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JP3816996B2 - 振動構造物及び振動構造物を備えるアクチュエータと振動構造物の固有振動数の制御方法 - Google Patents

振動構造物及び振動構造物を備えるアクチュエータと振動構造物の固有振動数の制御方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、振動構造物及び振動構造物の固有振動数の制御方法に係り、さらに詳細には駆動電極または有効剛性制御用電極を所定の形状で形成することにより、慣性体の変位に応じて振動構造物に発生する電気力を線形的に変え、印加電圧により固有振動数を制御しうる振動構造物と、その振動数の制御方法に係り、かつ、本発明はこの振動構造物を備えるセンサ装置及びアクチュエータに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、振動構造物は多様な用途に用いられていて、例えば、ジャイロスコープ、加速度系のようなセンサ及びアクチュエータなどに用いられている。振動構造物の適用例のうち、ジャイロスコープは従来ミサイルや船舶、航空機などの航法装置の核心部品として用いられてきた。しかしながら、従来の軍事用または航空機用に用いられるジャイロスコープは、数万個の部品が精密加工及び組立工程により製作されるので精密な性能は得られるが、コスト高になり、構造の大型化をもたらすので、一般産業用や民生用の家電製品への適用には不向きである。民生機器に用いられるジャイロスコープは、自動車の加速度及び角速度を検出する航法装置や高倍率のカムコーダの手振れを検出し、これを補正する装置に適用されている。また、医療装備や産業用計測器などにも振動構造物を内蔵するセンサが用いられている。
【0003】
図13に従来の振動構造物の簡略図と振動構造物の振幅と振動数の関係を示す。図13(a)に示すように、振動構造物10は支持端13により支持されたばね12と慣性体11とを備えている。振動構造物10が多重の自由度を有する場合、図13(a)に示した振動構造物を多数連結した等価振動構造物を構成することができる。この振動構造物10は慣性体11の質量mとばね12のばね定数kが一定であるので、図13(b)に示すように、振幅に対して一定の固有振動数を有する。従って、振動構造物10を用いたセンサやアクチュエータは、製作後振動構造物の固有振動数が任意に変更できないという問題点を有する。また、振動構造物10の製作時、固有振動数を制御するために米国特許第4,107,349号に開示されるように銀等の金属体を蒸着させる方法を用いることができるが、これは蒸着工程自体が煩雑であり、その上、振動構造物の製作後、別途の固有振動数制御のための工程が必要となるという短所がある。
【0004】
このような問題点を解決するために、本願出願人は、振動構造物に別途の有効剛性制御用電極と電源供給手段を備え、有効剛性制御用電極に印加される電圧を変化させて固有振動数を制御する振動構造物を提案した。すなわち、振動構造物の慣性体を移動電極として用い、移動電極と振動構造物の支持端に固定された有効剛性制御用電極の間に電圧を印加して電気力を発生させることにより、振動構造物の固有振動数を制御している。振動構造物の固有振動数は電圧の大きさを変更することにより増減することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
有効剛性制御用電極による振動構造物の固有振動数の制御は、慣性体の振動変位が極めて微小であるという前提に基づいている。実際に振動構造物に加えられる弾性力は一定の傾斜を有する線形関数で表示されるが、有効剛性制御用電極により振動構造物に加えられる電気力は慣性体の変位に対して非線形関数で表示される。これは振動構造物に加えられる電気力が慣性体よりなる移動電極と有効剛性制御用電極との間で発生するので、移動電極の振動変位に応じて電極の大きさが変化するためである。したがって、振動変位が微小であるという前提条件が成立する振動構造物では、電圧の大きさのみを調節することにより固有振動数の制御が可能である。しかしながら、このような前提条件が成立し得ない程度に振動変位が大きい場合には、固有振動数の制御が不可能になるという問題がある。
【0006】
本発明は上記のような問題点を解決するために案出されたものであり、慣性体の振動変位に応じて線形の電気力を発生することができる形状の有効剛性制御用電極または移動電極を備える振動構造物を提供することを目的とする。また、本発明は、慣性体の振動変位に応じて線形の電気力を発生するように、振動構造物に備えられた有効剛性制御用電極または移動電極を所定の形状で形成することにより、振動構造物の固有振動数を制御する方法を提供することを目的とする。更に、本発明はこのような有効剛性制御用電極または移動電極を有する振動構造物を備えるセンサ装置及びアクシュエータを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明の振動構造物は、第1の支持端に一端が連結された弾性部材と、この弾性部材の弾性力により振動する慣性体と、この慣性体に取り付けられた移動電極と、第2の支持端に連結された有効剛性制御用電極と、移動電極と有効剛性制御用電極との間に電気力を発生させる電源供給装置とを備える。
【0008】
ここで、移動電極と有効剛性制御用電極をフィンガ型とし、慣性体の振動により相互に挿入可能なように形成し、有効剛性制御用電極は第2の支持端からx1の長さに延びる略テーパ状の曲線部と該曲線部の終了地点から電極の端部まで延びる直線部とを有し、移動電極から有効剛性制御用電極の直線部までの距離をs0 、第2支持端における移動電極から有効剛性制御用電極までの距離をs1 とするとき、慣性体の変位xに対する移動電極から有効剛性制御用電極の曲線部までの距離sは、
【0009】
【数3】
の式で与えられるように構成してもよい。
【0010】
また、移動電極は半径ri を有する棒形であり、有効剛性制御用電極は環状の断面を有するテーパ状に形成された中空の円筒であり、慣性体の振動により移動電極は有効剛性制御用電極内に挿入可能であり、慣性体の変位をxとし、有効剛性制御用電極の内径と移動電極の半径ri との差をsとするとき、有効剛性制御用電極の全体長をx1、有効剛性制御用電極の端部における有効剛性制御用電極の内径と移動電極の半径ri との差をs0 、第2の支持端における有効剛性制御用電極の内径と移動電極の半径との差をs1 とすると、
【0011】
【数4】
の式を満たすように構成してもよい。
【0012】
また、移動電極と有効剛性制御用電極は複数のフィンガ型であり、慣性体の振動により相互に挿入可能であり、有効剛性制御用電極の各フィンガは長さが同一であり、移動電極のフィンガは一端が相互に連結され、移動電極の最長フィンガの長手方向に対して線対称の形状を有するように構成することができる。更に、移動電極と有効剛性制御用電極は平板型であり所定の距離に相互に離隔して平行に配置され、慣性体または移動電極の変位に応じて移動電極と有効剛性制御用電極が重なる部分が三角形をなすように構成することができる。ここで、移動電極と有効剛性制御用電極が重なる部分は二等辺三角形であることが好ましい。
【0013】
上述の振動構造物において、慣性体は少なくとも一つのスリットが形成された平板型であり、有効剛性制御用電極は平板型であり、慣性体は有効剛性制御用電極から所定の距離に離隔して平行に配置され、慣性体と有効剛性制御用電極が重なる部分が三角形をなすように構成することができる。また、慣性体は少なくとも一つのスリットが形成された平板型であり、有効剛性制御用電極は平板型であり、慣性体は有効剛性制御用電極から所定の距離に離隔して平行に配置され、慣性体のスリットと有効剛性制御用電極が重なる部分が三角形をなすように構成することができる。更に、移動電極は三角形の端部を有し、相互に所定の距離に平行に離隔された複数のフィンガを備え、有効剛性制御用電極は相互平行に離隔された複数のフィンガを備え、移動電極のフィンガの各々は慣性体の振動により有効剛性制御用電極のフィンガの間に挿入されるように構成してもよい。
【0014】
また、本発明の振動構造物の固有振動数の制御方法は、第1の支持端に一端が連結された弾性部材と、弾性部材の弾性力により振動する慣性体と、慣性体に取り付けられた所定形態の移動電極と、第2の支持端に連結された所定の形状を有する有効剛性制御用電極と、移動電極と有効剛性制御用電極との間に電気力を発生するように電圧を印加する電源供給装置とを備える振動構造物の固有振動数の制御方法であって、慣性体の変位に対して電気力が線形的に変化することにより移動電極と有効剛性制御用電極との間に印加される電圧を変化させて、固有振動数を制御する。
【0015】
また、本発明のアクチュエータは、支持端に一端が支持された弾性部材と、この弾性部材の弾性力により振動する慣性体と、この慣性体に加振し、慣性体の振動を検知する手段と、慣性体の一側にフィンガ型に形成された移動電極と、この移動電極の間に挿入されるようにフィンガ型に形成された有効剛性制御用電極と、移動電極と有効剛性制御用電極との間に電圧を印加する電源供給手段とを備え、慣性体の変位に対して電気力が線形的に変化する。
【0016】
本発明の他の態様のアクチュエータは、支持端に一端が支持された弾性部材と、この弾性部材の弾性力により振動し、少なくとも一つのスリットが形成された平板型の慣性体と、この慣性体を加振して、慣性体の振動を検知する加振手段と、平板型慣性体から所定の距離離隔して配置され、慣性体と三角形に重なる平板型の有効剛性制御用電極と、慣性体と有効剛性制御用電極との間に所定の電圧を印加する電源供給手段とを備える。
【0017】
また、本発明の他の態様のアクチュエータは、支持端に一端が支持された弾性部材と、この弾性部材の弾性力により回転し、少なくとも一つのスリットが形成された円形の平板慣性体と、この慣性体を加振して、慣性体の振動を検知する加振手段と、慣性体から所定の距離離隔して配置され、慣性体と三角形に重なる有効剛性制御用電極とを備える。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、添付した図面に基づき本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明の振動構造物の第1の実施の形態を示す。この第1の実施の形態の振動構造物は、振動構造物に加えられる電気力が線形になるように有効剛性制御用電極を所定の形状で形成する振動構造物である。図1(a)に示すように、慣性体23は第1の支持端21に支持された弾性部材22の弾性力により、X−Z平面上でX方向に動き、慣性体23には移動電極28がフィンガ型に一体形成されている。慣性体23に電気力を加えるように第2支持端21′に有効剛性制御用電極24が固定されており、有効剛性制御用電極24もフィンガ型に形成される。
【0019】
本発明の特徴によれば、有効剛性制御用電極24及び移動電極28は所定の形態を有しており、これは後に詳細に説明する。移動電極28は有効剛性制御用電極24の間に所定の距離に離間して挿入されている。電源供給装置27は有効剛性制御用電極24と移動電極28に電圧を印加する。慣性体23には弾性部材22による弾性力のみならず、電極による電気力が印加される。
【0020】
図1(b)は図1(a)に示した有効剛性制御用電極24と移動電極28を一部拡大した正面図である。図1(b)に示すように、有効剛性制御用電極24は第2支持端21′からx1の長さに延びる略テーパ状の曲線部とこの曲線部から端部まで延びる直線部とを有する。参照記号sは移動電極28と有効剛性制御用電極24の曲線部との距離を示す変数であり、参照記号s0 は移動電極28の側面と有効剛性制御用電極24の直線部との距離を示し、参照記号s1 は第2支持端21′における有効剛性用制御電極24と移動電極28との距離を示す。sは慣性体23の変位xに対する関数であり、次式(1)のように表すことができる。
【0021】
【数5】
【0022】
移動電極28が微小距離dxに移動したとき、電極間の静電容量の増加dc及び静電容量の変化率(dc/dx)は次のような式(2)で表される。
【0023】
【数6】
ここで、εは移動電極と有効剛性制御用電極との空間の誘電率であり、tはフィンガのY方向の長さである。したがって、二つの電極間に作用する電気力Fは、電源供給装置27から供給される電圧をVとするとき、次式(3)のように表される。
【0024】
【数7】
【0025】
上記の式から判るように、移動電極28と有効剛性制御用電極24との電気力は電圧が一定の場合、慣性体の変位xに比例して大きくなるので、電気力は距離に対して線形になる。
【0026】
図2(a)は図1(a)に示した振動構造物の慣性体23が変位xを起こすとき、発生する電気力と弾性力を示すグラフである。電気力と弾性力は所定の傾斜を有する直線29及び30により示している。電気力と弾性力は一定の位置31において平行となる。図2(a)において、直線30の傾斜と直線29の傾斜との差を全体振動構造物の有効剛性と見なすことができ、有効剛性keff は次のような式(4)で表すことができる。
【0027】
【数8】
【0028】
上記の式から判るように、振動構造物の有効剛性は電圧の自乗に比例し、電圧が一定であれば、有効剛性も一定である。このような振動構造物を図2(b)に示すように等価有効剛性keff を有する単振動構造物として表すことができる。この振動構造物の固有振動数fn は次式(5)の通りであり、これを用いると電圧により固有振動数を制御することができる。
【0029】
【数9】
【0030】
図3は本発明の振動構造物の第2の実施の形態を示す。この振動構造物の有効剛性制御用電極及び移動電極が円筒型及び円筒に挿入される棒型で形成されている。図3に示すように、慣性体36は弾性部材38により第1の支持端32に支持されており、慣性体36には棒型の移動電極35が一体に形成されている。移動電極35は半径がri である円形状の断面を有する。有効剛性制御用電極33は第2の支持端32′に一端が固定されており、移動電極35が挿入されるように中空となっていて、テーパ状に形成され、円型環状の断面を有している。これは有効剛性制御用電極33と移動電極35との間に発生する電気力を慣性体36の変位に応じて線形的に変化させるためである。
【0031】
図3に示す振動構造物において、慣性体36の変位xに対する有効剛性制御用電極33の中空内径と移動電極35の半径ri との差sは、次のような式(6)で表される。
【0032】
【数10】
ここで、x1 は有効剛性制御用電極33の全体の長さ、s0 は有効剛性制御用電極33の端部34の内径と移動電極35の外径との差、s1 は支持端32′における有効剛性制御用電極33の内径と移動電極35の外径との差を示す。
【0033】
式(6)に示すように、図1(a)に示した振動構造物から導出されたものと同じ結果が得られた。即ち、式(6)を満たす中空円筒型の有効剛性制御用電極33を有する振動構造物においても、慣性体36の変位に応じて電気力が線形的に変化する。したがって、電源供給装置37により有効剛性電極33に対する印加電圧を変化させるだけで、振動構造物の固有振動数を調節することができる。図3に示す振動構造物の有効剛性keff は次の式(7)ように表される。
【0034】
【数11】
【0035】
図4は本発明の振動構造物の第3の実施の形態を示し、この振動構造物は慣性体の変位に応じて電気力が線形的に変化するものである。図4に示すように、慣性体41は弾性部材48により第1の支持端47に支持されており、慣性体41にはフィンガ型の移動電極42〜45が一体に形成されている。移動電極42〜45はそれぞれ端部が相互に一直線に連結されている。移動電極42と慣性体41が交差する地点を基にして、移動電極42〜45の長さを変数l、慣性体41の長手方向をy軸方向、最短の移動電極45の長さをb、移動電極42〜45の端部を連結する線の傾斜をaとするとき、l=ay+bの関係が成立する。そして、フィンガ間のピッチがpならば、隣接するフィンガ間の長さの差はapとなる。例えば、電極45の長さはbであり、電極44の長さはb+apである。
【0036】
有効剛性制御用電極46は第2の支持端47′に支持されており、同一の長さを有するフィンガ型である。有効剛性制御用電極46のフィンガと移動電極42〜45のフィンガは相互に噛み合っている。このような振動構造物に作用する電気力Fは噛み合うフィンガの数のみに関系していて、フィンガ間の距離をs、フィンガの厚さをt、電源供給装置49により印加される電圧をVとするとき、次のような式で表される。
F=ε(at/ps)V2 x …(8)
また、振動構造物の有効剛性keff は、
eff =k−ε(at/ps)−V2 …(9)
のように表される。
【0037】
式(8)及び(9)から判るように、図4に示した振動構造物の有効剛性は慣性体41の水平方向運動とは無関係であり、電気力は慣性体41の変位に対して線形的に変化するので、印加電圧を変更することにより固有振動数を制御することができる。また、移動電極の長さを同一にし、有効剛性制御用電極46の長さを線形的に変化させる場合にも類似な結果をえることができる。
【0038】
図5は本発明の振動構造物の第4の実施の形態を示し、この振動構造物は慣性体の変位に応じて電気力が線形的に変化する。図5(a)に示すように、弾性部材52を介して第1の支持端51に支持された慣性体または移動電極53は四角形の平板型であり、第2の支持端51′により支持された有効剛性制御用電極54は三角形の平板部を有する。電源供給装置55は移動電極53と有効剛性制御用電極54との間に電圧を印加して電気力を発生させる。慣性体または移動電極53は有効剛性制御用電極54の三角形部分内でX軸方向の変位を起こす。
【0039】
図5(b)に示すように、移動電極53と有効剛性制御用電極54が重なる領域56は、移動電極53のX軸方向の変位に対して線形的に変化する。有効剛性制御用電極54の三角形部分の頂点を平面座標系の原点とし、三角形の一辺の傾斜をa、有効剛性制御用電極54と移動電極53とのZ軸方向の距離をhとすると、電源供給装置55により電圧Vが印加されるとき、X軸方向に作用する電気力は次の式のようになる。
【0040】
F=a(ε/h)V2 x …(10)
また、図5(a)に示す振動構造物の有効剛性は次のように表せる。
eff =k−a(ε/h)V2 …(11)
【0041】
式(10)及び(11)から判るように、振動構造物に作用する電気力は移動電極53の変位に応じて線形的に変化するので、印加電圧を変化させるだけで固有振動数の制御が可能である。図6及び図7は図5に示す振動構造物を変形させた本発明の振動構造物の第5及び第6の実施の形態を示す。
【0042】
図6を参照すると、慣性体63の両端は支持端61に対して弾性部材62により支持され、慣性体63には一つ以上のスリット64が形成されている。慣性体63は有効剛性制御用電極65から所定の距離に離隔されている。有効剛性制御用電極65は三角形が一辺を接する状態で形成された四角形をなす。ここで三角形は二等辺三角形のものが望ましく、二等辺三角形の下辺が接する四角形をなすことが望ましい。電源供給装置66は有効剛性制御用電極65と慣性体63との間に電圧を印加する。
【0043】
このような構成を有する振動構造物において、慣性体63が振動する場合、慣性体63に形成されたスリット64により有効剛性制御用電極65と慣性体63が重なる部分は、点線で表される三角形状を保つ。したがって、振動構造物に作用する電気力は慣性体63の変位に応じて線形的に変化する。
【0044】
図7に示す振動構造物も図6に示したものと類似であるが、この場合は有効剛性制御用電極75の三角形部分がスリット74と重なる。この場合も振動構造物に印加される電気力は慣性体のx方向の変位に対して線形的に変化する。図7の慣性体73の両端は支持端71に対して弾性部材72により支持され、慣性体73には少なくとも一つのスリット74が形成されている。慣性体73は有効剛性制御用電極75から所定の距離に離隔されていて、電源供給装置76は有効剛性制御用電極75と慣性体73との間に電圧を印加する。
【0045】
図8は図5の振動構造物を変形した第7の実施の形態を示すものである。図8に示すように、慣性体83は弾性部材82により第1の支持端81に固定され、同一の長さの平板型の移動電極84が慣性体83に多数取り付けられている。移動電極84の端部は三角形状を有している。ここで、三角形は二等辺三角形であることが望ましい。第2の支持端81′には同一の長さを有する有効剛性制御用電極85が多数固定されており、有効剛性制御用電極85も平板型であり慣性体83の振動により移動電極84の間に挿入される。慣性体83の変位は移動電極84の端部に形成された三角形部分のみが有効剛性制御用電極85に重なるように制限することが望ましい。電源供給装置87は有効剛性制御用電極85と移動電極84との間に電圧を印加する。この振動構造物においても、印加電圧を変化させるだけで固有振動数の制御が可能である。
【0046】
図9は前述した振動構造物の多様な実施の形態を一般化して示した振動構造物の構成図である。この振動構造物は第1の支持端101により支持された弾性部材102と、この弾性部材の一端に固定された慣性体または移動電極103と、第2の支持段101′に固定された有効剛性制御用電極105と、電圧を印加する電源供給装置104とを備える。移動電極103または有効剛性制御電極105は振動構造物に発生する電気力が慣性体の変位に応じて線形的に変化するように所定の形状で形成される。移動電極103と有効剛性制御用電極105の間の静電容量をcとし、c=αs2 +βs+γ(α、β、γは定数)とするとき、、二つの電極の間に作用する電気力は次のように表すことができる。
F=1/2(dc/ds)V2 =1/2(2αs+β)V2 …(12)
式(12)において、dc/dsは電極間の静電容量の感度であり、sは二つの電極の相対的な動きによる距離であり、Vは印加電圧である。式(12)から判るように、電極は印加電圧Vが一定の場合、電極間の距離sに対して線形的に変化する。
【0047】
振動構造物の有効剛性は次のような式で表される。
eff =k−(1/2)αV2 …(13)
式(13)から明らかなように、振動構造物の有効剛性は印加電圧Vに応じて変化するので、振動構造物の固有振動数は印加電圧の大きさを変化することにより制御することができる。
【0048】
図10乃至図12に本発明の電圧により振動構造物の共振周波数を制御することができるアクチュエータの実施の形態を示す。上述した振動構造物は多方向に振動する振動構造物の固有振動数の制御にも用いられ、共振型のセンサにも利用可能である。この振動構造物はシリコン基板上に薄膜技術を用いて製作される。
【0049】
図10はアクチュエータの概略平面図である。図示のように、アクチュエータ309では、支持端111により支持された弾性部材112の他の端部には慣性体113が懸架されている。慣性体113は弾性部材112により基板(図示せず)から所定の間隔に離隔されている。慣性体113には駆動電極114と移動電極117がフィンガ型に形成されており、慣性体113は加振装置により平面移動することができる。加振装置は加振部115に形成された加振電極116を備え、加振電極116はフィンガ型であり慣性体113に形成されたフィンガ型の駆動電極114の間に挿入されている。
【0050】
加振電極116と駆動電極114との間に印加された電圧は電気力を発生させて慣性体113を平面振動させる。加振装置116と駆動電極114との間に発生する電気力は慣性体113の変位にかかわらず一定である。これは図1(a)に示す第1の実施の形態においてから誘導された式(3)におけるs0 =s1 の場合に当たる。加振電極116と駆動電極114は慣性体113の平面振動運動状態を検知する検知手段として相互に用いることができる。
【0051】
複数の有効剛性制御用電極118が支持端119に固定され、各々の有効剛性制御用電極の形状は図1(a)に示した有効剛性制御用電極のものと類似である。有効剛性制御用電極118もフィンガ型に形成されいて、慣性体113の移動電極117の間に挿入される。電源供給装置120は有効剛性制御用電極118と移動電極117との間に電圧を印加して電気力を発生させる。有効剛性制御用電極118が所定の形状で製作されるので、慣性体113の変位に応じて移動電極117と有効剛性制御用電極118に印加される電気力は線形に変化する。
【0052】
図11は図4及び図6に示した振動構造物を適用したアクチュエータである。図11に示すように、慣性体132は弾性部材139により支持端131に支持されて基板(図示せず)から所定の距離に上方に離隔されている。慣性体132の両側には駆動電極134がフィンガ型に形成されている。そして、支持端135にフィンガ型に形成された加振電極136が駆動電極134の間に挿入される。駆動電極134と加振電極136との間に印加される電圧は慣性体132をX軸方向に平面運動させる。駆動電極134と加振電極136は慣性体132の平面運動を検知する検知手段として用いられる。
【0053】
慣性体132にはスリット133が形成されており、スリット133の下部には有効剛性制御用電極137が基板に固定されている。図6を参照して説明したように、有効剛性制御用電極137は三角形の一辺を相互に接して形成された四角形であり、三角形は二等辺三角形のものが望ましい。電源供給装置138により慣性体132と有効剛性制御用電極137との間に電圧が供給されて電気力が発生する。慣性体132がX軸方向に振動するとき、慣性体132と有効剛性制御用電極137が重なる部分は常時三角形となる。
【0054】
図12は慣性体が回転振動する場合を示す平面図である。慣性体153は円形であり、弾性部材152により円周面に沿って90°の間隔で支持端151により支持されており、慣性体153は基板(図示せず)から所定の間隔に上方に離隔されている。図示しない手段により慣性体153は回転振動する。慣性体153にはスリット154が形成されており、スリット154の下部には有効剛性制御用電極155が基板に固定されている。電源供給装置157は慣性体153と有効剛性制御用電極155との間に電圧を印加する。ここで、スリット154は慣性体153の中心を基にして180°の間隔で形成されている。スリット154の下部に配置された有効剛性制御用電極155も三角形の一辺を相互に接する四角形の形態を有し、慣性体153が回転振動するとき、慣性体と有効剛性制御用電極155が重なる部分は三角形を形成する。
【0055】
ここでは、本発明の振動構造物をアクチュエータに適用した例を示したが、本発明の振動構造物はこれに限定されることはなく、例えば、センサ装置や加速度系またはジャイロスコープなどの多様な装置に適用することができる。
【0056】
【発明の効果】
以上、詳述したように、本発明の振動構造物によれば、振動構造物の移動電極及び有効剛性制御用電極は所定の形状で形成され、電極の間に発生する電気力は慣性体の変位に応じて線形的に変化する。従って、振動構造物の有効剛性は慣性体の変位に関わらず、印加電圧を変化することにより振動構造物の固有振動数を制御することができる。このような振動構造物を備えるセンサ装置、アクチュエータ、加速度系などは感度や作動範囲を使用者が任意に変更させることができる。特に、ジャイロスコープの場合、2軸振動構造物においていずれか一軸の固有振動数をもう一軸の固有振動数に一致させる振動数の制御が、振動構造物自体を変更せずに印加電圧を変更させるだけで可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る振動構造物の第1の実施の形態を示す構成図である。
【図2】図1の振動構造物の慣性体の変位に対する弾性力及び電気力のグラフと等価振動構造物を示す構成図である。
【図3】本発明に係る振動構造物の第2の実施の形態を示す構成図である。
【図4】本発明に係る振動構造物の第3の実施の形態を示す構成図である。
【図5】本発明に係る振動構造物の第4の実施の形態を示す構成図である。
【図6】本発明に係る振動構造物の第5の実施の形態を示す構成図である。
【図7】本発明に係る振動構造物の第6の実施の形態を示す構成図である。
【図8】本発明に係る振動構造物の第7の実施の形態を示す構成図である。
【図9】本発明に係る振動構造物を一般化して示す構成図である。
【図10】本発明に係る振動構造物を備えるアクチュエータの示す構成図である。
【図11】本発明に係る振動構造物を備えるアクチュエータを示す構成図である。
【図12】本発明に係る振動構造物を備える回転型アクチュエータを示すの構成図である。
【図13】従来の振動構造物と振動構造物の固有振動数のグラフを示す図である。
【符号の説明】
22,38,48,52,62,72,82,102,112,139,152…弾性部材
23,36,41,63,73,83,113,132,153…慣性体
24,33,46,54,65,75,85,105,118,137,155…有効剛性制御用電極
28,35,42〜45,53,84,103,117…移動電極
27,37,49,55,66,76,87,104,120,138,157…電源供給装置

Claims (11)

  1. 第1の支持端に一端が連結された弾性部材と、
    前記弾性部材の弾性力により振動する慣性体と、
    前記慣性体に取り付けられた移動電極と、
    第2の支持端に連結された有効剛性制御用電極と、
    前記移動電極と前記有効剛性制御用電極との間に電気力を発生させる電源供給装置と、
    を備え、
    前記移動電極と前記有効剛性制御用電極はフィンガ型であり、前記慣性体の振動により相互に挿入可能であり、前記有効剛性制御用電極は前記第2の支持端からx1 の長さに延びる略テーパ状の曲線部と該曲線部の終了地点から電極の端部まで延びる直線部とを有し、
    前記移動電極から前記有効剛性制御用電極の前記直線部までの距離をs0 、前記第2支持端における前記移動電極から前記有効剛性制御用電極までの距離をs1 とするとき、前記慣性体の変位xに対する前記移動電極から前記有効剛性制御用電極の曲線部までの距離sは、
    の式で与えられることを特徴とする振動構造物。
  2. 第1の支持端に一端が連結された弾性部材と、
    前記弾性部材の弾性力により振動する慣性体と、
    前記慣性体に取り付けられた移動電極と、
    第2の支持端に連結された有効剛性制御用電極と、
    前記移動電極と前記有効剛性制御用電極との間に電気力を発生させる電源供給装置と、
    を備え、
    前記移動電極は半径ri を有する棒形であり、前記有効剛性制御用電極はテーパ状に環状の断面を有するテーパ状に形成された中空の円筒であり、
    前記慣性体の振動により前記移動電極は前記有効剛性制御用電極内に挿入可能であり、
    前記慣性体の変位をxとし、前記有効剛性制御用電極の内径と前記移動電極の半径ri との差をsとするとき、前記有効剛性制御用電極の全体長をx1 、前記有効剛性制御用電極の端部における前記有効剛性制御用電極の内径と前記移動電極の半径ri との差をs0 、前記第2の支持端における前記有効剛性制御用電極の内径と移動電極の半径との差をs1 とすると、
    の式を満たすことを特徴とする振動構造物。
  3. 第1の支持端に一端が連結された弾性部材と、
    前記弾性部材の弾性力により振動する慣性体と、
    前記慣性体に取り付けられた移動電極と、
    第2の支持端に連結された有効剛性制御用電極と、
    前記移動電極と前記有効剛性制御用電極との間に電気力を発生させる電源供給装置と、
    を備え、
    前記移動電極と前記有効剛性制御用電極は複数のフィンガ型であり、前記慣性体の振動により相互に挿入可能であり、前記有効剛性制御用電極の各フィンガは長さが同一であり、前記移動電極のフィンガは一端が相互に連結され、前記移動電極の最長フィンガの長手方向に対して線対称の形状を有することを特徴とする振動構造物。
  4. 第1の支持端に一端が連結された弾性部材と、
    前記弾性部材の弾性力により振動する慣性体と、
    前記慣性体に取り付けられた移動電極と、
    第2の支持端に連結された有効剛性制御用電極と、
    前記移動電極と前記有効剛性制御用電極との間に電気力を発生させる電源供給装置と、
    を備え、
    前記移動電極と前記有効剛性制御用電極は平板型であり所定の距離に相互に離隔して平行に配置され、前記慣性体または前記移動電極の変位に応じて前記移動電極と前記有効剛性制御用電極が重なる部分が三角形をなすことを特徴とする振動構造物。
  5. 前記移動電極と前記有効剛性制御用電極が重なる部分は二等辺三角形をなすことを特徴とする請求項記載の振動構造物。
  6. 第1の支持端に一端が連結された弾性部材と、
    前記弾性部材の弾性力により振動する慣性体と、
    前記慣性体に取り付けられた移動電極と、
    第2の支持端に連結された有効剛性制御用電極と、
    前記移動電極と前記有効剛性制御用電極との間に電気力を発生させる電源供給装置と、
    を備え、
    前記慣性体は少なくとも一つのスリットが形成された平板型であり、前記有効剛性制御用電極は平板型であり、前記慣性体は前記有効剛性制御用電極から所定の距離に離隔して平行に配置され、前記慣性体と前記有効剛性制御用電極が重なる部分が三角形をなすことを特徴とする振動構造物。
  7. 第1の支持端に一端が連結された弾性部材と、
    前記弾性部材の弾性力により振動する慣性体と、
    前記慣性体に取り付けられた移動電極と、
    第2の支持端に連結された有効剛性制御用電極と、
    前記移動電極と前記有効剛性制御用電極との間に電気力を発生させる電源供給装置と、
    を備え、
    前記移動電極は三角形の端部を有し、相互に所定の距離に平行に離隔された複数のフィンガを備え、前記有効剛性制御用電極は相互平行に離隔された複数のフィンガを備え、前記移動電極のフィンガの各々は前記慣性体の振動により前記有効剛性制御用電極のフィンガの間に挿入されることを特徴とする振動構造物。
  8. 第1の支持端に一端が連結された弾性部材と、前記弾性部材の弾性力により振動する慣性体と、前記慣性体に取り付けられた所定形態の移動電極と、第2の支持端に連結された所定の形状を有する有効剛性制御用電極と、前記移動電極と前記有効剛性制御用電極との間に電気力を発生するように電圧を印加する電源供給装置とを備える振動構造物の固有振動数の制御方法であって、
    前記慣性体の変位に対して前記電気力が線形的に変化することにより前記移動電極と前記有効剛性制御用電極との間に印加される電圧を変化させて、前記固有振動数を制御する請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の振動構造物の固有振動数の制御方法。
  9. 支持端に一端が支持された弾性部材と、前記弾性部材の弾性力により振動する慣性体と、前記慣性体に加振し、前記慣性体の振動を検知する手段と、前記慣性体の一側にフィンガ型に形成された移動電極と、前記移動電極の間に挿入されるように請求項1に記載のフィンガ型に形成された有効剛性制御用電極と、前記移動電極と前記有効剛性制御用電極との間に電圧を印加する電源供給手段とを備え、
    前記慣性体の変位に対して前記電気力が線形的に変化することを特徴とするアクチュエ−タ。
  10. 支持端に一端が支持された弾性部材と、
    前記弾性部材の弾性力により振動し、少なくとも一つのスリットが形成された平板型の慣性体と、
    前記慣性体を加振して、前記慣性体の振動を検知する加振手段と、
    前記平板型慣性体から所定の距離離隔して配置され、前記慣性体と三角形に重なる平板型の有効剛性制御用電極と、
    前記慣性体と前記有効剛性制御用電極との間に所定の電圧を印加する電源供給手段とを備えることを特徴とするアクチュエータ。
  11. 支持端に一端が支持された弾性部材と、
    前記弾性部材の弾性力により回転し、少なくとも一つのスリットが形成された円形の平板状の慣性体と、
    前記慣性体を加振して、前記慣性体の振動を検知する加振手段と、
    前記慣性体から所定の距離離隔して配置され、前記慣性体と三角形に重なる有効剛性制御用電極とを備えることを特徴とするアクチュエータ。
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