JP4079723B2 - 溶融成形品 - Google Patents
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Description
本発明は、溶融成形用のポリビニルアルコール系樹脂を含有してなる溶融成形品に関し、さらに詳しくは溶融安定性に優れた溶融成形用のポリビニルアルコール系樹脂を含有してなる溶融成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ポリビニルアルコール系樹脂は、その強靱性、耐熱性、透明性、さらには焼却時に有毒ガスを発生しない等の特徴を有しているため、フィルムやシート等に成形されて、各種包装材料をはじめとして、農業用フィルム、壁紙用途、洗剤用包材、農薬用包材、衣類用包材、紙基材への押出しコートによる水解紙製造等に供されている。
しかしながら、かかるポリビニルアルコール系樹脂は、融点が比較的高いために、融点と熱分解温度が近く、溶融成形によって成形物、特にフィルムを得ようとするときには、ロングラン成形性に問題があり、得られた成形物の外観性(異物や焦げの発生)に問題が残るものであった。
【0003】
かかる問題点を解決するために、たとえば、▲1▼特開2000−178396号公報においては、重合度200〜1200、ケン化度75〜99.99モル%および融点160〜230℃で、末端カルボキシル基および末端ラクトン環の合計量が0.008〜0.15モル%のポリビニルアルコールおよびアルカリ金属塩からなる溶融成形用ポリビニルアルコール系樹脂組成物が、▲2▼特開2001−288321号公報においては、重合度200〜2000、ケン化度85〜99.5モル%のポリビニルアルコール系樹脂と固体可塑剤の樹脂組成物が、▲3▼特開2001−181405号公報においては、1,2−グリコール結合を1.8モル%以上有するポリビニルアルコール系樹脂がそれぞれ提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者が上記の従来技術について詳細な検討を行ったところ、上記の▲1▼に開示のポリビニルアルコール系樹脂では、完全ケン化物の融点が200℃〜230前後とまだまだ融点が高く、▲2▼に開示のポリビニルアルコール系樹脂組成物は融点は比較的低くできるものの固体可塑剤の併用が必須で、かかる可塑剤を使用したときには、成形時にサージングを起こしたり、成形物から可塑剤のブリードを招いたりする恐れがあり、また可塑剤による融点降下の度合いも未だ不充分であり、できるだけ可塑剤の併用は避けることが望まれる。また、▲3▼に開示のポリビニルアルコール系樹脂は、その明細書の内容から察すると1,2−グリコール結合をポリビニルアルコール系樹脂の主鎖に導入したもので、かかるポリビニルアルコール系樹脂は融点を多少低くすることは可能であるが、溶融成形時の熱により主鎖の1,2−グリコール結合は分解を受けやすく良好な成形物が得られないことがある。また、主鎖への1、2−グリコール結合の導入量は、任意に制御することも難しく、変性量をアップしようとすると重合度が低下するという問題点がある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者が上記の事情に鑑みて鋭意検討した結果、ケン化度が96モル%以上で、一般式(1)で示される1,2−グリコール構造単位を2〜10モル%含有する溶融成形用ポリビニルアルコール系樹脂が、可塑剤を含むことなく、融点を低くすることができ、190℃〜210℃程度の比較的低温の溶融成形温度条件においても外観性の良好な成形物を得ることができ、ロングラン成形性も良好であることを見出して本発明を完成するに至った。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の溶融成形用ポリビニルアルコール系樹脂は、ケン化度が96モル%以上で、一般式(1)で示される1,2−グリコール構造単位を2〜10モル%含有するものである。
【0007】
【化1】
上記一般式(1)において、R1、R2、R3はそれぞれ独立して水素又はアルキル基である。該アルキル基としては特に限定されないが、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。かかるアルキル基は必要に応じて、ハロゲン基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基等の置換基を有していてもよい。
【0008】
かかるポリビニルアルコール系樹脂を得るに当たっては、特に限定されないが、(i)ビニルエステル系モノマー(A)とビニルエチレンカーボネート(B)との共重合体(A−B)をケン化及び脱炭酸する方法、(ii)ビニルエステル系モノマー(A)と2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン(C)との共重合体(A−C)をケン化及び脱ケタール化する方法が好ましく用いられる。
以下、かかる(i)及び(ii)の方法について説明する。
【0009】
[(i)の方法]
本発明で用いられるビニルエステル系モノマー(A)としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられるが、経済的にみて中でも酢酸ビニルが好ましく用いられる。
【0010】
ビニルエチレンカーボネート(B)としては、下記一般式(2)で示される構造のものであれば特に限定されず、上記一般式(2)において、R1、R2、R3は上記一般式(1)と同様のものが挙げられる。中でも入手の容易さ、良好な共重合性を有する点で、R1、R2、R3が水素であるビニルエチレンカーボネートが好適である。
【化2】
【0011】
かかるビニルエステル系モノマー(A)とビニルエチレンカーボネート(B)とを共重合するに当たっては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、分散重合、又はエマルジョン重合等の公知の方法を採用することができるが、通常は溶液重合が行われる。
重合時のモノマー成分の仕込み方法としては特に制限されず、一括仕込み、分割仕込み、連続仕込み等任意の方法が採用されるが、ビニルエチレンカーボネート(B)がポリビニルエステル系ポリマーの分子鎖中に均一に分布させられる点、ポリビニルアルコールの融点がより効果的に降下できる点等の物性面での点から滴下重合が好ましく、特にはHANNA法〔反応性比:r(ビニルエチレンカーボネート)=5.4、r(酢酸ビニル)=0.85〕に基づく重合方法が好ましい。
【0012】
かかる重合で用いられる溶媒としては、通常、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の低級アルコールやアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等が挙げられ、経済的な観点よりメタノールが好ましく用いられる。
溶媒の使用量は、目的とする共重合体(A−B)の重合度に合わせて、溶媒の連鎖移動定数を考慮して適宜選択すればよく、例えば、溶媒がメタノールの時は、S(溶媒)/M(モノマー)=0.01〜10(重量比)、好ましくは0.05〜3(重量比)程度の範囲から選択される。
【0013】
共重合に当たっては重合触媒が用いられ、かかる重合触媒としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウリル等の公知のラジカル重合触媒やアゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスメトキシジメチルバレロニトリル等の低温活性ラジカル重合触媒等が挙げられ、重合触媒の使用量は、重合触媒により異なり一概には決められないが、重合速度に応じて任意に選択される。例えば、アゾイソブチロニトリルや過酸化アセチルを用いる場合、ビニルエステル系モノマー(A)に対して0.01〜0.2モル%が好ましく、特には0.02〜0.15モル%が好ましい。
また、共重合反応の反応温度は40℃〜200℃、さらには40〜180℃、特には40℃〜72℃の範囲程度とすることが好ましい。
【0014】
本発明においては、ビニルエチレンカーボネート(B)の含有量、すなわち1,2−グリコール結合量を2〜10モル%(さらには3〜7モル%、特には4〜6モル%)とすることが必要で、かかるビニルエチレンカーボネート(B)の含有量が2モル%未満では低温(例えば210℃以下)での溶融成形性が困難となり、逆に10モル%を超えるとポリビニルアルコール系樹脂の熱安定性が不良とたって本発明の目的を達成することが困難となる。なお、本発明における1,2−グリコール結合量(変性量)は、上記のようにビニルエステル系モノマー(A)に対するビニルエチレンカーボネート(B)での変性量を表すものである。
【0015】
かくして得られたビニル系モノマー(A)とビニルエチレンカーボネート(B)との共重合体(A−B)は、次にケン化及び脱炭酸される。
ケン化に当たっては、該共重合体(A−B)をアルコール又は含水アルコールに溶解し、アルカリ触媒又は酸触媒を用いて行われる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、tert−ブタノール等が挙げられるが、メタノールが特に好ましく用いられる。アルコール中の共重合体(A−B)の濃度は系の粘度により適宜選択されるが、通常は10〜60重量%の範囲から選ばれる。ケン化に使用される触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、リチウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートの如きアルカリ触媒、硫酸、塩酸、硝酸、メタスルフォン酸、ゼオライト、カチオン交換樹脂等の酸触媒が挙げられる。
【0016】
かかるケン化触媒の使用量については、ケン化方法、目標とするケン化度(96モル%以上、好ましくは98モル%以上、さらには99モル%以上)等により適宜選択されるが、アルカリ触媒を使用する場合は通常、ビニルエステル系モノマー(A)に対して0.05〜30モル%、好ましくは0.5〜15モル%が適当である。
また、ケン化反応の反応温度は特に限定されないが、10〜60℃が好ましく、より好ましくは20〜50℃である。
【0017】
脱炭酸については、通常、ケン化後に特別な処理を施すことなく、上記ケン化条件下で該ケン化とともに脱炭酸が行われ、エチレンカーボネート環が開環することで1,2−グリコール成分に変換される。
かくして側鎖に1,2−グリコール結合を有したポリビニルアルコール系樹脂が得られる。
また、一定圧力下(常圧〜100kg/cm2)で且つ高温下(50〜200℃)でビニルエステル部分をケン化することなく、脱炭酸を行うことも可能であり、かかる場合、脱炭酸を行った後、上記ケン化を行うこともできる。
【0018】
[(ii)の方法]
本発明で用いられる2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン(C)としては、下記一般式(3)で示される構造のものであれば特に限定されない。
【化3】
上記一般式(3)において、R1、R2、R3は上記一般式(1)と同様のものが挙げられ、R4、R5はそれぞれ独立して水素又はアルキル基であり、該アルキル基としては特に限定されないが、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。かかるアルキル基は必要に応じて、ハロゲン基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基等の置換基を有していてもよい。中でも入手の容易さ、良好な共重合性を有する点で、R1、R2、R3が水素で、R4、R5がメチル基である2,2−ジメチル−4−ビニル−1,3−ジオキソランが好適である。
【0019】
かかるビニルエステル系モノマー(A)と2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン(C)とを共重合するに当たっては、上記(i)の方法と同様に行われる。
【0020】
本発明においては、2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン(C)の含有量は特に限定されないが、2〜10モル%とすることが上記▲1▼と同様に理由により好ましく、より好ましくは3〜7モル%、特に好ましくは4〜6モル%である。
【0021】
かくして得られたビニル系モノマー(A)と2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン(C)との共重合体(A−C)は、次にケン化及び脱ケタール化される。
ケン化に当たっては、上記(i)の方法と同様に行われる。
【0022】
上記共重合体(A−C)のケン化物の脱ケタール化については、上記ケン化がアルカリ触媒を用いて行われる場合は、ケン化した後、更に酸触媒を用いて水系溶媒(水、水/アセトン、水/メタノール等の低級アルコール混合溶媒等)中で脱ケタール化が行われ、1,2−グリコール成分に変換される。脱ケタール化に用いられる酸触媒としては、酢酸、塩酸、硫酸、硝酸、メタスルフォン酸、ゼオライト、カチオン交換樹脂等が挙げられる。
また、上記ケン化が酸触媒を用いて行われる場合は、通常、ケン化後に特別な処理を施すことなく、上記ケン化条件下で該ケン化とともに脱ケタール化が行われ、1,2−グリコール成分に変換される。
【0024】
かくして側鎖に1,2−グリコール結合を有したポリビニルアルコール系樹脂が得られるわけであるが、本発明においては、かかるポリビニルアルコール系樹脂のケン化度を96モル%以上(さらには98モル%以上、特には99モル%以上)とする必要があり、かかるケン化度の調整は、上記のケン化工程において調整すればよい。
本発明においては、かかるポリビニルアルコール系樹脂のケン化度が96モル%未満の時にはポリビニルアルコール系樹脂が溶融成形時に分解して本発明の目的を達成することが困難となる。
さらに、かかるポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度(JIS K6726に準拠)は特に限定されないが、200〜3000(さらには200〜1800、特には300〜1500,殊に300〜1000)であることが好ましく、かかる重合度が200未満では得られる成形物の強度が低下する傾向にあり、逆に3000を超えると溶融成形時の溶融粘度が高くなりすぎたり、せん断発熱が大きくなって分解したりする恐れがあり好ましくない。
【0025】
また、上記のポリビニルアルコール系樹脂は、ビニル系モノマー(A)及びビニルエチレンカーボネート(B)又は2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン(C)の他に、共重合性成分としてエチレンやプロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のα−オレフィンを共重合させ、α−オレフィン−ビニルアルコール系樹脂とすることもビニルアルコール系樹脂成形安定性の点で好ましく、かかるα-オレフィンの含有量は0.1〜10モル%が好ましく、特に2〜8モル%が好ましい。
【0026】
さらに、その他の不飽和単量体を共重合性成分として共重合することもできる。該不飽和単量体として、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいはモノ又はジアルキルエステル等、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩、アルキルビニルエーテル類、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシプロピレン(メタ)アリルエーテル等のポリオキシアルキレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリルアミド等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシエチレン(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)エステル、ポリオキシエチレンビニルエーテル、ポリオキシプロピレンビニルエーテル、ポリオキシエチレンアリルアミン、ポリオキシプロピレンアリルアミン、ポリオキシエチレンビニルアミン、ポリオキシプロピレンビニルアミン等が挙げられる。
【0027】
また、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、2−アクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−メタクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライド、3−ブテントリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド、ジエチルジアリルアンモニウムクロライド等のカチオン基含有単量体、アセトアセチル基含有単量体等も挙げられる。
【0028】
さらに、本発明においては、かかるポリビニルアルコール系樹脂に本発明の目的を阻害しない範囲において、飽和脂肪族アミド(例えばステアリン酸アミド等)、不飽和脂肪酸アミド(例えばオレイン酸アミド等)、ビス脂肪酸アミド(例えばエチレンビスステアリン酸アミド等)、脂肪酸金属塩(例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛等)、低分子量ポリオレフィン(例えば分子量500〜10,000程度の低分子量ポリエチレン、又は低分子量ポリプロピレン等)などの滑剤、無機塩(例えばハイドロタルサイト等)、可塑剤(例えばエチレングリコール、グリセリン、ヘキサンジオール等の脂肪族多価アルコールなど)、酸素吸収剤[例えば無機系酸素吸収剤として、還元鉄粉類、さらにこれに吸水性物質や電解質等を加えたもの、アルミニウム粉、亜硫酸カリウム、光触媒酸化チタン等が、有機化合物系酸素吸収剤として、アスコルビン酸、さらにその脂肪酸エステルや金属塩等、ハイドロキノン、没食子酸、水酸基含有フェノールアルデヒド樹脂等の多価フェノール類、ビス−サリチルアルデヒド−イミンコバルト、テトラエチレンペンタミンコバルト、コバルト−シッフ塩基錯体、ポルフィリン類、大環状ポリアミン錯体、ポリエチレンイミン−コバルト錯体等の含窒素化合物と遷移金属との配位結合体、テルペン化合物、アミノ酸類とヒドロキシル基含有還元性物質の反応物、トリフェニルメチル化合物等が、高分子系酸素吸収剤として、窒素含有樹脂と遷移金属との配位結合体(例えばMXDナイロンとコバルトの組合せ)、三級水素含有樹脂と遷移金属とのブレンド物(例えばポリプロピレンとコバルトの組合せ)、炭素−炭素不飽和結合含有樹脂と遷移金属とのブレンド物(例えばポリブタジエンとコバルトの組合せ)、光酸化崩壊性樹脂(例えばポリケトン等)、アントラキノン重合体(例えばポリビニルアントラキノン)等や、更にこれらの配合物に光開始剤(例えばベンゾフェノン等)や過酸化物補足剤(例えば市販の酸化防止剤等)や消臭剤(例えば活性炭等)を添加したものなど]、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、アンチブロッキング剤(例えばタルク微粒子等)、スリップ剤(例えば無定形シリカ等)、充填材(例えば無機フィラー等)、他樹脂(例えばポリオレフィン、ポリエステル等)などを配合しても良い。
【0029】
特に、アルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩を配合することが、さらなる溶融成形性の改善の点で好ましく、かかるアルカリ金属塩としては、カリウム、ナトリウム等の酢酸、プロピオン酸、酪酸、ラウリル酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸等の有機酸や、硫酸、亜硫酸、炭酸、リン酸等の無機酸の金属塩が挙げられ、またアルカリ土類金属塩としては、カルシウム、マグネシウム等の、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ラウリル酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸等の有機酸や、硫酸、亜硫酸、炭酸、リン酸等の無機酸の金属塩を挙げることができる。
【0030】
これらの金属塩の配合量としては、ポリビニルアルコール系樹脂に対して金属換算で5〜10000ppm(さらには20〜7000ppm、特には50〜5000ppm)とすることが好ましく、かかる含有量が5ppm未満では押出成形時にゲル化の程度が大きくなり、逆に10000ppmを越えると溶融成形時に分解が激しく発泡や臭気が発生しやすく、着色の程度も強くなったり、ゲル化傾向が強くなったりして好ましくない。なお、樹脂組成物中に2種以上のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の塩が含有される場合は、その総計が上記の含有量の範囲にあることが好ましい。
【0031】
ポリビニルアルコール系樹脂にアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩を含有させる方法については、特に限定されないが、一旦ポリビニルアルコール系樹脂を得た後にアルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンを含有する化合物を押出成形前に添加する方法、ポリビニルアルコール系樹脂の製造(ケン化)時にケン化触媒としてアルカリ金属イオンを含有するアルカリ性物質を使用し、ケン化後のポリビニルアルコール系樹脂を洗浄して該樹脂中に含まれるアルカリ金属イオンの量を制御する方法等が挙げられる。なお、ポリビニルアルコール系樹脂中のアルカリ金属やアルカリ土類金属の含有量は、原子吸光分析法で求めることができる。
【0032】
本発明のポリビニルアルコール系樹脂は、可塑剤を配合しなくても良好な溶融成形性を得ることができるが、別段必要に応じて可塑剤を配合することも可能で、かかる可塑剤としては3価〜6価の多価アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、キシロール、アラビノース、リブロース、ソルビトール等)、グリセリン等の多価アルコールへエチレンオキサイドを付加した化合物、各種アルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの混合付加体等)、糖類、ビスフェノールAやビスフェノールS等のフェノール誘導体、N−メチルピロリドン等のアミド化合物、α−メチル−D−グルコシド等のグルコシド類、水等が挙げられる。なお、その配合量としては、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、100重量部以下、さらには20重量部以下、特には10重量部以下とすることが好ましい。
【0033】
また、熱可塑性樹脂(例えば、相溶化剤存在下でポリエチレン、ポリプロピレン)、香料、着色剤、発泡剤、消臭剤、増量剤、充填剤(タルク、クレー、炭酸カルシュム、シリカ、マイカ、アルミナ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、窒化硼素、窒化アルミニュム等の無機充填剤、メラミンーホルマリン系樹脂等の有機充填材)、剥離剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、加工安定剤、耐候性安定剤、防かび剤、防腐剤等の添加剤を適宜配合することが出来る。なお、充填材は、ポリビニルアルコール系樹脂の水解性や生分解性の速度を調整したり、該樹脂にブロッキング防止性や印刷適性の具備させる目的好適に使用される。
【0034】
上記の如く得られたケン化度が96モル%以上で、側鎖に1,2−グリコール結合を2〜10モル%含有する溶融成形用ポリビニルアルコール系樹脂あるいはその組成物は、そのまま溶融成形に供することも可能であるが、溶融成形時の作業性や吐出安定性を考慮すれば、一度溶融状態で混練後冷却固化させてペレット状等にすることが好ましい。
【0035】
かかる手段としては、たとえば、ニーダールーダー、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー、ブラストミルなどの公知の混練装置を用いて行うことができるが、通常は、単軸または二軸押出機を用いることが工業的に好ましく、また、必要に応じて、ベント吸引装置、ギヤポンプ装置、スクリーン装置等を設けることも好ましい。特に、水分や副生成物(熱分解低分子量物等)を除去するために、押出機に1個以上のベント孔を設けて減圧下に吸引したり、押出機中への酸素の混入を防止するためにホッパー内に窒素等の不活性ガスを連続的に供給したりすることにより、熱着色や熱劣化が軽減された品質に優れた溶融成形用ポリビニルアルコール系樹脂あるいはその組成物のペレットを得ることができる。
【0036】
上記のポリビニルアルコール系樹脂あるいはその組成物を用いて成形される溶融成形品の形状としては特に制限されることなく、フィルム、シート、容器、棒、管や溶融紡糸法による繊維及び不織布、その他各種の溶融成形品に成形される。
かかる溶融成形品を得るための溶融成形方法としては、圧縮成型法、トランスファー成形法、インフレーション成形法、中空成形法、ブロー成形法、カレンダー成形法、発泡成形法、真空成形法等が主として採用され、溶融温度としては、通常150〜250℃の範囲から選ぶことが多いが、本発明のポリビニルアルコール系樹脂あるいはその組成物においては、ポリビニルアルコール系樹脂が高ケン化度であるにもかかわらず、特に150〜220℃(さらには190〜210℃)の低温で溶融成形することが可能である。
【0037】
かかる成形品としては、勿論単層として各種用途に用いることは可能であるが、積層体としても有用で、特に該ポリビニルアルコール系樹脂あるいはその組成物からなる層の少なくとも片面に熱可塑性樹脂層を積層してなる積層体として用いることが好ましく、耐水性、機械的特性、ヒートシール性等の種々の特性が付与された実用に適した積層体が得られる。
【0038】
以下、かかる積層体について説明する。
該積層体を製造するに当たっては、本発明のポリビニルアルコール系樹脂(あるいは組成物)の片面又は両面に、他の基材(熱可塑性樹脂、紙等)を積層するのであるが、積層方法としては、例えば本発明のポリビニルアルコール系樹脂(あるいは組成物)の成形フィルムや成形シート等に他の基材を溶融押出ラミネートする方法、逆に他の基材に該ポリビニルアルコール系樹脂(あるいは組成物)を溶融押出ラミネートする方法、該ポリビニルアルコール系樹脂(あるいは組成物)と他の基材とを共押出する方法、該ポリビニルアルコール系樹脂(あるいは組成物)の成形フィルムや成形シートと他の基材とを有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物、ポリウレタン化合物等の公知の接着剤を用いてドライラミネートする方法等が挙げられる。上記の溶融押出し時の溶融成形温度は、150〜220℃、さらには190〜210℃の範囲から選ぶことが多い。
【0039】
かかる他の基材としては、熱可塑性樹脂が有用で、具体的には、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン−プロピレン(ブロック又はランダム)共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、ポリブテン、ポリペンテン、ポリメチルペンテン等のオレフィンの単独又は共重合体、或いはこれらのオレフィンの単独又は共重合体を不飽和カルボン酸又はそのエステルでグラフト変性したものなどの広義のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂(共重合ポリアミドも含む)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、芳香族または脂肪族ポリケトン、更にこれらを還元して得られるポリアルコール類、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物等が挙げられるが、積層体の特性(特に強度と外観)等の実用性の点から、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン(ブロック又はランダム)共重合体、ポリアミド、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)が好ましく用いられ、特に延伸性、透明性、柔軟性に優れたポリプロピレン、エチレン−プロピレン(ブロック又はランダム)共重合体、ポリエチレンが好ましい。
【0040】
さらに、本発明のポリビニルアルコール系樹脂(あるいは組成物)の成形フィルムや成形シート等の成形物に他の基材を押出コートしたり、他の基材のフィルム、シート等を接着剤を用いてラミネートする場合、かかる基材としては、前記の熱可塑性樹脂以外に任意の基材(紙、金属箔、一軸又は二軸延伸プラスチックフィルム又はシートおよびその無機物蒸着物、織布、不織布、金属綿状、木質等)が使用可能である。
【0041】
積層体の層構成は、本発明のポリビニルアルコール系樹脂(あるいは組成物)の層をa(a1、a2、・・・)、他の基材、例えば熱可塑性樹脂層をb(b1、b2、・・・)とするとき、フィルム、シート、ボトル状であれば、a/bの二層構造のみならず、b/a/b、a/b/a、a1/a2/b、a/b1/b2、b2/b1/a/b1/b2、b2/b1/a/b1/a/b1/b2等任意の組み合わせが可能であり、また、これらの積層体は、ポリビニルアルコール系樹脂層のみを水で溶出させ、他の基材を回収または再利用することもでき、応用展開が非常に広い。
【0042】
なお、上記の層構成において、それぞれの層間には、必要に応じて接着性樹脂層を設けることができ、かかる接着性樹脂としては、種々のものを使用することもでき、延伸性に優れた積層体が得られる点で好ましく、bの樹脂の種類によって異なり一概に言えないが、不飽和カルボン酸またはその無水物をオレフィン系重合体(上述のオレフィン単体又は共重合体)に付加反応やグラフト反応等により化学的に結合させて得られるたカルボキシル基を含有する変性オレフィン系重合体を挙げることができ、具体的には、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−プロピレン(ブロック又はランダム)共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−エチルアクリレート共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−酢酸ビニル共重合体等から選ばれた1種または2種以上の混合物が好適なものとして挙げられる。このときの、熱可塑性樹脂に含有される不飽和カルボン酸又はその無水物の量は、0.001〜3重量%が好ましく、更に好ましくは0.01〜1重量%、特に好ましくは0.03〜0.5重量%である。該変性物中の変性量が少ないと、接着性が不充分となることがあり、逆に多いと架橋反応を起こし、成形性が悪くなることがあり好ましくない。またこれらの接着性樹脂には、本発明のポリビニルアルコール系樹脂(あるいは組成物)や他のポリビニルアルコール系樹脂、ポリイソブチレン、エチレン−プロピレンゴム等のゴム・エラストマー成分、更にはb層の樹脂等をブレンドすることも可能である。特に、接着性樹脂の母体のポリオレフィン系樹脂と異なるポリオレフィン系樹脂をブレンドすることにより、接着性が向上することがあり有用である。
【0043】
積層体の各層の厚みは、層構成、bの種類、用途や容器形態、要求される物性などにより一概に言えないが、通常は、a層は5〜500μm(更には10〜200μm)、b層は10〜5000μm(更には30〜1000μm)、接着性樹脂層は5〜400μm(更には10〜150μm)程度の範囲から選択される。a層が5μm未満ではガスバリア性や保温性が不足し、またその厚み制御が不安定となり、逆に500μmを越えると延伸性や柔軟性や耐ピンホール性が劣り、かつ経済的でなく好ましくなく、またb層が10μm未満では剛性が不足し、逆に5000μmを越えると重量が大きくなり、かつ経済的でなく好ましくなく、接着性樹脂層が3μm未満では層間接着性が不足し、またその厚み制御が不安定となり、逆に400μmを越えると重量が大きくなり、かつ経済的でなく好ましくない。
【0044】
該積層体は、そのまま各種形状のものに使用されるが、更に該積層体の物性を改善したり目的とする任意の容器形状に成形するためには加熱延伸処理を施すことも好ましい。ここで加熱延伸処理とは、熱的に均一に加熱されたフィルム、シート、パリソン状の積層体をチャック、プラグ、真空力、圧空力、ブローなどにより、カップ、トレイ、チューブ、ボトル、フィルム状に均一に成形する操作を意味し、かかる延伸については、一軸延伸、二軸延伸のいずれであってもよく、できるだけ高倍率の延伸を行ったほうが物性的に良好で、延伸時にピンホールやクラック、延伸ムラや偏肉、デラミ等の生じない、ガスバリア性や保温性(農業用フィルム用途)等に優れた延伸成形物が得られる。
【0045】
延伸方法としては、ロール延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法、延伸ブロー法等の他、深絞成形、真空成形等の延伸倍率の高いものも採用できる。二軸延伸の場合は同時二軸延伸方式、逐次二軸延伸方式のいずれの方式も採用できる。延伸温度は60〜170℃、好ましくは80〜160℃程度の範囲から選ばれる。
【0046】
かくして延伸が終了した後、次いで熱固定を行う。熱固定は周知の手段で実施可能であり、上記延伸フィルムを緊張状態を保ちながら80〜170℃、好ましくは100〜160℃で2〜600秒間程度熱処理を行う。
【0047】
かくして得られる積層体の最終成形品の形状は任意のものであってよく、フィルム、シート、ボトル、パイプ、フィラメント、異型断面押出物等が例示される。又、得られた延伸フィルムは必要に応じて、冷却処理、圧延処理、印刷処理、ドライラミネート処理、溶液又は溶融コート処理、製袋加工、深絞り加工、箱加工、チューブ加工、スプリット加工等を行うことができる。
【0048】
上記の如く得られる溶融成形品は、繊維、易水溶性フィルム(特に農薬、洗剤、洗濯用衣類、土木用添加剤、殺菌剤、染料、顔料等の物品包装用の易水溶性フィルム)、農業用フィルム、シート、パイプ、チューブ、防漏膜、暫定皮膜、ケミカルレース用水溶性繊維等に用いることができる。
【0049】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
なお、例中「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
【0050】
実施例1
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル(A)20.5kg、メタノール24.6kg、ビニルエチレンカーボネート(B)(前述の(2)式においてR1、R2、R3がいずれも水素である)1.63kg(6モル%)を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.085モル%(対仕込み酢酸ビニルモノマー)投入し、撹拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ重合を行った。重合を開始して2時間後に、更にアゾビスイソブチロニトリル0.05モル%(対初期の仕込み酢酸ビニルモノマー)を添加し更に重合を続けた。その後、酢酸ビニル(A)の重合率が80%となった時点で、重合禁止剤仕込み重合を終了した。続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体(A−B)のメタノール溶液を得た。
【0051】
次いで、該溶液をメタノールで希釈して濃度40%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を40℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル(A)単位に対して10ミリモル%となる量を加えてケン化及び脱炭酸を行った。ケン化及び脱炭酸が進行すると共にケン化物が析出し、遂には粒子状となった。生成したポリビニルアルコールを濾別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、目的物を得た。
【0052】
得られたポリビニルアルコールのケン化度は、残存酢酸ビニル単位の加水分解に要するアルカリ消費量で分析を行ったところ、99.0モル%であり、平均重合度は、JIS K 6726に準じて分析を行ったところ、420であった。1,2−グリコール結合含有量はNMR測定より算出したところ6モル%であった。また、融点を測定(パーキンエルマー社製「DSC−7」で、昇温速度:20℃/分で測定)したところ185℃であった。
【0053】
得られたポリビニルアルコールを2軸同方向押出機に供給して以下の条件でペレット化した。
【0054】
上記で得られたペレットを用いて下記の条件で製膜を行って、フィルム外観及び目やにの評価を下記の要領で行った。
【0055】
(フィルム外観)
上記の条件でロングラン製膜を行って、フィルム外観を目視観察して、以下の判断基準で評価した。
◎・・・2日以上成形を行ってもゲルの発生なし
○・・・1〜2日未満の成形でゲルの発生が見られた
△・・・3時間〜1日未満の成形でゲルの発生が見られた
×・・・3時間未満の成形でゲルが発生
【0056】
(目やに)
上記の条件でロングラン製膜を行って、ダイリップ付近の状況を目視観察して、以下の判断基準で評価した。
◎・・・3日以上成形を行っても目やにの発生なし
○・・・2〜3日未満の成形で目やにの発生が見られた
△・・・3時間〜2日未満の成形で目やにの発生が見られた
×・・・3時間未満の成形で目やにが発生
【0057】
また、別途、上記のペレットを用いて、射出成形(シリンダー温度210℃、金型温度40℃)を行って、内寸10cm角、高さ1.5cm、肉厚1mmの箱型の成型品を作製して、該成型品を30℃の水に浸せきさせ、溶解度合いを目視観察して溶解性の評価を行った。判断基準は以下のとおり。
○・・・ほぼ溶解した
△・・・膨潤して原型は留めず
×・・・殆ど膨潤や溶解が認められず
【0058】
実施例2〜5、比較例1〜3
実施例1に準じて表1に示すポリビニルアルコール系樹脂を製造して、実施例1と同様にペレット化、ロングラン試験(製膜試験)及び射出成形を行った。
なお、比較例3のポリビニルアルコール系樹脂は、特開2001−181405号公報の実施例1に準じて作製した主鎖に1,2−グリコール結合を2.4モル%有するポリビニルアルコール系樹脂である。また、各実施例及び比較例においては、ポリビニルアルコール系樹脂の融点に応じて下記のように溶融条件(シリンダー等の温度)の設定を行った。
【0059】
(ペレット化工程)
実施例2〜4、実施例6〜7、比較例2;実施例1と同様
実施例5;下記に変更
比較例1、3;下記に変更
【0060】
(製膜工程)
実施例2〜4、実施例6〜7、比較例2;実施例1と同様
実施例5;下記に変更
比較例1、3;下記に変更
【0061】
(射出成形)
実施例2〜7及び比較例2;実施例1と同様
比較例1及び3;シリンダー設定温度225℃
【0062】
〔表1〕
*1,2−グリコール結合量(酢酸ビニルに対する変性モノマーの量)
**共重合モノマー
VEC:ビニルエチレンカーボネート
DMVD:2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン
***アルカリ金属またはアルカリ土類金属の含有量、( )内は金属種で以下の要領で含有させた。
Na:ケン化反応後のポリビニルアルコール系樹脂をメタノール洗浄して、酢酸ナトリウム残存量を調整した
Mg:ケン化反応後のポリビニルアルコール系樹脂を十分にメタノール洗浄した後、酢酸マグネシウムを添加した
【0063】
実施例及び比較例の評価結果を表2に示す。
〔表2〕
【0064】
【発明の効果】
本発明のポリビニルアルコール系樹脂は、ケン化度が98モル%以上で、側鎖に1,2−グリコール結合を2〜10モル%含有しているため、溶融成形性に優れ、特に高ケン化度であっても低温での溶融成形性に優れ、ゲルのないフィルム外観が得られ、また目やにの発生も抑制することができ、さらには、ポリビニルアルコール系樹脂本来の水溶性を損なうことなく良好な溶融成形品を得ることができる。
Claims (4)
- ポリビニルアルコール系樹脂が、ビニルエステル系モノマーとビニルエチレンカーボネートとの共重合体をケン化及び脱炭酸して得られたものであることを特徴とする請求項1記載の溶融成形品。
- ポリビニルアルコール系樹脂が、ビニルエステル系モノマーと2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソランとの共重合体をケン化して得られたものであることを特徴とする請求項1記載の溶融成形用品。
- さらにアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩を含有してなることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の溶融成形品。
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