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JP4363762B2 - ポリカーボネート樹脂組成物 - Google Patents

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JP4363762B2 JP2000265022A JP2000265022A JP4363762B2 JP 4363762 B2 JP4363762 B2 JP 4363762B2 JP 2000265022 A JP2000265022 A JP 2000265022A JP 2000265022 A JP2000265022 A JP 2000265022A JP 4363762 B2 JP4363762 B2 JP 4363762B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐加水分解性、離型性に優れたポリカーボネート樹脂組成物に関する。更に詳しくは、特定のポリカーボネート樹脂と特定の添加剤とからなる耐加水分解性、離型性に優れたポリカーボネート樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート樹脂は耐熱性、機械特性、耐候性、透明性、寸法安定性等に優れた樹脂として、電気電子分野、OA機器分野、精密・機械分野、医療分野、建材分野等に幅広く使用されている。しかしながら、耐加水分解性等に充分でない点がある。この点を改良する方法の一つとして、オリゴマーの含有量が少なく、かつ分子量分布の狭いポリカーボネート樹脂を製造する方法の検討に努力が向けられている。例えば、特開昭55−52321号公報には、ビスフェノールAとホスゲンとの反応を低温で行って分子量分布の狭いオリゴマーを生成させ、これを末端封止剤の存在下に重合させて、高分子量でかつ分子量分布の狭いポリカーボネート樹脂を製造することが記載されている。特開平1−278528号公報には、末端封止剤の存在下にビスフェノールAとホスゲンを反応させてオリゴマーを生成させ、これにビスフェノールAを加えて2段階で重合を行うことにより、分子量分布の狭いポリカーボネート樹脂を製造することが記載されている。特開平3−109420号公報には、ビスフェノールAとホスゲンとを第1パイプリアクターで反応させ、反応生成液に末端封止剤を加えたのち第2パイプリアクターを経て槽型反応器に流入させて更に反応させることにより、ポリカーボネートオリゴマーを製造することが記載されている。同公報では、このポリカーボネートオリゴマーにビスフェノールAを加えて2段階で重合を行うことにより、分子量分布の狭いポリカーボネート樹脂が得られたとされている。
【0003】
特開平6−336522号公報及び特開平7−165899号公報には、末端封止剤の不存在下にビスフェノールAとホスゲンとを反応させてプレポリマーを生成させ、次いでこれに末端封止剤を添加して界面重合させることにより、オリゴマーの含有量が少なく、かつ分子量分布の狭いポリカーボネート樹脂が得られると記載されている。これらの公報には、分子量分布(Mw/Mn)が2.0前後のポリカーボネート樹脂が得られたとの記載があるが、これは上記した特開平3−109420号公報に、末端封止剤の添加時期を遅らせると分子量分布は広くなることが示されていることと矛盾するように思われる。また、ポリカーボネートのガラス転移点と分子量との関係について記載されているEur.Polym.J.vol.18,P563〜567(1982)に従って、これらの公報に記載されているガラス転移点からMw/Mnを算出すると、その値は2を遥かに越えて3に近い値となる。これらの点からして、これらの文献に記載のポリカーボネート樹脂の分子量分布は、精密に測定するとかなり広いと思われる。
【0004】
これらの樹脂の目的とする所は、何れも低分子量オリゴマーを低減することにより加熱成形時に発生するオリゴマー由来の揮発物を低減する点にある。ところが、何れのポリマーも完全に低分子オリゴマーを除去できている訳ではなく、比較的好ましい材料としては、貧溶媒を使用して再沈や抽出を行ったものがあるが(特開昭63−278929号公報、特開昭64−6020号公報、特開平4−306227号公報)、それらの材料も完全にオリゴマー除去ができている訳ではなく、依然不十分な上、使用する溶媒を分離するプロセスを組み入れる必要も生じる為、かなりコスト高になることも避けがたい状況であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、耐加水分解性、離型性に優れたポリカーボネート樹脂組成物を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題につき種々検討した結果、特定のポリカーボネート樹脂と特定の離型剤とからなる、耐加水分解性の大幅に改良された、離型性に優れたポリカーボネート樹脂組成物を見出した。
【0007】
すなわち、本発明は(1)(A)カーボネート原料とジヒドロキシ化合物とを反応させて得られたポリカーボネート樹脂であって、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2.2以下であり、かつ下記式で算出される粘度平均分子量(Mv)と分子末端数から算出される数平均分子量(Mn’)との比(Mv/Mn’)が1.40以下であるポリカーボネート樹脂100重量部、
【数2】
ηsp/C=[η]×(1+0.28ηsp)
[η]=1.23×10-4×Mv0.83
(式中、ηspはポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液について20℃で測定した比粘度であり、Cはこの塩化メチレン溶液の濃度である。塩化メチレン溶液としてはポリカーボネート樹脂の濃度0.6g/dlのものを用いる)
(B)脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素化合物および/またはポリシロキサン系シリコーンオイルから選ばれる少なくとも1種の離型剤を0.001〜5重量部配合することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物を提供するものである。
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明における(A)ポリカーボネート樹脂は、カーボネート原料とジヒドロキシ化合物とを反応させることによって製造される。ここでカーボネート原料とは、縮合反応、交換反応等の重合体生成反応によってポリカーボネート主鎖中にカーボネート結合:
【0009】
【化1】
Figure 0004363762
【0010】
を生成し得る化合物であり、ホスゲン、炭酸ジエステル等が挙げられる。炭酸ジエステルとしては、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等が挙げられる。またジヒドロキシ化合物としては、脂肪族ジヒドロキシ化合物、芳香族ジヒドロキシ化合物等が挙げられ、芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば2個のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物が挙げられる。しかして本発明で使用するポリカーボネート樹脂は、例えば典型的にはビスフェノールAで代表される2個のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物とホスゲンとを反応させてオリゴマーを生成させ、このオリゴマーを末端封止剤の不存在下、かつピリジン塩酸塩又はキノリン塩酸塩のような塩基性度の低い触媒の存在下に重合させることにより、製造することができる。
【0011】
この製法について更に具体的に詳述すると、2個のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物としては、従来からポリカーボネート樹脂の原料として知られているもの、例えば米国特許第4,982,014号、同第3,028,365号、同第2,999,835号、同第3,148,172号、同第3,275,601号、同第2,991,273号、同第3,271,367号、同第3,062,781号、2,970,131号、若しくは同第2,999,846号の明細書、ドイツ特許公開第1,570,703号、同第2,063,050号、同第2,063,052号、若しくは同第2,211,956号の明細書、又はフランス特許第1,561,518号の明細書に記載されているものを用いることができる。
【0012】
そのいくつかを例示すると、ヒドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシジフェノール、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(ヒドロキシフェニル)ジアルキルベンゼン、及び核にアルキル又はハロゲン置換基をもったこれらの誘導体が挙げられる。これらのなかでも好ましいものとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、及び1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンが挙げられる。
【0013】
なお、2個のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物に、3個以上の官能基を有する分岐剤を少量併用することもできる。このような分岐剤は公知であり、例えば2,4−ビス(4′−ヒドロキシフェニル−イソプロピル)フェノール、2,6−ビス(2′−ヒドロキシ−5′−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(4,4′−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、塩化シアヌル、ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロキシインドール、3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドール等が挙げられる。中でも、3個またはそれ以上のフェノール性水酸基を持つものが好適である。分岐剤の使用量は、目的とする分岐度によっても異なるが、通常、2個のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物に対し、0.05〜2モル%となるように使用される。なお、分岐剤を併用すると、粘度平均分子量(Mv)が増加し易いので注意を要する。
【0014】
単分散に近い分子量分布を有するポリカーボネート樹脂を得る上で触媒に要求される特性としては、pKa値として7以下、好ましくは6以下、更に好ましくは5.5以下である。即ち塩基性度の低い触媒を使用することでクロロフォーメート分子末端をイオン化させず、他方のイオン化した末端(フェニレン−ONa末端)のみから求核置換反応を優先して起こさせることができる。単一反応のみで進行する従来のポリカーボネート樹脂生成時の縮合重合と反応機構が異なるため、結果としてポアソン分布に従った分子量分布を有するポリカーボネートが得られる。さらに、本発明で使用するポリカーボネート樹脂の製造は、後述するように水相と有機相を存在させる界面重合反応が好ましい。この界面重合反応ではイオン化した末端のみからの求核置換反応で反応が進行するため、必然的に体積当たりの界面積に見合った成長しか生じ得ない逐次反応となる。このため、界面積が大きい程到達分子量も大きく、縮合種が無くなった段階でクロロフォーメート分子末端が水相中のNaOHにより加水分解を受け、OH末端として分子量伸長が停止する。体積当たりの界面積が小さい場合は、副反応として分子末端であるクロロフォーメート末端が水相にあるNaOHによる加水分解反応を受けることとなり、結果的にそれ以上の分子量に成長し得ない状態、即ち界面積支配の分子量となる。この様な反応が成立する背景には、成長反応が加水分解反応に比較し非常に速い速度で進行することが挙げられる。
【0015】
従来の一般的なポリカーボネート樹脂生成の際に起きる縮合重合では、この様な反応のアンバランスはない。従来の縮合重合では、pKa値の高い触媒を使用するので、クロロフォーメート末端もこのpKa値の高い触媒によりイオン様に活性化された状態となり、イオン化したフェニレン−ONa末端と殆ど遜色の無い反応活性を両分子末端に有することとなり、Floryの最確分布に従った一般的な分子量分布を有する縮合物が得られると同時に、一般に末端停止剤の存在しない場合には超高分子物となってしまうので、本発明で使用する特定の分子量分布を有するポリカーボネート樹脂を生成することは困難である。
【0016】
このような塩基性度の低いという条件を満たす触媒として、含窒素複素環化合物の塩が用いられる。例えばピリジン、キノリン、イソキノリン、ピコリン、アクリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、2,4,6−トリメチルトリアジン等の、環を形成する炭素原子に結合する水素原子がアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子などで置換していてもよい不飽和含窒素六員環を有する化合物の塩が用いられる。また、フェノチアジン、2−メチルイミダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール等のような不飽和含窒素五員環を有する化合物の塩も用いられる。これらの含窒素複素環化合物のなかでも、ピリジン、キノリン、ピコリン、イミダゾール類、ピラゾール類、トリアゾール類などを用いるのが好ましい。これらの触媒は、原料の2個のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物に対し、通常0.01〜1モル%となるように用いられる。好ましくは0.05〜0.5モル%、特に0.05〜0.15モル%となるように用いられる。これらの含窒素複素環化合物は、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩などの塩型で用いられるが、反応系内においては遊離塩基型と塩型との間で解離平衡の状態にあると考えられる。
【0017】
これらの触媒は、2個のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物とホスゲンとの反応の当初から反応系に存在させてもよく、またこの反応の後で反応系に添加してもよい。しかしこの触媒の添加が遅れると、生成するポリカーボネート樹脂の分子量の制御が困難となる。従って触媒は、ホスゲンとの反応の当初から分子量の増大が始まるまでの間、粘度平均分子量(Mv)でいえば、Mvが2000〜3000に達するまでの間に反応系に添加するのが好ましい。
【0018】
一方、本発明で使用するポリカーボネート樹脂の製造においては、縮合触媒として、二相界面重合法に用いられている公知のものを併用しても良い。通常はトリアルキルアミン、N−エチルピロリドン、N−エチルピペリジン、N−エチルモルホリン、N−イソプロピルピペリジン、又はN−イソプロピルモルホリンなどを用いる。なかでもトリエチルアミン又はN−エチルピペリジンを用いるのが好ましい。これら併用する触媒は、ホスゲンを供給した後に反応系に供給するのが好ましい。
【0019】
具体的なポリカーボネート製造反応は、2個のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物と苛性ソーダとを水に溶解して調製した水溶液と、不活性有機溶媒とを混合して乳化液を調製し、これにホスゲンを供給して反応させてオリゴマーを生成させる。水溶液中における2個のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物と苛性ソーダとのモル比は通常は1:1.8〜3.5であり、好ましくは1:2.0〜3.2である。水溶液中にはハイドロサルファイト等の還元剤を少量添加するのが好ましい。また、水相に対する有機相の比率は0.2〜1.0(容積比)が好ましい。不活性有機溶媒としては、反応条件下において、原料であるホスゲン、並びに反応で生成するオリゴマー及びポリカーボネート樹脂は溶解するが、水とは相互に溶解しないものを用いる。その使用量は生成するオリゴマーが溶解する量であればよいが、通常は生成するオリゴマー溶液の濃度が10〜40重量%となるように用いる。
【0020】
代表的な不活性有機溶媒としては、ヘキサン及びn−ヘプタンのような脂肪族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロロプロパン及び1,2−ジクロロエチレンのような塩素化脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン及びキシレンのような芳香族炭化水素、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン及びクロロトルエンのような塩素化芳香族炭化水素、その他ニトロベンゼン及びアセトフェノンのような置換芳香族炭化水素などが挙げられる。中でも、塩素化された炭化水素、例えば塩化メチレンまたはクロロベンゼンが好適に使用される。これらの不活性有機溶媒は、単独又は他の溶媒との混合物として、使用することができる。
【0021】
該オリゴマー生成反応は80℃以下、好ましくは70℃以下で行われる。反応温度が高過ぎると、副反応が増大してホスゲン原単位が悪化する。逆に反応温度が低いことは反応制御上は有利であるが、反応は大きな発熱反応なので、反応系の温度が低いほどこの温度を維持するための費用が増加する。従って、これらの点を考慮して通常は10〜65℃で反応を行わせる。
【0022】
上述の反応により生成させたオリゴマーは、次いで界面重合反応により縮合重合させてポリカーボネート樹脂とする。通常は上記のオリゴマー生成工程で得られた反応混合液を、水相と、オリゴマーが溶解している有機相とに分離し、この有機相のオリゴマー濃度が5〜30重量%となるように、必要に応じて不活性有機溶媒を追加する。次いでこのオリゴマー溶液に新たに苛性ソーダ水溶液を加え、更に前述の触媒を添加して界面重合させる。この際の有機相に対する水相の比率は0.2〜2.0(容積比)であるのが好ましい。該界面重合反応の温度は用いる有機溶媒により異なるが、塩化メチレンの場合には通常10〜35℃で行われる。
【0023】
重合終了後は、有機相をポリカーボネート樹脂のクロロホーメート基の含有量が0.1μeq/g以下になるまで苛性ソーダ水溶液で洗浄し、次いで酸水溶液で洗浄してアルカリを中和すると共に触媒を除去し、更に水洗して電解質を完全に除去する。最後に有機相から有機溶媒を蒸発させて除去し、目的のポリカーボネート樹脂を取得する。このようにして得られるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は通常8,000〜100,000が好ましい。この分子量が低過ぎるとポリカーボネート樹脂の耐衝撃性が劣り、また分子量が高過ぎると溶融流動性が劣るようになる。粘度平均分子量は10,000〜70,000の範囲がより好ましく、特に12,000〜50,000であるのが好ましい。このポリカーボネート樹脂は、界面重縮合反応により生成したままの状態で、すなわち分別沈澱や低分子量成分の抽出除去などの分子量分布を調整する処理を行わなくても、極めて狭い分子量分布を有しており、低分子量のオリゴマーが極端に少ないので、加熱成形時のオリゴマー由来の揮発物が殆ど無く、従って、射出成形などの成形時の金型などへの付着物質が極めて少ないという特徴を有する。
【0024】
上記により得られたポリカーボネート樹脂は、オリゴマーの生成反応及びオリゴマーからポリカーボネート樹脂への重合反応のいずれの段階においても、末端封止剤を用いないで反応を行わせるので、分子末端は水酸基である。分子末端が長鎖アルキル基などで封止されたポリカーボネート樹脂を所望の場合には、上記で得られたポリカーボネート樹脂に長鎖アルコールや長鎖カルボン酸又はこれらの反応性誘導体を反応させることにより、所望の程度に末端が封止されたポリカーボネート樹脂とすることができる。
本発明に係るポリカーボネート樹脂は上記の方法により製造することができ、かつゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2.2以下であり、かつ下記式で算出される粘度平均分子量(Mv)と分子末端数から算出される数平均分子量(Mn′)との比(Mv/Mn′)が1.40以下であることを特徴とする。
【0025】
【数3】
ηsp/C=〔η〕×(1+0.28ηsp)
〔η〕=1.23×10-4×Mv0.83
【0026】
(式中、ηspはポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液について20℃で測定した比粘度であり、Cはこの塩化メチレン溶液の濃度である。塩化メチレン溶液としてはポリカーボネート樹脂の濃度0.6g/dlのものを用いる)。本発明に係る好ましいポリカーボネート樹脂は、Mw/Mnが2.0以下、さらに1.8以下、特に1.6以下である。またMv/Mn′は1.30以下、さらに1.25以下、特に1.20以下であるのが好ましい。Mw/Mn及びMv/Mn′はいずれも分子量分布の幅を表わす指標であり、これらが小さいことは分子量分布が狭いことを意味する。前述したように、従来からも分子量分布の狭いポリカーボネート樹脂の製法の提案はあるが、これらの従来の製法によって得られる物は、ガラス転移点から算出されるMw/Mnから、その値が2を遥かに越えて3に近い値となるので、本発明で使用するポリカーボネート樹脂はこれとは異なり、著しく狭い分子量分布を有している。その結果、溶融成形時に揮発してくるオリゴマーに相当する物質が存在せず、溶融成形時の低昇華性という特徴を発現する。
【0027】
本発明で使用する(B)の離型剤としては、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素化合物及び/またはポリシロキサン系シリコーンオイルから選ばれる少なくとも1種の化合物である。該脂肪族カルボン酸としては、飽和または不飽和の脂肪族モノカルボン酸、ジカルボン酸またはトリカルボン酸をあげることができる。ここで脂肪族とは、脂環式も包含する。このうち好ましくは炭素数6〜36のモノまたはジカルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等をあげることができる。
【0028】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸は上述の脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。この脂肪族カルボン酸と反応しエステルを形成するアルコールとしては、飽和または不飽和の1価アルコール、飽和または不飽和の多価アルコール等をあげることができる。これらのアルコールはフッ素原子、アリール基等の置換基を有していても良い。これらのアルコールのうち、炭素数30以下の1価または多価の飽和アルコールが好ましく、さらに炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコールまたは多価アルコールが好ましい。ここで脂肪族とは脂環式も含有する。これらのアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等をあげることができる。これらの脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル化合物は不純物として脂肪族カルボン酸及び/またはアルコールを含有していても良く、複数の化合物の混合物であっても良い。脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘニン酸ベヘニル、ベヘニン酸オクチルドデシル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレートをあげることができる。
【0029】
数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素としては、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックスまたは炭素数3〜12のαーオレフィンオリゴマー等をあげることができる。ここで脂環式炭化水素も含まれる。また、これらの炭化水素化合物は部分酸化されていても良い。これらの中で好ましいものは、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリエチレンワックスの部分酸化物であり、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましい。数平均分子量は200〜15000であるが、好ましくは200〜5000である。これらの脂肪族炭化水素は単一物質であっても、構成成分や分子量が様々な物の混合物であっても主成分が上記範囲内であれば良い。
【0030】
ポリシロキサン系シリコーンオイルとしては、下記構造で示されるものである。
【0031】
【化2】
Figure 0004363762
(式中、Rは水素原子、フェニル基、アルキル基、またはそれらの混合物から選ばれた基であり、nは1以上の整数である。)
上記式中のアルキル基としては、メチル基、エチル基等があげられる。また、上記式で示されるポリシロキサン系シリコーンオイルの複数を所望の比率で混合して使用することもできる。
【0032】
これらの離型剤の中で特に好ましい種類は、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルであり、この中でも特に蜜ロウ、ベヘニン酸ベヘニル、グリセリンモノステアレート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレートが好ましい。
【0033】
該離型剤の添加剤の配合量は、該芳香族ポリカーボネート100重量部に対して0.001〜5重量部であり、好ましくは0.01〜1重量部である。0.001重量部未満では効果が十分ではなく、5重量部以上では射出成形時の金型汚染等の問題がある。該離型剤は1種でも使用可能であるが、複数併用して使用することもできる。
【0034】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、難燃剤、耐熱安定剤、耐候性安定剤、帯電防止剤、抗菌剤、無機充填材、着色剤、分散剤等を添加することができる。さらに、他の樹脂も本発明の目的が損なわれない範囲で配合することができる。
【0035】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造するに際しては、従来から公知の方法採用することができる。タンブラー、Vブレンダー、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー等で各成分を分散混合した後、押出機、バンバリーミキサー、ロール等で溶融混練する方法が適宜用いられる。
【0036】
【実施例】
以下に実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
なお、以下の実施例においてゲルパーミエーションクロマトグラフィー、末端基の定量、ビスフェノールA定量、離型抵抗の評価は下記の方法により行った。
(1)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー;
装置;東ソー株式会社製品、商品名:HLC−8020
カラム;充填剤としてTSK 5000HLX、4000HLX、3000HLX及び2000HLX(いずれも商品名、東ソー株式会社製品)をそれぞれ充填した4本のカラム(直径7.8mmφ、長さ300mm)を接続して用いた。
【0037】
検出器;屈折率計
溶離液;テトラヒドロフラン
検量線;(株)ケムコ製の標準ポリスチレン(分子量;761(Mw/Mn≦1.14)、2000(Mw/Mn≦1.20)、4000(Mw/Mn≦1.06)、9000(Mw/Mn≦1.04)、17500(Mw/Mn≦1.03)、50000(Mw/Mn≦1.03)、233000(Mw/Mn≦1.05)、600000(Mw/Mn≦1.05)及び900000(Mw/Mn≦1.05)を用いて作成した。
【0038】
操作;屈折率差により検出して得られたチャートより、Mw及びMnをポリスチレン換算で求め、Mw/Mnを算出した。この時のベースラインは、装置が完全に安定した状態で、高分子量の立ち上り前のベースをそのまま忠実に延長し、低分子側の元のベースラインに戻った地点とをつないで計算した。なお、上記の標準ポリスチレンを測定して全て規格内におさまっていることを確認した。
【0039】
(2)末端基の定量;末端封止剤を用いないで製造したポリカーボネート樹脂の末端及び停止剤で停止されなかった残存末端は全てOH基である。この末端OH基は、酢酸酸性下で四塩化チタンにより発色させ、480nmの波長の吸光度を測定することにより定量した。
該末端基数より数平均分子量(Mn′)を下記式により算出した。
【0040】
【数4】
Mn′=106/(末端基数(μeq/g)×1/2 )
【0041】
また重合に際して末端封止剤を用いた場合には、該末端封止剤は全て末端に結合しているものとして、上記の測定で得られた末端OH基数と封止剤の添加量から算出される封止末端基数との合計を末端基数とした。なお、予備実験により末端封止剤の存在下に重合したポリカーボネート樹脂をアルカリ加水分解して、結合している末端封止剤量を定量し、使用した末端封止剤が全て分子末端に結合していることを確認してある。
【0042】
(3)ビスフェノールAの定量(耐加水分解性の評価);
樹脂1gにジクロロメタン20mlを加えて攪拌しポリカーボネート成分を十分溶解後、アセトン100ml添加し遠心分離を行い、上澄み液を回収した。回収した上澄み液を2mlに濃縮後アセトニトリル10mlを添加し、純水を加えて20mlに定容した。この溶液をフィルター濾過後、アセトニトリル/水=1/1の混合液、0.75ml/min、使用カラム:商品名、商品名:L−Column ODS 250mm(化学品検査協会製、商品名)、検出波長:217nmの条件で島津製作所製HPLC(商品名:LC−10)を用いて分析を行った。
【0043】
(4)離型抵抗測定;樹脂組成物を120℃、4時間乾燥した後、バレル温度280℃、金型温度80℃でコップ形状の成型品を成形し、この成型品を金型から突き出すときの離型抵抗値(kg)を測定した。
【0044】
PC−a1,a2の製造((A)特定の分子量分布を有するポリカーボネート樹脂の製造)
ハイドロサルファイトが溶解している苛性ソーダ水溶液にビスフェノールAを35℃で溶解したのち25℃まで冷却した水溶液と、5℃に冷却した塩化メチレンとを、内径6mmのステンレススチール製のパイプに連続的に供給して混合し、混合液をホモミキサー(特殊機化社製品、商品名:T.KホモミックラインフローLF−500型)に通して乳化し、乳濁液を調製した。パイプへの供給量はビスフェノールA16.31kg/Hr、苛性ソーダ5.93kg/Hr、水101.1kg/Hr、ハイドロサルファイト0.018kg/Hr、及び塩化メチレン68.0kg/Hrである。
生成した乳濁液を内径6mmのパイプを経て、内径6mm、長さ34mのテフロン(商品名)製パイプリアクターに流入させた。パイプリアクターには同時に0℃に冷却した液化ホスゲンを7.5kg/Hrで供給して反応させ、オリゴマーを生成させた。パイプリアクターの流速は1.7m/秒である。ホスゲンとしては、直径55mm、高さ500mmの円筒形容器に下記の活性炭を充填したものに、−5℃に冷却したホスゲンをSV=3で通液させて精製したものを用いた。
【0045】
【表1】
活性炭
商品名 ヤシコールS(太平化学社製品)
真密度 2.1g/ml
空隙率 40%
比表面積 1200m2/g
細孔容積 0.86ml/g
【0046】
なおパイプリアクターでは温度は60℃まで上昇するが、外部冷却により出口では35℃であった。反応混合物は静置分離して水相と油相とに分離した。得られたオリゴマーのクロロフォーメート濃度=0.49N、OH末端濃度=0.22N、オリゴマー濃度=27%、Mv=1000であった。
得られた油相から41kgを分取して、内容積200リットルのファウドラー翼付き反応槽に仕込んだ。次いでこれに塩化メチレン25kg、、水45kgを仕込み、窒素雰囲気下、攪拌しながら3℃迄冷却後、表2に記載の触媒と25%苛性ソーダ水溶液5.82kgを加え60分間撹拌して重合反応を行い、ポリカーボネート樹脂を生成させた。このとき重合の内温は11℃まで上昇した。
この反応混合液に表2記載の末端停止剤及び同停止剤と当量のカセイソーダを加え、同温度を維持したままで60分間撹拌反応した。反応混合液に塩化メチレン50kg及び水14kgを加え、同温で15分間撹拌したのち静置して、水相と有機相を分離した。得られた有機相に0.2規定のカセイソーダ水溶液を27kg添加し、更に15分間撹拌したのち静置して、水相と有機相を分離した。有機相に0.1規定の塩酸40kgを加えて15分間撹拌したのち、静置して水相と有機相とを分離した。この有機相に、純水40kgを加えて15分間撹拌したのち静置して水相と油相とに分離する洗浄操作を3回反復した結果、水相中に塩素イオンが検出されなくなったので、洗浄操作を中止した。有機相からニーダーで塩化メチレンを蒸発させて除き、得られた粉末を乾燥してポリカーボネート樹脂を得た。
重合条件及び得られたポリカーボネート樹脂の物性を表2に示す。
【0047】
PC−b1の製造(比較のためのポリカーボネート樹脂の製造)
上記のPC−a1、a2の製造において得られたオリゴマーを用い、縮合の段階で表2記載の停止剤の共存下、pKa=10.72のトリエチルアミンを触媒とし、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂を製造した。但し、この場合重合後に分子末端は封止された状態にあるため、実施例1にある末端停止剤との反応を実施せず、即洗浄操作に入った。重合条件及び得られたポリカーボネート樹脂の物性を表2に示す。
【0048】
[実施例1、2,比較例1,2]
ポリカーボネート樹脂として前記PC−a1、PC−a2、及びPC−b1を使用し、表2の組成にて、単軸押出機VS40(田辺プラスチックス機械株式会社製、商品名)を用い、シリンダー温度280℃、ベント吸引−700mmHg、50rpm、吐出量10kg/hで組成物を製造した。ここで得られたペレットを射出成形して、離型抵抗測定用試料、およびカラープレートを成形した。耐加水分解性試験(PCT)は、カラープレートをプレッシャークッカー(平山製作所)にて130℃、加圧飽和水蒸気下、50時間処理し、加水分解によるビスフェノールA生成量の測定を行った。この結果を表3に示す。表3から明かなように、分子量分布を制御したポリカーボネート樹脂を使用した本発明の樹脂組成物は、比較例に比べて耐加水分解性、離型性が大きく改良されていることが明らかである。
【0049】
【表2】
Figure 0004363762
【0050】
【表3】
Figure 0004363762
【0051】
* 印 :グリセリンモノステアレート
**印 :密蝋
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、耐加水分解性、離型性を同時に大幅に改良したポリカーボネート樹脂組成物を提供することができる。

Claims (4)

  1. (A)カーボネート原料とジヒドロキシ化合物とを反応させて得られたポリカーボネート樹脂であって、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2.2以下であり、かつ下記式で算出される粘度平均分子量(Mv)と分子末端数から算出される数平均分子量(Mn’)との比(Mv/Mn’)が1.40以下であるポリカーボネート樹脂100重量部に対し、
    【数1】
    ηsp/C=[η]×(1+0.28ηsp)
    [η]=1.23×10-4×Mv0.83
    (式中、ηspはポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液について20℃で測定した比粘度であり、Cはこの塩化メチレン溶液の濃度である。塩化メチレン溶液としてはポリカーボネート樹脂の濃度0.6g/dlのものを用いる)
    (B)脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素化合物および/またはポリシロキサン系シリコーンオイルから選ばれる少なくとも1種の離型剤を0.001〜5重量部配合することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
  2. 離型剤が、炭素数6〜36の脂肪族飽和カルボン酸から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  3. 離型剤が、炭素数6〜36の脂肪族飽和一価カルボン酸と、炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコールまたは多価アルコールとのフルエステルまたは部分エステルから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  4. 離型剤が、数平均分子量200〜15000のパラフィンワックス、ポリエチレンワックスから選ばれた少なくとも1種の脂肪族炭化水素化合物であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
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