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JP3948138B2 - 回生制動力の制御装置 - Google Patents

回生制動力の制御装置 Download PDF

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JP3948138B2 JP29883098A JP29883098A JP3948138B2 JP 3948138 B2 JP3948138 B2 JP 3948138B2 JP 29883098 A JP29883098 A JP 29883098A JP 29883098 A JP29883098 A JP 29883098A JP 3948138 B2 JP3948138 B2 JP 3948138B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、車輪から入力される動力により駆動されるモータ・ジェネレータを有し、このモータ・ジェネレータの発電力に応じた回生制動力を、車両に対して作用させることの可能な回生制動力の制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
駆動力源として電動機が搭載された車両においては、車輪から入力される運動エネルギを電動機に伝達して発電させ、その回生制動力を車両に対して作用させることが可能である。このように、電動機の発電機能により回生制動力を発生させることの可能な電気自動車の制動制御装置の一例が、特開平5−292603号公報に記載されている。
【0003】
この公報に記載された電気自動車は、車両の駆動力源たる駆動用モータと、駆動用モータの出力軸と車輪との間に介在する変速機と、制動操作に応じて車輪の機械制動および駆動用モータの回生制動をおこなう制動手段とを備えている。そして、変速機が変速動作している状態で制動操作が開始された場合は、機械制動力のみを発生させ、変速機の変速動作が終了した時点で制動操作が継続している場合は、回生制動力を徐々に発生させる制御がおこなわれる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報に記載された電気自動車においては、駆動用モータの動力を車輪に伝達して車両を走行させる駆動状態と、車輪から入力される動力を動力伝達経路に伝達する被駆動状態との切り換えに際して、駆動用モータにより発生する回生制動力をどのように制御するかについては何ら考慮されておらず、この点で改良の余地が残されていた。
【0005】
この発明は上記の事情を背景としてなされたものであり、駆動状態と被駆動状態との切り換え制御に際して加減速度の変更要求が生じた場合に、その変更要求の程度に応じてショックを抑制することの可能な回生制動力の制御装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段およびその作用】
上記の目的を達成するために請求項1の発明は、エンジンと車輪との間の動力伝達経路にモータ・ジェネレータが配置され、前記エンジンまたは前記モータ・ジェネレータの少なくとも一方から出力される動力を前記車輪に伝達する駆動状態と、前記車輪側から入力される動力を動力伝達経路に伝達する被駆動状態とを相互に切り換え可能であるとともに、前記車輪側から入力される動力により前記モータ・ジェネレータを駆動して回生制動力を車両に対して作用させることの可能な回生制動力の制御装置において、前記モータ・ジェネレータで回生制動力を発生する被駆動状態から、前記エンジンの動力が前記車輪に伝達される駆動状態に切り換えられる際に、アクセルペダルの踏み込みから判断される加速要求の増加程度が所定値以上であるか否かを判断する加速要求判断手段と、前記回生制動力を、前記被駆動状態から前記駆動状態に切り換える際に減少させる場合に、前記加速要求の増加程度が所定値未満であると判断された場合の回生制動力の減少程度よりも、前記加速要求の増加程度が所定値以上であると判断された場合の回生制動力の減少程度の方を大きく設定するモータ・ジェネレータ制御手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0007】
ここで、加速要求の増加程度には、加速要求の有無と、加速要求の増加速度と、加速要求の増加割合いと、加速要求の増加量と、加速要求の増加率と、加速要求の増加勾配とが含まれる。また、回生制動力の減少程度には、回生制動力の減少割合いと、回生制動力の減少量と、回生制動力の減少勾配とが含まれる。
【0008】
請求項1の発明によれば、モータ・ジェネレータで回生制動力を発生する被駆動状態から、エンジンの動力が車輪に伝達される駆動状態への切り換えが判断された場合は、アクセルペダルの踏み込みから判断される加速要求の増加程度が所定値以上であると判断された場合の回生制動力の減少程度が、加速要求の程度が所定値未満であると判断された場合の回生制動力の減少程度よりも大きく設定される。
【0009】
請求項2の発明は、エンジンと車輪との間の動力伝達経路にモータ・ジェネレータが配置され、前記エンジンまたは前記モータ・ジェネレータの少なくとも一方から出力される動力を前記車輪に伝達する駆動状態と、前記車輪側から入力される動力を動力伝達経路に伝達する被駆動状態とを相互に切り換え可能であるとともに、前記車輪側から入力される動力により前記モータ・ジェネレータを駆動して回生制動力を車両に対して作用させることの可能な回生制動力の制御装置において、前記エンジンの動力が前記車輪に伝達される駆動状態から、前記モータ・ジェネレータで回生制動力を発生する被駆動状態に切り換える際に、フットブレーキペダルの踏み込み状態から判断される減速要求の増加程度が所定値以上であるか否かを判断する減速要求判断手段と、前記回生制動力を、前記駆動状態から前記被駆動状態に切り換える際に増加させる場合に、前記減速要求の増加程度が所定値未満であると判断された場合の回生制動力の増加程度よりも、前記減速要求の増加程度が所定値以上であると判断された場合の回生制動力の増加程度の方を大きく設定するモータ・ジェネレータ制御手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0010】
ここで、減速要求の増加程度には、減速要求の有無と、減速要求の増加速度と、減速要求の増加割合いと、減速要求の増加量と、減速要求の増加勾配と、減速要求の増加率とが含まれる。また、回生制動力の増加程度には、回生制動力の増加割合いと、回生制動力の増加量と、回生制動力の増加勾配とが含まれる。
【0011】
請求項2の発明によれば、エンジンの動力が車輪に伝達される駆動状態から、モータ・ジェネレータで回生制動力を発生する被駆動状態への切り換えが判断された場合は、フットブレーキペダルの踏み込み状態から判断される減速要求の増加程度が所定値以上であると判断された場合の回生制動力の増加程度が、減速要求の増加程度が所定値未満であると判断された場合の回生制動力の増加程度よりも大きく設定される。
また、請求項3の発明は、請求項1の構成に加えて、前記被駆動状態から前記駆動状態への切り換えが否定判断され、かつ、前記車両が現在被駆動状態にあると判断された場合は、前記モータ・ジェネレータの回生制動力が前記動力伝達経路の変速比毎に決定された値となるように制御する回生制動力制御手段を備えていることを特徴とするものである。この請求項3の発明によれば、請求項1の発明と同様の作用が生じる他に、被駆動状態から前記駆動状態への切り換えが否定判断され、かつ、車両が現在被駆動状態にあると判断された場合は、モータ・ジェネレータの回生制動力が動力伝達経路の変速比毎に決定された値となるように制御される。
さらに、請求項4の発明は、請求項2の構成に加えて、前記駆動状態から前記被駆動状態に切り換える場合は、前記減速要求の増加程度が判断される前に、前記動力伝達経路の変速比に応じて前記モータ・ジェネレータの回生制動力を決定する回生制動力制御手段を備えており、前記モータ・ジェネレータ制御手段は、前記回生制動力制御手段により決定された回生制動力を、前記減速要求判断手段の判断結果に基づいて更に制御する場合に、前記減速要求の増加程度が所定値未満であると判断された場合の回生制動力の増加程度よりも、前記減速要求の増加程度が所定値以上であると判断された場合の回生制動力の増加程度の方を大きく設定する手段を含むことを特徴とするものである。この請求項4の発明によれば、請求項2の発明と同様の作用が生じる他に、駆動状態から被駆動状態に切り換える場合は、減速要求の増加程度が判断される前に、動力伝達経路の変速比に応じてモータ・ジェネレータの回生制動力が決定される。ついで、その回生制動力を、減速要求判断手段の判断結果に基づいて更に制御する場合に、減速要求の増加程度が所定値未満であると判断された場合の回生制動力の増加程度よりも、減速要求の増加程度が所定値以上であると判断された場合の回生制動力の増加程度の方が大きく設定される。
【0012】
【発明の実施の形態】
つぎにこの発明を添付図面を参照してより具体的に説明する。図2は、この発明を適用したハイブリッド車の概略構成を示すブロック図である。車両における第1の駆動力源であるエンジン1としては、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンまたはLPGエンジン等の内燃機関が用いられる。この実施例のエンジン1は、燃料噴射装置および吸排気装置ならびに点火装置等を備えた公知の構造のものである。
【0013】
また、エンジン1の吸気管には電子スロットルバルブ1Bが設けられており、電子スロットルバルブ1Bの開度が電気的に制御されるように構成されている。エンジン1のクランクシャフト12から出力される動力(トルク)の一方の伝達経路には、トルクコンバータ2およびモータ・ジェネレータ3ならびに歯車変速機構4が配置されている。具体的には、エンジン1とトルクコンバータ2との間にモータ・ジェネレータ3が配置され、歯車変速機構4の入力側にトルクコンバータ2が接続されている。言い換えれば、エンジン1とモータ・ジェネレータ3とトルクコンバータ2と歯車変速機構4とが直列に配置されている。さらに、エンジン1のくランクシャフト12から出力される動力の他方の伝達経路には、駆動装置5を介して別のモータ・ジェネレータ6が配置されている。モータ・ジェネレータ3,6としては、例えば交流同期型のものが適用される。
【0014】
まず、一方の動力伝達経路の構成について具体的に説明する。図3はトルクコンバータ2および歯車変速機構4の構成を示すスケルトン図である。このトルクコンバータ2および歯車変速機構4を内蔵したケーシングの内部には、作動油としてオートマチック・トランスミッション・フルード(以下、ATFと略記する)が封入されている。
【0015】
トルクコンバータ2は、駆動側部材のトルクをATFを介して従動側部材に伝達するものである。このトルクコンバータ2は、ポンプインペラ7に一体化させたフロントカバー8と、タービンランナ9を一体に取付けたハブ10と、ロックアップクラッチ11とを有している。そして、ポンプインペラ7のトルクがATFによりタービンランナ9に伝達される。また、ロックアップクラッチ11は、フロントカバー8とハブ10とを選択的に係合・解放するためのものである。なお、ロックアップクラッチ11を所定の係合圧で滑らせるスリップ制御をおこなうことも可能である。さらに、ポンプインペラ7およびタービンランナ9の内周側には、ステータ13が設けられている。このステータ13は、ポンプインペラ7からタービンランナ9に伝達されるトルクを増大するためのものである。さらに、ハブ10には入力軸14が接続されている。
【0016】
前記歯車変速機構4は、副変速部15および主変速部16から構成されている。副変速部15は、オーバドライブ用の遊星歯車機構17を備えており、遊星歯車機構17のキャリヤ18に対して入力軸14が連結されている。この遊星歯車機構17を構成するキャリヤ18とサンギヤ19との間には、多板クラッチC0 と一方向クラッチF0 とが設けられている。この一方向クラッチF0 は、サンギヤ19がキャリヤ18に対して相対的に正回転、つまり、入力軸14の回転方向に回転した場合に係合するようになっている。そして、副変速部15の出力要素であるリングギヤ20が、主変速部16の入力要素である中間軸21に接続されている。また、サンギヤ19の回転を選択的に止める多板ブレーキB0 が設けられている。
【0017】
したがって、副変速部15は、多板クラッチC0 もしくは一方向クラッチF0 が係合した状態で遊星歯車機構17の全体が一体となって回転する。このため、中間軸21が入力軸14と同速度で回転し、低速段となる。また、ブレーキB0 を係合させてサンギヤ19の回転を止めた状態では、リングギヤ20が入力軸14に対して増速されて正回転し、高速段となる。
【0018】
他方、主変速部16は、三組の遊星歯車機構22,23,24を備えており、三組の遊星歯車機構22,23,24を構成する回転要素が、以下のように連結されている。すなわち、第1遊星歯車機構22のサンギヤ25と、第2遊星歯車機構23のサンギヤ26とが互いに一体的に連結されている。また、第1遊星歯車機構22のリングギヤ27と、第2遊星歯車機構23のキャリヤ29と、第3遊星歯車機構24のキャリヤ31とが連結されている。さらに、キャリヤ31に出力軸32が連結されている。この出力軸32は、後述するトルク伝達装置(言い換えれば動力伝達装置)を介して車輪32Aに接続されている。さらにまた、第2遊星歯車機構23のリングギヤ33が、第3遊星歯車機構24のサンギヤ34に連結されている。
【0019】
この主変速部16の歯車列においては、後進側の1つの変速段と、前進側の4つの変速段とを設定することができる。このような変速段を設定するための摩擦係合装置、つまりクラッチおよびブレーキが、以下のように設けられている。先ずクラッチについて述べると、リングギヤ33およびサンギヤ34と、中間軸21との間に第1クラッチC1 が設けられている。また、互いに連結されたサンギヤ25およびサンギヤ26と、中間軸21との間に第2クラッチC2 が設けられている。
【0020】
つぎにブレーキについて述べると、第1ブレーキB1 はバンドブレーキであって、第1遊星歯車機構22のサンギヤ25、および第2遊星歯車機構23のサンギヤ26の回転を止めるように配置されている。またこれらのサンギヤ25,26とケーシング35との間には、第1一方向クラッチF1 と、多板ブレーキである第2ブレーキB2 とが直列に配列されている。第1一方向クラッチF1 はサンギヤ25,26が逆回転、つまり入力軸14の回転方向とは反対方向に回転しようとする際に係合するようになっている。
【0021】
また、第1遊星歯車機構22のキャリヤ37とケーシング35との間に、多板ブレーキである第3ブレーキB3 が設けられている。そして第3遊星歯車機構24はリングギヤ38を備えており、リングギヤ38の回転を止めるブレーキとして、多板ブレーキである第4ブレーキB4 と、第2一方向クラッチF2 とが設けられている。第4ブレーキB4 および第2一方向クラッチF2 は、ケーシング35とリングギヤ38との間に相互に並列に配置されている。なお、この第2一方向クラッチF2 はリングギヤ38が逆回転しようとする際に係合するように構成されている。さらに、歯車変速機構4の入力回転数を検出する入力回転数センサ(タービン回転数センサ)4Aと、歯車変速機構4の出力軸32の回転数を検出する出力回転数センサ(車速センサ)4Bとが設けられている。
【0022】
上記のように構成された歯車変速機構4においては、各クラッチやブレーキなどの摩擦係合装置を、図4の動作図表に示すように係合・解放することにより、前進5段・後進1段の変速段を設定することができる。なお、図4において○印は摩擦係合装置が係合することを示し、◎印は、エンジンブレーキ時に摩擦係合装置が係合することを示し、△印は摩擦係合装置が係合・解放のいずれでもよいこと、言い換えれば、摩擦係合装置が係合されてもトルクの伝達には無関係であることを示し、空欄は摩擦係合装置が解放されることを示している。
【0023】
また、この実施例では、図2に示すシフトレバー4Cのマニュアル操作により、図5に示すような各種のシフトポジションを設定することが可能である。すなわち、P(パーキング)ポジション、R(リバース)ポジション、N(ニュートラル)ポジション、D(ドライブ)ポジション、4ポジション、3ポジション、2ポジション、L(ロー)ポジションの各ポジションを設定可能になっている。ここで、Dポジション、4ポジション、3ポジション、2ポジション、Lポジションが前進ポジションである。そして、Dポジション、4ポジション、3ポジション、2ポジションが設定されている状態においては、複数の変速段同士の間で変速可能である。これに対して、Lポジション、または後進ポジションであるRポジションが設定されている状態においては、単一の変速段に固定される。
【0024】
図6は、スポーツモードスイッチ76を示し、このスポーツモードスイッチ76は、例えばインストルメントパネル(図示せず)付近またはコンソールボックス(図示せず)付近などに配置されている。図7は、アップシフトスイッチ77およびダウンシフトスイッチ78の配置位置の一例を示す図である。図7においては、ステアリングホイール79の表面側にダウンシフトスイッチ78が設けられており、ステアリングホイール79の裏面側にアップシフトスイッチ77が設けられている。なお、図7においては、アップシフトスイッチ77は、便宜上図示されていない。そして、スポーツモードスイッチ76がオンされた状態において、アップシフトスイッチ77が操作されると歯車変速機構4の変速段がアップシフトされ、ダウンシフトスイッチ78が操作されると歯車変速機構4の変速段がダウンシフトされる。
【0025】
また、図2に示された油圧制御装置39により、歯車変速機構4における変速段の設定または切り換え制御、ロックアップクラッチ11の係合・解放やスリップ制御、油圧回路のライン圧の制御、摩擦係合装置の係合圧の制御などがおこなわれる。この油圧制御装置39は電気的に制御されるもので、歯車変速機構4の変速を実行するための第1ないし第3のシフトソレノイドバルブS1 ,〜S3 と、エンジンブレーキ状態を制御するための第4ソレノイドバルブS4 とを備えている。
【0026】
さらに、油圧制御装置39は、油圧回路のライン圧を制御するためのリニアソレノイドバルブSLTと、歯車変速機構4の変速過渡時におけるアキュームレータ背圧を制御するためのリニアソレノイドバルブSLNと、ロックアップクラッチ11や所定の摩擦係合装置の係合圧を制御するためのリニアソレノイドバルブSLUとを備えている。
【0027】
図8は、モータ・ジェネレータ3の制御系統と、モータ・ジェネレータ3とエンジン1およびトルクコンバータ2との間の動力伝達経路の構成とを示すブロック図である。前記トルクコンバータ2のフロントカバー8には回転軸80が接続されており、エンジン1のクランクシャフト12と回転軸80とを接続・遮断するためのクラッチ81が設けられている。そして、回転軸80とモータ・ジェネレータ3との間の動力伝達経路には、減速装置82が配置されている。減速装置82は、同心状に配置されたリングギヤ83およびサンギヤ84と、このリングギヤ83およびサンギヤ84に噛み合わされた複数のピニオンギヤ85とを備えている。この複数のピニオンギヤ85はキャリヤ86により保持されており、キャリヤ86には回転軸87が連結されている。そして、回転軸80と回転軸87とを接続・遮断するクラッチ88が設けられている。
【0028】
一方、モータ・ジェネレータ3は回転軸89を備えており、回転軸89に前記サンギヤ84が取り付けられている。また、減速装置82を収容したケーシング90には、リングギヤ83の回転を止めるブレーキ91が設けられている。さらに、回転軸89の周囲には一方向クラッチ92が配置されており、一方向クラッチ92の内輪が回転軸89に連結され、一方向クラッチ92の外輪がリングギヤ83に連結されている。上記構成の減速装置82により、モータ・ジェネレータ3から出力された動力の減速がおこなわれる。そして、一方向クラッチ92は回転軸80のトルクをモータ・ジェネレータ3に伝達する場合に係合する構成になっている。
【0029】
上記モータ・ジェネレータ3は、例えば交流同期型のものが適用される。モータ・ジェネレータ3は、永久磁石(図示せず)を有する回転子(図示せず)と、コイル(図示せず)が巻き付けられた固定子(図示せず)とを備えている。そして、コイルの3相巻き線に3相交流電流を流すと回転磁界が発生し、この回転磁界を回転子の回転位置および回転速度に合わせて制御することにより、トルクが発生する。モータ・ジェネレータ3により発生するトルクは電流の大きさにほぼ比例し、モータ・ジェネレータ3の回転数は交流電流の周波数により制御される。
【0030】
このモータ・ジェネレータ3は、車両の第2の駆動力源、または車両に対する回生制動力の付与装置として機能する。つまり、モータ・ジェネレータ3は、機械エネルギを電気エネルギに変換する発電機としての機能と、電気エネルギを機械エネルギに変換する電動機としての機能とを備えている。そして、モータ・ジェネレータ3の動力を回転軸80に伝達する場合は、クラッチ88およびブレーキ91が係合され、一方向クラッチ92が解放される。また、回転軸80のトルクをモータ・ジェネレータ3に伝達することにより、モータ・ジェネレータ3を発電機として機能させる場合は、クラッチ88および一方向クラッチ92が係合され、ブレーキ91が解放される。
【0031】
一方、モータ・ジェネレータ3にはインバータ93を介してバッテリ94が接続され、モータ・ジェネレータ3およびインバータ93ならびにバッテリ94を制御するコントローラ95が設けられている。前記インバータ93は、バッテリ56の直流電流を3相交流電流に変換してモータ・ジェネレータ3に供給する一方、モータ・ジェネレータ3で発電された3相交流電流を直流電流に変換してバッテリ94に供給する3相ブリッジ回路(図示せず)を備えている。この3相ブリッジ回路は、例えば6個のパワートランジスタを電気的に接続して構成され、これらのパワートランジスタのオン・オフ状態を切り換えることにより、モータ・ジェネレータ3とバッテリ94との間の電流の向きを切り換える。このようにして、3相交流電流と直流電流との相互の変換と、モータ・ジェネレータ3に印可される3相交流電流の周波数の調整と、モータ・ジェネレータ3に印可される3相交流電流の大きさの調整と、モータ・ジェネレータ3による回生制動トルクの大きさの調整とがおこなわれる。
【0032】
そして、モータ・ジェネレータ3を電動機として機能させる場合は、バッテリ94からの直流電圧を交流電圧に変換してモータ・ジェネレータ3に供給する。また、モータ・ジェネレータ3を発電機として機能させる場合は、回転子の回転により発生した誘導電圧をインバータ93により直流電圧に変換してバッテリ94に充電する。
【0033】
そして、コントローラ95は、バッテリ94からモータ・ジェネレータ3に供給される電流値、またはモータ・ジェネレータ3により発電される電流値を検出または制御する機能を備えている。また、コントローラ95は、モータ・ジェネレータ3の回転数を制御する機能と、バッテリ94の充電状態(SOC:state of charge)を検出および制御する機能とを備えている。
【0034】
図9は、エンジン1のクランクシャフト12における他方の動力伝達経路の構成を示す説明図である。駆動装置5は減速装置43を備えており、この減速装置43がエンジン1およびモータ・ジェネレータ6に接続されている。減速装置43は、同心状に配置されたリングギヤ44およびサンギヤ45と、このリングギヤ44およびサンギヤ45に噛み合わされた複数のピニオンギヤ46とを備えている。この複数のピニオンギヤ46はキャリヤ47により保持されており、キャリヤ47には回転軸48が連結されている。また、エンジン1のクランクシャフト12と同心状に回転軸49が設けられており、回転軸12とクランクシャフト12とを接続・遮断するクラッチ50が設けられている。そして、回転軸49と回転軸48との間で相互にトルクを伝達するチェーン51が設けられている。なお、回転軸48には、チェーン48Aを介してエアコンプレッサなどの補機48Bが接続されている。
【0035】
また、モータ・ジェネレータ6は回転軸52を備えており、回転軸52に前記サンギヤ45が取り付けられている。また、駆動装置5のハウジング53には、リングギヤ44の回転を止めるブレーキ53が設けられている。さらに、回転軸52の周囲には一方向クラッチ54が配置されており、一方向クラッチ54の内輪が回転軸52に連結され、一方向クラッチ54の外輪がリングギヤ44に連結されている。上記構成の減速装置43により、エンジン1とモータ・ジェネレータ6との間のトルク伝達、または減速がおこなわれる。そして、一方向クラッチ54はエンジン1から出力されたトルクがモータ・ジェネレータ6に伝達される場合に係合する構成になっている。
【0036】
上記モータ・ジェネレータ6は、モータ・ジェネレータ3と同様に構成されている。モータ・ジェネレータ6は、機械エネルギを電気エネルギに変換する発電機としての機能と、電気エネルギを機械エネルギに変換する電動機としての機能とを備えている。具体的には、エンジン1を始動させるスタータとしての機能と、発電機(オルタネータ)としての機能と、エンジン1の停止時に補機48Bを駆動する機能とを兼備している。
【0037】
そして、モータ・ジェネレータ6をスタータとして機能させる場合は、クラッチ50およびブレーキ53が係合され、一方向クラッチ54が解放される。また、モータ・ジェネレータ6をオルタネータとして機能させる場合は、クラッチ50および一方向クラッチ54が係合され、ブレーキ53が解放される。さらに、モータ・ジェネレータ6により補機48Bを駆動させる場合は、ブレーキ53が係合され、クラッチ50および一方向クラッチ54が解放される。
【0038】
すなわち、エンジン1から出力されたトルクをモータ・ジェネレータ6に入力して発電をおこない、その電気エネルギをインバータ55を介してバッテリ56に充電することが可能である。また、モータ・ジェネレータ6から出力されるトルクを、エンジン1または補機48Bに伝達することが可能である。さらに、インバータ55およびバッテリ56にはコントローラ57が接続されている。このコントローラ57は、バッテリ56からモータ・ジェネレータ6に供給される電流値、またはモータ・ジェネレータ6により発電される電流値を検出または制御する機能を備えている。また、コントローラ57は、モータ・ジェネレータ6の回転数を制御する機能と、バッテリ56の充電状態(SOC:state of charge)を検出および制御する機能とを備えている。
【0039】
一方、車両の室内には、図10に示すような減速度設定スイッチ105が設けられている。この減速度設定スイッチ105は、コンソールボックス(図示せず)付近、またはインストルメントパネル(図示せず)付近に設けられている。この減速度設定スイッチ105を、車両の乗員が操作することにより、車両の減速度が所定値になるように、モータ・ジェネレータ3の回生制動力を増減させることが可能である。この減速度設定スイッチ105は、摺動自在なスライドノブ106を備えており、このスライドノブ106を「強」側に操作すると減速度が強くなり、「弱」側に操作すると減速度が弱くなる。
【0040】
図11は、上記ハード構成を有するハイブリッド車の制御回路を示すブロック図である。電子制御装置(ECU)58は、中央演算処理装置(CPU)および記憶装置(RAM、ROM)ならびに入力・出力インターフェースを主体とするマイクロコンピュータにより構成されている。
【0041】
この電子制御装置58には、エンジン回転数センサ59の信号、エンジン水温センサ60の信号、イグニッションスイッチ61の信号、バッテリ56,94の充電状態、およびモータ・ジェネレータ3,6の電流値を示すコントローラ57,95の信号、エアコンスイッチ62の信号、車速センサ4Bの信号、ATFの温度を検出する油温センサ63の信号、シフトレバー4Cの操作位置を検出するシフトポジションセンサ64の信号などが入力されている。
【0042】
また、電子制御装置58には、パーキングブレーキスイッチ65の信号、フットブレーキペダル66Aの踏み込み状態を検出するフットブレーキスイッチ66の信号、排気管(図示せず)の途中に設けられた触媒温度センサ67の信号、アクセルペダル1Aの踏み込み量を示すアクセル開度センサ68の信号、エンジン1の電子スロットルバルブ1Bの開度を示すスロットル開度センサ69の信号、タービン回転数センサ4Aの信号、モータ・ジェネレータ3,6の回転数および回転角度を検出するレゾルバ70,71の信号、スポーツモードスイッチ76の信号、アップシフトスイッチ77の信号、ダウンシフトスイッチ78の信号、減速度設定スイッチ105の信号、加速度センサ107の信号等が入力されている。
【0043】
この電子制御装置58からは、エンジン1の点火装置72を制御する信号、エンジン1の燃料噴射装置73を制御する信号、コントローラ57,95を制御する信号、駆動装置5のクラッチ50およびブレーキ53を制御する信号、油圧制御装置39を制御する信号、エンジン1の始動・停止を示すインジケータ74への制御信号、電子スロットルバルブ1Bの開度を制御するアクチュエータ75の制御信号などが出力されている。このようにして、電子制御装置58に入力される各種の信号に基づいて、エンジン1およびモータ・ジェネレータ3,6ならびに油圧制御装置39、歯車変速機構4が制御される。さらに、前記フットブレーキペダル66Aの操作により車両に対して制動力を付与する制動装置66Bが設けられている。この制動装置66Bは、ブレーキブースタ、マスターシリンダ、ブレーキチューブ、ホイールシリンダなどにより構成された公知の構造のものである。そして、フットブレーキペダル66Aの踏み込みにより、所定の制動力が車両に対して付与される。
【0044】
ここで、実施形態の構成と、この発明の構成との対応関係を説明する。エンジン1がこの発明の駆動力源に相当し、トルクコンバータ2および歯車変速機構4ならびに回転軸80がこの発明の動力伝達経路に相当する。
【0045】
上記ハード構成を有するハイブリッド車の制御内容を説明する。すなわち、クラッチ81係合されている場合は、エンジン1の動力(トルク)が、回転軸80、トルクコンバータ2、歯車変速機構4などの動力伝達経路を介して車輪32Aに伝達され、車輪32Aの駆動力により車両が走行する。また、クラッチ88が係合されている場合は、モータ・ジェネレータ3のトルクが動力伝達経路を介して車輪32Aに伝達される。したがって、このハイブリッド車は、エンジン1またはモータ・ジェネレータ3のうちの少なくとも一方を駆動力源として走行することが可能である。
【0046】
一方、車両の減速時、具体的には、車輪32A側から入力される動力(運動エネルギ)が動力伝達経路に対して伝達される被駆動状態時には、クラッチ81を係合させることにより、前記動力をエンジン1に伝達して、エンジンブレーキ力を効かせることが可能である。また、上記エンジンブレーキ力を発生させる動作にともなってクラッチ88を係合させると、上記動力をモータ・ジェネレータ3が伝達されて発電がおこなわれ、回生制動力が生じる。この場合、クラッチ81を解放させることにより、モータ・ジェネレータ3の回生制動力のみを車両に作用させることも可能である。なお、モータ・ジェネレータ3の回生制動力により減速力が付加されるのは、シフトレバー4Cにより前進ポジションが選択されている場合である。
【0047】
また、バッテリ56,94は、その充電量SOCが所定の範囲になるように制御されており、充電量SOCが少なくなった場合は、エンジン出力を増大させ、その一部をモータ・ジェネレータ3またはモータ・ジェネレータ6に伝達して発電させる。
【0048】
つぎに、車両の走行中における、歯車変速機構4および油圧制御装置39ならびにロックアップクラッチ11の制御内容を具体的に説明する。電子制御装置58には、歯車変速機構4の変速段(変速比)を制御する変速線図(変速マップ)が記憶されている。この変速線図には、車両の走行状態、例えばアクセル開度と車速とをパラメータとして、所定の変速段から他の変速段に変速(アップシフトまたはダウンシフト)するための変速点が設定されている。
【0049】
そして、この変速線図に基づいて変速判断がおこなわれ、この変速判断が成立した場合は、電子制御装置58から制御信号が出力され、この制御信号が油圧制御装置39に入力される。その結果、所定のソレノイドバルブが動作し、所定の摩擦係合装置に作用する油圧が変化して、摩擦係合装置の係合・解放がおこなわれて変速が自動的に実行される。
【0050】
なお、この実施形態においては、車速およびスロットル開度以外の条件に基づいて、歯車変速機構4の変速段を自動・手動により制御することも可能である。具体的には、加速度センサ107により検出される信号と、電子制御装置58に予め記憶されている基準値とに基づいて、車両の走行路が登坂路か降坂路かが判断されている。そして、この判断結果に基づいて歯車変速機構4の変速段を自動的に制御する、いわゆるAI−SHIFT制御をおこなうことも可能である。
【0051】
さらに、この実施形態においては、スポーツモードスイッチ76がオンされている場合は、アップシフトスイッチ77またはダウンシフトスイッチ78の操作により、車両の走行状態に関わりなく、歯車変速機構4の変速段を手動操作により切り換えることも可能である。
【0052】
前記ロックアップクラッチ11は、アクセル開度、車速、変速段などの条件に基づいて制御される。このため、電子制御装置58には、ロックアップクラッチ11の動作を制御するロックアップクラッチ制御マップが記憶されている。このロックアップクラッチ制御マップには、アクセル開度および車速をパラメータとして、ロックアップクラッチ11を完全係合または解放する領域、もしくはスリップさせる領域が設定されている。
【0053】
上記構成のハイブリッド車においては、駆動状態と被駆動状態との切り換えに対応して、モータ・ジェネレータ3の回生制動力(回生制動トルク)を制御することが可能である。以下、具体的な制御例を説明する。
【0054】
(第1制御例)
まず、第1制御例を、図1のフローチャートに基づいて説明する。電子制御装置58により各種の入力信号が処理され(ステップ201)、シフトレバー4Cが前進ポジションに操作されているか否かが判断される(ステップ202)。ステップ202で否定判断された場合は格別の制御をおこなうことなくリターンされる。ステップ202で肯定判断された場合は、所定の条件下でモータ・ジェネレータ3による回生制動がおこなわれる。
【0055】
ついで、車両に対する加速要求に基づいて、動力伝達経路の状態が、被駆動状態から駆動状態に切り換えられるか否かが判断される(ステップ203)。ここで、被駆動状態とは、車輪32Aから入力される動力(運動エネルギ)が動力伝達経路に伝達されている状態を意味しており、駆動状態とは、エンジン1またはモータ・ジェネレータ3の少なくとも一方のトルクが車輪32Aに伝達されている状態を意味している。このステップ203の判断基準として、エンジン回転数NEおよびタービン回転数NTを用いることが可能である。この場合は、エンジン回転NE>タービン回転数NTになることが検出されることにより、被駆動状態から駆動状態への切り換え判断が成立する。また、ステップ203の判断基準として、アクセル開度を用いることも可能である。この場合は、アクセル開度信号のオフからオンへの切り換えが検出されると、被駆動状態から駆動状態への切り換え判断が成立する。
【0056】
ステップ203で否定判断された場合は、車両の状態が、現在、駆動状態にあるか否かが判断される(ステップ204)。ステップ204で肯定判断された場合は、車両に対して減速力を付与する必要性が無いため、モータ・ジェネレータ(MG)3による回生制動をおこなわず(ステップ205)、リターンされる。
【0057】
一方、ステップ204で否定判断された場合は、モータ・ジェネレータ3による回生制動がおこなわれ(ステップ206)、リターンされる。ステップ206でおこなわれる回生制動の一制御例を具体的に説明する。基本的には、フットブレーキペダル66Aの踏み込みの有無または踏み込み量に関係なく、モータ・ジェネレータ3により生じる回生制動トルクが、歯車変速機構4の変速段毎に決定された値となるように、インバータ55を制御することにより、各変速段毎に所定の車両減速度が得られる。
【0058】
この実施形態においては、歯車変速機構4で設定される変速段毎に、車速と回生制動トルクとの関係が予め実験などで求められており、それらの関係がマップとして電子制御装置58に記憶されている。図12には、各変速段において、モータ・ジェネレータ3の回生制動トルクと車速との関係を示すマップの一例を示す線図である。図12に示すように、歯車変速機構4の変速段が高速段になるほど、回生制動トルクが大きくなるように設定されている。さらに、各変速段毎に設定される回生制動トルクは、車速が高くなるほど大きくなるように設定されている。
【0059】
例えば、図3に示すようなギヤトレーンの場合、出力軸32と車輪との間に配置されている差動装置(図示せず)の減速比(ギヤ比)にもよるが、第5速、第4速でエンジンブレーキ力が不足するので、この変速段でモータ・ジェネレータ3による回生制動を実施している。ここで、モータ・ジェネレータ3の回生制動量(言い換えれば回生制動トルク、もしくは回生制動力)Wは、第5速の回生制動量W≫第4速の回生制動量W>第3速の回生制動量Wになるように設定されている。なお、歯車変速機構4で低速段、例えば第2速や第1速が設定された状態において、エンジンブレーキ力による減速力が充分得られるように、歯車変速機構4の変速比(ギヤ比)や差動装置のデフ比(ギヤ比)が決定されている場合は、この低速段では回生制動をおこなわない。
【0060】
また、この実施形態においては、スポーツモードスイッチ76がオンされている状態においては、車両の減速度を一層増大させる制御がおこなわれる。具体的には、スポーツモードスイッチ76がオフされている場合に比べて、全ての変速段において、上記回生制動量Wを例えば1.2倍に設定することが可能である。または、スポーツモードスイッチ76がオフされている場合に比べて、歯車変速機構4の各変速段毎に回生制動量Wの増大割合を変えることが可能である。例えば、第5速の回生制動量W×1.3(*A)、第4速の回生制動量W×1.2(*A)、第3速の回生制動量W1.1(*A)に設定することができる。ここで「*A」は所定の係数であり、この係数Aは固定値でもよく、あるいは変速段毎に設定される値でもよい。なお、クラッチ81が係合されている場合、図4で「◎」が付与された摩擦係合装置の係合により設定される変速段においては、エンジンブレーキ力も働くことになる。
【0061】
さらに、この実施形態においては、加速度センサ107の信号に基づいて、走行道路が降坂路であることが検出された場合に、モータ・ジェネレータ3の回生制動量を、第5速の回生制動量W×1.5(*B)、第4速の回生制動量W×1.3(*B)、第3速の回生制動量W×1.2(*B)に設定することも可能である。なお、「*B」は所定の係数であり、この係数Bは固定値でもよく、あるいは変速段毎に設定される値でもよい。ここで、歯車変速機構4の変速段として原則第5速のみを使用し、係数*Bを変更することによりダウンシフトを回避する制御をおこなうことも可能である。この制御をおこなった場合、歯車変速機構4のダウンシフトに基づくショックが防止され、ドライバビリティが向上する。さらにまた、この時加速度センサ107の信号に基づいて、車両の減速度Gが一定になるように、モータ・ジェネレータ3の回生制動力を制御することも可能である。
【0062】
さらにこの実施形態においては、図10に示す減速度設定スイッチ105のスライドノブ106をマニュアル操作することにより、車両の減速度Gを制御することが可能である。この減速度設定スイッチ105を操作することにより、制動装置66Bにより発生する制動力から独立して、モータ・ジェネレータ3の回生制動力を増減させることが可能である。そして、スライドノブ106の操作量に応じて係数*Aまたは係数*Bの値をすることにより、モータ・ジェネレータ3の回生制動力が制御され、車両の減速度Gが調整される。
【0063】
ところで、前記ステップ203で肯定判断された場合は、モータ・ジェネレータ3による回生制動の中止が決定され(ステップ207)、ついで、車両に対する加速要求の程度が所定値以上、言い換えれば急激なパワーオン状態にあるか否かが判断される(ステップ208)。この制御例では、アクセル開度の変化に基づいてアクセルペダル1Aの踏み込み速度の変化を判断しており、アクセルペダル1Aの踏み込み速度が所定値以上であるか否かを判断している。この所定値は予め電子制御装置58に記憶されている。
【0064】
ステップ208で肯定判断された場合、つまり、アクセルペダル1Aの急激な踏み込みがおこなわれた場合は、エンジン出力が急激に増大して、車両加速度が負側から急激に正側に変化し、ショックが生じる可能性がある。しかしながら、加速要求の急激な増加に基づく加速度の変化であるため、前記ショックの抑制機能よりも、車両の動力性能を優先して、モータ・ジェネレータ3の回生制動力を急激に減少させて回生制動を中止させる制御をおこない(ステップ209)、リターンする。また、ステップ208で否定判断された場合は、モータ・ジェネレータ3の回生制動力を徐々に減少させる制御をおこない(ステップ210)、リターンされる。このため、車両加速度が負側から緩慢に正側に変化してショックが抑制され、ドライバビリティが向上する。
【0065】
ここで、図1のフローチャートに示された機能的手段と、この発明の構成との対応関係を説明する。ステップ203,208がこの発明の加速要求判断手段に相当し、ステップ209,210がこの発明のモータ・ジェネレータ制御手段に相当し、ステップ203,204,206がこの発明の回生制動力制御手段に相当する。
【0066】
図13は、図1の制御内容を経時的に示すタイムチャートである。すなわち、アクセルペダル1Aが踏まれずにアクセル開度信号がオフされ、かつ、フットブレーキペダルが66Aが踏み込まれてブレーキ信号がオンされている状態においては、負の車両加速度(つまり減速度)が生じている。また、車輪32Aから入力される動力がモータ・ジェネレータ3に入力され、モータ・ジェネレータ3による所定の回生制動力が発生している。
【0067】
その後、時刻t1においてフットブレーキ信号がオンからオフ側に切り換えられ、ついで、時刻t2以降はアクセル開度信号がオフからオン側に切り換えられている。ここで、アクセル開度信号の特性のうち、実線で示す特性が、加速要求の急激な増大に対応し、破線で示す特性が、加速要求の緩慢な増大に対応している。
【0068】
まず、加速要求が急激に増加して、時刻t3よりも前に所定のアクセル開度Acc1に到達し、以後そのアクセル開度Acc1に維持される場合について説明する。この場合は、モータ・ジェネレータ3の回生制動量が、時刻t3以降は実線で示すように急激に減少し、時刻t4以降はほぼ一定の回生制動量Br1に制御されている。一方、アクセル開度の増大にともなってエンジン出力が急激に増大し、かつ、モータ・ジェネレータ3の回生制動力の急激な減少にともない、車両加速度が時刻t3から実線で示すように急激に変化し、零を経由して正側に変移している。そして、時刻t4以降は正側における所定の加速度G1に制御されている。
【0069】
つぎに、加速要求が緩慢に増加して、時刻t4と時刻t5との間において、所定のアクセル開度Acc1に到達し、以後そのアクセル開度に維持される場合について説明する。加速要求が緩慢に増加する場合のアクセル開度の勾配は、加速要求が急激に増加する場合のアクセル開度の勾配よりも緩やかになっている。
【0070】
そして、モータ・ジェネレータ3の回生制動量が、時刻t3以降は破線で示すように緩慢に減少し、時刻t5以降はほぼ一定の回生制動量Br1に制御されている。つまり、モータ・ジェネレータ3を回生制動量を緩慢に減少させる点線の勾配は、モータ・ジェネレータ3の回生制動量を急激に減少させる実線の勾配よりも緩やかに設定されている。一方、アクセル開度の緩慢な増大にともなってエンジン出力が緩慢に増大し、かつ、モータ・ジェネレータ3の回生制動力が緩慢に減少することにともない、車両加速度が時刻t3から実線で示すように緩慢に零側に変化するとともに、時刻t4と時刻t5との間で零を経由し、その後は加速度が緩慢に正側に変化している。そして、時刻t5以降は一定の車両加速度G1に制御されている。
【0071】
なお、ステップ208における他の判断基準としては、アクセル開度の変化量と、アクセル開度の変化割合いと、アクセル開度の変化率と、アクセル開度の変化を経時的に示す線図の勾配とが含まれる。これらの事象はいずれも公知のスイッチやセンサにより検出もしくは判断することが可能である。この場合、電子制御装置58に、各種の判断基準に相当する基準値が予め記憶されていることは勿論である。また、この制御例において、モータ・ジェネレータ3の回生制動力の減少程度には、回生制動力の減少量と、回生制動力の減少割合いと、回生制動力の減少率と、回生制動力の減少を経時的に示す線図の勾配とが含まれる。
【0072】
(第2制御例)
図14は、第2制御例を示すフローチャートである。図14のステップ301の内容は、図1のステップ201の内容と同様である。図14のステップ302の内容は、図1のステップ302の内容と同様である。ステップ302で否定判断された場合はリターンされる。ついで、車両の動力伝達経路の状態が、駆動状態から被駆動状態に切り換えられるか否かが判断される(ステップ303)。このステップ303の判断基準として、エンジン回転数NEおよびタービン回転数NTを用いることが可能である。この場合は、エンジン回転NE<タービン回転数NTになることが検出されることにより、駆動状態から被駆動状態への切り換え判断が成立する。
【0073】
ステップ303で否定判断された場合は、車両の状態が、現在、駆動状態にあるか否かが判断される(ステップ304)。ステップ304で肯定判断された場合は、ステップ305を経由してリターンされる。ステップ305の内容は、図1のステップ205の内容と同様である。一方、ステップ304で否定判断された場合は、ステップ306を経由してリターンされる。ステップ306の内容は、図1のステップ206と同様である。
【0074】
ところで、前記ステップ303で肯定判断された場合は、歯車変速機構4で設定されている変速段に対応して回生制動量が決定される(ステップ307)。このステップ307ではステップ206と同様にして回生制動量が決定される。ついで、車両に対する減速要求の程度が所定値以上あるか否かが判断される(ステップ308)。具体的には、フットブレーキスイッチ66がオンされたか否かに基づいて、減速要求の有無が判断されている。
【0075】
ステップ308で肯定判断された場合、つまり、減速要求がある場合は、制動装置66Bの動作により制動力が発生し、この制動力が車両に対して付与される。このため、車両加速度が負側に向けて急激に変化し、ショックが生じる可能性がある。しかしながら、この車両加速度の変化は減速要求に基づくものであるため、前記ショックの抑制機能よりも、車両の制動性能を優先して、モータ・ジェネレータ3の回生制動力を急激に増大させる制御をおこない(ステップ309)、リターンする。
【0076】
また、ステップ308で否定判断された場合は、モータ・ジェネレータ3の回生制動力を徐々に増大させる制御をおこない(ステップ310)、リターンされる。このため、車両加速度の負側への変化が緩慢におこなわれてショックが抑制され、ドライバビリティが向上する。
【0077】
ここで、図14に示された機能的手段と、この発明の構成との対応関係を説明する。ステップ303,307がこの発明の回生制動力制御手段に相当し、ステップ308がこの発明の減速要求判断手段に相当し、ステップ309,310がこの発明のモータ・ジェネレータ制御手段に相当する。
【0078】
図15は、図14の制御内容を経時的に示すタイムチャートである。すなわち、アクセルペダル1Aが踏み込まれてアクセル開度信号がオンされ、かつ、フットブレーキペダルが66Aが踏まれずにフットブレーキ信号がオフされている状態においては、正の車両加速度が生じている。また、車輪32Aから入力される動力がモータ・ジェネレータ3に入力され、モータ・ジェネレータ3による所定の回生制動力が発生している。
【0079】
その後、時刻t6においてアクセル信号がオンからオフに切り換えられ、かつ、フットブレーキペダル66Aが踏み込まれてフットブレーキ信号が実線で示すようにオンに切り換えられた(減速要求が発生した)場合は、モータ・ジェネレータ3の回生制動量が、時刻t7以降は実線で示すように急激に増加し、時刻t8以降はほぼ一定の回生制動量Br2に制御されている。上記回生制動量の増大に対応して、車両加速度が時刻t7から実線で示すように急激に変化して零を経由し、時刻t8以降は負側の車両加速度G2に制御される。
【0080】
これに対して、フットブレーキペダル66Aが、破線で示すように時刻t6以降も踏み込まれなかった(減速要求が発生しない)場合は、モータ・ジェネレータ3の回生制動量が、時刻t7以降は破線で示すように緩慢に増加し、時刻t8よりも遅い時刻t9以降において、所定の回生制動量Br2に制御されている。この回生制動量の緩慢な増加に対応して、車両加速度が時刻t7から破線で示すように緩慢に変化して時刻t8と時刻t9との間で零を経由し、時刻t9以降は負側の車両加速度G2に制御されている。
【0081】
なお、ステップ308の他の判断基準としては、フットブレーキペダル66Aの踏み込み速度と、フットブレーキペダル66Aの踏み込み量と、フットブレーキペダル66Aの踏み込み変化割合いと、フットブレーキペダル66Aの踏み込み変化率と、フットブレーキペダル66Aの踏み込み変化を経時的に示す線図の勾配とが含まれる。これらの事象はいずれも公知のスイッチやセンサにより検出もしくは判断することが可能である。この場合、電子制御装置58には、各種の判断基準に相当する基準値が予め記憶されていることは勿論である。また、モータ・ジェネレータ3の回生制動力の増加程度には、回生制動力の増加量と、回生制動力の増加割合いと、回生制動力の増加率と、回生制動力の増加を経時的に示す線図の勾配とが含まれる。
【0082】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、アクセルペダルの踏み込みから判断される加速要求の増加程度が所定値以上であると判断された場合の回生制動力の減少程度が、加速要求の程度が所定値未満であると判断された場合の回生制動力の減少程度よりも大きく設定される。したがって、加速度の緩慢な増加が要求されている条件下においては、被駆動状態から駆動状態に切り換えられる際に発生する回生制動力を緩慢に減少することにより、加速度が緩慢に増大してショックが抑制され、ドライバビリティが向上する。
【0083】
請求項2の発明によれば、フットブレーキペダルの踏み込み状態から判断される減速要求の増加程度が所定値以上であると判断された場合の回生制動力の増加程度が、減速要求の増加程度が所定値未満であると判断された場合の回生制動力の増加程度よりも大きく設定される。したがって、緩慢な減速が要求されている条件下においては、駆動状態から被駆動状態に切り換えられる際に発生する回生制動力を緩慢に増加することにより、加速度が緩慢に減少してショックが抑制され、ドライバビリティが向上する。
また、請求項3の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、被駆動状態から駆動状態への切り換えが否定判断され、かつ、車両が現在被駆動状態にあると判断された場合は、モータ・ジェネレータの回生制動力が動力伝達経路の変速比毎に決定された値となるように制御する。
さらに、請求項4の発明によれば、請求項2の発明と同様の効果を得られる他に、車両が被駆動状態から駆動状態に切り換えられる場合は、減速要求の増加程度が判断される前に、動力伝達経路の変速比に応じてモータ・ジェネレータの回生制動力を決定する。その回生制動力が決定された後に、車両における減速要求の増加程度が所定値以上であるか否かが判断され、その判断結果に基づいて、前記モータ・ジェネレータの回生制動力が更に制御される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一制御例を示すフローチャートである。
【図2】 この発明が適用されたハイブリッド車の概略構成を示すブロック図である。
【図3】 図2に示されたトルクコンバータおよび歯車変速機構の構成を示すスケルトン図である。
【図4】 図3に示された歯車変速機構で各変速段を設定するための摩擦係合装置の作動状態を示す図表である。
【図5】 図2に示された歯車変速機構を手動操作するシフトレバーのシフトポジションを示す説明図である。
【図6】 図3に示された歯車変速機構の変速段をマニュアル操作により切り換えることの可能な状態を設定・解除するスポーツモードスイッチを示す図である。
【図7】 この発明が適用される車両のステアリングホイールの構成を示す図である。
【図8】 図2に示されたシステム構成において、モータ・ジェネレータの制御系統と、モータ・ジェネレータの動力伝達経路の構成とを示す概念図である。
【図9】 図2に示されたエンジンと、駆動装置と、モータ・ジェネレータとの配置関係を示概念図である。
【図10】 図2に示された車両において、減速度をマニュアル操作により設定するための減速度設定スイッチの構成を示す図である。
【図11】 図2に示された車両の制御回路を示すブロック図である。
【図12】 図2に示された車両において、車速と回生制動トルクとの関係を示す線図である。
【図13】 図1の制御例に対応するタイムチャートである。
【図14】 この発明の他の制御例を示すフローチャートである。
【図15】 図14の制御例に対応するタイムチャートである。
【符号の説明】
1…エンジン、 2…トルクコンバータ、 3…モータ・ジェネレータ、 4…歯車変速機構、 80…回転軸。

Claims (4)

  1. エンジンと車輪との間の動力伝達経路にモータ・ジェネレータが配置され、前記エンジンまたは前記モータ・ジェネレータの少なくとも一方から出力される動力を前記車輪に伝達する駆動状態と、前記車輪側から入力される動力を動力伝達経路に伝達する被駆動状態とを相互に切り換え可能であるとともに、前記車輪側から入力される動力により前記モータ・ジェネレータを駆動して回生制動力を車両に対して作用させることの可能な回生制動力の制御装置において、
    記モータ・ジェネレータで回生制動力を発生している被駆動状態から、前記エンジンの動力が前記車輪に伝達される駆動状態に切り換えられる際に、アクセルペダルの踏み込みから判断される加速要求の増加程度が所定値以上であるか否かを判断する加速要求判断手段と、前記回生制動力を、前記被駆動状態から前記駆動状態に切り換える際に減少させる場合に、前記加速要求の増加程度が所定値未満であると判断された場合の回生制動力の減少程度よりも、前記加速要求の増加程度が所定値以上であると判断された場合の回生制動力の減少程度の方を大きく設定するモータ・ジェネレータ制御手段とを備えていることを特徴とする回生制動力の制御装置。
  2. エンジンと車輪との間の動力伝達経路にモータ・ジェネレータが配置され、前記エンジンまたは前記モータ・ジェネレータの少なくとも一方から出力される動力を前記車輪に伝達する駆動状態と、前記車輪側から入力される動力を動力伝達経路に伝達する被駆動状態とを相互に切り換え可能であるとともに、前記車輪側から入力される動力により前記モータ・ジェネレータを駆動して回生制動力を車両に対して作用させることの可能な回生制動力の制御装置において、
    記エンジンの動力が前記車輪に伝達される駆動状態から、前記モータ・ジェネレータで回生制動力を発生する被駆動状態に切り換える際に、フットブレーキペダルの踏み込み状態から判断される減速要求の増加程度が所定値以上であるか否かを判断する減速要求判断手段と、前記回生制動力を、前記駆動状態から前記被駆動状態に切り換える際に増加させる場合に、前記減速要求の増加程度が所定値未満であると判断された場合の回生制動力の増加程度よりも、前記減速要求の増加程度が所定値以上であると判断された場合の回生制動力の増加程度の方を大きく設定するモータ・ジェネレータ制御手段とを備えていることを特徴とする回生制動力の制御装置。
  3. 前記被駆動状態から前記駆動状態への切り換えが否定判断され、かつ、前記車両が現在被駆動状態にあると判断された場合は、前記モータ・ジェネレータの回生制動力が前記動力伝達経路の変速比毎に決定された値となるように制御する回生制動力制御手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の回生制動力の制御装置。
  4. 前記駆動状態から前記被駆動状態に切り換える場合は、前記減速要求の増加程度が判断される前に、前記動力伝達経路の変速比に応じて前記モータ・ジェネレータの回生制動力を決定する回生制動力制御手段を備えており、
    前記モータ・ジェネレータ制御手段は、前記回生制動力制御手段により決定された回生制動力を、前記減速要求判断手段の判断結果に基づいて更に制御する場合に、前記減速要求の増加程度が所定値未満であると判断された場合の回生制動力の増加程度よりも、前記減速要求の増加程度が所定値以上であると判断された場合の回生制動力の増加程度の方を大きく設定する手段を含むことを特徴とする請求項2に記載の回生制動力の制御装置。
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