JP4345962B2 - Ndフィルタを備えた光量絞り装置、カメラ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、NDフィルタを備えた光量絞り装置、カメラに関し、特にビデオカメラあるいはスチルビデオカメラ等の撮影系に使用するのに適したグラデーション濃度分布を有するNDフィルタを備えた光量絞り装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、デジタルビデオカメラの絞り装置は、図3に示すような構造に構成されている。このような絞り装置に、同図の31に示されるNDフィルタを用いているのは、つぎのような理由による。撮像画像が明るすぎると絞り羽根は光量を減少させるため、閉める方向に動く。しかし、ある大きさより開口径を小さくすると光線の回折現象が起き、画像の解像度が低下する。この最小絞りを“小絞り”と呼んでいるが、この小絞り時の透過量をより下げるために、NDフィルタによってCCDに到達する光量を減らしている。
【0003】
近年、撮像素子の感度が向上するに従い、前記NDフィルタの濃度を濃くして、光の透過率をさらに低下させ、被写界の明るさが同一でも絞りの開口を大きくする様になってきている。しかしながら、この様にNDフィルタの濃度が濃くなると、図3に示すような状態において、フィルムを通過した光aと通過しない光bの光量差が大きく異なり、画面内で明るさが異なる“シェーディング”現象が起きたり、解像度が低下してしまうという欠点が生じる。そこで、このような欠点を解決するために、NDフィルタの濃度を光軸中心に向かって順次透過率が大となるような構造を取る必要が出てくる。
【0004】
従来において、光量絞り装置の主要部分であるNDフィルタは、フィルム状をなす材料(セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記す。)、塩化ビニル等)中に光を吸収する有機色素または顔料を混ぜ、練り込むタイプのものを使用してきた。
しかし、前記NDフィルタの濃度を光軸中心に向かって順次透過率が大となる様な構造を得ようとすると、従来方法では作製がかなり困難である。
【0005】
このような濃度が変化するタイプ(グラデーションタイプ)のNDフィルタに関して、本発明者らは、特許文献1、特許文献2、特許文献3、等において、マイクロ写真法による濃度可変タイプ(グラデーションタイプ)のNDフィルタの作製方法等を提案している。当時のビデオカメラではこの方法により作製したNDフィルタで画質の向上が図られたが、近年のCCDの更なる高感度化、小型化、高画質対応により特に特殊条件での使用(例えば逆光下での小径絞り状態)において、銀塩粒子での光の散乱による影響により画質が劣化してしまうことがある。
また、特許文献4には、真空蒸着法により楕円形グラデーションフィルタの製造方法が開示されている。この方法では、微少領域(例えば3mmの範囲で透過率3%から80%までの変化等)での濃度変化ができない欠点がある。
【0006】
このようなことから、本発明者らは、より理想的な濃度可変タイプ(グラデーションタイプ)のNDフィルタを得るため、蒸着方法によりそれらを作製することについて、特願2002−220762号、特願2002−220770号、特願2002−220776号等において既に提案をしている。この先行例の例えば特願2002−220776号には、図9に示されるような真空蒸着機を用いた蒸着方法による上記した濃度可変タイプのNDフィルタの作製方法について、つぎのように記載されている。この真空蒸着法においては、図9の様にチャンバー内の基板は蒸着傘101に備え付けられ、この蒸着傘101と共に基板102が回転し成膜が行われる。この基板102の成膜側に例えば図10に示すようなスリット型のマスクを設けることにより、蒸着源103と基板102との位置関係から、蒸着する蒸着粒子はスリットを通過し基板102に到達できたり、スリット型マスクに遮られ基板102まで到達できなかったりすることになり、例えば図11(a)に示すような膜厚分布を得ることとなる。図11(a)の横軸は基板上の位置で、図11(b)と対応している。縦軸は膜厚である。
【0007】
このような蒸着方法による上記した濃度可変タイプのNDフィルタの作製方法のメリットは、最適な膜構成で成膜を行えば、良好な分光特性が得られることである。例えば、分光透過率の波長依存性の少ないものが得られることである。
NDフィルタとしては、各波長で均一に透過光量を減衰させることが重要である。特別な波長の透過率が高い場合、色バランスが崩れてくる。
可紫光(400nmから700nm)の範囲で、400nm近傍の透過率が高い場合は、画像が青っぽくなり、700nm近傍の透過率が高い場合は、画像が赤っぽくなる。
また、分光反射率も最適な膜構成で成膜を行えば、2%以下もしくは1%以下にすることが可能で、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ等に搭載された場合、ゴースト・フレア現象が発生しない。
【0008】
【特許文献1】
特許第2754518号公報
【特許文献2】
特許第2771078号公報
【特許文献3】
特許第2771084号公報
【特許文献4】
特開平11−38206号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した蒸着法によって上記NDフィルタを作製する場合においては、一方で蒸着源が高温になるため、蒸着源からの輻射熱で基板の温度が上がってしまうこととなり、この温度による影響は、プラスチック基板を用いる場合に特に問題となる。プラスチック基板は、ガラスに比べ割れないため、光量絞り装置を薄く作製することが可能となる点で有利であるが、一般的に光学薄膜を蒸着法で成膜する場合において、ガラス基板では基板温度を300℃以上の温度で加熱することが可能であるのに対して、プラスチック基板の場合には、あまり温度を上げることができないというデメリットがある。
【0010】
例えば、延伸されたPETフィルムの場合、80℃から寸法の収縮現象が起こり、実際の蒸着では、成膜後で160℃前後まで温度上昇し、室温に戻るとかなりの収縮率になる。
その結果、NDフィルタの寸法ずれが生じて、同一面内で濃度の異なるNDフィルタの場合、絞り値のずれ(FNO.ずれ)が生じる問題がある。
同一面内で濃度が異なるNDフィルタにも大きく分けて、
▲1▼2〜3ケの均一濃度部があって、それらの濃度が例えばND0.5,ND1.0,ND1.5の3領域になっている、ステップ型に濃度変化する場合と、
▲2▼連続的に濃度がND0.1〜ND1.5に変化する場合がある。
ステップ型に濃度変化する場合は、濃度境界部の位置のずれが問題になる。
また、連続的に濃度変化する場合は、全体のバランスが崩れるため、後者の方がより、寸法精度が問題となってくる。
【0011】
そこで、本発明は、上記課題を解決し、蒸着法によりプラスチック基材上に連続的に膜厚分布が変化する膜を形成したNDフィルタにおいて、熱収縮による寸法ずれによる影響の少ないNDフィルタを備えた光量絞り装置、カメラを提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下のように構成したNDフィルタを備えた光量絞り装置、カメラを提供する。
すなわち、本発明の光量絞り装置は、相対的に駆動されて絞り開口の大きさを可変する複数の絞り羽根と、該絞り羽根により形成された開口内の少なくとも一部に配置され、基材上に連続的に膜厚分布が変化する膜を形成したNDフィルタとを備えた光量絞り装置において、
前記NDフィルタは、前記基材が延伸加工の施されたプラスチックフィルムで構成され、前記膜による連続的な膜厚分布の変化方向が、前記延伸加工の施されたプラスチックフィルムの延伸方向と垂直であることを特徴としている。
その際、この延伸加工の施されたプラスチックフィルムとして、2軸延伸加工の施されたプラスチックフィルムを用いた場合には、前記膜による連続的な膜厚分布の変化方向が該2軸延伸加工の施されたプラスチックフィルムの主延伸方向と垂直に構成する。
なお、本発明での垂直とは、実質的に垂直とみなせる場合を意味している。
また、本発明の光量絞り装置は、前記プラスチックフィルムとして、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムのいずれかの材料を用いることができる。
また、本発明のカメラは、光学系と、該光学系を通過する光量を制限する上記記載の光量絞り装置と、該光学系によって形成される像を受ける固体撮像素子を有する構成とすることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明は、上記構成により、熱収縮による寸法ずれによる影響の少ないNDフィルタを備えた光量絞り装置、カメラを実現するようにしたものであるが、それは本発明者らの鋭意検討した結果による、つぎのような知見に基づくものである。
すなわち、図4に示すように、NDフィルタ43は絞り羽根41に貼られているが、ここで、光学的に影響を及ぼすのは、羽根の開口端部である図4に示されるDからX2、DからX1、Dから0までの各距離であるが、本発明者らはこれらの距離のバラツキがどのように生ずるかについて、詳細に調査した結果、特定の個所に発生する寸法変化のバラツキが蒸着工程における加熱温度に起因するPETの熱収縮によるものであることが明らかとなった。
【0014】
そして、これによりNDフィルタの濃度変化方向を、主延伸方向に対して略垂直とすることにより、羽根の開口端部DからNDフィルタ上の位置X2、羽根の開口端部DからNDフィルタ上の位置0までの距離を一定にすることが可能となり、これらの距離のバラツキにより生じる問題点を解決することができることを見出し、本発明を完成するに到ったものである。
【0015】
以下に、これらの詳細について説明するが、これらについての理解を容易とするため、まず、このようなNDフィルタが光量絞り装置にどのような形態で用いられるかについて説明する。
光量絞り装置の主要部分であるNDフィルタ11および絞り羽根12は、図1に示すような構成をとっている。
ガラス基材を用いないでプラスチックフィルムを使用している主たる理由としては、前にも述べたがプラスチックフィルムはガラスに比べ割れないため、図3に示す光量絞り装置を薄く作製することが可能となる点が挙げられる。
その結果、図3に示す光学断面図において、レンズ36A、レンズ36Bの間の間隔を短くすることができ、より高倍率の画像を得ることが可能となる。プラスチックフィルムの板厚は、100μm以下も可能であり50μmのものもある。
【0016】
因みに図3で36A,36B,36C,36Dは撮影光学系36を構成するレンズ、37は固体撮像素子で38はローパスフィルタである。また31から34は絞り装置で、31がNDフィルタ、32と33が対向的に移動する絞り羽根で、2枚の絞り羽根は略菱形の開口を形成する。NDフィルタは普通、絞り羽根に接着されている。34は絞り羽根支持板である。
【0017】
図4は図3において絞り部分の位置を光線aおよびbの入射方向から見た濃度連続変化タイプNDフィルタの絞り装置の図である。NDフィルタ43は図1のように羽根41に貼られている。
図4はこれらの羽根が互い違いに動作することにより開口部Cの大きさを制御している状態を示している。図中41、42は絞り駆動する羽根であり、この場合には、41の羽根にNDフィルタ43が接着剤により固定されており、42はNDフィルタが張られていないもう片方の羽根を構成している。
図5(c)はNDフィルタ全体を示しており、透明プラスチックベースの片面または両面に多層の誘電体を蒸着することにより得られる。
特に濃度が連続的に変化する構造を有しており、これは前述したように図9に示すような基板回転ドーム上に、基板と一体で配置されるスリットマスクを使用することにより得られる。
透明プラスチックとしては、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムが用いられる。
【0018】
つぎに、図4を用いて濃度変化部の構成を説明する。
図4において、NDフィルタ43の端面を0とした時、濃度が濃くなる方向にX1,X2,X3,X4,X5と各位置に記号が付けられている。
この例では、NDフィルタの濃度変化方向の端から端までの距離は、5.1mmであり、以下の▲1▼〜▲5▼にこれらの各部について説明する。
▲1▼0〜X1:透明部 幅1mm(PET基材に反射防止膜を両面成膜した部分)
▲2▼X1〜X2:連続濃度変化部 幅1.6mm、濃度0.1〜濃度1.2の変化領域。
▲3▼X2〜X4:最高濃度部1.2 幅0.5mm。
▲4▼X3〜X4:開口端部付近X3から接着用の成膜されない部分までの区間。
▲5▼X4〜X5:羽根に接着する部分で蒸着膜が成膜されていると接着強度が低下するため、マスクで覆い、基材が露出している部分 幅2mm。である。これをグラフにしたのが図6である。また、NDフィルタの断面構造を図7に示してある。
【0019】
ここで、光学的に影響を及ぼすのは、羽根の開口端部である図4に示されるDからX2、DからX1、Dから0までの各距離である。
これらの距離にバラツキが生じると、光量値が各々異なってしまい、不具合が生じる。そのため、これらの距離を各々一定にする必要がある。
(ここで、X3は、NDフィルタ上の位置を表わしており、羽根の開口端部D付近に相当する位置である。)
次に、これらの距離のバラツキがどのように生ずるのかを、以下のように調査した。
まず、その前にNDフィルタの製造工程の概略について説明する。
NDフィルタは、以下の(1)〜(9)の製造工程を経て作製される。
(1)基材である透明なプラスチックフィルムを、プレスで抜き加工を行う。
(2)蒸着治具に上記透明なプラスチックフィルムをセットする。この時、位置決めを行う基準ピンが治具に取り付けられており、プラスチックフィルムにはそれに対応する基準穴が設けられている。その上に外枠のみ設けられた全面成膜用のマスクをセットする。
(3)反射防止コート(ARコート)の蒸着を行う。(図7に示す702のND部と反対側の面。)
(4)次に、プラスチックフィルムを裏返してセットし、その上に連続的に濃度分布が変化するNDフィルタの膜を形成するための、直線スリットマスクをスペーサを介してセットする。両者には位置決め用の基準穴が設けられている。
(5)NDフィルタを構成する膜の蒸着を行う(図7に示す701)。
(6)NDフィルタの成膜面と同じ面に、(5)で成膜した部分を覆うマスクをセットし反射防止コート(ARコート)の蒸着を行う。(図7に示す702のND部と同一面側)
このようにして形成された完成図を図5(a)に示す。
(7)蒸着されたプラスチックフィルムのシートをシート上のある位置(図5 (a)に示す51)を基準にして外形プレス抜きを行う。
(8)プレス抜きした後の外形は、図5(b)の略台形の様になる。これを剥がして、図1に示す形状のNDフィルタを完成させる。
(9)前記プレス抜きされたNDフィルタを絞り羽根に張り付け位置を確認して接着する。例えば、図2の23に示す様なラインに合わせるために、度当たり治具を用いて、位置合わせを行う。
以上が、NDフィルタの製造工程の概略である。
【0020】
次に、これらの距離を一定にするためには、上記NDフィルタの製造工程のどのような工程に注目すればよいかを考察する。
図4において、NDフィルタの端面0と羽根開口部Dの距離は、バラツキは少なが、端面部0〜X1、0〜X2には、100〜200μmのバラツキが発生した。
前記のバラツキを調査したところ、真空蒸着工程での寸法変化が大きいことが分かった。真空蒸着工程において、基板加熱温度は110℃であるが、蒸着中に温度上昇し、サーモラベルで蒸着中の温度を測定したところ、160℃に達していた。
プラスチックフィルムには、材質厚75μmのPETを用い、蒸着前後でのPETの寸法を比較した。
【0021】
以下にその結果を示す。
【0022】
【表1】
A方向の寸法調査結果
【0023】
【表2】
B方向の寸法調査結果
表1、表2にPETフィルムの図5(d)に示すA方向、B方向の蒸着前後の寸法を測定した結果である。A方向で0.76%,B方向で0.33%の収縮率である。PETの熱収縮は、シート加工時の延伸方向と関係がある。
【0024】
一般に、プラスチックフィルムは、強度を向上させる理由により一方向に延伸をかける1軸延伸と二方向に延伸をかける2軸延伸があり、どちらかを用いている。2軸の場合も一般的にはロール方向の延伸力が強く主延伸となり、主延伸の方向の方がその直交する方向より熱収縮が大きくなる。未延伸プラスチックは一般的に強度が弱く用いられない。
延伸は、プラスチックフィルムの融点以下で二次転移点以上に加熱しながら、縦横2軸延伸を行い、延伸加工後はフィルム分子配向を固定するため、加熱し固定させている。
しかしその後、転移点以上に温度が上がると、分子配列の熱記憶が発生し、熱収縮が発生する。
今回用いられているPETは、2軸延伸加工が施されていて、図5(d)に示すA方向が主延伸方向、B方向がそれと直交方向である。
この結果から、前述のバラツキの原因がPETの熱収縮にあることがわかる。
NDフィルタの濃度変化方向を、主延伸方向に対して略垂直とすることにより、無作為の方向の時と比較して、寸法変化を1/2以下にすることが可能になった。
また、熱収縮率を考慮して予めマスクの寸法を修正して作成することにより、無作為の方向の時と比較して寸法変化を1/10以下にすることが可能になった。
【0025】
【実施例】
以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
本実施例においては、NDフィルタを、つぎの(1)〜(9)の製造工程により作製した。
(1)高透過率の材厚75μmのPETの主延伸方向をNDフィルタの濃度変化方向と略垂直方向にベース材の外形プレス抜きを行う。
(2)蒸着治具に上記透明なプラスチックフィルムをセットする。この時、位置決めを行う基準ピンを治具には取り付けられており、プラスチックフィルムにはそれに対応する基準穴が設けられている。その上に外枠のみ設けられた全面成膜用のマスクをセットする。
(3)反射防止コート(ARコート)の蒸着を行う。(図7に示す702のND部と反対側の面。)
(4)次に、プラスチックフィルムを裏返してセットし、その上に連続的に濃度分布が変化するNDフィルタの膜を形成するための、直線スリットマスクをスペーサを介してセットする。両者には位置決め用の基準穴が設けられている。
(5)NDフィルタを構成する膜の蒸着を行う(図7に示す701)。
【0026】
ここで、一例として、このようにして形成された膜構成を、図8に示す。
(6)NDフィルタの成膜面と同じ面に、マスクをセットし反射防止コート(ARコート)の蒸着を行う。(図7に示す702のND部と同一面側)
このようにして形成された完成図を図5に示す。
(7)蒸着されたプラスチックフィルムのシートをシート上のある位置(図5 (a)に示す51)を基準にして外形プレ抜きを行う。
(8)プレス抜きした後の外形は、図5(b)の略台形の様になる。これを剥がして、図5(c)に示す形状のNDフィルタが完成する。
(9)前記プレス抜きされたNDフィルタを絞り羽根に張り付け位置を治具を用いて確認し、接着する。
【0027】
その結果、寸法0〜X1、0〜X2のバラツキを±20μmにすることが可能となった。
このことから、羽根の開口部DからNDフィルタ上の位置X2、及び開口部DからNDフィルタ上の位置0までの距離のバラツキを±20μmにすることが可能になった。
これを組み込むことにより、ビデオカメラの絶対光量を均一にすることが可能となった。
一般的にはレンズの明るさを示すFナンバーがあるが、この絞りを搭載しているビデオカメラの機器差は±0.2に抑えることが可能となり、機器により同じFナンバーで明るさが異なるということを無くすことができた。
【0028】
【発明の効果】
本発明によれば、蒸着法によりプラスチック基材上に連続的に膜厚分布が変化する膜を形成したNDフィルタを備えた光量絞り装置、カメラを実現することができる。これにより、光量絞り装置におけるNDフィルタの熱収縮による寸法ずれによって生じる、光量値の異なりに起因する不具合を解決することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を説明するための濃度可変タイプ(グラデーションタイプ)のNDフィルターが羽根に貼られている図。
【図2】 本発明の実施の形態を説明するための度当たり治具でNDフィルタの位置を合わせた図。
【図3】 本発明を説明するための撮影系にNDフィルタを配した時の作用を示すための光学断面図。
【図4】 本発明を説明するための絞り装置の状態を表わした図。
【図5】 (a)は本発明の実施の形態を説明するための成膜されたプラスチックフィルムの状態を表わした図、(b)は成膜されたプラスチックフィルムをプレス抜きした状態を表わした図、(c)はプレス抜きした後に剥されて完成したNDフィルタの構成を示す図、(d)は本発明を説明するためのプラスチックフィルムの収縮率を調べた時の図。
【図6】 連続濃度変化タイプNDフィルタの距離vs.濃度の関係を表わした図。
【図7】 本発明の実施の形態及び実施例に用いられるNDフィルタの断面構成図。
【図8】 本発明の実施例に用いられるNDフィルタの膜構成図。
【図9】 本発明の先行例における真空蒸着法によるNDフィルタの製造方法を説明するための図であり、(a)は真空蒸着機におけるチャンバー内の構成図、(b)は基板の拡大図である。
【図10】 本発明の先行例に用いられるスリット型マスクとマスク形状を示す図。
【図11】 本発明の先行例に用いられるスリット型マスクによる膜厚分布シミュレーション例を示す図。
【符号の説明】
11:NDフィルタ
12:絞り羽根
23:度当たり治具
36A,36B,36C,36D:撮影光学系36を構成するレンズ
37:固体撮像素子
38:ローパスフィルタ
31:NDフィルター
32,33:絞り羽根
34:絞り羽根支持板
51:切断基準線
41:NDフィルタが貼られている方の絞り羽根
42:NDフィルタが貼られていないもう片方の羽根
43:NDフィルタ
A:主延伸方向
B:主延伸方向と略垂直方向
C:開口部
D:開口部端部
701:NDフィルタ膜
702:反射防止膜
703:PETフィルム
Claims (4)
- 相対的に駆動されて絞り開口の大きさを可変する複数の絞り羽根と、該絞り羽根により形成された開口内の少なくとも一部に配置され、基材上に連続的に膜厚分布が変化する膜を形成したNDフィルタとを備えた光量絞り装置において、
前記NDフィルタは、前記基材が延伸加工の施されたプラスチックフィルムで構成され、前記膜による連続的な膜厚分布の変化方向が、前記延伸加工の施されたプラスチックフィルムの延伸方向と垂直であることを特徴とする光量絞り装置。 - 前記延伸加工の施されたプラスチックフィルムが、2軸延伸加工の施されたプラスチックフィルムであり、前記膜による連続的な膜厚分布の変化方向が、前記2軸延伸加工の施されたプラスチックフィルムの主延伸方向と垂直であることを特徴とする請求項1に記載の光量絞り装置。
- 前記プラスチックフィルムが、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムのいずれかの材料からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光量絞り装置。
- 光学系と、該光学系を通過する光量を制限する請求項1〜3いずれか1項に記載の光量絞り装置と、該光学系によって形成される像を受ける固体撮像素子を有することを特徴とするカメラ。
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