JP4255730B2 - 生体触媒を用いたカルボン酸アンモニウムの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は,ニトリラーゼ活性を有する触媒を用いてカルボン酸アンモニウムを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
酵素活性を持つ生体触媒を利用して目的の化合物を合成する方法は、反応条件が穏和であるため反応プロセスが簡略化できる、あるいは副生成物が少なく高純度の反応生成物を取得できる等の利点があるため、近年、様々な化合物の製造に用いられている。カルボン酸アンモニウムの製造においても、ニトリル化合物からカルボン酸アンモニウムに変換する酵素、ニトリラーゼが見いだされて以来、そのカルボン酸アンモニウム製造法への適用もいくつか検討されている。例えば、特許文献1〜4等が挙げられる。
【0003】
しかしながら、生体触媒で製造したカルボン酸アンモニウムの水溶液は、高純度の反応液が得られるにも拘わらず、反応液に生体触媒を懸濁させるバッファー由来の不純物(例えばリン酸イオン等)、及び/又は生体触媒由来の不純物(例えば多価金属イオンや蛋白質等の有機不純物)が混入してしまう欠点を有しており、反応途中で反応液が粘調になる(特許文献1)等の問題点を有していた。或いは、例えばこのカルボン酸アンモニウムの水溶液をポリマー原料にする場合、該バッファー由来の不純物(例えばリン酸イオン等)、及び/又は該生体触媒由来の不純物(例えば多価金属イオンや蛋白質等の有機不純物)が、後の重合工程で支障を来す等の実用上の問題点を有していた。
【0004】
解決法として、これら不純物を許容範囲まで低下させるため精製系を設けることが考えられるが、多大なコストが必要となる。例えば、リン酸イオンや多価金属イオンについては、イオン交換樹脂を用いたイオン交換で除去することが可能であるが、該リン酸イオンや多価金属イオン濃度が高い場合、イオン交換樹脂の破過を早め、頻繁な樹脂交換を必要とし、運転コストが大きくなってしまう。
【0005】
一方蛋白質等の有機不純物についてはUF膜等の膜で除去する方法が一般的であるが、反応液中の蛋白質等の有機不純物が多い場合、UF膜が短時間に閉塞し、頻繁なUF膜の再生処理の発生や、濾過面積を大きくする必要がある等の不利益を生じ、運転コストや設備費が大きくなってしまう。また、例えばポリアクリロニトリル繊維を用いる方法は、蛋白質等の有機不純物の吸着容量が少ない上に再生が困難である。また、例えば活性炭を用いる方法は、活性炭の再生処理が難しく、さらに活性炭の持つ反応性により目的化合物が変性する場合もある。
【0006】
このように、生体触媒で製造したカルボン酸アンモニウムを工業的に使用するにあたっては、該不純物を許容範囲まで低下させるためのコストの高い操作が必要であり、工業的に実施するうえで満足できるものではなかった。
【0007】
【特許文献1】
特公昭63−2596号公報
【特許文献2】
特開昭63−129988号公報
【特許文献3】
特開昭63−209592号公報
【特許文献4】
特表2000−501610号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ニトリラーゼ活性を有する生体触媒を用いてニトリル化合物からカルボン酸アンモニウムを製造するにあたり、製造されるカルボン酸アンモニウム水溶液中の生体触媒を懸濁させるバッファー由来の不純物(例えばリン酸イオン等)、及び/又は生体触媒由来の不純物 (例えば多価金属イオンや蛋白質等の有機不純物)が低減でき、その精製コストを大幅に削減できる高純度カルボン酸アンモニウムの製造法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者はこのような工業的諸問題を解決するため、ニトリラーゼ活性を有する生体触媒を用いてニトリル化合物からカルボン酸アンモニウムを製造するにあたり、生体触媒を懸濁させるバッファー由来の不純物(例えばリン酸イオン等)、及び/又は生体触媒由来の不純物(例えば多価金属イオンや蛋白質等の有機不純物)を、多大なエネルギーやコストを掛けることなく、精製系への負荷をできるだけ抑制し、しかも製品の品質上、許容できる範囲まで低減できる、生体触媒を用いたニトリル化合物からのカルボン酸アンモニウムの製造法を鋭意検討したところ、驚くべきことに製造されるカルボン酸アンモニウムに対する使用乾燥生体触媒重量を1/2000以下、及び該生体触媒を懸濁させるバッファー濃度を0.03M以下、及び反応温度を氷点〜30℃、及び反応液pHを6〜13にすることにより、あるいは反応系内のニトリル化合物濃度を2重量%以下にコントロールすることにより、多大なエネルギーやコストを掛けることなく、精製系への負荷をできるだけ抑制し、しかも製品の品質上、許容できる範囲まで該バッファー由来の不純物(例えばリン酸イオン等)、及び/又は該生体触媒由来の不純物(例えば多価金属イオンや蛋白質等の有機不純物)が低減された、高純度カルボン酸アンモニウムが製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、以下のとおりである。
(1)アシネトバクター エスピー AK226またはアシネトバクター エスピー AK227由来のニトリラーゼ活性を有する生体触媒を用いてニトリル化合物からカルボン酸アンモニウムを製造する方法において、製造されるカルボン酸アンモニウムに対する使用乾燥生体触媒量を1/2000以下、及び該生体触媒を懸濁させるバッファー濃度を0.03M以下、及び反応温度を氷点〜30℃、及び反応液pHを6〜13、及び反応系内のニトリル化合物濃度を2重量%以下にコントロール、及び製造されるカルボン酸アンモニウムの反応液中の濃度が20重量%以上であることを特徴とするカルボン酸アンモニウムの製造方法。
(2)生体触媒が、固定化菌体あるいは固定化酵素であることを特徴とする(1)に記載のカルボン酸アンモニウムの製造方法。
(3)ニトリル化合物が、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、又は3−シアノピリジンであることを特徴とする(1)〜(2)のいずれかに記載のカルボン酸アンモニウムの製造方法。
(4)ニトリル化合物がアクリロニトリルであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のカルボン酸アンモニウムの製造方法。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明でいうニトリラーゼ活性を有する生体触媒とは、ニトリラーゼ酵素を保有している触媒であれば如何なる形態のものでも良い。ニトリラーゼ酵素の由来としては、微生物・動植物細胞が挙げられるが、重量当たりの酵素発現量や取り扱いの容易性から、微生物菌体を使用することが好ましい。
【0015】
微生物種としては、多くのものが知られているが、例えばニトリラーゼ高活性を有するものとして、ロドコッカス属、アシネトバクター属、アルカリゲネス属等の微生物菌体が挙げられる。本発明においてはこの中でも、特にグラム陰性菌であるアシネトバクター属、アルカリゲネス属が好ましいが、これらに限定するものではない。
具体的には、アシネトバクター エスピー AK226(FERM BP−2451)、アシネトバクター エスピー AK227(微工研菌寄8272号)、ロドコッカス マリス BP−479−9(FERM BP−5219)である。これらの菌株は、特開平7−303496、特開昭63−129988、特開昭63−209592、特公昭63−2596号公報に記載されている。
【0016】
また、天然のあるいは人為的に改良したニトリラーゼ遺伝子を遺伝子工学的手法により組み込んだ微生物、あるいはそこから取り出した酵素であっても構わない。しかしながら、ニトリラーゼの発現量が少ない微生物あるいはニトリル化合物からカルボン酸アンモニウムへの変換活性の低いニトリラーゼを発現した微生物を少量用いてカルボン酸アンモニウムを製造するにはより多くの反応時間を要するため、可能な限りニトリラーゼを高発現した微生物、及び/又は変換活性の高いニトリラーゼを発現する微生物あるいはそこから取り出した酵素を用いることが望ましい。
【0017】
生体触媒の形態としては、微生物・動植物細胞等をそのまま用いても構わないが、好ましくは精製コストを削減するという観点から、そのものをあるいは破砕等の処理をしたものを、あるいは微生物等からニトリラーゼ酵素を取り出したものを、一般的な包括法、架橋法、担体結合法等で固定化したものを用いる方が好ましい。固定化する際の固定化担体の例としては、ガラスビーズ、シリカゲル、ポリウレタン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、カラギーナン、アルギン酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
微生物・動植物細胞等をそのまま用いる場合、通常、浸透圧の関係からバッファー液に懸濁させて使用する。また、固定化したものを用いる場合、固定化時に使用する微生物・動植物細胞等も、通常、浸透圧の関係からバッファー液に懸濁させている。この時のバッファー液濃度は、低ければ低いほど反応液中不純物は低減され、精製コストは削減され、品質も向上する。不純物濃度が問題とならないのは通常0.03M以下であり、好ましくは0.02M以下である。下限値に特に制限はないが、バッファー液濃度が0(蒸留水)になると、浸透圧の関係から生体触媒の安定性、ライフに悪影響が出る等の問題が生じる。
【0019】
反応温度が低すぎると反応活性が低くなり、高濃度のカルボン酸アンモニウムを製造する場合、より多くの反応時間を必要とする。一方、反応温度が高すぎると生体触媒のライフが低下するため、目的とするカルボン酸濃度に到達させる前に、フレッシュな生体触媒を追添する等の使用生体触媒量を多くする操作が必要となり、本発明の指向から外れるので好ましくない。よって、通常、反応温度は氷点〜30℃が良く、好ましくは5℃〜25℃、更に好ましく10℃〜20℃が良い。
【0020】
反応液pHは使用する菌体由来ニトリラーゼの至適pHにすることが好ましく、通常、反応液pHは6〜13が良く、好ましくは9〜11が良い。
【0021】
本発明で使用されるニトリル化合物とは、ニトリラーゼの触媒作用により対応するカルボン酸アンモニウムに変換される限り、特に限定されない。例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、サクシノニトリル、アジポニトリルのような脂肪族飽和ニトリル、アクリロニトリル、メタクリロニトリルのような脂肪族不飽和ニトリル、ベンゾニトリル、フタロジニトリルのような芳香族ニトリル及び3−シアノピリジン、2−シアノピリジンのような複素環式ニトリルが挙げられる。経済的な問題として、生体触媒を用いたカルボン酸アンモニウムの製造に適している代表的なものはプロピオニトリル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、3−シアノピリジン、2−シアノピリジンであるが、特にアクリロニトリル、メタクリロニトリル、3−シアノピリジンが好適である。
【0022】
製造されるカルボン酸アンモニウムに対する使用乾燥生体触媒重量は、少なければ少ないほど反応液中不純物は低減され、精製コストは削減され、品質も向上する。しかし、不純物濃度が問題とならないのは1/2000以下であり、好ましくは1/3000、更に好ましくは1/4000以下である。生体触媒使用量の下限値は特に制限されないが、現実的には1/5000では大きなリアクターが必要となる、あるいは反応速度が低下するため高濃度のカルボン酸アンモニウムを製造する方法としては適さない等の問題が生じる。
【0023】
製造されるカルボン酸アンモニウムの反応液中の濃度は20重量%以上であるが、経済的な理由から高濃度であるほど良く、生成物阻害の影響が出ない範囲で、好ましくは30重量%以上、更に好ましくは40重量%以上が良い。
【0024】
カルボン酸アンモニウムを製造する反応方法は、固定床、移動層、流動層、撹拌槽等、いずれでも良く、また回分反応でも連続反応でも良い。反応基質、反応液、目的化合物の物性や生産規模により反応形式は選ばれ、任意の反応装置が設計される。
【0025】
また、反応系内のニトリル化合物の濃度を2重量%以下とすることによっても高純度のカルボン酸アンモニウムを製造することができる。ニトリル化合物の濃度を2重量%以下とすることでニトリル化合物による強い基質阻害を抑制でき、その他酵素による副反応に由来する不純物の生成を抑制でき、高純度のカルボン酸アンモニウムを製造することができる。また、下限値としては、特に制限はないが、現実的には低すぎると反応速度が低下するため。大きなリアクターが必要になる等の不利益が生じる。
【0026】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものでは無く、その要旨を越えない限り、様々な変更、修飾などが可能である。
【0027】
固定化してない微生物菌体液中の乾燥菌体重量の測定法は、以下のごとく実施した。まず、適当な濃度の微生物菌体懸濁液を適量取り、−80℃まで冷却した後、凍結乾燥機を用いて完全に乾燥し、菌体懸濁液濃度を算出した。既知濃度となった菌体懸濁液を適当な複数の濃度に希釈し、濁度計にて濁度を測定し、濁度計の検量線を作成し、ファクターを算出した。該濁度計の濁度指示値から任意の微生物菌体懸濁液の乾燥菌体濃度を算出した。
【0028】
菌体を固定化したものを生体触媒とする場合は、固定化する前の菌体懸濁液の乾燥菌体濃度を測定し、固定化担体と菌体の混合比に基づき固定化触媒中の固定化担体を差し引いた生体由来成分の乾燥重量を算出した。
【0029】
反応液の分析は、基質であるニトリル化合物についてはガスクロマトグラフィー(島津GC−14B)で測定した。カラムはキャピラリーの強極性カラム(信和化工ULBON HR−20M 0.25mmI.D.×30mL 0.25μm)、検出器はFIDで検出した。また、生成物であるカルボン酸アンモニウムは、ホルマリン処理でアンモニウムイオンをヘキサメチレンテトラミンとしてトラップした後、中和滴定にて定量した。また、品質の評価法となるリン酸イオンや多価金属イオンの分析はICP(理学 JY138)で実施した。蛋白質の定量については特に実施していないが、反応後の精製工程であるUF膜(旭化成ペンシル型モジュールSIP−0013)処理における目詰まりに由来する圧力上昇までの処理量を持って評価した。
【0030】
実施例1
生体触媒の調製
ニトリラーゼ活性を有するアシネトバクター エスピー AK226(FERM BP−2451)を、塩化ナトリウム0.1%、リン酸2水素カリウム0.1%、硫酸マグネシウム7水和物0.05%、硫酸鉄7水和物0.005%、硫酸マンガン5水和物0.005%、硫酸アンモニウム0.1%、硝酸カリウム0.1%(いずれも重量%)を含む水溶液をpH=7に調整した培地で、栄養源としてアセトニトリル0.5重量%を添加し、30℃で好気的に培養した。これを30mMリン酸バッファー(pH=7.0)にて洗浄し菌体懸濁液(乾燥菌体15重量%)を得た。続いてアクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド、5%N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン水溶液、菌体懸濁液、30mMリン酸緩衝液の混合液に、2.5%過硫酸カリウム水溶液を混合して重合物を得た。最終的な組成は、乾燥菌体濃度3%、30mMリン酸バッファー(pH=7)52%、アクリルアミド18%、メチレンビスアクリルアミド1%、5%N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン水溶液12%、2.5%過硫酸カリウム水溶液14%(何れも重量%)とした。該重合物を約1×3×3mm角の粒子に裁断し固定化菌体を得た。この固定化菌体を30mMリン酸バッファー(pH=7)で洗浄し固定化菌体触媒とした。
【0031】
固定化菌体触媒による反応1
内容積500mlの三角フラスコに蒸留水400gを入れ、これに前述の固定化菌体触媒1g(乾燥菌体0.03gに相当)を金網かごに入れたものを液中にセットし、ゴム栓で封をした後、恒温水槽に浸けて内温を30℃に保ち、スターラーで撹拌した。
アクリロニトリルを間欠的に2重量%分フィード(アクリロニトリル濃度は0.5重量%以上で管理)し、アクリル酸アンモニウムの蓄積反応を行ったところ20重量%まで蓄積できた(使用乾燥菌体重量/生成アクリル酸アンモニウム重量=1/2700)。
得られたアクリル酸アンモニウム水溶液は無色透明であった。ICP分析の結果、P:0.1ppm、S:ND、K:0.05ppm、Mg:0.3ppm、Fe:ND、Mn:0.04ppmであった。また、同一条件での反応液を5L作製し、UF膜(旭化成ペンシル型モジュールSIP−0013)による精製操作を行ったところ、目詰まり等の現象は見られず、全液量を処理することができ、高純度の20重量%アクリル酸アンモニウム水溶液を得た。
【0032】
実施例2
固定化菌体触媒による反応2
実施例1で調製した固定化菌体触媒を用いて、反応温度を20℃にする以外は実施例1と同様に、アクリル酸アンモニウムの蓄積反応を行ったところ30重量%になるまで蓄積できた (使用乾燥菌体重量/生成アクリル酸アンモニウム重量=1/4000)。
得られたアクリル酸アンモニウム水溶液は無色透明であった。ICP分析の結果、P:0.06ppm、S:ND、K:0.03ppm、Mg:0.2ppm、Fe:ND、Mn:0.02ppmであった。また、同一条件での反応液を5L作製し、UF膜(旭化成ペンシル型モジュールSIP−0013)による精製操作を行ったところ、目詰まり等の現象は見られず、全液量を処理することができ、高純度の30重量%アクリル酸アンモニウム水溶液を得た。
【0033】
比較例1
固定化菌体触媒による反応3
固定化菌体触媒使用量を2.7g(乾燥菌体0.08g)にする以外は実施例2と同様にアクリル酸アンモニウム濃度が30重量%になるまで蓄積反応を行った(使用乾燥菌体重量/生成アクリル酸アンモニウム重量=1/1500)。
得られたアクリル酸アンモニウム水溶液は無色透明であった。ICP分析の結果、P:0.5ppm、S:ND、K:0.1ppm、Mg:0.8ppm、Fe:ND、Mn:0.2ppmであった。また、同一条件での反応液を5L作製し、UF膜(旭化成ペンシル型モジュールSIP−0013)による精製操作を行ったところ、処理量3Lの時点で目詰まりによる圧力上昇が観測され、それ以上のUF膜処理は継続できなかった。そのため、一度逆洗処理を施した後UF膜処理を実施し、30重量%アクリル酸アンモニウム水溶液を得た。
【0034】
比較例2
固定化菌体触媒による反応4
実施例1と同様の方法で培養し、得られたアシネトバクター エスピー AK226を50mMリン酸バッファー (pH=7.0)にて洗浄し菌体懸濁液(乾燥菌体15重量%)を得た。続いて、実施例1と同様にして、約1×3×3mm角の粒子に裁断した固定化菌体を得、50mMリン酸バッファー (pH=7)で洗浄し固定化菌体触媒とした。実施例2と同様に、アクリル酸アンモニウムの蓄積反応を行ったところ30重量%になるまで蓄積できた(使用乾燥菌体重量/生成アクリル酸アンモニウム重量=1/4000)。
得られたアクリル酸アンモニウム水溶液は無色透明であった。ICP分析の結果、P:0.2ppm、S:ND、K:0.1ppm、Mg:0.2ppm、Fe:ND、Mn:0.03ppmであった。
【0035】
【発明の効果】
本発明は、ニトリラーゼ活性を有する生体触媒を用いてニトリル化合物からカルボン酸アンモニウムを製造するにあたり、生体触媒を懸濁させるバッファー由来の不純物(例えばリン酸イオン等)、及び/又は生体触媒由来の不純物(例えば多価金属イオンや蛋白質等の有機不純物)が少なく、精製コストが低い高純度カルボン酸アンモニウムの製造法を提供できる。
Claims (4)
- アシネトバクター エスピー AK226またはアシネトバクター エスピー AK227由来のニトリラーゼ活性を有する生体触媒を用いてニトリル化合物からカルボン酸アンモニウムを製造する方法において、製造されるカルボン酸アンモニウムに対する使用乾燥生体触媒量を1/2000以下、及び該生体触媒を懸濁させるバッファー濃度を0.03M以下、及び反応温度を氷点〜30℃、及び反応液pHを6〜13、及び反応系内のニトリル化合物濃度を2重量%以下にコントロール、及び製造されるカルボン酸アンモニウムの反応液中の濃度が20重量%以上であることを特徴とするカルボン酸アンモニウムの製造方法。
- 生体触媒が、固定化菌体あるいは固定化酵素であることを特徴とする請求項1に記載のカルボン酸アンモニウムの製造方法。
- ニトリル化合物が、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、又は3−シアノピリジンであることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のカルボン酸アンモニウムの製造方法。
- ニトリル化合物がアクリロニトリルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカルボン酸アンモニウムの製造方法。
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