JP4081914B2 - 改質ふっ素樹脂、改質ふっ素樹脂組成物及び改質ふっ素樹脂成形体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、摺動部品、シール部品、パッキン、ガスケット、半導体製造用容器・配管、厨房関連製品等に適用できる改質ふっ素樹脂、改質ふっ素樹脂組成物及び改質ふっ素樹脂成形体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリテトラフルオロエチレン(以下「PTFE」という)を代表とするふっ素樹脂は、低摩擦性、耐熱性、非粘着性、電気特性、耐薬品性、クリーン性等に優れており、産業用、民生用の各種用途に広く利用されているが、ふっ素樹脂は機械的耐性、特に耐摩耗性や耐クリープ性に劣ることが指摘されている。
【0003】
高分子材料の機械的耐性を改善する方法として、電離性放射線の照射により架橋する方法が一般に知られているが、PTFEやテトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体(以下「PFA」という)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合体(以下「PFEP」という)のようなパーフロロポリマーは、電離性放射線の照射により分子鎖が切断して低分子量化する易崩壊型ふっ素樹脂であり、照射架橋により機械的耐性を改善することはできない。このため、ふっ素樹脂にガラス繊維や炭素繊維等を補強材として充填することにより機械的耐性を改善することがなされてきているが、ふっ素樹脂は元来化学的に不活性であり、充填材との結合性はないため、ふっ素樹脂と充填材の界面に空隙が形成され易く、ガスや液体を浸透させるという新たな問題の発生を招くことになる。更に、ガラス繊維はふっ酸、高濃度アルカリに溶出し、炭素繊維は電気特性を著しく損ない、ふっ素樹脂本来の特性を著しく低下させることになる。
【0004】
一方、ふっ素樹脂の中でもエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(以下「ETFE」という)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(以下「ECTFE」という)、ポリふっ化ビニリデン(以下「PVDF」という)のようなふっ素樹脂は、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)等の架橋助剤の存在下で電離性放射線を照射することにより架橋できることが知られており、電線の絶縁被覆、発泡製品等の一部で実用に供されている。しかし、熱溶融時に架橋助剤が揮散した添加量が相当減量し、電離性放射線の照射後の製品の物性にバラツキが発生し品質が安定しない、揮散した架橋助剤により作業現場が汚染され安全性に欠ける、成形温度下で架橋助剤とふっ素樹脂が反応して熱架橋現象が生じ成形性が低下する、といった問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
かかる状況下において、近年、PTFEに酸素不存在の不活性ガス雰囲気下で、且つPTFEの融点以上に加熱された状態で電離性放射線を照射すると、ゴム弾性の付与等の改質がなされることが提案され(特開平6−116423号公報)、また、摺動部材への適用が提案されており(特開平9−278907号公報)、ふっ素樹脂の機械的耐性を向上させる試みがなされてきているが、ふっ素樹脂のより広範囲な用途への適用に対しては更なる改善の余地があることが本発明者等の検討により明らかになった。
【0006】
従って、本発明の目的は、優れた機械的耐性を有し、しかも、広い分野において利用できる改質ふっ素樹脂、改質ふっ素樹脂組成物及び改質ふっ素樹脂成形体を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決すべく、本発明によれば、結晶融点が比較的近いふっ素樹脂を2種類以上共存させ、酸素濃度100torr以下の不活性ガス雰囲気下で、且つ2種類以上のふっ素樹脂のうち結晶融点が最も高いふっ素樹脂の結晶融点以上の温度下で、電離性放射線を照射線量10kGy〜10MGyの範囲で照射してなる改質ふっ素樹脂が提供される。
【0008】
本発明において使用される改質用のふっ素樹脂としては、PTFE、PFA、PFEP、ETFE、ECTFE、PVDF等をあげることができる。PTFEの中には、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ヘキサフルオロプロピレン、(パーフルオロアルキル)エチレン、あるいはクロロトリフルオロエチレン等の共重合性モノマーに基づく重合単位を1モル%以下含有するものも含まれる。また、PFA、PFEP、ETFE、ECTFEの場合、その分子構造の中に少量の第3成分を含むことは有り得る。
【0009】
本発明においては、上記のふっ素樹脂のうち2種類以上を共存させ、最も結晶融点の高いふっ素樹脂の結晶融点以上の温度下で電離性放射線を照射することにより共架橋的化学結合現象が発現され、機械的耐性が付与されることになる。いずれか1種のふっ素樹脂の結晶融点に達しない温度下での照射では、照射温度を上回る結晶融点のふっ素樹脂は選択的に電離性放射線による崩壊が進行して他のふっ素樹脂との共架橋的化学結合は生じない。ここで、重要なのは照射温度がふっ素樹脂の結晶融点を大きく上回ると、当該ふっ素樹脂は共架橋的化学結合現象よりもむしろ熱劣化挙動が主体的となることであり、結晶融点が大きく異なるふっ素樹脂を共存させると、結晶融点が低い方のふっ素樹脂は熱劣化により特性が大きく低下してしまうことである。このため、本発明においては、結晶融点が比較的近いふっ素樹脂を複数種共存させることにしている。
【0010】
結晶融点が比較的近いふっ素樹脂の好適な組合せとしては、PTFEとPFA、PFAとPFEP、及びPFEPとETFE、ECTFE、PVDFから選ばれる少なくとも1種との組合せといったものをあげることができる。例えば、PTFEとPFAを共存させる場合は、PTFEの通常の結晶融点は327℃、PFAの通常の結晶融点は310℃であり、PTFEの結晶融点である327℃以上に加熱して、PTFEとPFAが共に溶融状態にあるところで電離性放射線を照射することにより、従来放射線崩壊型とされていたPTFEとPFAが共存下で共架橋的化学結合現象が発現され、機械的耐性が付与されることになる。PFAの結晶融点以上であってもPTFEの結晶融点に達しない温度下では、PTFEは選択的に電離性放射線による崩壊が進行してPFAとの共架橋的化学結合は生じない。PTFEとPFAを使用する場合、本発明の課題達成のための温度条件は330〜380℃、好適には335〜350℃であり、380℃を越えると共架橋的化学結合現象よりもむしろ熱劣化挙動が主体的となり好ましくない。
【0011】
PFAとPFEPを共存させる場合は、PFAの通常の結晶融点は前述した通り310℃、PFEPの結晶融点は275℃であり、310℃〜360℃、好ましくは315℃〜330℃の温度で電離性放射線を照射することが望ましい。
【0012】
PFEPとETFE、ECTFE、PVDFから選ばれる少なくとも1種を共存させる場合は、PFEPの通常の結晶融点は前述した通り275℃、ETFEの通常の結晶融点は270℃、ECTFEの通常の結晶融点は245℃、PVDFの通常の結晶融点は180℃であり、280℃〜330℃、好ましくは285℃〜310℃の温度下で電離性放射線を照射することが望ましい。
【0013】
本発明において、例えば、PTFEとPFAの2種のふっ素樹脂を前者/後者の重量比で99/1〜1/99の範囲で共存させる手段としては、平均粒径が2mm以下の粉体同士を混合した混合粉体として、このような混合粉体をPFAの結晶融点以上で加熱処理した混合溶融体として、水性ディスパージョン同士で混合後凝集して乾燥した混合粒体として、このような水性ディスパージョン同士の混合後凝集して乾燥した混合粒体に石油ナフサを約20重量%添加し、40〜80℃で塑性加工した複合体として、このような複合体をPFAの結晶融点以上に加熱処理した複合成形体として、それぞれ共存させることができる。
【0014】
更に、本発明においては、PTFE燒結粉体をコアにして外殻にPFA粉体で覆ったコア−シェル型粉体、あるいは、PFA溶融粉体をコアにして外殻をPTFEで覆った粉体構造体といった形でPTFEとPFAを共存させることも可能である。
【0015】
本発明の改質ふっ素樹脂を得るためには、上記の温度下で且つ酸素濃度100torr以下、好ましくは10-6torr〜100torr、更に好ましくは10-6torr〜40torrの不活性ガス雰囲気下で、電離性放射線を照射線量1kGy〜10MGyの範囲で照射する必要がある。酸素濃度が100torrを越えると、分解が先行して架橋反応が大幅に阻害されるため各種特性の低下を招く。本発明において、電離性放射線としては、γ線、電子線、X線、中性子線、あるいは高エネルギーイオン等が使用され、照射線量が1kGy未満では十分な改質効果は達成されず、10MGyを越えると機械的耐性の低下を招くことになる。
【0016】
本発明においては、上記のようにして得た改質ふっ素樹脂と未改質高分子材料を前者/後者重量比で99/1から1/99の割合で混合して使用することも可能である。改質ふっ素樹脂を粉砕等の手段で2mm以下の微粒子状に加工後、未改質高分子材料に配合し、成形することにより改質ふっ素樹脂複合成形品を得ることができる。具体的には、粉末焼成法、焼成品の機械加工品(フィルム、シート、異形品等)、ラム押出成形品、PTFEペースト品(含む焼成品)、PTFE水性デスパージョン含浸製品(硝子繊維、炭素繊維、有機耐熱繊維、金属多孔体、Niメッキ複合製品等)があげられる。未改質高分子材料としては、改質ふっ素樹脂の成形温度に耐えられるもの、すなわち、短時間的には400℃〜500℃の成形温度に耐えられる耐熱高分子材料であればよく、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、ふっ化ビニリデン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリふっ化ビニリデン、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、ポリクロロフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロジイオキサソール共重合体、ポリふっ化ビニル、ふっ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロペン系共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン系共重合体、ふっ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系共重合体、フルオロホスファゼン系ゴム、ポリイミド、芳香族ポリアミド、ポリアリーレンスルフィド及び芳香族ポリエステルといったものをあげることができ、これらは単独で使用しても2種以上併用してもよい。
【0017】
また、本発明の参考として、ふっ素樹脂とふっ素ゴムとを共存させ、酸素濃度100torr以下の不活性ガス雰囲気下で、且つふっ素樹脂の結晶融点以上の温度下で、電離性放射線を照射線量10kGy〜10MGyの範囲で照射することにより、改質ふっ素樹脂とふっ素ゴムとのブレンド系を得ることも可能である。ふっ素ゴムとしては、ふっ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロペン系共重合体(以下「VDF/HFP」という)、プロピレン−テトラフルオロエチレン系共重合体(以下「P−TFE」という)、ふっ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系共重合体(以下「VDF−PFMVE−TFE」という)、フルオロホスファゼン系ゴム等をあげることができる。
【0018】
更に、本発明の参考として、ふっ素樹脂と当該ふっ素樹脂を改質するときの電離性放射線照射条件下で機械的耐性を保持可能な耐熱高分子材料を共存させ、酸素濃度100torr以下の不活性ガス雰囲気下で、ふっ素樹脂の結晶融点以上の温度下で、電離性放射線を照射線量10kGy〜10MGyの範囲で照射することにより、改質ふっ素樹脂と高分子材料とのブレンド系を得ることができる。耐熱高分子材料としては、ポリイミド、芳香族ポリアミド、ポリアリレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケロン及び芳香族ポリエステル等をあげることができる。
【0019】
本発明において、改質ふっ素樹脂からなる成形品を得る方法としては、結晶融点が比較的近いふっ素樹脂が2種類以上共存する混合物を所定形状に成形してから電離性放射線を照射する方法、結晶融点が比較的近いふっ素樹脂が2種類以上共存する混合物に、電離性放射線を照射し、照射後の混合物を粉砕した粉体を所定形状に成形する方法、結晶融点が比較的近いふっ素樹脂が2種類以上共存する混合物に、電離性放射線を照射し、照射後の混合物を粉砕した粉体と未改質の高分子材料を含有する改質ふっ素樹脂組成物を所定形状に成形する方法、ふっ素樹脂とふっ素ゴムが共存する混合物を所定形状に成形し、当該成形体に電離性放射線を照射する方法、ふっ素樹脂と当該ふっ素樹脂を改質するときの電離性放射線照射条件下で機械的特性を保持可能な耐熱高分子材料が共存する混合物を所定形状に成形し、当該成形体に電離性放射線を照射する方法等があげられる。
【0020】
本発明により得られる改質ふっ素樹脂、例えばPFAとPTFEを共存させて本発明の条件下で電離性放射線を照射することにより得られる改質ふっ素樹脂は、その粉砕微粒子をポリエチレン、ポリカーボネート、アクリル樹脂、EPDM、POM、CTFEふっ素樹脂塗料等に添加してフィルム、シート、塗装品、成形品等の製品形態で撥水、着氷防止、潤滑性、非粘着性等の機能を活かした用途に提供される。また、Niメッキに配合して潤滑性、非粘着性の金属被膜を形成でき、各種機械器具に応用できる。特殊な例では、リチウム−イオン二次電池集電極結着剤に配合して環境劣化対策に効果的である。ポリエチレン/ポリプロピレン母材に配合してセパレート材の制御安定性に寄与できる。P−TFE系ゴムに配合して燐酸系燃料電池のパッキンの機械的熱的安定性を改善できる。
【0021】
改質ふっ素樹脂成形品の表面改質、例えば、改質ふっ素樹脂の耐放射線性を活かしたプラズマ利用、あるいは反応活性を活かしてのUV光線利用により、アクリル酸、スチレンスルホン酸ナトリウム、N,N−ジメチルアクリル酸アミド、メタクリル酸グリシジツエステル等による表面処理によって、改質ふっ素樹脂来の特性を保持したままで親水性、親油性、非帯電性、接着性、水中下耐摩耗性等を付与できる。PTFEとPFAのブレンド系の改質ふっ素樹脂にパーフルオロカルボン酸あるいはフルオロサルホン酸基等のイオン交換性機能を有するモノマーをグラフトさせることで、イオン交換性改質ふっ素樹脂を得ることができる。
【0022】
PTFEとポリイミドを共存させて本発明の条件下で電離性放射線を照射することにより得られる改質ふっ素樹脂を高濃度ポリイミドに配合した組成物は、フィルムの形態で低誘電率、耐熱水性絶縁材料として先端機器分野で利用され得る。
【0023】
ふっ素樹脂と特殊ふっ素樹脂(含ふっ素アクリル樹脂、含ふっ素エポキシ樹脂、含ふっ素ポリイミド樹脂)とを共存させて本発明の条件下で電離性放射線を照射することにより、グラフト反応によるポリマーアロイを得ることが可能である。このポリマーアロイは、潤滑性、撥水性等の機能を付与できる。勿論、特殊ふっ素樹脂に改質ふっ素樹脂粉末を配合してもよい。
【0024】
芳香族ポリエステル(PEEK)、PTFE及びPFAの3種を共存させて本発明の条件下で電離性放射線を照射した改質ポリマを高濃度PEEKに溶融配合して得られる改質ふっ素樹脂組成物からなる成形品は、PEEKの高温剛性特性を保持したままでふっ素樹脂の耐薬品性、耐熱水性が活かされ、12インチウェハー次世代LSI半導体製造装置部品への適用が可能である。
【0025】
PTFEとP−TFEを共存させて本発明の条件下で電離性放射線を照射して得られる改質ふっ素樹脂組成物の微粉砕品を、ポリオレフィン樹脂中に1重量%以下含まれるように添加すると、PTFEの潤滑機能とP−TFEゴムのチクソトロピックな特性との相乗効果により加工性の向上を図ることができる。
【0026】
PTFEとP−TFEの共凝集系ロール混練品(ひも状)をPFAチューブ内に充填し、Oリング状に末端溶接加工後に本発明の条件下で電離性放射線を照射し、照射後再加熱してOリング真空サイジング型で脱ガス処理を行うことにより、高寸法精度のOリング製品を得ることができる。このOリング製品は、半導体、高真空、耐熱、耐薬化学機器等で使用され得る。
【0027】
PFAとPTFEを共存させて本発明の条件下で電離性放射線を照射して得られる改質ふっ素樹脂の粉体をPFA粉体と混合した混合粉体は、ライニング製品として使用できる。基材と混合粉体との接着は、PTFE系プライマーと改質ふっ素樹脂の一成分であるPTFEとの作用により改善され、また、PFAと改質ふっ素樹脂の一成分であるPFAとが密着して耐液浸透、耐ガス浸透に効果的である。このライニング製品の適用により、顕著な潤滑性付与と1000倍以上の耐摩耗性付与が可能となる。
【0028】
PFAとPTFEを共存させて本発明の条件下で電離性放射線を照射して得られる改質ふっ素樹脂の粉体をポリエチレン粉体に配合した混合粉体は、非粘着性が要求される産業廃棄物等の回収用の大型容器(ポリエチレン回転成形製品)等へ適用できる。ポリエチレン回転成形製品は、製品外側、つまり初期肉厚部は従来通りポリエチレン単体とし、加工の最後の段階で改質ふっ素樹脂を投入して製品内側を成形することにより製造できる。
【0029】
PTFEディスパージョンに、PFAとPTFEを共存させて本発明の条件下で電離性放射線を照射して得られる改質ふっ素樹脂の粉体を配合した製品は、食品工業や化学プラントで多用されている非粘着搬送ベルトに適用できる。ガラス繊維不織布にPTFEディスパージョンを含浸させ、改質ふっ素樹脂粉体を配合したPTFEディスパージョンを塗布して表層を形成することにより、耐摩耗性及び非粘着性に優れた搬送ベルトを実現でき、メンテナンスコストを大幅に低減できる。また、改質ふっ素樹脂粉体を配合したPTFEディスパージョン(必要に応じTiO2 光活性触媒を添加)をドーム球場の屋根等に使用されているシートに塗装することにより、耐摩耗性、非粘着性A種膜製品を実現でき、耐久性を大幅に向上できる。
【0030】
PFAとPTFEを共存させて本発明の条件下で電離性放射線を照射して得られる改質ふっ素樹脂の粉体をふっ素ゴムに配合して得られる製品は、柔軟性のある動的シール部品として産業機械器具全般に適用可能である。特に、鉄からアルミニウム系軽合金への移行が加速化されている自動車分野においては、当該軽合金の摩耗を少なくするために柔らかい摺動部材が要求されており、本発明による製品はこの傾向に合致したものである。本発明の改質ふっ素樹脂は、動的粘弾性特性の常温付近のtanδ吸収値がPTFEに比べて著しく小さくなり、結晶転移吸収が大幅に低下する。この事実は、常温領域でのバネ特性の発現を意味しており、動的シール性(密封性)機能に効果的であり、油圧シリンダーシール、ショックアブソバー等において大きな効果を発揮する。
【0031】
真鍮系金属の表面を多孔構造にし、孔内にPTFEとPb系化合物の混合物を埋め込んだ摺動部材が自動車用部品で多用されているが、Pb系化合物が摺動時に摩損して大気中に放出され、環境汚染の一要因となっている。PTFEとPFAを共存させて本発明の条件下で電離性放射線を照射して得られる改質ふっ素樹脂はPb化合物に代替可能である。当該改質ふっ素樹脂の粉砕微粒子を、PTFEデスパージョンに配合し、真鍮系多孔質構造体に埋め込み処理を行なうことによりPb化合物を使用しない摺動部材を実現できる。また、PTFEとPFAを共存させて本発明の条件下で電離性放射線を照射して得られる改質ふっ素樹脂の粉砕微粒子をPFAに配合して溶融押出成形フィルムを得、このフィルムと真鍮系多孔質構造体フィルムとを圧延ロールで一体複合化し、その後筒状に丸め加工して摺動部材を得ることができる。
【0032】
本発明によれば、従来はPTFEでしか実現できなかった大型ブロック(成形品)を、PFAとPTFEの双方を使用して実現可能である。例えば、PTFEとPFAを共存させて本発明の条件下で電離性放射線を照射して得られる改質ふっ素樹脂の粉砕粉体90重量部とPFA粉体10重量部の混合粉体を、PTFE成型用金型で予備成形し、PTFE用焼成炉で焼成することにより、PTFE(未改質)を用いた従来の大型ブロックの製造法と同様にして、大型ブロックを得ることができる。ここで、改質ふっ素樹脂成分90重量部は、PTFE(未改質)以上に高溶融粘度を示すので、流動する溶融成分(PFA)10重量部が界面に滲み込んで空隙を無くし、しかも界面の融着力を向上させ、機械的、化学的に安定した成形品を得ることができる。最終製品の機能は、改質ふっ素樹脂のPTFEとPFAの含有比に依存するが、高温時の弾性率を従来のPTFE成形品より大きく改善でき、半導体、液晶製造プロセスにおいて、利点が広範囲に発揮される。
【0033】
複写機、特にカラーコピー機においてはウレタンブレードの低摩擦化と定着ロールのトナー非粘着性の向上が要求されている。PTFEとPFAを共存させて本発明の条件下で電離性放射線を照射して得られる改質ふっ素樹脂を液状ポリウレタンに配合した組成物を成形して得たウレタンブレードは低摩擦化を図ることができる。PTFEとPFAを共存させて本発明の条件下で電離性放射線を照射して得られる改質ふっ素樹脂、またはPFAとP−TFEを共存させて本発明の条件下で電離性放射線を照射して得られる改質ふっ素樹脂をPFAに配合した組成物をチューブ成形し、複写機ロールに適用することにより、トナー非粘着性のロールを実現できる。PFAの非粘着性に加えて改質ふっ素樹脂のスナッピー性(ゴム弾性)により、一段と優れたトナー非粘着性が発揮される。トナー非粘着性の向上により、トナーの融解温度を低下させてコピーすることが可能となり、コピー温度の低下による省エネルギー化を図ることができる。
【0034】
本発明の改質ふっ素樹脂は、分子生物工学的な分野への応用が可能である。本発明の改質ふっ素樹脂の成形加工性、耐放射線性、非化学的汚染性は、医療機械器具の多種多用な形態、放射線性による滅菌処理、各種菌の培養等に効果的に対応できるものであり、滅菌処理やX線撮影が行われる生体内の人口骨を含め潤滑性機能を必要とする機能性人口部位への適用、DNA等の培養によるウイルス種の簡易な判定官能部品への適用が期待される。
【0035】
本発明によれば、耐摩耗性に優れた改質ふっ素樹脂繊維を得ることができ、網組加工品等への適用が可能である。PTFEに改質ふっ素樹脂を配合した成形原料を用い、従来の加工方法を採用することにより、また、PTFEとPFAを配合した成形原料を用い、従来方法で繊維を形成した後、本発明の条件下で電離性放射線を照射する方法を採用することにより、更には、PTFEファインパウダーにPFAを配合し、ペースト押出成形した紐に本発明の条件下で電離性放射線を照射し、高温(約370℃付近)加熱後延伸する方法を採用すること、更には、PTFEファインパウダーにPFA粉体を配合して得たペースト押出品を約340℃に加熱し、酸素の希薄な条件下で延伸しながら電離性放射線を照射する方法を採用することにより、改質ふっ素樹脂繊維を得ることができる。
【0036】
PTFE固体潤滑剤(ルブリカント)は、PTFEの切削屑、工場規格外製品(原料、加工品)エンドユーザ使用済み廃材等を回収して洗浄後、電離性放射線を照射して分解させ(照射前の1/100程度に低分子量化)、ジェットミルで粉砕して平均粒径10μm程度の微粉末を得、これをエンジニアリングプラスチック、ゴム、塗料、インク、グリース、潤滑油、RTVシリコーンガスケット、液状シーラント等に添加している。本発明の改質ふっ素樹脂粉末は、従来のPTFEを大幅に越える固体潤滑剤機能を発揮する。回収したPTFE廃材及びPFA廃材を粉砕した微粉末を混合し、本発明の条件下で電離性放射線を照射し、ジェットミル粉砕で再度微粉末化することにより固体潤滑剤を得ることができる。また、一旦、酸素存在下で電離性放射線を照射して低分子量化した後で本発明の条件下で電離性放射線を照射する方法も採用できる。
【0037】
【発明の実施の形態】
[実施例1]
PTFEモールディングパウダー(商品名:G−163、旭硝子社製)80gとPFA粉末(商品名:テフロンMP10、三井・デュポンフロロケミカル社製)20gをジューサー型ミキサーで混合し、混合物をPTFE予備成形金型で圧力30MPaで加圧成形して厚さ2mm、50mm角シートとし、これを360℃の温度で1時間焼成した。この焼成シートを340℃の加熱炉に入れて1時間経過後に真空ポンプで吸引し、酸素濃度が0.4torrになった段階で吸引を停止して窒素ガスを封入し、電子線を20kGy/回の照射線量で5回照射して(合計照射線量100kGy)改質シートを得、供試試料とした。
【0038】
[実施例2]
PTFEモールディングパウダー(商品名:G−163、旭硝子社製)80gとPFA粉末(商品名:テフロンMP10、三井・デュポンフロロケミカル社製)20gをジューサー型ミキサーで混合し、混合物をSUSトレーに2mm厚さに入れ、340℃の加熱炉に入れて1時間経過後に真空ポンプで吸引し、酸素濃度が0.4torrになった段階で吸引を停止して窒素ガスを封入し、電子線を20kGy/回の照射線量で5回照射して(合計照射線量100kGy)改質した。この改質試料を冷却後卓上型ジェットミルで粉砕して平均粒径が60μmの改質粉体を得、この改質粉体20gとPTFEモールディングパウダー(商品名:G−163、旭硝子社製)80gをジューサーミキサーで混合し、次いで厚さ2mm、外径50mmの円板シートを予備成形した後、350℃で1時間焼成し、供試試料とした。
【0039】
[実施例3]
PTFEモールディングパウダー(商品名:G−163、旭硝子社製)20gとPFA粉末(商品名:P−63P、旭硝子社製)80gをブラベンダーブラストミルで360℃で混練し、溶融物を厚み2mm、50mm角シート金型に移し、加圧冷却して厚さ2mmのシートを得た。このシートに対し、実施例1と同様の条件で電子線を照射して改質し、改質シートを340℃に再加熱し、2mmシート型でサイジング冷却して寸法精度を向上させ、供試試料とした。
【0040】
[実施例4]
PFA粉末(商品名:P−63P、旭硝子社製)80gと実施例2と同様にして得た平均粒径が60μmの改質粉体20gをブラベンダーブラストミルで混練し、厚み2mm、50mm角型を用い350℃の温度で圧縮成形してシートを得、供試試料とした。
【0041】
[実施例5]
PTFEモールディングパウダー(商品名:G−163、旭硝子社製)80gとPFA粉末(商品名:テフロンMP10、三井・デュポンフロロケミカル社製)20gの割合でジューサー型ミキサーで混合し、この混合物80gと実施例2で得た平均粒径が60μmの架橋粉体20gをジューサー型ミキサーで混合後、厚さ2mm、外径50mmの円板シートを予備成形した後、350℃で1時間焼成して供試試料とした。
【0042】
[比較例1]
PTFEモールディングパウダー(商品名:G−163、旭硝子社製)を360℃、圧力30MPaで1時間圧縮成形して厚さ2mm、50mm角シートを得、これを供試試料とした。
【0043】
[比較例2]
PFA粉末(商品名:P−63P、旭硝子社製)を360℃の温度で溶融し、この溶融物を厚み2mm、50mm角シート金型に移し、加圧冷却して厚さ2mmのシートとし、これを供試試料とした。
【0044】
[比較例3]
PTFEモールディングパウダー(商品名:G−163、旭硝子社製)80gとPFA粉末(商品名:テフロンMP10、三井・デュポンフロロケミカル社製)20gをジューサー型ミキサーで混合し、混合物を予備成形金型で圧力30MPaで加圧成形して2mm厚、50mm角シートを得、これを360℃で1時間焼成し、供試試料とした。
【0045】
実施例1〜5及び比較例1〜3の各供試試料について、摩擦係数及び摩耗係数を測定し、その結果を表1に示す。測定はスラスト型摩擦摩耗試験装置を使用し、SUS304製の円筒状リング(外径25.6mmφ、内径20.6mmφ、表面粗さ0.20μm)により供試試料に0.25MPaの圧力を加え、速度0.5m/sec の条件のもとに行った。
【0046】
摩耗係数K(m・sec /MPa/m/hr×10-6)は、W=KPVTの摩耗の関係式により求めた。なお、式中Wは摩耗深さ(m)、Pは荷重(MPa)、Vは速度(m/sec )、Tは時間(hr)であり、圧力と速度の乗数値PV値は、1.25kg・m/cm2 ・sec とし、摩耗深さは、測定時間2時間後の供試試料の重量減少を測定した後、この被試験シートの減少重量を減少容量に換算し、これを円筒状リングの接触面積で除して算出した。
【0047】
【表1】
【0048】
[実施例6]
パーフロロビニルエーテル(PPVE)0.1モル変性したPTFE(商品名:70−J)80gとPFA粉末(商品名:テフロンMP10、三井・デュポンフロロケミカル社製)20gを使用し、実施例1と同様な操作で供試試料を得た。
【0049】
[比較例4]
パーフロロビニルエーテル(PPVE)0.1モル変性したPTFE(商品名:70−J)を使用し、比較例1と同様な操作で供試試料を得た。
【0050】
実施例6及び比較例4の各供試試料について、摩擦係数及び摩耗係数を測定し、その結果を表2に示す。
【0051】
【表2】
【0052】
[実施例7〜15]
PTFEモールディングパウダー(商品名:G−163、旭硝子社製)80重量部とPFA粉末(商品名:テフロンMP10、三井・デュポンフロロケミカル社製)20重量部の割合でジューサー型ミキサーで混合し、混合物をSUSトレーに2mm厚さに入れ、340℃の加熱炉に入れて1時間経過後に真空ポンプで吸引し、酸素濃度が0.4torrになった段階で吸引を停止して窒素ガスを封入し、電子線を20kGy/回の照射線量で5回照射して(合計照射線量100kGy)改質した。この改質試料を冷却後卓上型ジェットミルで粉砕して平均粒径が60μmの改質粉体を得、この改質粉体20gと表3に示す各種ポリマー80gをブラベンダーブラストミルでそれぞれのポリマーに適した加工温度条件で混練し、溶融物を厚み2mm、50mm角シート金型に移し、加圧冷却して厚さ2mmのシートを得、供試試料とした。
【0053】
[比較例5〜14]
実施例7〜15で使用した各種ポリマー単独を用いたシートを得、供試試料とした。
【0054】
実施例7〜16及び比較例5〜14の各供試試料について、摩擦係数及び摩耗係数を測定し、その結果を表3に示す。
【0055】
【表3】
【0056】
[実施例17]
水添加NBR(商品名:Zetpol2020)100g、メタクリル酸亜鉛30g、有機過酸化物系加硫剤5g、実施例7〜16と同様にして得た平均粒径が60μmの改質粉体100gをロール混練後、160℃で圧縮成形して厚さ2mm、10cm角の加硫シートを得、供試試料とした。
【0057】
[実施例18]
P−TFE(ふっ素ゴム、商品名:アフラス200、旭硝子社製)100g、ステアリン酸ナトリウム1g、酸化マグネシウム5g、水酸化カルシウム6g、ビスフェノールAF2g、実施例7〜16と同様にして得た平均粒径が60μmの改質粉体100gを実施例17と同様に加硫成形して厚さ2mm、10cm角の加硫シートを得、供試試料とした。
【0058】
[比較例15]
改質粉体100重量部に代えてPTFEルブリカント(商品名:L169J)100重量部を配合した以外は実施例17と同様にして加硫シートを得、供試試料とした。
【0059】
[比較例16]
改質粉体100重量部に代えてPTFEルブリカント(商品名:L169J)100重量部を配合した以外は実施例18と同様にして加硫シートを得、供試試料とした。
【0060】
実施例17、18及び比較例15、16の各供試試料について、摩擦係数及び摩耗係数を測定し、その結果を表4に示す。
【0061】
【表4】
【0062】
[実施例19]
PFA粉末(商品名:テフロンMP10、三井・デュポンフロロケミカル社製)80gとPFEP(商品名:NC1500)20gをジューサー型ミキサーで混合し、混合物をブラベンダープラストミルを使用して360℃で混練し、溶融物を厚み2mmのシート金型に取出し、速やかに加圧(3MPa)冷却して厚さ2mm、50mm角のシートを得た。このシートを315℃の加熱炉に入れて1時間経過後に真空ポンプで吸引し、酸素濃度が1torr以下になった段階で吸引を停止して窒素ガスを封入し、電子線を20kGy/回の照射線量で5回照射して(合計照射線量100kGy)改質シートを得、供試試料とした。
【0063】
[実施例20〜25]
実施例19で得た改質シートをハンマーミルで粉砕後、卓上型ジェットミルで粉砕して平均粒径が100μmの改質粉体を得、この改質粉体20gと表5に示す各種ポリマー80gをブラベンダーブラストミルで360℃の温度条件で混練し、溶融物を厚み2mmのシート金型に取出し、速やかに加圧(3MPa)冷却して厚さ2mm、50mm角のシートを得、供試試料とした。ブラベンダーブラストミル混合温度は、PFEP:340℃、ETFE:300℃、PVDF:200℃、ECTFE:300℃、PCTFE:200℃とした。
【0064】
[比較例17]
PFA粉末(商品名:テフロンMP10、三井・デュポンフロロケミカル社製)80g、PFEP(商品名:NC1500)20g及びPTFEルブリカント(商品名:L169J)20gをジューサー型ミキサーで混合し、混合物をブラベンダープラストミルを使用して360℃で混練し、溶融物を厚み2mmのシート金型に取出し、速やかに加圧(3MPa)冷却して厚さ2mm、50mm角のシートを得、供試試料とした。
【0065】
[比較例18〜23]
表5に示す各種ポリマー80gとPTFEルブリカント(商品名:L169J)20gの割合で使用し、比較例17と同様にしてシートを得、供試試料とした。
【0066】
実施例19〜25及び比較例17〜23の各供試試料について、摩擦係数及び摩耗係数を測定し、その結果を表5に示す。
【0067】
【表5】
【0068】
[実施例26]
PTFEモールディングパウダー(商品名:G−163、旭硝子社製)80gとPEEK(商品名:150XF)20gをジューサー型ミキサーで混合し、混合物を予備成形金型で圧力30MPaで加圧成形して2mm厚さ、50mm角シートを得、これを360℃で1時間焼成した。このシートを340℃の加熱炉に入れて1時間経過後に真空ポンプで吸引し、酸素濃度が0.5torrになった段階で吸引を停止して窒素ガスを封入し、電子線を20kGy/回の照射線量で5回照射して(合計照射線量100kGy)改質シートを得、供試試料とした。
【0069】
[実施例27〜30]
PTFEモールディングパウダー(商品名:G−163、旭硝子社製)80gとPEEK(商品名:150XF)20gをジューサー型ミキサーで混合し、混合物をSUSトレーに2mm厚に入れ、これを340℃の加熱炉に入れて1時間経過後に真空ポンプで吸引し、酸素濃度が0.5torrになった段階で吸引を停止して窒素ガスを封入し、電子線を20kGy/回の照射線量で5回照射して(合計照射線量100kGy)改質した。この改質試料を冷却後卓上型ジェットミルで粉砕して平均粒径が100μmの改質粉体を得、この改質粉体20gと表6に示す各種ポリマー80gをブラベンダーブラストミルでそれぞれのポリマーに適した加工温度条件で混合し、厚み2mm、50mmの角シートを得、供試試料とした。シートの作製は、実施例27は焼成、実施例28〜30は溶融混練後圧縮成形による。
【0070】
[実施例31]
PTFEモールディングパウダー(商品名:G−163、旭硝子社製)60g、PFA粉末(商品名:テフロンMP10、三井・デュポンフロロケミカル社製)20g及びPEEK(商品名:150XF)20gの割合で使用し、実施例26と同様にして改質シートを得、供試試料とした。
【0071】
[実施例32〜39]
PTFEモールディングパウダー(商品名:G−163、旭硝子社製)60g、PFA粉末(商品名:テフロンMP10、三井・デュポンフロロケミカル社製)20g及びPEEK(商品名:150XF)20gを使用し、実施例27〜30と同様にして改質粉体を得、この改質粉体20gと表6に示す各種ポリマー80gをブラベンダーブラストミルでそれぞれのポリマーに適した加工温度条件で混合し、厚み2mm、50mmの角シートを得、供試試料とした。ブラベンダーブラストミル混合温度は、PFA:380℃、PFEP:350℃、ETFE:320℃、PPS:300℃、PES:320℃、PA:300℃とした。
【0072】
[実施例40]
水添加NBR(商品名:Zetpol2020)100g、メタクリル酸亜鉛30g、有機過酸化物系加硫剤5g、実施例32〜39と同様にして得た平均粒径が100μmの改質粉体100gをロール混練後、160℃で圧縮成形して厚さ2mm、10cm角の加硫シートを得、供試試料とした。
【0073】
[実施例41]
P−TFE(ふっ素ゴム、商品名:アフラス200、旭硝子社製)100g、ステアリン酸ナトリウム1g、酸化マグネシウム5g、水酸化カルシウム6g、ビスフェノールAF2g、実施例32〜39と同様にして得た平均粒径が100μmの改質粉体100gを実施例40と同様に加硫成形して厚さ2mm、10cm角の加硫シートを得、供試試料とした。
【0074】
[比較例24]
PFA粉末(商品名:テフロンMP10、三井・デュポンフロロケミカル社製)にγ線を空気中で100kGy照射して低分子量に分解した粉末20gとPFA(340J、未改質)80gをブラストミルで380℃で混練して成形してシートを得、供試試料とした。
【0075】
実施例26〜41、比較例24の各供試試料について、摩擦係数及び摩耗係数を測定し、その結果を表6に示す。
【0076】
【表6】
【0077】
[実施例42]
PTFEモールディングパウダー(商品名:G−163、旭硝子社製)80gとPFA粉末(商品名:テフロンMP10、三井・デュポンフロロケミカル社製)20gをジューサー型ミキサーで混合し、混合物を340℃の加熱炉に入れて1時間経過後に真空ポンプで吸引し、酸素濃度が0.5torrになった段階で吸引を停止して窒素ガスを封入し、電子線を10kGy照射して改質した。この改質試料を冷却後卓上型ジェットミルで粉砕して平均粒径が40μmの改質粉体を得、この改質粉体30gとPTFEモールディングパウダー(商品名:G−163、旭硝子社製)100gをジューサーミキサーで混合し、予備成形金型を使用して圧力15MPaで厚さ2mm、外径50mmの円板シートを予備成形し、360℃で1時間焼成し、供試試料とした。
【0078】
[実施例43]
実施例42で得た改質粉体30gとPFA(商品名:340J)70gをブラベンダープラストミルを使用して380℃で混練し、溶融物を速やかに厚み2mmのシート圧縮型に移行し、加圧(0.2MPa)冷却して厚さ2mm、50mm角のシートを得、供試試料とした。
【0079】
実施例42、43の各供試試料について、摩擦係数及び摩耗係数を測定し、その結果を表7に示す。
【0080】
【表7】
【0081】
[実施例44〜46]
電子線の照射線量を1000kGy(50kGy/回電子線照射線量で20回照射)、2000kGy(50kGy/回電子線照射線量で40回照射)、3000kGy(50kGy/回電子線照射線量で60回照射)として実施例42と同様にしてシートを得、供試試料とした。なお、各例ではビーム加熱による照射温度が380℃以下になるように照射と冷却時間(非照射時間)を制御した。
【0082】
実施例44〜46の各供試試料について、摩擦係数及び摩耗係数を測定し、その結果を表8に示す。
【0083】
【表8】
【0084】
[実施例47]
PTFEモールディングパウダー(商品名:G−163、旭硝子社製)20gとPFA粉末(商品名:テフロンMP10、三井・デュポンフロロケミカル社製)80gをジューサー型ミキサーで混合し、混合物をブラベンダープラストミルを使用して360℃で混練し、溶融物を厚み2mmのシート金型に取出し、速やかに加圧(3MPa)冷却して厚さ2mm、50mm角のシートを得た。このシートを酸素濃度0.5torrの窒素ガスの雰囲気下、330℃の加熱温度のもとで電子線を照射線量1000kGy照射して(50kGy/回の電子線照射線量で20回照射)改質した。ビーム加熱による照射温度が360℃以下になるように照射と冷却時間(非照射時間)を制御した。この改質シートをハンマーミルで粉砕後、卓上型ジェットミルで粉砕して平均粒径が100μmの改質粉体を得、この改質粉体80gとPFA(商品名:340J)20gをブラベンダーブラストミルで380℃の温度条件で混練し、溶融物を厚み2mmのシート金型に取出し、速やかに加圧(0.2MPa)冷却して厚さ2mm、50mm角のシートを得、供試試料とした。このシートは、透明性に優れ、ゴム弾性特性を示した。
【0085】
[実施例48]
PTFEモールディングパウダー(商品名:G−163、旭硝子社製)2kgとPFA粉末(商品名:テフロンMP10、三井・デュポンフロロケミカル社製)8kgをヘンシェル型ミキサーで混合し、混合粉体を平均厚み5mm、無加圧で340℃に加熱後、酸素濃度0.5torrの窒素ガスの雰囲気下で電子線を照射線量300kGy照射して(20kGy/回の電子線照射線量で15回照射)改質した。ビーム加熱による照射温度が360℃以下になるように照射と冷却時間(非照射時間)を制御した。この改質処理品をエアージェットミルで粉砕して平均粒径が5μmの改質粉体を得た。この改質粉体60gとPFA粉末(商品名:テフロンMP10、三井・デュポンフロロケミカル社製)40gをジューサー型ミキサーで混合して静電塗装用粉体原料を得、これを静電塗装した食品工業向け炊飯用容器を得た。この炊飯用容器は、従来のPFA塗装製品に比べて優れた耐久性を有していた。
【0086】
[実施例49]
実施例48で得た平均粒径が5μmの改質粉体400gとPFA(商品名:340J)600gを2軸スクリュウ押出機で溶融混練してペレットを得、このペレットを原料にして10mmTダイ押出機により厚み60μm、幅20cmのフィルムを押出し、同時にフィルム表面をPAI(ポリアミドイミド)プライマー処理したアルミ合金シートとのラミネート板を得、このラミネート板を圧延加工して内面がPFA面になる縦10cm、横6cm、深さ2cmの容器形状製品を得た。この容器の非粘着性は従来のPFAラミネート板使用製品と同等であったが、耐摩耗性は1000倍であった。また、フィルム自体は透明性が高く、非球晶体であって、表面平滑性に優れており、異物付着対策に効果的であった。
【0087】
[実施例50]
実施例48で得た平均粒径が5μmの改質粉体200gとPFA(商品名:AP201)800gを混合し、混合物を原料にして10mm2軸スクリュー押出機を用いて100μm口径マルチダイから繊維状モノフィラメントを押出し、10〜30倍引落しをかけ、平均径10μmの繊維を得た。この繊維を用い、1mm厚の不織布軸受け及び1μm開孔径の濾布を得た。不織布軸受けのジャーナル型軸受けに採用したところ、従来のPTFE充填剤入り品と遜色ない耐摩耗性を示し、且つ非充填系であることから、半導体、医薬プラント、食品工業においてはクリーン性が評価されている。
【0088】
[実施例51]
実施例48で得た平均粒径が5μmの改質粉体4kgとPTFEモールディングパウダー(商品名:G−163、旭硝子社製)1kgを高速混合型ヘンシェルにより均一に混合し、混合物を用いて高さ20cm、径20cmのビレットを予備成形金型で加圧成形した(成形圧0.5MPa)。予備成形品を無負荷で340〜360℃で2時間加熱して焼成し、その後圧力0.5MPaで加圧し状態で冷却し、PTFE切削用旋盤を用いて100μmから5mm厚さの製品を得た。
【0089】
[実施例52]
PTFE産業廃棄物(切削屑、工場廃材等ロス品、使用済み製品はモールディングパウダー、ファインパウダー、ディスパージョン等を原料としたもの、形状はバルク、テープ、ヤーン、繊維等のいずれでもよく、異物混入を除けば100%PTFE)とPFA産業廃棄物(半導体容器、チューブ等で、異物を除き100%PFA)を、必要に応じ洗浄等で異物を除去し、エアージェットミルで粉砕して平均粒径約100μmの粉体を得た。この粉体PTFE800gと粉体PFA200gをヘンシェルミキサーで混合し、この混合物を340℃に加熱後、酸素濃度0.5torrの窒素ガスの雰囲気下で電子線を照射線量2000kGy照射して(50kGy/回の電子線照射線量で40回照射)改質した。この改質処理品をエアージェットミルで粉砕して平均粒径が10μmの改質粉体を得た。平均粒径が10μmの改質粉体が得られるので、従来のPTFEルブリカントの代品としての広範囲の用途(プラスチック、ゴム、塗料、インク、グリース、オイル、メッキ等)に適用できることが確認された。なお、10μm以下サブミクロン粒子系については塗料液状体、オイル等の湿式粉砕で実現できることが確認できた。
【0090】
[実施例53]
実施例52と同様にして得た平均粒径約100μmのPTFE粉体800gとPFA粉体200gの混合物を、340℃に加熱し、酸素が存在する雰囲気で電子線を10kGy照射し、続いて、340℃に加熱した状態で酸素濃度0.5torrの窒素ガスの雰囲気下で電子線を照射線量100kGy照射して(50kGy/回の電子線照射線量で2回照射)改質した。この改質処理品をエアージェットミルで粉砕して平均粒径が10μmの改質粉体を得た。予め低分子量にしておいて比較的低線量、短時間の電子線照射による改質ふっ素樹脂製品を低コストで得られることが確認できた。
【0091】
[実施例54]
実施例52と同様にして得た平均粒径約100μmのPTFE粉体800gとPFA粉体200gの混合物を、340℃に加熱し、酸素が存在する雰囲気で電子線を10kGy照射し、続いて、340℃に加熱加熱後、酸素濃度0.5torrの窒素ガスの雰囲気下で電子線を照射線量2000kGy照射し(50kGy/回の電子線照射線量で40回照射)、続いて1000kGy照射し(50kGy/回の電子線照射線量で20回照射)、合計3000kGy照射した。なお、第一回目の照射では、部分的には材料温度が380℃を越えるときがあり、第二回目の照射では材料温度が360℃以下になるように、冷却期間を制御した。これによって、高線量照射を経済的に行えることが確認された。得られた改質ふっ素樹脂はDSCの観察では観察では結晶融点の存在が確認できなかった。また、この改質品はエアージェットミルの超微粉化を試みた結果、特定条件では1μmレベルに迫る超微粒子化が確認でき、更に液体(含むオイル)中の超微細化はナノミクロン粒子も得られることがわかった。この事実はインク、オイルへの添加はもとより、ナノテクノロジー分野に応用され得ることが確認できた。
【0092】
【発明の効果】
以上説明してきた本発明によれば、優れた機械的耐性を有し、しかも、広い分野において利用できる改質ふっ素樹脂、改質ふっ素樹脂組成物及び改質ふっ素樹脂成形体を実現することが可能となり、ふっ素樹脂の応用範囲を広げる上で大きく貢献するものである。
Claims (9)
- テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体とテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合体の2種類のふっ素樹脂を共存させ、酸素濃度100torr以下の不活性ガス雰囲気下で、且つ310℃〜360℃の温度下で、電離性放射線を照射線量10kGy〜10MGyの範囲で照射してなることを特徴とする改質ふっ素樹脂。
- 315℃〜330℃の温度下で電離性放射線を照射してなる請求項1記載の改質ふっ素樹脂。
- テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合体とエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、ポリふっ化ビニリデンから選ばれる少なくとも1種を共存させ、酸素濃度100torr以下の不活性ガス雰囲気下で、且つ280℃〜330℃の温度下で、電離性放射線を照射線量10kGy〜10MGyの範囲で照射してなることを特徴とする改質ふっ素樹脂。
- 285℃〜310℃の温度下で電離性放射線を照射してなる請求項3記載の改質ふっ素樹脂。
- 請求項1または3に記載の改質ふっ素樹脂と未改質高分子材料を含有する改質ふっ素樹脂組成物。
- 未改質高分子材料は、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリふっ化ビニリデン、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、ポリクロロフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロジイオキサソール共重合体、ポリふっ化ビニル、ふっ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロペン系共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン系共重合体、ふっ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系共重合体、フルオロホスファゼン系ゴム、ポリイミド、芳香族ポリアミド、ポリアリーレンスルフィド及び芳香族ポリエステルから選ばれる少なくとも1種である請求項5記載の改質ふっ素樹脂組成物。
- 請求項1または3に記載の改質ふっ素樹脂を成形した改質ふっ素樹脂成形体であって、前記ふっ素樹脂の混合物を所定形状に成形し、当該成形体に電離性放射線を照射してなることを特徴とする改質ふっ素樹脂成形体。
- 請求項1または3に記載の改質ふっ素樹脂を成形した改質ふっ素樹脂成形体であって、前記ふっ素樹脂の混合物に電離性放射線を照射し、照射後の混合物を粉砕した粉体を所定形状に成形してなることを特徴とする改質ふっ素樹脂成形体。
- 請求項1または3に記載の改質ふっ素樹脂を成形した改質ふっ素樹脂成形体であって、前記ふっ素樹脂の混合物に電離性放射線を照射し、照射後の混合物を粉砕した粉体と未改質の高分子材料を含有する改質ふっ素樹脂組成物を所定形状に成形してなることを特徴とする改質ふっ素樹脂成形体。
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