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JP6972623B2 - 固体分散体用基剤、それを用いた固体分散体の製造方法及び固体分散体 - Google Patents

固体分散体用基剤、それを用いた固体分散体の製造方法及び固体分散体 Download PDF

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Description

本発明は、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂と略記することがある。)を用いた固体分散体用基剤に関し、更に詳しくは薬物を固体分散するための基剤に関するものであり、更にはそれを用いた固体分散体の製造方法及び固体分散体に関するものである。
経口投与用製剤の設計において、生物学的利用能(Bioavailability)を十分高く設計することが、有効性、安全性の面から重要視されている。
医薬品の生物学的利用能に影響を与える重要な因子の1つとして、薬物の溶解性が挙げられ、これ迄にも溶解性と消化管吸収の関係に関する多くの研究が行われている。特に難溶性薬物では、その溶解速度が吸収の律速段階となる事が知られている。難溶性薬物の溶解性を改善するための製剤方法としては、種々の方法が知られているが、特に注目されるものに固体分散体がある。
固体分散体は、難溶性薬物が固体分散体用基剤(不活性担体)に固体状態で分散したものであり、その製造方法としては、溶媒法、溶融法および混合粉砕法(メカノケミカル法)等がある。
溶媒法は、薬物と担体である固体分散体用基剤の両方を溶解する有機溶媒に両者を溶解した後に溶媒を除去するか、または薬物を有機溶媒に溶解し、基剤中に分散させた後に溶媒を除去して固体分散体を製造する方法である。
溶融法は、薬物と固体分散体用基剤の融点降下を利用するものであり、両者を加熱して溶融させた後、これを冷却・固化・粉砕して固体分散体を得る方法や、薬物を比較的融点の低い水溶性高分子に加熱溶解させ、これを冷却・固化・粉砕して固体分散体を得る方法がある。
混合粉砕法は、難溶性薬物と固体分散体用基剤とを加熱せずにボールミルにより混合粉砕したり、ロール混合などにより混合粉砕して、難溶性薬物を非晶質化させ固体分散体を製造する方法である。
メカノケミカルとは機械的エネルギー(圧縮、剪断、摩擦)が物質の物理化学的性質に変化を起こす現象である。この方法では、機械的操作による格子欠陥、格子不整、比表面積・表面エネルギーの増大等の諸因子が固体の活性を向上させ、薬物の非晶質化促進、非晶質化した薬物の担体中への分散促進をもたらすものと考えられる。
従来から、特定の水溶解度を有する化合物及びイオン性又は非イオン性ポリマーを用いた固体分散体用基剤が検討されている(例えば、特許文献1参照。)。
特に近年では、PVA系樹脂のガラス転移温度が高いことから薬物の非晶部の安定性が高くなることが期待され、PVA系樹脂を用いることが検討されている。例えば、PVA系共重合体からなる固体分散体用基剤が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
特表2010−536848号公報 国際公開第2008/133102号
しかしながら、特許文献1及び2に開示の固体分散体用基剤では、薬物の溶出率の点で不充分であり、更なる改良が望まれるものであった。
そこで、本発明ではこのような背景下において、薬物の溶出率に優れ、更に着色の小さい固体分散体を得るための固体分散体用基剤を提供することを目的とするものである。
しかるに、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、カルボン酸金属塩を少量ながら含有するPVA系樹脂を固体分散体用基剤として用いることにより、薬物の溶出率に優れる固体分散体を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記<1>〜<5>に関するものである。
<1>カルボン酸金属塩の含有量が0.8重量%以下のポリビニルアルコール系樹脂を含有してなることを特徴とする固体分散体用基剤。
<2>前記ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度が80〜95モル%であることを特徴とする<1>に記載の固体分散体用基剤。
<3>前記ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度が200〜2500であることを特徴とする<1>又は<2>に記載の固体分散体用基剤。
<4><1>〜<3>のいずれか1つに記載の固体分散体用基剤と薬物の混合物を溶融混練した後、冷却することを特徴とする固体分散体の製造方法。
<5><1>〜<3>のいずれか1つに記載の固体分散体用基剤と薬物を含有する固体分散体。
本発明によれば、薬物の溶出率が高い固体分散体を得るための固体分散体用基剤を得ることができ、かかる固体分散体用基剤を用いた固体分散体では、生体が吸収可能である有効成分の量が増え、更には着色の小さい固体分散体が得られることとなり、大いに期待されるものである。
ここで、本発明においては、カルボン酸金属塩を少量ながら含有するPVA系樹脂を用いることを最大の特徴とするものである。
通常、市場から入手できるPVA系樹脂は、そのカルボン酸金属塩(一般的には酢酸ナトリウム)の含有量は1重量%を超えるようなものである。カルボン酸金属塩は、PVA系樹脂の製造工程での副生成物であるが、PVA系樹脂に含有させることにより溶融粘度を安定させることができたり、防腐効果が得られるといったメリットがあるため、必要以上にカルボン酸金属塩の含有量を少なくすることは行なわれていなかった。しかしながら、本発明の目的においては、上記のメリットも損なうことなく、着色もしにくく、薬物の溶出率の向上が図られた固体分散体が得られる固体分散体用基剤となることを見出したものである。
以下、本発明の固体分散体用基剤について更に詳しく説明する。
本発明の固体分散体用基剤は、カルボン酸金属塩の含有量が0.8重量%以下のPVA系樹脂を含有してなるものである。
<PVA系樹脂>
まず、PVA系樹脂について説明する。
PVA系樹脂は、ビニルエステル系モノマーを重合して得られるポリビニルエステル系樹脂をケン化して得られる、ビニルアルコール構造単位を主体とする樹脂であり、ケン化度相当のビニルアルコール構造単位とビニルエステル構造単位から構成される。
本発明で用いられるPVA系樹脂は、カルボン酸金属塩の含有量が0.8重量%以下である。
かかるカルボン酸金属塩のカルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミスチリン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ソルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸等が挙げられ、中でも水への溶解性の点からギ酸、酢酸、プロピオン酸、カプリル酸が好ましく、特には酢酸が好ましい。
また、金属塩としては、例えば、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウムなどの2価金属塩等が挙げられ、中でも使用量に対する効果が大きい点からアルカリ金属塩が好ましく、特にはナトリウム塩が好ましい。
具体的には、酢酸ナトリウムが最も好ましい。
本発明の固体分散体用基剤は、PVA系樹脂に上記のカルボン酸金属塩が0.8重量%以下含有されるものであり、好ましくは0.4重量%以下、特に好ましくは0.2重量%以下である。かかる含有量が多すぎると本発明の効果が得られにくくなる。また、溶融粘度の安定性の点から含有量の下限値は0.01重量%、特には0.02重量%、更には0.03重量%であることが好ましい。
カルボン酸金属塩の含有方法については、通常、ケン化時の副生成物として酢酸ナトリウムなどのカルボン酸金属塩が1.0〜2.0重量%程度含有されるため、含有量を0.8重量%以下とするのに、メタノール等のアルコール系有機溶剤で洗浄する方法が好ましい。
また、本発明に用いられるPVA系樹脂のケン化度は80〜95モル%であることが好ましく、83〜93モル%であることがより好ましく、85〜90モル%であることが更に好ましい。PVA系樹脂のケン化度が低すぎても高すぎても、薬物の溶出率が低下する傾向がある。
なお、本発明において、PVA系樹脂のケン化度は、JIS K 6726に準拠する方法で求められた値とする。
本発明に用いられるPVA系樹脂の平均重合度は、200〜2500であることが好ましく、400〜1500がさらに好ましく、300〜1000が特に好ましい。
PVA系樹脂の平均重合度が低すぎると、強度が低下し脆くなる傾向があり、平均重合度が高すぎると、融点が高くなり、溶融法で固体分散体を製造することが困難となる傾向がある。
なお、本発明において、ポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K 6726に準拠する方法で求めた平均重合度を用いるものとする。
ここで、本発明で使用されるPVA系樹脂の製造方法を更に詳しく説明する。
PVA系樹脂は、例えば、ビニルエステル系モノマーを重合して得られたポリビニルエステル系重合体をケン化することにより得られる。
かかるビニルエステル系モノマーとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられ、経済性の点で酢酸ビニルが好適である。
また、本発明の効果を阻害しない程度に、上記ビニルエステル系モノマーと共重合性を有するモノマーを共重合させることもでき、このような共重合モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、3,4−ジヒドロキシ−1−ブテン等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類及びそのアシル化物などの誘導体、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ウンデシレン酸等の不飽和酸類、その塩、モノエステル、あるいはジアルキルエステル等のエステル類、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸類、その塩、アルキルビニルエーテル類、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、ビニルエチレンカーボネート、2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン、グリセリンモノアリルエーテル等のビニル化合物、酢酸イソプロペニル、1−メトキシビニルアセテート等の置換酢酸ビニル類、塩化ビニリデン、1,4−ジアセトキシ−2−ブテン、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、ビニレンカーボネート、1,3−ジアセトキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジプロピオニルオキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジブチロニルオキシ−2−メチレンプロパン等のヒドロキシメチルビニリデンジアセテート等が挙げられる。かかる共重合モノマーの含有量は、重合体全量を基準として、通常10モル%以下、好ましくは5モル%以下、特に好ましくは1モル%以下である。本発明においては安全性の点で、ビニルアルコール構造単位と未ケン化部分のビニルエステル構造単位のみからなる未変性PVAが好ましい。
上記ビニルエステル系モノマー及び共重合モノマーを重合するにあたっては特に制限はなく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、分散重合、又は乳化重合等の公知の方法を採用することができるが、通常は溶液重合が行われる。
かかる重合で用いられる溶媒としては、通常、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロパノール、ブタノール等の炭素数1〜4の脂肪族アルコールやアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等が挙げられ、工業的にはメタノールが好適に使用される。
また、重合反応は、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイルなどの公知のラジカル重合触媒や公知の各種低温活性触媒を用いて行われる。また、反応温度は、35℃以上、公知のラジカル重合触媒や公知の各種低温活性触媒の沸点以下の範囲から選択される。
得られたポリビニルエステル系重合体は、次いで連続式又はバッチ式にてケン化される。かかるケン化にあたっては、アルカリケン化又は酸ケン化のいずれも採用できるが、工業的には重合体をアルコールに溶解してアルカリ触媒の存在下に行われるアルカリケン化が好適である。
アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロパノール、ブタノール等の炭素数1〜4の脂肪族アルコールが好ましく、中でもメタノールやエタノールがより好ましい。アルコール中の重合体の濃度は20〜60重量%の範囲から選ばれる。また、必要に応じて、0.3〜10重量%程度の水を加えてもよく、更には、酢酸メチル等の各種エステル類やベンゼン、ヘキサン、DMSO(ジメチルスルホキシド)等の各種溶剤類を添加してもよい。
上記のアルカリ触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートの如きアルカリ触媒を具体的に挙げることができ、かかる触媒の使用量はモノマーに対して1〜100ミリモル当量にすることが好ましい。
ケン化後、得られたPVA系樹脂を、洗浄液で洗浄する。洗浄液としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類が挙げられ、洗浄効率と乾燥効率の観点からメタノールが好ましい。
洗浄方法としては、バッチ式洗浄方法と連続式洗浄方法が挙げられ、通常はバッチ式洗浄方法が採用される。洗浄時の撹拌方式(装置)としては、スクリュー翼、リボンブレンダー、ニーダー等が挙げられる。
また、洗浄装置としては、円筒型洗浄装置、向流接触型洗浄装置、遠心分離洗浄装置などが挙げられる。
浴比(洗浄液の質量/ポリビニルエステル系重合体粒子の質量)は、通常、1〜30であり、特に2〜20が好ましい。浴比が大きすぎると、大きな洗浄装置が必要となり、コスト増につながる傾向があり、浴比が小さすぎると、洗浄効果が低下し、洗浄回数を増加させる傾向がある。
洗浄時の温度は、通常、10〜80℃であり、特に20〜70℃が好ましい。温度が高すぎると、洗浄液の揮発量が多くなり、還流設備を必要とする傾向がある。温度が低すぎると、洗浄効率が低下する傾向がある。洗浄時間は、通常、5分〜12時間であり、特に30分〜4時間が好ましい。洗浄時間が長すぎると、生産効率が低下する傾向があり、洗浄時間が短すぎると、洗浄が不十分となり、カルボン酸金属塩が多く残留する傾向がある。また、洗浄回数は、通常、1〜10回であり、特に1〜5回が好ましい。洗浄回数が多すぎると、生産性が低下し、コストがかかる傾向がある。
洗浄されたポリビニルエステル系重合体ケン化物の粒子を連続式又はバッチ式にて熱風などで乾燥し、本発明で用いられるPVA系樹脂の粉体を得る。乾燥温度は、通常、50〜150℃であり、特に60〜130℃、殊に70〜110℃が好ましい。乾燥温度が高すぎると、PVA系樹脂が熱劣化する傾向があり、乾燥温度が低すぎると、乾燥に長時間を要する傾向がある。乾燥時間は、通常、1〜48時間であり、特に2〜36時間が好ましい。乾燥時間が長すぎると、PVA系樹脂が熱劣化する傾向があり、乾燥時間が短すぎると、乾燥が不十分となったり、高温乾燥を要したりする傾向がある。
乾燥後のPVA系樹脂の粉体中に含まれる溶媒の含有量は、通常、0〜10重量%であり、特に0.01〜5重量%、殊に0.1〜1重量%とするのが好ましい。
かくして本発明で用いられるPVA系樹脂が得られ、これを含有することにより本発明の固体分散体用基剤となる。
本発明の固体分散体用基剤において、PVA系樹脂の含有量は、固体分散体用基剤全体に対して20重量%以上であることが好ましく、30〜90重量%がより好ましく、40〜80重量%が更に好ましい。かかる含有量が少なすぎると、薬物の非晶状態を維持できなくなる傾向がある。なお、PVA系樹脂の含有量が多すぎると、薬物の含有量が少なくなり、薬効を発揮させるために投与する薬物の量が増加してしまう傾向がある。
また、本発明の固体分散体は、本発明の固体分散体用基剤と薬物を含有してなるものである。
<薬物>
次に、薬物について説明する。
本発明の固体分散体に含有される薬物としては以下のものが挙げられる。
(1)解熱、鎮痛、抗炎症薬
例えば、サリチル酸、スルピリン、フルフェナム酸、ジクロフェナク、インドメタシン、アトロピン、スコポラミン、モルヒネ、ペチジン、レボルファノール、ケトプロフェン、ナプロキセン、イブプロフェン、オキシモルフォン、アスピリン、アミノピリン、フェナセチン、アセトアミノフェノン、フェニルブタゾン、ケトフェニルブタゾン、メフェナム酸、ブコローム、ベンジダミン、メピリゾール、チアラミド、チノリジン、キシロカイン、ペンタゾシン、デキサメタゾン、ハイドロコーチゾン、プレドニゾロン、アズレン、イソプロピルアンチピリン、サザピリン、クロフェゾン、エトドラッグまたはその塩などが挙げられる。
(2)精神安定薬
例えば、ジアゼパム、ロラゼパム、オキサゼパム、オキサゾラム、クロチアゼパム、メダゼパム、テマゼパム、フルジアゼパム、メプロバメート、ニトラゼパム、クロルジアゼボキシドなどが挙げられる。
(3)抗精神病薬
例えば、クロルプロマジン、プロクロルペラジン、トリフロペラジン、スルピリド、塩酸クロカプラミン、ゾテピン、ハロペリドールなどが挙げられる。
(4)抗菌薬
例えば、グリセオフルビン、ランカシジン類〔J.Antibiotics,38,877−885(1985)〕、アゾール系化合物〔2−〔(1R,2R)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−2−ヒドロキシ−1−メチル−3−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)プロピル〕−4−〔4−(2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ)フェニル−3−(2H,4H)−1,2,4−トリアゾロン、フルコナゾール、イトラコナゾール等〕、ナリジクス酸、ピロミド酸、ピペミド酸三水和物、エノキサシン、シノキサシン、オフロキサシン、ノルフロキサシン、塩酸シプロキサシン、スルファメトキサゾール・トリメトプリムなどが挙げられる。
(5)抗生物質
例えば、ゲンタマイシン、ジペカシン、カネンドマイシン、リビドマイシン、トプラマイシン、アミカシン、ディベカシン、フラジオマイシン、シソマイシン、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、ロリテトラサイクリン、ドキシサイクリン、アンピシリン、ピペラシリン、チカルシリン、セファロチン、セファロリジン、セフォチアム、セフォチアムヘキセチル、セフスロジン、セフメノキシム、セフメタゾール、セファゾリン、セフォタキシム、セフォペラゾン、セフチゾキシム、モキサラクタム、チエナマイシン、スルファゼシン、アズスレオナム、アモキシリン、セファレキシン、エリスロマイシン、バカンピシン、ミノサイクリン、クロラムフェニコールまたはそれらの塩などが挙げられる。
(6)抗腫瘍薬
例えば、6−O−(N−クロロアセチルカルバモイル)フマギロール、ブレオマイシン、メトトレキサート、アクチノマイシンD、マイトマイシンC、ダウノルビシン、アドリアマイシン、ネオカルチノスタチン、シトシンアラジノシド、フルオロウラシル、テトラヒドロフリル−5−フルオロウラシル、ピシバニール、レンチナン、レバミゾール、ベスタチン、アジメキソン、グリチルリチン、HER2阻害剤(国際公開第01/77107号等に記載の複素環化合物等)、タキソール、塩酸ドキソルビシン、エトポシド、ミトキサントロン、メスナ、ジメスナ、アミノグルテチミド、タモキシフェン、アクロライン、シスプラチン、カルボプラチン、シクロフォスファミド、ロムスチン(CCNU)、カルムスチン(BCNU)などが挙げられる。
(7)抗高脂血症薬
例えば、クロフィブラート、2−クロロ−3−〔4−(2−メチル−2−フェニルプロポキシ)フェニル〕プロピオン酸エチル〔Chem. Pharm. Bull.,38,2792−2796(1990)〕、クリノフィブラート、コレスチラミン、ソイステロール、ニコチン酸トコフェロール、ニコモール、ニセリトロール、プロブコール、エラスターゼなどが挙げられる。
(8)鎮咳・去痰薬
例えば、エフェドリン、メチルエフェドリン、ノスカピン、コデイン、ジヒドロコデイン、アロクラマイド、クロルフェジアノール、ピコペリダミン、クロペラスチン、プロトキロール、イソプロテレノール、サルブタモール、テレプタリン、ブロムヘキシン、カルボシスティン、エチルシスティン、メチルシスティンまたはそれらの塩などが挙げられる。
(9)筋弛緩薬
例えば、プリジノール、ツボクラリン、パンクロニウム、カルバミン酸クロルフェネシン、塩酸トルペリゾン、塩酸エペリゾン、塩酸チザニジン、メフェネシン、クロルゾキサゾン、フェンプロバメート、メトカルバモール、クロルメザノン、メシル酸プリジノール、アフロクアロン、バクロフェン、ダントロレンナトリウムなどが挙げられる。
(10)抗てんかん薬
例えば、フェニトイン、エトサクシミド、アセタゾラミド、クロルジアゼポキシド、フェノバルビタール、カルバマゼピン、プリミドンなどが挙げられる。
(11)抗潰瘍薬
例えば、ランソプラゾール、メトクロプラミド、ファモチジン、オメプラゾール、スルピリド、トレピブトン、塩酸セトラキサート、ゲフェルナート、マレイン酸イルソグラジン、シメチジン、塩酸ラニチジン、ニザチジン、塩酸ロキサチジンアセテートなどが挙げられる。
(12)抗うつ薬
例えば、イミプラミン、クロミプラミン、ノキシプチリン、フェネルジンなどが挙げられる。
(13)抗アレルギー薬
例えば、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、トリペレナミン、メトジラミン、クレミゾール、ジフェニルピラリン、メトキシフェナミン、フマル酸クレマスチン、塩酸シプロヘプタジン、メキタジン、酒石酸アリメマジンなどが挙げられる。
(14)強心薬
例えば、トランスバイオキソカンファー、テレフィロール、アミノフィリン、エチレフリンなどが挙げられる。
(15)不整脈治療薬
例えば、プロプラノロール、アルプレノロール、プフェトロール、オクスプレノロール、塩酸プロカインアミド、ジソピラミド、アジマリン、硫酸キニジン、塩酸アプリンジン、塩酸プロパフェノン、塩酸メキシレチンなどが挙げられる。
(16)血管拡張薬
例えば、オキシフェドリン、ジルチアゼム、トラゾリン、ヘキソベンジン、バメタン、ニフェジピン、ニルバジピン、二硝酸イソソルビット、塩酸ジルチアゼム、トラピジル、ジピリダモール、塩酸ジラゼプ、ベラパミル、塩酸ニカルジピン、酒石酸イフェンプロジル、マレイン酸シネパシド、シクランデレート、シンナリジン、ペントキシフィリンなどが挙げられる。
(17)降圧利尿薬
例えば、ヘキサメトニウムブロミド、ペントリニウム、メカミルアミン、エカラジン、クロニジン、ジルチアゼム、ニフェジピン、フロセミド、トリクロルメチアジド、メチクロチアジド、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメチアジド、エチアジド、シクロペンチアジド、フロロチアジド、エタクリン酸などが挙げられる。
(18)糖尿病治療薬
例えば、グリミジン、グリプジド、フェンフォルミン、プフォルミン、メトフォルミン、グリベンクラミド、トルブタミドなどが挙げられる。
(19)抗結核薬
例えば、イソニアジド、エタンブトール、パラアミノサリチル酸などが挙げられる。
(20)麻薬拮抗薬
例えば、レバロルファン、ナロルフィン、ナロキソンまたはそれらの塩などが挙げられる。
(21)ホルモン薬
例えば、ステロイドホルモン類、例えば、デキサメサゾン、ヘキセストロール、メチマゾール、ペタメサゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノロンアセトニド、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、エストリオールなどが挙げられる。
(22)骨・軟骨疾患予防・治療剤
例えば、プロスタグランジンA1誘導体、ビタミンD誘導体、ビタミンK誘導体、エイコサペンタエン酸誘導体、ベンジルホスホン酸、ビスホスホン酸誘導体、性ホルモン誘導体、フェノールスルフォフタレイン誘導体、ベンゾチオピランまたはベンゾチエピン誘導体、チエノインダゾール誘導体、メナテトレノン誘導体、ヘリオキサンチン誘導体などの非ペプチド性骨形成促進作用物質、ペプチド性骨形成促進物質などが挙げられる。
(23)関節疾患治療剤
例えば、p38MAPキナーゼ阻害剤(国際公開第00/64894号等に記載のチアゾール系化合物等)、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤(MMPI)、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、デキサベタメタゾン、ベタメタゾン等の抗炎症ステロイド剤、インドメタシン、ジクロフェナク、ロキソプロフェン、イブプロフェン、ピロキシカム、スリンダク等の非ステロイド性消炎鎮痛剤などが挙げられる。
(24)頻尿治療剤塩酸
例えば、フラボキサート、塩酸オキシブチニン、塩酸テロリジンなどが挙げられる。
(25)抗アンドロゲン剤
例えば、オキセンドロン、アリルエストレノール、酢酸クロルマジノン、カプロン酸ゲストノロン、酢酸オサプロン、フルタミド、ビカルタミドなどが挙げられる。
(26)脂溶性ビタミン薬
例えば、ビタミンK類:ビタミンK、K、KおよびK、葉酸(ビタミンM)などが挙げられる。
(27)ビタミン誘導体
例えば、ビタミンの各種誘導体、例えば、5,6−トランス−コレカルシフェロール、2,5−ヒドロキシコレカルシフェロール、1−α−ヒドロキシコレカルシフェロールなどのビタミンD誘導体、5,6−トランス−エルゴカルシフェロール等のビタミンD誘導体などが挙げられる。
(28)その他
ヒドロキシカム、ダイアセリン、メゲストロール酢酸、ニセロゴリン、プロスタグランジン類など、さらに、虚血性疾患治療薬、免疫疾患治療薬、アルツハイマー病治療薬、骨粗鬆症治療薬、血管新生治療薬、網膜症治療薬、網膜静脈閉塞症治療薬、老人性円板状黄斑変性症治療薬、脳血管攣縮治療薬、脳血栓治療薬、脳梗塞治療薬、脳閉塞症治療薬、脳内出血治療薬、クモ膜下出血治療薬、高血圧性脳症治療薬、一過性脳虚血発作治療薬、多発性梗塞性痴呆治療薬、動脈硬化症治療薬、ハンチントン病治療薬、脳組織障害治療薬、視神経症治療薬、緑内障治療薬、高眼圧症治療薬、網膜剥離治療薬、関節炎治療薬、抗リウマチ薬、抗セプシス薬、抗セプティックショック薬、抗喘息薬、アトピー性皮膚炎治療薬、アレルギー性鼻炎治療薬などが挙げられる。
また、溶解性向上の観点から難溶性薬物が好ましく、そういった難溶性薬物としては、例えば、カルバマゼピン、インドメタシン、ナプロキセン、イブプロフェン、フェナセチン、フェニルブタゾン、グリセオフルビン、アゾール系化合物、フェニトイン、二硝酸イソソルビット、ニトロフェニルピリジン系化合物などが挙げられる。ニトロフェニルピリジン系化合物はニトロフェニル基とピリジン環構造を有する難溶性化合物を包含する。ニトロフェニルピリジン系化合物としては、ピリジン環の2位〜4位のいずれかにニトロフェニル基が結合した構造を有する化合物が好ましい。具体的な化合物としては、ニフェジピン、ニルバジピンなどが挙げられる。
上記の薬物の含有量は、バイオアベイラビリティーに応じて適宜調整される。薬物は、一般に医療、食品分野などで用いられる希釈剤などによって希釈されたものであってもよい。また薬物の苦味のマスキングを目的として処理したものを用いてもよい。
<その他の添加剤>
本発明の固体分散体には、本発明の効果を損なわない範囲において、各種添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば、賦形剤、崩壊剤、pH調整剤、流動化剤、界面活性剤、着色剤、甘味剤及びコーティング剤などが挙げられる。
賦形剤としては、例えば、糖アルコール類、糖類、リン酸カルシウム類、結晶セルロース類、デンプン類、リン酸ナトリウム類及びゼラチンなどから選ばれた1種又は2種以上の成分が用いられる。好ましい賦形剤としては糖アルコール類や糖類が挙げられる。
糖アルコール類としては、例えば、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール及びマルチトールなどが挙げられる。糖類としては、例えば、ブドウ糖、果糖、乳糖、白糖、トレハロース、麦芽糖及びオリゴ糖などが挙げられる。
崩壊剤としては、例えば、カルメロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、セルロース又はその誘導体及びデンプン又はその誘導体等が挙げられる。
pH調整剤としては、例えば、クエン酸及びその塩、リン酸及びその塩、炭酸及びその塩、酒石酸及びその塩、フマル酸及びその塩、酢酸及びその塩、アミノ酸及びその塩、コハク酸及びその塩並びに乳酸及びその塩などが挙げられる。
流動化剤としては、例えば、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、酸化チタン、ステアリン酸、トウモロコシゲル及び重質無水ケイ酸などが挙げられる。
界面活性剤としては、例えば、リン脂質、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート類、リン酸水素ナトリウム類及びリン酸水素カリウム類などが挙げられる。
着色剤としては、例えば、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、食用黄色5号、食用黄色4号、アルミニウムキレート、酸化チタン及びタルクなどが挙げられる。
甘味剤としては、例えば、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ソーマチン及びスクラロースなどが挙げられる。
コーティング剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンアクリル酸エチル、メタクリル酸メチルコポリマー分散液、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート及びメタクリル酸コポリマーなどが挙げられる。
<固体分散体の製造方法>
本発明の固体分散体の製造方法は、下記の方法等が挙げられる。
(i)溶媒法:薬物と基剤を有機溶媒に溶解した後、その溶媒を除去する方法。
(ii)溶融法:薬物と基剤を加熱溶融混練させた後、冷却固化させる方法。
(iii)混合粉砕法(メカノケミカル法):圧縮、剪断、摩擦などの機械エネルギーを用いて、薬物を微細化または基剤へ分散させる方法。
上記の中でも、結晶制御の観点から(ii)の溶融法が好ましい。
以下に、溶融法について詳述する。
溶融法とは、薬物及び固体分散体用基剤の混合物を加熱処理し、必要に応じて加熱処理物の形態を調整(粉砕、粉末化、成形等)することによって固体分散体を得る方法である。
薬物及び本発明の固体分散体用基剤の混合物の加熱処理は、混合物全てを溶融する温度としてもよいし、両者の一部を溶融する温度としてもよいし、溶融に至らない場合でもその特性に応じて、薬物の一部又は全部が非晶質化する温度条件を選択することが出来る。
なお、溶融に至らない場合であっても、薬物の一部又は全部を非晶質化させることにより固体分散体を得ることができ、本発明においては、この場合も溶融法に含めることとする。
また、薬物及び固体分散体用基剤の混合物とは、溶融した固体分散体用基剤に薬物を配合する方法により得られる混合物や、固体分散体用基剤と薬物をドライブレンドした後に溶融混練する方法により得られる混合物などを含むものである。
加熱処理に使用される加熱手段は特に限定されるものではなく、当業者により利用可能な適宜の加熱手段を採用することができ、より具体的には、乾燥器、オイルバス、電気炉等による加熱、超音波照射による加熱、二軸式混練処理による加熱、単軸及び二軸溶融押出し処理(エクストルーダ)による加熱、マイクロ波照射による加熱などである。
加熱処理物の形態を調整する手段は特に限定されるものではなく、当業者により利用可能な適宜の手段を採用することができ、例えば、粉砕手段、成形手段等を採用することができる。成形手段としては、押出成形(例えば、単軸押出、二軸押出、多軸押出、ホットメルトカレンダー法)、射出成形(例えば、二軸エクストルーダー)、圧縮成形(例えば、打錠、造粒)などが例示される。
加熱処理による固体分散体の製造と固体分散体の形態の調整を同時に行う場合には、加熱手段を備えた加熱処理物の形態を調整する装置を採用すればよい。
加熱処理の温度は必ずしも加熱対象が溶融する温度は必要ではない。溶融温度よりも低い加熱温度で固体分散体を製造できることが知られており、本発明においても、なるべく低い温度で固体分散体を製造することによって、高温で分解、劣化等が起こる薬物も固体分散体とすることができる。通常、80〜220℃、好ましくは120〜200℃、より好ましくは150〜200℃である。なお、超音波照射は超音波を粉体混合物に当てるものであり、超音波照射による加熱の場合、超音波照射エネルギーは通常600〜2000J、好ましくは700〜1800J、より好ましくは800〜1300Jである。このような装置としては、テクネア・エンジニアリング社製の超音波成形機USTM/L20などを使用することができる。かかる装置は、薬物、固体分散体用基剤及び必要に応じ添加剤の粉体混合物をかかる装置に備えられた臼内に充填し、この混合物に超音波を照射しつつ圧縮成形するものである。
また、二軸押出成形機、二軸エクストルーダー等には加熱手段を備えたものがあり、本発明における加熱処理としては、超音波照射しつつ圧縮成形する手段、加熱手段を備えた二軸押出成形機、加熱手段を備えた二軸エクストルーダーによる製造が好ましい。
かくして本発明の固体分散体用基剤を用いた固体分散体を得ることができ、得られる固体分散体は薬物の溶出率に優れ、着色の小さいものとなるのである。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
尚、例中「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
実施例1〔固体分散体用基剤の作製〕
還流冷却機、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル280部、メタノール300部、およびアゾビスイソブチロニトリル0.10モル%(対仕込み酢酸ビニル)を仕込み、窒素気流下で撹拌しながら還流が開始するまで温度を上昇させ、還流が開始してから30分後に酢酸ビニル720部を9.5時間等速で滴下させ重合を行った。滴下終了後、酢酸ビニルの重合率が92%となった時点で、m−ジニトロベンゼンを添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し、酢酸ビニル重合体のメタノール溶液(樹脂分53%)を得た。
続いて、上記メタノール溶液をさらにメタノールで希釈して、濃度50%に調整してニーダーに仕込んだ。溶液温度を35℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの4%メタノール溶液を重合体中の酢酸ビニル構造単位1モルに対して6.0ミリモルとなる割合で加えてケン化を行った。ケン化が進行するとともにケン化物が析出し、粒子状となった時点で固液分離により濾別し、乾燥した。
得られたPVA系樹脂の乾燥粉末のケン化度は、残存酢酸ビニルの加水分解に要するアルカリ消費量で分析を行ったところ、88モル%であり、4%水溶液の粘度は、5.6mPa・sであり、平均重合度は600であった。
上記で得られたPVA系樹脂の乾燥粉末を浴比10のメタノール中に投入して3時間撹拌し、洗浄した。その後、固液分離し、得られたPVA系樹脂の粉末を90℃で揮発分が1%以下になるまで真空乾燥し、PVA系樹脂の乾燥粉末を得て、固体分散体用基剤とした。
酢酸ナトリウム含有量は、PVA系樹脂の乾燥粉末を水に溶かして、メチルオレンジを指示薬とし、塩酸にて中和滴定することにより求めた。酢酸ナトリウムの含有量は0.1%であった。
以下に中和滴定の方法を詳細に説明する。
まず、三角フラスコにPVA系樹脂の乾燥粉末3.00gと水100mlを投入し、加熱撹拌溶解機に置き、PVA系樹脂の乾燥粉末が完全に溶解するまで加熱撹拌した。次に、空冷管を外し、30分間放置し、PVA系樹脂の乾燥粉末中の残存溶剤を追い出し、室温まで冷却した。
得られたPVA系樹脂水溶液100mlと純水(空試験、基準色)100mlに、それぞれメチルオレンジを3滴滴下した。PVA系樹脂水溶液のほうに0.1N−HClを1滴ずつ滴下し、純水と同じ色を呈するまで滴定を続け、中和に要した0.1N−HCl量から酢酸ナトリウムの量を算出した。
〔固体分散体の作製〕
上記の固体分散体用基剤44部、薬物として、カルバマゼピン11部を混合し、これを二軸混練機(Brabender社製 プラストグラフ)にて下記条件で溶融混練し、混練完了後に内部から溶融混練物を取り出し、室温で冷却して本発明の固体分散体を取得した。
(溶融混練条件)
スクリュー回転数:50rpm
設定温度 :200℃
予熱時間 :3分
混練時間 :5分
得られた固体分散体について、以下の評価を行った。
〔溶出率評価〕
溶出率測定は日本薬局方外医薬品規格第三部『カルバマゼピン細粒』に準拠し、溶出試験第2法に従って測定した。溶出率を算出するためにUV吸光度計(紫外可視分光光度計、株式会社島津製作所製「V−560」)で吸光度を測定した。具体的には、撹拌翼付のガラス容器に水を900mL投入し、上記で得られた固体分散体1.2gを投入後、撹拌し、180分後にサンプルを20mL抜き取り、メンブランフィルター(DISMIC 0.45μm φ25mm ADVANTEC社製)でろ過し、そのうちの2mLを採取し、更に50mLに希釈して測定サンプルとした。
また、別に、純度98%以上で、既知のカルバマゼピン(和光純薬工業製)を105℃で2時間乾燥し、その約0.022gを量り、メタノール10mLに溶解し、水を加えて正確に100mLにした。この液4mLを水で100mLに希釈し標準溶液とした。標準溶液と試料溶液と水をリファレンスとし、紫外可視吸光度測定法(紫外可視分光光度計、株式会社島津製作所製「V−560」)で波長285nmの測定を実施し、吸光度At、Asを測定した。
カルバマゼピンの溶出率は以下の式で算出した。結果を表1に示す。
溶出率(%)=(Ws/Wt)×(At/As)×(1/C)×900
Ws:カルバマゼピン標準品の採取量(mg)
Wt:溶出率測定時のサンプル採取量(g)
C:サンプル1g中のカルバマゼピンの量(mg)
At:試料の285nmの吸光度(abs.)
As:カルバマゼピン標準溶液の285nmの吸光度(abs.)
〔着色評価〕
下記の条件にて、上記の固体分散体をプレート状にしてYI(イエローインデックス)値を測定し、着色の評価をした。(プレート作製方法)
装置 :NSF−37型単動圧縮成型機(株式会社神藤金属工業所製)
温度 :220℃
予熱 :8分
プレス時間 :10分
プレートサイズ:30mm×50mm×0.8mm
(YI測定条件)
装置 :分光色差計 SE−6000 (日本電色工業株式会社製)
測定方法 :反射法
測定回数 :2回
実施例2
実施例1において、PVAの洗浄浴比を5、洗浄時間を1時間にした以外は、実施例1と同様にして、同様に評価した。結果を表1に示す。
比較例1
実施例1において、PVA系樹脂の洗浄工程を無くした以外は、実施例1と同様にして、同様に評価した。結果を表1に示す。
Figure 0006972623
本発明の固体分散体用基剤を用いた固体分散体(実施例1及び2)においては、溶出率が高く、生物学的利用能に優れるものであった。一方、酢酸ナトリウム含有量の多い比較例1は、溶出率が低く、生物学的利用能が低いものであった。
また、本発明の固体分散体用基剤を用いた固体分散体においては、YI値が小さく着色の小さいものであった。一方、酢酸ナトリウム含有量の多い比較例1は、着色が大きいものであった。
本発明の固体分散体は、薬物の溶出率が高く、生物学的利用可能性が高く、着色も小さいため医薬製剤に有用である。

Claims (3)

  1. カルボン酸金属塩の含有量が0.8重量%以下のポリビニルアルコール系樹脂を含有し
    前記ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度が80〜95モル%であり、
    前記ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度が200〜2500であり、
    前記ポリビニルアルコール系樹脂の含有量が、固体分散体用基剤全体に対して20重量%以上であることを特徴とする固体分散体用基剤。
  2. 請求項1に記載の固体分散体用基剤と薬物の混合物を溶融混練した後、冷却することを特徴とする固体分散体の製造方法。
  3. 請求項1に記載の固体分散体用基剤と薬物を含有する固体分散体。
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