥離性積層フィルムを得ることが可能である。
【0019】
[表面層(C)]
本発明に於ける表面層(C)は層間剥離性層(B)の破壊により基層(A)より剥離する様に設けられた層である。
本発明の層間剥離性層(B)は強度が低く破壊し易い層であるため、層間剥離性層(B)の更に外側に表面層(C)を設けることにより易剥離性積層フィルムの生産や加工時に層間剥離性層(B)の破壊により発生する粉をなくすことが可能であり、また加工性の優れた易剥離性積層フィルムを得ることができる。
表面層(C)を構成する熱可塑性樹脂としては、基層(A)項で挙げた熱可塑性樹脂を用いることができ、基層(A)と同様にポリオレフィン系樹脂及び官能機含有ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。更に、表面層(C)の破断強度を本発明の目的とする500g/cm以下にするためには、表面層(C)に用いる熱可塑性樹脂は、破断強度の低い樹脂であることが望ましく、具体的には、エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、及び、これらのグラフト変性体が挙げられる。表面層(C)は無機微細粉末及び/又は有機フィラーを含有することも可能であり、好ましい無機微細粉末及び/又は有機フィラーの含有量は0〜30重量%、より好ましくは0〜20重量%、更に好ましくは0〜10重量%である。無機微細粉末及び/又は有機フィラーの含有量が30重量%を越えると表面層(C)の透明性が損なわれ、表面層(C)の下の情報の認識性が低下する。更に、表面層(C)の無機微細粉末及び/又は有機フィラーの含有量は、層間剥離性層(B)の無機微細粉末及び/又は有機フィラーの含有量よりも低いことが望ましく、層間剥離性層(B)よりも表面層(C)の含有量を低くすることにより、層間剥離性層(B)に選択的に剥離を生じさせることができ、安定した剥離性の易剥離性積層フィルムを得ることが可能である。
表面層(C)は延伸樹脂フィルム層であることが好ましく、延伸成形により薄く、厚みの均一性の取れた表面層(C)を得ることが可能となる。
表面層(C)の膜厚は10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは6μm以下であることが好ましく、膜厚が、10μmを越えると本発明の目的とする破断強度の表面層(C)を得ることが困難となる。
【0020】
[樹脂フィルムの成形]
熱可塑性樹脂フィルムを形成する方法は特に限定されず、公知の種々の方法が使用できるが、具体例としては、スクリュー型押出機に接続された単層または多層のTダイやIダイを使用して溶融樹脂をシート状に押し出すキャスト成形、円形ダイを使用し溶融樹脂をチューブ状に押し出し内部の空気圧力で膨張させるインフレ−ション成形、混練された材料を複数の熱ロールで圧延しシート状に加工するカレンダー成形、圧延成形などが挙げられる。
【0021】
[積層]
基層(A)、層間剥離性層(B)および表面層(C)は積層後少なくとも1軸方向に延伸されていることが必要である。本発明の層間剥離性層(B)および表面層(C)は強度が低く、肉厚が薄い為、これら各層は単層での延伸成形は極めて困難である。基層(A)との積層後延伸することにより、層間剥離性層(B)と表面層(C)は延伸が容易となる。
かかる積層方法についても公知の種々の方法が使用できるが、具体例としては、フィードブロック、マルチマニホールドを使用した多層ダイス方式と、複数のダイスを使用する押出しラミネーション方式等がある。又、多層ダイスと押出しラミネーションを組み合わせて使用することも可能である。
【0022】
[延伸]
延伸は、通常用いられる種々の方法のいずれかによって行うことができる。
延伸の温度は、基層(A)に主に用いる熱可塑性樹脂のガラス転移点温度以上から結晶部の融点以下の熱可塑性樹脂に好適な公知の温度範囲内で行うことができる。具体的には、基層(A)の熱可塑性樹脂がプロピレン単独重合体(融点155〜167℃)の場合は100〜166℃、高密度ポリエチレン(融点121〜136℃)の場合は70〜135℃であり融点より1〜70℃低い温度である。また、延伸速度は20〜350m/分にするのが好ましい。
延伸方法としては、キャスト成形フィルムを延伸する場合は、ロール群の周速差を利用した縦延伸、テンターオーブンを使用した横延伸、圧延、テンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時二軸延伸などを挙げることができる。又、インフレーションフィルムの延伸方法としては、チューブラー法による同時二軸延伸を挙げることができる。
【0023】
延伸倍率は特に限定されず、基層(A)に用いる熱可塑性樹脂の特性等を考慮して適宜決定する。例えば、熱可塑性樹脂としてプロピレン単独重合体ないしはその共重合体を使用する時には一方向に延伸する場合は約1.2〜12倍、好ましくは2〜10倍であり、二軸延伸の場合には面積倍率で1.5〜60倍、好ましくは4〜50倍である。その他の熱可塑性樹脂を使用する時には一方向に延伸する場合は1.2〜10倍、好ましくは2〜5倍であり、二軸延伸の場合には面積倍率で1.5〜20倍、好ましくは4〜12倍である。
このようにして得られる積層フィルムは、次式(1)で算出されたボイド率が5〜60%、好ましくは10〜45%の微細なボイドをフィルム内部に多数有するものである。ボイドの存在により、ボイドが存在しない積層延伸フィルムと比較してよりしなやかになる。
【0024】
【式1】
また、延伸により形成された微細なボイドにより光拡散が発生し不透明度が高くすることが容易となり、本発明の目的とする不透明度の易剥離性積層フィルムを容易に得ることができる。
【0025】
[剥離強度]
易剥離性積層フィルムを恒温室(温度20℃、相対湿度65%)に12時間保管した後、表面層(C)面に粘着テープ(ニチバン(株)製、商品名「セロハンテープ」)を貼着し、これを幅10mm、長さ100mmに切り取り、引張試験機(島津制作所製、AUTOGRAPH)を使用し、引張速度300mm/分にて、180゜の角度で基層(A)と表面層(C)の剥離を層間剥離性層(B)にて発生させ、剥離が安定している時の応力をロードセルにより測定し、横方向と縦方向の平均値をもって、本発明の剥離強度とした。本発明の剥離強度は5〜150g/cmであり、好ましくは7〜100g/cmである。剥離強度が5g/cm未満では、印刷、印字、断裁等の二次加工時の給排紙において簡単に剥離が生じる欠点があり、二次加工性に問題がある。150g/cm幅を超えては、基層(A)と表面層(C)が剥離しないか、剥離に要する応力を高くする必要があり実用的でない。また層間剥離性層(B)以外の箇所での材料破壊が起き、剥離面に毛羽立ちが発生する。
【0026】
[破断強度]
易剥離性積層フィルムを恒温室(温度20℃、相対湿度65%)に12時間保管した後、幅10mm、長さ100mmに切り取り、更に表面層(C)面の長手方向の半分まで粘着テープ(ニチバン(株)製、商品名「セロハンテープ」)で補強する。粘着テープで補強された部分の表面層(C)を基層(A)より手で引き剥がし破断強度測定用のサンプルを作成する。作成したサンプルの表面層(C)の剥離していない部分と、粘着テープで補強し剥離した表面層(C)部分とを引張試験機(島津製作所製、AUTOGRAPH)にセットし、引張速度300mm/分にて表面層(C)を破断時の荷重を読み取り、横方向と縦方向の平均値をもって、本発明の破断強度とした。
本発明の表面層(C)の破断強度は、500g/cm以下であり、好ましくは400g/cm以下、更に好ましくは300g/cm以下である。表面層(C)の破断強度が500g/cmよりも高いと、表面層(C)を基層(A)から引き剥がすためには、表面層(C)のみにノッチやスリットなどの特殊な加工を必要とし、本発明の所期の性能を発揮しない。
【0027】
[不透明度]
JIS−P−8138に準拠し、測定背面に、黒色および白色標準板を当て、光の反射率の比(黒色板/白色板)を百分率で示した値で表示する。
本発明の易剥離性フィルムの不透明度は60〜100%であり、好ましく70〜100%、より好ましくは85〜100%である。不透明度が60%未満では隠蔽ラベル等に使用した場合に保護すべき情報が透けてしまい、本発明の所期の性能を発揮しない。
【0028】
[粘着剤層]
本発明の易剥離性積層フィルムは必要により表面層(C)側に粘着剤層を設けることができる。
かかる粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤が代表的であり、ゴム系粘着剤の具体例には、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴムとこれらの混合物、或いは、これらゴム系粘着剤にアビエチン酸ロジンエステル、テルペン・フェノール共重合体、テルペン・インデン共重合体などの粘着付与剤を配合したものが挙げられる。アクリル系粘着剤の具体例としては、2−エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸n−ブチル共重合体、2−エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸エチル・メタクリル酸メチル共重合体などのガラス転移点が−20℃以下のものが挙げられる。
【0029】
これら粘着剤の形態としては、溶剤型、エマルジョン型、ホットメルト型等が使用され、一般的には溶剤型、エマルジョン型のものを塗工することにより積層される。
かかる塗工は、ロールコーター、ブレードコーター、バーコーター、エアーナイフコーター、グラビアコーター、リバースコーター、ダイコーター、リップコーター、スプレーコーター、コンマコーター等により行われ、必要によりスムージングを行ったり、乾燥工程を経て、粘着剤層が形成される。
【0030】
粘着剤層の形成は、後述する離型紙へ粘着剤を塗工し、必要により乾燥を行い、粘着剤層を形成したものに、易剥離性積層フィルムを積層する方法が一般的であるが、場合によっては易剥離性積層フィルムに直接に粘着剤を塗工して形成することもできる。
該粘着剤の塗工量は特に限定されないが、通常は固形分量で3〜60g/m2 、好ましくは10〜40g/m2 の範囲である。又、この粘着剤層の層間剥離強度は200〜3000g/20mmであり、且つ層間剥離性層(B)の剥離強度よりは強いことが好ましい。
【0031】
易剥離性積層フィルムと粘着剤との接着力が小さい場合は、上記粘着剤を塗工する前に積層フィルムの裏面にアンカーコート剤を塗布することが好ましい。
該アンカーコート剤としては、ポリウレタン、ポリイソシアネート・ポリエーテルポリオール、ポリイソシアネート・ポリエステルポリオール・ポリエチレンイミン、アルキルチタネートなどが使用でき、これらは一般に、メタノール、酢酸エチル、トルエン、ヘキサンなどの有機溶剤、または水に溶解して使用される。
アンカーコート剤の塗布量は、塗布・乾燥後の固形分量で0.01〜5g/m2 、好ましくは0.02〜2g/m2 の範囲である。
【0032】
[離型紙]
更に必要により粘着剤層の外側に離型紙を設けることも可能である。
易剥離性積層フィルムに粘着剤層を介し設けられる離型紙は、粘着剤層との剥離性を良好にするため、粘着剤層に接触する面にシリコン処理が施されるのが一般的である。
離型紙は、通常一般的なものが使用でき、上質紙やクラフト紙をそのまま、あるいはカレンダー処理したり樹脂を塗工したりフィルムラミネートしたもの、グラシン紙、コート紙、プラスチックフィルムなどにシリコン処理を施したものが使用できる。
【0033】
[ピグメント塗工]
本発明の易剥離性積層フィルムの各種の印刷、印字適性をより一層向上させるために、少なくとも片面にピグメント塗工層を設けることができる。
このようなピグメント塗工剤としては、通常のコート紙に使用されるクレイ、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、プラスチックピグメント、二酸化チタン、白土粉等のピグメント10〜80重量%と、接着剤90〜20重量%を含有するものを挙げることができる。またこの際に使用される接着剤としては、SBR(スチレン・ブタジエンラバー)、MBR(メタクリル・ブタジエンラバー)等のラテックス、アクリル系エマルジョン(アクリル酸エステル樹脂含有水溶液など)、澱粉、PVA(ポリビニルアルコール)、CMC(カルボキシメチルセルロース)、メチルセルロース等を挙げることができる。更にこれら配合剤に、特殊ポリカルボン酸ナトリウム等の分散剤や、ポリアミド尿素系樹脂等の架橋剤、発泡防止剤、耐水化剤、潤滑剤、蛍光塗料等を配合することができる。これらピグメントコート剤は一般に5〜90重量%、好ましくは35〜65重量%の固形分濃度の水溶性塗工剤として使用される。
【0034】
このような塗工剤を前記フィルムに塗工する塗工方法及び手段としては、具体的には、グラビア塗工、メイヤーバー塗工、ロール塗工、ブレード塗工、サイズプレス塗工、ホットメルト塗工等の塗工手段を採用することができる。塗工量としては、0.1〜50g/m2 、好ましくは1〜15g/m2 である。その際のコート層の厚みは、0.05〜50μm、好ましくは0.5〜20μm、特に好ましくは5〜15μmの肉厚でフィルムの片面又は両面に形成される。
塗工表面は必要に応じてカレンダー処理等によりプレススムージング処理を行っても良い。また塗工は必要により2回以上行っても良い。
【0035】
[酸化処理]
本発明の易剥離性積層フィルムの表面には、必要に応じて、コロナ処理等の表面酸化処理を行う。
表面酸化処理としては、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理、グロー放電処理、オゾン処理より選ばれた少なくとも一種の処理方法であり、好ましくはコロナ処理、フレーム処理である。処理量はコロナ処理の場合、600〜12,000J/m2 (10〜200W・分/m2 )、好ましくは1200〜9000J/m2 (20〜150W・分/m2 )である。600J/m2 (10W・分/m2 )未満では、コロナ放電処理の効果が不十分で、その後の表面改質の効果が発揮されず、また12,000J/m2 (200W・分/m2 )超では処理の効果が頭打ちとなるので12,000J/m2 (200W・分/m2 )以下で十分である。フレーム処理の場合、8,000〜200,000J/m2 、好ましくは20,000〜100,000J/m2 が用いられる。8,000J/m2 未満では、フレーム処理の効果が不十分で、その後の表面改質の効果が発揮されず、また200,000J/m2 超では処理の効果が頭打ちとなるので200,000J/m2 以下で十分である。
【0036】
[記録物]
本発明の易剥離性積層フィルムの表裏面には、必要により商品名、製造元、賞味期限、キャラクター絵図、記入欄、バーコード等を印刷、印字することにより、記録物を作成できる。
また必要に応じて易剥離性積層フィルムの表裏面に、熱転写受容層、感熱記録層、インクジェット受容層などをピグメント塗工層の形成と同様の塗工方法で設けた後、溶融熱転写記録、昇華熱転写記録、感熱記録、インクジェット記録、レーザープリント記録などにより印刷、印字し記録物を作成できる。
これらの印刷、印字は、易剥離性積層フィルム単体の状態で行ってもよいし、離型紙を有する構造とした後、印刷、印字を施してもよい。
【0037】
【実施例】
以下に実施例、比較例および試験例を用いて、本発明を更に具体的に説明する。以下に示す材料、使用量、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。
なお、以下に記載される%は、特記しない限り重量%である。本発明で使用する熱可塑性樹脂組成物を表1にまとめて示す。
【0038】
【表1】
【0039】
【実施例1】
熱可塑性樹脂組成物eを(B)層、熱可塑性樹脂組成物bを(A1)層とし、230℃に設定した押出機にて混練した後、250℃に設定したダイに供給し、シート状に押し出し、これを冷却装置により冷却して2層の無延伸シートを得た。この無延伸シートを140℃に加熱して縦方向に4倍延伸した。
熱可塑性樹脂組成物iを(C)層として190℃に設定した押出機で混練した後、230℃に設定したダイに供給し、シート状に押し出して4倍延伸フィルムの(B)層側に積層し、更に熱可塑性樹脂組成物cを(A2)層、熱可塑性樹脂組成物dを(A3)層とし、250℃に設定した押出機で混練した後、250℃に設定した一台の共押出ダイに供給し、ダイ内で積層したものをシート状に押し出して4倍延伸フィルムの(A1)層側に積層し、5層構造の積層フィルムを得た。次いで、この5層構造の積層フィルムを60℃まで冷却し、テンターオーブンを用いて再び約140℃に加熱して横方向に8.0倍延伸した後、155℃に調整した熱セットゾーンにより熱処理を行った。その後60℃に冷却して耳部をスリットし、5層〔(C)/(B)/(A1)/(A2)/(A3):肉厚3/1/39/22/5μm:延伸層構成1軸/2軸/2軸/1軸/1軸〕構造の肉厚70μmの積層フィルムを得た。得られた易剥離性フィルムの不透明度、層間剥離性層(B)の剥離強度、表面層(C)の破断強度を上記手法にて測定した。結果を表2に示す。
【0040】
【実施例2】
熱可塑性樹脂組成物kを(C)層とし180℃に設定した押出機にて混練し、熱可塑性樹脂組成物fを(B)層、熱可塑性樹脂組成物aを(A1)層、熱可塑性樹脂組成物dを(A2)層とし、それぞれ230℃に設定した押出機にて混練した後、250℃に設定した一台の共押出ダイに供給し、ダイ内で積層したものをシート状に押し出し、これを冷却装置により冷却して4層の無延伸シートを得た。この無延伸シートを80℃に加熱して縦方向に6倍延伸し、110℃に調整した熱セットロール群により熱処理を行った。その後60℃に冷却して耳部をスリットし、4層〔(C)/(B)/(A1)/(A2):肉厚5/5/25/20μm:延伸層構成1軸/1軸/1軸/1軸〕構造の肉厚55μmの積層フィルムを得た。得られた易剥離性フィルムの不透明度、層間剥離性層(B)の剥離強度、表面層(C)の破断強度を上記手法にて測定した。結果を表2に示す。
【0041】
【実施例3】
熱可塑性樹脂組成物hを(C)層とし180℃に設定した押出機にて混練し、熱可塑性樹脂組成物cを(B)層、熱可塑性樹脂組成物aを(A1)層、熱可塑性樹脂組成物bを(A2)層とし、それぞれ230℃に設定した押出機にて混練した後、250℃に設定した一台の共押出ダイに供給し、ダイ内で積層したものをシート状に押し出し、これを冷却装置により冷却して4層の無延伸シートを得た。この無延伸シートを120℃に加熱して縦方向に5倍延伸し、60℃まで冷却した。次いで、テンターオーブンを用いて再び約140℃に加熱して横方向に7倍延伸した後、160℃に調整した熱セットゾーンにより熱処理を行った。その後、60℃に冷却して、コロナ放電処理し、耳部をスリットして4層〔(C)/(B)/(A1)/(A2):肉厚1/2/90/7μm:延伸層構成2軸/2軸/2軸/2軸〕構造の肉厚100μmの積層フィルムを得た。得られた易剥離性フィルムの不透明度、層間剥離性層(B)の剥離強度、表面層(C)の破断強度を上記手法にて測定した。結果を表2に示す。
【0042】
【実施例4】
熱可塑性樹脂組成物aを(A1)層とし、230℃に設定した押出機にて混練した後、240℃に設定したダイに供給し、シート状に押し出し、これを冷却装置により冷却して無延伸シートを得た。この無延伸シートを140℃に加熱して縦方向に5倍延伸した。
熱可塑性樹脂組成物gを(C)層とし180℃に設定した押出機にて混練し、熱可塑性樹脂組成物fを(B)層とし230℃に設定した押出機で混練した後、それぞれを250℃に設定した一台の共押出ダイに供給し、ダイ内で積層したものをシート状に押し出して、上で調整した5倍延伸フィルムに積層し、更に熱可塑性樹脂組成物cを(A2)層とし、230℃に設定した押出機で混練した後、250℃に設定したダイに供給し、シート状に押し出して、5倍延伸フィルムの反対側に積層し、4層構造の積層フィルムを得た。次いで、この4層構造の積層フィルムを60℃まで冷却し、テンターオーブンを用いて再び約120℃に加熱して横方向に9倍延伸した後、150℃に調整した熱セットゾーンにより熱処理を行った。その後60℃に冷却して耳部をスリットし、4層〔(C)/(B)/(A1)/(A2):肉厚4/6/60/10μm:延伸層構成1軸/1軸/2軸/1軸〕構造の肉厚80μmの積層フィルムを得た。得られた易剥離性フィルムの不透明度、層間剥離性層(B)の剥離強度、表面層(C)の破断強度を上記手法にて測定した。結果を表2に示す。
【0043】
【実施例5】
熱可塑性樹脂組成物eを(B)層、熱可塑性樹脂組成物bを(A1)層、熱可塑性樹脂組成物dを(A2)層とし、それぞれ230℃に設定した押出機にて混練した後、250℃に設定した一台の共押出ダイに供給し、ダイ内で積層したものをシート状に押し出し、これを冷却装置により冷却して3層の無延伸シートを得た。更に、熱可塑性樹脂組成物mを(C)層として160℃に設定した押出機にて混練した後、200℃に設定したダイに供給し、シート状に押し出し、3層無延伸シートの(B)層側に積層し、4層の無延伸シートを得た。この無延伸シートを100℃に加熱して縦方向に5倍延伸し、120℃に調整した熱セットロール群により熱処理を行った。その後60℃に冷却して耳部をスリットし、4層〔(C)/(B)/(A1)/(A2):肉厚5/5/100/40μm:延伸層構成1軸/1軸/1軸/1軸〕構造の肉厚150μmの積層フィルムを得た。得られた易剥離性フィルムの不透明度、層間剥離性層(B)の剥離強度、表面層(C)の破断強度を上記手法にて測定した。結果を表2に示す。
【0044】
【実施例6】
熱可塑性樹脂組成物iを(C)層とし180℃に設定した押出機にて混練し、熱可塑性樹脂組成物dを(B)層、熱可塑性樹脂組成物aを(A)とし、それぞれ230℃に設定した押出機にて混練した後、250℃に設定した一台の共押出ダイに供給し、ダイ内で積層したものをシート状に押し出し、これを冷却装置により冷却して3層の無延伸シートを得た。この無延伸シートを150℃に加熱して縦方向に4倍延伸し、60℃まで冷却した。次いで、テンターオーブンを用いて再び約140℃に加熱して横方向に8倍延伸した後、160℃に調整した熱セットゾーンにより熱処理を行った。その後、60℃に冷却して、コロナ放電処理し、耳部をスリットして4層〔(C)/(B)/(A):肉厚8/5/67μm:延伸層構成2軸/2軸/2軸〕構造の肉厚80μmの積層フィルムを得た。得られた易剥離性フィルムの不透明度、層間剥離性層(B)の剥離強度、表面層(C)の破断強度を上記手法にて測定した。結果を表2に示す。
【0045】
【比較例1】
熱可塑性樹脂組成物eを(B)層、熱可塑性樹脂組成物bを(A1)層とし、230℃に設定した押出機にて混練した後、250℃に設定したダイに供給し、シート状に押し出し、これを冷却装置により冷却して2層の無延伸シートを得た。この無延伸シートを140℃に加熱して縦方向に4倍延伸した。
熱可塑性樹脂組成物aを(C)層として230℃に設定した押出機で混練した後、250℃に設定したダイに供給し、シート状に押し出して4倍延伸フィルムの(B)層側に積層し、更に熱可塑性樹脂組成物cを(A2)層とし、230℃に設定した押出機で混練した後、250℃に設定したダイに供給し、シート状に押し出して4倍延伸フィルムの(A1)層側に積層し、4層構造の積層フィルムを得た。次いで、この4層構造の積層フィルムを60℃まで冷却し、テンターオーブンを用いて再び約150℃に加熱して横方向に8.0倍延伸した後、155℃に調整した熱セットゾーンにより熱処理を行った。その後60℃に冷却して耳部をスリットし、4層〔(C)/(B)/(A1)/(A2):肉厚15/1/39/30μm:延伸層構成1軸/2軸/2軸/1軸〕構造の肉厚85μmの積層フィルムを得た。得られた易剥離性フィルムの不透明度、層間剥離性層(B)の剥離強度、表面層(C)の破断強度を上記手法にて測定した。結果を表2に示す。
【0046】
【比較例2】
熱可塑性樹脂組成物eを(B)層、熱可塑性樹脂組成物bを(A1)層とし、230℃に設定した押出機にて混練した後、250℃に設定したダイに供給し、シート状に押し出し、これを冷却装置により冷却して2層の無延伸シートを得た。この無延伸シートを155℃に加熱して縦方向に4倍延伸した。
熱可塑性樹脂組成物iを(C)層として180℃に設定した押出機で混練した後、200℃に設定したダイに供給し、シート状に押し出して4倍延伸フィルムの(B)層側に積層し、更に熱可塑性樹脂組成物cを(A2)層とし、230℃に設定した押出機で混練した後、250℃に設定したダイに供給し、シート状に押し出して4倍延伸フィルムの(A1)層側に積層し、4層構造の積層フィルムを得た。次いで、この4層構造の積層フィルムを60℃まで冷却し、テンターオーブンを用いて再び約150℃に加熱して横方向に9.0倍延伸した後、155℃に調整した熱セットゾーンにより熱処理を行った。その後60℃に冷却して耳部をスリットし、4層〔(C)/(B)/(A1)/(A2):肉厚12/1/40/27μm:延伸層構成1軸/2軸/2軸/1軸〕構造の肉厚80μmの積層フィルムを得た。得られた易剥離性フィルムの不透明度、層間剥離性層(B)の剥離強度、表面層(C)の破断強度を上記手法にて測定した。結果を表2に示す。
【0047】
<試験例>
上質紙の両面にポリエチレンフィルムをラミネートした片面にシリコン処理を施した厚さ173μm、密度0.9g/cm3 の離型紙のシリコン処理面に、東洋インキ化学工業(株)製の感圧粘着剤“オリバイン BPS−1109”(商品名)を固形分量で25g/m2 となるようにコンマコーターで塗工、乾燥して粘着剤層とし、実施例および比較例にて作成した積層フィルムの表面層(C)側と粘着剤層が接するように積層して、積層フィルム/粘着剤層/離型紙よりなる積層構造の易剥離性フィルムを得た。
【0048】
(剥離性)
この積層フィルム/粘着剤層/離型紙よりなる積層構造の易剥離性フィルムを5cm×5cmの正方形に切り取り離型紙を剥がした後、官製ハガキの上に貼着し、剥離性を評価した。
▲1▼ 剥離開始性
易剥離性フィルムの4辺の内1辺を手で持ち、官製ハガキより引き剥がし、表面層(C)の剥離が開始するまでの状態を観察し、
の4段階で評価した。
【0049】
▲2▼ 剥離伝播性
易剥離性フィルムの基層(A)面4辺の内1辺に粘着テープ(ニチバン(株)製、商品名「セロハンテープ」)を貼り、表面層(C)での剥離が開始し易い状態にし、基層(A)を官製ハガキより引き剥がし、表面層(C)の伝播状態と剥離力を評価し、
の4段階で評価した。
【0050】
(情報隠蔽性)
官製ハガキに文字サイズ10ポイントのアルファベット26文字を印字して、易剥離性フィルムの離型紙を剥がした後アルファベットの印字面に貼着し、易剥離性フィルムを透して見える文字の隠蔽性を目視にて判断し、良好(◎)全く見えない、やや良好(○)濃淡はあるが文字は読み取れない、やや不良(△)一部の文字が読み取れる、不良(×)全ての文字が読み取れる、の4段階で評価した。
(情報認識性)
合成紙((株)ユポ・コーポレーション製、商品名「VES85」)にバーコードプリンター((株)テック製、商品名「B30」)にてバーコード(CODE39)を印字してバーコード読みとり用サンプルを作成した。
【0051】
易剥離性フィルムの離型紙を剥がし合成紙上のバーコードの上にはり、バーコードを隠蔽したサンプルを10個作成し、易剥離性ラベルの基層(A)を引き剥がした後のバーコードをバーコードリーダー(富士電気冷凍機(株)製、LASERCHEK II)にて読みとり、バーコード認識に成功した回数を評価し、
の4段階で評価した。
結果を表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
【発明の効果】
本発明の易剥離性積層フィルムは、剥離を開始するための特殊な加工を必要とせず、小さな力で表面層(C)が剥離するので配送伝票、隠蔽シール、貼り替え防止用ラベル、改ざん防止シール、応募シール、クーポン等の幅広い用途に有効に利用することができる。
Claims (8)
- 膜厚が10〜500μmであり、無機微細粉末及び/又は有機フィラー3〜70重量%、および熱可塑性樹脂97〜30重量%を含有する基層(A)、膜厚が0.1〜10μmであり、無機微細粉末及び/又は有機フィラー15〜80重量%、および熱可塑性樹脂85〜20重量%を含有する層間剥離性層(B)、膜厚が1μm以上10μm未満であり、熱可塑性樹脂よりなり、無機微細粉末及び/又は有機フィラーを30重量%以下含有する表面層(C)が順に積層された積層フィルムを含むものであって、層間剥離性層(B)に接する基層(A)の無機微細粉末及び/又は有機フィラーの含有量が、層間剥離性層(B)の含有量よりも8重量以上%少なく、更に、表面層(C)の無機微細粉末及び/又は有機フィラーの含有量が、層間剥離性層(B)の含有量よりも低く、層間剥離性層(B)の剥離強度が5〜150g/cm幅であり、表面層(C)の破断強度が500g/cm幅以下であって、積層フィルムの表面層(C)側に粘着剤層を有し、積層フィルム貼着後の基層(A)と表面層(C)との剥離が、表面層(C)の破断によって開始し、表面層(C)よりも強度の弱い層間剥離性層(B)に伝播して該層の破壊によって行われることを特徴とする易剥離性の隠蔽シール又は貼り替え防止用ラベル。
- 膜厚が10〜500μmであり、無機微細粉末及び/又は有機フィラー3〜70重量%、および熱可塑性樹脂97〜30重量%を含有する基層(A)、膜厚が0.1〜10μmであり、無機微細粉末及び/又は有機フィラー15〜80重量%、および熱可塑性樹脂85〜20重量%を含有する層間剥離性層(B)、膜厚が1μm以上10μm未満であり、熱可塑性樹脂よりなり、無機微細粉末及び/又は有機フィラーを含有しない表面層(C)が順に積層された積層フィルムを含むものであって、層間剥離性層(B)に接する基層(A)の無機微細粉末及び/又は有機フィラーの含有量が、層間剥離性層(B)の含有量よりも8重量以上%少なく、更に、表面層(C)の無機微細粉末及び/又は有機フィラーの含有量が、層間剥離性層(B)の含有量よりも低く、層間剥離性層(B)の剥離強度が5〜150g/cm幅であり、表面層(C)の破断強度が500g/cm幅以下であって、積層フィルムの表面層(C)側に粘着剤層を有し、積層フィルム貼着後の基層(A)と表面層(C)との剥離が、表面層(C)の破断によって開始し、表面層(C)よりも強度の弱い層間剥離性層(B)に伝播して該層の破壊によって行われることを特徴とする易剥離性積層の隠蔽シール又は貼り替え防止用ラベル。
- 基層(A)と層間剥離性層(B)と表面層(C)が積層後少なくとも1軸方向に延伸されていることを特徴とする請求項1または2に記載の易剥離性の隠蔽シール又は貼り替え防止用ラベル。
- 基層(A)と層間剥離性層(B)と表面層(C)の熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂及び/又は官能基含有ポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の易剥離性の隠蔽シール又は貼り替え防止用ラベル。
- 易剥離性積層フィルムの不透明度が60〜100%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の易剥離性の隠蔽シール又は貼り替え防止用ラベル。
- 易剥離性積層フィルムの少なくとも片面にピグメントコートが施され、不透明度が60〜100%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の易剥離性の隠蔽シール又は貼り替え防止用ラベル。
- 易剥離性の隠蔽シール又は貼り替え防止用ラベルの粘着剤層側に離型紙を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の易剥離性の隠蔽シール又は貼り替え防止用ラベル。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の易剥離性の隠蔽シール又は貼り替え防止用ラベルを使用した記録物。
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