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JP4114018B2 - アルミニウムディスクの研磨用組成物及びその研磨用組成物を用いる研磨方法 - Google Patents

アルミニウムディスクの研磨用組成物及びその研磨用組成物を用いる研磨方法 Download PDF

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JP4114018B2 JP31028497A JP31028497A JP4114018B2 JP 4114018 B2 JP4114018 B2 JP 4114018B2 JP 31028497 A JP31028497 A JP 31028497A JP 31028497 A JP31028497 A JP 31028497A JP 4114018 B2 JP4114018 B2 JP 4114018B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウムディスクの精密研磨に用いられる研磨用組成物とその研磨用組成物を用いる研磨方法に関する。特に、本願発明の研磨用組成物は、アルミニウムディスクの研磨において高精度に平滑な研磨表面を効率的に得ることができるため、最終仕上げ研磨用組成物として有用である。本願発明におけるアルミニウムディスクの研磨とは、アルミニウムあるいはその合金からなる磁気記録媒体ディスクの基材そのものの表面、又は基材の上に設けられたNi−P、Ni−Bなどのメッキ層の表面、特にNi90〜92%とP8〜10%の組成の硬質Ni−Pメッキ層の表面、及びアルミナ層の表面を研磨することをいう。
【0002】
そして、本願発明の研磨用組成物を用いる研磨方法により、高精度に平滑な研磨表面を有するアルミニウムディスクを得られて有用である。
【0003】
【従来の技術】
アルミニウムディスクの研磨に使用されている研磨用組成物としては、水とアルミナ研磨材と研磨促進剤を、場合によっては更に表面改質剤を加えて、混合してスラリー化したものが用いられている。この研磨促進剤の例として、特公平2−23589号公報には、硝酸アルミニウム、硝酸ニッケル、硫酸ニッケルなどが、また特開平2−158682号公報には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛、アルミニウムなどの亜硝酸塩が開示されている。更に、特開平1−205973号公報には、ベーマイトと水溶性の金属塩の混合物が、特開平2−158683号公報には、ベーマイトと無機酸又は有機酸のアンモニウム塩との混合物が開示されている。また、研磨促進剤と表面改質剤の例として特公平4−38788号公報には、グルコン酸又は乳酸の研磨促進剤及びコロイダルアルミナの表面改質剤が開示されている。
【0004】
アルミナ研磨材の平均粒子径及びα相含有率に関しては、特開平5−271647号公報には、α相含有率が10〜80%で、平均1次粒子径が2μm以下、好ましくは0.4〜1.0μmの角状アルミナを砥粒成分として含有する研磨剤が開示されている。特開平3−277683号公報には、α相含有率が95%以上で、平均1次粒子径が0.35μm以下の角状アルミナを砥粒成分として含有する研磨剤が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
近年、磁気記録媒体ディスクの性能は、ますます高密度化、高速化していく傾向にある。そのため、アルミニウムディスクには、オレンジピール、スクラッチ、ピット、突起などの表面欠陥がないということや最大表面荒さが小さいことだけにとどまらず、平均表面粗さにおいても小さな研磨面が求められている。
【0006】
本発明は、これらの要望に応えるものであって、高品質の研磨面を保ちながらしかも研磨速度を速くすることにより研磨工程の生産性の向上及び低コスト化が可能な研磨用組成物とその研磨用組成物を用いる研磨方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、水、アルミナ研磨材及び研磨促進剤を含む研磨用組成物において、研磨促進剤が三価又は四価の金属と無機酸又は有機酸から形成される塩基性塩が優れた研磨促進剤であることを見出した。更に本発明研磨促進剤とアルミナ研磨材として0.1〜0.4μmの平均粒子径とα相含有率が80〜95%であるアルミナ結晶構造を有するアルミナを採用した研磨用組成物でアルミニウムディスクを研磨した時に、従来のアルミニウムディスク用研磨剤と比較して表面粗さに対する研磨速度の比率が高い、即ち高速研磨性でしかも高品質の研磨面が得られることを見い出し、本発明に至ったものである。
【0008】
本発明の研磨促進剤は、三価又は四価の金属と無機酸又は有機酸から形成される塩基性塩であり、例えば三価の金属としては、アルミニウム、インジウム、鉄などが、また四価の金属としてはジルコニウム、セリウム、錫、チタンなどが挙げられる。無機酸としては、硝酸、硫酸などが、また有機酸としては酢酸、ギ酸、スルファミン酸、酒石酸、シュウ酸、グルコン酸などが挙げられる。三価及び四価の金属の中でアルミニウムが、また無機酸及び有機酸の中で硝酸が研磨特性が最も優れて、より好ましく、塩基性硝酸アルミニウムが挙げられる。一方、塩基性塩化アルミニウムなどの塩化物の塩基性塩は、ステンレス鋼の応力腐食などの問題を起こすため、研磨装置に使用する材質が限定されて好ましくない。
【0009】
研磨用組成物における好ましい研磨促進剤の含有量は、三価の金属と無機酸又は有機酸から形成される塩基性塩では金属酸化物M23(但し、Mは三価の金属原子を表す。)の換算濃度で、また四価の金属と無機酸又は有機酸から形成される塩基性塩では金属酸化物MO2(但し、Mは四価の金属原子を表す。)の換算濃度で表すと、0.1〜10重量%、より好ましくは0.3〜6重量%である。
【0010】
本発明のアルミナ研磨材は、市販されている研磨材を用いることができる。安価で大量に製造されているバイヤー法により製造された水酸化アルミニウムを1100〜1300℃で仮焼後、振動ミル、ボールミル、アトライターなどで乾式粉砕した平均粒子径が0.5〜50μmであり、α相を含有するアルミナが好ましい。更にこの乾式粉砕したアルミナをボールミル、アトライター、サンドグラインダーなどで湿式粉砕することにより得られる平均粒子径が0.1〜0.4μmであり、α相含有率が80〜95%であるアルミナがより好ましい。
【0011】
ここで、アルミナの平均粒子径は、メジアン粒子径(50%体積粒子径)である。その測定には、市販の遠心粒度分布測定装置、例えば(株)島津製作所(株)のSA−CP3などが用いられる。アルミナのα相含有率は、X線回折測定により、(113)面回折線の積分強度を求め、予めα相含有率の規定されたアルミナの積分強度により規格化することにより求められる。
【0012】
研磨用組成物における好ましいアルミナ研磨材の含有量は、1〜20重量%である。
本発明における研磨用組成物には、アルミナとともに酸化物であるジルコニア、珪酸ジルコニウム、シリカ、ムライト、酸化セリウム、酸化鉄、酸化クロム、酸化チタンなどを加えることができる。そして水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ベーマイトなどの水和酸化物及びダイヤモンド、窒化硼素、窒化珪素、炭化珪素、炭化硼素などの非酸化物も加えることができる。
【0013】
また、本発明における研磨用組成物に一般的に加えられているエタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの水溶性アルコール、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、リン酸などの酸、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ホルマリン縮合物などの界面活性剤、ポリアクリル酸塩などの有機ポリアニオン系物質、セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース類を加えることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の研磨促進剤は、三価又は四価の金属と無機酸又は有機酸から形成される塩基性塩である。塩基性塩の中で好ましい研磨促進剤としては、Al(OH)X(NO33-X(ただし、Xは0.5〜2.7の実数)の化学組成で表示される塩基性硝酸アルミニウムが挙げられる。これら塩基性硝酸アルミニウムの水溶液は一部ポリマーとなっているが、便宜上、上記の化学組成で表示した。また塩基性硝酸アルミニウムの塩基度とはアルミニウムイオンと結合した水酸基の割合で、Al(OH)X(NO33-Xにおいて,(X/3)×100%を意味する。
【0015】
よって、本発明の塩基性硝酸アルミニウム塩は塩基度としては、16.7〜90%と表すことができる。この中で、好ましい塩基度としては26.7〜76.0%となる。
また研磨用組成物における研磨促進剤の含有量は、三価の金属と無機酸又は有機酸から形成される塩基性塩では金属酸化物M23(但し、Mは三価の金属原子を表す。)の換算濃度で、また四価の金属と無機酸又は有機酸から形成される塩基性塩では金属酸化物MO2(但し、Mは四価の金属原子を表す。)の換算濃度で表すと、0.1重量%より少ないと研磨促進剤としての効果が認められず、また10重量%より多くしても研磨促進剤としての効果の更なる向上は認められないため、0.1〜10重量%が好ましい。そして、研磨促進剤の含有量が0.3〜6重量%では、研磨促進剤としての効果が安定するとともに、表面粗さに対する研磨速度の比率も高く維持されてより好ましい。
【0016】
本発明のアルミナ研磨材として0.1〜0.4μmの平均粒子径のアルミナの代わりに、0.4μm以上の平均粒子径のアルミナを使用した場合、研磨面の表面粗さが大きくなる。一方、0.1μmの平均粒子径のアルミナを使用すると研磨速度が遅くなる。更に、0.1〜0.4μmの平均粒子径のアルミナに、陽(プラス)に帯電した平均粒子径が0.01〜0.2μmのシリカ粒子又はシリカゾルを添加することで粒子を最密充填することで、更に研磨面を平坦化することが可能である。
【0017】
アルミナ研磨材としてα相含有率が80〜95%であるアルミナ結晶構造を有するアルミナの代わりに、α相含有率が95%を越えるアルミナ結晶構造を有するアルミナを使用した場合、研磨速度が速くなるが、研磨面の表面粗さが大きくなるため、表面粗さに対する研磨速度の比率が小さくなり、研磨特性としては劣る。一方、α相含有率が80%を未満のアルミナ結晶構造を有するアルミナを使用した場合、研磨面の表面粗さは変わらないが研磨速度が遅くなるため、表面粗さに対する研磨速度の比率が小さくなり、研磨特性としては劣る。
【0018】
研磨用組成物におけるアルミナ研磨材の含有量は、1重量%より少ないと研磨効果が小さく、20重量%より多くしても研磨効果の更なる向上は認められないため、アルミナ研磨材の含有量は1〜20重量%が好ましい。
【0019】
【実施例】
下記の実施例により、本発明を更に説明する。
[研磨用組成物の調製]
実験例1
市販のバイヤー法仮焼アルミナ粉(平均粒子径0.78μm、α相含有率85%)750g、1mmφのジルコニアビーズ12.6kg及び純水1600gを3Lのアトライター容器(三井鉱山(株)製)に仕込み、200rpmで7時間30分粉砕して、平均粒子径が0.32μmでα相含有率が85%のアルミナ結晶構造を有するアルミナを固形分として31重量%を含む水性アルミナスラリー(A)を得た。
【0020】
次に、硝酸アルミニウム・九水塩380gを純水1kgに溶解した後、この水溶液を沸騰させ、1320gの35%過酸化水素水溶液と110gのアルミニウム金属粉末を徐々に添加し溶解・反応させた。この反応液を濾過して塩基性硝酸アルミニウム水溶液(a)を得た。この塩基性硝酸アルミニウム水溶液(a)は、Al23換算濃度9.9重量%と、硝酸イオン濃度7.2重量%を含み、塩基度として80.0%で、Al(OH)2.4(NO30.6 の化学組成で表示される塩基性硝酸アルミニウム水溶液であった。
【0021】
更に、塩基性硝酸アルミニウム水溶液(a)に60重量%硝酸を添加して、塩基性硝酸アルミニウム水溶液(b)を調製した。この塩基性硝酸アルミニウム水溶液(b)は、Al23換算濃度7.1重量%と、硝酸イオン濃度17.3重量%を含み、塩基度として33.3%で、Al(OH)(NO32の化学組成で表示される塩基性硝酸アルミニウム水溶液であった。
【0022】
そして、水性アルミナスラリー(A)を純水で希釈する際に、研磨促進剤として塩基性硝酸アルミニウム水溶液(b)を加えて、研磨用組成物(1Ab)を調製した。この研磨用組成物(1Ab)は、塩基度33.3%の塩基性硝酸アルミニウムとして、Al23換算濃度で1.2重量%と、硝酸濃度3.0重量%を含むとともに、アルミナ固形分10重量%を含んでいた。
【0023】
実験例2
研磨促進剤として、塩基度33.3%の塩基性硝酸アルミニウム濃度を増量した以外は、実験例1と同様にして、研磨用組成物(2Ab)を調製した。この研磨用組成物(2Ab)は、塩基度33.3%の塩基性硝酸アルミニウムとして、Al23換算濃度1.6重量%と、硝酸濃度4.0重量%を含むとともに、アルミナ固形分10重量%を含んでいた。
【0024】
実験例3
実験例1で得た塩基度80.0%の塩基性硝酸アルミニウム水溶液(a)に60重量%硝酸を添加して、塩基性硝酸アルミニウム水溶液(c)を調製した。この塩基性硝酸アルミニウム水溶液(c)は、Al23換算濃度8.3重量%と、硝酸イオン濃度10.0重量%を含み、塩基度として66.7%で、Al(OH)2(NO3)の化学組成で表示される塩基性硝酸アルミニウム水溶液であった。
【0025】
よって、実験例1と同様にして得た水性アルミナスラリー(A)を純水で希釈する際に、研磨促進剤として塩基性硝酸アルミニウム水溶液(c)を加えて、研磨用組成物(3Ac)を調製した。この研磨用組成物(3Ac)は、塩基度66.7%の塩基性硝酸アルミニウムとして、Al23換算濃度2.1重量%と、硝酸濃度2.6重量%を含むとともに、アルミナ固形分10重量%を含んでいた。
【0026】
実験例4
実験例1と同様にして得た水性アルミナスラリー(A)を純水で希釈して、アルミナ固形分10重量%を含む研磨用組成物(4A)を調製した。
実験例5
実験例1と同様にして得た水性アルミナスラリー(A)を純水で希釈する際に、研磨促進剤として硝酸アルミニウム水溶液(d)を加えて、研磨用組成物(5Ad)を調製した。この研磨用組成物(5Ad)は、硝酸アルミニウムとして、Al23換算濃度1.2重量%と、硝酸濃度4.5重量%を含むとともに、アルミナ固形分10重量%を含んでいた。
【0027】
実験例6
市販のバイヤー法仮焼アルミナ粉(平均粒子径1.07μm、α相含有率55%)750g、1mmφのジルコニアビーズ12.6kg及び純水1600gを3Lのアトライター容器(三井鉱山(株)製)に仕込み、200rpmで7時間30分粉砕して、平均粒子径が0.30μmでα相含有率が55%のアルミナ結晶構造を有するアルミナを固形分として31重量%を含む水性アルミナスラリー(B)を得た。
【0028】
よって、この水性アルミナスラリー(B)を純水で希釈する際に、研磨促進剤として実施例1で得た塩基度33.3%の塩基性硝酸アルミニウム水溶液(b)を加えて、研磨用組成物(6Bb)を調製した。この研磨用組成物(6Bb)は、塩基度33.3%の塩基性硝酸アルミニウムとして、Al23換算濃度1.6重量%と、硝酸濃度4.0重量%を含むとともに、アルミナ固形分10重量%を含んでいた。
【0029】
実験例7
市販のバイヤー法仮焼アルミナ粉(平均粒子径1.00μm、α相含有率98%)750g、1mmφのジルコニアビーズ12.6kg及び純水1600gを3Lのアトライター容器(三井鉱山(株)製)に仕込み、200rpmで8時間30分粉砕して、平均粒子径が0.35μmでα相含有率が98%のアルミナ結晶構造を有するアルミナを固形分として31重量%を含む水性アルミナスラリー(C)を得た。
【0030】
よって、この水性アルミナスラリー(C)を純水で希釈する際に、研磨促進剤として実施例1で得た塩基度33.3%の塩基性硝酸アルミニウム水溶液(b)を加えて、研磨用組成物(7Cb)を調製した。この研磨用組成物(7Cb)は、塩基度33.3%の塩基性硝酸アルミニウムとして、Al23換算濃度1.6重量%と、硝酸濃度4.0重量%を含むとともに、アルミナ固形分10重量%を含んでいた。
【0031】
実験例8
市販のバイヤー法仮焼アルミナ粉(平均粒子径1.20μm、α相含有率75%)750g、1mmφのジルコニアビーズ12.6kg及び純水1600gを3Lのアトライター容器(三井鉱山(株)製)に仕込み、200rpmで7時間30分粉砕して、平均粒子径が0.33μmでα相含有率が75%のアルミナ結晶構造を有するアルミナを固形分として31重量%を含む水性アルミナスラリー(D)を得た。
【0032】
よって、この水性アルミナスラリー(D)を純水で希釈する際に、研磨促進剤として硝酸アルミニウム水溶液(d)を加えて、研磨用組成物(8Dd)を調製した。この研磨用組成物(8Dd)は、硝酸アルミニウムとして、Al23換算濃度1.2重量%と、硝酸濃度4.5重量%を含むとともに、アルミナ固形分10重量%を含んでいた。
【0033】
実験例9
市販のバイヤー法仮焼アルミナ粉(平均粒子径1.00μm、α相含有率98%)750g、1mmφのジルコニアビーズ12.6kg及び純水1600gを3Lのアトライター容器(三井鉱山(株)製)に仕込み、200rpmで4時間粉砕して、平均粒子径が0.57μmでα相含有率が98%のアルミナ結晶構造を有するアルミナを固形分として31重量%を含む水性アルミナスラリー(E)を得た。
【0034】
よって、この水性アルミナスラリー(E)を純水で希釈する際に、研磨促進剤としてグルコン酸ナトリウム水溶液(e)を加えて、研磨用組成物(9Ee)を調製した。この研磨用組成物(9Ee)は、グルコン酸ナトリウム濃度1.2重量%を含むとともに、アルミナ固形分10重量%を含んでいた。
実験例10
実験例1と同様にして得た水性アルミナスラリー(A)を純水で希釈する際に、研磨促進剤として、長軸径20〜30nmを有する板状ベーマイト粒子が分散する硝酸酸性水性ベーマイトゾル(f)と60重量%硝酸とを加えて、研磨用組成物(10Af)を調製した。この研磨用組成物(10Af)は、ベーマイトをAl23換算濃度で1.2重量%と、硝酸濃度3.0%重量%を含むとともに、アルミナ固形分10重量%を含んでいた。
【0035】
[研磨試験]
研磨試験は、下記のように行った。
被加工物は、アルミニウム基板にNi−Pを10μmの厚さに無電解メッキした2.5インチメモリーハードディスク基板を使用した。尚、この基板は1次研磨してあり平均表面粗さは、1.8nmである。
【0036】
オスカー型レンズ研磨機の定盤に人工皮革タイプのポリウレタン製研磨布(POLITEX DG(商標)、250mmφ、ロデール・ニッタ(株)製)を貼り付け、これに基板の研磨面を対向させ14kPaの荷重をかけて研磨した。
定盤回転数は、毎分30回転であり、スラリー供給量は2ml/分である。
研磨の後、被加工物を取り出し超音波洗浄を繰り返して洗浄した。
【0037】
洗浄後アルミディスクを乾燥し、重量減少から研磨速度を求めた。表面欠陥については、微分干渉顕微鏡により観察し、突起、ピット、スクラッチなどの度合を判定した。平均表面粗さは、市販品の装置、例えば米国のZygo社製の「New View 100」という名称の装置を使用することによる、FDAを用いる走査型白色干渉法あるいは位相測定法により測定した。
【0038】
ここで10重量%のアルミナ固形分を含む研磨用組成物の物性を第1表に示す。
【0039】
【表1】
Figure 0004114018
(注記)第1表の研磨促進剤含有量について:研磨促進剤として、塩基性硝酸アルミニウム、硝酸アルミニウム及び硝酸酸性ベーマイトゾルを用いた場合、含有量はAl23換算濃度で表した。研磨促進剤がグルコン酸ナトリウムのみ、グルコン酸ナトリウム濃度で表した。
【0040】
試験結果について、研磨用組成物(4A)及び(10Af)では、研磨面にピット及びスクラッチが発生したが、その他の研磨用組成物では研磨面にピット及びスクラッチの発生は認められなかった。また研磨試験における研磨速度、平均表面粗さ及び平均表面粗さに対する研磨速度の比率についての結果は第2表に示す。
【0041】
【表2】
Figure 0004114018
第2表から、研磨用組成物(1Ab)、(2Ab)及び(3Ac)に示される、研磨促進剤が塩基性硝酸アルミニウムで、アルミナが平均粒子径が0.32μmでα相含有率が85%のアルミナ結晶構造を有するアルミナを含む研磨用組成物の群では、平均表面粗さに対する研磨速度の比率が300以上と高い。一方、研磨促進剤の無添加である研磨用組成物(4A)及び研磨促進剤が硝酸アルミニウムの研磨用組成物(5Ad)では、平均表面粗さに対する研磨速度の比率が230以下であり、研磨用組成物(1Ab)、(2Ab)及び(3Ac)からなる群の方が研磨特性が優れている。また、アルミナ研磨材のα相含有率が55%と低い研磨用組成物(6Bb)及びα相含有率が98%と高い研磨用組成物(7Cb)では、平均表面粗さに対する研磨速度の比率が250以下であり、研磨用組成物(1Ab)、(2Ab)及び(3Ac)からなる群が研磨特性が優れている。
【0042】
また従来技術例である研磨用組成物(8Dd)、(9Ee)及び(10Af)は、平均表面粗さに対する研磨速度の比率が200以下になっており、研磨用組成物(1Ab)、(2Ab)及び(3Ac)からなる群と比較すると研磨特性が良くない。
【0043】
【発明の効果】
本発明の研磨促進剤は、三価又は四価の金属と無機酸又は有機酸から形成される塩基性塩である。塩基性硝酸アルミニウムなどの塩基性塩は、硝酸アルミニウムなどの正塩と同じようにアルミニウムディスクに対して化学的研磨効果を促進させる効果を示すとともに、正塩より研磨用組成物のpHを中性側に保つ緩衝効果があるため、研磨時の過剰なエッチングが抑制され表面粗さを小さく、表面欠陥が少なくし、高品質の研磨面が得られるものと考えられる。その結果、表面粗さに対する研磨速度比率が大きくなり、研磨特性として優れている。本発明の研磨用組成物は、高速研磨性を有し、しかも高品質の研磨面が得られる研磨用組成物であるため、研磨工程の生産性の向上及び低コスト化が可能である。また、本発明の研磨用組成物は、工業製品として供給され得るアルミニウムディスクの上に設けられたNi−Pなどのメッキ層の表面、特にNi90〜92%とP8〜10%の組成の硬質Ni−Pメッキ層の表面、アルミナ層の表面あるいはアルミニウム、その合金、アルマイトの表面を研磨するのに有用であることが明瞭である。
【0044】
更に本願発明の精密研磨用組成物は、磁気ヘッド、半導体多層配線基板の配線金属、半導体多層配線基板の絶縁層などの精密研磨にも使用することができる。

Claims (6)

  1. 水、アルミナ研磨材及び研磨促進剤を含むアルミニウムディスクの研磨用組成物において、研磨促進剤がAl(OH) X (NO 3 3-X [ただし、Xは0.5〜2.7の実数]の化学組成で表示される塩基性硝酸アルミニウムであることを特徴とするアルミニウムディスクの研磨用組成物。
  2. 水、アルミナ研磨材及び研磨促進剤を含むアルミニウムディスクの研磨用組成物において、研磨促進剤が26.7〜76.0%の塩基度を有する塩基性硝酸アルミニウムであることを特徴とするアルミニウムディスクの研磨用組成物、
    ただし、塩基性硝酸アルミニウムの塩基度とはアルミニウムイオンと結合した水酸基の割合で、Al(OH) X (NO 3 3-X において,(X/3)×100%を意味する。
  3. アルミナ研磨材が0.1〜0.4μmの平均粒子径とα相含有率が80〜95%であるアルミナ結晶構造を有するアルミナである請求項1又は請求項2に記載のアルミニウムディスクの研磨用組成物。
  4. アルミニウムディスクの表面と、該アルミニウムディスクの表面を滑り得る研磨布の表面との間に、供給されるアルミニウムディスクの研磨用組成物にてアルミニウムディスクを研磨する研磨方法において、
    アルミニウムディスクの表面が、アルミニウム、アルミニウム合金、Ni−Pメッキ層、Ni−Bメッキ層又はアルミナであること、及び
    アルミニウムディスクの研磨用組成物が、水、アルミナ研磨材、及びAl(OH) X (NO 3 3-X [ただし、Xは0.5〜2.7の実数]の化学組成で表示される塩基性硝酸アルミニウムを含むことを特徴とするアルミニウムディスクの研磨方法。
  5. アルミニウムディスクの表面と、該アルミニウムディスクの表面を滑り得る研磨布の表面との間に、供給されるアルミニウムディスクの研磨用組成物にてアルミニウムディスクを研磨する研磨方法において、
    アルミニウムディスクの表面が、アルミニウム、アルミニウム合金、Ni−Pメッキ層、Ni−Bメッキ層又は酸化アルミニウム層であること、及び
    アルミニウムディスクの研磨用組成物が、水、アルミナ研磨材、及び26.7〜76.0%の塩基度を有する塩基性硝酸アルミニウムを含むことを特徴とするアルミニウムディスクの研磨方法、
    ただし、塩基性硝酸アルミニウムの塩基度とはアルミニウムイオンと結合した水酸基の割合で、Al(OH) X (NO 3 3-X において,(X/3)×100%を意味する。
  6. アルミナ研磨材が0.1〜0.4μmの平均粒子径とα相含有率が80〜95%であるアルミナ結晶構造を有するアルミナである請求項4又は請求項5に記載のアルミニウムディスクの研磨方法。
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