JP4051791B2 - ハーフトロイダル型無段変速機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明に係るハーフトロイダル型無段変速機は、例えば自動車用の変速機として、或は各種産業機械用の変速機として利用する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用変速機として、図5〜6に略示する様なハーフトロイダル型無段変速機を使用する事が研究されている。このハーフトロイダル型無段変速機は、例えば実開昭62−71465号公報に開示されている様に、入力軸1と同心に入力側ディスク2を支持し、この入力軸1と同心に配置した出力軸3の端部に出力側ディスク4を固定している。ハーフトロイダル型無段変速機を納めたケーシングの内側には、上記入力軸1並びに出力軸3に対し捻れの位置にある枢軸5、5を中心として揺動するトラニオン6、6を設けている。
【0003】
即ち、上記両ディスク2、4の中心軸から外れた部分に配置したこれら各トラニオン6、6は、それぞれの両端部外面に上記枢軸5、5を、上記両ディスク2、4の中心軸の方向に対し直角方向に、且つ、互いに同心に設けている。又、これら各トラニオン6、6の中間部には変位軸7、7の基端部を支持し、上記枢軸5、5を中心として上記各トラニオン6、6を揺動させる事により、上記各変位軸7、7の傾斜角度の調節を自在としている。上記各トラニオン6、6に支持した変位軸7、7の周囲には、それぞれパワーローラ8、8を回転自在に支持している。そして、これら各パワーローラ8、8を、上記入力側、出力側両ディスク2、4の、互いに対向する内側面2a、4a同士の間に挟持している。これら各内側面2a、4aは、それぞれ断面が、上記枢軸5を中心とする円弧を回転させて得られる凹面をなしている。そして、球状凸面に形成した上記各パワーローラ8、8の周面8a、8aを、上記内側面2a、4aに当接させている。
【0004】
上記入力軸1と入力側ディスク2との間には、ローディングカム装置9を設け、このローディングカム装置9によって、上記入力側ディスク2を出力側ディスク4に向け弾性的に押圧しつつ、この入力側ディスク2を回転駆動自在としている。このローディングカム装置9は、入力軸1と共に回転するローディングカム10と、保持器11により転動自在に保持した複数個(例えば4個)のローラ12、12とから構成している。上記ローディングカム10の片側面(図5〜6の右側面)には、円周方向に亙る凹凸であるカム面13を形成し、上記入力側ディスク2の外側面(図5〜6の左側面)にも、同様の形状を有するカム面14を形成している。そして、上記複数個のローラ12、12を、上記入力軸1の中心に関し放射方向の軸を中心とする回転自在に支持している。
【0005】
上述の様に構成するハーフトロイダル型無段変速機の使用時、入力軸1の回転に伴ってローディングカム10が回転すると、カム面13が複数個のローラ12、12を、入力側ディスク2の外側面に形成したカム面14に押圧する。この結果、上記入力側ディスク2が、上記複数のパワーローラ8、8に押圧されると同時に、上記両カム面13、14と複数個のローラ12、12との押し付け合いに基づいて、上記入力側ディスク2が回転する。そして、この入力側ディスク2の回転が、上記複数のパワーローラ8、8を介して出力側ディスク4に伝達され、この出力側ディスク4に固定の出力軸3が回転する。
【0006】
入力軸1と出力軸3との回転速度比(変速比)を変える場合で、先ず入力軸1と出力軸3との間で減速を行なう場合には、前記各枢軸5、5を中心として前記各トラニオン6、6を所定方向に揺動させる。そして、上記各パワーローラ8、8の周面8a、8aが図5に示す様に、入力側ディスク2の内側面2aの中心寄り部分と出力側ディスク4の内側面4aの外周寄り部分とにそれぞれ当接する様に、前記各変位軸7、7を傾斜させる。反対に、増速を行なう場合には、上記枢軸5、5を中心として上記各トラニオン6、6を反対方向に揺動させる。そして、上記各パワーローラ8、8の周面8a、8aが図6に示す様に、入力側ディスク2の内側面2aの外周寄り部分と出力側ディスク4の内側面4aの中心寄り部分とに、それぞれ当接する様に、上記各変位軸7、7を傾斜させる。各変位軸7、7の傾斜角度を図5と図6との中間にすれば、入力軸1と出力軸3との間で、中間の変速比を得られる。
【0007】
又、図7〜8は、実願昭63−69293号(実開平1−173552号)のマイクロフィルムに記載された、より具体化されたハーフトロイダル型無段変速機の1例を示している。入力側ディスク2と出力側ディスク4とは円管状の入力軸15の周囲に、それぞれニードル軸受16、16を介して、回転自在に支持している。即ち、上記入力側ディスク2及び出力側ディスク4の中心部には断面形状が円形である貫通孔17、17を、それぞれ上記各ディスク2、4の内側面と外側面とを軸方向(図7の左右方向)に貫通する状態で形成している。上記各ニードル軸受16、16は、上記各貫通孔17、17の内周面と上記入力軸15の中間部外周面との間に設けている。又、上記各貫通孔17、17の内側面寄り端部内周面に形成した係止溝18、18には止め輪19、19を係止して、上記各ニードル軸受16、16が上記各貫通孔17、17から、上記各ディスク2、4の内側面2a、4a側に抜け出る事を防止している。又、ローディングカム10は上記入力軸15の端部(図7の左端部)外周面にスプライン係合させ、外向フランジ状の鍔部20により上記入力側ディスク2から離れる方向への移動を阻止している。そして、このローディングカム10とローラ12、12とにより、上記入力軸15の回転に基づいて上記入力側ディスク2を、上記出力側ディスク4に向け押圧しつつ回転させるローディングカム装置9を構成している。上記出力側ディスク4には出力歯車21を、キー22、22により結合し、これら出力側ディスク4と出力歯車21とが同期して回転する様にしている。
【0008】
1対のトラニオン6、6の両端部は1対の支持板23、23に、揺動並びに軸方向(図7の表裏方向、図8の左右方向)に亙る変位自在に支持している。そして、上記各トラニオン6、6の中間部に形成した円孔24、24部分に、変位軸7、7を支持している。これら各変位軸7、7は、互いに平行で且つ偏心した支持軸部25、25と枢支軸部26、26とを、それぞれ有する。このうちの各支持軸部25、25を上記各円孔24、24の内側に、第一のラジアルニードル軸受27、27を介して、回転自在に支持している。又、上記各枢支軸部26、26の周囲にパワーローラ8、8を、第二のラジアルニードル軸受28、28を介して、回転自在に支持している。これら各第二のラジアルニードル軸受28、28はそれぞれ、上記各パワーローラ8、8の内周面に直接形成された凹円筒面状の外輪軌道43と、上記各変位軸7、7のうちの枢支軸部26の外周面に直接形成された凸円筒面状の内輪軌道44との間に、それぞれ複数本ずつのニードル45、45を配置して成る。
【0009】
尚、上記1対の変位軸7、7は、上記入力軸15に対して180度反対側位置に設けている。又、これら各変位軸7、7の各枢支軸部26、26が各支持軸部25、25に対し偏心している方向は、上記入力側、出力側両ディスク2、4の回転方向に関し同方向(図8で左右逆方向)としている。又、偏心方向は、上記入力軸15の配設方向に対しほぼ直交する方向としている。従って、上記各パワーローラ8、8は、上記入力軸15の配設方向に亙る若干の変位自在に支持される。この結果、回転力の伝達状態で構成各部材に加わる大きな荷重に基づく、これら構成各部材の弾性変形に起因して、上記各パワーローラ8、8が上記入力軸15の軸方向(図7の左右方向、図8の表裏方向)に変位する傾向となった場合でも、上記構成各部品に無理な力を加える事なく、この変位を吸収できる。
【0010】
又、上記各パワーローラ8、8の外側面と上記各トラニオン6、6の中間部内側面との間には、パワーローラ8、8の外側面の側から順に、スラスト玉軸受29、29とスラストニードル軸受30、30とを設けている。このうちのスラスト玉軸受29、29は、上記各パワーローラ8、8に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、これら各パワーローラ8、8の回転を許容するものである。又、上記各スラストニードル軸受30、30は、上記各パワーローラ8、8から上記各スラスト玉軸受29、29を構成する外輪31、31に加わるスラスト荷重を支承しつつ、前記各枢支軸部26、26及び上記外輪31、31が、前記支持軸部25、25を中心に揺動する事を許容するものである。
【0011】
更に、上記各トラニオン6、6の一端部(図8の左端部)にはそれぞれ駆動ロッド32、32を結合し、これら各駆動ロッド32、32の中間部外周面に駆動ピストン33、33を固設している。そして、これら各駆動ピストン33、33を、それぞれ駆動シリンダ34、34内に油密に嵌装している。
【0012】
上述の様に構成するハーフトロイダル型無段変速機の場合、入力軸15の回転は、ローディングカム装置9を介して入力側ディスク2に伝わる。そして、この入力側ディスク2の回転が、1対のパワーローラ8、8を介して出力側ディスク4に伝わり、更にこの出力側ディスク4の回転が、出力歯車21より取り出される。入力軸15と出力歯車21との間の回転速度比を変える場合には、上記1対の駆動ピストン33、33を互いに逆方向に変位させる。これら各駆動ピストン33、33の変位に伴って上記1対のトラニオン6、6が、それぞれ逆方向に変位し、例えば図8の下側のパワーローラ8が同図の右側に、同図の上側のパワーローラ8が同図の左側に、それぞれ変位する。この結果、これら各パワーローラ8、8の周面8a、8aと上記入力側ディスク2及び出力側ディスク4の内側面2a、4aとの当接部に作用する、接線方向の力の向きが変化する。そして、この力の向きの変化に伴って上記各トラニオン6、6が、支持板23、23に枢支された枢軸5、5を中心として、互いに逆方向に揺動する。この結果、前述の図5〜6に示した様に、上記各パワーローラ8、8の周面8a、8aと上記各内側面2a、4aとの当接位置が変化し、上記入力軸15と出力歯車21との間の回転速度比が変化する。
【0013】
尚、この様に上記入力軸15と出力歯車21との間で回転力の伝達を行なう際には、構成各部材の弾性変形に基づいて上記各パワーローラ8、8が、上記入力軸15の軸方向に変位し、これら各パワーローラ8、8を枢支している前記各変位軸7、7が、前記各支持軸部25、25を中心として僅かに回動する。この回動の結果、前記各スラスト玉軸受29、29の外輪31、31の外側面と上記各トラニオン6、6の内側面とが相対変位する。これら外側面と内側面との間には、前記各スラストニードル軸受30、30が存在する為、この相対変位に要する力は小さい。従って、上述の様に各変位軸7、7の傾斜角度を変化させる為の力が小さくて済む。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
従来のハーフトロイダル型無段変速機の場合には、パワーローラ8、8の軽量化及び仕上げ作業の手間軽減と耐久性確保とを両立させる事が難しかった。この理由に就いて、図9〜12を参照しつつ説明する。従来のハーフトロイダル型無段変速機に組み込んでいるパワーローラ8は、入力側、出力側両ディスク2、4の内側面2a、4aとの間で回転力の伝達を行なう為のトラクション面である、凸曲面状の周面8aが、図9に示す様に、軸方向両端面のうちトラニオン6と反対側に存在する内端面35にまで達している。一方、上記各パワーローラ8、8の周面8a、8aの断面形状の曲率半径は、入力側、出力側両ディスク2、4の内側面2a、4aの断面形状の曲率半径よりも僅かに小さい。従って、これら各内側面2a(4a)と上記周面8aとは、図10に曲率半径の差を誇張して示す様に、これら各内側面2a(4a)と上記周面8aとの極く一部の点Pでのみ当接する。
【0015】
又、これら各内側面2a(4a)と上記周面8aとの当接圧が高くなると、当接部に接触楕円が存在する様になる。更に、これら各内側面2a(4a)と上記周面8aとの間でトルクを伝達すべく、ローディングカム装置9の働きにより、これら各内側面2a(4a)と上記周面8aとが強く押し付けられると、伝達すべきトルクに応じて、上記接触楕円が大きくなる。ハーフトロイダル型無段変速機の設計を行なう場合に従来は、上記各内側面2a(4a)と上記周面8aとを無負荷状態で当接させた場合の当接位置を考え、この当接位置で接触楕円が大きくなった場合でも、この接触楕円が上記凸曲面状の周面8aから外れない様に、この周面8aの幅を確保していた。
【0016】
これに対して、上記接触楕円は、上記各内側面2a(4a)と上記周面8aとの間で伝達すべきトルクに応じて、上記パワーローラ8の軸方向両端面のうち、前記トラニオン6側に存在する外端面36側に移動する事が、町田 尚の博士論文(町田 尚 1991年『自動車用ハーフトロイダル形トラクションドライブ式無段変速機の動力伝達性能に関する研究』第5章)にも記載されている様に、従来から知られている。即ち、上記各内側面2a(4a)と上記周面8aとの間で大きなトルク伝達を行なうべく、上記ローディングカム装置9によりこれら各面2a(4a)、周面8aを強く押し付けると、前記入力側、出力側両ディスク2、4やトラニオン6等が弾性変形する。そして、この弾性変形に基づき、上記接触楕円が、無負荷状態での当接点Pから上記外端面36に向けて、図11に矢印αで示す様に移動する。
【0017】
従って、単に上記パワーローラ8の軽量化と周面8aの仕上げ作業の手間軽減とを図るのであれば、図12に示す様に、パワーローラ8の内端面35側を除去し、このパワーローラ8の軸方向寸法を小さくすれば良い。但し、この様にして上記軽量化及び手間の軽減を図ると、上記パワーローラ8を変位軸7の枢支軸部26に支持する為の第二のラジアルニードル軸受28の負荷容量が小さくなる。即ち、この第二のラジアルニードル軸受28は、上記パワーローラ8の内周面を外輪軌道43としている為、上述の様にパワーローラ8の軸方向寸法を小さくすると、上記第二のラジアルニードル軸受28を構成するニードル45、45の長さが短くなり、その分だけこの第二のラジアルニードル軸受28の負荷容量が小さくなって、耐久性が損なわれる。
【0018】
即ち、ハーフトロイダル型無段変速機の運転時に上記パワーローラ8には、入力側ディスク2の内側面2aから加えられる力と、出力側ディスク4の内側面4aに加える力の反力とに基づいて、図13に矢印で示す様な力が加わる。そして、これらの力により上記パワーローラ8には、図14に矢印で示す様なモーメントが加わり、このパワーローラ8が傾く傾向になる。この結果、上記第二のラジアルニードル軸受28が片当たりを起こす。この第二のラジアルニードル軸受28を構成するニードル45、45の長さを短くすると、この様な傾向が顕著になり、この第二のラジアルニードル軸受28の耐久性が損なわれる。
更には、上述の様にパワーローラ8の軸方向寸法を小さくすると、上記パワーローラ8自体の剛性も小さくなり、このパワーローラ8の耐久性確保の面からも好ましくない。
本発明は、この様な事情に鑑みて、ハーフトロイダル型無段変速機の軽量化及び仕上げ作業の手間軽減と耐久性確保とを両立させるべく発明したものである。
【0019】
【課題を解決する為の手段】
本発明のハーフトロイダル型無段変速機は、前述した従来のハーフトロイダル型無段変速機と同様に、互いに同心に且つ互いに独立した回転自在に支持された入力側、出力側両ディスクと、これら入力側、出力側両ディスクの中心軸に対し交差しないがこれら両ディスクの中心軸の方向に対し直角方向位置である捻れの位置にある、互いに同心の1対の枢軸を中心として揺動する複数個のトラニオンと、、それぞれが互いに平行で且つ偏心した支持軸部及び枢支軸部を備え、このうちの支持軸部をこれら各トラニオンに形成した円孔の内側に第一のラジアルニードル軸受を介して回転自在に支持する事によりこれら各トラニオン毎に支持された変位軸と、これら各変位軸のうちの枢支軸部の周囲に第二のラジアルニードル軸受により回転自在に支持され、上記入力側、出力側両ディスクの内側面同士の間に挟持されたパワーローラとを備える。そして、上記入力側、出力側両ディスクの互いに対向する内側面を、それぞれ断面が円弧形の凹面とし、上記各パワーローラの周面を球面状の凸面として、これら各周面と上記各内側面とを当接させて成る。更に、上記各第二のラジアルニードル軸受はそれぞれ、上記各パワーローラの内周面に直接形成された凹円筒面状の外輪軌道と、上記各変位軸のうちの枢支軸部の外周面に直接形成された凸円筒面状の内輪軌道との間に、それぞれ複数本ずつのニードルを配置して成る。
特に、本発明のハーフトロイダル型無段変速機に於いては、上記各パワーローラの軸方向両端面のうち、上記各トラニオンと反対側に存在する内端面の外径寄り部分を内径寄り部分よりも軸方向に凹ませる事により、この内端面に段差を形成している。
【0020】
【作用】
上述の様に構成する本発明のハーフトロイダル型無段変速機により、入力側ディスクと出力側ディスクとの間で回転力の伝達を行なわせる作用、並びにこれら両ディスク同士の間の変速比を変化させる作用は、前述した様な従来から知られているハーフトロイダル型無段変速機の場合と同様である。
特に、本発明のハーフトロイダル型無段変速機の場合には、各パワーローラの内端面の外径寄り部分を内径寄り部分よりも軸方向に凹ませる事により、この内端面に段差を形成している為、トラクション面である、凸曲面状の周面の幅を小さくして、上記各パワーローラの軽量化及びこの周面の仕上げ作業の手間軽減を図れる。又、これら各パワーローラの内径寄り部分の軸方向寸法を十分に確保できるので、このパワーローラ自体の剛性確保、及びこれら各パワーローラを変位軸に支持する為の第二のラジアルニードル軸受の負荷容量の確保を図れる。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1〜3は、請求項1に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本発明の特徴は、パワーローラ8A部分の構造にある。その他の部分の構造及び作用は、前述した従来構造を含め、従来から知られ、或は考えられている各種ハーフトロイダル型無段変速機と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は、省略若しくは簡略にし、以下、本発明の特徴部分を中心に説明する。
【0022】
トラニオン6の内側面側に回転自在に支持したパワーローラ8Aの軸方向両端面(図1〜3の上下両端面)のうち、上記トラニオン6と反対側に存在する内端面35の外径寄り部分を内径寄り部分よりも軸方向に凹ませる事により、この内端面35の直径方向中間部に、段差37を形成している。そして、この段差37よりも内径寄り部分を、全周に亙り外径寄り部分よりも軸方向に突出した、環状凸部38としている。尚、この環状凸部38の外径D38は、上記パワーローラ8Aの内径R8Aの1.1〜1.8倍程度{D38≒(1.1〜1.8)R8A}に規制する。又、上記パワーローラ8Aをハーフトロイダル型無段変速機に組み込み、このパワーローラ8Aの周面8aと、入力側、出力側両ディスク2、4の内側面2a、4a(図5〜7参照)とを軽く(殆ど無負荷状態で)当接させた場合に於ける当接点P(図10〜11参照)が、上記周面8aの小径側端縁よりも少し(接触楕円が内端面35側にはみ出さない様にできる分)だけ、この周面8aの幅方向中央寄り(トラニオン6寄り)に存在する様に、上記段差37の高さH37を規制する。
【0023】
上述の様なパワーローラ8Aを組み込んで構成する、本発明のハーフトロイダル型無段変速機の場合には、このパワーローラ8A側のトラクション面である、凸曲面状の周面8aの幅を小さくして、このパワーローラ8Aの軽量化及びこの周面8aの仕上げ作業の手間軽減を図れる。又、このパワーローラ8Aの内径寄り部分の軸方向寸法を十分に確保できるので、このパワーローラ8Aを変位軸7の枢支軸部26に支持する為の第二のラジアルニードル軸受28の負荷容量の確保を図れる。
【0024】
又、上記パワーローラ8A自体の剛性確保を図れる。即ち、例えばハーフトロイダル型無段変速機を変速比を1として運転する際にパワーローラ8には、入力側、出力側両ディスク2、4の内側面2a、4aから、図15に矢印で示す様な力が加わる。そして、この様な力により上記パワーローラ8は、図16に誇張して示す様に、中心軸に対し直角方向の断面形状が楕円形に弾性変形する。この様にパワーローラ8を弾性変形させる力に基づく応力は、図15に斜格子で示した、外側面側内周寄り部分で高くなる。この為、実公平6−11426号公報に記載されている様に、この外側面側内周寄り部分に、潤滑油供給の為の通孔を形成した場合等は、この通孔部分に応力が集中し易くなり、パワーローラの強度確保が難しくなる。これに対して本発明の場合には、この様な応力の集中を防止して、上記パワーローラ8Aの強度確保を容易に行なえる。
【0025】
更に、本発明のハーフトロイダル型無段変速機を構成するパワーローラ8Aの場合には、トラクション面であり、寸法及び形状を精密に仕上げる必要のある周面8aの加工を、前記環状凸部38を利用する事により、この周面8aを傷める事なく、容易に行なえる。即ち、図17(A)に示す様に、シュー40に上記パワーローラ8Aの内端面を当接させ、このシュー40の先端縁を上記環状凸部38の外周面に突き当てると共に、上記パワーローラ8Aの外側面をバッキングプレート41に突き当てた状態で、上記周面8aの研削作業を行なえる。この為、図17(B)に示す様に、パワーローラ8の外端側に設けた円筒面42にシュー40を突き当てつつ研削作業を行なう、従来の場合に比べて、ハーフトロイダル型無段変速機の運転時に於ける構成部品の弾性変形に基づく接触楕円の移動を考慮しても、上記パワーローラ8Aの軸方向寸法を過大にする必要がない。又、上記シュー40とバッキングプレート41とが、上記パワーローラ8Aの軸方向反対側に配置されるので、上記周面8aの研削作業を容易に行なえる。しかも、研削機の自動送り機構により上記パワーローラ8Aを搬送する事を考えた場合でも、上記環状凸部38を設けた内側面側でこのパワーローラ8Aを把持する事で、トラクション面となる上記周面8aを傷める事なく、搬送作業を行なえる。
【0026】
次に、図4は、請求項1、2に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、パワーローラ8Aの内端面35の内径側部分に形成した環状凸部38に、この環状凸部38の内外両周面同士を連通させる給油孔39を形成している。この給油孔39には、上記環状凸部38の内径側から外径側に潤滑油が流れ、上記パワーローラ8Aの周面8aと、入力側、出力側両ディスク2、4の内側面2a、4a(図5〜7参照)との当接部分に給油する。
【0027】
【発明の効果】
本発明は以上に述べた通り構成され作用する為、十分な耐久性を確保しつつ、軽量でしかも低コストのハーフトロイダル型無段変速機を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態の第1例を、トラニオンとパワーローラとを取り出した状態で示す断面図。
【図2】 パワーローラのみを取り出して示す断面図。
【図3】 同じく部分断面図。
【図4】 本発明の実施の形態の第2例を示す、パワーローラの部分断面図。
【図5】 従来から知られているハーフトロイダル型無段変速機の基本的構成を、最大減速時の状態で示す側面図。
【図6】 同じく最大増速時の状態で示す側面図。
【図7】 ハーフトロイダル型無段変速機の具体的構造の1例を示す断面図。
【図8】 図7のA−A断面図。
【図9】 従来構造の1例を示す、パワーローラの断面図。
【図10】 ディスクの内側面とパワーローラの周面との接触部を示す断面図。
【図11】 パワーローラの部分断面図。
【図12】 好ましくない構造の1例を示す、パワーローラの部分断面図。
【図13】 ハーフトロイダル型無段変速機の運転時にパワーローラに加わる力を説明する為、パワーローラ支持部分を内側から見た図。
【図14】 同じく図13のB−B断面図。
【図15】 同じく部分断面図。
【図16】 ハーフトロイダル型無段変速機の運転時に於けるパワーローラの弾性変形状態を誇張して示す、図13と同方向から見た略図。
【図17】 パワーローラの周面を研削する為、シューとバッキングプレートとをセットした状態を示しており、(A)は本発明構造の場合を、(B)は従来構造の場合を、それぞれ示す部分断面図。
【符号の説明】
1 入力軸
2 入力側ディスク
2a 内側面
3 出力軸
4 出力側ディスク
4a 内側面
5 枢軸
6 トラニオン
7 変位軸
8、8A パワーローラ
8a 周面
9 ローディングカム装置
10 ローディングカム
11 保持器
12 ローラ
13、14 カム面
15 入力軸
16 ニードル軸受
17 貫通孔
18 係止溝
19 止め輪
20 鍔部
21 出力歯車
22 キー
23 支持板
24 円孔
25 支持軸部
26 枢支軸部
27 第一のラジアルニードル軸受
28 第二のラジアルニードル軸受
29 スラスト玉軸受
30 スラストニードル軸受
31 外輪
32 駆動ロッド
33 駆動ピストン
34 駆動シリンダ
35 内端面
36 外端面
37 段差
38 環状凸部
39 給油孔
40 シュー
41 バッキングプレート
42 円筒面
43 外輪軌道
44 内輪軌道
45 ニードル
Claims (2)
- 互いに同心に且つ互いに独立した回転自在に支持された入力側、出力側両ディスクと、これら入力側、出力側両ディスクの中心軸に対し交差しないがこれら両ディスクの中心軸の方向に対し直角方向位置である捻れの位置にある、互いに同心の1対の枢軸を中心として揺動する複数個のトラニオンと、それぞれが互いに平行で且つ偏心した支持軸部及び枢支軸部を備え、このうちの支持軸部をこれら各トラニオンに形成した円孔の内側に第一のラジアルニードル軸受を介して回転自在に支持する事によりこれら各トラニオン毎に支持された変位軸と、これら各変位軸のうちの枢支軸部の周囲に第二のラジアルニードル軸受により回転自在に支持され、上記入力側、出力側両ディスクの内側面同士の間に挟持されたパワーローラとを備え、上記入力側、出力側両ディスクの互いに対向する内側面を、それぞれ断面が円弧形の凹面とし、上記各パワーローラの周面を球面状の凸面として、これら各周面と上記各内側面とを当接させて成り、上記各第二のラジアルニードル軸受はそれぞれ、上記各パワーローラの内周面に直接形成された凹円筒面状の外輪軌道と、上記各変位軸のうちの枢支軸部の外周面に直接形成された凸円筒面状の内輪軌道との間に、それぞれ複数本ずつのニードルを配置して成るものであるハーフトロイダル型無段変速機に於いて、上記各パワーローラの軸方向両端面のうち、上記各トラニオンと反対側に存在する内端面の外径寄り部分を内径寄り部分よりも軸方向に凹ませる事により、この内端面に段差を形成した事を特徴とするハーフトロイダル型無段変速機。
- 各パワーローラの内端面のうち、段差よりも内径寄り部分を、同じく外径寄り部分よりも軸方向に突出した状態で設けられた環状凸部に、この環状凸部の内外両周面同士を連通させる給油孔を形成している、請求項1に記載したハーフトロイダル型無段変速機。
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