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JP3982001B2 - ステンレス鋼の冷間圧延方法および圧延油組成物 - Google Patents

ステンレス鋼の冷間圧延方法および圧延油組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はステンレス鋼、特にオーステナイト系ステンレス鋼を冷間圧延する方法および圧延油組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ステンレス鋼板は、材料を熱間圧延、焼鈍した後冷間圧延され製造されるが、特にオーステナイト系ステンレス鋼の熱間圧延材や焼鈍材には、材料表面に金属の結晶粒界が数多く存在している。高圧下率で冷間圧延を行った場合には、これら結晶粒界は掻き落とされ表面性状へは影響を及ぼさないが、低圧下率(30%以下、より限定すれば20%以下)で高速冷間圧延を行った場合には、圧延した後も結晶粒界が残るため光沢不良や光沢むらの原因となっている。
これまでは、低圧下率で目的の表面性状を得るためには、圧延速度を低くすることで対応してきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
低圧下率でも良好な表面性状を有する製品を得ることが必要であるにもかかわらず、従来の技術ではこれを解決する術がなく、低い圧下率で目的とする表面性状を得るためには、やむを得ず圧延速度を低くせざるを得ず、生産性向上に対する大きな阻害要因となってきた。
本発明の第1の発明は、これらの問題を解決するためのステンレス鋼の冷間圧延方法を提供するものである。本発明の第2の発明は、ステンレス鋼の冷間圧延に潤滑油として用いる圧延油組成物を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明のステンレスの圧延方法は、表面改質したワークロールを用い、かつ潤滑油として炭素数6〜22のカルボン酸と炭素数1〜18の脂肪族アルコールからなるエステルを組成物全量基準で2〜50質量%を含有する圧延油組成物を用いることを特徴とする。
本発明の圧延油組成物は、表面改質したワークロールを用いて、ステンレス鋼の冷間圧延を行う際に潤滑油として用いられる圧延油組成物であって、炭素数6〜22のカルボン酸と炭素数1〜18の脂肪族アルコールからなるエステルを組成物全量基準で2〜50質量%を含有することを特徴とする。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の内容をより詳細に説明する。
本発明で用いられる表面改質したワークロールとしては、クロムメッキロールおよび複合メッキロールなどが挙げられる。
【0006】
上記クロムメッキロールは、鍛鋼、クロム鋼などを母材とし、これをクロムメッキしたものである。メッキの組成については任意であるが、サージャント浴から得られる6価のクロムメッキあるいはシュウ酸浴から得られる3価のクロムメッキなどが一般に用いられる。メッキ厚については任意であるが、メッキの摩耗を抑える点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上であることが望ましい。また、メッキの剥離を抑える点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下であることが望ましい。メッキ方法としては、電解法および無電解法の何れもが使用可能であるが、メッキ作業の高能率化を考慮すると電解法が望ましい。
【0007】
また、上記複合メッキロールは、鍛鋼、クロム鋼などを母材とし、Cr、Cu、Ni、Co、Ni−P、Ni−Coなどをマトリックスとし、その中にSiC、ZrB2 、ZrO2 、Si34 、Cr32 、Al23 、B4 C、BN、CBN、ダイヤモンドなどの高硬質材料の粒子を分散させたものである。この場合のメッキ厚についても任意であるが、メッキの摩耗を抑える点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上であることが望ましい。また、メッキの剥離を抑える点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下であることが望ましい。
【0008】
また、上記高硬質材料の粒子が均一に分散し、均一な複合メッキを得られやすい点から、3価のクロムをマトリックスとすることが好ましい。さらに、上記高硬質材料の中でも、メッキ浴中での分散性、ロールの摩耗、製品の表面性状などの点から、SiCを用いることが好ましい。高硬質材料の粒子径については任意であるが、耐摩耗性の点から、平均粒子径が好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上であることが望ましい。また、得られる製品の表面性状の点から、またメッキの剥離を抑える点から、平均粒子径が20μm以下、好ましくは10μm以下であることが望ましい。
【0009】
また、高硬質材料の粒子の配合量についても特に制限はないが、メッキ層の全量基準で0.1〜20質量%が適当である。配合量が少なすぎると効果がなく、配合量が多すぎると製品の表面性状が悪化し、またメッキが剥離しやすくなる。メッキ方法としては、電解法および無電解法の何れもが使用可能であるが、メッキ作業の高能率化を考慮すると電解法が望ましい。
【0010】
本発明の圧延方法で用いられるワークロールの表面硬度については任意であるが、通常表面硬度が500〜2000Hvのものが用いられる。本発明でいう表面硬度とはビッカース硬度を表し、JIS Z 2244「ビッカース硬さ試験方法」により得られた値である。
【0011】
本発明の圧延方法においては、上記したワークロールを用いるだけでなく、潤滑油として炭素数6〜22のカルボン酸と炭素数1〜18の脂肪族アルコールからなるエステル(以下(A)成分という。)を2〜50質量%を含有する圧延油組成物を用いることが必要である。
【0012】
炭素数6〜22のカルボン酸としては、一塩基酸であっても2価以上の多塩基酸であっても良い。
一塩基酸としては、通常炭素数6〜22の脂肪酸で、直鎖のものでも分岐のものでも良く、また飽和のものでも不飽和のものでも良い。
具体的には例えば、直鎖状または分岐状のヘキサン酸、直鎖状または分岐状のヘプタン酸、直鎖状または分岐状のオクタン酸、直鎖状または分岐状のノナン酸、直鎖状または分岐状のデカン酸、直鎖状または分岐状のウンデカン酸、直鎖状または分岐状のドデカン酸、直鎖状または分岐状のトリデカン酸、直鎖状または分岐状のテトラデカン酸、直鎖状または分岐状のペンタデカン酸、直鎖状または分岐状のヘキサデカン酸、直鎖状または分岐状のヘプタデカン酸、直鎖状または分岐状のオクタデカン酸、直鎖状または分岐状のヒドロキシオクタデカン酸、直鎖状または分岐状のノナデカン酸、直鎖状または分岐状のイコサン酸、直鎖状または分岐状のヘンイコサン酸、直鎖状または分岐状のドコサン酸、などの飽和脂肪酸、直鎖状または分岐状のヘキセン酸、直鎖状または分岐状のヘプテン酸、直鎖状または分岐状のオクテン酸、直鎖状または分岐状のノネン酸、直鎖状または分岐状のデセン酸、直鎖状または分岐状のウンデセン酸、直鎖状または分岐状のドデセン酸、直鎖状または分岐状のトリデセン酸、直鎖状または分岐状のテトラデセン酸、直鎖状または分岐状のペンタデセン酸、直鎖状または分岐状のヘキサデセン酸、直鎖状または分岐状のペプタデセン酸、直鎖状または分岐状のオクタデセン酸、直鎖状または分岐状のヒドロキシオクタデセン酸、直鎖状または分岐状のノナデセン酸、直鎖状または分岐状のイコセン酸、直鎖状または分岐状のヘンイコセン酸、直鎖状または分岐状のドコセン酸、などの不飽和脂肪酸が挙げられる。
これらの中でも、特に炭素数8〜20の飽和脂肪酸、または炭素数8〜20の不飽和脂肪酸が好ましい。
【0013】
多塩基酸としては炭素数6〜22の二塩基酸およびトリメリト酸などが挙げられる。
炭素数6〜22の二塩基酸としては、通常脂肪族二塩基酸が用いられ、直鎖のものでも分岐のものでも良く、また飽和のものでも不飽和のものでも良い。
具体的には例えば、直鎖状または分岐状のヘキサン二酸、直鎖状または分岐状のヘプタン二酸、直鎖状または分岐状のオクタン二酸、直鎖状または分岐状のノナン二酸、直鎖状または分岐状のデカン二酸、直鎖状または分岐状のウンデカン二酸、直鎖状または分岐状のドデカン二酸、直鎖状または分岐状のトリデカン二酸、直鎖状または分岐状のテトラデカン二酸、直鎖状または分岐状のペンタデカン二酸、直鎖状または分岐状のヘキサデカン二酸、直鎖状または分岐状のヘプタデカン二酸、直鎖状または分岐状のオクタデカン二酸、直鎖状または分岐状のノナデカン二酸、直鎖状または分岐状のイコサン二酸、直鎖状または分岐状のヘンイコサン二酸、直鎖状または分岐状のドコサン二酸、直鎖状または分岐状のヘキセン二酸、直鎖状または分岐状のヘプテン二酸、直鎖状または分岐状のオクテン二酸、直鎖状または分岐状のノネン二酸、直鎖状または分岐状のデセン二酸、直鎖状または分岐状のウンデセン二酸、直鎖状または分岐状のドデセン二酸、直鎖状または分岐状のトリデセン二酸、直鎖状または分岐状のテトラデセン二酸、直鎖状または分岐状のペンタデセン二酸、直鎖状または分岐状のヘキサデセン二酸、直鎖状または分岐状のヘプタデセン二酸、直鎖状または分岐状のオクタデセン二酸、直鎖状または分岐状のノナデセン二酸、直鎖状または分岐状のイコセン二酸、直鎖状または分岐状のヘンイコセン二酸、直鎖状または分岐状のドコセン二酸などが挙げられる。
【0014】
また、炭素数1〜18の脂肪族アルコールとしては、1価アルコールであっても、多価アルコールであっても良いが、通常1価のアルコールが用いられ、直鎖のものでも分岐のものでも良く、また飽和のものでも不飽和のものでも良い。
具体的には例えば、メタノール、エタノール、直鎖状または分岐状のプロパノール、直鎖状または分岐状のブタノール、直鎖状または分岐状のペンタノール、直鎖状または分岐状のヘキサノール、直鎖状または分岐状のヘプタノール、直鎖状または分岐状のオクタノール、直鎖状または分岐状のノナノール、直鎖状または分岐状のデカノール、直鎖状または分岐状のウンデカノール、直鎖状または分岐状のドデカノール、直鎖状または分岐状のトリデカノール、直鎖状または分岐状のテトラデカノール、直鎖状または分岐状のペンタデカノール、直鎖状または分岐状のヘキサデカノール、直鎖状または分岐状のヘプタデカノール、直鎖状または分岐状のオクタデカノール、アリルアルコール、直鎖状または分岐状のブテノール、直鎖状または分岐状のペンテノール、直鎖状または分岐状のヘキセノール、直鎖状または分岐状のヘプテノール、直鎖状または分岐状のオクテノール、直鎖状または分岐状のノネノール、直鎖状または分岐状のデセノール、直鎖状または分岐状のウンデセノール、直鎖状または分岐状のドデセノール、直鎖状または分岐状のトリデセノール、直鎖状または分岐状のテトラデセノール、直鎖状または分岐状のペンタデセノール、直鎖状または分岐状のヘキサデセノール、直鎖状または分岐状のヘプタデセノール、直鎖状または分岐状のオクタデセノールが挙げられる。
これらの中でも、より表面性状が良好な製品が得られることから、炭素数1〜12の飽和アルコールを用いることが好ましい。
【0015】
本発明において、上記カルボン酸として多塩基酸を用いた場合、多塩基酸中のカルボキシル基の全てがエステル化された完全エステルでも良く、カルボキシル基の一部がエステル化されずカルボキシル基のままで残っている部分エステルであっても良いが、より良好な表面性状を有する製品が得られ、また組成物自体の安定性がより良好となるなどの点から、完全エステルであることが好ましい。
【0016】
また、(A)成分のエステルとしては、上記カルボン酸として多塩基酸を用いた場合、1種のアルコールのみからなるエステルであっても、2種以上のアルコールの混合物からなるエステルであっても良い。
また、(A)成分としては、単一の構造を有するエステル1種のみからなっていても良く、構造の異なる2種以上のエステルからなっていても良い。
【0017】
本発明で用いられる(A)成分のエステルとしては、一塩基酸のエステルであっても、多塩基酸のエステルであっても良いが、より良好な表面性状を有する製品が得られることから、多塩基酸のエステルを用いることが好ましい。
【0018】
本発明で用いられる圧延油組成物中における上記(A)成分の含有量は、組成物全量基準で2〜50質量%である。(A)成分の含有量は、良好な表面性状を有する製品が得られることから、2質量%以上、好ましくは5質量%以上である、また50質量%以下、好ましくは25質量%以下である。
【0019】
本発明でいう圧延油組成物は、基油に上記したカルボン酸とアルコールとのエステルを配合したものである。
本発明における基油は、鉱油および/または合成油である。鉱油としては、例えば、原油を常圧蒸留および減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理などの精製処理を適宜組み合わせて精製したパラフィン系、ナフテン系などの油が使用できる。
【0020】
また、合成油としては、本発明の(A)成分のエステルを除く合成油、例えば、ポリα−オレフィン(ポリブテン、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマーなど)、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ポリオキシアルキレングリコール、ポリフェニルエーテルなどが使用できる。
【0021】
本発明において、基油の動粘度には何ら制限はないが、通常40℃における動粘度が4〜25mm2 /s、好ましくは6〜15mm2 /sのものが用いられる。
また、当然のことながらこれらの鉱油および合成油は単独でも、また2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0022】
本発明で用いられる圧延油組成物としては、上記した(A)成分を所定量含有していれば、その他の成分については何ら制限はないが、より良好な表面性状を有する製品が得られる点から、さらに(B)成分として炭素数1〜18の脂肪族アルコールを配合させることが好ましい。
【0023】
(B)成分の脂肪族アルコールとしては、1価アルコールであっても、多価アルコールであってもよいが、通常1価アルコールが用いられる。また、直鎖のものであっても分岐のものでもよく、飽和のものでも不飽和のものでもよい。具体的には例えば、上記(A)成分を構成する脂肪族アルコールとして列挙したものが挙げられる。これらの中でも、より表面性状が良好な製品が得られることから、炭素数8〜16の飽和アルコールを用いることが好ましい。
【0024】
(B)成分を配合する場合の含有量については任意であるが、含有量が少なすぎる場合には効果が期待できないため、圧延油組成物全量基準で好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であることが望ましい。また、含有量が多すぎる場合には、それに見合った効果の向上が見られず、また臭気の点から作業性を悪化させる恐れがあるため、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下であることが望ましい。
【0025】
また、さらにその優れた効果を向上させるため、必要に応じて、極圧添加剤、酸化防止剤、さび止め剤、腐食防止剤、消泡剤などを更に、単独でまたは2種以上組み合わせて添加することができる。
【0026】
上記極圧添加剤としては、トリクレジルフォスフェートなどのりん系化合物、およびジアルキルジチオリン酸亜鉛などの有機金属化合物、硫化油脂などのイオウ系化合物などが例示できる。
【0027】
上記酸化防止剤としては、2,6−ジターシャリーブチル−p−クレゾール(DBPC)などのフェノール系化合物、フェニル−α−ナフチルアミンなどの芳香族アミン、およびジアルキルジチオリン酸亜鉛などの有機化合物が例示できる。
【0028】
上記さび止め剤としては、オレイン酸などの脂肪酸の塩、ジノニルナフタレンスルホネートなどのスルホン酸塩、ソルビタンモノオレエートなどの多価アルコールの部分エステル、アミンおよびその誘導体、リン酸エステルおよびその誘導体などが例示できる。
上記腐食防止剤としては、ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
上記消泡剤としては、シリコン系のものなどが挙げられる。
【0029】
これら公知の添加剤を併用する場合の含有量は任意であるが、通常、これら公知の添加剤の合計含有量が組成物全量基準で0.1〜10質量%となるような量を添加するのが望ましい。
【0030】
本発明においては、上記したワークロールを用い、かつ上記した圧延油組成物を潤滑剤として用いて圧延を行えば、ステンレス鋼、特にオーステナイト系ステンレス鋼を低圧下率(5〜30%、好ましくは10〜20%)で圧延した場合にも、表面性状に優れた製品が得られる。
【0031】
【実施例】
以下、本発明の内容を実施例および比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの内容に何ら限定されるものではない。
【0032】
本発明に係わるワークロールおよび圧延油組成物、並びに比較のためのワークロールおよび圧延油組成物は以下の通りである。
【0033】
(ワークロール)(直径51mm)
1:JIS G 4404「合金工具鋼鋼材」で規定するSKD 11鋼材を母材としたクロムメッキロール(メッキ厚5μm、表面硬度715Hv)
2:JIS G 4404「合金工具鋼鋼材」で規定するSKD 11鋼材を母材とし、クロムをマトリックスとしSiC粒子(平均粒子径2μm)を分散させた複合メッキロール(SiC含有量15質量%、メッキ厚5μm、表面硬度1190Hv)
3:JIS G 4404「合金工具鋼鋼材」で規定するSKD 11鋼材のロール(表面硬度810Hv)
【0034】
(圧延油組成物)
試料油1:パラフィン系鉱油(40℃動粘度6.8mm2 /s)に、試料油全量基準でジオクチルアジペートを22質量%含有させたもの。
試料油2:パラフィン系鉱油(40℃動粘度6.8mm2 /s)に、試料油全量基準で7−エチルオクタデカン二酸のジメチルエステルを22質量%含有させたもの。
試料油3:パラフィン系鉱油(40℃動粘度6.8mm2 /s)に、試料油全量基準でジオクチルアジペートを17質量%およびn−ドデカノールを5質量%含有させたもの。
試料油4:パラフィン系鉱油(40℃動粘度6.8mm2 /s)に、試料油全量基準でブチルステアレートを22質量%含有させたもの。
試料油5:パラフィン系鉱油(40℃動粘度6.8mm2 /s)のみ。
【0035】
(実施例1〜9)
上記したワークロールおよび試料油を用いて、表1に示す組み合わせによりオーステナイト系鋼材(SUS304 2B材)の圧延試験を下記の圧延条件で行い、下記の測定方法により圧延後の結晶粒界の除去率、板表面光沢を測定し、結果を表1に示す。
【0036】
(比較例1〜7)
上記したワークロールおよび試料油を用いて、表1に示す組み合わせにより実施例と同様にして圧延試験を行い圧延後の結晶粒界の除去率、板表面光沢を測定し、結果を表1に示す。
【0037】
(圧延条件)
Figure 0003982001
【0038】
(結晶粒界の除去率の測定方法)
圧延前後の材料表面を光学顕微鏡により観察し、画像解析により材料表面の直径2〜20μmの結晶粒子数をカウントした。圧延前の粒子数Noと圧延後の粒子数Nから、下記式(1)で表される除去率を求めた。
【0039】
Figure 0003982001
【0040】
(板表面光沢の測定方法)
スガ試験機(株)製 SMカラーコンピューターを用い、圧延方向に直角方向で60゜Gloss値を測定した。なお、この数値が大きいほど表面光沢が良好であることを示す。
【0041】
【表1】
Figure 0003982001
【0042】
表1の結果から明らかなように、本発明の冷間圧延方法によれば、表面性状が良好な製品が得られる。また、潤滑油として二塩基酸のジエステルを用いた場合(実施例1〜6)ではより表面性状が良好な製品が得られることが分かる。さらに、潤滑油として二塩基酸のジエステルとアルコールを含有するものを用いた場合(実施例5および実施例6)では、特に表面性状が良好な製品が得られることが分かる。
これに対して、ワークロールとして表面処理していないワークロールを用いた場合には、得られた製品の表面性状が悪いことが分かる。また、潤滑油として基油のみのものを用いた場合(比較例5〜7)には、焼き付きが生じ、板表面光沢が悪くなることが分かる。
【0043】
【発明の効果】
本発明のステンレス鋼の冷間圧延方法により、低圧下率でも高圧延速度で、ステンレス鋼、特にオーステナイト系ステンレス鋼を冷間圧延して良好な表面性状を有する製品を得ることができる。

Claims (2)

  1. 表面改質したワークロールを用い、かつ潤滑油として炭素数6〜22のカルボン酸と炭素数1〜18の脂肪族アルコールからなるエステルを組成物全量基準で2〜50質量%および炭素数 1 〜18の脂肪族アルコールを組成物全量基準で0.5〜10質量%含有する圧延油組成物を用いたステンレス鋼の冷間圧延方法。
  2. 表面改質したワークロールを用いて、ステンレス鋼の冷間圧延を行う際に潤滑油として用いられる圧延油組成物であって、炭素数6〜22のカルボン酸と炭素数1〜18の脂肪族アルコールからなるエステルを組成物全量基準で2〜50質量%および炭素数 1 〜18の脂肪族アルコールを組成物全量基準で0.5〜10質量%含有する圧延油組成物。
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