JP4363764B2 - ポリカーボネート樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リサイクル性に優れたポリカーポネート樹脂とスチレン系樹脂とを含むポリカーボネート樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、優れた成形加工性を保持しながら、耐加水分解性を向上させたポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂とを含むポリカーボネート樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート樹脂は、耐熱性、機械特性、寸法安定性等に優れた樹脂として、電気電子分野、OA機器分野、精密・機械分野、医療分野、建材分野等に幅広く使用されている。しかし、一方、成形加工性、耐加水分解性等に充分とは言えない点があり、ポリカーボネート樹脂にアクルロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)、メチルメタアクリレート・ブタジエン・スチレン樹脂(MBS樹脂)、耐衝撃性ポリスチレン等をアロイ化する試みが成されてきた。これらの改良により、成形加工性についてはある程度改善が行われている。しかし、耐加水分解性についての改良は充分とは言えず、近年、特に高まっているリサイクルへの要求に応えるには至っていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明では、成形加工性と耐加水分解性とを同時に改良するポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂とを含むポリカーボネート樹脂組成物を提供する。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題につき種々検討した結果、ポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂とからなるポリカーボネート樹脂組成物において、特定の分子量分布を有するポリカーボネート樹脂を使用することにより、優れた成形加工性を保持しながら、耐加水分解性を大幅に向上させることを見出した。
【0005】
すなわち、本発明は、
(1)(A)カーボネート原料とジヒドロキシ化合物とを反応させて得られたポリカーボネート樹脂であって、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2.2以下であり、かつ下記式で算出される粘度平均分子量(Mv)と分子末端数から算出される数平均分子量(Mn’)との比(Mv/Mn’)が1.40以下であるポリカーボネート樹脂1〜99重量部
【数2】
ηsp/C=[η]×(1+0.28ηsp)
[η]=1.23×10-4×Mv0.83
(式中、ηspはポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液について20℃で測定した比粘度であり、Cはこの塩化メチレン溶液の濃度である。塩化メチレン溶液としてはポリカーボネート樹脂の濃度0.6g/dlのものを用いる)
及び
(B)スチレン系樹脂99〜1重量部
とを含む(なおここで(A)と(B)との合計で100重量部である)ことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物を提供するものである。、
【0006】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明における(A)ポリカーボネート樹脂は、カーボネート原料とジヒドロキシ化合物とを反応させることによって製造される。ここでカーボネート原料とは、縮合反応、交換反応等の重合体生成反応によってポリカーボネート主鎖中にカーボネート結合:
【0007】
【化1】
【0008】
を生成し得る化合物であり、具体的にはホスゲン、炭酸ジエステル等が挙げられる。炭酸ジエステルとしては、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等が挙げられる。またジヒドロキシ化合物としては、脂肪族ジヒドロキシ化合物、芳香族ジヒドロキシ化合物等が挙げられ、芳香族ジヒドロキシ化合物としては例えば、2個のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物が挙げられる。しかして本発明で使用するポリカーボネート樹脂は、例えば、典型的にはビスフェノールAで代表される2個のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物とホスゲンとを反応させてオリゴマーを生成させ、このオリゴマーを末端封止剤の不存在下、かつピリジン塩酸塩又はキノリン塩酸塩のような塩基性度の低い触媒の存在下に重合させることにより、製造することができる。
【0009】
この製法について更に具体的に詳述すると、2個のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物としては、従来からポリカーボネート樹脂の原料として知られているもの、例えば米国特許第4,982,014号、同第3,028,365号、同第2,999,835号、同第3,148,172号、同第3,275,601号、同第2,991,273号、同第3,271,367号、同第3,062,781号、2,970,131号、若しくは同第2,999,846号の明細書、ドイツ特許公開第1,570,703号、同第2,063,050号、同第2,063,052号、若しくは同第2,211,956号の明細書、又はフランス特許第1,561,518号の明細書に記載されているものを用いることができる。
【0010】
そのいくつかを例示すると、ヒドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシジフェノール、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(ヒドロキシフェニル)ジアルキルベンゼン、及び核にアルキル又はハロゲン置換基をもったこれらの誘導体が挙げられる。これらのなかでも好ましいものとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、及び1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンが挙げられる。
【0011】
なお、2個のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物に、3個以上の官能基を有する分岐剤を少量併用することもできる。このような分岐剤は公知であり、例えば2,4−ビス(4′−ヒドロキシフェニル−イソプロピル)フェノール、2,6−ビス(2′−ヒドロキシ−5′−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(4,4′−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、塩化シアヌル、ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロキシインドール、3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドール等が挙げられる。中でも、3個またはそれ以上のフェノール性水酸基を持つものが好適である。分岐剤の使用量は、目的とする分岐度によっても異なるが、通常、2個のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物に対し、0.05〜2モル%となるように使用される。なお、分岐剤を併用すると、粘度平均分子量(Mv)が増加し易いので注意を要する。
【0012】
単分散に近い分子量分布を有するポリカーボネート樹脂を得る上で触媒に要求される特性として、pKa値として7以下、好ましくは6以下、更に好ましくは5.5以下である。即ち塩基性度の低い触媒を使用することでクロロフォーメート分子末端をイオン化させず、他方のイオン化した末端(フェニレン−ONa末端)のみから求核置換反応を優先して起こさせることができる。この反応機構は、単一反応のみで進行する従来のポリカーボネート樹脂生成時の縮合重合と反応機構が異なるため、結果としてポアソン分布に従った分子量分布を有するポリカーボネートが得られる。さらに、本発明で使用するポリカーボネート樹脂の製造は、後述するように水相と有機相を存在させる界面重合反応が好ましい。この界面重合反応では、イオン化した末端のみからの求核置換反応で反応が進行するため、必然的に体積当たりの界面積に見合った成長しか生じ得ない逐次反応となる。このため、界面積が大きい程到達分子量も大きく、縮合種が無くなった段階でクロロフォーメート分子末端が水相中のNaOHにより加水分解を受け、OH末端として分子量伸長が停止する。体積当たりの界面積が小さい場合では、副反応として分子末端であるクロロフォーメート末端が水相にあるNaOHによる加水分解反応を受けることとなり、結果的にそれ以上の分子量に成長し得ない状態、即ち界面積支配の分子量となる。この様な反応が成立する背景には、成長反応が加水分解反応に比較して非常に速い速度で進行することが挙げられる。
【0013】
従来の一般的なポリカーボネート樹脂生成の際に起きる縮合重合では、この様な反応のアンバランスはない。従来の縮合重合では、pKa値の高い触媒を使用するので、クロロフォーメート末端もこのpKa値の高い触媒によりイオン様に活性化された状態となり、イオン化したフェニレン−ONa末端と殆ど遜色の無い反応活性を両分子末端に有することとなり、Floryの最確分布に従った一般的な分子量分布を有する縮合物が得られると同時に、一般に末端停止剤が存在しない場合には超高分子物となってしまうので、本発明で使用する特定の分子量分布を有するポリカーボネート樹脂を生成することは困難である。
【0014】
上記のような塩基性度の低いという条件を満たす触媒として、含窒素複素環化合物の塩が用いられる。例えばピリジン、キノリン、イソキノリン、ピコリン、アクリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、2,4,6−トリメチルトリアジン等の、環を形成する炭素原子に結合する水素原子がアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子などで置換していてもよい不飽和含窒素六員環を有する化合物の塩が用いられる。また、フェノチアジン、2−メチルイミダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール等のような不飽和含窒素五員環を有する化合物の塩も用いられる。これらの含窒素複素環化合物のなかでも、ピリジン、キノリン、ピコリン、イミダゾール類、ピラゾール類、トリアゾール類などを用いるのが好ましい。これらの触媒は、原料の2個のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物に対し、通常0.01〜1モル%となるように用いられる。好ましくは0.05〜0.5モル%、特に0.05〜0.15モル%となるように用いられる。これらの含窒素複素環化合物は、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩などの塩型で用いられるが、反応系内においては遊離塩基型と塩型との間で解離平衡の状態にあると考えられる。
【0015】
これらの触媒は、2個のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物とホスゲンとの反応の当初から反応系に存在させてもよく、またこの反応の後で反応系に添加してもよい。しかしこの触媒の添加が遅れると、生成するポリカーボネート樹脂の分子量の制御が困難となる。従って触媒は、ホスゲンとの反応の当初から分子量の増大が始まるまでの間、粘度平均分子量(Mv)でいえば、Mvが2000〜3000に達するまでの間に反応系に添加するのが好ましい。
【0016】
一方、本発明で使用するポリカーボネート樹脂の製造においては、縮合触媒として、二相界面重合法に用いられている公知のものを上記の触媒と併用しても良い。通常はトリアルキルアミン、N−エチルピロリドン、N−エチルピペリジン、N−エチルモルホリン、N−イソプロピルピペリジン、又はN−イソプロピルモルホリンなどを用いる。なかでもトリエチルアミン又はN−エチルピペリジンを用いるのが好ましい。これら併用する触媒はホスゲンを供給した後に反応系に供給するのが好ましい。
【0017】
具体的なポリカーボネート製造反応は、2個のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物と苛性ソーダとを水に溶解して調製した水溶液と、不活性有機溶媒とを混合して乳化液を調製し、これにホスゲンを供給して反応させ、オリゴマーを生成させる。該水溶液中における2個のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物と苛性ソーダとのモル比は通常1:1.8〜3.5であり、好ましくは1:2.0〜3.2である。水溶液中にはハイドロサルファイト等の還元剤を少量添加するのが好ましい。また、水相に対する有機相の比率は0.2〜1.0(容積比)が好ましい。不活性有機溶媒としては、反応条件下において、原料であるホスゲン、並びに反応で生成するオリゴマー及びポリカーボネート樹脂を溶解するが、水とは相互に溶解しないものを用いる。その使用量は生成するオリゴマーが溶解する量であればよいが、通常は生成するオリゴマー溶液の濃度が10〜40重量%となるように用いる。
【0018】
代表的な不活性有機溶媒としては、ヘキサン及びn−ヘプタンのような脂肪族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロロプロパン及び1,2−ジクロロエチレンのような塩素化脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン及びキシレンのような芳香族炭化水素、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン及びクロロトルエンのような塩素化芳香族炭化水素、その他ニトロベンゼン及びアセトフェノンのような置換芳香族炭化水素などが挙げられる。中でも、塩素化された炭化水素、例えば塩化メチレンまたはクロロベンゼンが好適に使用される。これらの不活性有機溶媒は、単独又は他の溶媒との混合物として、使用することができる。
【0019】
該オリゴマー生成反応は80℃以下、好ましくは70℃以下で行われる。反応温度が高過ぎると、副反応が増大してホスゲン原単位が悪化する。逆に反応温度が低いことは反応制御上は有利であるが、反応は大きな発熱反応なので、反応系の温度が低いほど、この温度を維持するための費用が増加する。従って、これらの点を考慮して通常は10〜65℃で反応を行わせるのが好ましい。
【0020】
上述の反応により生成させたオリゴマーは、次いで界面重合反応により縮合重合させてポリカーボネート樹脂とする。通常は上記のオリゴマー生成工程で得られた反応混合液を、水相と、オリゴマーが溶解している有機相とに分離し、この有機相のオリゴマー濃度が5〜30重量%となるように、必要に応じて不活性有機溶媒を追加する。次いでこのオリゴマー溶液に新たに苛性ソーダ水溶液を加え、更に前述の触媒を添加して界面重合させる。この際の有機相に対する水相の比率は0.2〜2.0(容積比)であるのが好ましい。該界面重合反応の温度は用いる有機溶媒により異なるが、塩化メチレンの場合には通常10〜35℃で行われる。
【0021】
重合終了後は、有機相をポリカーボネート樹脂のクロロホーメート基の含有量が0.1μeq/g以下になるまで苛性ソーダ水溶液で洗浄し、次いで酸水溶液で洗浄してアルカリを中和すると共に触媒を除去し、更に水洗して電解質を完全に除去する。最後に有機相から有機溶媒を蒸発させて除去し、目的のポリカーボネート樹脂を取得する。このようにして得られるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は8,000〜100,000が好ましい。この分子量が低過ぎるとポリカーボネート樹脂の耐衝撃性が劣り、また分子量が高過ぎると溶融流動性が劣るようになる。この粘度平均分子量は10,000〜70,000の範囲がより好ましく、特に12,000〜50,000であるのが好ましい。このポリカーボネート樹脂は、界面重縮合反応により生成したままの状態で、すなわち分別沈澱や低分子量成分の抽出除去などの分子量分布を調整する処理を行わなくても、極めて狭い分子量分布を有し、低分子量のオリゴマーが極端に少ないので、加熱成形時のオリゴマー由来の揮発物が殆ど無く、従って、射出成形などの成形時の金型などへの付着物質が極めて少ないという特徴を有する。
【0022】
上記により得られたポリカーボネート樹脂は、オリゴマーの生成反応及びオリゴマーからポリカーボネート樹脂への重合反応のいずれの段階においても、末端封止剤を用いないで反応を行わせるので、分子末端は水酸基である。分子末端が長鎖アルキル基などで封止されたポリカーボネート樹脂を所望の場合には、上記で得られたポリカーボネート樹脂に長鎖アルコールや長鎖カルボン酸又はこれらの反応性誘導体を反応させることにより、所望の程度に末端が封止されたポリカーボネート樹脂とすることができる。
本発明で使用するポリカーボネート樹脂は上記の方法により製造することができ、かつゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2.2以下であり、かつ下記式で算出される粘度平均分子量(Mv)と分子末端数から算出される数平均分子量(Mn′)との比(Mv/Mn′)が1.40以下であることを特徴とする。
【0023】
【数3】
ηsp/C=〔η〕×(1+0.28ηsp)
〔η〕=1.23×10-4×Mv0.83
【0024】
(式中、ηspはポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液について20℃で測定した比粘度であり、Cはこの塩化メチレン溶液の濃度である。塩化メチレン溶液としてはポリカーボネート樹脂の濃度0.6g/dlのものを用いる)。
【0025】
本発明で使用する好ましいポリカーボネート樹脂としては、該Mw/Mnの値が2.0以下、さらには1.8以下、特には1.6以下である。またMv/Mn′の値が1.30以下、さらには1.25、特には1.20以下であるのが好ましい。該Mw/Mn及びMv/Mn′はいずれも分子量分布の幅を表わす指標であり、これらが小さいことは分子量分布が狭いことを意味する。従来から分子量分布の狭いポリカーボネート樹脂の製法の提案はあるが、これらの従来の製法によって得られるものは、ガラス転移点から算出されるMw/Mnから、その値が2を遥かに越えて3に近い値となるので、本発明で使用するポリカーボネート樹脂はこれとは異なり、著るしく狭い分子量分布を有している。その結果、溶融成形時に揮発してくるオリゴマーに相当する物質が存在せず、溶融成形時の低昇華性という特徴を発現する。
【0026】
本発明における(B)スチレン系樹脂とは、スチレン系単量体と必要に応じてこれらと共重合可能な他のビニル単量体およびゴム質重合体より選ばれる1種以上を重合して得られるスチレン系樹脂である。
前記スチレン系樹脂成分に用いられるスチレン単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルキシレン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルナフタレン、メトキシスチレン、モノブロムスチレン、ジブロムスチレン、フルオロスチレン、トリブロムスチレン、等のスチレン誘導体であり、特にスチレンが好ましい。これらは単独または2種以上用いることができる。
【0027】
前記スチレン系単量体と共重合可能な他のビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート等のアクリル酸のアリールエステル、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、アミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート等のアクリル酸のアルキルエステル、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等のメタクリル酸アリールエステル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステル、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有メタクリル酸エステル、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等のα、β−不飽和カルボン酸およびその無水物が挙げられる。
【0028】
一方、前記スチレン系単量体と共重合可能なゴム質重合体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン・ブタジエンんぽランダム共重合体およびブロック共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルおよびブタジエンの共重合体、ブタジエン・イソプレン共重合体、エチレン・プロピレンランダム共重合体およびブロック重合体、エチレン・ブテンのランダム共重合体およびブロック共重合体等のエチレンとα−オレフィンとの共重合体、エチレン・メタクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体等のエチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体等のエチレンと脂肪族ビニルとの共重合体、エチレン・プロピレン・ヘキサジエン共重合体等のエチレンとプロピレンと非共役ジエンターポリマー、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系ゴム、およびポリオルガノシロキサンゴム成分とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分とが分離できないように相互に絡み合った構造を有している複合ゴム(IPN型ゴム)等が挙げられる。
【0029】
このような(B)のスチレン系樹脂としては、ポリスチレン、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(SBS樹脂)、水添スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(水添SBS)、水添スチレン・イソプレン・スチレン共重合体(SEPS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS樹脂)、メチルメタクリレート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(MABS樹脂)、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル・エチレンプロピレン系ゴム・スチレン共重合体(AES樹脂)およびスチレン・IPN型ゴム共重合体等の樹脂、または、これらの混合物が挙げられる。また、さらにシンジオタクティクポリスチレン等のように立体規則性を有するものであってもよい。これらの中でも、ポリスチレン(PS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、メチルメタクリレート・ブジエン・スチレン共重合体(MBS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)が好ましい。
【0030】
本発明においては、該特定の分子量分布を有するポリカーボネート(A)1〜99重量部に対し、スチレン系樹脂(B)99〜1重量部とを組み合わせることによって、従来と比べて良好な成形加工性と耐加水分解性の両方の性質を持つポリカーボネート樹脂組成物を得られるものである。ここで、該(A)と(B)との合計が100重量部となるように、(A)と(B)の量を調整して使用する。好ましくは、該(A)の量が98〜10重量部に対し、(B)の量が2〜90重量部であり、さらに好ましくは(A)の量が95〜20重量部に対し、(B)の量が5〜80重量部の範囲である。
【0031】
本発明においては、該(A)特定のポリカーボネート及び(B)スチレン系樹脂に、難燃剤を配合することでさらに良好な性質のポリカーボネート樹脂組成物を得られるというものである。
該使用される難燃剤としては、ポリカーボネート樹脂組成物に配合されて、その燃焼性を改良し得るものであれば特に限定されないが、リン酸エステル系化合物、無機系リン化合物等のリン系化合物やハロゲン系有機化合物の他、有機スルホン酸塩、アンチモン含有化合物、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体などのシリコーン系化合物、金属酸化物、シアヌル酸等の窒素含有化合物、水酸化マグネシウム等の無機化合物、膨張黒鉛、低融点ガラス等が挙げられ、好ましくは、リン系化合物、有機スルホン酸塩および金属酸化物が挙げられ、特に好ましくは、リン酸エステル系化合物、及び該リン酸エステル系化合物と有機スルホン酸塩および/または金属酸化物とを併用した難燃剤が挙げられる。
該難燃剤の使用量としては、合計で、(A)の特定の分子量分布を有するポリカーボネート及び(B)のスチレン系樹脂の合計100重量部に対し、0.01〜30重量部の範囲が好ましい。
【0032】
該燐酸エステル系化合物としては、下記一般式(1)で示されるリン酸エステル系化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
【化2】
【0034】
上記一般式(1)中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素原子または有機基を表すが、R1、R2、R3およびR4が同時に水素原子である場合を除く。有機基は、例えば置換されていてももよい、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基等が挙げられる。置換されている場合の置換基としては、例えばアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、ハロゲン化アリール基等が挙げられ、またこれらの置換基を組み合わせた基(例えばアリールアルコキシアルキル基等)またはこれらの置換基を酸素原子、イオウ原子、窒素原子等により結合して組み合わせた基(例えば、アリールスルホニルアリール基等)が置換基であってもよい。
【0035】
Xは2価以上の有機基を表し、2価以上の有機基としては、上記の有機基から炭素原子に結合している水素原子の1個以上を除いてできる2価以上の基が挙げられる。2価以上の有機基としては、例えばアルキレン基、置換基を有していても良いフェニレン基、多核フェノール類、ビスフェノール類から誘導される基等が挙げられ、2以上の遊離原子価の相対的位置は任意である。2価以上の有機基として特に好ましいものとしては、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジフェニロールメタン、ジフェニロールジメチルメタン、ジヒドロキシジフェニル、p,p’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ジヒドロキシナフタレン等が挙げられる。
pは0または1であり、qは1以上の整数であり、好ましくは1〜30の整数であり、rは0以上の整数であり、好ましくは1〜10の整数であり、ただしrが0の場合は、R1、R3およびR4の少なくとも一つは有機基を表す。
【0036】
このようなリン酸エステル系化合物の例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジイソプロピルフェニルホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、ビス(2,3−ジブロモプロピル)−2,3−ジクロロプロピルホスフェート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)およびビス(クロロプロピル)モノオクチルホスフェート、上記一般式(1)のおいてR1〜R4がアルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシおよびプロポキシ)、または(置換)フェノキシ基(例えばフェノキシ、メチル(置換)フェノキシ)であるところのビスフェノールAビスホスフェート、ヒドロキノンビスホスフェート、レゾルシンビスホスフェート、トリオキシベンゼントリホスフェート等が挙げられる。好ましくはR1〜R4が(置換)フェノキシ基であり、中でも好ましくはトリフェニルホスフェートおよび各種ビスホスフェートである。これらは単独で用いても良いし、2種以上組み合わせて用いても良い。
【0037】
燐含有化合物系難燃剤を使用する場合の配合割合は、ポリカーボネート樹脂の100重量部に対して0.1〜20重量部であることが好ましい。リン酸エステル系化合物の配合割合が0.1重量部未満では難燃性が不十分であり、20重量部を越えると耐熱性が低下しやすい。
【0038】
本発明で使用可能なハロゲン含有化合物系難燃剤としては、テトラブロモビスフェノールA、トリブロモフェノール、臭素化芳香族トリアジン、テトラブロモビスフェノールAエポキシオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAエポキシポリマー、デカブロモジフェニルオキサイド、トリブロモアリルエーテル、テトラブロモビスフェノールAカーボネートオリゴマー、エチレンビステトラブロモフタルイミド、デカブロモジフェニルエタン、臭素化ポリスチレン、ヘキサブロモシクロドデカン等が挙げられる。これらのハロゲン含有化合物系難燃剤は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して使用することもできる。
ハロゲン含有化合物系難燃剤を使用する場合の量は、ポリカーボネート系樹脂組成物100重量部に対して0.1〜20重量部であることが好ましい。難燃剤の量が0.1重量部未満では不十分な難燃性しか得られず、一方20重量部を越えると機械強度が低下し、また難燃剤のブリードによる変色の原因となる。
【0039】
該スルホン酸金属塩としては、脂肪族スルホン酸金属塩、芳香族スルホン酸金属塩等が挙げられる。スルホン酸金属塩の金属としては、好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属などが挙げられ、アルカリ金属およびアルカリ土類としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウム等が挙げられる。スルホン酸金属塩は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して使用することもできる。これらのうち、難燃性と熱安定性の点より、好ましくは、芳香族スルホンスルホン酸金属塩、パーフルオロアルカン−スルホン酸金属塩等が挙げられる。
【0040】
芳香族スルホンスルホン酸金属塩としては、好ましくは、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ金属塩、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ土類金属塩などが挙げられ、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ金属塩、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ土類金属塩は重合体であってもよい。
芳香族スルホンスルホン酸金属塩の具体例としては、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、4,4’−ジブロモジフェニル−スルホン−3−スルホン酸のナトリウム塩、4,4’−ジブロモジフェニル−スルホン−3−スルホンのカリウム塩、4−クロロー4’−ニトロジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカルシウム塩、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸のジナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3,3’ジスルホン酸のジカリウム塩などが挙げられる。
【0041】
また、パーフルオロアルカン−スルホン酸金属塩としては、好ましくは、パーフルオロアルカン−スルホン酸のアルカリ金属塩、パーフルオロアルカン−スルホン酸のアルカリ土類金属塩などが挙げられ、より好ましくは、炭素数4〜8のパーフルオロアルカン基を有するスルホン酸アルカリ金属塩、炭素数4〜8のパーフルオロアルカン基を有するスルホン酸アルカリ土類金属塩などが挙げられる。
パーフルオロアルカン−スルホン酸金属塩の具体例としては、パーフルオロブタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタン−スルホン酸カリウム、パーフルオロメチルブタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロメチルブタン−スルホン酸カリウム、パーフルオロオクタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロオクタン−スルホン酸カリウム、パーフルオロブタン−スルホン酸のテトラエチルアンモニウム塩などが挙げられる。
【0042】
該スルホン酸金属塩を使用する場合の配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、0.01〜5重量部であることが好ましい。スルホン酸金属塩の配合量が0.01重量部未満であると十分な難燃性が得られにくく、5重量部を越えると熱安定性が低下しやすい。
【0043】
アンチモン含有化合物系難燃剤としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ等が挙げられる。これらのアンチモン含有化合物系難燃剤は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して使用することも出来る。なお、該アンチモン含有化合物系難燃剤は、上記ハロゲン含有化合物系難燃剤を使用する際の難燃助剤として配合するのが好ましい。
アンチモン含有化合物系難燃剤の量は、ポリカーボネート系樹脂組成物100重量部に対して、0.1〜20重量部であることが好ましい。アンチモン含有化合物系難燃剤の量が0.1重量部未満では不十分な難燃性しか得られず、一方20重量部を越えると機械強度が低下し、また難燃剤のブリードによる変色の原因となる。
【0044】
また、本発明においては、必要に応じて、ドリップ(滴下)防止用ポリテトラフルオロエチレンを0.01〜2重量部程度配合するのが好ましい。該滴下防止用ポリテトラフルオロエチレンとしては、重合体中に容易に分散し、かつ重合体同士を結合して繊維状材料を作る傾向(フィブリル形成能)を示すものである。滴下防止用ポリテトラフルオロエチレンはASTM規格でタイプ3に分類される。滴下防止用としては、例えば三井・デュポンフロロケミカル(株)より、テフロン(商品名)6Jまたはテフロン(商品名)30Jとして、あるいはダイキン化学工業(株)よりポリフロン(商品名)F201Lとして市販されている。
該滴下防止用ポリテトラフルオロエチレンの配合割合は、ポリカーボネート樹脂の100重量部に対して0.01〜2重量部である。滴下防止用ポリテトラフルオロエチレンが0.01重量部未満では燃焼時の溶融滴下防止効果が不十分であり、2重量部を越えると外観が悪くなりやすい。
【0045】
本発明においては、さらに該(A)ポリカーボネート及び(B)スチレン系樹脂の合計100重量部に対して無機系充填材1〜100重量部を使用するのが好ましい。該無機充填材としては、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、炭素繊維、ワラストナイト、珪酸カルシウム、硼酸アルミニウムウィスカー等である。
【0046】
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、このほか耐熱安定剤、耐候性安定剤、離型剤、帯電防止剤、抗菌剤、着色剤、分散剤等を添加することができる。さらに、(A)ポリカーボネート樹脂と(B)スチレン系樹脂の相溶性を改良する目的で、ポリカプロラクトン、ポリフェニレンオキサイドとポリブチレンテレフタレートとのブロックまたはグラフト共重合体等の他の樹脂も本発明の目的が損なわれない範囲で配合することができる。
【0047】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物を製造するに際しては、従来から公知の方法を採用することができ、特に限定されない。すなわち、タンブラー、Vブレンダー、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー等で各成分を分散混合した後、押出機、バンバリーミキサー、ロール等で溶融混練する方法が適宜用いられる。
【0048】
【実施例】
以下に実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
なお、以下の実施例においてゲルパーミエーションクロマトグラフィー、末端基の定量及び溶融流動性の評価は下記の方法により行った。
【0049】
(1)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー;
装置;東ソー株式会社製品、商品名:HLC−8020
カラム;充填剤として、TSK 5000HLX、4000HLX、3000HLX及び2000HLX(いずれも商品名、東ソー株式会社製品)をそれぞれ充填した4本のカラム(直径7.8mmφ、長さ300mm)を接続して用いた。
検出器;屈折率計
溶離液;テトラヒドロフラン
検量線;(株)ケムコ製の標準ポリスチレン(分子量;761(Mw/Mn≦1.14)、2000(Mw/Mn≦1.20)、4000(Mw/Mn≦1.06)、9000(Mw/Mn≦1.04)、17500(Mw/Mn≦1.03)、50000(Mw/Mn≦1.03)、233000(Mw/Mn≦1.05)、600000(Mw/Mn≦1.05)及び900000(Mw/Mn≦1.05)を用いて作成した。
操作;屈折率差により検出して得られたチャートより、Mw及びMnをポリスチレン換算で求め、Mw/Mnを算出した。この時のベースラインは、装置が完全に安定した状態で、高分子量の立ち上り前のベースをそのまま忠実に延長し、低分子側の元のベースラインに戻った地点とをつないで計算した。なお、上記の標準ポリスチレンを測定して全て規格内におさまっていることを確認した。
【0050】
(2)末端基の定量;末端封止剤を用いないで製造したポリカーボネート樹脂の末端及び停止剤で停止されなかった残存末端は全てOH基である。この末端OH基は、酢酸酸性下で四塩化チタンにより発色させ、480nmの波長の吸光度を測定することにより定量した。
該末端基数より数平均分子量(Mn′)を下記式により算出した。
【0051】
【数4】
Mn′=106/(末端基数(μeq/g)×1/2 )
【0052】
また重合に際して末端封止剤を用いた場合には、該末端封止剤は全て末端に結合しているものとして、上記の測定で得られた末端OH基数と封止剤の添加量から算出される封止末端基数との合計を末端基数とした。なお、予備実験により末端封止剤の存在下に重合したポリカーボネート樹脂をアルカリ加水分解して、結合している末端封止剤量を定量し、使用した末端封止剤が全て分子末端に結合していることを確認した。
【0053】
(3)ビスフェノールAの定量(耐加水分解性の評価);
樹脂1gにジクロロメタン20mlを加えて攪拌し、ポリカーボネート成分を十分溶解後、アセトニトリル100mlを添加して遠心分離を行い、上澄み液を回収した。回収した上澄み液を2mlに濃縮後、アセトニトリル10mlを添加し、純水を加えて20mlに定容した。この溶液をフィルター濾過後、アセトニトリル/水=1/1の混合液を展開溶媒として用い、0.75ml/minの流速、使用カラム:(商品名)L−Column ODS 250mm(化学品検査協会製)、検出波長:217nmの条件で島津製作所製HPLC(商品名:LC−10)を用いて分析を行った。
【0054】
PC−a1,a2の製造((A)特定の分子量分布を有するポリカーボネート樹脂の製造)
ハイドロサルファイトが溶解している苛性ソーダ水溶液にビスフェノールAを35℃で溶解したのち25℃まで冷却した水溶液と、5℃に冷却した塩化メチレンとを、内径6mmのステンレススチール製のパイプに連続的に供給して混合し、混合液をホモミキサー(特殊機化社製品、商品名:T.KホモミックラインフローLF−500型)に通して乳化し、乳濁液を調製した。パイプへの供給量はビスフェノールA16.31kg/Hr、苛性ソーダ5.93kg/Hr、水101.1kg/Hr、ハイドロサルファイト0.018kg/Hr、及び塩化メチレン68.0kg/Hrとした。
生成した乳濁液を内径6mmのパイプを経て、内径6mm、長さ34mのテフロン(商品名)製パイプリアクターに流入させた。パイプリアクターには同時に0℃に冷却した液化ホスゲンを7.5kg/Hrで供給して反応させ、オリゴマーを生成させた。パイプリアクターの流速は1.7m/秒である。ホスゲンとしては、直径55mm、高さ500mmの円筒形容器に下記の活性炭を充填したものに、−5℃に冷却したホスゲンをSV=3で通液させて精製したものを用いた。
【0055】
【表1】
活性炭
商品名 ヤシコールS(商品名、太平化学社製品)
真密度 2.1g/ml
空隙率 40%
比表面積 1200m2/g
細孔容積 0.86ml/g
【0056】
なおパイプリアクターでは温度は60℃まで上昇するが、外部冷却により出口では35℃であった。反応混合物は静置分離して水相と油相とに分離した。得られたオリゴマーのクロロフォーメート濃度=0.49N、OH末端濃度=0.22N、オリゴマー濃度=27%、Mv=1000であった。
得られた油相から41kgを分取して、内容積200リットルのファウドラー翼付き反応槽に仕込んだ。次いでこれに塩化メチレン25kg、水45kgを仕込み、窒素雰囲気下、攪拌しながら3℃迄冷却後、表2に記載の触媒と25%苛性ソーダ水溶液5.82kgを加え、60分間撹拌して重合反応を行い、ポリカーボネート樹脂を生成させた。このとき重合の内温は11℃まで上昇した。
この反応混合液に表2記載の末端停止剤及び同停止剤と当量のカセイソーダを加え、同温度を維持したままで60分間撹拌反応した。反応混合液に塩化メチレン50kg及び水14kgを加え、同温で15分間撹拌したのち静置して、水相と有機相を分離した。得られた有機相に0.2規定のカセイソーダ水溶液を27kg添加し、更に15分間撹拌したのち静置して、水相と有機相を分離した。有機相に0.1規定の塩酸40kgを加えて15分間撹拌したのち、静置して水相と有機相とを分離した。この有機相に、純水40kgを加えて15分間撹拌したのち静置して水相と油相とに分離する洗浄操作を3回反復した結果、水相中に塩素イオンが検出されなくなったので、洗浄操作を中止した。有機相からニーダーで塩化メチレンを蒸発させて除き、得られた粉末を乾燥してポリカーボネート樹脂を得た。
重合条件及び得られたポリカーボネート樹脂の物性を表2に示す。
【0057】
PC−b1の製造(比較のためのポリカーボネート樹脂の製造)
上記PC−a1、a2の製造において得られたオリゴマーを用い、縮合の段階で表2記載の停止剤の共存下、pKa=10.72のトリエチルアミンを触媒とし、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂を製造した。但し、この場合重合後に分子末端は封止された状態にあるため、実施例1にある末端停止剤との反応を実施せず、即洗浄操作に入った。重合条件及び得られたポリカーボネート樹脂の物性を表2に示す。
【0058】
[実施例1〜4,比較例1,2]
ポリカーボネート樹脂として前記PC−a1、PC−a2、及びPC−b1をそれぞれ使用し、表3の組成にて、2軸押出機TEX30(日本製鋼所製、商品名)を用い、シリンダー温度270℃、ベント吸引−700mmHg、200rpm、吐出量10kg/hで組成物を製造した。ここで得られたペレットを、100℃・5時間予備乾燥後、射出成形機(名機製作所製、商品名:150A2−SJ)にて、シリンダー温度250℃、金型温度50℃の条件下、カラープレートを成形した。耐加水分解性(PCT)の評価は、プレッシャークッカー(平山製作所製)にて130℃、加圧飽和水蒸気下、50時間処理し、外観検査および加水分解によるビスフェノールA生成量の測定を行った。この結果を表3に示した。表3から明かなように、分子量分布を制御したポリカーボネート樹脂を使用した本発明の樹脂組成物は、比較例に比べて耐加水分解性が大きく改良されていることが明らかである。
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
【発明の効果】
本発明によれば、単分散に近い分子量分布を有するポリカーボネートとスチレン系樹脂を配合することで、成形加工性のみならず耐加水分解性を大幅に改良したポリカーボネート樹脂組成物を提供することができる。
Claims (5)
- (A)カーボネート原料とジヒドロキシ化合物とを反応させて得られたポリカーボネート樹脂であって、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2.2以下であり、かつ下記式で算出される粘度平均分子量(Mv)と分子末端数から算出される数平均分子量(Mn’)との比(Mv/Mn’)が1.40以下であるポリカーボネート樹脂1〜99重量部
【数1】
ηsp/C=[η]×(1+0.28ηsp)
[η]=1.23×10-4×Mv0.83
(式中、ηspはポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液について20℃で測定した比粘度であり、Cはこの塩化メチレン溶液の濃度である。塩化メチレン溶液としてはポリカーボネート樹脂の濃度0.6g/dlのものを用いる)
及び
(B)スチレン系樹脂99〜1重量部
とを含む(なお、ここで(A)と(B)の合計で100重量部である)ことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。 - ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が8,000〜100,000であることを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- スチレン系樹脂が、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、メチルメタアクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- (A)のポリカーボネート樹脂及び(B)のスチレン系樹脂の合計100重量部に対し、難燃剤0.01〜30重量部を配合することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- (A)のポリカーボネート樹脂及び(B)のスチレン系樹脂の合計100重量部に対し、無機系充填材1〜100重量部を配合することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
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