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JP3561922B2 - 軟磁性ステンレス鋼の製造方法 - Google Patents

軟磁性ステンレス鋼の製造方法 Download PDF

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JP3561922B2 JP24815592A JP24815592A JP3561922B2 JP 3561922 B2 JP3561922 B2 JP 3561922B2 JP 24815592 A JP24815592 A JP 24815592A JP 24815592 A JP24815592 A JP 24815592A JP 3561922 B2 JP3561922 B2 JP 3561922B2
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  • Manufacturing Of Steel Electrode Plates (AREA)

Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、耐食性と二次加工性に優れた軟磁性ステンレス鋼の製造方法に関するものである。特に、電磁バルブをはじめとする各種リレー機構の鉄芯部品として優れた性能をもつ軟磁性ステンレス鋼の製造方法である。
【0002】
【従来の技術】
一般に、軟磁性材料は高透磁率材料ともよばれ、その基本特性は、初透磁率が大きく保磁力が小さいということで、場合によっては飽和磁束密度が大きいことも要求される。これら軟磁性材料は、電磁コイルによって発生される磁気に反応し、その磁気によって駆動される金属部品として、磁気バルブ、各種モータおよび各種リレーなど多くの分野で使用されている。最も一般的な軟磁性材料としては、電磁軟鉄やケイ素鋼板が知られており、ケイ素鋼板には圧延方向にだけ優れた磁気特性を有する方向性ケイ素鋼板も知られている。
【0003】
しかし、これら鉄系材料は非常に錆を発生しやすく、そのままでは腐食環境下での使用は困難であった。そのため腐食環境下での使用の場合は、部品に加工後Niメッキを施すなど行っているが、Niメッキは非常に高価であり部品コストアップをもたらし、防錆の効果も今一歩であった。
【0004】
ところで、耐食性に優れ、安価な材料としてCr系ステンレス鋼が知られており、近年上記の鉄系材料の代替として研究もされている。しかし、これらCr系ステンレス鋼は上記鉄系材料と比較し磁気特性が劣るあるいはプレス成型等二次加工性が劣るという問題があり実用化の阻害要因になっている。
【0005】
従来にあってもかかるCr系ステンレス鋼の特性改善については種々提案されているが、まだ耐食性、二次加工性、そして磁気特性をいずれも満足する材料およびその製造方法は見いだされていないのが現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ここに、本発明の目的は、耐食性と二次加工性を兼ね備えたCr系ステンレス鋼の磁気特性を改善し、腐食環境下で使用する軟磁性材料として優れた軟磁性ステンレス鋼を製造する方法を提供することである。
なお、ここでいう磁気特性の改善とは初透磁率の向上、すなわち微弱磁場における磁束密度の向上を図ることにある。さらに具体的には、磁束密度B(磁化力2Oe における磁束密度) の高い軟磁性ステンレス鋼を得ることである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、耐食性と二次成型性を兼ね備えた材料を種々検討の結果、先に出願した特開昭61−296135号のCr系ステンレス鋼に着眼し、磁気焼鈍前の冷間圧延条件および磁気焼鈍条件を変えて種々検討を行ったところ、下記の特定条件で圧延ロール方向の磁束密度B、Bが顕著に増加するとともに方向性のある軟磁性ステンレス鋼が得られるということを見い出した。
本発明は、かかる知見に基づいてなされたものであって、その要旨は下記の通りである。
【0008】
すなわち、本発明は、重量%にて、
C: 0.12%以下、Si: 1.0 %超3.5 %以下、Mn: 0.10〜2.0 %、
Cr: 11〜23%、Ni: 0.20〜3.0 %、N: 0.12%以下、
かつ、A= (Ni+0.5 Mn+35C+40N) −0.31 (Cr+1.5 Si) なる関係式で定まるA値が−2.7 〜0の範囲にあり、
残部: Feおよび不純物
より成る鋼組成を有するCr系ステンレス冷延鋼板を仕上圧延し、次いで磁気焼鈍するに際し、仕上圧延率を8〜20%、磁気焼鈍温度を650 〜850 ℃とすることを特徴とする軟磁性ステンレス鋼の製造方法である。
【0009】
また、中間圧延、中間焼鈍後、引き続き上記の仕上圧延、磁気焼鈍するに際し中間圧延率を25〜55%とすることを特徴とする軟磁性ステンレス鋼の製造方法である。
なお、本発明において圧延率(%) は、板厚の圧下率(%) で表す。
【0010】
【作用】
本発明の方法において、鋼の組成割合、および製造条件を前記のように限定した理由を以下に説明する。本明細書において特にことわりがない限り、組成割合を示す「%」は重量%である。
【0011】
C、N:
C、Nはいずれも侵入型固溶元素として素地を強化し、耐摩耗性を向上させるため、(C+N)は少なくとも0.02%含有されるのが好ましい。しかし、(C+N)が多量になれば、それだけ2次加工性が劣化するため、CおよびNの上限をそれぞれ0.12%とした。好ましくは、(C+N)≦0.14%である。
【0012】
Si:
Siは本発明を構成する上で最も重要な元素であり、耐摩耗性ならびに2次加工性の改善さらには磁気性能の改善を計るには不可欠な元素であり、その量は1.0 %を超えて添加されて有効である。しかし、3.5 %を超えて添加しても、靭性が著しく劣化し、製造性を損なうので、本発明にあっては3.5 %以下に制限する。好ましくは2.0 〜2.5 %である。
【0013】
Mn:
Mnは通常の製鋼時の脱酸、脱硫剤として有効で、0.10%以上を必要とし、一方、本発明におけるように置換型固溶強化により耐摩耗性を向上させる場合、Siとの複合添加により2次加工性をも向上させることができる。しかし、多量に添加すると熱間加工性を阻害するので、2.0 %以下に制限する。
【0014】
Cr:
Crはステンレス鋼としての耐食性を確保する必要上11%以上添加する。好ましくは16%以上添加する。その添加量が多いほど耐食性は向上するが、しかし、余り多量に添加するとコスト上昇を招くほか、A値の限定を満足するフェライト系ステンレス鋼が得られず、したがって上限を23%とした。
【0015】
Ni:
NiはSi添加鋼の靭性改善に有効であり、またSiとの複合添加でハード圧延材の2次加工性を改善させるために必要である。
かかる効果は0.20%以上の添加で見られ、添加量が多くなるにしたがって改善の程度は増すが、しかし、3.0 %を超えて添加してもその効果は飽和状態となることから、また余り多量の添加はコスト高となることから、上限は3.0 %とする。好ましくは、0.6 %超、2.0 %以下である。
【0016】
さらに本発明の好適態様によれば、次の添加成分の少なくとも1種をさらに配合してもよい。
Cu:1.0%以下、Mo:3.0%以下、Nb:1.0%以下、Al:0.5%以下、およびZr:0.5%以下から成る群から選んだ少なくとも一種、B 、Ca、Mg、および希土類元素のうち少なくとも一種をぞれぞれ0.01%以下。
これらの追加的添加元素の作用について以下に述べる。
【0017】
Cu:
Cuは所望添加元素であり、NiおよびMnと同様にSiとの複合添加によりハード材の2次加工性を改善するのに有効である。しかし、1.0 %を超えて添加しても十分その効果を発揮できず、むしろ熱間加工性に悪影響を与えることから、必要に応じ1.0 %以下添加してもよい。
【0018】
Mo:
Moは所望添加元素であり、Crと同等にあるいはそれ以上に耐食性を改善する効果を有する元素である。またハード材の2次加工性、耐摩耗性を改善する効果を有する。しかし、Moの添加はコストを上昇させ、また多量添加は素地を脆化させるため、必要に応じ3.0 %以下添加してもよい。
【0019】
Nb、Al、Zr:
これらの元素は、フェライト系ステンレス鋼の2次加工性を改善する効果を有する。ただし、Nbは1.0 %を超えて、またAl、Zrはそれぞれ0.5 %を超えて添加してもその性能は飽和してしまい、かつ窒化物などの介在物が散在するようになってしまい、2次加工性はかえって劣化してくる。したがって、必要に応じこれらの元素は少なくとも1種、Nbは1.0 %以下、Al、Zrはそれぞれ0.5 %以下添加してもよい。
【0020】
B 、Ca、Mg、希土類元素:
B およびCaは微量添加によっても高温における強度と延性を増し、熱間加工性の改善に効果的である。また、耐摩耗性向上にも有効である。しかし、0.01%を超えるとかえって脆化を引き起こすため必要により添加する場合、B 、Caの添加量はいずれも0.01%以下に制限する。
同様な理由から、Mg、希土類元素についても0.04%以下に制限する。
【0021】
A値について:
A値が−2.7 より小さくなると、高温においてγ相の析出が少なくなり、スラブの冷塊割れを生じ、一方、A値がゼロ(0) より大きくなると、γ相が多くなり過ぎ、熱間圧延時の耳割れを生じ、生産性を著しく損なう。したがって、本発明にあっては高Si材であることから、このA値を−2.7 〜0 の適正範囲に制限する。
【0022】
かかる鋼組成を有するCr系ステンレス鋼は、溶製後、例えば造塊法によってインゴットを得てから、分塊圧延、粗熱間圧延、そして仕上げ熱間圧延を経て、次いで中間焼鈍を行いながら中間、仕上げの冷間圧延を行い、仕上焼鈍酸洗後軽い冷間圧延を施こしたNo.2B仕上げ材を用い、その後磁気特性を得るための冷間圧延および最終的に磁気焼鈍を行って軟磁性ステンレス鋼とする。本発明によれば、かかる製造段階において磁気特性を得るための冷間圧延における仕上圧延率を8〜20%に、磁気焼鈍温度を650 〜850 ℃に制限する。
【0023】
さらに本発明の好適態様によれば、上記冷間圧延に際しての中間圧延率を25〜55%とする。ここに、「中間圧延」とは仕上圧延に先立って行われる冷間圧延を言い、必要により間に中間焼鈍を行ってもよい。
【0024】
仕上圧延率:
磁気焼鈍条件により、好適な仕上圧延率の範囲は変わるが、仕上圧延率が8%未満になると磁束密度Bは低下し、20%超では磁束密度Bは低下する傾向にあり、作業性の面からも8〜20%とした。好適には、10〜17%である。
【0025】
磁気焼鈍条件:
850 ℃を越えると鋼中にマルテンサイトが析出し、いずれの仕上圧延率でも磁束密度Bは低い値を示す、650 ℃以下では結晶粒の成長が不十分で磁気特性が出ない。好適には700 〜800 ℃である。
磁気焼鈍雰囲気中で結晶粒成長をさせるため長時間加熱後徐冷する焼鈍処理である。
【0026】
中間圧延率:
中間圧延、中間焼鈍を行うことにより一層、磁気特性が良好となる。これは結晶の方向性が更に方向性をもつためと考えられるが、その中間圧延率は25%未満では効果なく、55%超では磁気特性が低下する。その場合、磁束密度Bの値および方向性も顕著であり好適には30〜40%である。
次に、本発明の作用効果を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。
【0027】
【実施例】
表1に示される成分組成を有するステンレス鋼であって、板厚1mm、JIS G 4307で規定するNo.2B仕上げのステンレス鋼を素材として、まず、成分組成Aのものにつき仕上圧延の圧下率を0〜20%に変化させ、その後の磁気焼鈍温度を600 〜900 ℃間で変化させる3時間保持後徐冷したものを、ロール方向、幅方向および45°方向の3点につき、各々磁束密度を測定した。この場合の磁気測定は、JIS C2550 における直流磁化特性試験により行った。
【0028】
その結果をまとめたのが図1、図2である。
図1は仕上圧延率と磁気焼鈍温度の関係における磁束密度Bを表したグラフであるが、磁気焼鈍温度が高くなるに従って磁束密度Bのピークが低仕上圧延率側に移り反対に900 ℃近くなると高い磁束密度は得られないことが分かる。これより磁気焼鈍温度は800 ℃近くが良好であると分かる。
【0029】
図2は磁気焼鈍温度を800 ℃とした時の仕上圧延率に対するロール方向、幅方向、45°方向の磁束密度Bを表したグラフであるが、仕上圧延率が6%のところから急激に上昇し10〜15%のところでピークとなる、そして15%を越えると徐々に磁束密度Bは低下していくことが分かる。この場合ロール方向、幅方向、45°方向の差は大きく、磁気特性に方向性があることが分かる。
【0030】
次に、中間圧延、中間焼鈍の影響を調べるべく、まず、素材を中間圧延するにあたり圧延率を0〜60%変化させ、中間焼鈍をBA炉で800 ℃、2分、徐冷で行い、仕上圧延を圧下率10%、磁気焼鈍を800 ℃、3時間、徐冷で行い、それぞれ3方向の磁束密度を測定した。
【0031】
その結果をまとめたのが図3、図4である。図3は中間圧延率に対するロール方向、幅方向、45°方向の磁束密度Bをとったグラフであるが、仕上圧延、磁気焼鈍のみの磁束密度より高い値を示し、30〜55%の圧延率で中間圧延を行うことが望ましいとわかる。
【0032】
図4は同様に磁束密度Bをプロットしてグラフに表したものである。磁束密度Bは測定のばらつきが大きく磁束密度Bで代表しているが、このグラフの結果では、中間圧延率30〜35%でロール方向の磁束密度Bが顕著に高い値を示していることが分かった。
【0033】
次に、表1の成分組成のものについて圧延および焼鈍条件を変え、磁束密度Bを測定した結果を表2に示す。
また表2のA▲2▼、C▲2▼について、仕上圧延および磁気焼鈍後の機械的性質を測定した結果を表3に示している。電磁部品としては、プレス成型等二次加工を仕上圧延後に行い、その後、磁気焼鈍するが、表3より本発明材は良好なエリクセン値、伸びを示しており二次加工性に優れている。また磁気焼鈍後の硬さも良好な値を示している。
また、表2のA▲1▼〜A▲3▼について磁気特性を詳細に調べた結果を、表4に示す。
【0034】
【表1】
Figure 0003561922
【0035】
【表2】
Figure 0003561922
【0036】
【表3】
Figure 0003561922
【0037】
【表4】
Figure 0003561922
【0038】
【発明の効果】
以上の結果より、本発明によれば耐食性に優れた材料であるCr系ステンレス鋼に磁気特性を付与するとともに二次加工性をも確保することができ、その優れた特性から多くの用途が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の結果をまとめて示すグラフである。
【図2】本発明の実施例の結果をまとめて示すグラフである。
【図3】本発明の実施例の結果をまとめて示すグラフである。
【図4】本発明の実施例の結果をまとめて示すグラフである。

Claims (2)

  1. 重量%にて、
    C: 0.12%以下、Si: 1.0 %超3.5 %以下、Mn: 0.10〜2.0 %、
    Cr: 11〜23%、Ni: 0.20〜3.0 %、N: 0.12%以下、
    かつ、A= (Ni+0.5 Mn+35C+40N) −0.31 (Cr+1.5 Si) なる関係式で定まるA値が−2.7 〜0の範囲にあり、
    残部: Feおよび不純物
    より成る鋼組成を有するCr系ステンレス冷延鋼板を仕上圧延し磁気焼鈍するに際し、仕上圧延率を8〜20%、磁気焼鈍温度を650 〜850 ℃とすることを特徴とする軟磁性ステンレス鋼の製造方法。
  2. 仕上圧延し磁気焼鈍する前に、中間圧延、中間焼鈍を施し、その際の中間圧延率を25〜55%とすることを特徴とする請求項1記載の軟磁性ステンレス鋼の製造方法。
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