JP6972623B2 - 固体分散体用基剤、それを用いた固体分散体の製造方法及び固体分散体 - Google Patents
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Description
医薬品の生物学的利用能に影響を与える重要な因子の1つとして、薬物の溶解性が挙げられ、これ迄にも溶解性と消化管吸収の関係に関する多くの研究が行われている。特に難溶性薬物では、その溶解速度が吸収の律速段階となる事が知られている。難溶性薬物の溶解性を改善するための製剤方法としては、種々の方法が知られているが、特に注目されるものに固体分散体がある。
固体分散体は、難溶性薬物が固体分散体用基剤(不活性担体)に固体状態で分散したものであり、その製造方法としては、溶媒法、溶融法および混合粉砕法(メカノケミカル法)等がある。
メカノケミカルとは機械的エネルギー(圧縮、剪断、摩擦)が物質の物理化学的性質に変化を起こす現象である。この方法では、機械的操作による格子欠陥、格子不整、比表面積・表面エネルギーの増大等の諸因子が固体の活性を向上させ、薬物の非晶質化促進、非晶質化した薬物の担体中への分散促進をもたらすものと考えられる。
特に近年では、PVA系樹脂のガラス転移温度が高いことから薬物の非晶部の安定性が高くなることが期待され、PVA系樹脂を用いることが検討されている。例えば、PVA系共重合体からなる固体分散体用基剤が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
すなわち、本発明は下記<1>〜<5>に関するものである。
<1>カルボン酸金属塩の含有量が0.8重量%以下のポリビニルアルコール系樹脂を含有してなることを特徴とする固体分散体用基剤。
<2>前記ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度が80〜95モル%であることを特徴とする<1>に記載の固体分散体用基剤。
<3>前記ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度が200〜2500であることを特徴とする<1>又は<2>に記載の固体分散体用基剤。
<4><1>〜<3>のいずれか1つに記載の固体分散体用基剤と薬物の混合物を溶融混練した後、冷却することを特徴とする固体分散体の製造方法。
<5><1>〜<3>のいずれか1つに記載の固体分散体用基剤と薬物を含有する固体分散体。
通常、市場から入手できるPVA系樹脂は、そのカルボン酸金属塩(一般的には酢酸ナトリウム)の含有量は1重量%を超えるようなものである。カルボン酸金属塩は、PVA系樹脂の製造工程での副生成物であるが、PVA系樹脂に含有させることにより溶融粘度を安定させることができたり、防腐効果が得られるといったメリットがあるため、必要以上にカルボン酸金属塩の含有量を少なくすることは行なわれていなかった。しかしながら、本発明の目的においては、上記のメリットも損なうことなく、着色もしにくく、薬物の溶出率の向上が図られた固体分散体が得られる固体分散体用基剤となることを見出したものである。
本発明の固体分散体用基剤は、カルボン酸金属塩の含有量が0.8重量%以下のPVA系樹脂を含有してなるものである。
まず、PVA系樹脂について説明する。
PVA系樹脂は、ビニルエステル系モノマーを重合して得られるポリビニルエステル系樹脂をケン化して得られる、ビニルアルコール構造単位を主体とする樹脂であり、ケン化度相当のビニルアルコール構造単位とビニルエステル構造単位から構成される。
かかるカルボン酸金属塩のカルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミスチリン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ソルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸等が挙げられ、中でも水への溶解性の点からギ酸、酢酸、プロピオン酸、カプリル酸が好ましく、特には酢酸が好ましい。
また、金属塩としては、例えば、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウムなどの2価金属塩等が挙げられ、中でも使用量に対する効果が大きい点からアルカリ金属塩が好ましく、特にはナトリウム塩が好ましい。
具体的には、酢酸ナトリウムが最も好ましい。
なお、本発明において、PVA系樹脂のケン化度は、JIS K 6726に準拠する方法で求められた値とする。
PVA系樹脂の平均重合度が低すぎると、強度が低下し脆くなる傾向があり、平均重合度が高すぎると、融点が高くなり、溶融法で固体分散体を製造することが困難となる傾向がある。
なお、本発明において、ポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K 6726に準拠する方法で求めた平均重合度を用いるものとする。
PVA系樹脂は、例えば、ビニルエステル系モノマーを重合して得られたポリビニルエステル系重合体をケン化することにより得られる。
かかるビニルエステル系モノマーとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられ、経済性の点で酢酸ビニルが好適である。
また、重合反応は、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイルなどの公知のラジカル重合触媒や公知の各種低温活性触媒を用いて行われる。また、反応温度は、35℃以上、公知のラジカル重合触媒や公知の各種低温活性触媒の沸点以下の範囲から選択される。
アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロパノール、ブタノール等の炭素数1〜4の脂肪族アルコールが好ましく、中でもメタノールやエタノールがより好ましい。アルコール中の重合体の濃度は20〜60重量%の範囲から選ばれる。また、必要に応じて、0.3〜10重量%程度の水を加えてもよく、更には、酢酸メチル等の各種エステル類やベンゼン、ヘキサン、DMSO(ジメチルスルホキシド)等の各種溶剤類を添加してもよい。
また、洗浄装置としては、円筒型洗浄装置、向流接触型洗浄装置、遠心分離洗浄装置などが挙げられる。
浴比(洗浄液の質量/ポリビニルエステル系重合体粒子の質量)は、通常、1〜30であり、特に2〜20が好ましい。浴比が大きすぎると、大きな洗浄装置が必要となり、コスト増につながる傾向があり、浴比が小さすぎると、洗浄効果が低下し、洗浄回数を増加させる傾向がある。
本発明の固体分散体用基剤において、PVA系樹脂の含有量は、固体分散体用基剤全体に対して20重量%以上であることが好ましく、30〜90重量%がより好ましく、40〜80重量%が更に好ましい。かかる含有量が少なすぎると、薬物の非晶状態を維持できなくなる傾向がある。なお、PVA系樹脂の含有量が多すぎると、薬物の含有量が少なくなり、薬効を発揮させるために投与する薬物の量が増加してしまう傾向がある。
<薬物>
次に、薬物について説明する。
本発明の固体分散体に含有される薬物としては以下のものが挙げられる。
(1)解熱、鎮痛、抗炎症薬
例えば、サリチル酸、スルピリン、フルフェナム酸、ジクロフェナク、インドメタシン、アトロピン、スコポラミン、モルヒネ、ペチジン、レボルファノール、ケトプロフェン、ナプロキセン、イブプロフェン、オキシモルフォン、アスピリン、アミノピリン、フェナセチン、アセトアミノフェノン、フェニルブタゾン、ケトフェニルブタゾン、メフェナム酸、ブコローム、ベンジダミン、メピリゾール、チアラミド、チノリジン、キシロカイン、ペンタゾシン、デキサメタゾン、ハイドロコーチゾン、プレドニゾロン、アズレン、イソプロピルアンチピリン、サザピリン、クロフェゾン、エトドラッグまたはその塩などが挙げられる。
例えば、ジアゼパム、ロラゼパム、オキサゼパム、オキサゾラム、クロチアゼパム、メダゼパム、テマゼパム、フルジアゼパム、メプロバメート、ニトラゼパム、クロルジアゼボキシドなどが挙げられる。
例えば、クロルプロマジン、プロクロルペラジン、トリフロペラジン、スルピリド、塩酸クロカプラミン、ゾテピン、ハロペリドールなどが挙げられる。
例えば、グリセオフルビン、ランカシジン類〔J.Antibiotics,38,877−885(1985)〕、アゾール系化合物〔2−〔(1R,2R)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−2−ヒドロキシ−1−メチル−3−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)プロピル〕−4−〔4−(2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ)フェニル−3−(2H,4H)−1,2,4−トリアゾロン、フルコナゾール、イトラコナゾール等〕、ナリジクス酸、ピロミド酸、ピペミド酸三水和物、エノキサシン、シノキサシン、オフロキサシン、ノルフロキサシン、塩酸シプロキサシン、スルファメトキサゾール・トリメトプリムなどが挙げられる。
例えば、ゲンタマイシン、ジペカシン、カネンドマイシン、リビドマイシン、トプラマイシン、アミカシン、ディベカシン、フラジオマイシン、シソマイシン、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、ロリテトラサイクリン、ドキシサイクリン、アンピシリン、ピペラシリン、チカルシリン、セファロチン、セファロリジン、セフォチアム、セフォチアムヘキセチル、セフスロジン、セフメノキシム、セフメタゾール、セファゾリン、セフォタキシム、セフォペラゾン、セフチゾキシム、モキサラクタム、チエナマイシン、スルファゼシン、アズスレオナム、アモキシリン、セファレキシン、エリスロマイシン、バカンピシン、ミノサイクリン、クロラムフェニコールまたはそれらの塩などが挙げられる。
例えば、6−O−(N−クロロアセチルカルバモイル)フマギロール、ブレオマイシン、メトトレキサート、アクチノマイシンD、マイトマイシンC、ダウノルビシン、アドリアマイシン、ネオカルチノスタチン、シトシンアラジノシド、フルオロウラシル、テトラヒドロフリル−5−フルオロウラシル、ピシバニール、レンチナン、レバミゾール、ベスタチン、アジメキソン、グリチルリチン、HER2阻害剤(国際公開第01/77107号等に記載の複素環化合物等)、タキソール、塩酸ドキソルビシン、エトポシド、ミトキサントロン、メスナ、ジメスナ、アミノグルテチミド、タモキシフェン、アクロライン、シスプラチン、カルボプラチン、シクロフォスファミド、ロムスチン(CCNU)、カルムスチン(BCNU)などが挙げられる。
例えば、クロフィブラート、2−クロロ−3−〔4−(2−メチル−2−フェニルプロポキシ)フェニル〕プロピオン酸エチル〔Chem. Pharm. Bull.,38,2792−2796(1990)〕、クリノフィブラート、コレスチラミン、ソイステロール、ニコチン酸トコフェロール、ニコモール、ニセリトロール、プロブコール、エラスターゼなどが挙げられる。
例えば、エフェドリン、メチルエフェドリン、ノスカピン、コデイン、ジヒドロコデイン、アロクラマイド、クロルフェジアノール、ピコペリダミン、クロペラスチン、プロトキロール、イソプロテレノール、サルブタモール、テレプタリン、ブロムヘキシン、カルボシスティン、エチルシスティン、メチルシスティンまたはそれらの塩などが挙げられる。
例えば、プリジノール、ツボクラリン、パンクロニウム、カルバミン酸クロルフェネシン、塩酸トルペリゾン、塩酸エペリゾン、塩酸チザニジン、メフェネシン、クロルゾキサゾン、フェンプロバメート、メトカルバモール、クロルメザノン、メシル酸プリジノール、アフロクアロン、バクロフェン、ダントロレンナトリウムなどが挙げられる。
例えば、フェニトイン、エトサクシミド、アセタゾラミド、クロルジアゼポキシド、フェノバルビタール、カルバマゼピン、プリミドンなどが挙げられる。
例えば、ランソプラゾール、メトクロプラミド、ファモチジン、オメプラゾール、スルピリド、トレピブトン、塩酸セトラキサート、ゲフェルナート、マレイン酸イルソグラジン、シメチジン、塩酸ラニチジン、ニザチジン、塩酸ロキサチジンアセテートなどが挙げられる。
例えば、イミプラミン、クロミプラミン、ノキシプチリン、フェネルジンなどが挙げられる。
例えば、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、トリペレナミン、メトジラミン、クレミゾール、ジフェニルピラリン、メトキシフェナミン、フマル酸クレマスチン、塩酸シプロヘプタジン、メキタジン、酒石酸アリメマジンなどが挙げられる。
例えば、トランスバイオキソカンファー、テレフィロール、アミノフィリン、エチレフリンなどが挙げられる。
例えば、プロプラノロール、アルプレノロール、プフェトロール、オクスプレノロール、塩酸プロカインアミド、ジソピラミド、アジマリン、硫酸キニジン、塩酸アプリンジン、塩酸プロパフェノン、塩酸メキシレチンなどが挙げられる。
例えば、オキシフェドリン、ジルチアゼム、トラゾリン、ヘキソベンジン、バメタン、ニフェジピン、ニルバジピン、二硝酸イソソルビット、塩酸ジルチアゼム、トラピジル、ジピリダモール、塩酸ジラゼプ、ベラパミル、塩酸ニカルジピン、酒石酸イフェンプロジル、マレイン酸シネパシド、シクランデレート、シンナリジン、ペントキシフィリンなどが挙げられる。
例えば、ヘキサメトニウムブロミド、ペントリニウム、メカミルアミン、エカラジン、クロニジン、ジルチアゼム、ニフェジピン、フロセミド、トリクロルメチアジド、メチクロチアジド、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメチアジド、エチアジド、シクロペンチアジド、フロロチアジド、エタクリン酸などが挙げられる。
例えば、グリミジン、グリプジド、フェンフォルミン、プフォルミン、メトフォルミン、グリベンクラミド、トルブタミドなどが挙げられる。
例えば、イソニアジド、エタンブトール、パラアミノサリチル酸などが挙げられる。
例えば、レバロルファン、ナロルフィン、ナロキソンまたはそれらの塩などが挙げられる。
例えば、ステロイドホルモン類、例えば、デキサメサゾン、ヘキセストロール、メチマゾール、ペタメサゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノロンアセトニド、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、エストリオールなどが挙げられる。
例えば、プロスタグランジンA1誘導体、ビタミンD誘導体、ビタミンK2誘導体、エイコサペンタエン酸誘導体、ベンジルホスホン酸、ビスホスホン酸誘導体、性ホルモン誘導体、フェノールスルフォフタレイン誘導体、ベンゾチオピランまたはベンゾチエピン誘導体、チエノインダゾール誘導体、メナテトレノン誘導体、ヘリオキサンチン誘導体などの非ペプチド性骨形成促進作用物質、ペプチド性骨形成促進物質などが挙げられる。
例えば、p38MAPキナーゼ阻害剤(国際公開第00/64894号等に記載のチアゾール系化合物等)、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤(MMPI)、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、デキサベタメタゾン、ベタメタゾン等の抗炎症ステロイド剤、インドメタシン、ジクロフェナク、ロキソプロフェン、イブプロフェン、ピロキシカム、スリンダク等の非ステロイド性消炎鎮痛剤などが挙げられる。
例えば、フラボキサート、塩酸オキシブチニン、塩酸テロリジンなどが挙げられる。
例えば、オキセンドロン、アリルエストレノール、酢酸クロルマジノン、カプロン酸ゲストノロン、酢酸オサプロン、フルタミド、ビカルタミドなどが挙げられる。
例えば、ビタミンK類:ビタミンK1、K2、K3およびK4、葉酸(ビタミンM)などが挙げられる。
例えば、ビタミンの各種誘導体、例えば、5,6−トランス−コレカルシフェロール、2,5−ヒドロキシコレカルシフェロール、1−α−ヒドロキシコレカルシフェロールなどのビタミンD3誘導体、5,6−トランス−エルゴカルシフェロール等のビタミンD2誘導体などが挙げられる。
ヒドロキシカム、ダイアセリン、メゲストロール酢酸、ニセロゴリン、プロスタグランジン類など、さらに、虚血性疾患治療薬、免疫疾患治療薬、アルツハイマー病治療薬、骨粗鬆症治療薬、血管新生治療薬、網膜症治療薬、網膜静脈閉塞症治療薬、老人性円板状黄斑変性症治療薬、脳血管攣縮治療薬、脳血栓治療薬、脳梗塞治療薬、脳閉塞症治療薬、脳内出血治療薬、クモ膜下出血治療薬、高血圧性脳症治療薬、一過性脳虚血発作治療薬、多発性梗塞性痴呆治療薬、動脈硬化症治療薬、ハンチントン病治療薬、脳組織障害治療薬、視神経症治療薬、緑内障治療薬、高眼圧症治療薬、網膜剥離治療薬、関節炎治療薬、抗リウマチ薬、抗セプシス薬、抗セプティックショック薬、抗喘息薬、アトピー性皮膚炎治療薬、アレルギー性鼻炎治療薬などが挙げられる。
本発明の固体分散体には、本発明の効果を損なわない範囲において、各種添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば、賦形剤、崩壊剤、pH調整剤、流動化剤、界面活性剤、着色剤、甘味剤及びコーティング剤などが挙げられる。
糖アルコール類としては、例えば、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール及びマルチトールなどが挙げられる。糖類としては、例えば、ブドウ糖、果糖、乳糖、白糖、トレハロース、麦芽糖及びオリゴ糖などが挙げられる。
本発明の固体分散体の製造方法は、下記の方法等が挙げられる。
(i)溶媒法:薬物と基剤を有機溶媒に溶解した後、その溶媒を除去する方法。
(ii)溶融法:薬物と基剤を加熱溶融混練させた後、冷却固化させる方法。
(iii)混合粉砕法(メカノケミカル法):圧縮、剪断、摩擦などの機械エネルギーを用いて、薬物を微細化または基剤へ分散させる方法。
上記の中でも、結晶制御の観点から(ii)の溶融法が好ましい。
以下に、溶融法について詳述する。
なお、溶融に至らない場合であっても、薬物の一部又は全部を非晶質化させることにより固体分散体を得ることができ、本発明においては、この場合も溶融法に含めることとする。
尚、例中「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
還流冷却機、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル280部、メタノール300部、およびアゾビスイソブチロニトリル0.10モル%(対仕込み酢酸ビニル)を仕込み、窒素気流下で撹拌しながら還流が開始するまで温度を上昇させ、還流が開始してから30分後に酢酸ビニル720部を9.5時間等速で滴下させ重合を行った。滴下終了後、酢酸ビニルの重合率が92%となった時点で、m−ジニトロベンゼンを添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し、酢酸ビニル重合体のメタノール溶液(樹脂分53%)を得た。
得られたPVA系樹脂の乾燥粉末のケン化度は、残存酢酸ビニルの加水分解に要するアルカリ消費量で分析を行ったところ、88モル%であり、4%水溶液の粘度は、5.6mPa・sであり、平均重合度は600であった。
酢酸ナトリウム含有量は、PVA系樹脂の乾燥粉末を水に溶かして、メチルオレンジを指示薬とし、塩酸にて中和滴定することにより求めた。酢酸ナトリウムの含有量は0.1%であった。
まず、三角フラスコにPVA系樹脂の乾燥粉末3.00gと水100mlを投入し、加熱撹拌溶解機に置き、PVA系樹脂の乾燥粉末が完全に溶解するまで加熱撹拌した。次に、空冷管を外し、30分間放置し、PVA系樹脂の乾燥粉末中の残存溶剤を追い出し、室温まで冷却した。
得られたPVA系樹脂水溶液100mlと純水(空試験、基準色)100mlに、それぞれメチルオレンジを3滴滴下した。PVA系樹脂水溶液のほうに0.1N−HClを1滴ずつ滴下し、純水と同じ色を呈するまで滴定を続け、中和に要した0.1N−HCl量から酢酸ナトリウムの量を算出した。
上記の固体分散体用基剤44部、薬物として、カルバマゼピン11部を混合し、これを二軸混練機(Brabender社製 プラストグラフ)にて下記条件で溶融混練し、混練完了後に内部から溶融混練物を取り出し、室温で冷却して本発明の固体分散体を取得した。
スクリュー回転数:50rpm
設定温度 :200℃
予熱時間 :3分
混練時間 :5分
得られた固体分散体について、以下の評価を行った。
溶出率測定は日本薬局方外医薬品規格第三部『カルバマゼピン細粒』に準拠し、溶出試験第2法に従って測定した。溶出率を算出するためにUV吸光度計(紫外可視分光光度計、株式会社島津製作所製「V−560」)で吸光度を測定した。具体的には、撹拌翼付のガラス容器に水を900mL投入し、上記で得られた固体分散体1.2gを投入後、撹拌し、180分後にサンプルを20mL抜き取り、メンブランフィルター(DISMIC 0.45μm φ25mm ADVANTEC社製)でろ過し、そのうちの2mLを採取し、更に50mLに希釈して測定サンプルとした。
溶出率(%)=(Ws/Wt)×(At/As)×(1/C)×900
Ws:カルバマゼピン標準品の採取量(mg)
Wt:溶出率測定時のサンプル採取量(g)
C:サンプル1g中のカルバマゼピンの量(mg)
At:試料の285nmの吸光度(abs.)
As:カルバマゼピン標準溶液の285nmの吸光度(abs.)
下記の条件にて、上記の固体分散体をプレート状にしてYI(イエローインデックス)値を測定し、着色の評価をした。(プレート作製方法)
装置 :NSF−37型単動圧縮成型機(株式会社神藤金属工業所製)
温度 :220℃
予熱 :8分
プレス時間 :10分
プレートサイズ:30mm×50mm×0.8mm
装置 :分光色差計 SE−6000 (日本電色工業株式会社製)
測定方法 :反射法
測定回数 :2回
実施例1において、PVAの洗浄浴比を5、洗浄時間を1時間にした以外は、実施例1と同様にして、同様に評価した。結果を表1に示す。
実施例1において、PVA系樹脂の洗浄工程を無くした以外は、実施例1と同様にして、同様に評価した。結果を表1に示す。
また、本発明の固体分散体用基剤を用いた固体分散体においては、YI値が小さく着色の小さいものであった。一方、酢酸ナトリウム含有量の多い比較例1は、着色が大きいものであった。
Claims (3)
- カルボン酸金属塩の含有量が0.8重量%以下のポリビニルアルコール系樹脂を含有し、
前記ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度が80〜95モル%であり、
前記ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度が200〜2500であり、
前記ポリビニルアルコール系樹脂の含有量が、固体分散体用基剤全体に対して20重量%以上であることを特徴とする固体分散体用基剤。 - 請求項1に記載の固体分散体用基剤と薬物の混合物を溶融混練した後、冷却することを特徴とする固体分散体の製造方法。
- 請求項1に記載の固体分散体用基剤と薬物を含有する固体分散体。
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