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JP4185404B2 - 不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒、その製造方法、および不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸の製造方法 - Google Patents

不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒、その製造方法、および不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸の製造方法 Download PDF

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  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒、その製造方法および不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸の製造方法に関する。詳しくは、本発明はプロピレン、イソブチレン、t−ブタノールおよびメチル−t−ブチルエーテルから選ばれる少なくとも一種の化合物を気相酸化して対応する不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸を高収率かつ長期安定して製造するための改良された触媒、この触媒の製造方法、およびこの触媒を用いてプロピレン、イソブチレン、t−ブタノールおよびメチル−t−ブチルエーテルから選ばれる少なくとも一種の化合物を気相酸化して対応する不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
プロピレン、イソブチレン、t−ブタノールまたはメチル−t−ブチルエーテルの気相接触酸化反応により対応する不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸を効率よく製造するために種々の改良触媒が提案されている。提案されている触媒は大部分がモリブデン、ビスマスおよび鉄を主成分とするものである。
【0003】
しかし、これら触媒は、不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸の収率および寿命の点で依然として改良されるべき問題を含んでいる。触媒中のモリブデンは飛散しやすく、そのことが不可逆的な触媒活性劣化を引き起こす。上記酸化反応は非常な発熱反応であり、触媒層、特にホットスポットと呼ばれる局所的異常高温帯ではモリブデンが著しく飛散する。特に、高生産性を目的とした高負荷運転においては、ホットスポット部での蓄熱が当然より大きくなるので、触媒を高温で使用する期間が長くなる。これらのことを考え合わせると、高活性で長期にわたって安定な性能を示す触媒が要望される。また、この種の触媒は一般に造粒法、押出成型法などによる成型触媒として調製されるが、種々の触媒物性値(細孔容積、細孔径分布、比表面積)が再現性よく調製されることが求められ、さらには触媒充填時などの衝撃に耐えられ、触媒を長期の反応に供した際に剥離した触媒粉による反応管閉塞および反応圧の上昇を惹起しないという機械的強度(耐摩耗度)も要求されている。
【0004】
不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒の製造については多くの方法が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。また、反応に使用して性能の劣化した複合酸化物触媒を反応に未使用の複合酸化物触媒と組み合わせて使用する方法も提案されている(特許文献5参照)。
【特許文献1】
特開平8−24652号公報
【特許文献2】
特開平5−253480号公報
【特許文献3】
特開平9−10587号公報
【特許文献4】
特開2002−273228号公報
【特許文献5】
特開平9−12489号公報
【0005】
しかし、これら触媒でもなお工業的に十分な性能を有しているとはいえず、工業的見地から、高生産性を目的とした高負荷運転においても、長期にわたって安定した運転を可能ならしめる機械的に優れた不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒の開発が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的の一つは、プロピレン、イソブチレン、t−ブタノールおよびメチル−t−ブチルエーテルから選ばれる少なくとも一種の化合物の気相酸化により対応する不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸を高収率で製造するための不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒、ならびにその製造方法を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、触媒寿命が長く、長期にわたって安定した運転を可能とする、機械的強度に優れた不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒、ならびにその製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、高生産性を目的とした高負荷運転においても、長期にわたって安定した運転を可能とする、機械的強度に優れた不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒、ならびにその製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、上記触媒を用いて高収率かつ長期にわたり安定して不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸を製造する方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒として従来公知のモリブデン、ビスマスおよび鉄を必須成分とする触媒を製造する際に、原料化合物の一部を混合した後、乾燥、焼成して一次完成触媒を製造し、次いでこの一次完成触媒をそのまま固体状態で使用し、残りの原料化合物と混合した後、乾燥、焼成して完成触媒とすると、この触媒の物性値は再現性よく得られるとともに、この触媒は上記の反応において高い活性を示し、かつ安定性に優れていて、これを上記の反応における触媒として使用すると上記目的が達成できることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明は、
(1)プロピレン、イソブチレン、t−ブタノールおよびメチル−t−ブチルエーテルから選ばれる少なくとも一種の化合物を分子状酸素または分子状酸素含有ガスを用いて気相酸化して対応する不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸を製造するための、一般式(1):
MoaWbBicFedAeBfCgDhEiOx (1)
(ここで、Moはモリブデン、Wはタングステン、Biはビスマス、Feは鉄、Aはニッケルおよびコバルトから選ばれる少なくとも一種の元素、Bはアルカリ金属およびタリウムから選ばれる少なくとも一種の元素、Cはアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも一種の元素、Dはリン、テルル、アンチモン、スズ、鉛、ニオブ、マンガン、ヒ素および亜鉛から選ばれる少なくとも一種の元素、Eはケイ素、アルミニウムおよびチタンから選ばれる少なくとも一種の元素、およびOは酸素をそれぞれ表し、a、b、c、d、e、f、g、h、iおよびxはそれぞれMo、W、Bi、Fe、A、B、C、D、EおよびOの原子比を表し、aが12のとき、bは0〜10、cは0.1〜10、dは0.1〜20、eは2〜20、fは0.001〜10、gは0〜10、hは0〜4、iは0〜30であり、xはそれぞれの元素の酸化状態によって定まる数値である)
で表される触媒であって、完成触媒の構成成分元素の全ての元素を含む原料化合物の一部を混合した後、乾燥、焼成して一次完成触媒を製造し、次いで該一次完成触媒と200℃以上の熱履歴を経ていない残りの原料化合物とを混合した後、乾燥、焼成して得られたものであり、一次完成触媒が完成触媒の全質量に対し1〜30%の割合で含有されていることを特徴とする不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒、
(2)300〜600℃(ただし、600℃を除く。)で焼成して一次完成触媒を製造する上記(1)の不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒、
(3)プロピレン、イソブチレン、t−ブタノールおよびメチル−t−ブチルエーテルから選ばれる少なくとも一種の化合物を分子状酸素または分子状酸素含有ガスを用いて気相酸化して対応する不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸を製造するにあたり、触媒として上記(1)または(2)の触媒を用いることを特徴とする不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸の製造方法、
である。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の触媒の組成は、モリブデン、ビスマスおよび鉄を必須成分とするものであって、不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸の製造に用いることが一般に知られているものであればいずれでもよい。本発明の触媒の代表例としては、前記一般式(1)で示される触媒を挙げることができる。
【0013】
本発明の特徴は、原料化合物の一部を混合した後、乾燥、焼成して酸化物(本発明のおいては、これを一次完成触媒と称する。)を製造し、次いでこの一次完成触媒と残りの原料化合物とを混合した後、乾燥、焼成して完成触媒を得る点にある。
【0014】
上記一次完成触媒を製造するための「原料化合物」とは、完成触媒の構成成分元素の少なくとも一つの元素を含む原料化合物、好ましくはモリブデン、ビスマスおよび鉄の各元素を含む原料化合物、より好ましくは完成触媒の構成成分元素の全ての元素をそれぞれ含む原料化合物の一部を意味する。そして、その「一部」は、一次完成触媒の完成触媒に対する割合が、完成触媒の質量基準で、1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%となるように適宜決定することができる。一次完成触媒の量が少なすぎると一次完成触媒の添加効果が得られず、一方多すぎると収率の低下が認められ、目的生成物の不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸の生成量が減少し、COおよびCOの生成量が増加する。
【0015】
上記一次完成触媒と混合する「残りの原料化合物」とは、一次完成触媒との組み合わせによって目的とする完成触媒を製造するに必要な原料化合物を意味し、その元素種および量は、目的とする完成触媒および一次完成触媒の組成および組成比に基づいて容易に決定することができる。
【0016】
原料化合物の種類には特に制限はなく、各元素を含む酸化物、あるいは焼成によって酸化物を生成する化合物であればいずれも使用することができる。焼成によって酸化物を生成する化合物としては、水酸化物、金属酸、硝酸塩、炭酸塩、アンモニウム塩、酢酸塩、ギ酸塩などを挙げることができる。また、2以上の元素を含む化合物も使用することができる。例えば、モリブデン含有化合物の具体例としては、三酸化モリブデン、パラモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸、リンモリブデン酸などを挙げることができる。
【0017】
上記一次完成触媒は、原料化合物の一部を、例えば、水性媒体中に適宜溶解し、加熱攪拌した後、蒸発乾固により乾燥した後、更に必要により粉砕し、成型した後、空気流通下に300〜600℃、好ましくは350〜550℃の温度で1〜10時間、好ましくは2〜8時間程度焼成することにより得られる。
【0018】
このようにして得られた一次完成触媒を残りの原料化合物と混合した後、乾燥、焼成することにより目的とする完成触媒を製造することができる。上記「残りの原料化合物」の形態については特に制限はなく、残りの原料化合物を水性媒体に溶解または懸濁させて得られる溶液またはスラリーの形態でも、あるいはこの溶液またはスラリーを蒸発乾固させて乾燥した形態のものでもよい。したがって、本発明の触媒は、例えば、次の2つの態様に従って製造することができる。
(1)残りの原料化合物を水性媒体に溶解またはスラリー化し、これを一次完成触媒、通常、適宜粉砕した粉体状の一次完成触媒と混合し、乾燥した後、空気流通下に300〜600℃、好ましくは350〜550℃の温度で1〜10時間、好ましくは2〜8時間程度焼成する。
(2)残りの原料化合物を水性媒体に溶解またはスラリー化し、次いでこれを200℃未満、好ましくは150〜180℃の温度で乾燥し、得られる乾燥物を一次完成触媒、通常、適宜粉砕して粉体状の一次完成触媒と混合し、次いで空気流通下に300〜600℃、好ましくは350〜550℃の温度で1〜10時間、好ましくは2〜8時間程度焼成する。
【0019】
なお、上記のように、本発明の触媒の製造にあたっては、残りの原料化合物が、その一次完成触媒との混合の前に、200℃以上の熱履歴を経ないようにするのが好ましい。200℃以上の温度に加熱すると、乾燥物中の原料化合物に由来する飛散成分が焼失し過ぎてしまうため好ましくない。
【0020】
本発明の触媒は、それ自体単独で使用しても、あるいはアルミナ、シリカ−アルミナ、シリコンカーバイド、チタニア、マグネシア、アルミニウムスポンジなどのような不活性担体に担持して使用してもよい。また、触媒の強度および粉化度を改善する効果があるとして一般によく知られているガラス繊維などのような無機繊維や各種ウィスカーを添加してもよい。さらに、触媒物性を再現性よく制御するために、硝酸アンモニウム、セルロース、デンプン、ポリビニルアルコール、ステアリン酸などのような、一般に粉体結合材として知られた添加物を使用することもできる。
【0021】
触媒の形状については特に制限はなく、ペレット状、球状、円柱状、リング状、タブレット状などのような任意の形状とすることができる。例えば球状の場合、その平均直径は、通常、1〜15mmであり、好ましくは3〜10mmである。
【0022】
本発明による不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸の製造は、触媒として本発明の触媒を用いる点を除けば、プロピレン、イソブチレン、t−ブタノールまたはメチル−t−ブチルエーテル、もしくはこれらの2種以上の混合物から気相酸化反応により対応する不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸を製造する際に一般に用いられている、あるいは用いることが知られている条件下に行うことができる。例えば、1〜10容量%、好ましくは2〜8容量%のプロピレン、イソブチレン、t−ブタノールおよびメチル−t−ブチルエーテルから選ばれる少なくとも一種の原料化合物、容量比でこの原料化合物の1〜10倍、好ましくは1〜8倍の範囲の分子状酸素、あるいはこのような分子状酸素と希釈剤としての不活性ガス、例えば窒素、炭酸ガス、水蒸気(特に、水蒸気の使用は副生物の生成を抑えるので目的生成物の収率向上のために有利である。)などからなる混合ガスを250〜450℃、好ましくは280〜420℃の温度範囲で、常圧〜1MPa、好ましくは常圧下に300〜5,000hr−1(STP)、好ましくは500〜4,000hr−1(STP)の空間速度で本発明の触媒と接触させればよい。
【0023】
本発明の方法によれば、プロピレンからアクロレインおよびアクリル酸が、イソブチレンからメタクロレインおよびメタクリル酸が、t−ブタノールからメタクロレインおよびメタクリル酸が、そしてメチル−t−ブチルエーテルからメタクロレインおよびメタクリル酸が、それぞれ、得られる。もちろん、反応条件を適当に変更することにより、不飽和アルデヒドと不飽和カルボン酸との生成割合を種々に変更することが可能であり、例えば、プロピレンが原料化合物であれば、アクロレインを優勢成分、アクリル酸を劣性成分とする混合物を生成物として得ることができる。
【0024】
【発明の効果】
本発明の触媒を用いることにより、プロピレン、イソブチレン、t−ブタノールおよびメチル−t−ブチルエーテルから得らればれる少なくとも一種の化合物の気相酸化により対応する不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸を高収率で製造することができる。
【0025】
また、本発明の触媒は、触媒寿命が長いので、長期にわたって安定した運転が可能である。
さらに、本発明の触媒は、高生産性を目的とした高負荷運転においても長期にわたって安定した運転を可能とする。
【0026】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。なお、転化率、選択率および単流収率は以下のとおり定義される。
転化率(%)={(反応した原料化合物のモル数)/(供給した原料化合物のモル数)}(×100)
合計選択率(%)={(生成した不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸の合計モル数)/(反応した原料化合物のモル数)}(×100)
合計単流収率(%)={(生成した不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸の合計モル数)/(供給した原料化合物のモル数)}(×100)
実施例1
(触媒の調製)
イオン交換水2リットルに、パラモリブデン酸アンモニウム1500gおよびパラタングステン酸アンモニウム382.4gを添加し、攪拌しながら溶解した。別に、イオン交換水1リットルに、硝酸コバルト1648.5g、硝酸第2鉄429.1gおよび硝酸セシウム69.0gを溶解した。また、イオン交換水300mlおよび濃硝酸50mlからなる硝酸水溶液に、硝酸ビスマス515.2gを溶解した。これら2つの水溶液を、上記別途調製した水溶液に摘下、混合し、次いで、20質量%濃度のシリカゾル212.7gを添加し、混合してスラリーを得た(スラリーA)。
これとは別に加熱したイオン交換水100mlに、パラモリブデン酸アンモニウム75gおよびパラタングステン酸アンモニウム19.1gを添加し、攪拌しながら溶解した。別に、イオン交換水50mlに、硝酸コバルト82.4g、硝酸第2鉄21.5gおよび硝酸セシウム3.5gを溶解した。また、イオン交換水15mlおよび濃硝酸2.5mlからなる硝酸水溶液に、硝酸ビスマス25.8gを溶解した。これら2つの水溶液を、上記別途調製した水溶液に摘下、混合し、次いで、20質量%濃度のシリカゾル10.6gを添加し、混合した。このようにして得られたスラリーを加熱攪拌し、蒸発乾固後、成型助剤として水を添加し、外径6mmおよび長さ6.6mmのペレットに成型し、乾燥し、空気流通下500℃で6時間焼成して一次完成触媒(触媒B)を得た。
得られた触媒Bを粉砕後、スラリーAに加え、混合した後、蒸発乾固し、粉砕した。これに成型助剤として水を添加し、外径6mmおよび長さ6.6mmのペレットに成型し、乾燥した後、空気流通下500℃で6時間焼成して触媒(1)を得た。この触媒(1)の元素組成は原子比で(酸素を除く、以下同じ。)次のとおりであった。
Mo1 22 Bi1 . 5 Fe1 . 5Co Cs0.5 Si1
(酸化反応)
触媒(1)1200mlを直径25mmの鋼鉄製反応器に充填した。この反応器にイソブチレン6容量%、酸素13容量%、水蒸気8容量%および窒素73容量%からなる組成の混合ガスを導入し、反応温度340℃、空間速度1500hr- 1 (STP)で酸化反応を行った。結果を表1に示す。
(触媒強度測定方法)
内径25mm、長さ5000mmのステンレス製反応管を鉛直方向に設置し、この反応管の下端を厚さ1mmのステンレス製受け板で塞いだ。約50gの触媒(1)を反応管の上端から反応管内に落下させた後、反応管下端のステンレス製受け板を外し、反応管から触媒を静かに抜き出した。抜き出した触媒を目開き5mmの篩で篩い、篩上に残った触媒の質量をはかり、以下の計算式で触媒強度を計算した。
触媒強度(質量%)={(篩上に残った触媒の質量)/(反応管上端から落下させた触媒の質量)}×100
実施例2
(触媒の調製)
実施例1で得られたスラリーAを150℃で加熱攪拌し、水の大部分を蒸発させ、ケーキ状乾燥物(乾燥物C)を得た。
これとは別に実施例1で得られた一次完成触媒Bを粉砕後、乾燥物Cに添加し、十分混合した後、成型助剤として水を添加し、外径6mmおよび長さ6.6mmのペレットに成型し、乾燥した後、空気流通下500℃で6時間焼成して触媒(2)を得た。この触媒(2)の元素組成は原子比で次のとおりであった。
Mo1 22 Bi1 . 5 Fe1 . 5Co8 Cs0 . 5 Si1
(酸化反応)
実施例1において、触媒(1)の代わりに触媒(2)を使用した以外は実施例1と同様の反応条件で酸化反応を行った。結果を表1に示す。
(触媒強度測定方法)
触媒(2)について、実施例1と同様の測定条件で触媒強度測定を行った。結果を表1に示す。
実施例3
(触媒の調製)
実施例2と同様にして乾燥物Cを得た。
これとは別に、加熱したイオン交換水100mlに、パラモリブデン酸アンモニウム75gおよびパラタングステン酸アンモニウム9.6gを添加し、攪拌しながら溶解した。別に、イオン交換水50mlに、硝酸コバルト61.8g、硝酸ニッケル10.3g、硝酸第2鉄21.5gおよび硝酸セシウム4.1gを溶解した。またイオン交換水15mlおよび濃硝酸2.5mlからなる硝酸水溶液に硝酸ビスマス30.9gを溶解した。これら2つの水溶液を、上記別途調製した水溶液に摘下、混合し、次いで20質量%濃度のシリカゾル10.6gを添加し、混合してスラリーを得た。このようにして得られたスラリーを加熱攪拌し、蒸発乾固後、成型助剤として水を添加し、外形6mmおよび長さ6.6mmのペレットに成型し、乾燥した後、空気流通下500℃で6時間焼成して一次完成触媒(触媒D)を得た。触媒Dを粉砕後、乾燥物Cに加え、十分混合した後、成型助剤として水を添加し、外径6mmおよび長さ6.6mmのペレットに成型し、乾燥し、次いで空気流通下500℃で6時間焼成して触媒(3)を得た。この触媒(3)の元素組成は原子比で次のとおりであった。
Mo1 21 95 Bi1 . 51 Fe1 . 5 Co7 90Ni0 05Cs0 .50Si1 0
(酸化反応)
実施例1において、触媒(1)の代わりに触媒(3)を使用したこと以外は実施例1と同様の反応条件で酸化反応を行った。結果を表2に示す。
(触媒強度測定方法)
触媒(3)について、実施例1と同様の測定条件で触媒強度測定を行った。結果を表1に示す。
比較例1
(触媒の調製)
実施例2において、触媒Bを添加しなかったこと以外は実施例2と同様にして触媒(4)を調製した。
比較例2
(触媒の調製)
実施例2において、スラリーAを230℃で加熱攪拌し、水の大部分を蒸発させてケーキ状乾燥物(乾燥物C)を得た以外は実施例2と同様にして触媒(5)を調製した。
比較例3
(触媒の調製)
実施例2と同様にして乾燥物Cを得た。
これとは別に加熱したイオン交換水1リットルに、パラモリブデン酸アンモニウム750gおよびパラタングステン酸アンモニウム191.2gを添加し、攪拌しながら溶解した。別に、イオン交換水500mlに、硝酸コバルト824.3g、硝酸第2鉄214.6gおよび硝酸セシウム34.5gを溶解した。また、イオン交換水150mlおよび濃硝酸25mlからなる硝酸水溶液に、硝酸ビスマス257.6gを溶解した。これら2つの水溶液を、上記別途調製した水溶液に摘下、混合し、次いで、20質量%濃度のシリカゾル106.4gを添加し、混合した。このようにして得られたスラリーを加熱攪拌し、蒸発乾固後、成型助剤として水を添加し、外径6mmおよび長さ6.6mmのペレットに成型し、乾燥し、空気流通下500℃で6時間焼成して一次完成触媒(触媒)を得た。得られた触媒Eを粉砕後、乾燥物に加え、十分混合した後、成型助剤として水を添加し、外径6mmおよび長さ6.6mmのペレットに成型し、乾燥し、次いで空気流通下500℃で6時間焼成して触媒(6)を得た。この触媒(6)の元素組成は原子比で次のとおりであった。
Mo1 22 Bi1 . 5Fe1 . 5Co8Cs0 . 5Si1
(酸化反応)
実施例1において、触媒(1)の代わりに触媒(4)、触媒(5)および触媒(6)を用いたこと以外は実施例1と同様の反応条件で酸化反応を行った。結果を表1に示す。
実施例1、実施例2および実施例3と比較例1、比較例2および比較例3との比較により、本発明の触媒(1)、触媒(2)および触媒(3)は比較用の触媒(4)、触媒(5)および触媒(6)より触媒活性に優れていることがわかる。
(触媒強度測定方法)
触媒(4)、触媒(5)および触媒(6)について、実施例1と同様の測定条件で触媒強度測定を行った。結果を表1に示す。実施例1および実施例2と比較例1、比較例2および比較例3との比較により、本発明の触媒(1)、触媒(2)および触媒(3)は比較用の触媒(4)、触媒(5)および触媒(6)より触媒強度が優れていることがわかる。
実施例4
実施例1において、酸化反応を4000時間にわたり行った。4000時間後の結果を表1に示す。表1に示すように、4000時間の酸化反応の後においても、転化率の低下は小さく、また収率の低下もほとんどない。このことから、触媒(1)を使用することにより長期にわたり安定した酸化反応を継続できることがわかる。
実施例5
実施例2において、酸化反応を4000時間にわたり行った。4000時間後の結果を表1に示す。表1に示すように、4000時間の酸化反応の後においても、転化率の低下は小さく、また収率の低下もほとんどない。このことから、触媒(2)を使用することにより長期にわたり安定した酸化反応を継続できることがわかる。
実施例6
実施例3において、酸化反応を4000時間にわたり行った。4000時間後の結果を表1に示す。表1に示すように、4000時間の酸化反応の後においても、転化率の低下は小さく、また収率の低下もほとんどない。このことから、触媒(3)を使用することにより長期にわたり安定した酸化反応を継続できることがわかる。
比較例4
比較例1において、酸化反応を4000時間にわたり行った。4000時間後の結果を表1に示す。
比較例5
比較例において、酸化反応を4000時間にわたり行った。4000時間後の結果を表1に示す。
実施例4、実施例5および実施例6と比較例3および比較例4との比較から、比較用の触媒(4)および触媒(6)は触媒寿命に問題があって、これを長時間の反応に使用した場合には転化率および収率の低下が大きいことがわかる。
【表1】
実施例7
実施例2において、反応温度を360℃に、また空間速度を2500hr- 1 (STP)に変更したこと以外は実施例と同様に酸化反応を行った。結果を表2に示す。
比較例6
実施例7において、触媒(2)に代えて触媒(4)を用いたこと以外は実施例と同様に酸化反応を行った。結果を表2に示す。
実施例7と比較例6との比較から、本発明の触媒(2)は高空間速度条件下でも、比較用の触媒(4)に比べて活性および収率に優れていることがわかる。
実施例8
実施例2において、原料ガス中のイソブチレンおよび窒素の含量をそれぞれ7.5容量%および71.5容量%に変更したこと以外は実施例2と同様に酸化反応を行った。結果を表2に示す。
比較例7
実施例8において、触媒(2)に代えて触媒(4)を用いたこと以外は実施例8と同様の反応条件で酸化反応を行った。結果を表2に示す。
実施例8と比較例7との比較から、本発明の触媒(2)は高イソブチレンガス濃度条件下でも、比較用の触媒(4)に比べて活性および収率に優れていることがわかる。
【表2】
実施例9
実施例2において、酸化反応に用いる原料ガスとしてメチル−t−ブチルエーテル(MTBE)5容量%、酸素13容量%、水蒸気8容量%および窒素74容量%からなる混合ガスを使用し、かつ反応温度を360℃に変更し、また空間速度を1100hr- 1(STP)に変更したこと以外は実施例2と同様の反応条件で酸化反応を行った。結果を表3に示す。
比較例8
実施例9において、触媒(2)に代えて触媒(4)を用いたこと以外は実施例9と同様の反応条件で酸化反応を行った。結果を表3に示す。
【表3】
実施例10
(触媒調製)
加熱したイオン交換水2リットルにパラモリブデン酸アンモニウム1500gおよびパラタングステン酸アンモニウム286.8gを添加し、攪拌しながら溶解した。別に、イオン交換水1リットルに、硝酸コバルト1030.3g、硝酸第2鉄343.3gおよび硝酸カリウム4.3gを溶解した。またイオン交換水300mlおよび濃硝酸50mlからなる硝酸水溶液に、硝酸ビスマス412.1gを溶解した。これら2つの水溶液を上記別途調製した水溶液に摘下、混合し、次いで20質量%濃度のシリカゾル276.5gを添加し、混合してスラリーを得た。このようにして得られたスラリーを150℃で加熱攪拌し、水の大部分を蒸発させ、ケーキ状乾燥物(乾燥物G)を得た。
これとは別に加熱したイオン交換水100mlに、パラモリブデン酸アンモニウム75gおよびパラタングステン酸アンモニウム14.3gを添加し、攪拌しながら溶解した。別に、イオン交換水50mlに、硝酸コバルト51.5g、硝酸第2鉄17.2gおよび硝酸カリウム0.21gを溶解した。また、イオン交換水15mlおよび濃硝酸2.5mlからなる硝酸水溶液に、硝酸ビスマス20.6gを溶解した。これら2つの水溶液を、上記別途調製した水溶液に摘下、混合し、次いで、20質量%濃度のシリカゾル13.8gを添加し、混合した。このようにして得られたスラリーを加熱攪拌し、蒸発乾固後、成型助剤として水を添加し、外径6mmおよび長さ6.6mmのペレットに成型し、乾燥し、空気流通下500℃で6時間焼成して一次完成触媒(触媒H)を得た。
得られた触媒を粉砕後、乾燥物に加え、十分混合した後、成型助剤として水を添加し、外径6mmおよび長さ6.6mmのペレットに成型し、乾燥し、次いで空気流通下450℃で6時間焼成して触媒(7)を得た。この触媒(7)の元素組成は原子比で次のとおりであった。
Mo1 21 . 5Bi1 . 2Fe1 . 2Co50 . 0 6Si1 .3
(酸化反応)
触媒(7)1200mlを直径25mmの鋼鉄製反応器に充填した。この反応器にプロピレン6容量%、酸素12容量%、水蒸気10容量%および窒素72容量%からなる組成の混合ガスを導入し、反応温度310℃および空間速度2000hr- 1(STP)で酸化反応を行った。結果を表4に示す。
(触媒強度測定方法)
触媒(7)について、実施例1と同様の測定条件で触媒強度測定を行った。結果を表4に示す。
比較例9
(触媒の調製)
実施例10において、触媒を添加しなかったこと以外は実施例10と同様にして触媒(8)を調製した。
(酸化反応)
実施例10において、触媒(7)の代わりに触媒(8)を用いたこと以外は実施例10と同様の反応条件で酸化反応を行った。結果を表4に示す。
実施例10と比較例9との比較により、本発明の触媒(7)は比較用の触媒(8)より触媒活性に優れていることがわかる。
(触媒強度測定方法)
触媒(8)について、実施例1と同様の測定条件で触媒強度測定を行った。結果を表4に示す。実施例10と比較例9との比較により、本発明の触媒(7)は比較用の触媒(8)より触媒強度が優れていることがわかる。
実施例11
実施例10において、酸化反応を4000時間にわたり行った。4000時間後の結果を表4に示す。
表4に示すように、4000時間の酸化反応の後において、転化率の低下は小さく、また収率の低下もほとんどない。このことから、触媒(7)を使用することにより、長期にわたり安定した酸化反応を継続できることがわかる。
比較例10
比較例9において、酸化反応を4000時間にわたり行った。4000時間後の結果を表4に示す。
実施例11と比較例10との比較から、比較用の触媒()は触媒寿命に問題があって、これを長時間の反応に使用した場合には転化率および収率の低下が大きいことがわかる。
【表4】
Figure 0004185404
Figure 0004185404

Claims (3)

  1. プロピレン、イソブチレン、t−ブタノールおよびメチル−t−ブチルエーテルから選ばれる少なくとも一種の化合物を分子状酸素または分子状酸素含有ガスを用いて気相酸化して対応する不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸を製造するための、一般式(1):
    MoaWbBicFedAeBfCgDhEiOx (1)
    (ここで、Moはモリブデン、Wはタングステン、Biはビスマス、Feは鉄、Aはニッケルおよびコバルトから選ばれる少なくとも一種の元素、Bはアルカリ金属およびタリウムから選ばれる少なくとも一種の元素、Cはアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも一種の元素、Dはリン、テルル、アンチモン、スズ、鉛、ニオブ、マンガン、ヒ素および亜鉛から選ばれる少なくとも一種の元素、Eはケイ素、アルミニウムおよびチタンから選ばれる少なくとも一種の元素、およびOは酸素をそれぞれ表し、a、b、c、d、e、f、g、h、iおよびxはそれぞれMo、W、Bi、Fe、A、B、C、D、EおよびOの原子比を表し、aが12のとき、bは0〜10、cは0.1〜10、dは0.1〜20、eは2〜20、fは0.001〜10、gは0〜10、hは0〜4、iは0〜30であり、xはそれぞれの元素の酸化状態によって定まる数値である)
    で表される触媒であって、完成触媒の構成成分元素の全ての元素を含む原料化合物の一部を混合した後、乾燥、焼成して一次完成触媒を製造し、次いで該一次完成触媒と200℃以上の熱履歴を経ていない残りの原料化合物とを混合した後、乾燥、焼成して得られたものであり、一次完成触媒が完成触媒の全質量に対し1〜30%の割合で含有されていることを特徴とする不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒。
  2. 300〜600℃(ただし、600℃を除く。)で焼成して一次完成触媒を製造する請求項1記載の不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒。
  3. プロピレン、イソブチレン、t−ブタノールおよびメチル−t−ブチルエーテルから選ばれる少なくとも一種の化合物を分子状酸素または分子状酸素含有ガスを用いて気相酸化して対応する不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸を製造するにあたり、触媒として請求項1または2の触媒を用いることを特徴とする不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸の製造方法。
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