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JP3873865B2 - 環状オレフィン系重合体系フィルムまたはシートの製造方法、および環状オレフィン系重合体系フィルムまたはシート - Google Patents

環状オレフィン系重合体系フィルムまたはシートの製造方法、および環状オレフィン系重合体系フィルムまたはシート Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、環状オレフィン系重合体系フィルムまたはシートの製造方法および係る製造法により得られるフィルムまたはシートに関する。さらに詳しくは、特定の環状オレフィン系重合体が溶解する溶媒(I)の雰囲気下に該環状オレフィン系重合体を含むフィルムまたはシートを曝すことを特徴とするフィルムまたはシートの製造方法、および係る製造方法により得られる高耐熱性、高透明性で低複屈折性に優れ、光学材料用途に好適なフィルムまたはシートに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、液晶表示ディバイスの高性能化、高密度化、小型化に伴い、光学材料用途の透明樹脂に対して、高透明性、高耐熱性、低複屈折性などの特性が要求されている。
【0003】
このため、透明性・耐熱性に優れたポリマーとしてノルボルネン系付加重合体が知られている。しかし、ノルボルネン系付加重合体では、ガラス転移温度が180℃以上と非常に高く、押し出し成型法や射出成型法での成形は焼けや着色劣化を伴うため困難である。このため、通常は、フィルムまたはシートの製造方法として溶液キャスト法(流延法)が採用されてきた。しかし、この製造方法では、溶媒を揮発させる工程でフィルムまたはシートに歪みが発生し、複屈折が発生してしまうことが避けられない。
従来、プラスチック成形品の内部歪み(複屈折)を低減する方法としては、例えば、ポリカーボネートや水素化されたノルボルネン系開環重合体のようにガラス転移温度が180℃程度の重合体のフィルムまたはシートでは、ガラス転移温度付近での加熱(アニール)処理が一般的に用いられてきた(特許文献1および2)。しかしながら、ノルボルネン系付加重合体のようにガラス転移温度が180℃以上のものの場合、熱処理温度が高くなるため、フィルムまたはシートが熱劣化し着色や機械的強度の低下といった問題が生じることがあり、係る熱処理ができない場合があった。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−156234号公報(特許請求の範囲)
【0005】
【特許文献2】
特開2000−147202号公報(特許請求の範囲)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ガラス転移温度が180℃を超え、耐熱性・透明性が高くかつ、複屈折が小さい環状オレフィン系付加重合体のフィルムまたはシートの製造方法と係る製造方法により得られるフィルムまたはシートを提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、特定の環状オレフィン系重合体が溶解する溶媒(I)の雰囲気下に該重合体を含むフィルムまたはシートを1分〜120分曝すことにより、フィルムまたはシートの複屈折を低減させる方法に関する。
この方法によれば、波長622nmの光線が垂直に入射した場合、厚み200μm換算で複屈折が10nm以下に低減された光学材料用の環状オレフィン系重合体のフィルムまたはシートが得られる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の環状オレフィン系重合体は下記式(1)で表される構造単位(a)を少なくとも70モル%含む。
【0009】
【化3】
Figure 0003873865
【0010】
[式(1)のA1,A2,A3,A4はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、炭素数4〜15のシクロアルキル基、ハロゲン原子である。また、A1〜A4には、A1とA2、A1とA3またはA2とA4から形成されるアルキレン基も含まれる。rは0〜2の整数を示す。]
【0011】
このような構造単位(a)は下記式(3)で表される環状オレフィン化合物(以下、「特定の単量体(1)」という。)を付加重合することにより、形成される。
【0012】
【化4】
Figure 0003873865
【0013】
[式(3)のA1,A2,A3,A4はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、炭素数4〜15のシクロアルキル基、ハロゲン原子である。またA1〜A4には、A1とA2、A1とA3またはA2とA4から形成されるアルキレン基、アルキリデン基も含まれる。rは0〜2の整数を示す。]
【0014】
式(3)で表される「特定の単量体(1)」の具体例としては、
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−プロピル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ペンチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ヘプチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−オクチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−デシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ドデシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−シクロヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−シクロオクチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フロロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−クロロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
トリシクロ[4.2.0.15,8]ノナ−2−エン、
1−メチルトリシクロ[4.2.0.15,8]ノナ−2−エン、
6−メチルトリシクロ[4.2.0.15,8]ノナ−2−エン、
トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エン、
3−メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エン、
4−メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エン、
トリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ−9−エン、
1−メチルトリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ−9−エン、
3−メチルトリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ−9−エン、
1−エチルトリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ−9−エン、
3−エチルトリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ−9−エン、
トリシクロ[8.2.1.02,9]トリデカ−11−エン、
1−メチルトリシクロ[8.2.1.02,9]トリデカ−11−エン、
5−メチルトリシクロ[8.2.1.02,9]トリデカ−11−エン、
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メチル−テトラシクロ[4.4.0.12,57,10]ドデカ−3−エン、
8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,57,10]ドデカ−3−エン、
などが挙げられる。
【0015】
また、
5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(1−ブテニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−3,8−ジエン、
1−メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−3,8−ジエン、
1−エチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−3,8−ジエン、
などの環状ジオレフィン系化合物を付加重合し、しかる後、側鎖に存在する環状オレフィン性不飽和結合を水素化することにより、構造単位(a)とすることができる。
【0016】
これらの「特定の単量体(1)」のうち好ましいものは、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンまたはトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エンである。なお、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エンには、endo体およびexo体の立体異性体が存在するが、本発明においては、endo体を使用した方が最終的に得られるフィルムまたはシートの靱性が高まるため好ましく、少なくともendo体含量が80%以上のトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エンを使用することが好ましい。
また、endo体のトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−3,8−ジエンを用いて付加重合し、しかる後側鎖に残存する環状オレフィン性不飽和結合を水素化する方法も同様に好ましい。この場合でも、endo体含量は80%以上であることが好ましい。
これらを用いて得られる環状オレフィン系重合体は、透明性、耐熱性が優れるだけでなく、低吸水性、低誘電性、および高い靭性を有する重合体となる。
なお、「特定の単量体(1)」は1種または2種以上、用いることができる。
【0017】
本発明の環状オレフィン系重合体は、構造単位(a)以外に、下記式(2)で表される構造単位(b)を含むことができる。構造単位(b)は、下記式(4)で表される環状オレフィン(以下、「特定の単量体(2)」という。)を付加重合することにより、形成される。
【0018】
【化5】
Figure 0003873865
【0019】
[式(2)中、B1〜B4はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリ−ル基、ハロゲン化アルキル基、加水分解性シリル基または−(CH2jXで表される極性基を示し、B1〜B4の少なくとも一つは加水分解性シリル基または−(CH2jXで表される極性基を含む。ここで、Xは−C(O)OR1または−OC(O)R2であり、R1,R2は炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、またはおれらのハロゲン置換体からなる基から選ばれた置換基、jは0〜3の整数である。また、B1〜B4には、B1とB3またはB2とB4から形成されるアルキレン基、B1とB2またはB3とB4から形成されるアルキリデニル基も含まれる。pは0〜2の整数を示す。
【0020】
【化6】
Figure 0003873865
【0021】
[式(4)中、B1〜B4は式(2)と同一である。pは0〜2の整数を示す。]
【0022】
このような「特定の単量体(2)」の具体例としては、例えば以下の化合物が挙げられるが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ブトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−エトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−プロポキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−ブトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−トリフロロメトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5−イルメチルカルボン酸エチル、
アクリル酸−1−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−3−エン、
メタクリル酸−1−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−3−エン、
5,6−ジ(メトキシカルボニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジ(メトキシカルボニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メチル−8−エトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
5−トリメトキシシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ジメトキシクロロシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メトキシクロロメチルシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ジメトキシクロロシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メトキシヒドリドメチルシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ジメトキシヒドリドシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メトキシジメチルシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−トリエトキシシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ジエトキシクロロシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エトキシクロロメチルシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ジエトキシヒドリドシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エトキシジメチルシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エトキシジエチルシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−プロポキシジメチルシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−トリプロポキシシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−トリフェノキシシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−トリメトキシシリルメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ジメチルクロロシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチルジクロロシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−トリクロロシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ジエチルクロロシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エチルジクロロシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(2−トリメトキシシリル)エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(2−ジメトキシクロロシリル)エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(1−トリメトキシシリル)エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(2−トリメトキシシリル)プロピル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(1−トリメトキシシリル)プロピル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−トリエトキシシリルエチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ジメトキシメチルシリルメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−トリメトキシプロピルシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−(3−トリエトキシシリル)プロポキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−トリエトキシシリル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メチルジメトキシシリル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
【0023】
5−[1’−メチル−2’,5’−ジオキサ−1’−シラシクロペンチル]−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−[1’−メチル−3’,3’,4’,4’−テトラフェニル−2’,5’−ジオキサ−1’−シラシクロペンチル]−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−[1’−メチル−3’,3’,4’,4’−テトラメチル−2’,5’−ジオキサ−1’−シラシクロペンチル]−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−[1’−フェニル−2’,5’−ジオキサ−1’−シラシクロペンチル]−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−[1’−エチル−2’,5’−ジオキサ−1’−シラシクロペンチル]−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−[1’,3’−ジメチル−2’,5’−ジオキサ−1’−シラシクロペンチル]−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−[1’−メチル−3’,4’−ジメチル−2’,5’−ジオキサ−1’−シラシクロペンチル]−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−[1’−メチル−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−[1’−エチル−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−[1’,3’−ジメチル−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−[1’−メチル−4’,4’−ジメチル−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−[1’−メチル−4’,4’−ジメチル−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−[1’−メチル−4’,4’−ジメチル−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−[1’−フェニル−4’,4’−ジメチル−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−[1’−メチル−4’−フェニル−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−[1’−メチル−4’−スピロ−シクロヘキシル−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−[1’−メチル−4’−エチル−4’−ブチル−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−[1’−メチル−3’,3’−ジメチル−5’メチレン−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−[1’−フェニル−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−[1’−メチル−3’−フェニル−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−[1’−メチル−4’,4’−ジメチル−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]−7−オキサ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−[1’−メチル−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]−7−オキサ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−[1’−メチル−2’,7’−ジオキサ−1’−シラシクロヘプチル]−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−[1’−メチル−4’,4’−ジメチル−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]−テトラシクロ[4.4.0.12,57,10]ドデカ−3−エン、
8−[1’−メチル−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]−テトラシクロ[4.4.0.12,57,10]ドデカ−3−エン、
などが挙げられる。これらの「特定の単量体(2)」は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
本発明の環状オレフィン系重合体に含まれる構造単位(b)の割合は、全構造単位中、0.1〜30モル%、好ましくは0.5〜20モル%、さらに好ましくは1〜10モル%である。なお、構造単位(b)の配列は、環状オレフィン系重合体中にランダム状、ブロック状など制限はないが、好ましくはランダム状である。
さらに、側鎖置換基として加水分解性シリル基、エステル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などの反応性置換基を有する構造単位(b)を含む環状オレフィン系付加重合体は、後述する架橋剤を用いることによって本発明の環状オレフィン系重合体のフィルムまたはシートを架橋体とすることができる。
【0025】
上記環状オレフィン系重合体の構造単位(b)の割合が0.1モル%未満では、他の部材との接着・密着性が劣る場合が生じるほか、上記反応性置換基を有する場合に架橋(硬化)させようとしても架橋が困難になる場合が生じる。一方、その割合が30モル%を超えると、吸湿性が大きくなり寸法安定性に劣るフィルムやシートとなることがあるほか、上記反応性置換基を有する場合には、架橋が経時的に進行して寸法や形状の安定性に劣るフィルムやシートとなることがある。
【0026】
本発明の環状オレフィン系重合体には、さらに、「特定のα−オレフィン化合物」を付加重合して得られる構造単位(c)を導入することができる。
【0027】
このような「特定のα−オレフィン化合物」の具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、トリメチルシリルエチレン、トリエチルシリルエチレン、スチレンなどが挙げられるが好ましくはエチレンである。
【0028】
「特定のα−オレフィン化合物」に由来する繰り返し単位(c)を重合体に導入することにより、本発明の環状オレフィン系重合体のガラス転移温度を制御することができる。本発明の環状オレフィン系重合体に含まれる繰り返し単位(c)の割合は、0〜30モル%、好ましくは0〜20モル%である。なお、繰り返し単位(c)の割合が30モル%を超えると、本発明の環状オレフィン系重合体のガラス転移温度が170℃以下と低くなり、耐熱性が低下することがあり好ましくない。
【0029】
本発明の環状オレフィン系重合体の分子量は、ポリスチレン換算で表され、数平均分子量が10,000〜300,000、重量平均分子量が20,000〜700,000、好ましくは数平均分子量が20,000〜200,000、重量平均分子量が50,000〜500,000、さらに好ましくは数平均分子量が50,000〜150,000、重量平均分子量が100,000〜300,000である。数平均分子量10,000未満、重量平均分子量が20,000未満の場合には、フィルムまたはシートとしたときに靭性に劣り割れやすいものとなることがある。一方、数平均分子量が300,000、重量平均分子量が700,000を超えると、溶液粘度が高くなり、溶液キャスト法による製膜の作業性や得られたフィルムまたはシートの表面などが悪くなることがある。
【0030】
また、本発明の環状オレフィン系重合体のガラス転移温度は、未架橋の状態で180〜450℃、好ましくは200〜400℃である。該重合体のガラス転移温度が180℃未満では耐熱性が不十分で、一方、450℃を超えるとフィルム、シートとして靭性がなく割れやすいものとなることがある。
【0031】
本発明の環状オレフィン系重合体は、「特定の単量体(1)」を主として用い、必要に応じて架橋形成または接着・密着付与のために「特定の単量体(2)」を用い、さらに必要に応じてガラス転移温度の制御のために「特定のα−オレフィン化合物」を用いて製造される。
以下、その製造法について説明する。
【0032】
重合触媒としては、下記[1]、[2]、[3]に挙げられるパラジウム、ニッケル、コバルト、チタンおよびジルコンなどの単一錯体触媒や多成分系触媒が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
[1] Pd、Niなどの単一錯体触媒
[Pd(CH3CN)4][BF42、[Pd(PhCN)4][SbF6]、
[(η3−クロチル)Pd(シクロオクタジエン)][PF6]、
[(η3-crotyl)Ni(cycloocta-1,5-diene)][B(3,5-(CF3)2C6F3)4]、
[(η3-crotyl)Ni(cycloocta-1,5-diene)][PF6]、
[(η3-allyl)Ni(cycloocta-1,5-diene)][B(C6F5)4]、
[(η3-crotyl)Ni(cycloocta-1,5-diene)][SbF6]、
Toluene・Ni(C6F5)2、Benzene・ Ni(C6F5)2 、Mesitylene・ Ni(C6F5)2
Ethylether・ Ni(C6F5)2
【0034】
[2] σまたはσ,π結合を有するパラジウム錯体と有機アルミニウムまたは超強酸塩の組み合わせによる多成分系触媒
ジ−μ−クロロ-ビス(6−メトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−エンド−5σ,2π)Pd、
とメチルアルモキサン(MAOと略す)、AgSbF6、AgBF4、から選ばれた化合物との組み合わせ。
[(η3−アリール)PdCl]2とAgSbF6またはAgBF4、との組み合わせ。
[(1,5−シクロオクタジエン)Pd(CH3)Cl]とPPh3とNaB[3,5−(CF3)2C6H34 との組み合わせ。
などの組み合わせが挙げられる。
【0035】
[3]以下に示した、1)ニッケル化合物、コバルト化合物、チタン化合物またはジルコン化合物から選ばれた遷移金属化合物、2)超強酸、ルイス酸およびイオン性ホウ素化合物から選ばれた化合物、ならびに 3)有機アルミニウム化合物、を含む多成分系触媒
【0036】
1)遷移金属化合物
1)−1 ニッケル化合物、コバルト化合物:
以下に挙げる群から選ばれた少なくとも1種の化合物、ニッケルまたはコバルトの有機カルボン酸塩、有機亜リン酸塩、有機リン酸塩、有機スルホン酸塩、β−ジケトン化合物などから選ばれた化合物。
例えば、2−エチルヘキサン酸ニッケル、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸コバルト、オレイン酸ニッケル、ドデカン酸ニッケル、ドデカン酸コバルト、ネオデカン酸コバルト、ドデシルベンゼンスルホン酸ニッケル、ビス(アセチルアセトナート)ニッケル、ビス(エチルアセトアセテート)ニッケルなど。
・上記のニッケルの有機カルボン酸塩を六フッ化アンチモン酸、四フッ化ホウ素酸、トリフロロ酢酸、六フッ化アセトンなどの超強酸で変性した化合物、
・ニッケルのジエンもしくはトリエン配位錯体、例えば、
ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル、
[(η3−クロチル)(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル]ヘキサフロロホスフェート、およびそのテトラフロロボレート、テトラキス[3,5−ビス(トリフロロメチル)]ボレート錯体、
5,9−シクロドデカトリエン)ニッケル、ビス(ノルボルナジエン)ニッケル、
ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル
などのニッケル錯体、
ニッケルにP、N、Oなどの原子を有する配位子が配位した錯体、例えば、
ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロライド、
ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジブロマイド、
ビス(トリフェニルホスフィン)コバルトジブロマイド、
ビス[N−(3−t−ブチルサリシリデン)フェニルアミネート]ニッケル、
Ni[PhC(O)CH](Ph)、
Ni(OC(C64)PPh)(H)(PCy3)、
Ni[OC(O)(C64)P](H)(PPh3)、
ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケルとPhC(O)CH=PPh3との反応物、
6−(i−Pr)263N=CHC63(O)(Anth)](Ph)(PPh3)Niなどのニッケル錯体
(ここで、Anthは9−anthracenyl、Phはphenyl、Cyはcyclohexylの略称である。)
が挙げられる。
【0037】
1)−2 チタン化合物、ジルコン化合物:
[t-BuNSiMe(Me4Cp)]TiCl2、(Me4Cp)(O-iPr2632TiCl、(Me4Cp)TiCl3
(Me4Cp)Ti(OBu)3、[t-BuNSiMeFlu]TiMe2、[t-BuNSiMeFlu]TiCl2
Et(Ind)2ZrCl2、Ph2C(Ind)(Cp)ZrCl2
iPr(Cp)(Flu)ZrCl2、 iPr(3-tert-But-Cp)(Ind)ZrCl2
iPr(Cp)(Ind)ZrCl2、 Me2Si(Ind)2ZrCl2、Cp2ZrCl2
[CpはCyclopentadienl、IndはIndenyl、FluはFluorenylの略称である。]
などが挙げられる。
【0038】
2)超強酸、ルイス酸化合物およびイオン性ホウ素化合物から選ばれた化合物
超強酸としては、例えば、ヘキサフロロアンチモン酸、ヘキサフロロリン酸、ヘキサフロロ砒酸、トリフロロ酢酸、フロロ硫酸、トリフロロメタンスルホン酸、テトラフロロホウ酸、テトラキス(ペンタフロロフェニル)ホウ酸、テトラキス[3,5−ビス(トリフロロメチル)フェニル]ホウ酸、p−トルエンスルホン酸、ペンタフロロプロピオン酸などが挙げられる。
ルイス酸化合物としては、例えば、三フッ化ホウ素とエーテル、アミン、フェノールなどとの錯体、三フッ化アルミニウムのエーテル、アミン、フェノールなどの錯体、トリス(ペンタフロロフェニル)ボラン、トリス[3,5−ビス(トリフロロメチル)フェニル]ボラン、などのホウ素化合物、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムフロライド、トリ(ペンタフロロフェニル)アルミニウムなどのアルミニウム化合物、ヘキサフロロアセトン、ヘキサクロロアセトン、クロラニル、ヘキサフロロメチルエチルケトン
などのルイス酸性を示す有機ハロゲン化合物、その他、四塩化チタン、ペンタフロロアンチモンなどのルイス酸性を示す化合物などが挙げられる。
イオン性ホウ素化合物としては、例えば、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
トリフェニルカルベニウムテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、
トリフェニルカルベニウムテトラキス(2,4,6−トリフルオロフェニル)ボレート、
トリフェニルカルベニウムテトラフェニルボレート、
トリブチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N−ジフェニルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート
などが挙げられる。
【0039】
3)有機アルミニウム化合物
例えば、メチルアルモキサン、エチルアルモキサン、ブチルアルモキサンなどのアルキルアルモキサン化合物、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムフルオライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライドなどのアルキルアルミニウム化合物およびハロゲン化アルキルアルミニウム化合物、または上記アルキルアルモキサン化合物と上記アルキルアルミニウム化合物との混合物などが好適に使用される。
【0040】
これら単一錯体触媒または多成分系触媒の成分は、以下の範囲の使用量で用いられる。
ニッケル化合物、パラジウム化合物、コバルト化合物、チタニウム化合物およびジルコニウム化合物などの遷移金属化合物は単量体1モルに対して、0.02〜100ミリモル原子、有機アルミニウム化合物は遷移金属化合物1モル原子に対して1〜5,000モル、また超強酸、ルイス酸、イオン性ホウ素化合物は遷移金属化合物の1モル原子に対して0〜100モルである。
【0041】
本発明の環状オレフィン系重合体は、上記成分からなる単一錯体触媒または多成分系触媒を用い、シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタンなどの脂環式炭化水素溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素溶媒、トルエン、ベンゼン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素溶媒、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素溶媒などから、1種または2種以上選ばれた溶媒中で、−20〜120℃の温度範囲で重合を行うことにより得られる。
【0042】
本発明のフィルムまたはシートは、通常、溶液キャスト法を用いて以下の手順で製造されるが、本発明はこの手順に限定されるものではない。すなわち、本発明のフィルムまたはシートは、上記特定環状オレフィン系重合体、酸化防止剤、必要に応じて添加される架橋剤、その他添加剤を含む溶液を用いて、溶液キャスト法によるフィルムまたはシートを製造し、必要に応じてフィルムまたはシートの架橋処理し、次いでフィルムまたはシートを溶媒(I)の雰囲気下に曝し、次いでフィルムまたはシートの残留溶媒の除去することにより製造される。
また、溶融押出法を用いて得られたフィルムまたはシートを溶媒(I)の雰囲気下に曝すことによっても製造することが可能である。
【0043】
本発明において、環状オレフィン系重合体のフィルムまたはシートを溶液キャスト法により製造するために用いる溶媒としては、該環状オレフィン系重合体が溶解し均一相を形成するもの(以下、「良溶媒」ともいう。)であれば特に制限はないが、好ましくは25℃において固形分濃度が20重量%でも均一に溶解できるもので、さらに、1気圧下での沸点が30〜200℃、好ましくは70〜150℃、より好ましくは80〜130℃のものである。
【0044】
沸点の低い溶媒はフィルムまたはシートを形成する際、乾燥しやすいが、溶媒の揮発が速すぎ、表面のムラができやすい。一方、沸点の高い溶媒は乾燥しにくいがフィルムまたはシートの表面のムラはできにくい。このため、沸点の異なる良溶媒2種以上からなる混合溶媒を用いてもよい。
また、該環状オレフィン系重合体が析出しない範囲内で、該環状オレフィン系重合体を溶解しない溶媒(以下、「貧溶媒」ともいう。)を良溶媒に添加してもよい。さらに、得られたフィルムまたはシートを貧溶媒の蒸気雰囲気下に曝すことにより、フィルムまたはシートの残留溶媒のさらなる除去がなされることもある。
【0045】
上記良・貧溶媒としては、例えば、シクロペンタン、シクロペンテン、メチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘキセンなどの脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼンなどの芳香族炭化水素、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素、テトラヒドロフラン、2−メトキシテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン、エタノール、イソプロピルアルコールブタノールなどのアルコール、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステルなどが挙げられ、本発明の環状オレフィン系重合体の溶解性により、良溶媒もしくは貧溶媒として使用する。
【0046】
本発明の環状オレフィン系重合体のフィルムまたはシートを製造する際のキャスティング組成物には、該重合体、該重合体を溶解する溶媒以外に、架橋剤、酸化防止剤、その他添加剤を含むことができる。
環状オレフィン系重合体のフィルムまたはシートは、キャスティング組成物をキャストした後、溶媒を蒸発・乾燥で除去する工程、または溶媒が除去された後の工程でフィルムまたはシートに対して、該重合体の官能基の種類により異なるが、外部から加熱、活性光線の照射、水または水蒸気暴露などの処理を行うことにより架橋化できる。フィルムまたはシートを架橋化することにより、耐熱性、耐薬品性、靭性、および寸法安定性がさらに向上したものとなる。
以下に、架橋するための具体的方法を例示するが、本発明はこれらの方法に限定されるものではない。
【0047】
本発明の環状オレフィン系重合体のフィルムまたはシートを架橋させる方法は、該重合体に含有される架橋に関わる官能基の種類により異なり、下記のように分類される。
1)側鎖置換基としてアクリロイル基、メタクリロイル基を有する環状オレフィン系重合体の場合、架橋剤として熱や活性光線などによりラジカルを発生させる過酸化物、アゾ化合物などのラジカル発生剤をキャスティング組成物に添加してフィルムまたはシートを製造し、熱や活性光線などを添加したラジカル発生剤に対応する手段でラジカルを発生させて架橋させる。
【0048】
2)側鎖置換基として加水分解性シリル基を有する環状オレフィン系重合体の場合、下記a)〜d)から選ばれた少なくとも1種の化合物をキャスティング組成物に添加してフィルムまたはシートを製造し、対応する加熱処理や活性光線照射処理などにより架橋させる。
a)スズ、アルミニウム、亜鉛、チタニウム、アンチモンなどの金属酸化物、アルコキサイド化合物、フェノキサイド化合物、β−ジケトン化合物、アルキル化合物、ハロゲン化合物、有機酸塩化合物から選ばれた化合物…… 加熱処理
b)対アニオンがBF4,PF4,AsF6,SbF6,B(C654 などから選ばれた芳香族スルフォニウム塩、芳香族アンモニウム塩、芳香族ピリジニウム塩、芳香族ホスフォニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、ヒドラジニウム塩、メタロセンの鉄塩などの、50℃以上に加熱することで酸を発生する化合物…… 加熱処理
c)トリアルキル亜リン酸エステル、トリアリール亜リン酸エステル、ジアルキル亜リン酸エステル、モノアルキル亜リン酸エステル、次亜リン酸エステル、有機カルボン酸の第2級または第3級アルコールのエステル、有機カルボン酸のヘミアセタールエステル、有機カルボン酸のトリアルキルシリルエステルなどで、水または水蒸気の存在下、50℃以上に加熱することで加水分解し、酸を発生する化合物…… 水または水蒸気暴露および加熱処理
d)g線、h線、i線などの紫外線、遠紫外線、X線、電子線などの活性光線照射によりブレンステッド酸、あるいはルイス酸を生成するジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ヨードニウム塩、スルフォニウム塩、ホスフォニウム塩、アルソニウム塩、オキソニウム塩などのオニウム塩、ハロゲン含有オキサジアゾール化合物、ハロゲン含有トリアジン化合物、ハロゲン含有ベンゾフェノン化合物などのハロゲン化有機化合物、その他、キノンジアジド化合物、α,α−ビス(スルフォニル)ジアゾメタン化合物、α−カルボニル−α−スルフォニルジアゾメタン化合物、スルフォニル化合物、有機酸エステル化合物、アミド化合物、有機酸イミド化合物…… 活性光線照射処理
【0049】
3)側鎖置換基としてエステル基、カルボキシル基を有する環状オレフィン系重合体の場合、スズまたはアンチモンのハロゲン化物、アルコキシ化合物、有機カルボン酸塩から選ばれた少なくとも1種の化合物と2〜4官能の多価アルコール化合物または2〜4官能のアミン化合物をキャスティング組成物に添加してフィルムまたはシートを製造し、その後100℃以上に加熱することによりエステル交換反応を進行させて架橋させる。
【0050】
上記の架橋処理の際に用いられる化合物は、本発明の環状オレフィン系重合体100重量部当たり、0.0001〜5.0重量部の範囲で配合して用いられる。
【0051】
本発明における環状オレフィン系重合体には、所望により、他の樹脂やフェノール系やリン系の酸化防止剤、紫外線防止剤など配合することができる。また、コート層の表面粗さを小さくするためには、フッ素系ノニオン界面活性剤、特殊アクリル樹脂系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤などを用いることができる。
これらレベリング剤の添加量は、溶媒と相溶性が良いものが好ましく、キャスティング組成物中の添加量は1〜50,000ppmの範囲である。
【0052】
本発明の環状オレフィン系重合体のキャスティング組成物には、Si、Ti、Al、Zrなどの金属の多官能アルコキシ化合物およびそのオリゴマーから選ばれた少なくとも1種や粒径が200μm以下の微粒子状金属酸化物を含むことができる。これら化合物は、本発明の環状オレフィン系重合体のフィルムまたはシートを製造する際の乾燥工程、およびその後の架橋処理工程の段階で共縮合して、ミクロ充填剤としての作用をする。これら添加剤を加えることにより、フィルムまたはシートの硬さ、弾性率を高めることができる。
【0053】
Si、Ti、Al、Zrの多官能アルコキシ化合物としては、例えば、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、テトラエトキシチタン、テトラエトキシアルミニウム、テトラエトキシジルコンが挙げられ、また、これら化合物のオリゴマーとしては、縮合度が4〜20の化合物を挙げられる。また、金属酸化物としては、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニアの酸化物などが挙げられる。
これらの化合物の添加は、キャスティング組成物を調製する際に行われ、その添加量は環状オレフィン系重合体100重量部に対して、5〜50重量部添加することができる。添加量が5重量部未満では、フィルムまたはシートの硬さ、弾性率を高める効果がなく、一方、50重量部を超えると、フィルムまたはシートの透明性が損なわれる。
【0054】
本発明のキャスティング組成物における環状オレフィン系重合体の溶液濃度は、5〜60重量%、好ましくは10〜40重量%、さらに好ましくは15〜30重量%である。該重合体の濃度が薄いとフィルムまたはシートの厚さの調整が困難であり、一方、濃度が濃すぎると粘度が高くなり、溶液キャスト法による製膜の作業性や得られたフィルムまたはシートの表面性などが悪くなることがある。
【0055】
本発明において、フィルムまたはシートをキャストする方法(製膜するための塗布方法)には特に限定はなく、ポリエステルフィルム、スチールなどの基板上に、はけやブラシを用いた塗布、スプレーによる吹き付け、スクリーン印刷法、フローコーティング、スピンコーティング、ディップ塗装、ロールや平板に塗布するなどの方法を用いて行われる。
【0056】
本発明において、塗布されたキャスティング組成物の乾燥方法には特に限定はなく、長時間の放置もあるが一般的には多段階に乾燥温度を30〜50℃の低温から100〜200℃の高温に昇温し、フィルムまたはシートの残留溶媒が3重量%以下、好ましくは1重量%以下になるまで乾燥する。
【0057】
本発明においては、溶液キャスト法もしくは溶融押出法により得られたフィルムまたはシートを、該フィルムまたはシートに含まれる環状オレフィン系重合体が溶解する溶媒(I)の雰囲気下に曝すことが重要な技術的事項である。ここで、「溶媒(I)の雰囲気下に曝す」とは、溶媒(I)の蒸気もしくは気体と、または、該フィルムもしくはシートに含まれる環状オレフィン系重合体が溶解しない溶媒に溶媒(I)が該フィルムまたはシートに含まれる環状オレフィン系重合体が溶解しない範囲で混合された混合溶媒と、溶液キャスト法もしくは溶融押出法により得られたフィルムまたはシートを接触させることを意味する。
係る溶媒(I)としては、上記キャスティング組成物の調製に用いることができる良溶媒が挙げられる。また、キャスティング組成物の調製に用いた良溶媒と同種の溶媒を溶媒(I)として用いてもよいし、キャスティング組成物調製に用いた良溶媒とは異なる種の良溶媒を溶媒(I)として用いてもよい。さらに、良溶媒を複数種組み合わせて用いることも可能である。
【0058】
溶媒(I)の蒸気または気体と接触させる場合、溶媒(I)の濃度は、処理後のフィルムまたはシートの表面性に影響を与えない範囲である必要があり、通常、1〜85体積%、好ましくは5〜70体積%、さらに好ましくは10〜60体積%である。また、係る処理を行う際の処理温度としては、通常、0〜120℃、好ましくは10〜100℃である。さらに、処理時間としては、通常、1〜120分、好ましくは5〜60分である。
一方、混合溶媒と接触させる場合も、処理後のフィルムまたはシートの表面性に影響を与えないことが必要であり、溶媒(I)の濃度は、通常、0.1〜40重量%、好ましくは0.5〜30重量%、さらに好ましくは1〜25重量%である。また、処理温度は、通常、0〜60℃、好ましくは5〜40℃であり、処理時間としては、通常、1〜120分、好ましくは5〜60分である。
係る処理は、バッチ式方法または連続式方法で行われる。
なお、係る処理は、本発明の未架橋のフィルムまたはシートにも適用できるが、架橋されたフィルムまたはシートである方が、表面性低下や寸法もしくは形状変化が発生しにくいため好ましい。
【0059】
本発明においては、上記溶媒(I)の雰囲気に曝す処理を施したフィルムまたはシートは、再度、乾燥などにより残留溶媒を除去することが好ましい。
係る残留溶媒を除去のために、熱による通常の乾燥のほか、本発明の環状オレフィン系重合体を溶解しない、1気圧下での沸点が100℃以下の溶媒(II)に1分〜1時間浸漬するか、溶媒(II)の蒸気または気体に1分〜1時間曝露した後、50〜150℃で5分から2時間の範囲で乾燥する方法が有効であり、係る処理によりフィルムまたはシート中の残留溶媒を0.1重量%以下にすることができる。
係る溶媒(II)としては、上記キャスティング組成物の調製における貧溶媒のうち、沸点が条件に合致するものを適宜選択できるが、通常、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステルが用いられる。
【0060】
本発明の方法により得られるフィルムまたはシートは、厚さが10〜1,000μm、好ましくは30〜500μmであり、波長622nmの光線を用いて測定される、垂直入射の際の複屈折は、200μmの厚み換算で10nm以下、好ましくは5nm以下である。
【0061】
これらフィルム、シートは、光学材料部品をはじめ、電子・電気部品、包装材料にも使用することができる。なかでも、TFT型LCD、STN型LCD、PDPなどの表示ディバイスの基板などの部品、導光板、保護フィルム、位相差フィルム、タッチパネル、透明電極基板、CD、MD、DVDなどの光学記録基板、などに用いられる。
【0062】
【実施例】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら制限を受けるものではない。なお、環状オレフィン系重合体の分子量、ガラス転移温度、フィルムまたはシートの全光線透過率、引っ張り強度・伸び、および残溶媒量は下記の方法で測定した。
【0063】
(1)分子量
ウォーターズ(WATERS)社製150C型ゲルパーミエションクロマトグラフィー(GPC)装置で東ソー(株)製Hタイプカラムを用い、o−ジクロロベンゼンを溶媒として120℃で測定した。得られた分子量は標準ポリスチレン換算値である。
(2)全光線透過率
ASTM−D1003に準拠し、厚さが200μmのフィルムにして、全光線透過率を測定した。
(3)ガラス転移温度
ガラス転移温度は、動的粘弾性で測定されるTanδ(貯蔵弾性率E’と損失弾性率E”との比 Tanδ=E”/E’)の温度分散のピーク温度で測定した。
動的粘弾性の測定は、レオバイブロンDDV−01FP(オリエンテック製)を用い、測定周波数が10Hz、昇温速度が4℃/分、加振モードが単一波形、加振振幅が2.5μmのものを用いてtanδのピーク温度を測定した。
(4)残溶媒量分析
トルエン以外の残留溶媒量を測定する場合、1gのフィルムをトルエン20mLに溶解または膨潤させて、フィルム中の残留溶媒を抽出し、ガスクロマトグラフィー装置HP−5890(ヒューレット・パッカード社製)にカラムとしてPoraplotQ(ヒューレット・パッカード社製)装着して残留溶媒量を測定した。また、フィルム中の残留トルエン量を測定する場合には、1gのフィルムをシクロヘキサン20mLに溶解または膨潤させて、前記同手法で測定、定量した。(5)フィルムおよびシートの複屈折の測定
回転アナライザー式自動エリプソメーター〔(株)溝尻光学工業所製)〕を用いて楕円偏光解析法により、楕円偏光の位相差Δを測定することで、以下の式(1)よりリターデーションReを計算した。
【0064】
【数1】
Figure 0003873865
【0065】
ここで、k 0は波数( = 2π/λ)、nx,ny,nzはフィルムの3次元屈折率を直交する座標系x,y,zに取った際の各屈折率,dは光路長である。
【0066】
参考例1(フィルムAの作製)
単量体としてビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン 750ミリモル(70.5 g)、endo含有量が95%のトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エン 475ミリモル(63.6 g)、5−トリエトキシシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン 25ミリモル(6.4 g)を溶媒としてシクロヘキサン 562g、塩化メチレン 141g、分子量調節剤としてスチレン 15.0ミリモルを2,000mLの反応容器に窒素下で仕込んだ。予めヘキサン溶液のオクタン酸Niを六フッ化アンチモン酸と−10℃でモル比1:1で反応させ、副生する沈殿したNi(SbF62を除去し、トルエン溶液で希釈したオクタン酸Niの六フッ化アンチモン酸変性体をNi原子として0.25ミリモル、トリエチルアルミニウム 2.50ミリモル、三フッ化ホウ素エチルエーテラート 0.75ミリモルを仕込み、重合を行った。25℃で3時間重合を行い、メタノールで重合を停止した。単量体の共重合体への転化率は80%であった。
【0067】
共重合体溶液に水660mL、乳酸 47.5ミリモルを加えて、攪拌、混合して触媒成分と反応させ、共重合体溶液と水を静止分離した。触媒成分の反応物を含む水相を除去した共重合体溶液を3Lのイソプロピルアルコールに入れて共重合体を凝固し、未反応単量体と残る触媒残さを除去した。凝固した共重合体を乾燥し、共重合体Aを得た。
【0068】
共重合体溶液中の未反応単量体のガスクロマトグラフィー分析から、共重合体A中のトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エンに由来する構造単位の割合は35モル%であった。5−トリエトキシシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンに由来する構造単位の割合は2.0モル%であった。共重合体Aのポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は142,000、重量平均分子量(Mw)は284,000で、Mw/Mnは2.0であった。また、共重合体Aのガラス転移温度は390℃であった。共重合体Aは25℃でのシクロヘキサンに溶解したが、n−ヘプタンには溶解しなかった。
【0069】
共重合体A 10gを、良溶媒であるシクロヘキサン45mLと、貧溶媒であるn−ヘプタン5mLの混合溶媒に溶解して、酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]およびトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトをそれぞれ、重合体100重量部に対して0.6重量部、架橋剤として、亜リン酸トリブチルを重合体100重量部に対して、0.05重量部を添加した。
この重合体溶液を孔径10μmのメンブランフィルターで濾過し、異物を除去した後、25℃でキャストし、徐々に雰囲気の温度を50℃まで上げ、混合溶媒を蒸発し、フィルム中の残留溶媒が2%になった後、150℃のスチームに3時間曝してフィルムを架橋体とした。その後、100℃で30分間、真空乾燥して表面の水分を除去して、厚さ200μmのフィルムA−1を作製した。
【0070】
参考例2(フィルムBの作製)
参考例1にて単量体として、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン 975ミリモル、5−ヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン 250ミリモル、5−トリエトキシシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン25ミリモルを用いる以外、参考例1と同様にして共重合体Bを得た。共重合体溶液中の未反応単量体のガスクロマトグラフィー分析から、共重合体B中の5−ヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンに由来する構造単位の割合は18.0モル%、5−トリエトキシシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンに由来する構造単位の割合は2.0モル%であった。共重合体Bのポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は157,000、重量平均分子量(Mw)は329,000で、Mw/Mnは2.1であった。また、共重合体Bのガラス転移温度は370℃であった。共重合体Bは25℃でのシクロヘキサンに溶解したが、n−ヘプタンには溶解しなかった。
共重合体B 10gを、良溶媒であるトルエン50mLに溶解して、酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]およびトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトをそれぞれ、重合体100重量部に対して0.6重量部、架橋剤として、亜リン酸トリブチルを重合体100重量部に対して、0.05重量部を添加した。
この重合体溶液を孔径10μmのメンブランフィルターで濾過し、異物を除去した後、25℃でキャストし、徐々に雰囲気の温度を50℃まで上げ、溶媒を蒸発し、フィルム中の残留溶媒が2%になった後、150℃のスチームに3時間曝してフィルムを架橋体とした。その後、100℃で30分間、真空乾燥して表面の水分を除去して、厚さ200μmのフィルムB−1を作製した。
【0071】
参考例3(フィルムCの作製)
参考例1にて、単量体としてビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン 650ミリモル、endo含有量が99%のトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−3,8−ジエン 500ミリモル、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン 100ミリモルを用いる以外、参考例1と同様に重合を行った。単量体の共重合体への転化率は80%であった。共重合体溶液中の未反応単量体のガスクロマトグラフィー分析から、共重合体中のトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−3,8−ジエンに由来する構造単位の割合は33モル%、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンに由来する構造単位の割合は7.0モル%であった。この重合体 30gをシクロヘキサンに500mLに溶解して、RuHCl(CO)〔PPh33触媒をRuとして、共重合体に対して70ppm添加して、水素圧10MPa、温度150℃で4時間、水素化を行ない、共重合体Cを得た。共重合体Cの炭素・炭素二重結合の水素化率は270MHzのプロトンNMR(核磁気共鳴装置)から測定し、99.8%であった。
共重合体Cのポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は107,000、重量平均分子量(Mw)は225,000で、Mw/Mnは2.1であった。また、共重合体Cのガラス転移温度は380℃であった。
共重合体C 10gを、良溶媒であるシクロヘキサン45mLと、貧溶媒であるn−ヘプタン5mLの混合溶媒に溶解して、酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]およびトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトをそれぞれ、重合体100重量部に対して0.6重量部、架橋剤として、亜リン酸トリブチルを重合体100重量部に対して、0.05重量部を添加した。この重合体溶液を孔径10μmのメンブランフィルターで濾過し、異物を除去した後、25℃でキャストし、徐々に雰囲気の温度を50℃まで上げ、混合溶媒を蒸発し、フィルム中の残留溶媒が2%になった後、100℃で30分間、真空乾燥して表面の水分を除去して、厚さ200μmのフィルムC−1を作製した。
【0072】
実施例1
フィルムA−1を30℃で1時間シクロヘキサンの蒸気雰囲気下に曝した。そのフィルム中に残留しているシクロヘキサンを除去するために、フィルムを25℃で30分間、塩化メチレンの蒸気雰囲気下に曝した。その後、100℃で2時間真空乾燥し、フィルムA−2を得た。フィルムA−2の物性測定結果を表1に示す。
【0073】
実施例2
シクロヘキサン90重量%、n−ヘプタン10重量%からなる混合溶媒を用いる以外は、実施例1と同様の方法でフィルムA−3を作成した。フィルムA−3の物性測定結果を表1に示す。
【0074】
比較例1
フィルムA−1を30℃で1時間、重合体Aを溶解することができない塩化メチレンの蒸気雰囲気下に曝した。その後、100℃で2時間真空乾燥し、フィルムA−4を得た。フィルムA−4の物性測定結果を表1に示す。
【0075】
比較例2
フィルムA−1を30℃で1時間、重合体Aを溶解することができないエタノールの蒸気雰囲気下に曝した。その後、100℃で2時間真空乾燥し、フィルムA−5を得た。フィルムA−5の物性測定結果を表1に示す。
【0076】
実施例3
フィルムB−1を30℃で1時間トルエンの蒸気雰囲気下に曝した。そのフィルム中に残留しているトルエンを除去するために、フィルムを25℃で30分間、塩化メチレンの蒸気雰囲気下に曝した。その後、100℃で2時間真空乾燥し、フィルムB−2を得た。フィルムB−2の物性測定結果を表1に示す。
【0078】
比較例3
フィルムB−1を30℃で30秒間トルエンの蒸気雰囲気下に曝した。そのフィルム中に残留しているトルエンを除去するために、フィルムを25℃で30分間、塩化メチレンの蒸気雰囲気下に曝した。その後、100℃で2時間真空乾燥し、フィルムB−4を得た。フィルムB−4の物性測定結果を表1に示す。
【0079】
比較例4
フィルムB−1を30℃で1時間メタノールの蒸気雰囲気下に曝した。その後、100℃で2時間真空乾燥し、フィルムB−5を得た。フィルムB−5の物性測定結果を表1に示す。
【0080】
実施例5
フィルムC−1を30℃で1時間シクロヘキサンの蒸気雰囲気下に曝した。そのフィルム中に残留しているシクロヘキサンを除去するために、フィルムを25℃で30分間、塩化メチレンの蒸気雰囲気下に曝した。その後100℃で2時間真空乾燥し、フィルムC−2を得た。フィルムC−2の物性測定結果を表1に示す。
【0081】
比較例5
フィルムC−1を30℃で1時間エタノールの蒸気雰囲気下に曝した。その後100℃で2時間真空乾燥し、フィルムC−3を得た。フィルムC−3の物性測定結果を表1に示す。
【0082】
【表1】
Figure 0003873865
【0083】
【発明の効果】
本発明によって得られる環状オレフィン系付加重合体から形成されたフィルムまたはシートは、高耐熱性、高透明性を有し、複屈折が著しく小さい。すなわち、波長622nmの光線を垂直に入射した際に測定される複屈折が、厚さ200μm換算で10nm以下に低減された光学材料用の環状オレフィン系重合体のフィルムまたはシートが得られ、それらはTFT型LCD、STN型LCD、PDPなどの表示デバイス用基板、導光板、保護フィルム、位相差フィルム、タッチパネル、透明電極基板、CD、MD、DVDなどの光学記録基板などの光学材料用途や電子・電気部品に有用である。

Claims (7)

  1. 下記式(1)で表される構造単位(a)を含む数平均分子量が10,000〜300,000の環状オレフィン系重合体を含むフィルムまたはシートを、該重合体が溶解する溶媒(I)の雰囲気下に1分〜120分曝すことを特徴とする環状オレフィン系重合体系フィルムまたはシートの製造方法。
    Figure 0003873865
    [式(1)のA,A,A,Aはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、炭素数4〜15のシクロアルキル基、ハロゲン原子である。また、A〜Aには、AとA、AとAまたはAとAから形成されるアルキレン基も含まれる。rは0〜2の整数を示す。]
  2. 式(1)で表される構造単位(a)として、end体含量が80%以上であるノルボルネン骨格を有するトリシクロ環式化合物を付加重合することにより得られる構造単位含む請求項1に記載の環状オレフィン系重合体系フィルムまたはシートの製造方法。
  3. 環状オレフィン系重合体が、さらに下記式(2)で表される構造単位(b)を含む請求項1または2いずれか1項に記載の環状オレフィン系重合体系フィルムまたはシートの製造方法。
    Figure 0003873865
    [式(2)中、B〜Bはそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、加水分解性シリル基または−(CH2jXで表される極性基を示し、B〜Bの少なくとも一つは加水分解性シリル基または−(CH2jXで表される極性基を含む。
    ここで、Xは−C(O)ORまたは−OC(O)Rであり、R,Rは炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、またはこれらのハロゲン置換体からなる基から選ばれた置換基、jは0〜3の整数である。また、B〜Bには、BとBまたはBとBから形成されるアルキレン基、BとBまたはBとBから形成されるアルキリデニル基も含まれる。pは0〜2の整数を示す。]
  4. 架橋された環状オレフィン系重合体系フィルムまたはシートを、未架橋の該重合体が溶解する溶媒(I)の雰囲気下に曝す請求項3に記載の環状オレフィン系重合体系フィルムまたはシートの製造方法。
  5. 未架橋の環状オレフィン系重合体のガラス転移温度が180〜450℃である請求項1〜4記載いずれか1項に記載の環状オレフィン系重合体系フィルムまたはシートの製造方法。
  6. 溶媒(I)の雰囲気下に曝すフィルムまたはシートが溶液キャスト法で得られたフィルムまたはシートである請求項1〜5にいずれか1項に記載の環状オレフィン系重合体系フィルムまたはシートの製造方法。
  7. 請求項1〜6いずれか1項に記載の製造方法により得られた、波長622nmの光線が垂直入射した際の複屈折が厚さ200μm換算で10nm以下であることを特徴とする環状オレフィン系重合体系フィルムまたはシート。
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