JP4043219B2 - 静電チャック - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体製造装置等においてシリコンウエハ等の被吸着物を静電的に吸着して、被処理体の処理または搬送を行うために用いられる静電チャックに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体製造装置において、半導体基板であるシリコンウエハに対して成膜やエッチング等の処理を行うためには、シリコンウエハの平坦度を保ちながら保持する必要があるが、このような保持手段としては機械式、真空吸着式、静電吸着式が採用されている。
【0003】
これらの保持手段の中で静電吸着式のもの、すなわち静電チャックは、シリコンウエハを静電的に保持することができるため、チップの収率の向上を図ることができるとともに、加工を行うに際して要求される加工面の平坦度や平行度を容易に実現することができる。さらに、静電チャックは、成膜装置やエッチング装置等の真空処理を行う装置においてもシリコンウエハを保持することができるため、半導体製造装置の保持手段として最も多用されている。
【0004】
一方、半導体製造プロセスにおいてはフッ素系ガス、塩素系ガス等のハロゲン系腐食ガス雰囲気あるいはそのプラズマ中で使用される。したがって、静電チャックの誘電体層としては、従来、耐腐食性が高い高絶縁性セラミックスであるアルミナ等が用いられている。ところが、静電チャックの誘電体層として窒化アルミニウムやアルミナ等の高絶縁性材料を用いる場合、電極および被吸着体に誘起された電荷の間に発生する静電吸着力(クーロン力)を用いるため、高い吸着力を得るためには、絶縁層の厚さを極めて薄くしなければならず、加工中に破損する可能性が高い。
【0005】
そこで、誘電体層に多少導電性をもたせて誘電体層中での電荷の移動を生じさせることにより、1〜2mmの厚い絶縁層でも高い静電吸着力(ジョンセン・ラーベック力)が得られることから、誘電体層として主成分のアルミナに酸化チタンを含有させて導電性をもたせた複合セラミックスを用いることが提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような複合セラミックスは、絶縁性の原料粉末と導電性の原料粉末とを混合して焼結しなければならず、混合性や焼結条件により体積抵抗率がばらつきやすく、また、体積抵抗率の温度変化が大きいという問題点がある。このような複合セラミックスを静電チャックの誘電体層として用いると、吸着特性にばらつきが生じ、また、使用可能温度域が狭いという問題が生じる。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、腐食ガスのプラズマに対する耐食性に優れるとともに導電性成分を添加して吸着性を高めた誘電体層を前提とし、その体積抵抗率のばらつきおよび温度変化が小さく、結果的に吸着特性のばらつきが小さくかつ使用可能温度域の広い静電チャックを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、絶縁性でプラズマ耐食性の優れている窒化アルミニウムに、導電性の炭化ケイ素を添加して体積抵抗率を108〜1013Ω・cmに調整した上で、第3成分として、窒化チタン、炭化チタン、および炭化タングステンのうち1種以上を所定量添加した複合セラミックスを誘電体層として用いることにより、体積抵抗率のばらつきおよび体積抵抗率の温度変化を抑制することができ、吸着特性のばらつきが小さくかつ使用可能温度域が広い静電チャックを得ることができることを見出した。つまり、窒化アルミニウムに、導電性の炭化ケイ素を添加しただけでは体積抵抗率にばらつきが生じ、体積抵抗率の温度変化が大きくなるが、窒化チタン、炭化チタン、および炭化タングステンのうち1種以上を第3成分として添加することにより、体積抵抗率の絶対値に影響を及ぼすことなく、原料粉末の状態や焼結条件の微妙なばらつきによる体積抵抗率のばらつきや体積抵抗率の温度変化を生じ難くすることができる。
【0009】
すなわち、本発明は、電極と、その上に設けられ、該電極に電圧を印加することにより被吸着体を吸着する誘電体層とを有する静電チャックであって、前記誘電体層は、窒化アルミニウムに、全体に対する割合で、炭化ケイ素を0.5〜45質量%と、窒化チタン、炭化チタンおよび炭化タングステンのうち1種以上を総量で0.1〜10質量%とを添加してなり、かつ、使用温度での体積抵抗率が108〜1013Ω・cm、熱伝導率が30W/m・K以上である複合セラミックスで構成されていることを特徴とする静電チャックを提供する。
【0010】
上記静電チャックにおいて、誘電体層を構成する複合セラミックスは、−100〜800℃での体積抵抗率から計算される活性化エネルギーの絶対値が7×105J/mol以下であることが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1および図2は、本発明の実施形態に係る静電チャックを示す断面図であり、図1は単極型のものを示し、図2は双極型ものを示す。
【0012】
図1の単極型の静電チャック1は、アルミニウム等からなる基台5の上に固定されて設けられており、吸着面を有する誘電体層2と、その下に設けられた電極3と、電極3と基台5との間に設けられた絶縁層4とを有しており、電極3には直流電源6が接続されており、この直流電源6から電極3に給電されることにより、誘電体層2の上に載置された被吸着体であるシリコンウエハ10が静電吸着される。
【0013】
図2の双極型の静電チャック1’は、誘電体層2の間に一対の電極3a、3bが設けられており、これらに直流電源6が接続されており、直流電源6からこれらの電極にそれぞれ逆極性の電荷が供給されて上の誘電体層2の上に載置されたシリコンウエハ10が静電吸着される。
【0014】
誘電体層2は、窒化アルミニウムに、全体に対する割合で、炭化ケイ素を0.5〜45質量%と、窒化チタン、炭化チタンおよび炭化タングステンのうち1種以上を総量で0.1〜10質量%とを添加してなり、かつ、使用温度での体積抵抗率が108〜1013Ω・cm、熱伝導率が30W/m・K以上である複合セラミックスで構成されている。
【0015】
誘電体層2を構成する複合セラミックスにおいて、絶縁性の窒化アルミニウムに、導電性の炭化ケイ素を添加するのは、適度な導電性が付与されて高い静電吸着性を発揮しつつ、ハロゲン系の腐食ガスやそのプラズマに対する耐食性を高くすることができ、さらに熱伝導性が高いのでプラズマ中で破損し難いからである。また、窒化チタン、炭化チタンおよび炭化タングステンのうち1種以上を添加するのは、絶縁性の窒化アルミニウムと導電性の炭化ケイ素のみでは粒界成分の移動等により体積抵抗率にばらつきが生じ、体積抵抗率の温度変化も大きくなるが、これら成分を添加することによって体積抵抗率のばらつきおよび温度変化を抑制することができるからである。すなわち、これら成分は、複合セラミックス焼結体の粒界に存在することによって粒界成分のトラップ効果を発揮し、このトラップ効果により焼結中に生じる粒界成分の表面近傍への移動が抑制される結果、体積抵抗率のばらつきおよび温度変化が抑制されるものと考えられる。
【0016】
窒化アルミニウムに添加する炭化ケイ素の量を複合セラミックス全体に対する割合で0.5〜45質量%にしたのは、0.5質量%未満では炭化ケイ素の体積抵抗率を低下させる効果が発揮されず、45質量%を超えるとプラズマ環境下で使用した場合の耐食性が不十分であるからである。なお、窒化アルミニウムには、通常用いられるY2O3等の焼結助剤が含まれていてもよい。
【0017】
窒化チタン、炭化チタンおよび炭化タングステンのうち1種以上の総量を複合セラミックス全体に対する割合で0.1〜10質量%としたのは、0.1質量%未満では体積抵抗率のばらつきを抑制する効果が不十分であり、一方、10質量%を超えると耐プラズマ性や熱伝導率を低下させてしまうからである。
【0018】
誘電体層2の体積抵抗率を108〜1013Ω・cmに調整するのは、この範囲であれば、シリコンウエハに形成された回路に悪影響を及ぼすことなく高い吸着力を得ることができるからである。つまり、108Ω・cm未満では吸着したウエハに大きなリーク電流が流れて、ウエハに形成された回路が破壊されるおそれがあり、また、1013Ω・cmを超えるとジョンセン・ラーベック力が有効に作用せず高い静電吸着力が得られない。
【0019】
熱伝導率を30W/m・K以上とするのは、30W/m・K未満では、静電チャックの使用中に誘電体層表面が非常に高温になって熱衝撃により破損したり、プラズマ集中による局部加熱により誘電体層の一部が溶融し欠陥(ポア)が発生し破損に至る場合があるからである。なお、熱伝導率は温度の上昇にともなって低下する傾向にあるが、室温での熱伝導率が30W/m・K以上であれば高温での熱衝撃による破損を有効に防止することができる。
【0020】
誘電体層2を構成する複合セラミックスは、−100〜800℃での体積抵抗率から計算される活性化エネルギーの絶対値が7×105J/mol以下であることが好ましい。活性化エネルギーの絶対値が7×105J/molを超えると体積抵抗率のばらつきが大きくなり、かつ体積抵抗率の温度変化が大きくなるため静電チャックの使用可能温度域が狭くなる傾向にある。この活性化エネルギーの絶対値は、窒化チタン、炭化チタン、炭化タングステンの1種以上を添加することにより低下するが、これはこれらが複合セラミックス焼結体の粒界に存在することによって粒界での電子の流れを妨げる障壁となるためであると考えられる。
【0021】
次に、本発明の静電チャックにおける誘電体層2の製造方法について説明する。
まず、誘電体層2を構成するセラミックス材料の出発原料の調合は、常法によって行うことができる。例えば、所定の配合の原料粉末にアルコール等の有機溶媒または水を加え、ボールミルで混合後、乾燥する方法、所定の配合の塩類、アルコキシド等の溶液から共沈物を分離する方法等がある。これらの原料の混合物には、より緻密化を容易にするため、通常用いられる焼結助剤を添加してもよい。焼結助剤の添加形態に関しては、酸化物粉末、塩類、アルコキシド等、どのような形態であってもよく、特に限定されない。
【0022】
このようにして得られた、窒化アルミニウムに、炭化ケイ素と、窒化チタン、炭化チタンおよび炭化タングステンの1種以上とを添加した混合粉末を一軸プレスまたは冷間等方圧プレス(CIP)によって所定形状に成形する。次いで得られた成形体を還元雰囲気中1600〜2000℃で焼成を行う。焼成時間は特に限定しないが、2〜4時間程度でよい。焼成温度が上記範囲未満であると緻密化が不十分となり体積抵抗率がばらつくおそれがあり、上記範囲を超えると分解するおそれがある。
【0023】
なお、誘電体層2の製造方法としては、上述のようにプレス成形した後に焼成するものに限らず、ドクターブレード法でシートを作成した後に焼成するものや、原料粉末をホットプレス焼成するものであってもよい。
【0024】
静電チャックの製造方法は、通常の方法を用いることができ特に限定されない。例えば、電極を形成したセラミックス基体(絶縁層4)の上に上述のようにして製造された誘電体層2を接着する方法、上記誘電体層2を形成するためのグリーンシートおよび絶縁層4を形成するためのグリーンシートをドクターブレード法で作成し、焼成前の段階でこれらで電極層を挟んで積層した後に焼成する方法、電極を粉末内に埋没させてホットプレスする方法等を挙げることができる。
【0025】
なお、静電チャックの構造は特に限定されるものではなく、図1、図2に示す構造の他に、一方の面に電極が形成された誘電体層をセラミックス板あるいはアルミニウム台座に接着剤により貼り付けた構造など、種々の構造を採用することができる。また、電極構造は特に限定されず、上述のように単極型電極でも双極型電極でもよく、その形状も限定されるものではない。
【0026】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
ここでは、表1に示す実施例1〜9および比較例1〜4の組成の複合セラミックス焼結体を作製した。表1に示す各原料粉末を合計200g秤量し、ポリエチレンポット中にそれぞれの粉末とメタノール200gとφ10mmの鉄芯入りナイロンボール250gとを装入し、16時間混合した。得られたスラリーをロータリーエバポレータで減圧乾燥した後、得られた粉末を#100のナイロンメッシュを用いてメッシュパスした。メッシュパス後の粉末をφ150mmの金型を用いて0.98MPaの圧力で厚さ6mmに一次成形した後、117.6MPaの圧力でCIP成形して成形体を得た。得られた成形体を表1に示す条件で2時間焼成した。なお、実施例5については原料粉末を混合後、圧力147MPaでホットプレス成形を行った。
【0027】
得られた焼結体の各20個を100φ×2tmmに加工して、代表的な使用温度での体積抵抗率、室温での熱伝導率を測定した。また、活性化エネルギーは、−100〜800℃で体積抵抗率を測定し、温度に対して体積抵抗率をアレニウスプロットして算出した。それらの結果を表1に示す。なお、各サンプルについて、体積抵抗率が108〜1013Ω・cmになりうる温度を使用可能温度として表1に記載した。
【0028】
また、100φ×2tmmに加工した焼結体に電極を形成してアルミナ基体の上に無機系の接着剤で接着し、静電チャックを作製した。なお、各組成のセラミックス焼結体を用いた静電チャックを各20個作製した。
【0029】
静電チャックの評価は、上述のようにして作製した静電チャックに1200Vの電圧を印加し、φ100mmのシリコンウエハを吸着させ、吸着特性を測定した。ウエハの吸着特性は、測定ゲージでウエハを上方に引張り、ウエハが剥離したときの最大荷重を面積で割った単位面積当たりの値とした。また、シリコンウエハを吸着した状態の静電チャッを平行平板型RIEエッチング装置のチャンバー内に設置し、チャンバー内にCF4+O2(10%)ガスを0.1L/minの流量で供給し、チャンバー内の圧力を7.0Paとし、周波数が13.56MHz、出力が1.5W/cm2の高周波電力を平行平板電極に印加して上記ガスのプラズマを形成し、静電チャックをそのプラズマに4時間暴露する暴露試験を行い、静電チャックの破損、表面の欠陥発生の有無を調査した。これらの評価結果を表1に併記する。
【0030】
【表1】
【0031】
表1から明らかなように、実施例1〜9は誘電体層を構成する複合セラミックスの組成が本発明の範囲内であり、体積抵抗率:108〜1013Ω・cm、熱伝導率:30W/m・K以上といずれも本発明の範囲内であり、活性化エネルギーの絶対値も7×105J/mol以下であるため、体積抵抗率のばらつきが小さく、静電チャックの吸着特性のばらつきも小さかった。また、体積抵抗率の温度変化も小さいため静電チャックの使用可能温度域が広いものとなった。さらに、実施例1〜9は吸着特性自体も良好な値を示し、プラズマ暴露試験でも静電チャックの破損や表面欠陥が発生せず、静電チャックとして良好な特性が得られた。
【0032】
これに対して、比較例1,4は、いずれも窒化チタン、炭化チタンおよび炭化タングステンを含んでいないため、体積抵抗率のばらつきが大きかった。また、体積抵抗率の温度変化が大きいため静電チャックの使用可能温度域が狭いものとなった。また、比較例2,3は、窒化チタン、炭化チタン、炭化タングステンの総量が30質量%、35質量%と多いため、熱伝導率が低く、プラズマ暴露試験で半分以上の試料に破損が生じた。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、誘電体層が、窒化アルミニウムに、全体に対する割合で、炭化ケイ素を0.5〜45質量%と、窒化チタン、炭化チタンおよび炭化タングステンのうち1種以上を総量で0.1〜10質量%とを添加してなり、かつ、使用温度での体積抵抗率が108〜1013Ω・cm、熱伝導率が30W/m・K以上である複合セラミックスで構成されているので、腐食ガスのプラズマに対する耐食性および吸着性が高いことに加え、さらに体積抵抗率のばらつきおよび温度変化が小さい誘電体層を有する静電チャックを得ることができ、結果的に吸着特性のばらつきが小さくかつ使用温度域の広い静電チャックが実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用される単極型の静電チャックを示す断面図。
【図2】本発明が適用される双極型の静電チャックを示す断面図。
【符号の説明】
1,1’……静電チャック
2……誘電体層
3,3a,3b……電極
4……絶縁層
5……基台
6……直流電源
10……シリコンウエハ(被吸着体)
Claims (2)
- 電極と、その上に設けられ、該電極に電圧を印加することにより被吸着体を吸着する誘電体層とを有する静電チャックであって、前記誘電体層は、窒化アルミニウムに、全体に対する割合で、炭化ケイ素を0.5〜45質量%と、窒化チタン、炭化チタンおよび炭化タングステンのうち1種以上を総量で0.1〜10質量%とを添加してなり、かつ、使用温度での体積抵抗率が108〜1013Ω・cm、熱伝導率が30W/m・K以上である複合セラミックスで構成されていることを特徴とする静電チャック。
- 前記誘電体層を構成する複合セラミックスは、−100〜800℃での体積抵抗率から計算される活性化エネルギーの絶対値が7×105J/mol以下であることを特徴とする請求項1に記載の静電チャック。
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