JP4111460B2 - アルミニウム塑性加工用潤滑油組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はアルミニウム(アルミニウム合金を含む、以下同じ)の塑性加工用潤滑油組成物に関する。詳しくは、アルミニウムの冷間圧延、絞り、しごき、引き抜き、プレスなどに用いる潤滑油組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウム冷間圧延油用の油性剤として、従来は高級アルコール、脂肪酸モノエステル、脂肪酸などが使用されてきた。これらの中ではアルコールがもっとも一般的に使用され、ついで脂肪酸モノエステルが使用されている。脂肪酸モノエステルを添加することにより、高温などの条件下での圧延限界(限界圧下率)が高くなるといった利点が生じる。
【0003】
しかし、最近は生産性を上げるため、従来以上の高速、高圧下率で材料を圧延する必要が生じており、潤滑部位はより高温で厳しい条件にさらされる。このため、従来の油性剤の添加では十分な圧延限界が得られず、油性剤の添加量を増すか圧延速度(圧延材料の送り速度)や圧下率を下げて圧延するといった対策がとられている。
【0004】
しかし、油性剤の含有量を増やすと、圧延油のコストが上昇したり、また圧延後アルミニウム板を焼鈍する際のステイン発生、マイルドな潤滑状態の条件下でのワークロールと材料との間のスリップおよび圧延後の板の表面の光沢むらの発生などの製品の品質低下、といった問題が生じる。また、圧延速度や圧下率を下げることによっては生産性の低下といった問題が生じる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような実状に鑑みなされたものであり、その目的は、高速度・高加工率でのアルミニウム塑性加工に耐え得る潤滑油であって、かつ製品の品質低下を抑え、油のコストの上昇も伴わない潤滑油を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、特定のジエステルを潤滑油に含有せしめることにより、高速度・高加工率でのアルミニウム塑性加工に耐え得り、かつ製品の品質低下を抑え、油のコストの上昇も伴わないことを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明のアルミニウム冷間圧延塑性加工用潤滑油組成物は、炭素数4〜8の二塩基酸と炭素数1〜8の一価アルコールとのジエステルを組成物全量基準で0.1〜15質量%含有することを特徴とするものである。
【0008】
【発明の実施の態様】
以下本発明を具体的に説明する。
本発明のアルミニウム塑性加工用潤滑油組成物は、基油、および油性剤として上記ジエステルを含有する。使用する基油に特に制限はないが、通常は鉱油である。しかし、鉱油中の芳香族化合物は金属の加工作業中、臭気の原因となり作業環境を悪化させるため、芳香族分の少ない鉱油が好ましい。具体的には、本発明で用いる鉱油は芳香族分が好ましくは10容量%以下、より好ましくは8容量%以下、さらに好ましくは6容量%以下である。ここでいう芳香族分とは、JISK 2536「石油製品−炭化水素タイプ試験方法」の蛍光指示薬吸着法を準用して測定された値を表すものを意味している。
【0009】
芳香族分の少ない基油はしかし潤滑性に劣っている。また、この様な基油に従来の油性剤を通常の量添加しても十分な圧延限界は得られない。一方、本発明に係るジエステルを芳香族分の少ない基油に添加すれば、高圧延速度・高圧下率という厳しい条件下でも潤滑性に優れた潤滑油組成物が得られる。この際、ジエステルは従来の油性剤の様に添加量を増やす必要がないため、コストの上昇を伴わず、圧延した製品の品質も低下しない。よって、本発明に係るジエステルは芳香族分のより少ない基油と共に用いることが、作業環境並びに潤滑性、コストおよび品質の点から好ましい。
【0010】
本発明の潤滑油組成物の基油としては、ナフテン分に制限はないが、圧延後のアルミニウム板表面の光沢値を高くできることにより20容量%以上、好ましくは25容量%以上、より好ましくは30容量%以上であることが望ましい。また、アルミニウムの低加工率時での摩擦係数を低くできることにより、ナフテン分は90容量%以下、好ましくは85容量%以下、より好ましくは80容量%以下であることが望ましい。
【0011】
本発明の潤滑油組成物の基油としては、パラフィン分に制限はないが、アルミニウムの低加工率時での摩擦係数を低くできることより5容量%以上、好ましくは10容量%以上、より好ましくは15容量%以上であることが望ましい。また、圧延後のアルミニウム板表面の光沢値を高くできることにより80容量%以下、好ましくは75容量%以下、より好ましくは70容量%以下であることが望ましい。
【0012】
本発明においてナフテン分、パラフィン分とは、FIイオン化(ガラスリザーバ使用)による質量分析法により得られた分子イオン強度をもって、これらの割合を決定するものである。以下にその測定法を具体的に示す。
【0013】
▲1▼径18mm、長さ980mmの溶出クロマト用吸着管に、約175℃、3時間の乾燥により活性化された呼び径74〜149μmシリカゲル(富士デビソン化学(株)製grade923)120gを充填する。
▲2▼n−ペンタン75mlを注入し、シリカゲルを予め湿す。
▲3▼試料約2gを精秤し、等容量のn−ペンタンで希釈し、得られた試料溶液を注入する。
▲4▼試料溶液の液面がシリカゲル上端に達したとき、飽和炭化水素成分を分離するためにn−ペンタン140mlを注入し、吸着管の下端より溶出液を回収する。
▲5▼▲4▼の溶出液をロータリーエバポレーターにかけて溶媒を留去し、飽和炭化水素成分を得る。
▲6▼▲5▼で得られた飽和炭化水素成分を質量分析計でタイプ分析を行う。質量分析におけるイオン化方法としては、ガラスリザーバを使用したFIイオン化法が用いられ、質量分析計は日本電子(株)製JMS−AX505Hを使用する。
測定条件を以下に示す。
加速電圧 :3.0kV
カソード電圧 :−5〜−6kV
分解能 :約500
エミッター :カーボン
エミッター電流:5mA
測定範囲 :質量数35〜700
Sub Oven温度 :300℃
セパレータ温度:300℃
Main Oven 温度:350℃
試料注入量 :1μl
▲7▼▲6▼の質量分析法によって得られた分子イオンは、同位体補正後、その質量数からパラフィン類(Cn H2n+2)とナフテン類(Cn H2n、Cn H2n-2、Cn H2n-4・・・)の2タイプに分類・整理し、それぞれのイオン強度の分率を求め、飽和炭化水素成分全体に対する各タイプの含有量を定める。次いで、▲5▼で得られた飽和炭化水素成分の含有量をもとに、試料全体に対するパラフィン分、ナフテン分の各含有量を求める。
【0014】
なお、FI法質量分析のタイプ分析法によるデータ処理の詳細は、「日石レビュー」第33巻第4号135〜142頁の特に「2.2.3データ処理」の項に記載されている。
【0015】
本発明の塑性加工用潤滑油組成物の基油は、その粘度に格別の限定はないが、一般的には、40℃における動粘度が0.5〜500mm2/sの範囲にあるものが好ましく、1〜200mm2/sの範囲にあるものがより好ましい。特に本発明の潤滑油組成物をアルミニウムの圧延加工の際に用いる場合には、その基油は1〜10mm2/sの範囲にあるものが好ましく、1〜8mm2/sの範囲にあるものがより好ましく、1〜6mm2/sの範囲にあるものがさらに好ましい。なお、アルミニウムの圧延加工においては、潤滑性と表面品質を両立できる粘度範囲として、厚さ0.1mm以下のいわゆる箔を形成する場合には1mm2/s以上3mm2/s以下の基油が好ましく、厚さ0.1mmを超える(0.2mm以上の)いわゆる条を形成する場合には2mm2/s以上6mm2/s以下の基油が好ましい。
【0016】
基油の動粘度(40℃)が低すぎる場合には、引火による火災等の危険性が増す恐れがある。一方、高すぎる場合には、焼鈍時の被加工材表面にステインと呼ばれる潤滑油成分の焼き付きが生じ易くなる恐れがある、被加工材表面にオイルピットと呼ばれる表面損傷が発生し表面光沢が悪くなる恐れがある、過潤滑によるスリップが生じ、摩耗粉の発生量が多くなる、被加工材表面に傷を付ける、スリップが著しい場合には加工不能となるなどの恐れがある。
【0017】
本発明で使用可能な鉱油系基油を例示すれば、原油を常圧蒸留および必要に応じて減圧蒸留して得られた潤滑油留分に対して、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の1種もしくは2種以上の精製手段を適宜組み合わせて適用して得られるパラフィン系またはナフテン系の鉱油を挙げることができる。
本発明の潤滑油組成物の基油としては、上記した基油を単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせてもよい。
【0018】
本発明において基油の含有量に特に制限はないが、通常組成物全量基準で50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらにより好ましく、80質量%以上であることが最も好ましい。
【0019】
本発明の潤滑油組成物に含有されるジエステルは、炭素数4〜8の二塩基酸と炭素数1〜8の一価アルコールから調製される。
二塩基酸としては、通常炭素数が4〜8、好ましくは4〜6、より好ましくは6のものが用いられる。二塩基酸の炭素数が4より小さいと、潤滑油組成物は潤滑性が不十分となり、炭素数が8より大きいと焼鈍性に劣る。本発明で用いる炭素数4〜8の二塩基酸は、鎖状(脂肪族)二塩基酸、脂環式二塩基酸、芳香族二塩基酸の何れでも良いが、潤滑油組成物の潤滑性を向上させる点から鎖状(脂肪族)二塩基酸が好ましい。具体例としては、直鎖状または分岐状のブタン二酸、直鎖状または分岐状のペンタン二酸、直鎖状または分岐状のヘキサン二酸、直鎖状または分岐状のヘプタン二酸、直鎖状または分岐状のオクタン二酸およびこれらの混合物が挙げられる。これら鎖状(脂肪族)二塩基酸は、分岐していても良いが、潤滑油組成物の潤滑性を向上させる点から直鎖状が好ましい。本発明において特に好ましい二塩基酸はアジピン酸(直鎖状のヘキサン二酸)である。
【0020】
本発明に係るジエステルの原料である一価アルコールは、通常炭素数が1〜8、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4であり、直鎖状でも分岐状でも良い。アルコールの炭素数が8より大きいと、潤滑油組成物は焼鈍性に劣る。炭素数1〜4の一価アルコールとしては、メタノール、エタノール、直鎖状または分岐状のプロパノール、直鎖状または分岐状のブタノールおよびこれらの混合物が挙げられる。
【0021】
なお、ジエステルは通常、二塩基酸中のカルボキシル基全てがエステル化された完全エステルであるが、カルボキシル基の一部がエステル化されずカルボキシル基のままで残っている部分エステルを含んでいても良い。
【0022】
本発明の潤滑油組成物は、ジエステルに加え従来の油性剤を含有することもできる。このような他の油性剤としては、より加工性を向上させるために下記の中から選ばれる少なくとも1種を使用することが好ましい。
(1)本発明に係るジエステル以外のエステル
(2)1価アルコール
(3)カルボン酸
上記(1)エステルとしては、本発明に係るジエステルとならない限り、構成するアルコールは1価アルコールでも多価アルコールでも良く、またカルボン酸は一塩基酸でも多塩基酸であっても良い。
【0023】
1価アルコールとしては、通常炭素数1〜24のものが用いられ、このようなアルコールとしては直鎖のものでも分岐のものでもよい。炭素数1〜24のアルコールとしては、具体的には例えば、メタノール、エタノール、直鎖状または分岐状のプロパノール、直鎖状または分岐状のブタノール、直鎖状または分岐状のオクタノール、直鎖状または分岐状のノナノール、直鎖状または分岐状のデカノール、直鎖状または分岐状のウンデカノール、直鎖状または分岐状のドデカノール、直鎖状または分岐状のトリデカノール、直鎖状または分岐状のテトラデカノール、直鎖状または分岐状のペンタデカノール、直鎖状または分岐状のヘキサデカノール、直鎖状または分岐状のヘプタデカノール、直鎖状または分岐状のオクタデカノール、直鎖状または分岐状のノナデカノール、直鎖状または分岐状のエイコサノール、直鎖状または分岐状のヘンエイコサノール、直鎖状または分岐状のトリコサノール、直鎖状または分岐状のテトラコサノールおよびこれらの混合物が挙げられる。
【0024】
多価アルコールとしては、通常2〜10価、好ましくは2〜6価のものが用いられる。2〜10価多価アルコールとしては、具体的には例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(エチレングリコールの3〜15量体)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの3〜15量体)、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール等の2価アルコール;グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜8量体、例えばジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン)、トリメチロールアルカン(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタンなど)およびこれらの2〜8量体、ペンタエリスリトールおよびこれらの2〜4量体、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトールなどの多価アルコール;キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、スクロースなどの糖類、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0025】
これらの中でも特に、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(エチレングリコールの3〜10量体)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの3〜10量体)、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、トリメチロールアルカン(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタンなど)およびこれらの2〜4量体、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトールなどの2〜6価の多価アルコールおよびこれらの混合物等がより好ましい。さらに好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、およびこれらの混合物等である。
【0026】
本発明に係るジエステル以外のエステル油性剤を構成する一塩基酸としては、通常炭素数6〜24の脂肪酸で、直鎖のものでも分岐のものでも良く、また飽和のものでも不飽和のものでも良い。具体的には例えば、直鎖状または分岐状のヘキサン酸、直鎖状または分岐状のオクタン酸、直鎖状または分岐状のノナン酸、直鎖状または分岐状のデカン酸、直鎖状または分岐状のウンデカン酸、直鎖状または分岐状のドデカン酸、直鎖状または分岐状のトリデカン酸、直鎖状または分岐状のテトラデカン酸、直鎖状または分岐状のペンタデカン酸、直鎖状または分岐状のヘキサデカン酸、直鎖状または分岐状のオクタデカン酸、直鎖状または分岐状のヒドロキシオクタデカン酸、直鎖状または分岐状のノナデカン酸、直鎖状または分岐状のエイコサン酸、直鎖状または分岐状のヘンエイコサン酸、直鎖状または分岐状のドコサン酸、直鎖状または分岐状のトリコサン酸、直鎖状または分岐状のテトラコサン酸などの飽和脂肪酸;直鎖状または分岐状のヘキセン酸、直鎖状または分岐状のヘプテン酸、直鎖状または分岐状のオクテン酸、直鎖状または分岐状のノネン酸、直鎖状または分岐状のデセン酸、直鎖状または分岐状のウンデセン酸、直鎖状または分岐状のドデセン酸、直鎖状または分岐状のトリデセン酸、直鎖状または分岐状のテトラデセン酸、直鎖状または分岐状のペンタデセン酸、直鎖状または分岐状のヘキサデセン酸、直鎖状または分岐状のオクタデセン酸、直鎖状または分岐状のヒドロキシオクタデセン酸、直鎖状または分岐状のノナデセン酸、直鎖状または分岐状のエイコセン酸、直鎖状または分岐状のヘンエイコセン酸、直鎖状または分岐状のドコセン酸、直鎖状または分岐状のトリコセン酸、直鎖状または分岐状のテトラコセン酸などの不飽和脂肪酸、およびこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、特に炭素数8〜20の飽和脂肪酸、炭素数8〜20の不飽和脂肪酸、およびこれらの混合物が好ましい。
【0027】
本発明に係るジエステル以外のエステル油性剤を構成する多塩基酸としては、炭素数2〜16の二塩基酸およびトリメリト酸等が挙げられる。炭素数2〜16の二塩基酸としては、直鎖のものでも分岐のものでも良く、また飽和のものでも不飽和のものでも良い。具体的には例えば、エタン二酸、プロパン二酸、直鎖状または分岐状のブタン二酸、直鎖状または分岐状のペンタン二酸、直鎖状または分岐状のヘキサン二酸、直鎖状または分岐状のオクタン二酸、直鎖状または分岐状のノナン二酸、直鎖状または分岐状のデカン二酸、直鎖状または分岐状のウンデカン二酸、直鎖状または分岐状のドデカン二酸、直鎖状または分岐状のトリデカン二酸、直鎖状または分岐状のテトラデカン二酸、直鎖状または分岐状のヘプタデカン二酸、直鎖状または分岐状のヘキサデカン二酸;直鎖状または分岐状のヘキセン二酸、直鎖状または分岐状のオクテン二酸、直鎖状または分岐状のノネン二酸、直鎖状または分岐状のデセン二酸、直鎖状または分岐状のウンデセン二酸、直鎖状または分岐状のドデセン二酸、直鎖状または分岐状のトリデセン二酸、直鎖状または分岐状のテトラデセン二酸、直鎖状または分岐状のヘプタデセン二酸、直鎖状または分岐状のヘキサデセン二酸;およびこれらの混合物が挙げられる。
【0028】
また、本発明に係るジエステル以外のエステル油性剤としては、
▲1▼一価アルコールと一塩基酸とのエステル
▲2▼多価アルコールと一塩基酸とのエステル
▲3▼一価アルコールと多塩基酸とのエステル(本発明に係るジエステルを除く)
▲4▼多価アルコールと多塩基酸とのエステル
▲5▼一価アルコール、多価アルコールとの混合物と多塩基酸との混合エステル
▲6▼多価アルコールと一塩基酸、多塩基酸との混合物との混合エステル
▲7▼一価アルコール、多価アルコールとの混合物と一塩基酸、多塩基酸との混合物との混合エステル
など、任意のアルコールとカルボン酸の組み合わせによるエステルが使用可能であり、特に限定されるものではない。
【0029】
なお、アルコール成分として多価アルコールを用いた場合、多価アルコール中の水酸基全てがエステル化された完全エステルでも良く、水酸基の一部がエステル化されず水酸基のままで残っている部分エステルでも良い。また、カルボン酸成分として多塩基酸を用いた場合、多塩基酸中のカルボキシル基全てがエステル化された完全エステルでも良く、カルボキシル基の一部がエステル化されずカルボキシル基のままで残っている部分エステルであっても良い。
【0030】
本発明で用いられる他のエステルとしては、上記した何れのもの使用可能であるが、この中でもより加工性に優れる点から、▲1▼一価アルコールと一塩基酸とのエステル、が好ましい。
【0031】
本発明において油性剤として用いられる他のエステルの合計炭素数には特に制限はないが、加工性の向上効果に優れる点から合計炭素数が7以上のエステルが好ましく、9以上のエステルがより好ましく、11以上のエステルが最も好ましい。また、炭素数が大き過ぎるとステインや腐食の発生を増大させる恐れが大きくなることから、合計炭素数が26以下のエステルが好ましく、24以下のエステルがより好ましく、22以下のエステルが最も好ましい。
【0032】
油性剤として用いられる上記(2)1価アルコールとしては、上記(1)エステルを構成するアルコールとして列挙した化合物などが挙げられる。より加工性に優れる点から、炭素数6以上の1価アルコールが好ましく、炭素数8以上のアルコールがより好ましく、炭素数10以上のアルコールが最も好ましい。また、炭素数が大き過ぎるとステインや腐食の発生を増大させる可能性が大きくなることから、炭素数20以下のアルコールが好ましく、炭素数18以下のアルコールがより好ましく、炭素数16以下のアルコールが最も好ましい。
【0033】
上記(3)カルボン酸としては、1塩基酸でも多塩基酸でも良い。具体的には例えば、上記(1)エステルを構成するカルボン酸として列挙した化合物が挙げられる。これらの中でも、より加工性に優れる点から1価のカルボン酸が好ましい。また、より加工性に優れる点から、炭素数6以上のカルボン酸が好ましく、炭素数8以上のカルボン酸がより好ましく、炭素数10以上のカルボン酸が最も好ましい。また、炭素数が大き過ぎるとステインや腐食の発生を増大させる可能性が大きくなることから、炭素数20以下のカルボン酸が好ましく、炭素数18以下のカルボン酸がより好ましく、炭素数16以下のカルボン酸が最も好ましい。
【0034】
本発明の潤滑油組成物中のジエステルの含有量(他の油性剤も併用する場合にはそれらも含めた合計含有量)は、特に制限はないが、組成物全量基準で好ましくは0.1〜15質量%である。加工性の点から、含有量の下限値は0.1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上である。また、含有量が多過ぎるとステインや腐食の発生を増大させる可能性がある、スリップや光沢むらの原因となる可能性がある等の点から、含有量の上限値は15質量%以下であることが好ましく、より好ましくは12質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。本発明に係るジエステルを他の油性剤と併用する場合、全油性剤中の同ジエステルの割合についても特に制限はないが、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。
【0035】
本発明の潤滑油組成物はまた、下記の中から選ばれる含酸素化合物の少なくとも1種を含有しても良い。
(A1)数平均分子量が200以上1000未満である、水酸基を3〜6個有する多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物
(A2)(A1)のハイドロカルビルエーテル
(A3)数平均分子量が120以上1000未満のポリアルキレングリコール
(A4)(A3)のハイドロカルビルエーテル
(A5)炭素数2〜10の2価アルコール
【0036】
このような含酸素化合物を添加すると、より高速度・高加工率でのアルミニウム塑性加工に耐え得り、かつ作業環境を改善でき、金属せっけんの生成や摩耗粉の発生の増加を抑え、ステインの発生も抑えることができる潤滑油組成物が得られる。
【0037】
上記(A1)成分を構成する多価アルコールは、水酸基を3〜6個有する。このような多価アルコールとしては、具体的には例えば、グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜4量体、例えばジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン)、トリメチロールアルカン(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタンなど)およびこれらの2〜4量体、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール、イジリトール、タリトール、ズルシトール、アリトールなどの多価アルコール;キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、シュクロースなどの糖類を挙げることができるが、この中でも工具へのアルミニウム凝着(移着)量の調整力に優れる点からグリセリン、トリメチロールアルカン、ソルビトール等が好ましい。
【0038】
また、(A1)成分を構成するアルキレンオキサイドとしては、炭素数2〜6、好ましくは2〜4のものが用いられる。炭素数2〜6のアルキレンオキサイドとしては、具体的には例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−エポキシブタン(α−ブチレンオキサイド)、2,3−エポキシブタン(β−ブチレンオキサイド)、1,2−エポキシ−1−メチルプロパン、1,2−エポキシヘプタンおよび1,2−エポキシヘキサンが挙げられるが、この中でも工具へのアルミニウムの凝着(移着)量の調整力に優れる点からエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が好ましい。
【0039】
なお、2種以上のアルキレンオキサイドを用いた場合、オキシアルキレン基の重合形式に特に制限はなく、ランダム共重合していても、ブロック共重合していても良い。また、水酸基を3〜6個有する多価アルコールにアルキレンオキサイドを付加させる際は、全ての水酸基に付加させてもよいし、一部の水酸基のみに付加させてもよいが、工具へのアルミニウム凝着(移着)量の調整力に優れる点から全ての水酸基に付加させた付加物が好ましい。
【0040】
さらに、本発明で用いる(A1)成分としては数平均分子量が200以上1000未満、好ましくは、250以上750未満であることが必要である。数平均分子量が200未満の付加物は、基油に対する溶解性が低下し好ましくない。また、数平均分子量が1000以上の付加物は、加工後の焼鈍時に被加工材表面に残ってステインを生じる恐れがあり好ましくない。
【0041】
なお、本発明で用いる(A1)成分としては、水酸基を3〜6個有する多価アルコールにアルキレンオキサイドを付加させる際に数平均分子量が200以上1000未満となるように反応させたものを用いても良いし、任意の方法で得られる水酸基を3〜6個有する多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物の混合物や市販されている水酸基を3〜6個有する多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物の混合物を、蒸留やクロマトによって、数平均分子量が200以上1000未満となるように分離したものを用いても良い。
【0042】
本発明に係る(A2)成分は、数平均分子量が200以上1000未満、好ましくは250以上750未満である、水酸基を3〜6個有する多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物を、ハイドロカルビルエーテル化させたものである。(A2)成分としては、(A1)成分のアルキレンオキサイド付加物の末端水酸基の一部または全てを、ハイドロカルビルエーテル化させたものが使用できる。ここで言うハイドロカルビル基とは、炭素数1〜24の炭化水素基を表す。炭素数1〜24の炭化水素基としては、具体的には例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、直鎖または分枝のペンチル基、直鎖または分枝のヘキシル基、直鎖または分枝のヘプチル基、直鎖または分枝のオクチル基、直鎖または分枝のノニル基、直鎖または分枝のデシル基、直鎖または分枝のウンデシル基、直鎖または分枝のドデシル基、直鎖または分枝のトリデシル基、直鎖または分枝のテトラデシル基、直鎖または分枝のペンタデシル基、直鎖または分枝のヘキサデシル基、直鎖または分枝のヘプタデシル基、直鎖または分枝のオクタデシル基、直鎖または分枝のノナデシル基、直鎖または分枝のイコシル基、直鎖または分枝のヘンイコシル基、直鎖または分枝のドコシル基、直鎖または分枝のトリコシル基、直鎖または分枝のテトラコシル基等の炭素数1〜24のアルキル基;ビニル基、直鎖または分岐のプロペニル基、直鎖または分枝のブテニル基、直鎖または分枝のペンテニル基、直鎖または分枝のヘキセニル基、直鎖または分枝のヘプテニル基、直鎖または分枝のオクテニル基、直鎖または分枝のノネニル基、直鎖または分枝のデセニル基、直鎖または分枝のウンデセニル基、直鎖または分枝のドデセニル基、直鎖または分枝のトリデセニル基、直鎖または分枝のテトラデセニル基、直鎖または分枝のペンタデセニル基、直鎖または分枝のヘキサデセニル基、直鎖または分枝のヘプタデセニル基、直鎖または分枝のオクタデセニル基、直鎖または分枝のノナデセニル基、直鎖または分枝のイコセニル基、直鎖または分枝のヘンイコセニル基、直鎖または分枝のドコセニル基、直鎖または分枝のトリコセニル基、直鎖または分枝のテトラコセニル基等の炭素数2〜24のアルケニル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数5〜7のシクロアルキル基;メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基(全ての構造異性体を含む)、メチルエチルシクロペンチル基(全ての構造異性体を含む)、ジエチルシクロペンチル基(全ての構造異性体を含む)、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基(全ての構造異性体を含む)、メチルエチルシクロヘキシル基(全ての構造異性体を含む)、ジエチルシクロヘキシル基(全ての構造異性体を含む)、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基(全ての構造異性体を含む)、メチルエチルシクロヘプチル基(全ての構造異性体を含む)、ジエチルシクロヘプチル基(全ての構造異性体を含む)等の炭素数6〜11のアルキルシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基:トリル基(全ての構造異性体を含む)、キシリル基(全ての構造異性体を含む)、エチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝のプロピルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝のブチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝のペンチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝のヘキシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝のヘプチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝のオクチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝のノニルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝のデシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝のウンデシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝のドデシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)等の炭素数7〜18のアルキルアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基(プロピル基の異性体を含む)、フェニルブチル基(ブチル基の異性体を含む)、フェニルペンチル基(ペンチル基の異性体を含む)、フェニルヘキシル基(ヘキシル基の異性体を含む)等の炭素数7〜12のアリールアルキル基が挙げられる。この中でも、工具へのアルミニウム凝着(移着)量の調整力に優れる点から、炭素数3〜12の直鎖または分岐のアルキル基が好ましい。
【0043】
(A3)成分は、数平均分子量が120以上1000未満のポリアルキレングリコールであり、炭素数2〜6、好ましくは2〜4のアルキレンオキサイドを単独重合あるいは共重合したものが用いられる。炭素数2〜6のアルキレンオキサイドとしては、具体的には例えば、(A1)成分を構成するアルキレンオキサイドとして列挙したものが挙げられる。この中でも、工具へのアルミニウム凝着(移着)量の調整力に優れる点から、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が好ましい。
【0044】
なお、ポリアルキレングリコールの調製に2種以上のアルキレンオキサイドを用いた場合、オキシアルキレン基の重合形式に特に制限はなく、ランダム共重合していても、ブロック共重合していても良い。
【0045】
さらに、(A3)成分としては数平均分子量が120以上1000未満、好ましくは120以上500未満であることが必要である。数平均分子量が120未満のポリアルキレングリコールは、基油への溶解性が低下し好ましくない。また、数平均分子量が1000以上のポリアルキレングリコールは、加工後の焼鈍時に被加工材表面に残ってステインを生じる恐れがあり好ましくない。
【0046】
なお、(A3)成分としては、アルキレンオキサイドを重合させる際に数平均分子量が120以上1000未満となるように反応させたものを用いても良いし、任意の方法で得られるポリアルキレングリコール混合物や市販されているポリアルキレングリコール混合物を、蒸留やクロマトによって、数平均分子量が120以上1000未満となるように分離したものを用いても良い。
【0047】
(A4)成分は、数平均分子量が120以上1000未満、好ましくは120以上500未満のポリアルキレングリコールを、ハイドロカルビルエーテル化させたものである。(A4)成分としては、(A3)成分のポリアルキレングリコールの末端水酸基の一部または全てを、ハイドロカルビルエーテル化させたものが使用できる。ここでいうハイドロカルビル基とは、炭素数1〜24の炭化水素基を表し、具体的には例えば(A2)の説明において列挙した各基が挙げられる。この中でも、工具へのアルミニウム凝着(移着)量の調整力に優れる点から、炭素数3〜12の直鎖または分岐のアルキル基が好ましい。
【0048】
(A5)成分は、炭素数2〜10、好ましくは炭素数5または6の2価アルコールであるが、ここでいう2価アルコールとは分子中にエーテル結合を有さないものをいう。このような炭素数2〜10の2価アルコールとしては、具体的には例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2,4―ペンタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2―ブチルー2―エチルー1、3―プロパンジオール、1,10−デカンジオールが挙げられる。この中でも、工具へのアルミニウム凝着(移着)量の調整力に優れる点から、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4―ペンタンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール等が好ましい。
【0049】
本発明において、上記(A1)、(A2)、(A3)、(A4)および(A5)の中から選ばれる1種の含酸素化合物を単独で用いても良いし、異なる構造を有する2種以上の含酸素化合物の混合物を用いても良い。
【0050】
本発明において、含酸素化合物の含有量には特に制限はないが、組成物全量基準での含有量(合計量)の上限値が、2質量%であることが好ましく、1.5質量%であることがより好ましく、下限値が0.01質量%であることが好ましく、0.03質量%であることがより好ましい。2質量%を越える含酸素化合物は、基油への溶解性が低下したり、圧延油としての性能に悪影響を及ぼす可能性がある。また、0.01質量%に満たない含酸素化合物では工具へのアルミニウム凝着(移着)量の調整効果が小さくなる可能性がある。
【0051】
また、本発明の潤滑油組成物は、40℃における動粘度が1〜60mm2 /sのアルキルベンゼンを配合しても良い。アルキルベンゼンおよび油性剤を併用することによって、油性剤の添加効果をより増大させることができる。
【0052】
本発明で用いられるアルキルベンゼンの40℃における動粘度は1〜60mm2 /sであることが好ましい。40℃における動粘度が1mm2 /s未満の場合には、添加効果が期待できない場合がある。また、40℃における動粘度が60mm2 /sを超える場合には、ステインや腐食の発生を増大させる可能性があり、好ましくは40mm2 /s以下、より好ましくは20mm2 /s以下である。
【0053】
また、本発明で用いるアルキルベンゼンのベンゼン環に結合するアルキル基としては直鎖状であっても、分枝状であっても良く、また、炭素数についても特に限定されるものではないが、炭素数1〜40のアルキル基が好ましい。
【0054】
炭素数1〜40のアルキル基としては、具体的には例えば、メチル基、エチル基、直鎖状または分岐状のプロピル基、直鎖状または分岐状のブチル基、直鎖状または分岐状のペンチル基、直鎖状または分岐状のヘキシル基、直鎖状または分岐状のヘプチル基、直鎖状または分岐状のオクチル基、直鎖状または分岐状のノニル基、直鎖状または分岐状のデシル基、直鎖状または分岐状のウンデシル基、直鎖状または分岐状のドデシル基、直鎖状または分岐状のトリデシル基、直鎖状または分岐状のテトラデシル基、直鎖状または分岐状のペンタデシル基、直鎖状または分岐状のヘキサデシル基、直鎖状または分岐状のヘプタデシル基、直鎖状または分岐状のオクタデシル基、直鎖状または分岐状のノナデシル基、直鎖状または分岐状のイコシル基、直鎖状または分岐状のヘンイコシル基、直鎖状または分岐状のドコシル基、直鎖状または分岐状のトリコシル基、直鎖状または分岐状のテトラコシル基、直鎖状または分岐状のペンタコシル基、直鎖状または分岐状のヘキサコシル基、直鎖状または分岐状のヘプタコシル基、直鎖状または分岐状のオクタコシル基、直鎖状または分岐状のノナコシル基、直鎖状または分岐状のトリアコンチル基、直鎖状または分岐状のヘントリアコンチル基、直鎖状または分岐状のドトリアコンチル基、直鎖状または分岐状のトリトリアコンチル基、直鎖状または分岐状のテトラトリアコンチル基、直鎖状または分岐状のペンタトリアコンチル基、直鎖状または分岐状のヘキサトリアコンチル基、直鎖状または分岐状のヘプタトリアコンチル基、直鎖状または分岐状のオクタトリアコンチル基、直鎖状または分岐状のノナトリアコンチル基、直鎖状または分岐状のテトラコンチル基が挙げられる。
【0055】
アルキルベンゼン中のアルキル基の個数は通常1〜4個であるが、安定性、入手可能性の点から1個または2個のアルキル基を有するアルキルベンゼン、すなわちモノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン、またはこれらの混合物が最も好ましく用いられる。
【0056】
また、用いるアルキルベンゼンとしては、もちろん、単一の構造のアルキルベンゼンだけでなく、異なる構造を有するアルキルベンゼンの混合物であっても良い。
【0057】
本発明に係るアルキルベンゼンの数平均分子量については、なんら制限はないが、添加効果の点から、100以上が好ましく、130以上がより好ましい。また、分子量が大き過ぎるとステインや腐食の発生を増大させる可能性が大きくなることから、数平均分子量の上限は340以下が好ましく、320以下がより好ましい。
【0058】
上記アルキルベンゼンの製造方法は任意の従来の方法を適用することができ、何ら限定されるものでないが、例えば以下に示す物質を用いてアルキル化合成法等によって製造することができる。
【0059】
原料となる芳香族化合物としては、具体的には例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、ジエチルベンゼン、およびこれらの混合物が用いられる。またアルキル化剤としては、具体的には例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレンなどの低級モノオレフィン、好ましくはプロピレンの重合によって得られる炭素数6〜40の直鎖状または分枝状のオレフィン;ワックス、重質油、石油留分、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの熱分解によって得られる炭素数6〜40の直鎖状または分枝状のオレフィン;灯油、軽油などの石油留分からn−パラフィンを分離し、これを触媒によりオレフィン化することによって得られる炭素数9〜40の直鎖状オレフィン;およびこれらの混合物が使用できる。
【0060】
またアルキル化の際のアルキル化触媒としては、塩化アルミニウム、塩化亜鉛などのフリーデルクラフツ型触媒;硫酸、リン酸、ケイタングステン酸、フッ化水素酸、活性白土などの酸性触媒;など、公知の触媒が用いられる。
【0061】
40℃における動粘度が1〜60mm2 /sのアルキルベンゼンを調製するには、例えば上記に例示したような方法によって得られるアルキルベンゼン混合物や市販されているアルキルベンゼン混合物を蒸留やクロマトによって分離し、動粘度が1〜60mm2 /sであるアルキルベンゼン留分を得ることが実用上便利である。
【0062】
本発明の塑性加工用潤滑油組成物は、上記したアルキルベンゼンを組成物全量基準で、0.1〜50質量%含有することができる。含有量の下限値は、添加効果の点から、0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上である。また、含有量が多過ぎるとステインや腐食の発生を増大させる可能性が大きくなることから、上限値は50質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
【0063】
本発明の潤滑油組成物には、さらにその優れた効果を向上させるため、必要に応じて、極圧添加剤、酸化防止剤、さび止め剤、腐食防止剤、消泡剤などを更に、単独でまたは2種以上組み合わせて添加してもよい。
上記極圧添加剤としては、トリクレジルフォスフェート等のりん系化合物、およびジアルキルジチオリン酸亜鉛等の有機金属化合物が例示できる。
酸化防止剤としては、2,6−ジターシャリーブチル−p−クレゾール(DBPC)等のフェノール系化合物、フェニル−α−ナフチルアミンなどの芳香族アミン、およびジアルキルジチオリン酸亜鉛等の有機金属化合物が例示できる。
さび止め剤としては、オレイン酸などの脂肪酸の塩、ジノニルナフタレンスルホネートなどのスルホン酸塩、ソルビタンモノオレエートなどの多価アルコールの部分エステル、アミンおよびその誘導体、リン酸エステルおよびその誘導体が例示できる。
腐食防止剤としては、ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
消泡剤としては、シリコン系のものなどが挙げられる。
【0064】
これらの添加剤の合計含有量は、通常15質量%以下、好ましくは10質量%以下(いずれも組成物全量基準)であることが望ましい。
【0065】
本発明の塑性加工用潤滑油組成物は、その粘度に格別の限定はないが、一般的には、40℃における動粘度が0.5〜500mm2 /sの範囲にあるものが好ましく、1〜200mm2 /sの範囲にあるものがより好ましい。特に本発明の潤滑油組成物をアルミニウムの圧延加工の際に用いる場合には、1〜10mm2 /sの範囲にあるものが好ましく、1〜8mm2 /sの範囲にあるものがより好ましく、1〜6mm2/sの範囲にあるものがさらに好ましい。なお、アルミニウムの圧延加工においては、潤滑性と表面品質を両立できる粘度範囲として、厚さ0.1mm以下のいわゆる箔を形成する場合には1mm2 /s以上3mm2 /s以下の潤滑油組成物が好ましく、厚さ0.1mmを超える(0.2mm以上の)いわゆる条を形成する場合には2mm2 /s以上6mm2 /s以下のものが好ましい。
【0066】
潤滑油組成物の動粘度(40℃)が低すぎる場合には、引火による火災等の危険性が増す恐れがある。一方、高すぎる場合には、焼鈍時の被加工材表面にステインと呼ばれる潤滑油成分の焼き付きが生じ易くなる恐れがある、被加工材表面にオイルピットと呼ばれる表面損傷が発生し表面光沢が悪くなる恐れがある、過潤滑によるスリップが生じ、摩耗粉の発生量が多くなる、被加工材表面に傷を付ける、スリップが著しい場合には加工不能となるなどの恐れがある。
【0067】
本発明の潤滑油組成物は、アルミニウムおよびアルミニウム合金の塑性加工に用いるものであるが、その他鉄鋼、ステンレス鋼、特殊鋼、銅などの各種金属およびこれら金属の合金の塑性加工にも用いることができる。
【0068】
また、本発明の潤滑油は主として冷間圧延に用いた場合に優れた効果を発揮するものであるが、絞り、しごき、引き抜き、プレス等にも用いられる。さらに、塑性加工以外の切削、研削加工等にも用いることができる。
【0069】
本発明の潤滑油は、特に過酷な条件下でのアルミ圧延に有効である。ここでいう過酷な条件とは、例えばアルミの送り速度が300m/min以上という条件である。
【0070】
このような過酷な条件下におけるアルミ圧延において、油性剤を増量した圧延油を使用しても、板形成用圧延の場合はその効果が飽和してしまい十分でなく、箔形成用圧延の場合は効果は出るが箔の焼鈍時にステイン等の問題が生じてしまう。
【0071】
本発明の潤滑油は、上記した過酷な条件下におけるアルミ圧延に好適に用いられるだけでなく、よりマイルドな条件下で使用したとしても、ワークロールと圧延材間のスリップ、製品の光沢むら、コスト増加などの不都合が起こらないという効果を奏する。
【0072】
【実施例】
以下、実施例および比較例により本発明の内容をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
実施例1〜11および比較例1〜7
表1および表2の各例に示すような組成(数字は組成物全量基準で質量%)を有する各種潤滑油組成物を調製し、これら組成物について、下記に示す方法により各種試験を行った。
【0073】
なお、使用した基油、油性剤、含酸素化合物およびアルキルベンゼンは以下の通りである。
基油
40℃における動粘度2.7mm2 /sec、パラフィン32容量%、ナフテン68容量%、芳香族0容量%
【0074】
油性剤
1:アジピン酸ジメチル
2:アジピン酸ジイソブチル
3:アジピン酸ジオクチル
4:ラウリルアルコール
5:ステアリン酸ブチル
6:オレイン酸
7:マロン酸ジメチル
8:セバシン酸ジデシル
【0075】
その他の成分
1:2−メチル−2,4−ペンタンジオール
2:ドデシルベンゼン
【0076】
限界圧下率試験
材料:JIS A−1050、厚さ0.4mm、幅100mm
圧延速度:400m/min
各実施例、比較例の潤滑油組成物を用い、材料を二本のワークロールの間を通して圧下率50%で圧延した(圧下率=100×(材料の初期厚み−圧延された材料の残厚み)/材料の初期厚み)。その結果、焼き付きやヘリンボーンが発生していなかった場合は、同じ油組成物、同じワークロールを用い、圧下率を上げて新たな材料を圧延した。これを焼き付きやヘリンボーンが生じるまで繰り返し、発生した時の圧下率を限界圧下率とした。
【0077】
スリップ試験
材料:JIS A−5052、厚さ0.8mm、幅75mm
ワークロール:径51mm、表面粗さRa=0.3μm
圧延速度:300m/min、圧下率:18%
各実施例、比較例の潤滑油組成物を用いて、上記条件により材料を圧延した。その時の材料の先進率(100×(出側板速度−ワークロール周速)/ ワークロール周速)を求め、その値が0%より大きければ○、0%〜−3%なら△、−3%未満を×とした。
【0078】
光沢むら測定
スリップ試験において圧延した板の表面を、幅方向に等間隔で5点光沢値を測定した。光沢値の測定はスガ式カラーコンピュータを用い、圧延方向に対して直角の方向に入射角60°で光をあてた時の反射光から求めた。5点の光沢値の標準偏差を求め、標準偏差が8未満は○、8以上15未満は△、15以上は×とした。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
【発明の効果】
本発明のアルミニウム塑性加工用潤滑油組成物は、特定のジエステルを含有するため、高速度・高加工率での塑性加工に耐え得り、かつ製品の品質低下を抑え、油のコストの上昇も伴わないという優れた潤滑組成物である。
【0082】
本発明の潤滑油組成物は特に、近年生産性向上のために採用されている高い送り速度・高圧下率などの厳しい潤滑状態の条件下でのアルミニウム圧延用油として有用である。また、本発明に係るジエステルは従来の油性剤のように含有量を増やす必要がないため、低送り速度・低圧下率というマイルドな潤滑状態の条件下でのアルミニウム圧延用油の油性剤としても適している。
Claims (1)
- 炭素数4〜8の二塩基酸と炭素数1〜8の一価アルコールとのジエステルを組成物全量基準で0.1〜15質量%含有するアルミニウムの冷間圧延塑性加工用潤滑油組成物。
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