JP4366771B2 - 熱可塑性高分子シートの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性高分子シートの製造方法において、平面のリタデーションが小さく、平面平滑性に優れ、シートの反りが少ない熱可塑性高分子シートを生産性良く製造する方法に関するもので、この様なシートは光学用シートに適している。
【0002】
【従来の技術】
従来、液晶表示素子用透明電極基板にはガラス基板が採用されてきたが、ガラス基板を用いた液晶表示素子においては、ガラス基板自体が厚いため液晶表示素子自体の薄型化が困難であると共に、軽量化しにくいという欠点があり、更に、可とう性、耐衝撃性の点で問題があった。
このガラス基板液晶表示素子のもつ欠点を改善する方法として、プラスチックフィルムを用いて液晶パネルを作製することにより、液晶パネルの軽量化、耐衝撃性の向上が検討されている。
例えば、特開昭53−68099号公報及び特開昭54−126559号公報には、ガラス基板の代わりに導電性酸化金属物質を蒸着した長尺のポリエステルフィルムを用いて液晶表示素子パネルを連続して製造することが示されているが、光学的特性において優れているとは言い難いものであった。
この問題を解決するため、光学等方性に優れた熱可塑性樹脂シートをこれらの用途に応用すべく研究を重ねたところ、溶融押し出し製膜工程において発生する分子配向に起因するシートのリタデーションが重大な欠点となることが分かった。例えば、TN(Twisted Nematic)型液晶表示素子では偏光板により直線偏光された入射光が、透明電磁シートの複屈折性及びそのシート面内の偏差から部分的に異なる楕円偏光になるため、コントラストの低下、表示ムラを生じさせている。 更に、STN(Super Twisted Nematic)型液晶表示素子では、透明電磁シートの複屈折性より発現する光学的位相差からTN型液晶表示素子以上に高精細な表示が得られないばかりでなく、液晶分子より発生するリターゼイションもあることから、光学的位差を補償するための偏光板、位相差板及び透明電極シートによる液晶セルの組み合わせの最適化が非常に煩雑なものとなっている。
【0003】
更に、熱可塑性樹脂シートを用いた液晶セルが実用化されるにつれて、表示面積が大型化し、電極同志を均一間隔に保つ、いわゆるギャップ維持のため、基材として変形し難いことが要求されている。基材厚みは当初の100μm厚から300μmを越える場合が出てきており、高分子シートを用いた開発も行われているが、平面のリタデーションによる液晶表示のコントラストの問題、表面性、平面平滑性が原因である表示欠点の問題、反りによる液晶封子部の剥がれ、及び素子の変形が課題となっており、早急な改善が望まれている。
光学用材料の位相差を改善する方法として、特殊な2価フェノールを構造単位とする特殊ポリカーボネートを用いる方法(特開昭63−108023号公報)、固有複屈折が正の材料と負の材料をブレンドする方法(T.Inoue et al.,Journalof Polymer Science ,Part B,25,1629(1987).)、固有複屈折が正のポリカーボネートと負のポリスチレンをグラフト共重合させる方法(日経ニューマテリアル、1988年9月26日号、60〜62頁の記事)、極性基を有したノルボルネン系樹脂を用いる方法(機能材料、1993年1月号、40〜52頁の記事)等が提案されているがいずれも実用化には至っていない。
【0004】
又、押し出し法にて押し出されたシートが冷却ロールで冷却固化され巻き取られるまでの短時間の間に、ダイス内で生じるせん断応力や、ダイスリップから出た樹脂が延伸されることによる流れ方向及び厚み方向に生じる温度分布によりシート内で発生する面内及び厚み方向での分子配向を避けることが出来なかった。この傾向はシートが厚くなればなるほど顕著になる性質があり、表示画面の大型化に伴い重大な欠点となっていた。
表面平滑性については、一般的に知られているTダイやコートハンガーダイを使用した溶融押し出し法では、熱可塑性樹脂高分子の通る流路内でのせん断応力や滞留、更には、ダイスの面やリップの精度により生じるとされているダイラインと呼ばれる筋がシート面に発生し、表面の平滑性を低下させている。表面平滑性を向上させる手段として、熱可塑性高分子を溶剤に溶解させ、フィルムもしくは金属ベルト等にコーティングし乾燥させる溶剤キャスト法が知られているが、シート厚みが厚くなった場合の生産性及びシート中の残留溶剤が問題となる。
【0005】
他方、表面を高精度に仕上げたロールとロール、金属ベルトとロール、又は金属ベルトと金属ベルトの間で溶融押し出した熱可塑性高分子をニップし、ロール又は金属ベルトの表面を転写させる方法もあるが、挟み込みを行うため光学的歪み、即ち、リタデーションが発生し、光学用のシートとして使用することは困難である。又、表面を高精度に仕上げた金型に熱可塑性高分子を封入して成形する射出成型法もCDディスクで知られるようにリタデーションの制御が可能であり、生産性も問題ないことから有力候補と考えられるが、射出成型法では数mmオーダーの厚みのシートが限界であり、数百μmの厚みには対応できない。
表面性を向上させるために後加工を行うことも知られているが、表面を高精度で仕上げた板でシートをプレスし、表面平滑性を向上させる方法は生産性が悪く、大量生産には向いておらず、又、PETフィルムで知られてるような延伸加工を行う方法は、シートの表面は向上するが複屈折が生じるため光学用シートの製造方法としては適さない。
【0006】
シートの反りについては、一般的に知られている冷却ロールでの冷却方法は、冷却固化時に冷却ロールの円周を形取ることによりシートの反りが発生すると考えられているが、その解決方法として極めて大きな冷却ロールを使用し曲率半径を増加させることが考えられるが経済的に適さない。
又、曲率のない平板上で高分子シートを冷却固化させることにより解決が見いだされると考えられるが、冷却面に接触している高分子シートの表面温度と高分子シートの反対側の表面温度との差によりシートに反りが発生しやすくなる。
他方、射出成型法、板によるプレス法、金属ベルトによるニップ法等はシートに反りを生じさせない製法であるが、前述のように光学用シートとしては平面のリタデーションの点で問題がある。
【0007】
本発明者らは、これら問題点を解決するため検討を行い、特願平11−37823号、特願平11−51423号を出願し、溶融押し出した熱可塑性高分子シートを金属ベルト上に接触させ、金属ベルトの各部分の温度条件を制御させることにより表面平滑性に優れ、複屈折率が小さく、且つシートの反りの少ない目的とする熱可塑性高分子シートを得ることは可能となった。しかし、高分子シートを金属ベルトから引き離す際に、高分子シートと金属ベルト溶融密着し、外観不良を生じ易く、連続生産性に問題が残っていた。
このように、表面平滑性に優れ、複屈折率が小さく、シートの反りが小さく、且つ安定して連続生産可能な熱可塑性高分子シートの製法は現状技術では困難であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的とするところは、高分子シートの表面平滑性が優れ、複屈折率が小さい、つまり光学的位相差の小さいシートであり、更に高分子シートの反りが小さく、液晶表示パネル用として問題なく使用出来る熱可塑性高分子シートの連続生産可能な製造方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、Tダイもしくはコートハンガーダイから溶融押し出された熱可塑性高分子シートを、表面粗さの最大(Rmax)が0.1μm以下で、溶融押し出された熱可塑性高分子シートの流れ方向に対し、曲率のない形で接触している時間が20秒以上ある長さの金属ベルトを用いて冷却シート化する熱可塑性高分子シートの製造方法において、熱可塑性高分子シートが金属ベルトに接触する最初の部分の金属ベルトの温度(V1)が熱可塑性高分子のガラス転移点(Tg)に対し、Tg−20≦V1≦Tg+100(℃)の範囲にあり、熱可塑性高分子シートの流れ方向に対し曲率のない部分の金属ベルトの温度(V2)が、Tg−30≦V2≦Tg+30(℃)の範囲にあり、冷却された熱可塑性高分子シートが、金属ベルトから離れる部分の金属ベルトの温度(V3)が、V3<Tg−100(℃)であり、且つ、V3<V2≦V1(℃)の範囲にある熱可塑性高分子シートの製造方法である。
好ましい実施形態としては、金属ベルトに接触している側の熱可塑性高分子シートの表面温度と熱可塑性高分子シートの反対側の表面温度を同じ温度であり、Tダイもしくはコートハンガーダイの熱可塑性高分子が通過する面の表面粗さの最大(Rmax)が、0.5μm以下であり、ダイスのリップ間隙が熱可塑性高分子シートの厚みに対し、3倍以上50倍以下である前記熱可塑性高分子シートの製造方法である。
また、本発明は、Tダイもしくはコートハンガーダイから溶融押し出される熱可塑性高分子シートが光学用シートであり、熱可塑性高分子シートのガラス転移点が150℃以上であり、シート厚みが50μm以上1000μm以下であり、平面に於けるリタデーションが20nm以下であり、少なくともシートの片面の表面の粗さが0.1μm以下であり、且つ300mm角のシートの反り量が5mm以下である前記熱可塑性高分子シートの製造方法である。
更に本発明は、熱可塑性高分子シートがガラス転移点温度150℃以上の非晶質樹脂であり、好ましくは熱可塑性高分子シートがポリエーテルサルホンである前記熱可塑性高分子シートの製造方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に使用する熱可塑性高分子のガラス転移点(Tg)は、150℃以上が好ましく、更に好ましくは180℃以上である。熱可塑性高分子のガラス転移点(Tg)が150℃未満になると液晶組立工程の熱処理、例えば、配向膜焼成及びシール硬化温度にてシートが軟化して不具合が生じてしまう。
本発明に於けるTgが150℃以上の熱可塑性高分子としては、例えば、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルイミド、高耐熱ポリカーボネート、ノルボルネン系高分子及びこれをブレンドした樹脂をあげることができるが、中でもポリエーテルサルホンが好ましい。又イミドで変性した高分子、例えばイミド変性ポリメチルメタクリレート等も用いることができる。
【0011】
本発明の熱可塑性高分子シートの厚みは、50μm以上1000μm以下が好ましく、更に好ましくは150μm以上500μm以下である。高分子シートの厚みが50μm未満であるとガラスのラインに転用した場合に取り扱いが困難であり、又、液晶のセルギャップ保持が難しく、特に、大面積の液晶表示素子ではセルギャップ保持することは出来ない。1000μmを越えると液晶表示がダブルイメージと呼ばれる表示不良を起こし、更に液晶表示素子の厚みが厚くなり機能上好ましくない。
【0012】
本発明の熱可塑性高分子シートの平面のリタデーションは、好ましくは20nm以下、更に好ましくは10nm以下である。平面のリタデーションとは、Re=(Nx−Ny)×dで表されるもので、Nxは高分子シート内面の最大屈折率であり、Nyは高分子シート内面の最小屈折率である。dはシートの厚みである。リタデーションが20nmを越えると液晶表示のコントラストの低下が発生し、表示が明瞭に見えなくなる。
【0013】
本発明の熱可塑性高分子シートの表面粗さ(Rmax)は0.1μm以下が好ましく、更に好ましくは0.05μm以下である。表面の粗さの最大が0.1μmを超えると、液晶のセルギャップ異常が発生し表示不良となる。熱可塑性高分子シートの反りは、300mm角の大きさで5mm以下が好ましく、更に好ましくは3mm以下で、より好ましくは1mm以下である。高分子シートの反りが5mmを越えると液晶表示のセルギャップの保持が難しく、表示不良になるばかりか、シートの反りによる応力により液晶セルが変形し、シール部が剥離するといった信頼性の低下につながる。
【0014】
熱溶融された熱可塑性高分子が通過するダイス面の表面粗さの最大(Rmax)は、0.5μm以下が好ましく、更に好ましくは0.3μm以下である。表面粗さの最大(Rmax)が0.5μmを越えると、ダイスより押し出された高分子シートの表面は、ダイスの表面性の影響を受けダイラインと呼ばれる筋、つまり、シートの表面に凹凸の筋が発生し、金属ベルトを通しても消す去ることは困難である。
【0015】
ダイスのリップ間隔は、シート厚みに対し3倍以上50倍以下であることが好ましく、更に好ましくは5倍以上40倍以下である。ダイスリップの間隔がシートの厚みに対し3倍未満であるとダイスより溶融押し出された高分子シートを引き延ばす作用が少なくなり、高分子シートの表面粗さが悪化する。ダイス表面の表面粗さを向上させることにより改善は出来るが技術的にも経済的にも問題がある。50倍を越えると高分子シートの表面粗さに関しては、改善の方向であるが、厚み調整が難しく、厚みのバラツキが大きくなる等の他に、高分子シートに延伸作用が働き、高分子シートのリタデーションが悪化する原因ともなる。
【0016】
金属ベルトの表面粗さの最大(Rmax)0.1μm以下が好ましく、更に好ましくは0.05μm以下である。高分子シートは金属ベルトの面を転写するため、金属ベルトの表面性が0.1μmを越えると高分子シートの表面粗さの最大も0.1μm以上となるため光学用シートとしては問題となる。
【0017】
金属ベルトの長さは、高分子シートの流れ方向に対し曲率がない位置での冷却時間が20秒以上であることが必要であり、好ましくは30秒以上である。冷却時間が20秒未満となる金属ベルトを使用すると高分子シートが十分に冷却されず、シートの反りが発生する原因となり、また、十分に冷却されないと高分子シートのリタデーションが悪化する。
【0018】
ダイスリップから溶融押し出された熱可塑性高分子シートが最初に接触する部分の金属ベルトの温度(V1)は、熱可塑性高分子のガラス転移点(Tg)に対し、Tg−20≦V1≦Tg+100(℃)の範囲であり、好ましくはTg−10≦V1≦Tg+80(℃)である。V1がTg−20(℃)未満であるとダイスより溶融押し出された高分子シートが急冷され、急冷と呼ばれる外観不良となる。また、V1がTg+100(℃)以上であるとダイス温度より高い温度で冷却する不具合の他、高分子シートが熱分解する可能性がある。
【0019】
シートの流れ方向に対し曲率のない部分の金属ベルトの温度(V2)は、Tg−30≦V2≦Tg+30(℃)の範囲であり、好ましくは、Tg−20≦V2≦Tg20(℃)である。V2の温度がTg−30(℃)未満であるとV1の温度と同様に冷却シワが発生してしまい、Tg+30(℃)を越えると、高分子シートの固化が十分に行われず、シートに反りが発生することと、高分子シートのリタデーションが悪化してしまうことが問題となる。V2の温度条件は、曲率のない金属ベルト上でシートの流れに対し、温度が低くなるように変化を付けることも可能である。
【0020】
金属ベルトにより冷却された高分子シートが金属ベルトから離れる部分の金属ベルトの温度(V3)は、V3<Tgー100(℃)である。熱可塑性高分子シートの分子構造はV1、V2の条件で決定されており、即ち平面の平滑性、平面のリタデーションも変わることがないため、金属ベルトから離れる時点で如何に安定して引き離せるかが連続生産性のポイントとなる。V3≧Tg−100(℃)の場合高分子シートが金属ベルトより離れる際に高分子シートが金属ベルトに溶融密着することがあり、外観不良を引き起こし高分子シートの安定した連続生産の問題となる。V3<Tg−100(℃)の場合、高分子シートの厚み方向の温度分布が均一な条件下では、すでに一定化した物性の高分子シートが安定した収縮を開始し、金属ベルトの収縮との差が拡大するため、特に冷却シワを発生することなく、安定して金属ベルトより離すことが可能となり、反りの少ない熱可塑性高分子シートの連続生産が可能となる。
更に、V1、V2,V3の温度はV3<V2≦V1(℃)の関係にあるのが必要であり、この関係にないと効率のよい高分子シートの生産は行われない。
【0021】
又、高分子シートの金属ベルトと接触している面とは反対側の高分子シート面を金属ベルトと同じ温度にすることが好ましく、これにより高分子シートの厚み方向の温度分布を低減し、熱履歴による高分子シートの反りを改善できる。金属ベルト及び高分子シートの反対面を加熱する方法としては、赤外線ヒーター加熱、遠赤外線ヒーター加熱、熱媒オイル、水蒸気などの加熱方法が考えられるがいずれであっても支障がない。
ダイスから溶融押し出された高分子シートを金属ベルトに密着させるために、金属ベルトと同様の温度に制御されたエアーを吹き付けたり、帯電固定により密着させたりしてもよい。
この様な生産方法により製造された高分子シートを用い、液晶表示素子を作成することによって、表示欠点のない、フラットな液晶表示が得られる。
【0022】
【実施例】
以下本発明を実施例、比較例によって説明する。
シートの光学的物性は次の方法により測定した。
(1)シート厚み
接触式ダイヤルゲージで高分子シートの幅方向に20mm間隔で測定した平均値。
(2)高分子シートの表面粗さの最大(Rmax)
接触式の精密段差計(TENCOR INSTRUMENTS製 ALPHA−STEP200)により、高分子シートの幅方向に2mmのスキャン幅にて全幅を測定した凹凸の最大値。
(3)高分子シートのリタデーション
オリンパス(株)製偏光顕微鏡BH2とベレックコンペンセーターを用い、波長550nmでのリタデーションを測定した。
(4)高分子シートの反り
高分子シートの流れ方向に300mm長さ、幅方向に300mm長さに切り取った正方形のサンプルを、定盤に対して、高分子シートの表側を上にした場合と下にした場合の、定盤の面から最大に離れた高分子シートの高さを測定し、その最大値をシートの反りとした。
(5)金属ベルトの表面粗さの最大(Rmax)
接触式表面粗さ計((株)ミツトヨ製のサーフテスト301)により、金属ベルトの幅方向にカットオフ長さ0.8mmにて全幅を測定したときの凹凸の最大値。
(6)ダイスの表面粗さの最大(Rmax)
接触式表面粗さ計((株)ミツトヨ製のサーフテスト301)により、ダイスの幅方向にカットオフ長さ0.8mmにて全幅を測定したときの凹凸の最大値。
【0023】
《実施例1》
住友化学工業(株)のポリエーテルサルホン樹脂:ビクトレックスPES4100(Tg=226℃)を表面粗さの最大(Rmax)が0.4μm、リップ間隙が3mmのダイスを用い、表面粗さの最大(Rmax)が0.1μm、ダイから押し出された高分子シートが流れ方向に対し曲率のない形で接触している時間が22秒となる金属ベルトを使用し、金属ベルトの温度(V1)を250℃、(V2)の温度を210℃、(V3)の温度が110℃、高分子シートの金属ベルトが接触している面とは反対側の面を赤外線ヒーターにより、金属ベルト側のシート表面温度と同じ温度にして、厚みが400μmシートを作成した。その結果、平面に於けるリタデーションが15nmであり、且つ、金属ベルト面に節した高分子シートの表面の粗さの最大(Rmax)が0.06μm、300mm角の高分子シートの最大反り量が2mmである高分子シートを安定して、連続的に得ることができた。
実施例1で得られた400μm厚みのシートを用い、分子量1540、融点70℃のエポキシアクリレートプレポリマー(昭和高分子製、VR−60)100重量部、酢酸ブチル400重量部、セロソルブアセテート100重量部、ベンゾインエチルエーテル2重量部を50℃にて撹拌、溶解して均一な溶液としたものをグラビヤロールコーターで塗布し、80℃で10分間加熱して溶媒を除去し、80w/cmの高圧水銀灯により15cmの距離で30秒間照射して樹脂を硬化させ、0.5μm厚の有機層を両面に形成した。
次にこのシートの上にDCマグネトロン法により初期真空度3×10-4Paに引き、酸素/アルゴンガス9%の混合ガスを導入、3×10-1Paの条件下において無機層を製膜し500Å厚のSiO2を得た。この無機膜の酸素バリヤー性はモコン法により測定したところ1cc/24hr・m2であり、表面抵抗率を測定したところ8.1×1012Ωであった。
次に透明導電膜として、同じくDCマグネトロン法により初期真空度3×10-4Paに引き、酸素/アルゴンガス4%の混合ガスを導入し、1×10-1Paの条件下に於いて製膜し、In/In+Snの原子比が0.98であるIn2O3からなる透明導電膜を得た。測定の結果、膜厚は1600Å、非抵抗は4×10-4Ω−cmであった。
成膜後、レジストを塗布、現像し、エッチング液として10vol%HCL、液温40℃中でパターンエッチングし、対角長さ3インチ、L/S=150/50μmのアクティブマトリックス用パターンを形成した。パターン形成後、配向膜を塗布し、150℃2hrの焼成処理を行った後、ラビング処理を行った。ラビング処理後、スペーサーを散布し、シール剤を塗布し、150℃でシール硬化させてセル化し、液晶を注入した。偏光板をコントラストの最大となる位置に貼り合わせ、点灯試験を行ったところ、シートのリタデーションや液晶のセルギャップ異常による表示欠点は見られず、コントラストの良い表示を示した。また、液晶セルの形状は、フラットであり、定盤上での反りは全く確認されなかった。
【0024】
《比較例1》
実施例1の高分子シート作成の条件の内、高分子シートが金属ベルトより離れるときの金属ベルト温度(V3)を140℃とし、他は実施例1と全て同一条件で高分子シートを作成すると、高分子シートが金属ベルトに溶着して、離れ難く連続生産できなかった。この結果、平面に於けるリタデーションは実施例1と同様15nmであったが、この時高分子シートの反りは2〜7mmとばらついていた。又この高分子シートを使用し、同様の方法で液晶表示素子を作成したところ、液晶のセルギャップ保持が難しく、表示不良が発生した。
【0025】
《比較例2》
実施例1の条件の内、V1の温度を190℃としたところ、金属ベルト上で
皺が発生しシートかできなかった。
【0026】
《比較例3》
実施例1の条件の内、V2の温度を265℃としたところ、高分子シートの反りが15mm、平面のリタデーションが70nmとなった。このシートを用い実施例1と同様に液晶セルを作成したところコントラストが悪く、表示が明瞭に認識できないことが確認できた。
【0027】
《 比較例4》
実施例1の条件の内、V2の温度を180℃としたところ、高分子シートの平面リタデーションは40nmとなった。このシートを用い実施例1と同様の液晶セルを作成したところ、セルギャップ異常による表示欠点が確認された。
【0028】
《比較例5》
実施例1の条件の内、金属ベルトの表面粗さの最大(Rmax)を0.3μmとしたところ、シートの表面粗さの最大(Rmax)は0.5μmとなった。このシートを用い、実施例1と同様に液晶セルを作成したところセルギャップ異常による表示欠点が確認された。
【0029】
《比較例6》
実施例1の条件の内、ダイから押し出された高分子シートが流れ方向に対し曲率のない形で接触している時間が15秒となる金属ベルトを使用したところ、高分子シートの平面のリタデーションが45nm、シートの反りが12mmとなった。
【0030】
《比較例7》
実施例1の条件の内、高分子シートの金属ベルトに接触している反対側のシート面にある赤外線ヒーターをOFFにしたところ、高分子シートの平面のリタデーションが25nm、シートの反りが8mmとなった。このシートを用い、実施例1と同様に液晶セルを作成したところ、コントラストが悪く表示が明瞭でなく、セルギャップ不良による表示ムラが発生し、又液晶セルに反りが発生した。
【0031】
《比較例8》
実施例1の条件の内、ダイスのリップ間隔を1mmとしたところ、高分子シートの表面粗さの最大値(Rmax)が、1.8μmとなった。このシートを用い、実施例1と同様に液晶セルを作成したところ、セルギャップ異常による表示欠点が確認された。
【0032】
【発明の効果】
本発明により平面のリタデーションが小さく、表面平滑性が優れ、基板の反りが少ない熱可塑性高分子シートの安定した連続製造方法が可能になった。また、本発明により得られたシートは光学用シートとして最適で、フレキシブル液晶表示素子用透明電極シートとして液晶表示パネルとして実装した場合表示ムラのない高精細な表示を示した。
Claims (5)
- Tダイもしくはコートハンガーダイから溶融押し出された熱可塑性高分子シートを、表面粗さの最大(Rmax)が0.1μm以下で、溶融押し出された熱可塑性高分子シートの流れ方向に対し、曲率のない形で接触している時間が20秒以上ある長さの金属ベルトを用いて冷却シート化する熱可塑性高分子シートの製造方法において、
前記熱可塑性高分子シートがポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルイミド、高耐熱ポリカーボネート、ノルボルネン系高分子またはこれらの混合物またはイミドで変性した高分子からなり、
かつ前記熱可塑性高分子シートが金属ベルトに接触する最初の部分の金属ベルトの温度(V1)が前記熱可塑性高分子のガラス転移点(Tg)に対し、Tg−20≦V1≦Tg+100(℃)の範囲にあり、熱可塑性高分子シートの流れ方向に対し曲率のない部分の金属ベルトの温度(V2)が、Tg−30≦V2≦Tg+30(℃)の範囲にあり、冷却された熱可塑性高分子シートが、金属ベルトから離れる部分の金属ベルトの温度(V3)が、V3<Tg−100(℃)であり、且つ、V3<V2≦V1(℃)の範囲にあることを特徴とする熱可塑性高分子シートの製造方法。 - 金属ベルトに接触している側の熱可塑性高分子シートの表面温度と熱可塑性高分子シートの反対側の表面温度を同じ温度である請求項1記載の熱可塑性高分子シートの製造方法。
- Tダイもしくはコートハンガーダイの熱可塑性高分子が通過する面の表面粗さの最大(Rmax)が、0.5μm以下であり、ダイスのリップ間隙が熱可塑性高分子シートの厚みに対し、3倍以上50倍以下である請求項1又は2記載の熱可塑性高分子シートの製造方法。
- Tダイもしくはコートハンガーダイから溶融押し出される熱可塑性高分子シートが光学用シートであり、熱可塑性高分子シートのガラス転移点が150℃以上であり、シート厚みが50μm以上1000μm以下であり、平面に於けるリタデーションが20nm以下であり、少なくともシートの片面の表面の粗さが0.1μm以下であり、且つ300mm角のシートの反り量が5mm以下である請求項1〜3記載の熱可塑性高分子シートの製造方法。
- 熱可塑性高分子シートがガラス転移温度150℃以上の非晶質樹脂である請求項1〜4記載の熱可塑性高分子シートの製造方法。
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