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JP3936145B2 - 光ファイバ接続工具 - Google Patents

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JP3936145B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ファイバ同士を突き合わせ接続可能に調心位置決めする光ファイバ接続器を用いて前記光ファイバ同士を突き合わせ接続する際に好適に用いられる光ファイバ接続工具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、光ファイバ同士を突き合わせ接続するための光ファイバ接続器においては、突き合わせた2本の光ファイバを同一のハウジング内に固定する構造となっている。
このような光ファイバ接続器における位置決め調心するための構造としては、例えば、(1)精密細管(以下、マイクロキャピラリーとも称する)内にその両端から光ファイバを挿入し、該精密細管内でこれらの光ファイバの端面同士を突き合わせる構造、(2)V溝等の案内溝内にその両側から光ファイバを挿入し該案内溝内でこれらの光ファイバの端面同士を突き合わせる構造、(3)3本の精密ロッドあるいは3個の精密ボールの中心に光ファイバを担持して位置決めする構造等がある。
このような光ファイバ接続器においては、一対の光ファイバは、突き合わされた状態で接着により、あるいは機械的な挟持により固定されることで、位置決め及び調心がなされるようになっている。
【0003】
ところで、上述した従来の光ファイバ接続器では、単に光ファイバをハウジング内に固定する構造であることから、次のような問題点があった。
(1) 突き合わせた光ファイバと、これらを固定するハウジングとの間に熱膨張率の差があるために、温度変化が生じた際に、この熱膨張率の差により光ファイバの突き合わせ状態が変化してしまい、その結果、光ファイバの接続損失が変動する。
(2) 前記ハウジングにおいては、光ファイバを保持する際に弾性体が用いられているために、この弾性体が経年劣化することにより光ファイバの保持力が低下し、光ファイバの突き合わせ状態が変化することとなり、その結果、接続損失が変動する。
【0004】
(3) 光ファイバの接続損失の変動を抑制する手段を設けた場合、構造が複雑になるとともに、上述した位置決め調心構造を用いた光ファイバの接続に手間と時間が掛かり、コストが高くなってしまうおそれがある。
特に、光ファイバネットワークにおいては、断線、光部品の故障等の支障が発生した場合、光ファイバの接続作業を迅速に行うことが要求されるために、光ファイバを簡単かつ正確に、しかも短時間で接続し得る光ファイバ接続器の開発が要望されていた。
【0005】
図7は、このような要望に答えるべく開発された従来の単心線用の光ファイバ接続器の一例を示す斜視図、図8は図7のA−A線に沿う断面図であり、この光ファイバ接続器1は、互いの長手方向を揃えて配置された二つ割り構造の素子2、2と、素子2、2を両面から挟むことにより該素子2、2間に挟持力を付与して光ファイバ(光ファイバ単心線)3、3を挟持、固定するコ字状バネ(付勢手段)4とにより構成されている。
この場合、一方及び他方の光ファイバ3、3は、素子2、2の長手方向の一端側及び他端側において、これら光ファイバ3、3の裸ファイバ同士が突き合わせられかつ調心位置決めされた状態で、それぞれ個別に挟持されている。
【0006】
素子2には、その長手方向に延在するV溝、U溝等の案内溝2aが形成され、光ファイバ3は、この案内溝2aの端部から該案内溝2a内に案内されて素子2の長手方向中央部に形成された調心溝2cに導かれ、この調心溝2cにおいて素子2、2の長手方向両端から挿入された光ファイバ3、3の端面同士が精密に調心位置決めされるようになっている。
さらに、この素子2には複数の開口部2bが、コ字状バネ4には複数の開口部4aが、それぞれ位置を合わせて光ファイバ接続器1の長手方向に沿って形成されている。
【0007】
この光ファイバ接続器1では、その長手方向と直交する方向(図中矢印Xの方向)から、例えば、楔(分離部材)が開口部2b、4a内に差し込まれた場合には、この楔はコ字状バネ4の付勢力に抗して素子2、2同士を互いに離間する方向に押し広げる。これにより、光ファイバ接続器1の長手方向側方からの光ファイバ3の挿入、光ファイバ接続器1の長手方向側方への光ファイバ3の引き抜き、あるいは光ファイバ3の交換等の作業が容易に達成される。
【0008】
しかしながら、上述した従来の光ファイバ接続器1では、サイズが小さいためにコ字状バネ4を押し広げる作業が大変であるという問題があり、また、光ファイバ3挿入時においては、コ字状バネ4を押し広げつつ素子2に光ファイバ3を挿入しなければならないために、手間がかかり、作業効率が低下するという問題があった。
また、楔の押し込み状態によっては、素子2に歪が生じたり、あるいはコ字状バネ4の挟持力が不安定になって光ファイバ3の接続精度が低下したり等の不具合が生じるおそれがあるために、作業には高度の技術を要し、作業効率を高めることが難しいという問題があった。
【0009】
そこで、従来の光ファイバ接続器を用いて光ファイバ同士を突き合わせ接続する場合に、その作業を簡便かつ短時間に行うことのできる光ファイバ接続工具が提案され、実用に供されている。
図9は、この種の光ファイバ接続工具10の一例を示す平面図、図10は同一部破断側面図であり、図において、11は支持機構、12は楔(分離部材)、13は押圧機構、14はホルダ保持台、15は押付力印加機構、16は光ファイバホルダ、17はベースである。
支持機構11は、多心線用の光ファイバ接続器1’を光ファイバ接続工具10内の所定位置に支持するためのもので、ベース17の中央部に設けられており、支持台21と、支持台21上に形成された溝22内に光ファイバ接続器1’を載置・固定するための図示しない保持蓋とを備えた構成である。
【0010】
楔12は、縦断面が楔形状かつ横断面が矩形状の複数の刃体が一体に形成されたもので、各刃体は光ファイバ接続器1’の開口部2b各々に対応して配置されている。そして、光ファイバ接続器1’の長手方向と直交する方向から開口部2bを通して素子2、2間に差し込まれた際に、コ字状バネ4の付勢力に抗して素子2、2同士を互いに離間する方向に押し広げるためのものである。
押圧機構13は、支持機構11に隣接して設けられたもので、支持機構11に対して進退自在な移動台23と、該移動台23に設けられて楔12を取り付けるための楔取付台24と、移動台23を支持機構11に対して進退させるレバー25及び図示しない駆動機構とにより構成されている。
【0011】
ホルダ保持台14は、支持機構11の両側に設けられたもので、長方形板状の光ファイバホルダ16が着脱自在に載置される。
押付力印加機構15は、レバーを操作することによりホルダ保持台14を支持機構11に対して近接・離間させるもので、バネ26の付勢力により光ファイバホルダ16に支持された光ファイバ3に突き合わせ力を付与する構成である。
光ファイバホルダ16は、光ファイバ3をクランプ支持するものである。
【0012】
この光ファイバ接続工具10を用いて光ファイバ3、3同士を突き合わせ接続するには、まず、光ファイバ接続器1’を支持台21の溝22に載置し、該光ファイバ接続器1’上を図示しない保持蓋で覆うことで、光ファイバ接続器1’を保持・固定する。
次いで、楔12を所定位置に移動させ、レバー25を図10中時計回り方向に回転させて移動台23を支持機構11に向かって前進させる。この際に、楔12が光ファイバ接続器1’の長手方向と直交する方向から開口部2bを通して素子2、2間に差し込まれ、コ字状バネ4の付勢力に抗して素子2、2同士を互いに離間する方向に押し広げることになる。さらにレバー25を時計回り方向に所定位置まで回転させると、楔12は素子2、2間の所定深さまで挿入される。
【0013】
一方、双方のホルダ保持台14それぞれに、光ファイバ3をクランプ支持した光ファイバホルダ16を載置し、押付力印加機構15のレバーを操作して各ホルダ保持台14を支持機構11に対して近接させる。この際に、クランプ支持された光ファイバ3の裸ファイバは、光ファイバ接続器1’の長手方向の両端部から素子2、2間に挿入され、これら裸ファイバ同士が調心溝2cにて互いに突き合わされる。
さらに、各ホルダ保持台14を支持機構11に対して近接させると、この突き合わせ状態の光ファイバ3、3間にバネ26の付勢力により突き合わせ力が付与される。
この状態を維持したまま、レバー25を図10中反時計回り方向に回転させて移動台23を支持機構11から後退させる。この際、楔12は移動台23と共に後退して光ファイバ接続器1’から引き抜かれるので、光ファイバ3、3同士は調心かつ突き合わされた状態でコ字状バネ4の付勢力により保持・固定される。このように、光ファイバ接続工具10を用いて光ファイバ3、3同士を突き合わせ接続することができる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来の光ファイバ接続工具では、光ファイバ3の調心及び位置決めの精度の向上、作業性の向上、作業時間の短縮等を図ることができるものの、工具全体が大型であり、機構も複雑であることから、作業現場への移動を簡単に行うことができないという問題点があった。
特に、利用者の建屋内に設置された光通信機器等において光ファイバ同士の突き合わせ接続を行う場合、用いられる光ファイバ接続工具に対しては、
(1)光ファイバの調心及び位置決めの精度を従来品と同様の水準に維持することができること
(2)構造が簡単で操作性に優れていること
(3)軽量で携帯に便利であること
等を満たす必要があるが、従来の光ファイバ接続工具では(1)〜(3)の要求を同時に満たすことは難しい。
さらに、従来の光ファイバ接続器では、接続心数が増加するにしたがってコ字状バネのバネ圧が大きくるために、接続心数の増加に伴って楔を挿入する力が必要になる。例えば、単心用の光ファイバ接続器と8心用の光ファイバ接続器とでは、楔を挿入する力の大きさが全く異なったものとなる。
【0015】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、特に、多心用の光ファイバ接続器の楔を挿入する力を増大するために用いられ、光ファイバの調心及び位置決めの精度を従来品と同様の水準に維持することができ、構造が簡単で操作性に優れ、しかも軽量で携帯に便利な光ファイバ接続工具を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は次の様な光ファイバ接続工具を採用した。
すなわち、請求項1記載の光ファイバ接続工具は、二つ割り構造の素子を互いの長手方向を揃えて配置しかつ付勢手段により互いが近接する方向に付勢され、かつ該素子の長手方向の一端側及び他端側においてそれぞれ個別に一方及び他方の光ファイバを該素子間に挟持してこれら光ファイバ同士を突き合わせ接続可能に調心位置決めする光ファイバ接続器を用い、前記光ファイバ同士を突き合わせ接続する際に用いられる光ファイバ接続工具であって、ベース上に、前記光ファイバ接続器を支持する支持部材と、前記光ファイバ接続器の長手方向と直交する方向から前記素子間に差し込まれた際に前記付勢手段の付勢力に抗して前記素子同士を互いに離間する方向に押し広げることにより、前記光ファイバの挟持を解除する分離部材と、前記分離部材前記光ファイバ接続器に対向する端面に設けられた板部及び該板部の前記分離部材とは反対の側に設けられた押し込みバーを有し、前記分離部材を押圧し前記素子間に差し込む押圧部材と、操作子を有し、該操作子に与えられた力を増加させて当該力により前記押圧部材を押圧して前記支持部材に向けて移動させる移動手段とを備え、前記移動手段は、前記押圧部材に近接して配置され、該押圧部材の進退方向に対して垂直に配置された軸と、当該軸の回りに回動自在とされた偏心カムと、該偏心カムを回動させる操作子であるノブとを備え、前記ベース上に取り外し可能に固定して、前記偏心カムが前記押圧部材の前記分離部材とは反対の側に配置されるように設けられ、前記支持部材から離隔する側に引き出された前記押圧部材の前記押し込みバーに、前記偏心カムの周縁部のうち前記軸からの距離が最も短い部分を接触させた状態で、前記ノブの回動操作によって前記偏心カムを回動させて該偏心カムに接触する前記押圧部材を前記支持部材に対して前進させることで前記分離部材を前記光ファイバ接続器に向けて前進させ、前記偏心カムを前記押圧部材に対して非接触状態とし、前記押圧部材を前記支持部材に対して後退させることで前記分離部材を前記光ファイバ接続器より退避させる構成であることを特徴とする。
請求項2に係る発明は、前記移動手段は、前記ベース上に取り外し可能にネジ止めされるブロックを具備し、このブロックに、前記押圧部材の進退方向に対して垂直の前記軸が設けられていることを特徴とする請求項1記載の光ファイバ接続工具である。
請求項3に係る発明は、前記光ファイバ接続器では、該光ファイバ接続器の長手方向両端部から素子間に挿入された、多心線の光ファイバ同士が突き合わせ接続されるようになっていることを特徴とする請求項1又は2記載の光ファイバ接続工具である。
【0017】
この光ファイバ接続工具では、支持部材に光ファイバ接続器を載置し、操作子に力を加えることで該操作子に与えられた力を増加させ、この増力した力により前記押圧部材を押圧して前記支持部材に対して前進させると、該押圧部材に固定された前記分離部材は光ファイバ接続器の長手方向と直交する方向から開口部を通して素子間に差し込まれ、付勢手段の付勢力に抗して素子同士を互いに離間する方向に押し広げる。さらに該押圧部材を所定位置まで前進させると、該分離部材は素子間の所定深さまで挿入される。
【0018】
次いで、光ファイバ接続器の長手方向の両端部から光ファイバを素子間に挿入し、これら光ファイバ同士を互いに突き合わせる。
この状態を維持したまま、前記移動手段を前記押圧部材に対して非接触状態とし、その後、前記押圧部材を所定位置まで後退させると、前記分離部材は押圧部材と共に後退し光ファイバ接続器から引き抜かれる。この時、光ファイバ同士は調心かつ突き合わされた状態で付勢手段の付勢力により保持・固定される。
このように、前記移動手段及び前記押圧部材を用いた簡単な構成で、しかも操作子に力を加えることで前記押圧部材に加わる力を増加させることにより、光ファイバ同士の調心及び突き合わせ接続を短時間で、しかも容易に行うことが可能になる。
【0020】
本発明に係る光ファイバ接続工具では、ノブをその軸線の回りに回動させて当該ノブに接触または固定された偏心カムをその軸線の回りに回動させることにより、該偏心カムに接触する前記押圧部材を該偏心カムの回動の度合いに応じて前記支持部材に向かって前進させる。これにより、前記押圧部材に固定された前記分離部材は、それに加わる力がノブにより生じた力により更に増加され、開口部を通して素子間に差し込まれて付勢手段の付勢力に抗して素子同士を互いに離間する方向に容易に押し広げ、素子間の所定深さまで挿入される。
【0021】
その後、光ファイバを素子間に挿入して光ファイバ同士を互いに突き合わせ、前記偏心カムを前記押圧部材に対して後退させて非接触状態とし、その後、前記押圧部材を所定位置まで後退させる。これにより、前記分離部材は光ファイバ接続器から引き抜かれ、光ファイバ同士を調心かつ突き合わされた状態で付勢手段の付勢力により保持・固定される。
このように、押圧部材に接触する偏心カムを回動させるだけの簡単な構成で、しかも僅かな力を加えるだけで、光ファイバ同士の調心及び突き合わせ接続を短時間で、しかも容易に行うことが可能になる。
【0023】
また、本発明に係る光ファイバ接続工具では、前記移動手段を着脱自在としたことにより、光ファイバ接続器のサイズに合わせて、少なくとも偏心カムの大きさが異なる移動手段を複数種類用意することで、前記分離部材の挿入深さを最適な深さに調整することが可能になる。これにより、作業現場において、サイズが異なる複数種類の光ファイバ接続器を適宜用いる必要がある様な場合においても、各光ファイバ接続器における前記分離部材の挿入深さを最適な深さに調整され、光ファイバ同士の調心及び突き合わせ接続の精度が向上する。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明の光ファイバ接続工具の一実施形態について図面に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態の多心線用の光ファイバ接続工具を示す分解斜視図、図2は同平面図、図3は図2のB−B線に沿う断面図、図4は図2のC−C線に沿う断面図であり、これらの図において、図7〜図10と同一の構成要素には同一の符号を付し説明を省略する。
【0025】
これらの図において、31は多心線用の光ファイバ接続器1’(ここでは4心線を用いた)を支持する支持部材、32は楔(分離部材)12を光ファイバ接続器1’に向けて押圧し素子2、2間に差し込む押圧部材、34は押圧部材32の外側に設けられたプレートである。また、61、61は支持部材31の両側に設けられて多心線の光ファイバ62、62を互いに突き合わせた状態で固定する光ファイバ多心線用の固定部材、63は多心線の光ファイバ62を固定する光ファイバホルダ、71は押圧部材に隣接して設けられた移動部材(移動手段)である。なお、光ファイバ接続工具を構成する支持部材31、押圧部材32、プレート34、固定部材61、61及び移動部材71は矩形板状のベース81上に搭載されている。
【0026】
支持部材31は、光ファイバ接続器1’を光ファイバ接続工具内の所定位置に支持するためのもので、ベース1の中央部に設けられた支持台41と、支持台41の両側に設けられた板部42、42とにより構成されている。支持台41は、光ファイバ接続器1’を載置するためのもので、矩形厚板状の本体の上面には光ファイバ接続器1’を載置するための溝43が形成されている。ここでは、光ファイバ接続器1’は、素子2、2の開口部2b及び素子2、2を付勢するコ字状バネ4の開口部4aが楔12に対向するように載置され、溝43内に安定した状態で支持される。
【0027】
押圧部材32は、楔12を光ファイバ接続器1’の開口部2bに向けて押圧し素子2、2間に差し込むもので、支持台41に形成された開口部45内を摺動する矩形板状の板部46と、該板部46の他端部にネジ47等で固定された押し込みバー48とにより構成されている。この板部46の光ファイバ接続器1’に対向する端面の所定位置には楔12が設けられている。
【0028】
固定部材61は、光ファイバ62に外方から突き合わせ力を付与した状態で固定するもので、その上面には、その長手方向に沿って傾斜する溝64が形成され、この溝64には、光ファイバホルダ63を支持部材31に向けて押圧・固定するためのバネ(付勢手段)65が設けられている。バネ65は、その端部に設けられた押圧片66が該バネ65の付勢力により溝64に形成されたスリット67を支持部材31に向かって移動し光ファイバホルダ63の端面を押圧することにより、該光ファイバホルダ63を溝64内に固定する。同時に、多心線の光ファイバ62に突き合わせ力が付与され、光ファイバ62、62同士が突き合わせ接続される。
【0029】
移動部材71は、押圧部材32に近接して設けられたもので、ベース81に着脱自在とされている。
この移動部材71は、ベース81上にネジ72により固定された箱型状のブロック73と、このブロック73を上下方向(ベース81の上面に垂直な方向)に貫通する軸穴74内に配置されて押圧部材32の進退方向に対して垂直とされた軸75と、ブロック73内に軸穴74と直交するように形成された偏心カム収納用の凹部76に配置され前記軸75に嵌め込まれて固定された偏心カム77と、前記軸75の上端部に同軸的に設けられて外部より力を付与するノブ78とにより構成されている。
【0030】
偏心カム77は、全体形状が略長円状の板部からなるもので、この板部の一方の焦点近傍の位置に前記軸75が貫通した状態で固定されることで、この軸75の回りに偏心した状態で回動するようになっている。これにより、この偏心カム77を回動させることで、その外周面に接触する押し込みバー48が偏心カム77によって押されて前進し、その結果、板部46に固定された楔12が光ファイバ接続器1’の開口部2bに向けて押圧されることになる。
【0031】
そして、偏心カム77と押し込みバー48との位置関係は、押し込みバー48がプレート34側に引き出された状態では、偏心カム77の周縁部のうち軸75からの距離が最も短い部分が押し込みバー48に接触した状態とされ、押し込みバー48が光ファイバ接続器1’側に押し込まれた状態では、偏心カム77の周縁部のうち軸75からの距離が最も長い部分が押し込みバー48に接触した状態とされるように、その位置が調整されている。
【0032】
この移動部材71は、ノブ78は大径であるが、これと一体とされた偏心カム77はこれより小径である。したがって、ノブ78の回転力が偏心カム77では増大することになる。
この移動部材71は、ブロック73をベース81上にネジ72によりネジ止めすることで容易に固定され、また、ネジ72を外すことにより、容易にベース81から取り外すことができる。
また、軸75を偏心カム77に嵌め込む構成とする替わりに、軸75と偏心カム77とを一体化した構成としてもよい。
【0033】
この光ファイバ接続工具を用いて光ファイバ62、62同士を突き合わせ接続するには、まず、この光ファイバ接続工具を水平に定置し、光ファイバ接続器1’を支持台41の溝43に載置することで、光ファイバ接続器1’を保持・固定する。これにより、光ファイバ接続器1’は支持部材31の所定位置に所定の向きで保持されることとなる。
【0034】
次いで、移動部材71及び押圧部材32を作動させることにより楔12を光ファイバ接続器1’の素子2、2間に差し込む。
ここでは、予め、押し込みバー48をプレート34側に引き出しておく。それに伴って、偏心カム77は、その周縁部のうち軸75からの距離が最も短い部分が押し込みバー48に接触した状態となる。
【0035】
次に、ノブ78を、例えば手動でその軸線の回りに時計回り(図2中矢印方向)に回動させて、このノブ78に一体化された偏心カム77をその軸75の回りに回動させ、この偏心カム77に接触する押し込みバー48を支持部材31に向かって前進させる。このように、移動部材71を用いて押し込みバー48を押し込むことで、板部46を溝43に向かって摺動させ、図5に示すように、それに固定された楔12を所定位置、すなわち光ファイバ接続器1’の開口部2bに近接する位置に移動させる。その後、押し込みバー48をさらに押し込むことで板部46を溝43に向かって前進させる。
【0036】
この際に、図6に示すように、楔12が光ファイバ接続器1’の長手方向と直交する方向から開口部2bを通して素子2、2間に差し込まれ、コ字状バネ4の付勢力に抗して素子2、2同士を互いに離間する方向に押し広げることになる。さらに押し込みバー48を押し込むと、楔12は素子2、2間の所定深さまで挿入される。
【0037】
この場合、楔12と支持台41との間にクリアランスが在ると、楔12の刃体が光ファイバ接続器1’の長手方向と直交する方向から開口部2bを通して素子2、2間に差し込まれる際に、板部46が支持台41に対して僅かにスライドしつつ前進することでクリアランスが解消される。
また、楔12を素子2、2間に挿入する際に、素子2、2が位置ずれを起こしていて開口部2bの向きが正規の位置からずれていたり、あるいは素子2、2が傾いていたり等の不具合が生じていた場合、楔12は素子2、2間への挿入が阻害されるので、光ファイバ接続器1’を再度支持台41の溝43に載置し直すことで作業をやり直すことができる。
【0038】
次いで、光ファイバ62の裸ファイバを光ファイバ接続器1’の長手方向の両端部から素子2、2間に挿入し、これら裸ファイバ同士を調心溝2cにて互いに突き合わせる。この状態で光ファイバ62にその長手方向から突き合わせ力fを付与して撓ませ、この状態で固定部材61に固定する。この時、該光ファイバ62にはこの撓みを元の直線の状態に戻そうとする復帰力が働くため、この復帰力が光ファイバ62の突き合わせ力となる。
【0039】
この状態を維持したまま、押し込みバー48を後退させて板部46を溝43から後退させる。この際、楔12は板部46と共に後退して光ファイバ接続器1’から引き抜かれるので、光ファイバ62、62の裸ファイバ同士は調心かつ突き合わされた状態でコ字状バネ4の付勢力により保持・固定される。
このように、本実施形態の光ファイバ接続工具を用いて光ファイバ62、62同士を突き合わせ接続することができる。
【0040】
本実施形態の光ファイバ接続工具によれば、移動部材71を作動させて押圧部材32を支持部材31に対して進退させるだけの簡単な操作で、光ファイバ62、62同士の調心及び突き合わせ接続を容易に行うことができる。しかも、光ファイバ62、62の調心及び位置決めの精度を従来品と同様の水準に維持することができる。
【0041】
また、この光ファイバ接続工具は、支持部材31と、楔12を有する押圧部材32と、光ファイバ多心線用の固定部材61と、移動部材71とを備えた構成としたので、構造が簡単で、しかも軽量で携帯に便利なものとなる。また、構造が簡単なものであることから、その操作性も容易なものとなる。
【0042】
また、少なくとも偏心カム77の大きさが異なる移動部材71を、光ファイバ接続器のサイズに合わせて複数種類用意すれば、楔12の挿入深さを最適な深さに調整することができる。したがって、作業現場において、サイズが異なる複数種類の光ファイバ接続器を適宜用いる必要がある様な場合においても、常に、各光ファイバ接続器における楔12の挿入深さを最適な深さに調整することができ、光ファイバ同士の調心及び突き合わせ接続の精度を向上させることができる。
【0043】
以上、本発明の光ファイバ接続工具の一実施形態について図面に基づき説明してきたが、具体的な構成は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計の変更等が可能である。
例えば、移動部材71における偏心カム77やノブ78の形状や大きさ、支持部材31及び押圧部材32の形状や大きさ、楔12の形状や数、固定部材61の取付位置等は、必要に応じて適宜変更可能である。
【0044】
【発明の効果】
以上説明した様に、本発明の請求項1記載の光ファイバ接続工具によれば、光ファイバ接続器を支持する支持部材と、前記光ファイバ接続器の長手方向と直交する方向から前記素子間に差し込まれた際に前記付勢手段の付勢力に抗して前記素子同士を互いに離間する方向に押し広げることにより、前記光ファイバの挟持を解除する分離部材と、前記分離部材を前記光ファイバ接続器に向けて押圧し前記素子間に差し込む押圧部材と、操作子を有し、該操作子に与えられた力を増加させて当該力により前記押圧部材を押圧して前記支持部材に向けて移動させる移動手段とを備えたので、操作子により得られた増力により前記押圧部材を押圧して移動部材を作動させて押圧部材を支持部材に対して進退させるだけの簡単な操作で、しかも僅かな力を加えるだけで、光ファイバ同士の調心及び突き合わせ接続を容易に行うことができる。しかも、光ファイバの調心及び位置決めの精度を従来品と同様の水準に維持することができる。
【0045】
また、この光ファイバ接続工具によれば、支持部材と、分離部材と、押圧部材と、移動部材とを備えた構成としたので、構造が簡単で、しかも軽量で携帯に便利である。また、構造が簡単なものであるから、その操作性も容易であり、保守管理も容易である。
【0046】
また、本発明に係る光ファイバ接続工具によれば、前記移動手段は、前記押圧部材に近接して配置され、該押圧部材の進退方向に対して垂直に配置された軸と、当該軸の回りに回動自在とされた偏心カムと、該偏心カムを回動させる操作子であるノブとを備え、前記偏心カムを回動させて該偏心カムに接触する前記押圧部材を前記支持部材に対して前進させることで前記分離部材を前記光ファイバ接続器に向けて前進させ、前記偏心カムを前記押圧部材に対して非接触状態とし、前記押圧部材を前記支持部材に対して後退させることで前記分離部材を前記光ファイバ接続器より退避させる構成としたので、押圧部材に接触する偏心カムを回動させるという簡単な動作で、光ファイバ同士の調心及び突き合わせ接続を短時間で、しかも容易に行うことができる。
【0047】
また、本発明に係る光ファイバ接続工具によれば、前記移動手段を着脱自在としたので、光ファイバ接続器のサイズに合わせて、少なくとも偏心カムの大きさが異なる移動手段を複数種類用意することで、前記分離部材の挿入深さを最適な深さに調整することができる。したがって、作業現場においてサイズが異なる複数種類の光ファイバ接続器を適宜用いる必要がある様な場合においても、前記分離部材の挿入深さを最適な深さに容易に調整することができ、光ファイバ同士の調心及び突き合わせ接続の精度を向上させることができる。
【0048】
以上により、移動部材を作動させて押圧部材を支持部材に対して進退させるだけの簡単な操作で、光ファイバ同士の調心及び位置決めの精度を従来品と同様の水準に維持することができ、構造が簡単で操作性に優れ、しかも軽量で携帯に便利な光ファイバ接続工具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態の多心線用の光ファイバ接続工具を示す分解斜視図である。
【図2】 本発明の一実施形態の多心線用の光ファイバ接続工具を示す平面図である。
【図3】 図2のB−B線に沿う断面図である。
【図4】 図2のC−C線に沿う断面図である。
【図5】 本発明の一実施形態の多心線用の光ファイバ接続工具の楔の動作を示す断面図である。
【図6】 本発明の一実施形態の多心線用の光ファイバ接続工具の楔の動作を示す断面図である。
【図7】 従来の単心線用の光ファイバ接続器の一例を示す斜視図である。
【図8】 従来の単心線用の光ファイバ接続器の一例を示す縦断面図である。
【図9】 従来の光ファイバ接続工具の一例を示す平面図である。
【図10】 従来の光ファイバ接続工具の一例を示す一部破断側面図である。
【符号の説明】
1、1’…光ファイバ接続器、2…素子、2a…案内溝、2b…開口部、2c…調心溝、3…光ファイバ(光ファイバ単心線)、4…コ字状バネ(付勢手段)、4a…開口部、11…支持機構、12…楔(分離部材)、13…押圧機構、14…ホルダ保持台、15…押付力印加機構、16…光ファイバホルダ、17…ベース、21…支持台、22…溝、23…移動台、24…楔取付台、25…レバー、26…バネ、31…支持部材、32…押圧部材、34…プレート、41…支持台、42…板部、43…溝、45…開口部、46…板部、47…ネジ、48…押し込みバー、61…固定部材、62…光ファイバ(光ファイバ多心線)、63…光ファイバホルダ、64…溝、65…バネ(付勢手段)、66…押圧片、67…スリット、71…移動部材(移動手段)、72…ネジ、73…ブロック、74…軸穴、75…軸、76…凹部、77…偏心カム、78…ノブ、81…ベース。

Claims (3)

  1. 二つ割り構造の素子(2、2)を互いの長手方向を揃えて配置しかつ付勢手段(4)により互いが近接する方向に付勢され、かつ該素子の長手方向の一端側及び他端側においてそれぞれ個別に一方及び他方の光ファイバ(62、62)を該素子間に挟持してこれら光ファイバ同士を突き合わせ接続可能に調心位置決めする光ファイバ接続器(1’)を用い、前記光ファイバ同士を突き合わせ接続する際に用いられる光ファイバ接続工具であって、
    ベース(81)上に、
    前記光ファイバ接続器を支持する支持部材(31)と、
    前記光ファイバ接続器の長手方向と直交する方向から前記素子間に差し込まれた際に前記付勢手段の付勢力に抗して前記素子同士を互いに離間する方向に押し広げることにより、前記光ファイバの挟持を解除する分離部材(12)と、
    前記分離部材前記光ファイバ接続器に対向する端面に設けられた板部(46)及び該板部の前記分離部材とは反対の側に設けられた押し込みバー(48)を有し、前記分離部材を押圧し前記素子間に差し込む押圧部材(32)と、
    操作子を有し、該操作子に与えられた力を増加させて当該力により前記押圧部材を押圧して前記支持部材に向けて移動させる移動手段(71)とを備え、
    前記移動手段は、前記押圧部材に近接して配置され、該押圧部材の進退方向に対して垂直に配置された軸(75)と、当該軸の回りに回動自在とされた偏心カム(77)と、該偏心カムを回動させる操作子であるノブ(78)とを備え、前記ベース上に取り外し可能に固定して、前記偏心カム(77)が前記押圧部材の前記分離部材とは反対の側に配置されるように設けられ、
    前記支持部材から離隔する側に引き出された前記押圧部材の前記押し込みバーに、前記偏心カム(77)の周縁部のうち前記軸(75)からの距離が最も短い部分を接触させた状態で、前記ノブの回動操作によって前記偏心カムを回動させて該偏心カムに接触する前記押圧部材を前記支持部材に対して前進させることで前記分離部材を前記光ファイバ接続器に向けて前進させ、
    前記偏心カムを前記押圧部材に対して非接触状態とし、前記押圧部材を前記支持部材に対して後退させることで前記分離部材を前記光ファイバ接続器より退避させる構成であることを特徴とする光ファイバ接続工具。
  2. 前記移動手段は、前記ベース(81)上に取り外し可能にネジ止めされるブロック(73)を具備し、このブロック(73)に、前記押圧部材の進退方向に対して垂直の前記軸(75)が設けられていることを特徴とする請求項1記載の光ファイバ接続工具。
  3. 前記光ファイバ接続器では、該光ファイバ接続器の長手方向両端部から素子間に挿入された、多心線の光ファイバ同士が突き合わせ接続されるようになっていることを特徴とする請求項1又は2記載の光ファイバ接続工具。
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