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JP4348379B2 - ウッド型ゴルフクラブヘッド - Google Patents

ウッド型ゴルフクラブヘッド Download PDF

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Description

本発明は、打球のバックスピン量を減少させることにより、吹け上がりを防止し、ひいては飛距離を増大させ得るウッド型ゴルフクラブヘッドに関する。
打球の飛距離を伸ばすために、種々の研究がなされている。その結果、打球のバックスピン量を減少させて吹け上がりを防止することが、飛距離の増大に有利と考えられている。また、前記バックスピン量は、打球の高さ(ひいては飛距離)に影響を与えるパラメータである。このため、フェースでの打撃位置がばらついた場合であっても、打球のバックスピン量の変化を極力抑え、ひいては飛距離を安定させる試みも種々提案されている。
例えば、ウッド型ゴルフクラブヘッドのフェースには、フェースロール(「バーチカルフェースロール」又は単に「ロール」と呼ばれる場合がある。)が設けられる。該フェースロールは、図10(a)に示されるように、フェース部の縦断面において、フェースfのほぼ全域に亘って形成された縦方向の丸みないし曲面である。このようなフェースロールは、クラブヘッドの縦のギヤ効果を弱め、ひいては打球のバックスピン量の変化を抑えるのに役立つ。
ここで、縦のギヤ効果について簡単に説明する。フェースfのスイートスポットSSよりもクラウン部c側でボールを打撃(以下、このような打撃を単に「上打撃」という場合がある。)した場合又はソール部s側でボールを打撃した場合(以下、このような打撃を単に「下打撃」という場合がある。)、ヘッドaは、ゴルフボールbから受ける力Fと、打撃位置からヘッド重心Gまでの直交距離L1又はL2との積であるモーメントによって、ヘッド重心Gを通る水平軸回りに微小角で回転する。この際、ゴルフボールbとフェースfとは接触しているので、両者の間の摩擦力によってゴルフボールbはフェースfに噛み合う歯車のように該ヘッドaの回転と逆方向の力を受ける。このような現象は、上打撃の場合、ボールのバックスピン量を減少させ、逆に下打撃の場合、ゴルフボールbのバックスピン量を増加させるように作用する。この作用は、縦のギヤ効果と呼ばれる。
しかし、フェースロールが設けられたフェースfは、ロールを設けていないフェースfn(即ち、図10(b)に示されるように実質的に平らなフェース)に比べて、スイートスポットSSからクラウン側又はソール部側に同一距離ずれた位置でゴルフボールbを打撃した場合でも、ヘッド重心Gと衝撃力Fとの間の直交距離L1又はL2が小さくなる。したがって、フェースロールが設けられたヘッドは、前記回転モーメントを小さくでき、ひいては縦のギヤ効果を抑え、バックスピン量の変化を小さくする。また、フェースロールは、上打撃時にボールの打ち出し角を大きくし、バックスピン量の低下に伴う打球の高さの低下を抑制する。逆に、フェースロールは、下打撃時にボールの打ち出し角を小さくし、バックスピン量の増加による打球の高さの増加を抑制する。関連する先行技術としては次のものがある。
特開昭60−88568号公報
ところで、ゴルフクラブヘッドでは、フェースにスコアラインと呼ばれるトウ・ヒール方向にのびる複数本の凹溝が形成される。ボールやクラブヘッドが濡れていると、表面の水がボールとクラブとの間の摩擦を著しく減少させ、ひいてはバックスピン量が大幅に低下することにより早期に落下するいわゆるドロップと称される打球が生じ得る。スコアラインを設けることにより、打撃時におけるボールとクラブとの間の排水性が向上し、前記ドロップが効果的に防止される。
発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、フェース断面におけるスコアライン間の曲線の曲率半径を、フェースロールの曲率半径よりも小さくすることにより、フェースロールの機能を損ねることなく、ボールのバックスピン量を減少させ、ひいては吹き上がりの少ない打球を提供しうることを知見し、本発明を完成させるに至った。
以上のように、本発明は、バックスピン量を減少させて打球の飛距離を向上させ得るウッド型ゴルフクラブヘッドを提供することを主たる目的としている。
本発明のうち請求項1記載の発明は、ボールを打球するフェースを有し、かつ該フェースに、溝幅が0.3〜0.9mmかつ溝深さが0.05〜0.5mmでトウ・ヒール方向に直線状でのびしかも溝の間隔が3〜10mmで互いに平行に配された複数本のスコアラインが設けられたウッド型ゴルフクラブヘッドであって、規定のライ角及びロフト角として水平面に接地させた基準状態の正面視において、前記スコアラインは、前記水平面に対して10度以内の角度でのびるとともに、前記基準状態におけるヘッド重心とスイートスポットとを含む垂直面でのフェース断面には、少なくとも2本のスコアラインが含まれてなり、かつ前記スコアライン間をのびるスコアライン間曲線は、前に向かって凸となり、しかもフェース全体がなすフェースロールの曲率半径Rよりも小さい曲率半径rの小円弧状曲線からなることを特徴とする。
また請求項2記載の発明は、前記フェース断面において、前記少なくとも2本のスコアラインは、スイートスポットを挟む上下の位置に設けられる請求項1記載のゴルフクラブヘッドである。
また請求項3記載の発明は、前記フェース断面において、前記スコアラインは、前記スイートスポットの位置と、
該スイートスポットを挟む上下の位置とに設けられる少なくとも3本を含み、かつ前記スイートスポットの上下両側に形成されるスコアライン間曲線がいずれも前記小円弧状曲線からなる請求項1記載のゴルフクラブヘッドである。
また請求項4記載の発明は、前記小円弧状曲線の前記曲率半径rと前記フェースロールの曲率半径Rとの比(r/R)が0.30〜0.80である請求項1乃至3のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドである。
また請求項5記載の発明は、前記フェース断面において、前記フェースの上縁から下方に10mmを隔てるフェース上の点であるフェース上側点と、フェースの下縁から上方に10mmを隔てるフェース上の点であるフェース下側点との間に全長さが含まれるスコアライン間曲線がいずれも前記小円弧状曲線からなる請求項1乃至4のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドである。
また請求項6記載の発明は、前記小円弧状曲線は、前記垂直面を中心としてトウ・ヒール方向に少なくとも20mmの領域を形成する請求項1乃至5のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドである。さらに、請求項7記載の発明は、前記スイートスポットから離れた位置にあるスコアライン間曲線ほど、その曲率半径rが小さいことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のウッド型ゴルフクラブヘッドである。
請求項1に係る発明では、フェース断面において、スコアライン間をのびるスコアライン間曲線が、前に向かって凸となり、しかもフェース全体がなすフェースロールの曲率半径Rよりも小さい曲率半径rの小円弧状曲線からなる。従来のクラブヘッドでは、フェースロールの曲率半径と、前記スコアライン間の曲線の曲率半径とは特に区別されることなく同一に形成されていたが、本発明の構成により、ゴルフボールの打撃時、スコアライン近傍においてボールとフェースとの接触圧力が小さくなる。このため、ボールに作用する摩擦力が低下し、ひいてはバックスピン量が低下して吹け上がりの少ない強い弾道が得られる。これにより打球の飛距離が増大する。
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
図1は本実施形態のゴルフクラブヘッド1の基準状態の斜視図、図2はその平面図、図3は同正面図、図4は図2のA−A断面図をそれぞれ示す。ここで、前記基準状態とは、図2に示されるように、シャフト軸中心線CLを任意の垂直面VP内に配しかつ図3に示されるように水平面に対して前記シャフト軸中心線CLを規定のライ角αで傾けるとともに、フェース2のスイートスポットSSをロフト角(リアルロフト角)βに保持(フェース角は零にセットされる)してクラブヘッド1を水平面HPに接地させた状態とする。なお、本明細書では、以後、特に断りがない場合、クラブヘッド1はこのような基準状態にあるものとして説明される。
図において、ゴルフクラブヘッド(以下、単に「ヘッド」又は「クラブヘッド」ということがある。)1は、ボールを打撃するための面であるフェース2を前側に有するフェース部3と、前記フェース2の上縁2aに連なりかつヘッド上面をなすクラウン部4と、前記フェース2の下縁2bに連なりヘッド底面をなすソール部5と、前記クラウン部4とソール部5との間をフェース2のトウ側縁2cからバックフェースBFを通ってヒール側縁2dまでのびるサイド部6と、図示しないシャフトが装着されるシャフト差込孔7aを有するホーゼル部7とを具え、かつ、内部に中空部iが設けられたウッド型として形成される。なお、ゴルフクラブヘッド1にシャフトが装着されていない場合、前記シャフト差込孔7aの中心線が前記シャフト軸中心線CLとして代用される。
本実施形態のクラブヘッド1は、金属材料から形成される。前記金属材料としては、特に限定されないが、例えば、比強度の大きいステンレス合金、マレージング鋼、チタン、チタン合金、マグネシウム合金又はアルミニウム合金などが望ましい。また、チタン合金としては、例えばTi−6Al−4V、Ti−15V−3Cr−3Al−3Sn、Ti−15Mo−5Zr−3Al又はTi−13V−11Cr−3Al等が好適である。また、軽量化を図るために、クラブヘッド1の一部に繊維強化樹脂が用いられても良い。
前記フェース2には、トウ・ヒール方向に直線状でのびかつ互いに平行に配された複数本のスコアライン9が設けられる。該スコアライン9は、幅及び深さの小さい凹溝であり、濡れた状態でもフェースとボールとの間に適度な摩擦を提供し、前述したドロップの発生を効果的に防止する。
図3に示されるように、前記基準状態の正面視において、各スコアライン9は、前記水平面HPに対して10度以内の角度γでのびることが必要である。ここで、該角度γは、前記正面視において、スコアライン9の両端9A及び9Bを結ぶ直線CLと水平線とのなす角度とする。スコアライン9が水平面HPに対して10度よりも大きい角度で傾斜している場合、雨天時のドロップなどを防止する作用が十分に得られない傾向がある他、構えた際にゴルファに違和感を与えやすくなる。とりわけ、スコアライン9を傾ける場合、トウからヒールに向かって下方に傾斜させることが望ましい。なお、前記「基準状態の正面視」とは、図2に符号FVで示されるように、フェース2を前記垂直面VPと直交する正面方向から見たヘッド1の形状として特定される。
本実施形態において、フェース2に互いに平行な8本のスコアライン9が設けられる。各スコアライン9は、クラウン・ソール方向(上下方向)に実質的に一定の間隔を有して設けられている。さらに、各スコアライン9は、フェース2のトウ側縁2cの近傍からスイートスポットSSを超えてヒール側縁2dの近傍まで途切れることなくのびている。前記スイートスポットSSとは、図2に示されるように、ヘッド重心Gからフェース2に立てた法線Nとフェース2とが交差する点とする。また、各スコアライン9は、同じ長さでも良いが、本実施形態では、フェース2の輪郭形状に基づいてそれぞれ異なる長さで形成されている。
前記スコアライン9は、例えば溝断面が矩形状、台形状又は略三角形状等で形成される。該スコアライン9については、日本ゴルフ協会のゴルフ規則において、溝幅、溝深さ及び溝の間隔などが規定されている。本発明のスコアライン9は、その溝幅は0.3〜0.9mm、同溝深さは0.05〜0.5mmに設定される。
フェース2に設けられるスコアライン9の本数も特に限定されないが、フェース2のクラウン・ソール方向に広い範囲でスコアライン9が満遍なく配置されるように、好ましくは5本以上、より好ましくは6本以上、さらに好ましくは7本以上設けられるのが望ましい。
図4の断面図は、基準状態におけるヘッド重心GとスイートスポットSSとを含む垂直面でのフェース断面を含む。また、図5は図4のフェース部分の模式的な部分拡大図である。前記フェース断面には、少なくとも2本、本実施形態では8本全てのスコアライン9が現れる。そして、本実施形態のクラブヘッド1では、スコアライン9、9間をのびる各スコアライン間曲線10は、いずれも前に向かって凸となり、しかもフェース全体がなすフェースロールFRの曲率半径Rよりも小さい曲率半径rの小円弧状曲線から形成される。
ここで、スコアライン間曲線10の曲率半径rは、図6に拡大して示されるように、任意のスコアライン間曲線10において、スコアライン9のエッジ9eからそれぞれ内側に1mmを隔てるフェース上の点P1、P2及びこれらの2つの点P1、P2間の曲線の中点である中間点P3の3つの点(P1、P2及びP3)を通る単一円弧の半径として定義される。なお、スコアライン9のエッジ9eは、R&Aの内規「30度測定法」によって特定される。このため、スコアライン9は、上下方向に少なくとも3mm以上、より好ましくは5mm以上の間隔を有して設けられるのが望ましい。他方、スコアライン9の間隔は、大きすぎると、ボールとスコアライン9との接触機会が減少する傾向があるので、10mm以下、より好ましくは8mm以下が望ましい。
また、フェース全体のフェースロールFRの曲率半径Rは、図7に拡大して示されるように、基準状態におけるヘッド重心GとスイートスポットSSとを含む垂直面でのフェース断面において、フェース2の上縁2aから下方に10mmを隔てるフェース上の点であるフェース上側点Puと、フェース2の下縁2bから上方に10mmを隔てるフェース上の点であるフェース下側点Pdと、スイートスポットSSとの3点を通る単一円弧の半径として定義される。但し、前記各点Pu、Pd及びSSのいずれかがスコアライン9に重なった場合又はスコアライン9のエッジ9eから高さ方向に1mm以上離れていない場合、当該点Pu、Pd及び/又はSSについては、スコアラインと重ならずかつそのエッジ9eから1mmを隔てる最も近い上又は下の位置へと移動させるものとする。
なお、前記フェース断面において測定されるフェース2の上下方向の高さhは、小さすぎると、構えにくくなったり反発性が低下して飛距離を損ねるおそれがあるので、少なくとも30mm以上が望ましく、より好ましくは35mm以上、さらに好ましくは40mm以上が望ましい。他方、フェース2の前記高さhが過度に大きくなると、スイートスポットSSの位置が高くなるおそれがあり、同様に飛距離を損ねやすくなる。このような観点より、前記フェースの高さhは、好ましくは70mm以下、より好ましくは65mm以下、さらに好ましくは60mm以下が望ましい。
また、前記フェース2の上縁2a及び下縁2bは、エッジ等によって明瞭に識別できる場合には当該エッジの位置として定められるが、明瞭に識別できない場合には、フェース2の曲率半径(スコアライン9の部分を除く)がスイートスポットSS側から初めて20mmとなる位置として定められる。
図8には、ゴルフボールbをクラブヘッドで打撃瞬間の断面図が示される。(a)は本実施形態のクラブヘッド、(b)は従来のクラブヘッド(即ち、スコアライン間曲線の曲率半径rと、フェースロールFRの曲率半径Rとが同一)をそれぞれ示す。
図8から明らかなように、本実施形態のクラブヘッド1は、スコアライン間曲線10が小さい円弧で形成されるので、スコアライン9近傍領域Xでのフェースの凹み(肩落ち量)が大きくなり、ひいてはこの領域Xにおけるゴルフボールbとフェース2との接触圧力が小さくなる。これにより、ゴルフボールbに作用する摩擦力が低下し、ひいてはバックスピン量が低下して吹け上がりの少ない強い弾道が得られる。このような弾道は、打球の飛距離を増大させるのに効果的である。また、摩擦力が減少するので、上打撃時及び下打撃時の縦のギヤ効果時に生じるバックスピン量の変化代も小さくなる。このため、飛距離のバラツキが減少し、狙った場所に安定してボールを運ぶことができる。
ここで、フェースロールFRの曲率半径Rは、特に限定されるものではないが、小さすぎると、上打撃の場合、打ち出し角度が過度に大きくなり飛距離を損ねやすくなる。同様に、下打撃の場合、打ち出し角度が過度に小さくなり、十分な飛距離を得ることができない。このような観点より、フェースロールの曲率半径Rは、好ましくは120mm以上、より好ましくは150mm以上、さらに好ましくは200mm以上が望ましい。
他方、フェースロールFRの曲率半径Rが過度に大きくなると、縦のギヤ効果が強く表れやすい。即ち、上打撃時、打球のバックスピン量が過度に減少してドロップが生じやすくなり、逆に下打撃時では、バックスピン量が過度に増大して吹け上がりやすい打球となり、いずれの場合でも飛距離が損なわれるおそれがある。このような観点より、フェースロールFRの曲率半径Rは、好ましくは430mm以下、より好ましくは380mm以下、さらに好ましくは330mm以下が望ましい。
また、ボール打撃時、フェース2のスコアライン9の近傍領域Xでの接触圧力の低下を確実ならしめるためには、前記小円弧状曲線の曲率半径rは、好ましくは300mm以下、より好ましくは250mm以下、さらに好ましくは230mm以下が望ましい。他方、小円弧状曲線の曲率半径rが過度に小さくなると、バックスピン量の過度の減少を招くおそれがある。このような観点より、スコアライン間曲線10の曲率半径rは、好ましくは50mm以上、より好ましくは80mm以上、さらに好ましくは100mm以上が望ましい。
また、前記小円弧状曲線の曲率半径rは、フェースロールFRの曲率半径Rと関連づけて規定されるのが望ましい。即ち、小円弧状曲線の前記曲率半径rとフェースロールFRの曲率半径Rとの比(r/R)が過度に小さくなると、打球のバックスピン量が過度に減少するおそれがある。逆に、前記比(r/R)が過度に大きくなると、本発明の効果が得られ難くなるおそれがある。このような観点より、前記比(r/R)は、好ましくは0.30以上、より好ましくは0.35以上、さらに好ましくは0.40以上が望ましく、また、好ましくは0.80以下、より好ましくは0.70以下、さらに好ましくは0.60以下が望ましい。
本実施形態において、前記フェース断面には、8本のスコアライン9が現れ、その結果、7つのスコアライン間曲線10が区分され得る。上述の摩擦力の軽減作用を得るためには、7つのスコアライン間曲線10のうち少なくとも一つが前記小円弧状曲線で形成されていれば良い。しかし、前記作用をより有効に発揮させるためには、打撃位置として最も頻度の高いスイートスポットSS付近のスコアライン間曲線を前記小円弧状曲線で形成するのが特に望ましい。
例えば、図5に示されるように、スイートスポットSSを挟む上下の位置にスコアライン9s、9sが設けられている場合、それらの間のスイートスポットSSを含むスコアライン間曲線10sが少なくとも小円弧状曲線で形成されるのが望ましい。また、図9に示されるように、前記スイートスポットSSの位置と、該スイートスポットSSを挟む上下の位置とにスコアライン9s、9u及び9dがそれぞれ設けられている場合、スイートスポットSSの上下両側に形成されるスコアライン間曲線10u及び10dが少なくとも前記小円弧状曲線により形成されるのが望ましい。
これらにより、バックスピン量を低下させて飛距離を増大させる機会を高めうる。特に好ましくは、前記フェース断面において、図7で示したフェース上側点Puとフェース下側点Pdとの間に全範囲が含まれるスコアライン間曲線10がいずれも前記小円弧状曲線から形成されること、さらに好ましくは、全てのスコアライン間曲線10が小円弧曲線で形成されるのが望ましい。
また、各スコアライン間曲線10の曲率半径rは、同一でも良いし、異ならせても良い。とりわけ、スイートスポットSSから離れた位置にあるスコアライン間曲線10ほど、その曲率半径rが小さくなるように構成されるのが望ましい。このような構成では、上打撃時及び下打撃時において、ボールに対する摩擦力をより一層小さくすることができ、ひいては縦のギヤ効果をさらに弱めることができる。したがって、打点位置に拘わらず、飛距離をより一層安定させることが可能になる。
また、前記フェース断面は、所定の長さでトウ・ヒール方向に実質的に連続するように形成されるのが望ましい。具体的に述べると、前記小円弧状曲線は、スイートスポットSSとヘッド重心Gとを含む垂直面を中心として、トウ・ヒール方向に少なくとも20mmの領域、より好ましくは40mmの領域、さらに好ましくは60mmの領域をのびているのが望ましい。これによって、ゴルフボールの打撃位置がフェース2のトウ・ヒール方向に逸れた場合でも、本発明の作用を確実に発揮させることができる。
ここで、図3に示されるように、基準状態の正面視におけるスイートスポットSS位置でのフェース2の幅FWは、構えた際の安心感やヘッドの重量配分を好適なものとするために、好ましくは90mm以上、より好ましくは95mm以上、さらに好ましくは100mm以上が望ましく、また、上限については、好ましくは130mm以下、より好ましくは127mm以下、さらに好ましくは125mm以下が望ましい。
また、前記スコアライン9は、種々の方法、例えばNC等による機械加工、刻印型などを用いたプレス成形又は鋳造等によって製造できる。スコアライン間の表面形状は、例えば鋳造、鍛造又は機械加工によって形成され得る。ただし、鋳造の場合には、十分な精度が得られにくい場合があるので、フェース部3は、鍛造材又は圧延材成形によって形成されるのが望ましい。なお鍛造材の場合、スコアライン9の形成は、鍛造と同時に又は鍛造後のいずれに行われてもよい。
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されるものではなく種々の態様に変形して実施しうるのは言うまでもない。
表1の仕様に基づいて、ウッド型のゴルフクラブヘッドが製造され、それらのバックスピン量及び飛距離がテストされた。
各クラブは、フェース表面形状を除いていずれも同一とした。具体的には、各ヘッドは、Ti−6Al−4Vの圧延材のプレス成形品からなるフェース部材と、同素材のロストワックス精密鋳造品からなるヘッド本体とをプラズマ溶接することにより接合した2ピース構造である。フェース表面形状は、プレス型の成形面を異ならせることにより、所望の値に調整された。各ヘッドの共通仕様は次の通りである。
ヘッド体積:460cm3
ヘッド重量:198g
ロフト角:9.5度
フェースの幅FW:105mm
フェースの高さh:55mm
スコアラインの本数:8本
スコアラインの溝幅:0.70mm
スコアラインの溝深さ:0.20mm
スコアラインの間隔(エッジ間距離):5.4mm
スイートスポットの位置:4本目のスコアラインから約1mm下の位置
フェース部の厚さ:中央部3.3mm、周辺部2.5mm
なお、実施例及び比較例において、全てのスコアライン間曲線は、表1に示す値の曲率半径で形成された。テストの方法は、次の通りである。
<バックスピン量及び飛距離>
先ず、各テストヘッドに同一のFRP製のシャフトが装着され、45インチのウッド型ゴルフクラブが試作された。次に、各テストクラブがスイングロボットに装着され、ヘッドスピード45m/sでフェースのスイートスポット位置(SS打撃)、スイートスポットから上方に8mmの位置(SS上8mm打撃)及びスイートスポットから下方に8mmの位置(SS下8mm打撃)の3カ所でそれぞれゴルフボールが10球づつ打撃された。そして、各打点毎にそれらの平均のバックスピン量及び飛距離が測定された。表1には代表的なものを示す。また、上記テストは、フェース及びゴルフボールが乾いた状態(ドライ条件)と、フェース及びゴルフボールに霧吹きで水を吹き付けた状態(ウエット条件)でそれぞれ行われた。テストの結果などを表1に示す。
Figure 0004348379
テストの結果、実施例のクラブは、全体として打球のバックスピン量が減少していることが確認できた。これにより、飛距離の向上が得られた。また、SS打撃、SS上8mm打撃及びSS下8mm打撃において、バックスピン量の変化が小さくなり、ひいては飛距離のバラツキが小さくなっていることが確認できた。
本実施形態のゴルフクラブヘッドの基準状態の斜視図である。 その平面図である。 図1の正面図である。 図2のA−A断面図である。 図4の部分拡大図である。 図4の部分拡大図である。 図4の部分拡大図である。 (a)は本実施形態のクラブヘッドの打撃瞬間、(b)は従来のクラブヘッドの打撃瞬間をそれぞれ示す断面図である。 本発明の他の実施形態を示すフェースの断面図である。 (a)及び(b)は、縦のギヤ効果を説明する断面図である。
符号の説明
1 ゴルフクラブヘッド
2 フェース
3 フェース部
4 クラウン部
5 ソール部
6 サイド部
7 ホーゼル部
9 スコアライン
10 スコアライン間曲線
FR フェースロール
r 小円弧状曲線の曲率半径
R フェースロールの曲率半径

Claims (7)

  1. ボールを打球するフェースを有し、かつ該フェースに、溝幅が0.3〜0.9mmかつ溝深さが0.05〜0.5mmでトウ・ヒール方向に直線状でのびしかも溝の間隔が3〜10mmで互いに平行に配された複数本のスコアラインが設けられたウッド型ゴルフクラブヘッドであって、
    規定のライ角及びロフト角として水平面に接地させた基準状態の正面視において、前記スコアラインは、前記水平面に対して10度以内の角度でのびるとともに、
    前記基準状態におけるヘッド重心とスイートスポットとを含む垂直面でのフェース断面には、少なくとも2本のスコアラインが含まれてなり、かつ
    前記スコアライン間をのびるスコアライン間曲線は、前に向かって凸となり、しかもフェース全体がなすフェースロールの曲率半径Rよりも小さい曲率半径rの小円弧状曲線からなることを特徴とするウッド型ゴルフクラブヘッド。
  2. 前記フェース断面において、前記少なくとも2本のスコアラインは、スイートスポットを挟む上下の位置に設けられる請求項1記載のウッド型ゴルフクラブヘッド。
  3. 前記フェース断面において、前記スコアラインは、前記スイートスポットの位置と、
    該スイートスポットを挟む上下の位置とに設けられる少なくとも3本を含み、かつ
    前記スイートスポットの上下両側に形成されるスコアライン間曲線がいずれも前記小円弧状曲線からなる請求項1記載のウッド型ゴルフクラブヘッド。
  4. 前記小円弧状曲線の前記曲率半径rと前記フェースロールの曲率半径Rとの比(r/R)が0.30〜0.80である請求項1乃至3のいずれかに記載のウッド型ゴルフクラブヘッド。
  5. 前記フェース断面において、前記フェースの上縁から下方に10mmを隔てるフェース上の点であるフェース上側点と、フェースの下縁から上方に10mmを隔てるフェース上の点であるフェース下側点との間に全長さが含まれるスコアライン間曲線がいずれも前記小円弧状曲線からなる請求項1乃至4のいずれかに記載のウッド型ゴルフクラブヘッド。
  6. 前記小円弧状曲線は、前記垂直面を中心としてトウ・ヒール方向に少なくとも20mmの領域を形成する請求項1乃至5のいずれかに記載のウッド型ゴルフクラブヘッド。
  7. 前記スイートスポットから離れた位置にあるスコアライン間曲線ほど、その曲率半径rが小さいことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のウッド型ゴルフクラブヘッド。
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