JP3849209B2 - 臭素化p−クミルフェノール及びその誘導体、それらの製造方法、並びにそれらを配合してなる難燃性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は新規な臭素化p−クミルフェノール及びその誘導体に関する。本発明の化合物は各種電気機器などに多用される難燃樹脂用配合型難燃剤として使用可能である。
【0002】
【従来の技術】
従来の合成樹脂の難燃化としては、種々の樹脂に対して、様々な臭素系難燃剤、リン酸エステル系難燃剤、無機系難燃剤等が用いられ、用途により使い分けがなされている。代表的な難燃剤としては、デカブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモビスフェノール−A(以下、TBAと略す。)、TBA−エポキシオリゴマー、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このように、様々な難燃剤の提案がなされ、様々な用途で使い分けがなされているものの、近年の難燃規制の強化、配合した難燃樹脂の性能のさらなる向上要求が高く、従来品の欠点を補完する剤の創製が望まれている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、新規な臭素系剤について鋭意検討した結果、臭素化p−クミルフェノール及びそれから得られる臭素化p−クミルフェノール誘導体を見出した。更にこれらの剤を樹脂に配合した場合、著しく加工性(流動性)に優れていることを見出し、加えて、本発明の臭素化p−クミルフェノール誘導体は耐光性に優れていることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0005】
すなわち本発明は、下記一般式(1)
【0006】
【化5】
【0007】
(式中、aは1〜3の整数、bは1〜2の整数を表す)
で表される臭素化p−クミルフェノール及び下記一般式(2)
【0008】
【化6】
【0009】
(式中、aは1〜3の整数、bは1〜2の整数、nは1以上の整数を表す。)
又は下記一般式(3)
【0010】
【化7】
【0011】
(式中、aは1〜3の整数、bは1〜2の整数、nは1以上の整数を表す。)
で示される臭素化p−クミルフェノール誘導体、それらの製造方法並びにそれらを配合してなる難燃性樹脂組成物である。
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明の臭素化p−クミルフェノールは、上記一般式(1)で表される構造からなり、また代表的な物性は以下の通りである。
【0014】
(1)臭素化反応により得られる臭素化p−クミルフェノールの平均臭素化数は、2.5〜4.0の範囲であり、また生成物中の臭素含有量は45〜62重量%の範囲である。
【0015】
(2)生成物の形状は、常温で微黄色を帯びる粘稠物であり、50℃以上では溶液の状態である。
【0016】
尚、本発明において示す平均臭素化数とは、臭素化p−クミルフェノールを元素分析することにより得られた組成比を元に算出した一分子当たりの平均臭素化数をいう。
【0017】
(3)生成物は、ガスクロマトグラフィー分析の結果、ジブロモ体を0.001〜30重量%、トリブロモ体を30〜99重量%、テトラブロモ体を1〜80重量%、及びペンタブロモ体を0.01〜10重量%の範囲で含有し、さらに好ましくは、ジブロモ体を0.001〜30重量%、トリブロモ体を30〜95重量%、テトラブロモ体を1〜65重量%、及びペンタブロモ体を0.01〜10重量%の範囲で含有する。
【0018】
次に、本発明の臭素化p−クミルフェノールを得る方法について説明する。
【0019】
本発明の臭素化p−クミルフェノールの調製法としては、例えば、触媒存在下、反応に不活性な溶媒に原料のp−クミルフェノールを溶解させ、これに臭素化試剤を滴下し反応させる。
【0020】
本発明に適用可能な触媒としては、例えば、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、塩化第二鉄、臭化第二鉄、四塩化チタン、三塩化チタン、五塩化アンチモン、三塩化アンチモン、三臭化アンチモン、塩化スズ、トリフルオロボラン・エテラート等のルイス酸触媒が挙げられ、目的とする臭素化数によってこれら触媒を選択する。また、これら触媒は単独又は2種以上混合して使用しても何等支障はない。
【0021】
触媒の添加量としては、反応に具する原料のp−クミルフェノールに対してあらゆる量で添加可能であり、具体的には原料のp−クミルフェノール1モルに対して0.001〜100モル%の範囲である。少量の添加では、反応が遅いか又は原料及び溶剤に由来する不純物により触媒が失活する場合があり、一方過剰の添加は経済的ではない。したがって、好ましくは0.1〜40モル%の範囲である。
【0022】
本発明に適用可能な臭素化試剤としては特に限定するものではないが、具体的には、臭素、塩化臭素が例示される。これらのうち塩化臭素を用いることがより好ましい。臭素又は塩化臭素の添加量は、目的とする臭素化p−クミルフェノールの平均臭素化数により変更する。通常、目的とする平均臭素化数に対して等モル倍量以上から5モル倍量以下で使用するが、好ましくは等モル倍量から1.5モル倍量の範囲であり、使用する触媒の種類、反応条件により臭素化剤の使用量を決定する。また、塩化臭素を用いる場合の調製に使用する臭素と塩素の混合比は、臭素1モルに対して塩素を0.5〜1.0モル比の範囲で用いる。これは、生成物中の塩素化物の含有量を少なくするためであり、塩素を等モル比以上用いた場合、多量の塩素化物が副生されるため好ましくない。
【0023】
反応に使用する溶剤としては、臭素化試剤及び触媒に対して不活性であり、かつ水と共沸蒸留できるものであればあらゆるものが適用可能であり、具体的にはジクロロメタン、ジブロモメタン、クロロホルム、ブロモホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン等が例示される。
【0024】
溶剤の使用量としては、反応に具する原料のp−クミルフェノールに対してあらゆる量比で使用可能であるが、1重量倍量以下では反応終了後の反応液粘度が高くなるため好ましくなく、また、100重量倍量以上では経済的ではない。したがって好ましくは2〜50重量倍量の範囲である。
【0025】
反応温度としては、臭素化試剤、触媒及び目的とする平均臭素化度により異なるが、通常、臭素を使用する場合は0℃〜60℃の範囲、塩化臭素を使用する場合又は臭素及び塩化臭素を併用する場合は−30℃〜20℃の範囲で実施する。臭素化試剤の滴下時間は、本反応が発熱反応のため、反応温度が制御可能な範囲であれば特に制限されない。
【0026】
臭素化試剤の添加終了後、直ちに後処理を行っても良いし、所定の温度で1〜8時間熟成を行っても良い。
【0027】
反応終了後、余剰の臭素化試剤をヒドラジン、亜硫酸水素ナトリウム等の還元剤を添加することにより除害し、次いで、水洗することにより臭素化p−クミルフェノールを含有する溶液を得る。
【0028】
この溶液からの臭素化p−クミルフェノールの回収は、この溶液中に水蒸気を導入することにより実施できる。まず、含有する溶媒を蒸留留去し、続いて臭素化反応で副生した不純物である低沸点物を蒸留留去する。蒸留後、加熱状態で溶液状態の有機相を分液を行い、室温まで冷却を行って粘稠状態の臭素化p−クミルフェノールを回収する。
【0029】
また、低沸点物を除去する方法として、薄膜蒸留等により実施しても良い。
【0030】
続いて、上記一般式(2)又は一般式(3)で表される本発明の臭素化p−クミルフェノール誘導体及びそれらの製造方法について説明する。
【0031】
本発明の臭素化p−クミルフェノール誘導体は、臭素含量40〜62%、軟化点80〜200℃、熱天秤による5%重量減少温度が300℃以上の耐熱性を示し、耐光性が他の市販剤に比べ優れる化合物である。
【0032】
本発明の臭素化p−クミルフェノール誘導体の製造は、上記一般式(1)で表される臭素化p−クミルフェノールと、下記一般式(4)
【0033】
【化8】
【0034】
(式中、mは0以上の整数を表す)
で表される分子末端にエポキシ基を有する化合物を触媒存在下、80〜210℃で反応させることにより得られる。
【0035】
本発明の臭素化p−クミルフェノール誘導体の製造に用いる、臭素化p−クミルフェノールの使用量は、分子末端にエポキシ基を有する化合物に対して、0.5〜2.0モル/モル比で使用可能であり、難燃剤用としてより好ましい比としては0.9〜2.0モル/モル比の範囲である。
【0036】
本発明の臭素化p−クミルフェノール誘導体の製造に使用する触媒としては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、トリフェニルベンジルフォスフォニウムクロライド、トリフェニルエチルフォスフォニウムブロマイド、ブチルトリフェニルフォスフォニウムクロライド、オクチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、テトラフェニルフォスフォニウムクロライド、トリフェニルメチルフォスフォニウムアイドダイド等の第4級リン化合物の塩、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラn−ブチルアンモニウムクロライド、テトラn−ブチルアンモニウムブロマイド、トリメチルフェニルアンモニウムクロライド、トリメチルフェニルアンモニウムブロマイド、トリエチルフェニルアンモニウムクロライド、トリエチルフェニルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムブロマイド等の第4級アンモニウム塩等が例示される。
【0037】
触媒の添加量としては、特に限定するものではないが、上記一般式(1)の臭素化p−クミルフェノールに対して通常0.01〜20モル%用いる。
【0038】
反応温度としては、触媒の種類にもよるが、通常80〜210℃の範囲であるが、無溶媒系で実施する場合には、原料及び生成物が溶融し撹拌可能な条件下で実施する。また、必要に応じてメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類を溶媒として用いても良い。
【0039】
無溶媒で反応を実施した場合は、反応後、冷却、固化することにより目的物を得、必要に応じて粉砕、解砕の処置をする。溶媒を用いて反応を実施した場合は、溶剤留去後無溶媒の場合と同様の操作で目的物を得る。
【0040】
本発明の臭素化p−クミルフェノール及び臭素化p−クミルフェノール誘導体は、難燃剤として使用される。
【0041】
本発明の難燃性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂、本発明の臭素化p−クミルフェノール又は臭素化p−クミルフェノール誘導体、難燃助剤等から構成され、更に必要に応じて紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、無機充填剤等に添加剤を添加しても良い。
【0042】
本発明の臭素化p−クミルフェノール及び臭素化p−クミルフェノール誘導体が配合可能な樹脂としては、具体的には例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂や、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−ビニルアセテート共重合体、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、発泡ポリスチレン、アクロリニトリル−スチレン共重合体、アクロロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体(以下ABSと略す)、ポリプロピレン、石油樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル等の熱可塑性樹脂が挙げられ、更に熱可塑性樹脂を2種以上混合したポリカーボーネート−ABS、ポリフェニレンエーテル−ポリスチレン等に代表されるポリマーアロイ等も例示できる。これらのうち、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−ビニルアセテート共重合体、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、発泡ポリスチレン、アクロリニトリル−スチレン共重合体、アクロロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体(以下ABSと略す)、ポリプロピレン、石油樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル等の熱可塑性樹脂が挙げられ、更に熱可塑性樹脂を2種以上混合したポリカーボーネート−ABS、ポリフェニレンエーテル−ポリスチレン等に代表されるポリマーアロイが好適な樹脂として例示される。
【0043】
本発明の臭素化p−クミルフェノール及び臭素化p−クミルフェノール誘導体の樹脂への配合量としては、配合する樹脂の種類や目的とする難燃性能により異なり、特に限定するものではないが、通常樹脂100重量部に対して5〜50重量部配合される。
【0044】
本発明の臭素化p−クミルフェノール及び臭素化p−クミルフェノール誘導体を樹脂に配合するに当たり、三酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ等の難燃助剤を添加しても良く、この場合、本発明の臭素化ポリスチレン100重量部に対して通常5〜80重量部添加される。更に必要に応じて、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン誘導体の光安定剤、ヒンダードフェノール系の酸化防止剤等を添加しても良く、この場合、本発明の難燃性樹脂組成物100重量部に対して通常0.05〜5重量部添加される。これらの他、必要に応じて帯電防止剤やタルク、グラスファイバー等の無機充填剤を添加しても良い。
【0045】
本発明の臭素化p−クミルフェノール及び臭素化p−クミルフェノール誘導体の樹脂への配合方法としては、熱硬化性樹脂に配合する場合には、例えば、予め本発明の臭素化ポリスチレンを樹脂原料に分散させた後硬化させれば良く、熱可塑性樹脂に配合する場合には、例えば、コニカルブレンダーやタンブラーミキサーを用いて必要な配合試剤を混合し、二軸押出機等を用いてペレット化しても良い。これらの方法で得られた難燃性樹脂組成物の加工方法は、特に限定されるものではなく、例えば、押出成型、射出成型等を行い、目的とする成型品を得ることができる。
【0046】
【発明の効果】
本発明の臭素化p−クミルフェノール及び臭素化p−クミルフェノール誘導体は、有用な難燃剤であり、特に熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂に配合した場合、樹脂の機械物性を低下させることなく高い難燃性能を発現できる。
【0047】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0048】
実施例1
撹拌機及び冷却ジャケット付き滴下ロートを備えた1リットルの四つ口丸底フラスコにp−クミルフェノール42.4g(0.2モル)、三塩化アンチモン2.1g(0.01モル)及び塩化メチレン382gを仕込み、冷却循環恒温装置を用いて−2℃に冷却した。
【0049】
次に、0.5リットルの四つ口丸底フラスコに臭素69.9g(0.44モル)及び塩化メチレン379gを仕込み、冷却恒温循環装置により0℃に冷却した後、塩素24.8g(0.35モル)を1時間かけて吹き込み、塩化臭素の塩化メチレン溶液を調製した。この塩化臭素の塩化メチレン溶液を、先ほどの冷却ジャケット付き滴下ロートに仕込み、p−クミルフェノール溶液に6時間かけて滴下し、更に30分間熟成を行った。
【0050】
反応後、反応液に5重量%ヒドラジン溶液を加えて残存する塩化臭素及び過剰分の臭素を除害した後、分液し、水洗を行ってp−クミルフェノールの溶液を得た。
【0051】
この臭素化p−クミルフェノールの溶液に水蒸気を吹き込み、まず溶媒を蒸留留去した後、続いて低沸点の不純物を同様に留去させた。水蒸気蒸留後、その温度を保ちながら、臭素化p−クミルフェノールの溶液層を分液した。次いで、この溶液を減圧下、90℃で乾燥の後、微黄色を帯びた粘稠状態の臭素化p−クミルフェノール87.3gを得た。この得られたp−クミルフェノールについて、元素分析、核磁気共鳴スペクトル、ガスクロマトグラフィー及び赤外吸収スペクトルを測定した結果を以下に示す。
【0052】
【0053】
実施例2
撹拌機及び冷却ジャケット付き滴下ロートを備えた1リットルの四つ口丸底フラスコにp−クミルフェノール42.4g(0.2モル)、三塩化アンチモン2.1g(0.01モル)及び塩化メチレン382gを仕込み、冷却循環恒温装置を用いて−2℃に冷却した。
【0054】
次に、0.5リットルの四つ口丸底フラスコに臭素89.5g(0.56モル)及び塩化メチレン486gを仕込み、冷却恒温循環装置により0℃に冷却した後、塩素31.9g(0.45モル)を1時間かけて吹き込み、塩化臭素の塩化メチレン溶液を調製した。この塩化臭素の塩化メチレン溶液を、先ほどの冷却ジャケット付き滴下ロートに仕込み、p−クミルフェノール溶液に12時間かけて滴下し、更に30分間熟成を行った。
【0055】
反応後、反応液に5重量%ヒドラジン溶液を加えて残存する塩化臭素及び過剰分の臭素を除害した後、分液し、水洗を行ってp−クミルフェノールの溶液を得た。
【0056】
この臭素化p−クミルフェノールの溶液に水蒸気を吹き込み、まず溶媒を蒸留留去した後、続いて低沸点の不純物を同様に留去させた。水蒸気蒸留後、その温度を保ちながら、臭素化p−クミルフェノールの溶液層を分液した。次いで、この溶液を減圧下、90℃で乾燥の後、微黄色を帯びた粘稠状態の臭素化p−クミルフェノール98.7gを得た。この得られたp−クミルフェノールについて、ガスクロマトグラフィーで測定した結果、ジブロモ体;0.10wt%、ジブロモモノクロル体;1.91wt%、トリブロモ体;17.49wt%、テトラブロモ体;77.93wt%、ペンタブロモ体;1.76wt%、及び低沸点物;0.90wt%であった。また、元素分析の結果から算出した平均臭素化数は3.8であった。
【0057】
実施例3
耐衝撃性ポリスチレン(以下、HIPSと略す;三菱化学製HT−88)100重量部に対して、実施例1で得られた臭素化p−クミルフェノールを10重量部、三酸化アンチモン3.3重量部配合し、200℃でロール混練りを行った。続いて、200℃でプレス成型を行った後、評価用試料片を作成し、得られた試料片について、下記の方法により燃焼性試験及び流動性(MFR)の測定を行った。
【0058】
(1)燃焼性試験
得られた試料片を、JIS K 7201に規格されている酸素指数測定法及びUL94V垂直燃焼性試験方法に準拠して燃焼性の評価を行った。
【0059】
(2)流動性(MFR)
得られた試料片を、JIS K 7210に規格されている流動性(MFR)測定方法(測定温度;200℃、加重;5kg)に準拠して測定を行った。結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
実施例4〜実施例5
表1に示した配合で実施例3と同様の方法により試験片を作成し、更に燃焼性及び流動性の測定を行った。結果を表1にあわせて示す。
【0062】
比較例1〜比較例3
HIPS100重量部に対して、市販のTBA(東ソー製FG120G)を表2に示す配合量で配合し、実施例3と同様の方法により試験片を作成し、更に燃焼性試験及び流動性(MFR)の測定を行った。結果を表2に示す。
【0063】
【表2】
【0064】
実施例6
撹拌機を備えた1リットル4つ口丸底セパラブルフラスコに、実施例1と同様の方法で得られた平均臭素化数2.61の臭素化p−クミルフェノール585.7g(1.372モル)とテトラブロモビスフェノール−Aジグリシジルエーテル(東都化成製YDB−400、エポキシ当量:398.3g/eq.)796.6g(0.70モル)を仕込み、オイルバス上で100℃に加熱し、溶融させた。
【0065】
次いで、テトラフェニルフォスフォニウムクロライド1.05g(2.80ミリモル)を仕込んだ後、160℃に加熱し、4時間反応を行った後、金属性のバットに流し出し冷却、固化させ、目的物の臭素化p−クミルフェノール誘導体1140.6gを得た。
【0066】
得られた目的物の元素分析、融点、エポキシ当量、核磁気共鳴スペクトル、赤外吸収スペクトル及び熱天秤測定の結果を以下に示す。
【0067】
【0068】
実施例7
撹拌機を備えた1リットル4つ口丸底セパラブルフラスコに、実施例1と同様の方法で得られた平均臭素化数2.61の臭素化p−クミルフェノール271.9g(0.63モル)とテトラブロモビスフェノール−Aジグリシジルエーテル(東都化成製YDB−406、エポキシ当量:651.4g/eq.)1302.8g(0.65モル)を仕込み、オイルバス上で100℃に加熱し、溶融させた。
【0069】
次いで、テトラフェニルフォスフォニウムクロライド0.98g(2.61ミリモル)を仕込んだ後、160℃に加熱し、3時間反応を行った後、金属性のバットに流し出し冷却、固化させ、目的物の臭素化p−クミルフェノール誘導体1114.4gを得た。
【0070】
得られた目的物の元素分析、融点、エポキシ当量、核磁気共鳴スペクトル、赤外吸収スペクトル及び熱天秤測定の結果を以下に示す。
【0071】
【0072】
実施例8
アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合ポリマー(以下、ABSと略す;東レ製#10)100重量部に対して、実施例6で得られた臭素化p−クミルフェノール誘導体を30重量部、三酸化アンチモンを10重量部、210℃でロール混練し、210℃でプレス成型し試料片を作製した。得られた試料片について、燃焼性能及び流動性(MFR;220℃,10kg/cm2)を測定した。結果を表3に示す。
【0073】
【表3】
【0074】
実施例9
ABS100重量部に対して、実施例7で得られた臭素化p−クミルフェノール誘導体を28重量部、三酸化アンチモンを9.3重量部、実施例8と同様に配合し、燃焼性能及び流動性(MFR;220℃,10kg/cm2)を測定した。結果を表3にあわせて示す。
【0075】
比較例4
ABS100重量部に対して、市販のTBA−エポキシオリゴマー(東都化成製TB−60:TBA−ジグリシジルエーテルとトリブロモフェノールの1/2モル比での反応物)を30重量部、三酸化アンチモンを10重量部、実施例8と同様に配合し、燃焼性能及び流動性(MFR;220℃,10kg/cm2)を測定した。結果を表3にあわせて示す。
【0076】
比較例5
ABS100重量部に対して、市販のTBA−エポキシオリゴマー(東都化成製YDB−408:分子末端にグリシジル基を有するTBA−エポキシ樹脂)を28重量部、三酸化アンチモンを9.3重量部、実施例8と同様に配合し、燃焼性能及び流動性(MFR;220℃,10kg/cm2)を測定した。結果を表3にあわせて示す。
【0077】
実施例10、実施例11、比較例6、比較例7
実施例8、実施例9、比較例4及び比較例5で得られた試料片アイスーパーUVテスター(33mW/cm2)を用い、65℃での耐光性経時変化(下記式
△E値={(L−L0)2+(a−a0)2+(b−b0)2}1/2
L0,a0,b0:耐光性試験前の試料片測定値
L,a,b:耐光性試験後の試験片測定値
で表される色差計による△E値)を測定した。結果を表4に示す。
【0078】
【表4】
【0079】
実施例8及び実施例9の臭素化p−クミルフェノール誘導体は、市販剤に比べ耐光性が優れていた。
Claims (13)
- 一分子当たりの平均臭素化が2.5〜4.0の範囲にあり、かつ請求項1に記載の臭素化p−クミルフェノールを、ジブロモ体0.001〜30重量%、トリブロモ体30〜99重量%、テトラブロモ体1〜80重量%、及びペンタブロモ体0.01〜10重量%の範囲で含有することを特徴とする臭素化p−クミルフェノール。
- ジブロモ体を0.001〜30重量%、トリブロモ体を30〜95重量%、テトラブロモ体を1〜65重量%、及びペンタブロモ体を0.01〜10重量%の範囲で含有することを特徴とする請求項2に記載の臭素化p−クミルフェノール。
- p−クミルフェノールを触媒存在下、臭素化試剤により臭素化することを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の臭素化p−クミルフェノールの製造方法。
- 臭素化試剤が、塩化臭素であることを特徴とする請求項4に記載の臭素化p−クミルフェノールの製造方法。
- 請求項4又は請求項5に記載の方法で得られた臭素化p−クミルフェノールの溶液から、含有する溶媒を蒸留留去し、次いで臭素化反応で副生した不純物である低沸点物を蒸留留去する際、水蒸気蒸留法により留去することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の臭素化p−クミルフェノールの回収法。
- 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の臭素化p−クミルフェノールを樹脂に配合してなる難燃性樹脂組成物。
- 樹脂100重量部に対し、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の臭素化p−クミルフェノールを5〜50重量部配合することを特徴とする請求項7に記載の難燃性樹脂組成物。
- 請求項9に記載の一般式(2)で示される化合物を0〜100モル%、及び請求項9に記載の一般式(3)で示される化合物を100〜0モル%の範囲で含有することを特徴とする臭素化p−クミルフェノール誘導体。
- 請求項9又は請求項10に記載の臭素化p−クミルフェノール誘導体を樹脂に配合してなる難燃性樹脂組成物。
- 樹脂100重量部に対して、請求項9又は請求項10に記載の臭素化p−クミルフェノール誘導体を5〜50重量部配合することを特徴とする請求項12に記載の難燃性樹脂組成物。
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