JP3739701B2 - α‐オレフィン重合用触媒成分 - Google Patents
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Description
〔発明の背景〕
【産業上の利用分野】
本発明はα‐オレフィン重合用の触媒成分に関する。さらに詳しくは、本発明は、高融点のα‐オレフィン重合体の製造を可能にする重合用触媒成分に関する。
【0002】
【従来の技術】
オレフィン重合用の均一系触媒としては、いわゆるカミンスキー触媒がよく知られている。この触媒は非常に重合活性が高く、分子量分布が狭い重合体が得られるという特徴がある。
【0003】
カミンスキー触媒によりアイソタクチックポリオレフィンを製造する際に使用する遷移金属化合物としては、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリドやエチレンビス(4,5,6,7‐テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド(特開昭61−130314号公報)が知られているが、製造したポリオレフィンの分子量が小さく、また、低温で製造すると高分子量体が得られるが重合活性が低い等の問題点がある。また、このような遷移金属化合物のジルコニウムの代わりにハフニウム化合物を使用すると、高分子量体が製造可能であることが知られているが(Journal of Molecular Catalysis, 56(1989) p.237〜247)、この方法には重合活性が低いという問題点があるようである。
【0004】
さらに、ジメチルシリレンビス置換シクロペンタジエニルジルコニウムジクロリドなどが特開平1−301704号公報、Polymer Preprints,Japan vol.39,No.6 p.1614〜1616(1990)、特開平3−12406号公報により、ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド等が特開昭63−295007号、特開平1−275609号各公報により、提案され、比較的低温の重合では高立体規則性で高融点のポリマーを得ることが可能となった。しかし、経済性の高い高温重合条件下では、立体規則性、融点及び分子量の低下が著しいようであって、改良が望まれている。
【0005】
特開平4−268307号および同4−268308号各公報には、上記シクロペンタジエニル化合物の架橋基の隣(2位‐)に置換基をつけることによって、立体規則性及び分子量がある程度向上することが示唆されているが、経済的に有利な、重合温度を上げた重合条件下の性能はいまだ不充分であるようである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、押出成形や射出成形が可能な高分子量体で、高融点を保つオレフィン系重合体を高収率で得ることを可能にするα‐オレフィン重合用触媒成分、およびα‐オレフィン重合用触媒、ならびにα‐オレフィン重合体の製造法を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
〔発明の概要〕
<要旨>
本発明は、上記の問題点を解消すべく検討を行なった結果なされたものである。すなわち、本発明によるα‐オレフィン重合用触媒成分は、下記の一般式〔I〕で表わされる化合物〔但し、エチレンビス(2,4−ジメチル−4−ヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2,4−ジメチル−4−ヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロリドを除く〕からなること、を特徴とするものである。
【0008】
【化3】
(ただし、R1は、それぞれ独立に、水素または炭素数1〜6の炭化水素基または炭素数1〜12のケイ素含有炭化水素基を示す。R2およびR3は、それぞれ独立に、それが結合する五員環に対して縮合環を形成する、2価の、炭素数5〜20の不飽和炭化水素基を示す。ただし、R2およびR3は、共にR2またはR3由来の不飽和結合を有する7〜12員環からなる縮合環を形成する。Qは、二つの五員環を結合する炭素数1〜20の2価の炭化水素基、シリレン基、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基、ゲルミレン基、または炭素数1〜20の炭化水素基を有するゲルミレン基を示す。XおよびYは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素基、または酸素を含む炭素数1〜20の炭化水素残基を示す。Mは周期律表IVB族遷移金属を示す。)
本発明は、また、上記の触媒成分からなるα‐オレフィン重合用触媒に関する。
<効果>
本発明の触媒によれば、高融点かつ高分子量のα‐オレフィン重合体を高収率で製造することが可能になる。
【0009】
本発明の効果発現の理由は明らかではないが、下記の理由が一応考えられる(ただし、本発明はこのような理論によって拘束されるものでない)。すなわち、インデニル基等の五員環の隣に縮合環が形成されている従来のメタロセン化合物に比較すると、この縮合環のそれが縮合する五員環に対する位置関係が、たとえば当該五員環に配位する金属Mに対する位置関係が、変化するので、さらに具体的には、五員環上の4,5‐位(五員環上の架橋基Qの結合位置を1‐位とし、R1の位置を2‐位とする)上の縮合環の4‐位に隣接する炭素の五員環、ひいてはそこに配位する金属M、に関する位置関係が、この縮合環が7〜12員環では立体障害による効果をよりよく生じるようになるので、生成重合体の立体規則性度が向上すると予想される。また、縮合7〜12員環内に二重結合を有することも有利に作用する。すなわち、経済的有利な比較的高い温度で重合を行なう際に、4,5,6,7‐テトラヒドロインデニル基等の環内に二重結合を有しないものを使用した場合は急激な立体規則性の低下と分子量の低下を引きおこすのに対して、本願化合物を使用した場合にはこれが見られないのは、R2またはR3によって構成された7〜12員環に存在する二重結合により、前記立体障害を形成する4‐位に隣接する部位の動きが抑えられ、配位子の構造が堅固になって、重合温度が高くても立体規則性や分子量の低下が少くなると予想される。
【0010】
このような効果は、従来の技術からは全く予見され得ないものであると考えられる。
〔発明の具体的説明〕
本発明は、下記の成分(A)に示す化合物からなる重合触媒成分に関するものである。さらには、本発明は、下記の成分(A)および成分(B)を組合せてなるα‐オレフィン重合用触媒、並びにこの触媒にα‐オレフィンを接触させて重合させることからなるα‐オレフィン重合体の製造法に関するものである。ここで、「からなる」および「組合せてなる」とは、本発明の効果を損わない限りにおいては、挙示の化合物または成分以外の化合物、成分をも組合せて使用することが可能であることを意味する。
<成分(A)>
本発明の触媒成分(A)をなすのは、下記の一般式〔I〕で表わされる遷移金属化合物〔但し、エチレンビス(2,4−ジメチル−4−ヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2,4−ジメチル−4−ヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロリドを除く〕である。
【0011】
【化4】
(ただし、R1は、それぞれ独立に、水素または炭素数1〜6の炭化水素基または炭素数1〜12のケイ素含有炭化水素基を示す。R2およびR3は、それぞれ独立に、それが結合する五員環に対して縮合環を形成する、2価の、炭素数5〜20の不飽和炭化水素基を示す。ただし、R2およびR3は、共にR2またはR3由来の不飽和結合を有する7〜12員環からなる縮合環を形成する。Qは、二つの五員環を結合する炭素数1〜20の2価の炭化水素基、シリレン基、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基、ゲルミレン基、または炭素数1〜20の炭化水素基を有するゲルミレン基を示す。XおよびYは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素基、または酸素を含む炭素数1〜20の炭化水素残基を示す。Mは周期律表IVB族遷移金属を示す。)
この発明で使用する式〔I〕のメタロセン化合物は、置換基R1、R2およびR3を有する2個の五員環配位子が、基Qを介しての相対位置の観点において、M、X及びYを含む平面に関して非対称であるということを大きな特徴とするものである。
【0012】
R1は、上記したように水素または炭素数1〜6の炭化水素基または炭素数1〜12のケイ素含有炭化水素基である。さらに詳しくは、R1は、水素、またはアルキル、シクロアルキル等の飽和炭化水素基、ビニル、アルケニル等の不飽和炭化水素基、またはアルキルシリル等のケイ素含有炭化水素基である。具体例としては、メチル、エチル、n‐プロピル、i‐プロピル、n‐ブチル、i‐ブチル、t‐ブチル、n‐アミル、i‐アミル、n‐ヘキシル、シクロプロピル、アリル、トリメチルシリル、ジメチルエチルシリル基等が例示される。これらのうち好ましいのは、メチル、エチル、n‐プロピル、i‐プロピル、シクロプロピル、n‐ブチル、i‐ブチル、t‐ブチル等の炭素数1〜4のアルキル基である。
【0013】
R2およびR3は、先ず、それぞれ独立に、炭素数5〜20の2価の炭化水素基である。また、R2およびR3は、もう一つの条件として当該縮合環が共に7〜12員環であるということを要件とするが、その観点からいって、R2およびR3の鎖長はそれによって形成される縮合環が12員環より小さい多員環であるということになる。
【0014】
さて、R2およびR3についての第二の要件は、上記のように、当該縮合環が共に7〜12員環、好ましくは7〜10員環、であるということである。従って、R2およびR3は、それぞれ炭素数5〜20、好ましくは5〜16、のものである。
【0015】
R2およびR3についての第三の要件は、その両方が7〜12員環からなる縮合環を形成するときに、当該縮合環がR2またはR3由来の少なくとも一つの不飽和結合を有するということである。
【0016】
このようなR2およびR3の具体例を例示すれば、下記の通りである。
【0017】
(1)2価の不飽和炭化水素基、たとえばアルケニレン、アルカジエニレンおよびアリーレン、具体的には、1‐ペンテニレン、1,3‐ペンタジエニレン、1,4‐ペンタジエニレン、3‐メチル‐1,4‐ペンタジエニレン、1,3‐ヘキサジエニレン、3,4‐ジメチル‐1,5‐ヘキサジエニレン、1,3,5‐ヘキサトリエニレン、1,2‐ジメチル‐1,3,5‐ヘキサトリエニレンおよび1,3,5‐ヘプタトリエニレン。
【0018】
これらのうちで好ましいものは、1,3‐ペンタジエニレン、1,3‐ヘキサジエニレン、1,3,5‐ヘキサトリエニレン、1,3,5‐ヘプタトリエニレン、1,4‐ペンタジエニレン、3‐メチル‐1,4‐ペンタジエニレン、1,2‐ジメチル‐1,3,5‐ヘキサトリエニレン等である。
【0019】
Qは、二つの共役五員環配位子を架橋する2価の基であって、例えば(イ)炭素数1〜20、好ましくは1〜6、の2価の炭化水素基、さらに詳しくは、例えばアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン等の不飽和炭化水素残基、(ロ)シリレン基、(ハ)炭素数1〜20、好ましくは1〜12、の炭化水素基を有するシリレン基、(ニ)ゲルミレン基、または(ホ)炭素数1〜20、好ましくは1〜12、の炭化水素基を有するゲルミレン基、を表わす。これらの中でも好ましいものはアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、アルキルシリレン基である。なお、2価のQ基の両結合手間の距離は、その炭素数の如何にかかわらず、Qが鎖状の場合に4原子程度以下、就中3原子以下、であることが、Qが環状基を有するものである場合は当該環状基+2原子程度以下、就中当該環状基のみであることが、それぞれ好ましい。従って、アルキレンの場合はエチレンおよびイソプロピリデン(結合手間の距離は2原子および1原子)が、シクロアルキレン基の場合はシクロヘキシレン(結合手間の距離がシクロヘキシレン基のみ)が、アルキルシリレンの場合はジメチルシリレン(結合手間の距離が1原子)が、それぞれ好ましい。
【0020】
XおよびYは、それぞれ独立に、すなわち同一でも異なってもよくて、(イ)水素、(ロ)ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、好ましくは塩素)、(ハ)炭素数1〜20の炭化水素基、あるいは(ニ)酸素を含む炭素数1〜20の炭化水素残基、好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基である。
【0021】
Mは、周期律表IVB族の遷移金属、好ましくはチタン、ジルコニウム、ハフニウムのIVB族遷移金属、さらに好ましくはジルコニウム、である。
【0022】
本発明の化合物〔I〕は、置換基ないし結合の形成に関して合目的的な任意の方法によって合成することができる。一つの代表的な合成経路は、下記の通りである。なお、HRaは、下記式の化合物を示す。
【0023】
【化4】
HRa+n−C4H9Li→RaLi+n−C4H10
2RaLi+QCl2→Q(Ra)2+2LiCl
Q(Ra)2+2・n−C4H9Li→Q(RbLi)2+2・n−C4H10
(但し、HRb=Ra)
Q(RbLi)2+ZrCl4→Q(Rb)2ZrCl2+2LiCl
上記遷移金属化合物の非限定的な例として、下記のものを挙げることができる。なお、これらの化合物は、単に化学的名称のみで指称されているが、その立体構造が本発明でいう非対称性をもつものであるこというまでもない。
【0024】
(1)エチレンビス(4,4‐ジヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロリド、(2)エチレンビス(4‐メチル‐4‐ヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロリド、(3)エチレンビス(6‐メチル‐6‐ヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロリド、(4)エチレンビス(4‐メチルアズレニル)ジルコニウムジクロリド、(6)エチレンビス(ビシクロ〔6.3.0〕ウンデカ‐ペンタエニル)ジルコニウムジクロリド、(7)エチレンビス(ビシクロ〔6.3.0〕‐2‐メチル‐ウンデカ‐ペンタエニル)ジルコニウムジクロリド、(8)エチレンビス(ビシクロ〔6.3.0〕‐2,4‐ジメチル‐ウンデカ‐ペンタエニル)ジルコニウムジクロリド、(9)エチレンビス(ビシクロ〔6.3.0〕‐2‐メチル‐4‐トリメチル‐ウンデカ‐ペンタエニル)ジルコニウムジクロリド、(10)エチレンビス(ビシクロ〔8.3.0〕‐トリデカ‐ヘキサエニル)ジルコニウムジクロリド、(11)エチレンビス(ビシクロ〔8.3.0〕‐2‐メチル‐トリデカ‐ヘキサエニル)ジルコニウムジクロリド、(12)エチレンビス(ビシクロ〔8.3.0〕‐2,4‐ジメチル‐トリデカ‐ヘキサエニル)ジルコニウムジクロリド、(13)エチレンビス(ビシクロ〔8.3.0〕‐2,4,5‐トリメチル‐トリデカ‐ヘキサエニル)ジルコニウムジクロリド、(14)メチレンビス(4‐メチル‐4‐ヒドロ‐アズレニル)ジルコニウムジクロリド、(15)メチレンビス(2,4‐ジメチル‐4‐ヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロリド、(16)イソプロピリデンビス(4‐メチル‐4‐ヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロリド、(17)シクロヘキシリデンビス(4‐メチル‐4‐ヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロリド、(21)ジメチルシリレンビス(4,4‐ジヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロリド、(22)ジメチルシリレンビス(4‐メチル‐4‐ヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロリド、(25)ジメチルシリレンビス(2,6‐ジメチル‐6‐ヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロリド、(26)ジメチルシリレンビス(6‐メチル‐6‐ヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロリド、(27)ジメチルシリレンビス(ビシクロ〔6.3.0〕ウンデカ‐ペンタエニル)ジルコニウムジクロリド、(28)ジメチルシリレンビス(ビシクロ〔6.3.0〕‐2‐メチルウンデカ‐ペンタエニル)ジルコニウムジクロリド、(29)ジメチルシリレンビス(ビシクロ〔6.3.0〕‐2,4‐ジメチル‐ウンデカ‐ペンタエニル)ジルコニウムジクロリド、(30)ジメチルシリレンビス(ビシクロ〔8.3.0〕‐トリデカ‐ヘキサエニル)ジルコニウムジクロリド、(31)ジメチルシリレンビス(ビシクロ〔8.3.0〕‐2‐メチルトリデカ‐ヘキサエニル)ジルコニウムジクロリド、(32)ジメチルシリレンビス(ビシクロ〔8.3.0〕2,4‐ジメチルトリデカヘキサエニル)ジルコニウムジクロリド、(33)フェニルメチルシリレンビス(4‐メチル‐4‐ヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロリド、(34)フェニルメチルシリレンビス(2,4‐ジメチル‐4‐ヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロリド、(35)ジフェニルシリレンビス(2,4‐ジメチル‐4‐ヒドロアズレン)ジルコニウムジクロリド、(36)ジフェニルシリレンビス(ビシクロ〔6.3.0〕2‐メチル‐ウンデカ‐ペンタエニル)ジルコニウムジクロリド、(40)ジメチルゲルマンビス(4‐メチル‐4‐ヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロリド、等が例示される。
【0025】
また、これらの化合物のクロリドの一方あるいは両方が臭素、ヨウ素、水素、メチル、フェニル、ベンジル、アルコキシ等にかわった化合物も例示することができる。
【0026】
また、上記のジルコニウムのかわりに、チタン、ハフニウム等にかわった化合物も例示することができる。これらのうちで好ましい化合物は、チタン、ジルコニウム、ハフニウムのIVB族遷移金属である。さらに好ましい化合物は、Mがジルコニウムであるものである。そして、前記遷移金属に配位子として、2‐位及び4‐位に置換基を有するアズレニル基、〔6.3.0〕ウンデカ−ペンタエニル基又は〔8.3.0〕トリデカ−ヘキサエニル基を有する化合物が特に好ましい。
<成分(B)>
成分(B)は、(イ)アルミニウムオキシ化合物、(ロ)ルイス酸、あるいは(ハ)成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物である。
【0027】
ルイス酸のあるものは、「成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物」として捉えることもできる。従って、「ルイス酸」および「成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物」の両者に属する化合物は、いずれか一方に属するものと解することとする。
【0028】
アルミニウムオキシ化合物としては、具体的には下記の一般式〔II〕、〔III〕または〔IV〕であらわされる化合物がある。
【0029】
【化5】
(ここで、pは0〜40、好ましくは2〜30、の数であり、R4は水素または炭化水素残基、好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6、のもの、を示す。)一般式〔II〕および〔III 〕の化合物は、アルモキサンとも呼ばれる化合物であって、一種類のトリアルキルアルミニウム、または二種類以上のトリアルキルアルミニウムと水との反応により得られる生成物である。具体的には、(イ)一種類のトリアルキルアルミニウムと水から得られるメチルアルモキサン、エチルアルモキサン、プロピルアルモキサン、ブチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、(ロ)二種類のトリアルキルアルミニウムと水から得られるメチルエチルアルモキサン、メチルブチルアルモキサン、メチルイソブチルアルモキサン等が例示される。これらの中で、特に好ましいのはメチルアルモキサンおよびメチルイソブチルアルモキサンである。
【0030】
これらのアルモキサンは、各群内および各群間で複数種併用することも可能であり、また、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド等の他のアルキルアルミニウム化合物と併用することも可能である。
【0031】
これらのアルモキサンは公知の様々な条件下に調製することができる。具体的には以下の様な方法が例示できる。
(イ)トリアルキルアルミニウムをトルエン、ベンゼン、エーテル等の適当な有機溶剤を用いて直接水と反応させる方法、(ロ)トリアルキルアルミニウムと結晶水を有する塩水和物、例えば硫酸銅、硫酸アルミニウムの水和物と反応させる方法、(ハ)トリアルキルアルミニウムとシリカゲル等に含浸させた水分とを反応させる方法、(ニ)トリメチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムを混合し、トルエン、ベンゼン、エーテル等の適当な有機溶剤を用いて直接水と反応させる方法、(ホ)トリメチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムを混合し、結晶水を有する塩水和物、例えば硫酸銅、硫酸アルミニウムと水和物、と加熱反応させる方法、(ヘ)シリカゲル等に水分を含浸させ、トリイソブチルアルミニウムで処理した後、トリメチルアルミニウムで追加処理する方法、(ト)メチルアルモキサンおよびイソブチルアルモキサンを公知の方法で合成し、これら二成分を所定量混合し、加熱反応させる方法、(チ)ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素溶媒に硫酸銅5水塩などの結晶水を有する塩を入れ、−40〜40℃位の温度条件下トリメチルアルミニウムと反応させる方法。この場合、使用される水の量は、トリメチルアルミニウムに対してモル比で通常0.5〜1.5である。このようにして得られたメチルアルモキサンは、線状または環状の有機アルミニウムの重合体である。
【0032】
一般式〔IV〕であらわされる化合物は、一種類のトリアルキルアルミニウム、または二種類以上のトリアルキルアルミニウムと
【0033】
【化6】
であらわされるアルキルボロン酸(ここで、R5は炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6、のものを示す)との10:1〜1:1(モル比)の反応により得ることができる。具体的には、(イ)トリメチルアルミニウムとメチルボロン酸の2:1の反応物、(ロ)トリイソブチルアルミニウムとメチルボロン酸の2:1反応物、(ハ)トリメチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムとメチルボロン酸の1:1:1反応物、(ニ)トリメチルアルミニウムとエチルボロン酸の2:1反応物、および(ホ)トリエチルアルミニウムとブチルボロン酸の2:1反応物等が例示される。これらの一般式〔IV〕の化合物は、複数種用いることも可能であり、また一般式〔II〕または〔III 〕であらわされるアルモキサンや、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド等の他のアルキルアルミニウム化合物と併用することも可能である。
【0034】
また、成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物としては、一般式〔V〕であらわされるものがある。
【0035】
〔K〕e+〔Z〕e− 〔V〕
ここで、Kはイオン性のカチオン成分であって、例えばカルボニウムカチオン、トロピリウムカチオン、アルモニウムカチオン、オキソニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ホスフォニウムカチオン等が挙げられる。また、それ自身が還元されやすい金属の陽イオンや有機金属の陽イオン等も挙げられる。これらのカチオンの具体例としては、(イ)トリフェニルカルボニウム、ジフェニルカルボニウム、シクロヘプタトリエニウム、インデニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、N,N‐ジメチルアニリニウム、ジプロピルアンモニウム、ジシクロヘキシルアンモニウム、トリフェニルホスホニウム、トリメチルホスホニウム、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウム、トリ(メチルフェニル)ホスホニウム、トリフェニルスルホニウム、トリフェニルオキソニウム、トリエチルオキソニウム、ピリリウム、および銀イオン、金イオン、白金イオン、銅イオン、パラジウムイオン、水銀イオン、フェロセニウムイオン等がある。
【0036】
上記の一般式〔V〕におけるZはイオン性のアニオン成分であり、成分(A)が変換されたカチオン種に対して対アニオンとなる成分(一般には非配位の)であって、例えば、有機ホウ素化合物アニオン、有機アルミニウム化合物アニオン、有機ガリウム化合物アニオン、有機リン化合物アニオン、有機ひ素化合物アニオン、有機アンチモン化合物アニオンなどが挙げられる。具体的には、(イ)テトラフェニルホウ素、テトラキス(3,4,5‐トリフルオロフェニル)ホウ素、テトラキス(3,5‐ジ(トリフルオロメチル)フェニル)ホウ素、テトラキス(3,5‐ジ(t‐ブチル)フェニル)ホウ素、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、(ロ)テトラフェニルアルミニウム、テトラキス(3,4,5‐トリフルオロフェニル)アルミニウム、テトラキス(3,5‐ジ(トリフルオロメチル)フェニル)アルミニウム、テトラキス(3,5‐ジ(t‐ブチル)フェニル)アルミニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミニウム、(ハ)テトラフェニルガリウム、テトラキス(3,4,5‐トリフルオロフェニル)ガリウム、テトラキス(3,5‐ジ(トリフルオロメチル)フェニル)ガリウム、テトラキス(3,5‐ジ(t‐ブチル)フェニル)ガリウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガリウム、(ニ)テトラフェニルリン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)リン、(ホ)テトラフェニルヒ素、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ヒ素、(ヘ)テトラフェニルアンチモン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)アンチモン、(ト)デカボレート、ウンデカボレート、カルバドデカボレート、デカクロロデカボレート等がある。
【0037】
また、ルイス酸、特に成分(A)をカチオンに変換可能なルイス酸、としては、種々の有機ホウ素化合物、金属ハロゲン化合物、あるいは固体酸等が例示される。具体的には、(イ)トリフェニルホウ素、トリス(3,5‐ジフルオロフェニル)ホウ素、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素等の有機ホウ素化合物、(ロ)塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、塩化臭化マグネシウム、塩化ヨウ化マグネシウム、臭化ヨウ化マグネシウム、塩化マグネシウムハイドライド、塩化マグネシウムハイドロオキシド、臭化マグネシウムハイドロオキシド、塩化マグネシウムアルコキシド、臭化マグネシウムアルコキシド等の金属ハロゲン化合物、および(ハ)シリカ‐アルミナ、アルミナ等の固体酸がある。
【0038】
これらのイオン性化合物やルイス酸は、成分(B)として単独で用いることもできるし、一般式〔II〕、〔III 〕あるいは〔IV〕のアルミニウムオキシ化合物と併用することができる。また、トリ低級アルキルアルミニウム、ジ低級アルキルアルミニウムモノハライド、モノ低級アルキルアルミニウムジハライドおよび低級アルキルアルミニウムセスキハライド、ならびにこれらの低級アルキル基の一部がフェノキシ基と替ったもの、たとえばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジメチルアルミニウムクロリド等の有機アルミニウム化合物と併用することも可能である。
<触媒の形成>
本発明の触媒は、上記の成分(A)および成分(B)を、重合槽内であるいは重合槽外で、重合させるべきモノマーの存在下あるいは非存在下に接触させることにより得ることができる。
【0039】
本発明で使用する成分(A)および成分(B)の使用量は任意である。例えば溶媒重合の場合、成分(A)の使用量は遷移金属原子として10−7〜102ミリモル/リットル、さらには10−4〜1ミリモル/リットル、の範囲内が好ましい。アルミニウムオキシ化合物の場合Al/遷移金属のモル比は通常10以上、100,000以下、さらに100以上、20,000以下、特に100以上、10,000以下、の範囲が好んで用いられる。一方、成分(B)としてイオン性化合物あるいはルイス酸を用いた場合は、対遷移金属のモル比で0.1〜1,000、好ましくは0.5〜100、さらに好ましくは1〜50、の範囲で使用される。
【0040】
本発明の触媒は、成分(A)および(B)以外に、他の成分を含みうるものであることは前記した通りであるが、成分(A)および(B)に加えることが可能な第三成分(任意成分)としては、例えばH2O、メタノール、エタノール、ブタノール等の活性水素含有化合物、エーテル、エステル、アミン等の電子供与性化合物、ホウ酸フェニル、ジメチルメトキシアルミニウム、亜リン酸フェニル、テトラエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等のアルコキシ含有化合物を例示することができる。
【0041】
オレフィンの重合にこれらの触媒系を使用するときには、成分(A)および(B)は反応槽に別々に導入してもよいし、成分(A)および(B)を予め接触させたものを反応槽に導入してもよい。成分(A)および(B)を予め接触させる際に、重合させるべきモノマーの存在下でこれを行ってオレフィンを一部重合させる(いわゆる予備重合する)ことも可能である。
<触媒の使用/オレフィンの重合>本発明の触媒は、溶媒を用いる溶媒重合に適用されるのはもちろんであるが、実質的に溶媒を用いない液相無溶媒重合、気相重合、溶融重合にも適用される。また連続重合、回分式重合に適用される。
【0042】
溶媒重合の場合の溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の飽和脂肪族または芳香族炭化水素の単独あるいは混合物が用いられる。
【0043】
重合温度は−78〜200℃程度、好ましくは−20〜100℃、である。反応系のオレフィン圧には特に制限がないが、好ましくは常圧〜50Kg/cm2
・Gの範囲である。
【0044】
また、重合に際しては公知の手段、例えば温度、圧力の選定あるいは水素の導入、により分子量調節を行なうことができる。
【0045】
本発明の触媒により重合するα‐オレフィン、即ち本発明の方法において重合反応に用いられるα‐オレフィン(エチレンも包含する)は、炭素数2〜20、好ましくは2〜10、のα‐オレフィンである。具体的には、例えばプロピレン、1‐ブテン、4‐メチル‐1‐ペンテン、1‐ヘキセン、1‐オクテン、1‐デセン、1‐ドデセン、1‐テトラデセン、1‐ヘキサデセン、1‐オクタデセン、1‐エイコセンなど、本発明の触媒は、立体規則性重合を目的とする炭素数3〜10のα‐オレフィンの重合に好ましく、特に好ましくはプロピレン、がある。これらのα‐オレフィン類は、二種以上混合して重合に供するこができる。
【0046】
また、本発明の触媒は、上記α‐オレフィン類とエチレンとの共重合も可能である。さらには、上記α‐オレフィンと共重合可能な他の単量体、例えばブタジエン、1,4‐ヘキサジエン、7‐メチル‐1,6‐オクタジエン、1,8‐ノナジエン、1,9‐デカジエンなどのような共役および非共役ジエン類、または、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、ノルボルネン、ジシクロペンタジエンなどの様な環状オレフィンの共重合にも有効である。
【0047】
【実施例】
〔実施例−1〕
ジメチルシリレンビス(4‐メチル‐4‐ヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロリドの合成
窒素置換した500ミリリットルのフラスコに、Na/Kアマルガムで脱水精製したトルエン150ミリリットルおよびアズレン5グラム(39ミリモル)を導入し、−50℃以下に冷却した後、メチルリチウムジエチルエーテル希釈液(1.10モル/リットル)を40.0ミリリットル(44ミリモル)を15分かけて滴下した。滴下終了後、1時間かけて50℃まで昇温し、50℃で2時間反応操作を行なった。反応終了後、再び−50℃以下に冷却し、ジメチルジクロロシラン2.65ml(22ミリモル)をトルエン10ミリリットルに希釈したものを30分かけて滴下した。滴下終了後1時間かけて室温まで昇温した。室温で2時間反応させた後、トルエン還流下で10時間反応させた。反応終了後、反応物を水で分解し、有機層を乾固した。次いで、トルエン20ミリリットルを加え再結晶したところ1.2グラムのビス(4‐メチル‐4‐ヒドロアズレン)ジメチルシラン(化合物(1))が得られた。
【0048】
次いで上記化合物(1)1.0グラム(2.9ミリモル)を脱水処理したTHF50ミリリットルに溶解させ、−50℃以下に冷却し、次いでこれにn‐ブチルリチウムのヘキサン希釈液(1.6モル/リットル)3.7ml(5.92ミリモル)を導入した。1時間かけて室温まで昇温し、さらに室温下で2時間反応させた。別の窒素置換した300ミリリットルフラスコにTHF50ミリリットルを導入し、−60℃以下に冷却した後、さらに四塩化ジルコニウム0.675グラム(2.9ミリモル)を導入した後、1時間かけて室温まで昇温して四塩化ジルコニウムを溶解させた。次に、これを再度−50℃以下に冷却した後、上記で合成した化合物(1)のリチウム塩を一括で全量導入した。導入後、−50℃で4時間反応させた後、1時間かけて室温まで昇温した。さらに60℃まで昇温し2時間反応させた。反応後溶媒を減圧乾固し、ペンタン50ミリリットルで抽出し、約20ミリリットルに濃縮し、冷蔵庫内で2日間放置した。析出した結晶を濾過分離し、ペンタンで2回洗浄した後乾燥したところ、0.25グラムの目的生成物(成分(A)−1)を得た。
【0049】
プロピレンの重合
内容積1.5リットルの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンで充分置換した後、充分に脱水および脱酸素したトルエン500ミリリットル導入し、次いで東ソーアクゾ社製メチルアルモキサン(重合度16)をAl原子換算で3mmol(0.174g)、および上記で合成したジメチルシリレンビス(4‐メチル‐4‐ヒドロ‐アズレニル)ジルコニウムジクロリドを0.504ミリグラム(1μmol )導入後、プロピレンを導入し、20℃で1kg/cm2 Gで15分予備重合操作を行なった。次いで40℃に昇温し7kg/cm2 Gで2時間重合操作を行なった。重合終了後、得られたポリマースラリーを濾過により分離しポリマーを乾燥させた結果、102グラムのポリマーを得た。また濾液を濃縮したところ1.2グラムのポリマーが得られた。触媒活性は20.5×104 gポリマー/g成分(A)、数平均分子量(Mn)は6.75×104 、分子量分布(Mw/Mn)=2.25、融点は156.5℃であった。
【0050】
〔実施例−2〕
プロピレンの重合
重合温度を70℃にする以外は全て実施例−1と同一条件でプロピレンの重合を行なった。結果を表1に示す。
【0051】
〔実施例−3〕
プロピレンの重合
実施例−1と同様の方法において、トルエン500ml、メチルアルモキサン10mmolのかわりに、トリイソブチルアルミニウム139mg(0.7mmol)、ジメチルシリレンビス(4‐メチル‐4‐ヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロリドを0.504mg(1μmol )を導入し、そしてジメチルアニリニウム〔テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート〕を1.6mg(2μmol )用いる以外は全て実施例−1と同様にしてプロピレンの重合を行なった。結果を表1に示す。
【0052】
〔比較例−1〕
ジメチルシリレンビス(4,5,6,7‐テトラヒドロインデニル)ジルコウニムジクロリドの合成
ジメチルシリレンビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドを、J.Orgmet.Chem. (342)21〜29 1988及びJ.Orgmet.Chem.(369)359〜370 1989に従って合成した。
【0053】
具体的には、窒素置換した300ミリリットルフラスコに、ビス(インデニル)ジメチルシラン5.4gをテトラヒドロフラン150ミリリットルに希釈し、−50℃以下に冷却した後、n‐ブチルリチウム(1.6M/L)を23.6ミリリットルを30分かけて滴下した。滴下終了後、1時間かけて室温まで昇温し、室温下で4時間反応させて反応液Aを合成した。
【0054】
窒素置換した500ミリリットルフラスコにテトラヒドロフラン200ミリリットル導入し−50℃以下に冷却した後、四塩化ジルコニウム4.38グラムをゆっくり導入した。次いで反応液Aを全量導入した後、3時間かけてゆっくり室温まで昇温した。室温下で2時間反応させた後、さらに60℃に昇温し2時間反応させた。反応終了後、溶媒を減圧留去した後、トルエン100ミリリットルに溶解し再留去によりジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド粗結晶を3.86グラム得た。
【0055】
次いで、この粗結晶をジクロロメタン150ミリリットルに溶解し、500ミリリットルオートクレーブに導入し、白金‐カーボン(0.5重量%白金担持)触媒5グラム導入後、H2=50kg/cm2 G、50℃の条件下で5時間水添反応を行なった。反応終了後、触媒を濾別した後、溶媒を減圧留去し、トルエンで抽出した後再結晶することにより、目的のジメチルシリレンビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド1.26グラムを得た。
【0056】
プロピレンの重合
上記の成分(A)を0.456mg(1μmol )用いる以外は全て実施例−1と同一条件でプロピレンを重合させた。結果を表1に示す。
〔比較例−2〕重合温度を70℃で行なう以外は全て比較例−1と同様にプロピレンを重合させた。結果を表1に示す。
【0057】
〔参考例−1〕
ジメチルシリレンビス(2,4‐ジメチル‐4‐ヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロリドの合成
2‐メチルアズレンを特開昭62−207232号公報記載の方法に従って合成した。すなわち、トロポロン19.5g(0.16モル)とp‐トルエンスルホン酸クロリド40g(0.21モル)をピリジン中で反応させてトシル化トロポロン37.1gを得た。次いで、マロン酸ジメチル20g(0.15モル)とNaOMe 9.7g(0.18モル)とをメタノール中で室温下4時間反応させて3‐メトキシカルボニル2H‐シクロヘプタ(b)フラン2‐オン(化合物(2)を14.4g得た。次いで、化合物(2)を12gとアセトン200mlおよびジエチルアミン70mlを加え、30時間還流した後H2Oを加え、トルエン抽出処理に付したところ39.2グラムのメチル‐2‐メチルアズレンカルボキシレートを得た。さらにリン酸25mlを加え85〜90℃で1時間反応させ、水分解した後、ベンゼン抽出し乾燥した結果、目的の2‐メチルアズレンを6.5グラム得た。
【0058】
次に実施例−1と同様の方法で合成した結果、0.73グラムのジメチルシリレンビス(2,4‐ジメチル‐4‐ヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロリド(成分(A)−2)を得た。
【0059】
プロピレンの重合
上記の成分(A)−2を0.532ミリグラム(1μmol)用いる以外は全て、実施例−1と同一条件でプロピレンを重合させた。結果を表1に示す。
【0060】
〔参考例−2,3〕
参考例−1で合成した成分(A)−2を成分(A)として0.532ミリグラム使用する以外は全て実施例−2,3と同一条件でプロピレンを重合させた。結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
【発明の効果】
本発明の触媒によれば、高融点かつ高分子量のα‐オレフィン重合体を高収率で製造することが可能になることは、「発明の概要」の項において前記したところである。
Claims (3)
- 下記の一般式〔I〕で表される化合物〔但し、エチレンビス(2,4−ジメチル−4−ヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロリドおよびジメチルシリレンビス(2,4−ジメチル−4−ヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロリドを除く〕からなることを特徴とする、α‐オレフィン重合用触媒成分。
- 下記の成分(A)および(B)を組み合わせてなることを特徴とする、α−オレフィン重合用触媒。
成分(A):下記の一般式〔I〕で表される化合物〔但し、エチレンビス(2,4−ジメチル−4−ヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロリドおよびジメチルシリレンビス(2,4−ジメチル−4−ヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロリドを除く〕からなるα‐オレフィン重合用触媒成分。
成分(B):(イ)アルミニウムオキシ化合物、(ロ)ルイス酸、あるいは(ハ)成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物。 - 請求項1のα‐オレフィン重合用触媒成分を用いることを特徴とする、押出し成形や射出成形可能な融点が150.3℃以上のプロピレン重合体の製造方法。
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