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JP3963035B2 - 液晶性(メタ)アクリレート化合物と組成物及びこれを用いた光学異方体 - Google Patents

液晶性(メタ)アクリレート化合物と組成物及びこれを用いた光学異方体 Download PDF

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JP3963035B2
JP3963035B2 JP24099697A JP24099697A JP3963035B2 JP 3963035 B2 JP3963035 B2 JP 3963035B2 JP 24099697 A JP24099697 A JP 24099697A JP 24099697 A JP24099697 A JP 24099697A JP 3963035 B2 JP3963035 B2 JP 3963035B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学、表示、記録材料、また液晶ディスプレイの光学補償板や偏光プリズム材料として利用される新規な液晶性(メタ)アクリレート化合物と液晶組成物及びこれを用いた光学異方体に関する。
【0002】
【従来の技術】
先に我々は、液晶ディスプレイ素子の表示品位の向上と軽量化に応える光学補償板等の光学異方体の作製を可能にする技術として、室温において液晶性を示す重合性液晶組成物とその組成物を配向させた状態において光重合して得られる内部の配向構造が制御された光学異方体を提案した(特開平8−3111号)。該発明の重合性液晶組成物は低分子化合物であり、粘度が低く所望の配向状態を迅速に達成することができるという長所を有している。しかしながら、該重合性液晶組成物をガラスやプラスチック等の基板に塗布する場合には、均一な厚みをもって塗布するのが困難という問題があった。
【0003】
【本発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、重合性低分子化合物を含有する液晶組成物において所望の配向状態の迅速な達成を犠牲にすることなく、ガラスやプラスチック基板への良好な塗布性を付与することであり、これを可能にする液晶性化合物と液晶組成物を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記課題を解決するため、液晶性(メタ)アクリレート化合物の化学構造とガラスやプラスチック基板へ塗布性との相関について鋭意検討した結果、かかる課題が、特定の化学構造を有する液晶性(メタ)アクリレート化合物の利用により解決されることを見いだし本発明を提供するに至った。即ち、
1.一般式(I)
【0005】
【化6】
Figure 0003963035
【0006】
(式中、X1及びX2はそれぞれ独立的に水素原子またはメチル基を表し、P1、P2、P3、P4、P5及びP6はそれぞれ独立的に炭素原子数1から18の2価の炭化水素基を表し、Z1、Z2、Z3、及びZ4はそれぞれ独立的に、−COO−または−OCO−を表し、Y1及びY2はそれぞれ独立的に、単結合、−CH2CH2−、−CH2O−、−OCH2−、−COO−、−OCO−、−C≡C−、−CH=CH−、−CF=CF−、−(CH24−、−CH2CH2CH2O−、−OCH2CH2CH2−、−CH=CH−CH2CH2−、−CH2CH2CH2O−、−OOCCOO−を表し、j及びkはそれぞれ独立的に0または1の整数を表し、nは0または1の整数を表し、6員環A、B及びCはそれぞれ独立的に、
【0007】
【化7】
Figure 0003963035
【0008】
を表し、Wはハロゲン原子またはメチル基を表し、mは1〜4の整数を表す。)で表されることを特徴とする液晶性(メタ)アクリレート化合物。
2.一般式(I)において、P3及びP4がそれぞれ独立的にメチレン基またはエチレン基であることを特徴とする上記1記載の液晶性(メタ)アクリレート化合物。
3.一般式(I)において、X1及びX2は水素原子を表し、P1、P2、P3、P4、P5及びP6はそれぞれ独立的にメチレン基またはエチレン基を表し、Y1及びY2はそれぞれ独立的に、−COO−、−OCO−を表し、j及びkはそれぞれ独立的に0または1の整数を表し、nは1の整数を表し、6員環A、B及びCは、
【0009】
【化8】
Figure 0003963035
【0010】
を表す。)で表されることを特徴とする上記1記載の液晶性アクリレート化合物。
4.上記1乃至3記載の液晶性(メタ)アクリレート化合物を含有し、液晶相を示すことを特徴とする液晶組成物。
5.液晶相が少なくとも20℃〜30℃の温度範囲で発現することを特徴とする上記4記載の液晶組成物。
6.上記1乃至3記載の液晶性(メタ)アクリレート化合物を2重量%以上、及び少なくとも2つの6員環を有する液晶骨格を部分構造として有する環状アルコール、フェノール又は芳香族ヒドロキシ化合物のアクリル酸又はメタクリル酸エステルである単官能アクリレート又は単官能メタクリレートを含有し、液晶相を示すことを特徴とする液晶組成物。
7.単官能アクリレート又は単官能メタクリレートが一般式(II)、
【0011】
【化9】
Figure 0003963035
【0012】
(式中、X3は水素原子又はメチル基を表し、rは0または1の整数を表し、6員環D、E及びFはそれぞれ独立的に、
【0013】
【化10】
Figure 0003963035
【0014】
を表し、pは1〜4の整数を表し、Y3及びY4はそれぞれ独立的に、単結合、−CH2CH2−、−CH2O−、−OCH2−、−COO−、−OCO−、−C≡C−、−CH=CH−、−CF=CF−、−(CH24−、−CH2CH2CH2O−、−OCH2CH2CH2−、−CH=CH−CH2CH2−、−CH2CH2CH2O−を表し、Y5は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜20のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基又はアルケニルオキシ基を表す。)で表されることを特徴とする上記6記載の液晶組成物。
8.液晶相が少なくとも20℃〜30℃の温度範囲で発現することを特徴とする上記7記載の液晶組成物。
9.上記7乃至8記載の液晶組成物の重合体であることを特徴とする光学異方体。
を前記課題の解決手段として見出した。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の液晶性(メタ)アクリレート化合物と液晶組成物及びこれを用いた液晶組成物の一例について説明する。
【0016】
一般式(I)の液晶性(メタ)アクリレート化合物は、6員環A、B、C及び連結基Y1、Y2から構成される剛直な液晶骨格の両端に位置するフレキシブルなスペーサー部分において、(メタ)アクリロイルオキシ基に含まれるエステル基以外に少なくとも一つのエステル結合を有していることを特徴としている。これにより、1分子あたり多数のエステル基が存在することによる粘度の増大、さらに多数のカルボニル基の分極構造によりガラス表面等への親和性が増大することにより、良好な塗布性が得られるものと考えられる。
【0017】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の液晶性(メタ)アクリレート化合物(以下、本発明の化合物)は、一般式(III)
【0018】
【化11】
Figure 0003963035
【0019】
(式中、P1、P2、P3、P4、P5、P6、Z1、Z2、Z3、Z4、Y1、Y2、j、k、n、6員環A、B及びCの意味は、一般式(I)における意味と同じ。)の化合物の両端の水酸基を、例えば、トリエチルアミンの如き塩基存在下で(メタ)アクリロイルクロリドのような酸ハロゲン化物との反応によりエステル化させるか、酸触媒存在下で(メタ)アクリル酸との反応によりエステル化させることにより製造することができる。
【0020】
また、一般式(IV)
【0021】
【化12】
Figure 0003963035
【0022】
(式中、P3、P4、Y1、Y2、n、6員環A、B及びCの意味は、一般式(I)における意味と同じ。)の両端にある水酸基を、(メタ)アクリルロイルオキシ基及びカルボキシル基を有する一般に市販されている化合物、例えば「M−5600」(東亞合成株式会社製)
【0023】
【化13】
Figure 0003963035
【0024】
や「HOA−MS」(共栄社化学株式会社製)
【0025】
【化14】
Figure 0003963035
【0026】
とジシクロヘキシルカルボジイミドの如き縮合剤を用いてエステル化させるか、カルボキシル基をハロゲン化アシル基に変換した後に、エステル化させることにより製造することができる。
【0027】
また、一般式(V)
【0028】
【化15】
Figure 0003963035
【0029】
(式中、P3、P4、Y1、Y2、n、6員環A、B及びCの意味は、一般式(I)における意味と同じ。)の両端にあるカルボキシル基を、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート化合物の水酸基とジシクロヘキシルカルボジイミドの如き縮合剤を用いてエステル化させることにより製造することができる。
【0030】
また、例えば一般式(VI)
【0031】
【化16】
Figure 0003963035
【0032】
(式中、P3、6員環Aの意味は、一般式(I)における意味と同じ、Xは水酸基、または保護された水酸基、ハロゲン基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基等を表す。)のP3に隣接する水酸基と「M−5600」(東亞合成株式会社製)や「HOA−MS」(共栄社化学株式会社製)をジシクロヘキシルカルボジイミドの如き縮合剤を用いてエステル化させた後、これをビルディングブロックとしてX基を反応点として、液晶骨格を形成していく方法でも製造することができる。例えば、X基がカルボキシル基であった場合には、1/2等量のヒドロキノン誘導体とエステル化させることにより、簡便に目的とする化合物を製造することができる。
【0033】
また、例えば一般式(VII)
【0034】
【化17】
Figure 0003963035
【0035】
(式中、P3、6員環Aの意味は、一般式(I)における意味と同じ、Xは水酸基、または保護された水酸基、ハロゲン基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基等を表す。)のP3に隣接するカルボキシル基を、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート化合物の水酸基とジシクロヘキシルカルボジイミドの如き縮合剤を用いてエステル化させることによりエステル化させた後、これをビルディングブロックとして一般式(VII)のX基を反応点として、液晶骨格を形成していく方法でも製造することができる。例えば、X基がカルボキシル基であった場合には、1/2等量のテレフタル酸誘導体とエステル化させることにより、簡便に目的とする化合物を製造することができる。
【0036】
一般式(I)のX1及びX2には、本発明の化合物に迅速なる光重合性を要求する場合には、メチル基よりも水素原子を選択するのが好ましい。また、本発明の化合物は発明の目的から、単体として液晶相、特にネマチック相、スメクチックA相、スメクチックC相を示すことが好ましい。このことから、P1、P2、P3、P4、P5、P6はそれぞれ独立的に、炭素原子数1〜18の2価の炭化水素基を選択することができるが、炭素原子数が6以上になると液晶性が発現しにくくなるため、炭素原子数1〜6のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1〜2のアルキレン基が更に好ましい。またnが0の場合、液晶性が発現しにくくなるため、nは1が好ましい。また、環A、B及びCは、化合物の屈折性を大きくすることができるため、パラフェニレン基を選択するのが特に好ましい。また、化合物の転移温度を調節や誘電率の大きさを調節する目的で、パラフェニレン基の水素原子を1〜4個までのハロゲン原子やメチル基で置換するのは特に好ましい。
【0037】
本発明は更に、本発明の化合物を含有する液晶組成物をも提供する。本発明の液晶組成物の液晶相としては、通常この技術分野で液晶相と認識される相であれば特に制限なく用いることができるが、その中でもネマチック相、スメクチックA相、(カイラル)スメクチックC相、コレステリック相を発現するものが特に好ましい。また、(カイラル)スメクチックC相を示す場合には、該(カイラル)スメクチックC相の上の温度領域でスメクチックA相を、スメクチックA相を示す場合には、該スメクチックA相の上の温度領域でネマチック相を発現するようにすると、良好な一軸の配向特性が得られるため好ましい。実際に紫外線を照射して本発明の液晶組成物中の(メタ)アクリレート化合物を重合させる液晶相の温度領域もしくは実際に使用する液晶相の温度領域としては、室温付近、即ち少なくとも20〜30℃の温度範囲で液晶相を発現するものが特に好ましい。例えば(カイラル)スメクチックC相で実際に本発明の液晶組成物を重合させる場合には、(カイラル)スメクチックC相が室温付近で、即ち少なくとも20〜30℃の温度範囲で(カイラル)スメクチックC相が発現するものが好ましい。
【0038】
本発明の液晶組成物には、ガラスやプラスチック基板への良好な塗布性能を確保するため、本発明の化合物を2重量%以上含有させることが好ましい。本発明の化合物が2重量%以下である場合には、良好な塗布性能が確保されない傾向がある。
【0039】
また、本発明の液晶組成物には、分子内に通常この技術分野で液晶骨格と認められる骨格と重合性官能基を同時に有する重合性の液晶化合物を98重量%以下の濃度で特に制限なく添加することができる。液晶骨格としては、少なくとも2つ又は3つの6員環を有するものが特に好ましい。重合性官能基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基、エポキシ基、ビニルエーテル基、シンナモイル基、ビニル基等を挙げることができるが、良好な光重合特性が得られることから、アクリロイルオキシ基が特に好ましい。複数以上の重合性官能基を有する化合物の場合には、重合性官能基の種類が異なっていても良い。例えば、2つの重合性官能基を有する液晶化合物の場合、一つがアクリロイルオキシ基、もう一つがメタアクリロイルオキシ基または、ビニルエーテル基であっても良い。重合性官能基を2つ有する液晶化合物は多くの種類が知られており、一般的にこれらを重合させた場合には良好な耐熱性及び強度特性を得られることから、好適に用いることができる。このような重合性官能基を2つ有する液晶化合物の具体的な例としては、式(1)〜(10)に挙げた化合物が好ましいが、本発明の液晶組成物において使用することができる化合物はこれらに限定されるものではない。
【0040】
【化18】
Figure 0003963035
【0041】
(式中、シクロヘキサン環はトランスシクロヘキサン環を表し、Xはハロゲン原子、シアノ基、メチル基を表し、sは2〜12の整数を表す。)
さらに本発明の液晶組成物には、分子内に一つの重合性官能基を有する液晶化合物を添加しても良い。このような重合性官能基を一つ有する液晶化合物の具体的な例としては、式(11)〜(56)に挙げた化合物が好ましいが、本発明の液晶組成物において使用することができる化合物はこれらに限定されるものではない。
【0042】
【化19】
Figure 0003963035
【0043】
【化20】
Figure 0003963035
【0044】
【化21】
Figure 0003963035
【0045】
【化22】
Figure 0003963035
【0046】
(式中、シクロヘキサン環はトランスシクロヘキサン環を表し、Yは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜20のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルケニルオキシ基を表し、sは2から12の整数を表す。)
さらに本発明の液晶組成物には、室温付近、即ち少なくとも20〜30℃の温度範囲での液晶相の発現を容易にし、かつ液晶組成物の光重合物の耐熱性及び強度特性の確保を図ることを目的として、少なくとも2つの6員環を有する液晶骨格を部分構造として有する環状アルコール、フェノール又は芳香族ヒドロキシ化合物のアクリル酸又はメタクリル酸エステルである単官能(メタ)アクリレートを含有させても良い。なぜなら、このような単官能(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリロイルオキシ基と液晶骨格との間に、アルキレン基又はオキシアルキレン基等の液晶の技術分野でスペーサーと呼ばれる柔軟性の連結基が無い。そのため、このような単官能(メタ)アクリレートを重合させて得られる重合体の主鎖には、スペーサーを介さず直接剛直な液晶骨格が結合し、液晶骨格の熱運動は高分子主鎖により制限されることが予想され、優れた耐熱性及び強度特性が期待できるためである。また、分子形状的に液晶性を低下させてしまう(メタ)アクリロイルオキシ基を分子内に一つ有しているだけなので、液晶を発現させる温度範囲の制御も分子内に複数の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物より容易になる。このよう単官能(メタ)アクリレートとしては一般式(II)
【0047】
【化23】
Figure 0003963035
【0048】
(式中、X3は水素原子又はメチル基を表し、rは0または1の整数を表し、6員環D、E及びFはそれぞれ独立的に、
【0049】
【化24】
Figure 0003963035
【0050】
を表し、pは1〜4の整数を表し、Y3及びY4はそれぞれ独立的に、単結合、−CH2CH2−、−CH2O−、−OCH2−、−COO−、−OCO−、−C≡C−、−CH=CH−、−CF=CF−、−(CH24−、−CH2CH2CH2O−、−OCH2CH2CH2−、−CH=CH−CH2CH2−、−CH2CH2CH2O−を表し、Y5は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜20のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルケニルオキシ基を表す。)で表される化合物が好ましい。このような単官能(メタ)アクリレートの具体的な例としては、式(57)〜(67)に挙げた化合物が好ましいが、本発明の液晶組成物において使用することができる単官能(メタ)アクリレートはこれらに限定されるものではない。
【0051】
【化25】
Figure 0003963035
【0052】
【化26】
Figure 0003963035
【0053】
(上記中、シクロヘキサン環はトランスシクロヘキサン環を表し、またCは結晶相、Nはネマチック相、Sはスメクチック相、Iは等方性液体相を表し、数字は相転移温度を表す。)
また、本発明の液晶組成物には、重合性官能基を有していない液晶化合物を用途に応じて添加しても良い。使用用途として本発明の液晶組成物の重合体を、表示素子と用いる場合や、温度によって屈折率を変化させたい場合には、重合性官能基を有していない液晶化合物の総量は30〜98重量%の範囲に設定するのが好ましい。また、温度によって屈折率が変化するのが好ましくない場合や、耐熱性や機械的特性を重視する場合には、重合性官能基を有していない液晶化合物の総量は0〜30重量%の範囲に設定するのが好ましい。
【0054】
また、本発明の液晶組成物には重合性官能基を有しており、かつ液晶性を示さない化合物も添加することができる。このような化合物としては、通常この技術分野で高分子形成性モノマーあるいは高分子形成性オリゴマーとして認識されるものであれば特に制限なく使用することができるが、アクリレート化合物、メタクリレート化合物、ビニルエーテル化合物が特に好ましい。
【0055】
以上のような重合性官能基を有する液晶化合物、重合性官能基を有さない液晶化合物、液晶性を示さない重合性化合物は適宜組み合わせて添加してもよいが、少なくとも得られる液晶組成物の液晶性が失われないように各成分の添加量を調整することが必要である。
【0056】
更に本発明の液晶組成物には、その重合反応性を向上させることを目的として、熱重合開始剤、光重合開始剤の重合開始剤を添加しても良い。ここで使用できる熱重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、ビスアゾブチロニトリル等から選択することができ、光重合開始剤としてはベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類、ベンジルケタール類等から選択して使用することができる。その添加量は、液晶組成物に対して10重量%以下であることが好ましく、5重量%以下であることがさらに好ましく、0.5〜1.5重量%の範囲であることが特に好ましい。
【0057】
また、本発明の液晶組成物には、その保存安定性を向上させるために安定剤を添加しても良い。ここで使用することができる安定剤としては、例えばヒドロキノン、ヒドロキノンモノアルキルエーテル類、第三ブチルカテコール等から選択して使用することができる。その添加量は、液晶組成物に対して1重量%以下が好ましく、0.5重量%以下がさらに好ましい。
【0058】
また、本発明の液晶組成物には、液晶骨格の螺旋構造を内部に有する重合体を得ることを目的としてカイラル(光学活性)化合物を添加しても良い。ここで使用することができるカイラル化合物は、それ自体が液晶性を示す必要は無く、また重合性官能基を有していても、有していなくても良い。またその螺旋の向きは重合体の使用用途によって適宜選択することができる。そのようなカイラル化合物としては光学活性基としてコレステリル基を有するペラルゴン酸コレステロール、ステアリン酸コレステロール、光学活性基として2−メチルブチル基を有する「CB−15」、「C−15」(以上BDH社製)、「S−1082」(メルク社製)、「CM−19」、「CM−20」、「CM」(以上チッソ社製)、光学活性基として1−メチルヘプチル基を有する「S−811」(メルク社製)、「CM−21」、「CM−22」(以上チッソ社製)を挙げることができる。このカイラル化合物の好ましい添加量は液晶組成物の用途によるが、重合して得られる重合体の厚み(d)を重合体中での螺旋ピッチ(P)で除した値(d/P)が0.1〜20の範囲になるよう調整するのが好ましい。
【0059】
また、本発明の液晶組成物を偏光フィルムや配向膜の原料、または印刷インキ及び塗料等として利用する場合には、その目的に応じて金属、金属錯体、染料、顔料、色素、界面活性剤、ゲル化剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、イオン交換樹脂、酸化チタンの金属酸化物等を添加することもできる。
【0060】
本発明は更に、本発明の液晶組成物の重合体であることを特徴とする光学異方体をも提供する。本発明の光学異方体は、本発明の液晶組成物を配向させた状態において、重合させることにより製造することができる。例えば、基板表面を布等でラビング、もしくは有機薄膜を形成した基板表面を布等でラビング、あるいはSiO2を斜方蒸着した配向膜を有する基板上に担持させるか、基板間に挟持させた後、本発明の液晶を重合させる方法を挙げることができる。その他の配向処理方法としては、液晶組成物の流動配向の利用や、電場又は磁場の利用を挙げることができる。これらの配向手段は単独で用いても、また組み合わせて用いても良い。その中でも基板表面を布等でラビング処理した基板を用いる方法は、その簡便性から特に好ましい。
【0061】
この時使用することができる基板は、有機材料、無機材料を問わずに用いることができる。具体的な例を挙げると有機材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリアリレート、ポリスルホン、トリアセチルセルロース、セルロース、ポリエーテルエーテルケトン、無機材料としてはシリコン、ガラス、方解石等を挙げることができる。
【0062】
これらの基板を布等でラビングすることをによって適当な配向性を得られないときには、公知の方法に従ってポリイミド薄膜又はポリビニルアルコール薄膜等の有機薄膜を基板表面に形成し、これを布等でラビングしても良い。また通常のTN又はSTN素子で使用されているようなプレチルト角を与えるポリイミド薄膜を利用すると、光学異方体内部の分子配向構造を更に精密に制御できることから、特に好ましく利用することができる。また、電場によって配向状態を制御する場合には、電極層を有する基板を使用することができ、この場合には電極上に前述のポリイミド薄膜等の有機薄膜を形成するのが好ましい。
【0063】
また、ラビングに代わる配向処理方法として、光配向法も用いることができる。これはポリビニルシンナメート等の分子内に光二量化反応する官能基を有する有機薄膜や光で異性化する官能基を有する有機薄膜又はポリイミド等の有機薄膜に、偏光した光、このましくは偏光した紫外線を照射することによって、配向膜とするものである。この光配向法に光マスクを適用することにより配向のパターン化が容易に達成できるので、光学異方体内部の分子配向も精密に制御することが可能となる。
【0064】
重合の方法としては、迅速な重合の進行が望ましいので、紫外線又は電子線等のエネルギーを照射することによって光重合させる方法が好ましい。この光重合させる際の光源としては偏光光源を用いても良いし、非偏光光源を用いても良い。また、液晶組成物を2枚の基板間に挟持させて状態で光重合を行う場合には、少なくとも照射面側の基板は適当な透明性が与えられていなければならない。また、照射時の温度は、本発明の液晶組成物の液晶状態が保持される温度範囲内であることが好ましい。特に、光重合によって光学異方体を製造しようとする場合には、意図しない熱重合の誘起を避ける意味からもできるだけ室温に近い温度で、即ち20〜30℃の温度で重合させることが好ましい。重合によって得られた本発明の光学異方体は、初期の特性変化を軽減し、安定的な特性発現を図ることを目的として熱処理をしても良い。熱処理の温度としては50〜250℃の温度範囲で、また熱処理時間としては30秒〜12時間の範囲にあるのが好ましい。
【0065】
このような方法によって製造される本発明の光学異方体は、基板から剥離して用いても、剥離せずに用いても良い。
【0066】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示し、本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、相転移温度におけるSxは詳細な相構造は未決定のスメクチック相を、Nはネマチック相を、Iは等方性液体相を、Cは結晶相をそれぞれ表す。
(実施例1) 液晶性アクリレート化合物の合成(1)
ディーンスターク水分離器を装着した3口フラスコに、4−(ヒドロキシエチル)フェノール10g、「M−5600」(東亞合成株式会社製)22.5g、ヒドロキノン0.1g、p−トルエンスルホン酸1水和物3.2g、n−ヘキサン60ml、トルエン60mlを加えて撹拌しながら加熱した。3時間加熱環流後、室温まで反応液を冷却した。これに飽和食塩水500mlを加えた後、反応液をトルエン200mlを加えて抽出を行った。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び水で洗った後、トルエンを減圧留去して化合物(a)の粗生成物11.8gを得た。
【0067】
【化27】
Figure 0003963035
【0068】
次に、化合物(a)の粗生成物4.0gをジクロロメタン20mlに溶解させ、さらにトリエチルアミン3.4gを加え室温において撹拌した。これに20mlのジクロロメタンに溶解させたテレフタル酸クロリド1.1gを、反応液の内温が30℃を超えないように滴下した。滴下終了後、反応液を40℃で1時間反応させ、その後室温まで冷却した。冷却後、反応液に飽和食塩水300mlを加えた。この反応液の水層が弱酸性になるように希塩酸水溶液を加えた後、酢酸エチル100mlを加えて抽出を行った。有機層を水洗後、酢酸エチルを減圧留去して4.0gの粗生成物を得た。この粗生成物を、酢酸エチルとn−ヘキサンの混合溶媒(容量比で酢酸エチル:n−ヘキサン=1:1)を展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィー及びエタノールからの再結晶により精製し、液晶性アクリレート化合物(b)
【0069】
【化28】
Figure 0003963035
【0070】
を0.50g(Rf=0.60)、液晶性アクリレート化合物(c)
【0071】
【化29】
Figure 0003963035
【0072】
を0.66g(Rf=0.48)、液晶性アクリレート化合物(d)
【0073】
【化30】
Figure 0003963035
【0074】
を0.70g(Rf=0.36)を得た。化合物(b)の相転移温度は、
【0075】
【化31】
Figure 0003963035
【0076】
であり、化合物(c)の相転移温度は、
【0077】
【化32】
Figure 0003963035
【0078】
であり、化合物(d)の相転移温度は
【0079】
【化33】
Figure 0003963035
【0080】
であった。
(実施例2) 液晶性アクリレート化合物の合成(2)
ディーンスターク水分離器を装着した3口フラスコに、4−(ヒドロキシエチル)フェノール7.0g、「HOA−MS」(共栄社化学株式会社製)32.6g、ヒドロキノン1g、p−トルエンスルホン酸1水和物3.5g、n−ヘキサン60ml、トルエン60mlを加えて撹拌しながら加熱した。3時間加熱環流後、室温まで反応液を冷却した。これに飽和食塩水500mlを加えた後、反応液にトルエン200mlを加えて抽出を行った。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び水で洗った後、トルエンを減圧留去して粗生成物20.3gを得た。この粗生成物を、酢酸エチルとトルエンの混合溶媒(容量比で酢酸エチル:トルエン=1:2、Rf=0.47)を展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物(e)を12.3g得た。
【0081】
【化34】
Figure 0003963035
【0082】
次に、化合物(e)の5.2gをテトラヒドロフラン30mlに溶解させ、さらにトリエチルアミン1.9gを加え室温において撹拌した。これに20mlのテトラヒドロフランに溶解させたテレフタル酸クロリド1.3gを、反応液の内温が30℃を超えないように滴下した。滴下終了後、反応液を40℃で1時間反応させ、その後室温まで冷却した。冷却後、反応液に飽和食塩水300mlを加えた。この反応液の水層が弱酸性になるように希塩酸水溶液を加えた後、酢酸エチル100mlを加えて抽出を行った。有機層を水洗後、酢酸エチルを減圧留去して7.0gの粗生成物を得た。この粗生成物を、酢酸エチルとトルエンの混合溶媒(容量比で酢酸エチル:トルエン=1:2、Rf=0.48)を展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィー及びエタノールからの再結晶により精製し、液晶性アクリレート化合物(f)を2.3g得た。
【0083】
【化35】
Figure 0003963035
【0084】
化合物(f)の相転移温度は、
【0085】
【化36】
Figure 0003963035
【0086】
であった。
(実施例3) 液晶性アクリレート化合物の合成(3)
ディーンスターク水分離器を装着した3口フラスコに、4−ヒドロキシフェニル酢酸11.4g、2−ヒドロキシエチルアクリレート26.3g、ヒドロキノン0.3g、p−トルエンスルホン酸1水和物7.0g、n−ヘキサン40ml、トルエン60ml、テトラヒドロフラン30mlを加えて撹拌しながら加熱した。3時間加熱環流後、室温まで反応液を冷却した。これに飽和食塩水700mlを加えた後、反応液をトルエン300mlを加えて抽出を行った。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び水で洗った後、トルエンを減圧留去して化合物(g)の粗生成物19.4gを得た。
【0087】
【化37】
Figure 0003963035
【0088】
次に、化合物(g)の粗生成物8.0gをテトラヒドロフラン30mlに溶解させ、さらにトリエチルアミン3.9gを加え室温において撹拌した。これに20mlのテトラヒドロフランに溶解させたテレフタル酸クロリド2.0gを、反応液の内温が30℃を超えないように滴下した。滴下終了後、反応液を40℃で1時間反応させ、その後室温まで冷却した。冷却後、反応液に飽和食塩水300mlを加えた。この反応液の水層が弱酸性になるように希塩酸水溶液を加えた後、酢酸エチル100mlを加えて抽出を行った。有機層を水洗後、酢酸エチルを減圧留去して8.6gの粗生成物を得た。この粗生成物を、酢酸エチルとトルエンの混合溶媒(容量比で酢酸エチル:トルエン=1:2、Rf=0.58)を展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィー及びエタノールからの再結晶により精製し、液晶性アクリレート化合物(h)を1.0g得た。
【0089】
【化38】
Figure 0003963035
【0090】
化合物(h)の相転移温度は、
【0091】
【化39】
Figure 0003963035
【0092】
であった。
(実施例4) 液晶性アクリレート化合物の合成(4)
実施例1で得た化合物(a)をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して得た化合物(i)1.0g
【0093】
【化40】
Figure 0003963035
【0094】
をテトラヒドロフラン15mlに溶解させ、さらにトリエチルアミン0.4gを加え室温において撹拌した。これに10mlのテトラヒドロフランに溶解させたシュウ酸クロリド0.2gを、反応液の内温が30℃を超えないように滴下した。滴下終了後、反応液を40℃で1時間反応させ、その後室温まで冷却した。冷却後、反応液に飽和食塩水100mlを加えた。この反応液の水層が弱酸性になるように希塩酸水溶液を加えた後、酢酸エチル100mlを加えて抽出を行った。有機層を水洗後、酢酸エチルを減圧留去して1.6gの粗生成物を得た。この粗生成物を、酢酸エチルとn−ヘキサンの混合溶媒(容量比で酢酸エチル:n−ヘキサン=1:1、Rf=0.43)を展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィー及びエタノールからの再結晶により精製し、液晶性アクリレート化合物(j)を0.8g得た。
【0095】
【化41】
Figure 0003963035
【0096】
化合物(j)の相転移温度は、
【0097】
【化42】
Figure 0003963035
【0098】
であった。
(実施例5) 液晶性アクリレート化合物の合成(5)
実施例2で得た化合物(e)5.0g、ブロモテレフタル酸1.2g、ジメチルアミノピリジン0.2gをテトラヒドロフラン20mlに溶解させ、室温において撹拌した。これに20mlのテトラヒドロフランに溶解させたジシクロヘキシルカルボジイミド4.7gを反応液の内温が30℃を超えないように滴下した。滴下終了後、反応液を40℃で1時間反応させ、その後室温まで冷却した。冷却後、反応液に飽和食塩水100mlを加えた。この反応液の水層が弱酸性になるように希塩酸水溶液を加え、析出したジシクロヘキシル尿素をガラスフィルターによって取り除いた後、酢酸エチル100mlを加えて抽出を行った。有機層を水洗後、酢酸エチルを減圧留去して6.7gの粗生成物を得た。この粗生成物を、酢酸エチルとトルエンの混合溶媒(容量比で酢酸エチル:トルエン=1:2、Rf=0.53)を展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、液晶性アクリレート化合物(k)を4.9g得た。
【0099】
【化43】
Figure 0003963035
【0100】
化合物(K)は室温にて等方性液体であった。
(実施例6) 液晶組成物の調製(1)
式(57)の化合物
【0101】
【化44】
Figure 0003963035
【0102】
50重量部及び式(60)
【0103】
【化45】
Figure 0003963035
【0104】
の化合物50重量部からなる液晶組成物(a)を調製した。この液晶組成物(a)は室温で液晶相を示し、ネマチック−等方性液体相の相転移温度は46℃であった。液晶組成物(a)50重量部に実施例1で合成した液晶性アクリレート化合物(b)50重量部からなる液晶組成物(b)を調製した。得られた液晶組成物(b)は52℃〜70℃の温度範囲でネマチック相を示した。
(実施例7) 液晶組成物の調製(2)
実施例6で調製した液晶組成物(a)90重量部に実施例1で合成した化合物(b)10重量部からなる液晶組成物(c)を調製した。得られた液晶組成物(c)は30℃〜49℃の温度範囲でネマチック相を示した。
(実施例8) 液晶組成物の調製(3)
実施例6で調製した液晶組成物(a)95重量部に実施例1で合成した化合物(b)5重量部からなる液晶組成物(d)を調製した。得られた液晶組成物(d)は室温〜48℃の温度範囲でネマチック相を示した。
(実施例9) 液晶組成物の調製(4)
実施例6で調製した液晶組成物(a)95重量部に実施例1で合成した化合物(c)5重量部からなる液晶組成物(e)を調製した。得られた液晶組成物(e)は室温〜47℃の温度範囲でネマチック相を示した。
(実施例10) 液晶組成物の調製(5)
実施例6で調製した液晶組成物(a)95重量部に実施例1で合成した化合物(d)5重量部からなる液晶組成物(f)を調製した。得られた液晶組成物(f)は室温〜47℃の温度範囲でネマチック相を示した。
(実施例11) 液晶組成物の調製(6)
実施例6で調製した液晶組成物(a)95重量部に実施例2で合成した化合物(f)5重量部からなる液晶組成物(g)を調製した。得られた液晶組成物(g)は室温〜50℃の温度範囲でネマチック相を示した。
(実施例12) 液晶組成物の調製(7)
実施例6で調製した液晶組成物(a)97重量部に実施例3で合成した化合物(h)3重量部からなる液晶組成物(h)を調製した。得られた液晶組成物(h)は室温〜48℃の温度範囲でネマチック相を示した。
(実施例13) 液晶組成物の調製(8)
実施例6で調製した液晶組成物(a)95重量部に実施例4で合成した化合物(j)5重量部からなる液晶組成物(i)を調製した。得られた液晶組成物(i)は室温〜47℃の温度範囲でネマチック相を示した。
(実施例14) 液晶組成物の調製(9)
実施例6で調製した液晶組成物(a)97重量部に実施例5で合成した化合物(k)3重量部からなる液晶組成物(j)を調製した。得られた液晶組成物(j)は室温〜38℃の温度範囲でネマチック相を示した。
(実施例15) 光学異方体の作製(1)
実施例8で調製した液晶組成物(d)99重量部に光重合開始剤「IRG−651」(チバガイギー社製)1重量部を溶解させた。次にこれをセルギャップ10ミクロンの透明ガラス製TN(ツイステッドネマチック)セルに注入したところ、良好なTN配向が得られていることが偏光顕微鏡観察により確認できた。このセルに、25℃において高圧水銀ランプを用いて500mJ/cm2の紫外線を照射し、液晶組成物を光重合させた。セルを偏光顕微鏡で観察したところ、TN配向が均一に固定化された光学異方体が得られているのが確認できた。次にセルのガラスを取り外すことにより、1枚のガラスの上に担持された厚さ10ミクロンのTN配向構造を有する光学異方体を得た。この光学異方体は150℃で100時間加熱しても、TN配向構造が保持されることがわかった。
(実施例16) 光学異方体の作製(2)
厚さ1mmで20mm角の透明ガラス基板に、ポリイミド配向剤「AL−1254」(日本合成ゴム製)を2000回転/分でスピンコートした後、150℃で1時間乾燥させることにより、ガラス基板上にポリイミド薄膜を形成した。このポリイミド薄膜をラビングマシーン「RM−50」(EHC社製)でラビングすることにより、ポリイミド配向膜とした。このポリイミド配向膜付きガラス基板に、実施例8で調製した液晶組成物(d)99重量部に光重合開始剤「IRG−651」(チバガイギー社製)1重量部を添加し、これを1000回転/分でスピンコートした。このスピンコートした基板に、窒素気流下25℃において高圧水銀ランプを用いて500mJ/cm2の紫外線を照射し、液晶組成物を光重合させた。この基板を偏光顕微鏡で観察したところ、均一な一軸配向が固定化された光学異方体が得られているのが確認できた。また、この基板を2枚の偏光板の間に挟んでところ、基板の全面にわたって均一な干渉色が観察され、均一な厚みをもった光学異方体が得られたことを確認できた。また、この基板を150℃で加熱しても、固定化された均一な配向状態はそのまま保持されていた。
(比較例1)
実施例16における液晶組成物(d)を、実施例6で調製した液晶組成物(a)に代えた以外は同様にして光学異方体を作製した。得られた光学異方体を偏光顕微鏡で観察したところ、均一な一軸配向が固定化された光学異方体が得られているのが確認できた。しかしながら、これを2枚の偏光板の間に挟んでところ、基板の全面にわたる均一な干渉色が観察されず、光学異方体の膜厚が均一でないことが確認された。
(実施例17) 光学異方体の作製(3)
厚さ2.0mmで20mm角のポリカーボネート基板を用意し、ポリカーボネート基板の光軸方向と同一方向にラビングマシーン「RM−50」(EHC社製)を用いてラビングした。このポリカーボネート基板に、実施例8で調製した液晶組成物(d)99重量部に光重合開始剤「IRG−651」(チバガイギー社製)1重量部を添加し、これを500回転/分でスピンコートした。このスピンコートした基板に、窒素気流下25℃において高圧水銀ランプを用いて500mJ/cm2の紫外線を照射し、液晶組成物を光重合させた。この基板を偏光顕微鏡で観察したところ、均一な一軸配向が固定化された光学異方体が得られているのが確認できた。また、この基板を2枚の偏光板の間に挟んでところ、基板の全面にわたって均一な干渉色が観察され、均一な厚みをもった光学異方体が得られたことを確認できた。また、この基板を100℃で加熱しても、固定化された均一な配向状態はそのまま保持されていた。
(比較例2)
実施例17における液晶組成物(d)を、実施例6で調製した液晶組成物(a)に代えた以外は同様にして光学異方体を作製した。得られた光学異方体を偏光顕微鏡で観察したところ、均一な一軸配向が固定化された光学異方体が得られているのが確認できた。しかしながら、これを2枚の偏光板の間に挟んでところ、基板の全面にわたる均一な干渉色が観察されず、光学異方体の膜厚が均一でないことが確認された。
【0105】
【発明の効果】
本発明の液晶性(メタ)アクリレート化合物と液晶組成物は、プラスチックやガラス基板への塗布性に優れている。従って、塗布等の手段によって位相差フィルム等の光学異方体を作製するのに有用な材料である。また本発明の液晶性(メタ)アクリレート化合物と液晶組成物を用いて作製した光学異方体は、配向の均一性及び膜厚の均一性に優れており、位相差フィルム等への応用に適している。

Claims (9)

  1. 一般式(I)
    Figure 0003963035
    (式中、X1及びX2はそれぞれ独立的に水素原子またはメチル基を表し、P1、P2、P3、P4、P5及びP6はそれぞれ独立的に炭素原子数1から18の2価の炭化水素基を表し、Z1、Z2、Z3、及びZ4はそれぞれ独立的に、−COO−または−OCO−を表し、Y1及びY2はそれぞれ独立的に、単結合、−CH2CH2−、−CH2O−、−OCH2−、−COO−、−OCO−、−C≡C−、−CH=CH−、−CF=CF−、−(CH24−、−CH2CH2CH2O−、−OCH2CH2CH2−、−CH=CH−CH2CH2−、−CH2CH2CH2O−、−OOCCOO−を表し、j及びkはそれぞれ独立的に0または1の整数を表し、nは0または1の整数を表し、6員環A、B及びCはそれぞれ独立的に、
    Figure 0003963035
    を表し、Wはハロゲン原子またはメチル基を表し、mは1〜4の整数を表す。)で表されることを特徴とする液晶性(メタ)アクリレート化合物。
  2. 一般式(I)において、P3及びP4がそれぞれ独立的にメチレン基またはエチレン基であることを特徴とする請求項1記載の液晶性(メタ)アクリレート化合物。
  3. 一般式(I)において、X1及びX2は水素原子を表し、P1、P2、P3、P4、P5及びP6はそれぞれ独立的にメチレン基またはエチレン基を表し、Y1及びY2はそれぞれ独立的に、−COO−、−OCO−を表し、j及びkはそれぞれ独立的に0または1の整数を表し、nは1の整数を表し、6員環A、B及びCは、
    Figure 0003963035
    を表す。)で表されることを特徴とする請求項1記載の液晶性アクリレート化合物。
  4. 請求項1乃至3記載の液晶性(メタ)アクリレート化合物を含有し、液晶相を示すことを特徴とする液晶組成物。
  5. 液晶相が少なくとも20℃〜30℃の温度範囲で発現することを特徴とする請求項4記載の液晶組成物。
  6. 請求項1乃至3記載の液晶性(メタ)アクリレート化合物を2重量%以上、及び少なくとも2つの6員環を有する液晶骨格を部分構造として有する環状アルコール、フェノール又は芳香族ヒドロキシ化合物のアクリル酸又はメタクリル酸エステルである単官能アクリレート又は単官能メタクリレートを含有し、液晶相を示すことを特徴とする液晶組成物。
  7. 単官能アクリレート又は単官能メタクリレートが一般式(II)、
    Figure 0003963035
    (式中、X3は水素原子又はメチル基を表し、rは0または1の整数を表し、6員環D、E及びFはそれぞれ独立的に、
    Figure 0003963035
    を表し、pは1〜4の整数を表し、Y3及びY4はそれぞれ独立的に、単結合、−CH2CH2−、−CH2O−、−OCH2−、−COO−、−OCO−、−C≡C−、−CH=CH−、−CF=CF−、−(CH24−、−CH2CH2CH2O−、−OCH2CH2CH2−、−CH=CH−CH2CH2−、−CH2CH2CH2O−を表し、Y5は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜20のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基又はアルケニルオキシ基を表す。)で表されることを特徴とする請求項6記載の液晶組成物。
  8. 液晶相が少なくとも20℃〜30℃の温度範囲で発現することを特徴とする請求項7記載の液晶組成物。
  9. 請求項7乃至8記載の液晶組成物の重合体であることを特徴とする光学異方体。
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