JP2003253073A - 耐摩耗性樹脂組成物 - Google Patents
耐摩耗性樹脂組成物Info
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Abstract
高速の摺動下において優れた耐摩耗性を示すふっ素樹脂
系の樹脂組成物を提供する。 【解決手段】放射線照射によって分子間を架橋され、か
つ、表面をカップリング剤によって処理されたふっ素樹
脂と、充填剤と、高分子樹脂を混合する。
Description
物に関し、特に、表面の粗い相手方との摺動下、あるい
は高荷重かつ高速の摺動下において優れた耐摩耗性を示
すふっ素樹脂系の樹脂組成物に関する。
し、さらに、耐熱性、耐薬品性あるいは電気的特性等に
優れていることから、摺動用部材、パッキン、ガスケッ
ト、絶縁材あるいは半導体製造用容器等の構成材として
広く利用されており、その使用形態としては、単独での
使用、あるいは他の高分子樹脂との混合形態がある。
ふっ素樹脂と高分子樹脂の特質を併せ備えたものとなる
ことから、ふっ素樹脂の適用範囲拡大上、有意義なもの
となる。しかし、ふっ素樹脂を単に混入しただけの組成
物によると、混入されたふっ素樹脂が耐摩耗性および耐
クリープ性に劣るため、これを、ふっ素樹脂特有の潤滑
性を活用する摺動部材に適用することは難しいものとさ
れている。
ープ性を向上させる手段として、放射線照射により分子
間を架橋し、これによって両特性を改質する方法が知ら
れており、この改質されたふっ素樹脂を高分子樹脂に混
入した樹脂組成物が摺動部材用の新たな構成材として注
目されている。
っ素樹脂混入の組成物によると、摺動相手の表面粗さが
大であったり、あるいは高荷重高速の摺動用に使用され
るとき、耐摩耗性が急激に低下する欠点があり、このた
め、適用範囲が制約されるという問題を有している。
方との摺動下、あるいは高荷重高速の摺動下において優
れた耐摩耗性を示すふっ素樹脂系の樹脂組成物を提供す
ることにある。
達成するため、放射線の照射によって分子間を架橋さ
れ、かつ、表面をカップリング剤によって処理されたふ
っ素樹脂と、充填剤と、高分子樹脂の混合物よりなるこ
とを特徴とする耐摩耗性樹脂組成物を提供するものであ
る。
線の照射は、同樹脂を融点以上に加熱するとともに、照
射雰囲気を酸素濃度10torr以下の真空あるいは不
活性ガス下に設定し、さらに、照射線量を1kGy〜1
0MGyに設定して行うことが好ましく、これらの3条
件が揃うとき、架橋が最も有効なものとなる。
熱して架橋を行うことは、ふっ素樹脂の主鎖の分子運動
を活発化させることにつながるため、高効率の架橋の遂
行を可能とし、また、酸素濃度を10torr以下に設
定することは、ふっ素樹脂の酸化劣化を防いで耐摩耗性
向上への悪影響をなくすとともに、放射線の照射による
生成ラジカルの消費を防いで効率的な架橋を可能にす
る。
る放射線の照射量は、下限においては、良好な耐摩耗性
を確保するため、そして、上限においては、放射線の照
射による伸び特性等の低下を防ぐうえにおいて好適な条
件となる。
述するPTFE、PFAおよびFEPの場合で、それぞ
れ、順に、327℃、310℃および275℃に特定す
ることができ、上述の加熱温度としては、過度な加熱に
よるふっ素樹の主鎖の切断と分解を防ぐ意味から、これ
らの温度より10〜30℃高い水準に設定すべきであ
る。
グ剤によって表面処理する理由は、ふっ素樹脂と充填剤
と高分子樹脂間の親和性を高め、これによって組成物全
体の耐摩耗性を向上させるためであり、このためには、
カップリング剤として有機シラン化合物を使用すること
が特に好適となる。
(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキ
シシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメト
キシシランあるいは2−スチリルエチルトリメトキシシ
ラン等の使用が好ましく、これらは、耐熱グレード品で
あることによって特徴づけられる。なお、表面処理を行
うに際しては、ふっ素樹脂を粉末状あるいは粒状とする
のが普通となる。
レン重合体(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パ
ーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PF
A)あるいはテトラフルオロエチレンーヘキサフルオロ
プロピレン共重合体(FEP)等が使用される。
ビニルエーテル)、ヘキサフルオロプロピレン、(パー
フルオロアルキル)エチレンあるいはクロロトリフルオ
ロエチレン等の重合単位を1モル%以下共重合させたも
のを使用することは可能であり、さらには、たとえば、
前記の共重合体に少量の第3成分を共重合させたものも
使用可能である。
能な、いわゆるエンジニアリングプラスティツクスとし
て知られているものであれば特に制約はなく、たとえ
ば、ふっ素樹脂、ポリオレフィン、ポリアミドあるいは
エポキシ樹脂等を具体例として挙げることができる。
として混入されるもので、これには、炭素繊維、ガラス
繊維、グラファイト、2硫化モリブデン、芳香族ポリエ
ステルあるいはポリイミド等の無機質あるいは有機質充
填剤のいずれもが使用可能である。なかでも、繊維長の
短い炭素繊維は特に好ましく、これを使用するとき、樹
脂組成物の耐摩耗性は、著しく向上するようになる。
ることが好ましく、具体的には、電子線、γ線、X線、
中性子線あるいは高エネルギーイオン等が使用される。
なお、本発明による樹脂組成物の適用対象としては、摺
動下で使用されるシール部材やパッキン等をはじめとし
て、種々の用途が考えられる。
組成物の実施の形態を説明する。
子社製、G−163)を空気中で380℃×30分間加
熱することによって焼成した後、酸素濃度が0.1to
rrの真空中および340℃の加熱下において電子線を
100kGyの線量となるように照射し、さらに、これ
をジェットミルで粉砕することにより平均粒径が20μ
mの架橋PTFE粉末を製造した。
して、当該液が250%となるように所定のカップリン
グ剤と混合した後、得られた混合液を架橋PTFE粉末
に加えて攪拌し、引き続きこれを180℃で乾燥するこ
とにより表面に1重量%のカップリング剤を付着させた
架橋PTFE粉末を製造した。
対して反応性を有する加水分解基3個と有機基としての
フェニル基1個を1分子中に併せ持ち、無機質充填剤に
撥水性と流動性を与えることのできるフェニルエトキシ
シラン(A−153)を使用した。
TFE粉末の10重量部と、炭素繊維(呉羽化学社商品
名M−201S。繊維長0.13mmの短繊維)15重
量部と、PTFE粉末(三井デュポン社商品名70−
J。非架橋品)75重量部を20℃以下に冷却したヘン
シェルミキサー中で混合することにより所定の樹脂組成
物を調合し、得られた組成物を室温および50MPaの
圧力下で圧縮成型した後、ピーク温度350で2時間焼
成することによって直径40mm×長さ60mmのロッ
ドを製造し、引き続き、これを、旋盤で径方向にスライ
スすることにより0.5mm厚さのシートサンプルを製
作した。
フェニルエトキシシランより高耐熱グレードの2−スチ
リルエチルトリメトキシシランを使用するとともに、他
を同一条件に設定することにより0.5mm厚さのシー
トサンプルを製作した。
の代わりに芳香族ポリエステル(住友化学工業社商品
名:スミカスーパーE101−S)を使用するととも
に、他を同一条件に設定することにより0.5mm厚さ
のシートサンプルを製作した。
を350℃および50MPaの条件下で1時間圧縮成型
し、圧力を維持したまま室温まで冷却することにより直
径40mm×長さ60mmのロッドを製造した後、これ
を旋盤で径方向にスライスすることにより0.5mm厚
さのシートサンプルを製作した。
するカップリング剤による表面処理工程を省略するとと
もに、他を同一条件に設定することにより0.5mm厚
さのシートサンプルを製作した。
するカップリング剤による表面処理工程を省略するとと
もに、他を同一条件に設定することにより0.5mm厚
さのシートサンプルを製作した。
内容とこれらより得られたシートサンプルの特性試験結
果をまとめたものである。なお、各特性の試験内容は、
以下の通りである。
18に準じてSUS304製の円筒状リング(外径2
5.6mm×内径20.6mm)にシートサンプルより
作成した試験片(外径25.6mm×内径20.6mm
×厚さ0.5mm)を貼り合わせ、圧力0.41MPa
および速度125 m/分の条件下で試験を実施した
ときの50時間経過後の摩耗量を示す。なお、表中の
は、摺動摩擦相手として、表面粗さRaが0.8μmの
SUS304を使用したときのものであり、一方、
は、表面粗さRaが4.0μmのSUS304を使用し
たときのものである。
ときのクリープ性を示す。
を解放し、荷重解放後24時間を経過したときの変形率
を示す。
て実施。
用した実施例1、2と比較例2の対比において、前者が
極めて低い水準の比摩耗量を示しているのに比べ、後者
が数倍の高い比摩耗量を示しており、一方、充填剤とし
て芳香族ポリエステルを使用した実施例3と比較例3の
対比においても、前者は、後者に対して格段に小さな比
摩耗量を示していることが認められる。
粉末がカップリング剤によって表面を処理されているの
に対し、比較例の場合には、この要件を欠いているため
であり、この違いが比摩耗量の大差となって現れたもの
である。
の効果が顕著に示されているとともに、圧縮クリープや
引張強度等の他の特性が良好であることも示されてお
り、従って、表1からは、本発明による樹脂組成物の有
用性を充分に確認することができる。
が大であるとともに、高荷重高速の試験条件下のにお
いて得られていることは、特筆に値するといえる。な
お、参考のために示した比較例1は、PTFE粉末をそ
のまま使用したものであり、当然、良好な結果は得られ
ていない。
耗性樹脂組成物によれば、放射線の照射によって分子間
を架橋され、かつ、表面をカップリング剤によって処理
されたふっ素樹脂と、充填剤と、高分子樹脂を混合した
ものであるため、表面の粗い相手方との摺動下、あるい
は高荷重高速の摺動下において優れた耐摩耗性を示す樹
脂組成物を提供することができる。
Claims (6)
- 【請求項1】放射線の照射によって分子間を架橋され、
かつ、表面をカップリング剤によって処理されたふっ素
樹脂と、充填剤と、高分子樹脂の混合物よりなることを
特徴とする耐摩耗性樹脂組成物。 - 【請求項2】前記ふっ素樹脂は、その融点以上、10t
orr以下の酸素濃度、および照射線量1kGy〜10
MGyの条件下で放射線を照射されたものであることを
特徴とする請求項1項記載の耐摩耗性樹脂組成物。 - 【請求項3】前記カップリング剤は、有機シラン化合物
であることを特徴とする請求項1項記載の耐摩耗性樹脂
組成物。 - 【請求項4】前記ふっ素樹脂は、テトラフルオロエチレ
ン重合体、テトラフルオロエチレンーパーフルオロ(ア
ルキルビニルエーテル)共重合体およびテトラフルオロ
エチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体等のふっ素
系重合体あるいは共重合体より選択されることを特徴と
する請求項1項記載の耐摩耗性樹脂組成物。 - 【請求項5】前記高分子樹脂は、ふっ素樹脂、ポリオレ
フィン、ポリアミドおよびエポキシ樹脂等のエンジニア
リングプラスティックス類より選択されることを特徴と
する請求項1項記載の耐摩耗性樹脂組成物。 - 【請求項6】前記充填剤は、炭素繊維、ガラス繊維、グ
ラファイト、2硫化モリブデン、芳香族ポリエステルお
よびポリイミド等の無機質あるいは有機質充填剤より選
択されることを特徴とする請求項1項記載の耐摩耗性樹
脂組成物。
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