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JP4371462B2 - 合わせガラス用中間膜及び合わせガラス - Google Patents

合わせガラス用中間膜及び合わせガラス Download PDF

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  • Joining Of Glass To Other Materials (AREA)
  • Adhesive Tapes (AREA)
  • Adhesives Or Adhesive Processes (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、合わせガラス用中間膜及びその中間膜を用いた合わせガラスに関する。
【0002】
【従来の技術】
可塑化ポリビニルアセタール樹脂のような透明で柔軟性に富む樹脂を製膜してなる合わせガラス用中間膜で少なくとも一対のガラス板を接着して得られる合わせガラスは、破損時に破片が飛散せず安全性に優れているため、例えば自動車のような車輌や建築物等の窓ガラスとして広く用いられている。
【0003】
このような中間膜のなかでも、可塑剤の添加により可塑化されたポリビニルブチラール樹脂が製膜されてなる中間膜は、ガラスに対する適正な接着力、強靱な引張り強度、優れた透明性等の諸性能を兼備しているので、特に車輌の窓ガラス用として好適に用いられているが、反面、建築物の窓ガラス用としては遮音性に劣るという問題点がある。
【0004】
一般に、遮音性能は、図1に示されるように、周波数の変化に対応した透過損失として示される。上記透過損失は、JIS A−4706「サッシ」では、図1中に実線で示されるように、周波数500Hz以上の領域において遮音等級に応じてそれぞれ一定値で規定されている。
【0005】
ところで、ガラスの遮音性能は、図1中に破線で示されるように、周波数2000Hz近辺の領域でコインシデンス効果により著しく低下する。即ち、図1中の破線の谷部がコインシデンス効果による遮音性能の低下に相当し、所定の遮音性能を保持しないことを示している。
【0006】
上記コインシデンス効果とは、ガラスに音波が入射した時、ガラスの剛性と慣性とによってガラス面上を横波が伝播し、この横波と入射音とが共鳴した結果、音の透過が起こる現象を言う。
【0007】
従来の合わせガラスは、破損時における破片の飛散防止に関しては極めて優れているものの、遮音性能に関しては、通常のガラス同様、周波数2000Hz近辺の領域でコインシデンス効果による遮音性能の低下が避けられず、この点の改善が求められている。
【0008】
又、等ラウドネス曲線より、人間の聴覚は、他の周波数領域に比較して、周波数1000〜6000Hzの領域における感度が非常に高いことが知られており、コインシデンス効果による遮音性能の低下を防止することが、窓ガラスや壁等の遮音性(防音性)の向上にとって極めて重要なこととなる。
【0009】
コインシデンス効果による遮音性能の低下に関して問題となるのは、コインシデンス効果によって生じる図1中の透過損失の極小部(以下、「極小部の透過損失(dB)」を「TL値」と記す)であり、遮音性能を向上させるためには、コインシデンス効果を緩和して、上記TL値の低下を防止することが必要である。
【0010】
従来、TL値の低下を防止する手段として、合わせガラスの質量の増大、ガラスの複層化、ガラス面積の細分化、ガラス支持手段の改善等の種々の方策が採られているが、これらの方策は、いずれも十分なTL値の低下防止効果をもたらさない上に、コスト面でも実用的な価格ではないという問題点がある。
【0011】
一方、遮音性能に対する要求は最近ますます高まっており、例えば建築物の窓ガラスの場合、常温付近で優れた遮音性能を発揮することが要求される。即ち、温度に対してTL値をプロットして求められる、遮音性能が最も優れている温度{遮音性能最大温度(TLmax温度)}が常温付近であり、且つ、遮音性能の最大値{遮音性能最大値(TLmax値)}そのものが大きいという、優れた遮音性能が要求されている。
【0012】
自動車の窓ガラスの場合も同様な状況にあり、高速走行時の風切り音やエンジン部からの振動音等、高い遮音性能が要求される部位は増加しつつある。
【0013】
又、実際に使用される場合には、これら合わせガラスは低温域から高温域までの幅広い環境温度の変化に曝される。即ち、常温付近のみならず低温から高温までの広い温度領域で優れた遮音性能を発揮することが要求される。しかし、従来の最も一般的な中間膜である可塑化ポリビニルブチラール樹脂膜を用いた合わせガラスの場合でも、遮音性能最大温度(TLmax温度)が常温より高く、常温付近での遮音性能は必ずしも良くないという問題点がある。
【0014】
これらの問題点に対応するため種々の試みがなされており、例えば、特開平2−229742号公報では、「高分子物質を主成分とするガラス転移温度が15℃以下の層Aと可塑化ポリビニルアセタール膜Bとがガラス板の間に積層されていることを特徴とする遮音性合わせガラス」が開示されている。
【0015】
しかし、上記開示にある遮音性合わせガラスは、JIS A−4706の規定による遮音等級でTs−35等級を超える遮音性能を発揮しない上に、良好な遮音性能を発揮する温度領域が狭く限定されているという問題点がある。
【0016】
又、特開平4−254444号公報では、「2種の樹脂膜(A)及び(B)からなる積層膜であって、樹脂膜(A)はポリビニルアルコールを炭素数6〜10のアルデヒドでアセタール化して得たポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とからなり、樹脂膜(B)はポリビニルアルコールを炭素数1〜4のアルデヒドでアセタール化して得たポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とからなることを特徴とする遮音性合わせガラス用中間膜」が開示されている。
【0017】
しかし、上記開示にある遮音性中間膜は、確かに遮音性能の改善効果は認められ且つ温度変化による遮音性能の変動も大きくないが、過酷な条件下での実用面を考慮すると、これらの改善効果は未だ十分なものとは言えない。
【0018】
上述の如く、合わせガラスとして必要な基本性能に優れ、且つ、広い温度領域において優れた遮音性能を長期安定的に発揮する合わせガラスを得るに適する合わせガラス用中間膜は未だ実用化されていないのが現時点での実態である。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の問題点を解決するため、低温から高温までの広い温度領域において優れた遮音性能を長期安定的に発揮し、且つ、透明性、接着性、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐候性等の合わせガラスとして必要な基本性能にも優れる合わせガラスを得るに適する合わせガラス用中間膜、及び、その中間膜を用いた合わせガラスを提供することを課題とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、合わせガラスの遮音性能が中間膜の動的粘弾性特性により左右され、特に貯蔵弾性率と損失弾性率との比で表される損失正接が最も遮音性能に影響を与えることを見出した。このことから、中間膜の損失正接を制御することにより、それを用いた合わせガラスに低温から高温までの広い温度領域における優れた遮音性能を付与すべく鋭意検討を行った。
【0021】
その結果、特定の損失正接を有する2種類の樹脂膜を特定の層厚比で積層して中間膜を作製することにより、その中間膜を用いた合わせガラスは、広い温度領域、特に常温から低温側の領域において優れた遮音性能を発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0022】
即ち、請求項1に記載の発明(以下、「第1発明」と記す)による合わせガラス用中間膜は、損失正接の最大値が20〜40℃の温度範囲内にあり且つ該最大値を示す温度から±5℃の温度範囲内における損失正接が0.5以上である熱可塑性樹脂膜(A)からなる外層と、損失正接の最大値が0〜10℃の温度範囲内にあり且つ該最大値を示す温度から±5℃の温度範囲内における損失正接が0.5以上である熱可塑性樹脂膜(B)からなる内層とが積層されてなり、且つ、上記外層と内層との層厚比が1/〜1/4の範囲内にあり、上記熱可塑性樹脂膜(B)が、可塑化ポリビニルアセタール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体又はポリウレタン樹脂を含有し、上記熱可塑性樹脂膜(B)が可塑化ポリビニルアセタール樹脂を含有する場合には、該可塑化ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアセタール樹脂100重量部と、可塑剤60〜70重量部とを含むことを特徴とする。
【0023】
又、請求項2に記載の発明(以下、「第2発明」と記す)による合わせガラスは、少なくとも一対のガラス間に、上記第1発明による合わせガラス用中間膜を介在させ、一体化させてなることを特徴とする。
【0024】
第1発明による合わせガラス用中間膜(以下、単に「中間膜」と記す)の外層を構成する樹脂膜(A)は、損失正接の最大値が20〜40℃の温度範囲内にあり、且つ、該最大値を示す温度から±5℃の温度範囲内における損失正接が0.5以上であることが必要である。
【0025】
又、第1発明による中間膜の内層を構成する樹脂膜(B)は、損失正接の最大値が0〜10℃の温度範囲内にあり、且つ、該最大値を示す温度から±5℃の温度範囲内における損失正接が0.5以上であることが必要である。
【0026】
第1発明による中間膜において、外層を構成する樹脂膜(A)は、常温から高温側の領域における優れた遮音性能を確保する機能を有すると共に、中間膜として必要な優れた力学的特性と良好な成形性や取扱い作業性を付与する機能をも有する。
【0027】
従って、樹脂膜(A)の損失正接が最大値になる温度は20〜40℃の範囲内に限定される。上記温度が20℃未満であると、常温から高温側の領域における遮音性能が不十分となる。逆に上記温度が40℃を超えると、高温側の領域における遮音性能はより向上するものの、中温領域(常温付近)における遮音性能が低下し、又、膜が硬くなり過ぎるため、成形性や取扱い作業性も低下する。
【0028】
一方、第1発明による中間膜において、内層を構成する樹脂膜(B)は、常温から低温側の領域における優れた遮音性能を確保する機能を有すると共に、中間膜として必要な良好な成形性や取扱い作業性と合わせガラスとして必要な優れた耐貫通性や衝撃エネルギー吸収性を付与する機能をも有する。
【0029】
従って、樹脂膜(B)の損失正接が最大値になる温度は0〜10℃の範囲内に限定される。上記温度が0℃未満であると、膜が柔らかくなり過ぎるため、成形性や取扱い作業性が低下すると共に、得られる合わせガラスの耐貫通性も低下する。逆に上記温度が10℃を超えると、前記樹脂膜(A)と類似の特性となるため、常温から低温側の領域における遮音性能が不十分となる。
【0030】
又、第1発明による中間膜において、外層を構成する樹脂膜(A)及び内層を構成する樹脂膜(B)の損失正接は、それぞれの損失正接が最大値を示す温度から±5℃の温度範囲内において0.5以上であることが必要である。
【0031】
上記温度範囲が±5℃の範囲内を満たしていないと、樹脂膜(A)と樹脂膜(B)とを積層して中間膜を作製しても、低温から高温までの広い温度領域において優れた遮音性能を確保することが困難となる。
【0032】
又、上記温度範囲内における樹脂膜(A)及び/又は樹脂膜(B)の損失正接が0.5未満であっても、低温から高温までの広い温度領域において優れた遮音性能を確保することが困難となる。
【0033】
ここで言う損失正接(tanδ)とは、動的粘弾性特性の測定により求められる貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G”)との比を意味する。これは制振性能の指標として用いられる値でもある。
【0034】
上記動的粘弾性特性の測定は、例えば固体粘弾性測定装置(型式「RSA−II」、レオメトリック社製)のような一般的に用いられる動的粘弾性測定装置を用いて行えば良く、その原理は、微小振動を有する歪みを試料に印加し、その応答である応力を検出して弾性率を算出するものである。第1発明においては、試料に印加する歪みの周波数は10Hzとする。この周波数は、測定の容易さと合わせガラスとしての遮音性能との相関性から設定した。
【0035】
第1発明による中間膜は、前記損失正接を有する樹脂膜(A)からなる外層と前記損失正接を有する樹脂膜(B)からなる内層とが積層されてなり、且つ、上記外層と内層との層厚比が1/1〜1/4の範囲内にあることが必要であり、好ましくは1/2〜1/3である。
【0036】
ここで言う外層とは、合わせガラスに加工する時にガラスと接触する側の層を意味する。従って、中間膜の両面の外層が樹脂膜(A)から構成されていることになる。
【0037】
樹脂膜(A)を外層とすることにより、中間膜の取扱い作業性や力学的特性が優れたものとなる。換言すれば、もし樹脂膜(B)を外層とすると、樹脂膜(B)は柔らかいため、中間膜の取扱い作業性が著しく悪くなる。
【0038】
又、樹脂膜(A)からなる外層と樹脂膜(B)からなる内層とを積層した時の層厚比が1/1を超えると、常温付近での遮音性能が十分に向上しない。逆に上記外層と内層との層厚比が1/4未満であると、中間膜の剛性が著しく低下し、取扱い作業性や力学的特性が悪くなる。
【0039】
樹脂膜(A)と樹脂膜(B)との積層形態は、外層が樹脂膜(A)から構成され且つ外層と内層との層厚比が1/1〜1/4の範囲内にあれば、特に限定されるものではなく、例えば、樹脂膜(A)/樹脂膜(B)/樹脂膜(A)の三層積層であっても良いし、樹脂膜(A)/樹脂膜(B)/樹脂膜(A)/樹脂膜(B)/樹脂膜(A)の五層積層であっても良く、より多層積層であっても良い。
【0040】
上記積層の方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、各層をそれぞれ別々に成形した後、合わせガラス加工時に各層を上記条件を満たすようにガラス間に積層する方法、多層成形機を用いて、各層を上記条件を満たすように一体成形する方法等が挙げられ、いずれの方法も好適に採用される。
【0041】
こうして得られる中間膜の膜厚は、特に限定されるものではないが、従来の中間膜の場合と同様に、0.3〜1.6mmであることが好ましい。膜厚が大きいほど遮音性能はより向上するが、合わせガラスとして必要な耐貫通性やコストを考慮すると、実用的には上記膜厚であることが好ましい。
【0042】
第1発明による中間膜を構成する樹脂膜(A)及び/又は樹脂膜(B)を得るための熱可塑性樹脂組成物の主成分として用いられる熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、可塑剤の添加により可塑化されたポリビニルブチラール樹脂のような可塑化ポリビニルアセタール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ブチルゴム、ポリブタジエンゴム等の透明な粘弾性ポリマーが挙げられ、好適に用いられる。
【0043】
上記熱可塑性樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0044】
又、樹脂膜(A)用及び/又は樹脂膜(B)用として用いられる熱可塑性樹脂は同種の熱可塑性樹脂であっても良いし、例えば樹脂膜(A)用として可塑化ポリビニルブチラール樹脂を用い、樹脂膜(B)用としてエチレン−酢酸ビニル共重合体を用いるというように異種の熱可塑性樹脂であっても良い。
【0045】
上記熱可塑性樹脂のなかでも、合わせガラスとした時に優れた透明性、接着性、耐貫通性、耐候性等を発揮する可塑化ポリビニルアセタール樹脂がより好適に用いられるが、なかでも可塑化ポリビニルブチラール樹脂が特に好適に用いられる。
【0046】
又、可塑剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、一塩基酸エステル系、多塩基酸エステル系等の有機系可塑剤や、有機リン酸系、有機亜リン酸系等のリン酸系可塑剤等が挙げられ、好適に用いられる。
【0047】
上記可塑剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0048】
上記一塩基酸エステル系可塑剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、トリエチレングリコールと、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプタン酸、2−エチルヘキシル酸等の有機酸との反応によって得られるグリコール系エステルが挙げられ、これらの1種もしくは2種以上が好適に用いられる。
【0049】
又、上記リン酸系可塑剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、トリブトキシエチルフォスフェート、イソデシルフェニルフォスフェート等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上が好適に用いられる。
【0050】
樹脂膜(A)及び/又は樹脂膜(B)を得るための熱可塑性樹脂組成物中には、前記熱可塑性樹脂、上記可塑剤以外に、本発明の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、接着性調整剤、界面活性剤、着色剤等の各種添加剤の1種もしくは2種以上が含有されていても良い。
【0051】
次に、第2発明による合わせガラスは、少なくとも一対のガラス間に、上述した第1発明による中間膜を介在させ、一体化させることにより作製される。
【0052】
上記ガラスには、通常の無機透明ガラスのみならず、例えばポリカーボネート板やポリメチルメタクリレート板等のような有機透明ガラスも包含される。
【0053】
上記ガラスの種類としては、特に限定されるものではないが、例えば、フロート板ガラス、磨き板ガラス、平板ガラス、曲板ガラス、並板ガラス、型板ガラス、金網入り型板ガラス、着色されたガラス等の各種無機ガラスや有機ガラスが挙げられ、これらの1種もしくは2種以上が好適に用いられる。又、上記ガラスの厚みは、用途や目的によって適宜選択されれば良く、特に限定されるものではない。
【0054】
上記合わせガラスの製造方法は、特別なものではなく、通常の合わせガラスの場合と同様の製造方法が採用される。例えば、二枚の透明なガラス板の間に、第1発明による中間膜を挟み、これをゴムバックに入れて減圧下で吸引脱気しながら70〜110℃程度の温度で予備接着した後、オートクレーブもしくはプレスを用いて、120〜150℃程度の温度、及び、10〜15kg/cm2 程度の圧力で加熱加圧して本接着を行うことにより所望の合わせガラスを得ることが出来る。
【0055】
【作用】
第1発明による中間膜は、特定の損失正接を有する樹脂膜(A)を外層としてなるので、常温から高温側の領域における優れた遮音性能と、優れた力学的特性及び良好な成形性や取扱い作業性を発揮する。又、特定の損失正接を有する樹脂膜(B)を内層としてなるので、常温から低温側の領域における優れた遮音性能と、優れた耐貫通性や衝撃エネルギー吸収性及び良好な成形性や取扱い作業性を発揮する。
【0056】
又、第1発明による中間膜は、上記樹脂膜(A)からなる外層と上記樹脂膜(B)からなる内層との層厚比が特定の範囲となるように積層されてなるので、低温から高温までの広い温度領域において優れた遮音性能を長期安定的に発揮し、且つ、透明性、接着性、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐候性等の合わせガラスとして必要な基本性能にも優れる合わせガラスを得るに適する。
【0057】
第2発明による合わせガラスは、上記第1発明による中間膜を用いて製せられるので、低温から高温までの広い温度領域において優れた遮音性能を有し、且つ、透明性、接着性、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐候性等の基本性能にも優れる。
【0058】
【発明の実施の形態】
本発明をさらに詳しく説明するため以下に実施例をあげるが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。尚、実施例中の「部」は「重量部」を意味する。
【0059】
(実施例1)
【0060】
(1)樹脂膜(A)の作製
熱可塑性樹脂としてポリビニルブチラール樹脂{PVB−a(ブチラール化度:65.9モル%、アセチル基量:0.9モル%)}100部に対し、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート(3GH)40部を添加し、ミキシングロールで十分に混練した後、プレス成形機を用いて、150℃で30分間プレス成形し、膜厚0.2mmの樹脂膜(A)を作製した。
【0061】
(2)樹脂膜(B)の作製
熱可塑性樹脂としてPVB−c(ブチラール化度:60.2モル%、アセチル基量:11.9モル%)100部に対し、可塑剤として3GH60部を添加し、ミキシングロールで十分に混練した後、プレス成形機を用いて、150℃で30分間プレス成形し、膜厚0.4mmの樹脂膜(B)を作製した。
【0062】
(3)損失正接の測定
上記で得られた樹脂膜(A)及び樹脂膜(B)の損失正接を以下の方法で測定した。その結果は表1に示すとおりであった。
〔損失正接の測定〕
樹脂膜(A)及び樹脂膜(B)を10mm×16mmの矩形に裁断し、試験片を準備した。次いで、固体粘弾性測定装置(型式「RSA−II」、レオメトリック社製)を用いて、試験片の動的粘弾性特性を測定し、それぞれの試験片が損失正接の最大値を示す温度(Tmax)及び損失正接の最大値を求めた。又、損失正接が0.5以上となるTmaxからの温度範囲を求めた。尚、上記動的粘弾性特性の測定条件は以下のとおりであった。
印加した歪み:周波数10Hzの正弦歪みを剪断方向に歪み量0.1%で印加した
測定温度範囲:−50℃〜+100℃
昇温速度:3℃/分
【0063】
(4)中間膜及び合わせガラスの作製
上記で得られた樹脂膜(A)及び樹脂膜(B)を用い、樹脂膜(A)/樹脂膜(B)/樹脂膜(A)となるように積層して、3層中間膜を得た。次いで、この中間膜を2枚の透明なフロートガラス(縦30cm×横30cm×厚み3mm)の間に挟み、これをゴムバックに入れて20torrの真空度で20分間脱気した後、脱気したままの状態で90℃のオーブンに移し、90℃で30分間保持しつつ真空プレスし、合わせガラスの予備接着を行った。
【0064】
次いで、上記予備接着された合わせガラスをオートクレーブに入れ、温度135℃、圧力12kg/cm2 の条件で20分間本接着を行って、合わせガラスを作製した。
【0065】
(5)評価
上記で得られた合わせガラスの性能(▲1▼遮音性、▲2▼耐貫通性)を以下の方法で評価した。その結果は表1に示すとおりであった。
【0066】
▲1▼遮音性:上記で得られた合わせガラスから供試体を切り出し、この供試体をダンピング試験用の振動発生機(商品名「G21−005D」、振研社製)により加振し、そこから得られる振動特性を、機械インピーダンスアンプ(商品名「XG−81」、リオン社製)にて増幅し、振動スペクトルをFFTアナライザー(商品名「FFTスペクトラムアナライザーHP−3582AA」、横河ヒューレットパッカー社製)により解析した。こうして得られた損失係数と、ガラスとの共振周波数の比とから、周波数(Hz)と透過損失(dB)との関係を示すグラフを作成し、周波数2000Hz近辺における極小の透過損失(TL値)を求めた。尚、測定は、0℃、10℃、20℃、30℃及び40℃の各温度でそれぞれ行い、遮音性の合格基準をTL値30以上とした。
【0067】
▲2▼耐貫通性:JIS R−3212「自動車用安全ガラス試験方法」に準拠し、300mm×300mmの合わせガラス(供試体)の端部を支持枠に固定して水平に保持した状態で、その4m真上から、重量が2260±20g、直径が約82mmの表面が滑らかな鋼球を自然落下させ、鋼球が供試体を貫通しない場合を合格、鋼球が供試体を貫通した場合を不合格とした。尚、供試体は、試験の直前まで、23±2℃の室内に少なくとも4時間以上放置したものを用いた。
【0068】
(実施例2)
熱可塑性樹脂としてPVB−b(ブチラール化度:68.9モル%、アセチル基量:0.9モル%)100部に対し、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)39部を添加したこと以外は実施例1の場合と同様にして、膜厚0.15mmの樹脂膜(A)を作製した。又、実施例1の樹脂膜(B)で用いたPVB−c100部に対し、可塑剤として3GO70部を添加したこと以外は実施例1の場合と同様にして、膜厚0.4mmの樹脂膜(B)を作製した。
【0069】
(実施例3)
実施例2で作製した樹脂膜(A)をそのまま樹脂膜(A)として用いた。又、実施例1の樹脂膜(B)で用いたPVB−c100部に対し、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−n−ヘプタネート(3G7)65部を添加したこと以外は実施例1の場合と同様にして、膜厚0.6mmの樹脂膜(B)を作製した。
【0070】
(実施例4)
膜厚を0.2mmとしたこと以外は実施例2の場合と同様にして、樹脂膜(A)を作製した。又、熱可塑性樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合体{EVA(商品名「ウルトラセン725」、酢酸ビニル含有量28%、東ソー社製)}をそのまま用いたこと以外は実施例1の場合と同様にして、膜厚0.4mmの樹脂膜(B)を作製した。
【0071】
(実施例5)
膜厚を0.1mmとしたこと以外は実施例1の場合と同様にして、樹脂膜(A)を作製した。又、膜厚を0.2mmとしたこと以外は実施例1の場合と同様にして、樹脂膜(B)を作製した。
【0072】
(実施例6)
実施例1で作製した樹脂膜(A)をそのまま樹脂膜(A)として用いた。又、熱可塑性樹脂として、ポリオール(商品名「N4002」、アジピン酸とエチレングリコールとの縮合生成物、日本ポリウレタン工業社製)とイソシアネート(水添MDI、住友バイエルウレタン社製)との反応生成物に、硬化剤として1,4−ブタンジオールを添加して得られたポリウレタン樹脂(PU)をそのまま用いたこと以外は実施例1の場合と同様にして、膜厚0.4mmの樹脂膜(B)を作製した。
【0073】
(比較例1)
実施例1で作製した樹脂膜(A)をそのまま樹脂膜(A)として用いた。又、実施例1の樹脂膜(B)で用いたPVB−c100部に対する3GH(可塑剤)の添加量を30部としたこと以外は実施例1の場合と同様にして、膜厚0.4mmの樹脂膜(B)を作製した。
【0074】
(比較例2)
膜厚を0.4mmとしたこと以外は実施例1の場合と同様にして、樹脂膜(A)を作製した。又、膜厚を0.2mmとしたこと以外は実施例1の場合と同様にして、樹脂膜(B)を作製した。
【0075】
(比較例3)
膜厚を0.3mmとしたこと以外は実施例1の場合と同様にして、樹脂膜(A)を作製した。又、膜厚を0.2mmとしたこと以外は実施例1の場合と同様にして、樹脂膜(B)を作製した。
【0076】
(比較例4)
実施例1で作製した樹脂膜(A)をそのまま樹脂膜(A)として用いた。又、熱可塑性樹脂としてPVB−d(ブチラール化度:30.0モル%、アセチル基量:11.9モル%)100部に対し、可塑剤として3GH70部を添加したこと以外は実施例1の場合と同様にして、膜厚0.4mmの樹脂膜(B)を作製した。
【0077】
実施例2〜6、及び、比較例1〜4で得られた各樹脂膜(A)及び各樹脂膜(B)の損失正接を実施例1の場合と同様にしてそれぞれ測定した。その結果は表1に示すとおりであった。
【0078】
次に、実施例2〜4及び6、及び、比較例1、3及び4で得られた各樹脂膜(A)及び各樹脂膜(B)を用い、実施例1の場合と同様にして、それぞれ樹脂膜(A)を外層とし、樹脂膜(B)を内層とする3層中間膜及び合わせガラスを得た。
【0079】
又、実施例5では、中間膜及び合わせガラスの作製において、樹脂膜(A)/樹脂膜(B)/樹脂膜(A)/樹脂膜(B)/樹脂膜(A)となるように積層したこと以外は実施例1の場合と同様にして、5層中間膜及び合わせガラスを得た。
【0080】
さらに、比較例2では、中間膜及び合わせガラスの作製において、樹脂膜(B)を外層とし、樹脂膜(A)を内層とするために、樹脂膜(B)/樹脂膜(A)/樹脂膜(B)となるように積層したこと以外は実施例1の場合と同様にして、3層中間膜及び合わせガラスを得た。
【0081】
次いで、実施例2〜6、及び、比較例1〜4で得られた合わせガラスの性能(▲1▼遮音性、▲2▼耐貫通性)を実施例1の場合と同様にして評価した。その結果は表1に示すとおりであった。
【0082】
【表1】
Figure 0004371462
【0083】
表1から明らかなように、第1発明による実施例1〜6の中間膜を用いて作製された第2発明による実施例1〜6の合わせガラスは、いずれも、0℃〜40℃の広い温度領域において優れた遮音性能を発揮し、且つ、耐貫通性にも優れていた。
【0084】
これに対し、損失正接の最大値を示す温度が10℃を超えていた樹脂膜(B)を内層とする比較例1の中間膜を用いて作製された比較例1の合わせガラス、及び、損失正接が0.5以上である温度範囲が最大値を示す温度から±5℃の範囲内を満たしていなかった樹脂膜(B)を内層とする比較例4の中間膜を用いて作製された比較例4の合わせガラスは、いずれも、常温から低温側の温度領域における遮音性能が劣っていた。又、外層{樹脂膜(A)}と内層{樹脂膜(B)}との層厚比が1/1を超えていた比較例3の中間膜を用いて作製された比較例3の合わせガラスも、常温から低温側の温度領域における遮音性能がやや劣っていた。
【0085】
さらに、樹脂膜(B)を外層とし、樹脂膜(A)を内層とする比較例2の中間膜を用いて作製された比較例2の合わせガラスは、遮音性能は優れていたものの、耐貫通性が悪く、合わせガラスとしての実用性に欠けるものであった。
【0086】
【発明の効果】
以上述べたように、第1発明による合わせガラス用中間膜は、低温から高温までの広い温度領域において優れた遮音性能を長期安定的に発揮し、且つ、透明性、接着性、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐候性等の合わせガラスとして必要な基本性能にも優れる合わせガラスを得るに適する。
【0087】
又、上記中間膜を用いた第2発明による合わせガラスは、低温から高温までの広い温度領域において優れた遮音性能を長期安定的に発揮すると共に、合わせガラスとして必要な上記基本性能にも優れるので、建築物や自動車、車輛等の遮音性合わせガラスとして好適に用いられる。
【0088】
【図面の簡単な説明】
【図1】合わせガラスの遮音性能を示すグラフである。

Claims (2)

  1. 損失正接の最大値が20〜40℃の温度範囲内にあり且つ該最大値を示す温度から±5℃の温度範囲内における損失正接が0.5以上である熱可塑性樹脂膜(A)からなる外層と、損失正接の最大値が0〜10℃の温度範囲内にあり且つ該最大値を示す温度から±5℃の温度範囲内における損失正接が0.5以上である熱可塑性樹脂膜(B)からなる内層とが積層されてなり、且つ、上記外層と内層との層厚比が1/〜1/4の範囲内にあり、
    上記熱可塑性樹脂膜(B)が、可塑化ポリビニルアセタール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体又はポリウレタン樹脂を含有し、
    上記熱可塑性樹脂膜(B)が可塑化ポリビニルアセタール樹脂を含有する場合には、該可塑化ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアセタール樹脂100重量部と、可塑剤60〜70重量部とを含む
    ことを特徴とする合わせガラス用中間膜。
  2. 少なくとも一対のガラス間に、請求項1に記載の合わせガラス用中間膜を介在させ、一体化させてなることを特徴とする合わせガラス。
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