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JP4115610B2 - 低温靱性に優れた電磁ステンレス鋼 - Google Patents

低温靱性に優れた電磁ステンレス鋼 Download PDF

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JP4115610B2
JP4115610B2 JP34376098A JP34376098A JP4115610B2 JP 4115610 B2 JP4115610 B2 JP 4115610B2 JP 34376098 A JP34376098 A JP 34376098A JP 34376098 A JP34376098 A JP 34376098A JP 4115610 B2 JP4115610 B2 JP 4115610B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、寒冷地や冷却雰囲気中などで利用される電磁弁や各種センサー等において使用される低温靱性に優れた電磁ステンレス鋼に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、電磁弁や磁気センサー等の磁心材料には、磁気応答性を改善するための高い固有抵抗と、優れた磁気特性、さらに耐食性、特に電磁弁はON/OFFによってプランジャとコアが衝突し衝撃が加わるため、例えば10℃以下、特に−20℃以下で使用される場合には低温でも靱性に優れた電磁材料が求められている。また、材料を冷間鍛造して部品を成形する場合には、常温での靱性が良好であることが求められる。その有効な耐食性を保持しつつ、その靱性を向上せしめる技術として、例えば、特公昭63−53255号公報が知られている。この特許は、C+N≦0.02%、Si+Al≧1.4%、2Si+Al≦6%、Al≦3.5%、Ti:0.10〜0.60%、Cr:5〜15%、Mn≦0.40%、Pb:0.05〜0.25%、P≦0.040%、S≦0.030%残部実質的にFeよりなる、靱性にすぐれた快削・耐食軟磁性棒管用鋼である。
【0003】
また、電磁気特性を損なうことなしに耐食性および被削性を改善した軟磁性棒管用材として、特公平6−10324号公報が知られている。この特許は、C+N≦0.02%、Si≧3%、Mn≦0.50%、Cr:12〜18%、Al:0.8〜1.5%未満、Mo:0.05〜0.5%、Pb≦0.040%、S≦0.030%、残部Fe及び不可避不純物よりなることを特徴とする快削耐食軟磁性棒管用鋼である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した特公昭63−53255号公報にあっては、Cr,Si,Al,Ti,Pbの適量複合添加およびC,Nを極低値に抑えることにより電磁特性を劣化させずに靱性を向上させ、同時に耐食性および被削性をも向上させるというものであるが、低温靱性を向上させるには、未だ十分ではなく、また、特公平6−10324号公報にあっては、磁気特性改善のためにC,Nを極力抑え、Alを0.8%以上添加することにより耐食性を向上させ、さらに耐食性を向上させるために、Moを添加すると共に、被削性を改善するためにPbを添加するというものであるが、これも低温靱性を向上させるには、未だ十分ではないという問題がある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上述したような問題を解消するため、発明者らは鋭意開発を進めた結果、低温靱性に悪影響を及ぼすC,Si,P,S,Cr,O,N量および結晶粒度を規制し低温靱性向上に有効なAlを添加することにより低温靱性を高めた電磁ステンレス鋼を提供することにある。その発明の要旨とするところは、
(1)質量で、C:0.015%以下、Si:0.18〜2.5%、Mn:0.5%以下、P:0.03%以下、S:0.06%以下、Ni:0.1〜0.34%、Cr:4〜15%、Al:0.5〜4%、O:0.01%以下、N:0.015%以下、を含み、且つ残部Feよりなり、鋼中の結晶粒度番号3以上としたことを特徴とする低温靱性に優れた電磁ステンレス鋼。
【0006】
(2)前記(1)に記載した鋼に、さらに、Tirの1種または2種以上を1%以下添加したことを特徴とする低温靱性に優れた電磁ステンレス鋼。
(3)前記(1)に記載した鋼に、さらにMo,Cuの1種または2種を1%以下添加したことを特徴とする低温靱性に優れた電磁ステンレス鋼にある。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る成分組成を限定する理由を説明する。
C:0.015%以下
Cは、ステンレス鋼の製造に際して必然的に導入されるものであるが、このCは磁気特性を劣化させ、また靱性を劣化させ、冷間鍛造性の悪化を招くことから、0.015%を上限として、その含有量が調整されなければならない。
【0008】
Si:0.18〜2.5%
Siは、固有抵抗の増加に効果的な元素であり、ステンレス鋼中のSi%の増加に伴い、その固有抵抗を増加させる。また、一方、このSiは、磁気特性の改善に効果的な元素である。しかしながら、2.5%を超えるSiの添加は冷間鍛造性、および低温靱性の劣化を招くことから、その上限は2.5%とする必要がある。
【0009】
Mn:0.5%以下
Mnは、Cと同様に、ステンレス鋼の製造工程において必然的に導入される元素であるが、その多量の存在はステンレス鋼の冷間鍛造性を損なうものであることから、その上限を0.5%とした。
P:0.03%以下、S:0.06%以下、N:0.015%以下
P,S,Nは冷間鍛造性の悪化を招き、またSおよびNは何れも磁気特性に悪影響を及ぼす元素であると共に、低温靱性を妨げる元素であることから、それらは、それぞれ0.03%以下、0.06%以下、0.015%以下とした。なお、低温靱性は後述の如く主に結晶粒度で確保する為、特に被削性を要求される場合には、S:0.03%超0.06%以下と高めに設定しても良い。
【0010】
Ni:0.1〜0.34%
Niは、ステンレス鋼の耐食性を効果的に向上させ、かつ低温靱性を向上させる元素である。しかし0.1%未満ではその効果を達成することができず、0.34%を超える添加は効果が飽和し、磁気特性を劣化させるため、その含有量を0.1〜0.34%とした。 Cr:4〜15%
Crは、耐食性に効果的な元素であり、また、固有抵抗の増加にも効果的であるが、しかしながら15%を超える多量添加は磁気特性が著しく劣化すると共に、低温靱性を妨げる。一方4%未満では耐食性の面から効果的でないので、4〜15%とした。
【0011】
Al:0.5〜4%
Alは、低温靱性の向上および耐食性改善に極めて有効な元素である。しかし、0.5%未満では低温靱性の面から効果的でなく、また、4%を超える添加は効果が飽和するため、その含有量を0.5〜40%とした。
O:0.01%以下
Oは、酸化物系介在物を形成して、低温靱性を妨げる元素であると共に、ステンレス鋼の冷間鍛造性を著しく劣化させるところから、その上限を0.01%とした。
【0012】
Tirの1種または2種以上を1%以下
Tirは選択元素として含有せしめ、低温靱性の向上とステンレス鋼の冷間鍛造性の向上を図るものである。特に被削性改善のために、Sを0.03%超0.06%以下添加する際には、Ti,Zrを添加することにより、良好な低温靱性が保たれる。しかしながら、それら元素の多量添加は磁気特性を劣化せしめ、また冷間鍛造性も阻害されるようになることから、それぞれ1%を上限とした。
Mo,Cuの1種または2種を1%以下
Mo,Cuは、それぞれステンレス鋼の耐食性を効果的に向上せしめ得るものであることから、それぞれ1%を上限とした。
0013
結晶粒度番号3以上
結晶粒度番号3以上としたのは、本発明の最大の特徴であり、結晶粒が小さい(結晶粒度番号が大きい)と、単位体積当たりの結晶粒と結晶粒界の数が多くなり、応力を分散でき、低温靱性が向上する。一方、結晶粒が大きくなる(結晶粒度番号が小さくなる)と、単位体積当たりの結晶粒と結晶粒界の数が少なくなり、応力が集中し、低温靱性が低下する。従って、その結晶粒度番号の下限を3とした。
0014
【実施例】
表1に、本発明鋼、比較鋼の化学成分を示す。これらの組成の材料は、真空誘導炉にて50kg鋼塊を溶製し、それらを径40mmに鍛伸後、焼鈍を施した。さらに、焼鈍済の径40mm丸棒より各試験片を作製し、各測定に充てた。
低温靱性については、シャルピー衝撃試験で遷移温度を測定した。また、磁気特性はB−Hトレーサーで測定、固有抵抗は直流四端子法で、耐食性はサイクル湿潤試験を行い評価した。
0015
【表1】
Figure 0004115610
0016
その測定条件は次の通りである。
(1)シャルピー衝撃試験(JIS Z 2242)
JIS4号Vノッチ サブサイズ(5×10×55L)試験片で−100〜100℃で試験を行い、エネルギー遷移温度(TrE)を測定。
(2)磁気特性
リング状試験片を作製し、850℃×4h保持の真空磁気焼鈍を施した後に直流B−Hトレーサを用いて磁束密度B25および保磁力HC を測定した。
0017
(3)固有抵抗
ケンビンダブルブリッジを用いた直流4端子法で測定した。
(4)耐食性
φ12×21Lの試験片をエメリー研磨紙で800番まで研磨した後、サイクル湿潤試験(20℃、90%RH、1.5h保持→70℃、90%RH、4.5h保持 サイクル数;20回)を行い下記基準で比較した。
○:発錆の面積率が5%未満で耐食性が良好であるもの
×:発錆の面積率が5%以上で耐食性が不良好であるもの
その結果を表2に示す。
0018
【表2】
Figure 0004115610
0019
【発明の効果】
以上述べたように、本発明による電磁ステンレス鋼は、特に優れた低温靱性を有するものであり、しかも磁気特性や電気抵抗特性の改善されたものであり、また有効な耐食性を有するものであって、冷間鍛造用材料として腐食環境向けの電磁材料として用いられるものである。

Claims (3)

  1. 質量で、
    C:0.015%以下、
    Si:0.18〜2.5%、
    Mn:0.5%以下、
    P:0.03%以下、
    S:0.06%以下、
    Ni:0.1〜0.34%、
    Cr:4〜15%、
    Al:0.5〜4%、
    O:0.01%以下、
    N:0.015%以下、
    を含み、且つ残部Feよりなり、鋼中の結晶粒度番号3以上としたことを特徴とする低温靱性に優れた電磁ステンレス鋼。
  2. 請求項1に記載した鋼に、さらに、Tirの1種または2種以上を1%以下添加したことを特徴とする低温靱性に優れた電磁ステンレス鋼。
  3. 請求項1に記載した鋼に、さらに、Mo,Cuの1種または2種を1%以下添加したことを特徴とする低温靱性に優れた電磁ステンレス鋼。
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