JP3710290B2 - 半田用フラックスの這い上がりを防止する組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気接点を有する電子部品または電気接点を有するプリント基板等を半田づけする場合の前処理に用いられる組成物であって、半田用フラックスの這い上がりを防止する組成物に関する。また本発明は該組成物を用いた半田づけ方法、該方法により得られた電子部品またはプリント基板、さらに電気製品に関する。
【0002】
【従来の技術】
プリント基板に各種部品を半田づけする、またはICをICソケットに半田づけする場合には、半田の接着性を向上させるために、あらかじめプリント基板をフラックスで処理することが行われる。一般に、フラックスは酸性成分を含み、腐食性がある。したがって、コネクタ、スイッチ、ボリューム、および半固定抵抗等の電子部品の電気接点部分や、プリント基板における半田づけが不必要な部分には、フラックスが浸透したり付着するのを防ぐ必要がある。特に、電子部品においては、スルーホール部分での半田づけが多く行われる。フラックスがスルーホール部分から毛細管現象等により這い上がり、電子部品の不要な部分に付着または浸透する現象は、フラックスの這い上がりと呼ばれ、これを防ぐ必要がある。
【0003】
フラックスの浸透防止や付着防止を目的として、フラックス這い上がり防止剤が使用されている。半田用フラックス這い上がり防止剤としては、以下の例が知られている。
(1)ポリフルオロアルキル基を含有する化合物、または、それらの重合物を必須成分として含む組成物(特開昭60−49859)。該組成物中には、ヘプタン等の炭化水素系溶剤、酢酸エチル等のエステル系溶剤、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン(CFC−113)等のクロロフルオロカーボン(CFC)、沸点60〜120℃のペルフルオロカーボン(PFC)、または、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン等の含フッ素芳香族炭化水素系溶剤が溶剤として含まれている。
【0004】
(2)ポリフルオロアルキル基を含有する低分子化合物やポリフルオロアルキル基を含有する重合物を、エタノール等のアルコール系溶剤に溶解させた組成物。
(3)テトラフルオロエチレン、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)、フッ化ビニリデン等を重合させたフッ素ポリマー、界面活性剤、および展着剤を水に分散させた組成物(特開平5−175642)。
(4)C8 F17SO2 N(CH2 CH3 )CH2 CH2 OCOCH=CH2 とメタクリル酸ドデシルとの共重合体、およびフッ素を含まない乳化剤を含む水性分散液(特開昭62−149784)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の半田用フラックス這い上がり防止剤には、以下の問題がある。
(1)の組成物は、有機溶剤が可燃性を有するために取扱いに注意を要し、また、揮発性の溶剤を含むことから作業環境上の問題がある。また、溶剤が炭化水素系溶剤である場合には、組成物中の含フッ素成分の溶解性が低い問題もある。また、溶剤のうちCFCは、オゾン層への影響が懸念されており、フロン規制による使用の制約がある。CFCの代替物であるHCFC−225やHCFC−141bにも、同様の問題がある。また、PFCは、地球温暖化係数が高いことから環境への影響が懸念される。含フッ素芳香族炭化水素系溶剤は、可燃性であり、臭気の問題がある。
(2)の組成物は、アルコール系溶剤に対する低分子化合物や重合物の溶解性を上げるために、これらのフッ素含量を下げる必要がある。また、フラックス這い上がり防止効果は、不充分である。
【0006】
(3)の組成物中のフッ素ポリマーは非粘着性であり、基材である電子部品表面への濡れ性および付着性が悪いため、実際には展着剤の添加が必須である。また、該フッ素ポリマーは、軟化点が150℃より高いために、展着剤を介して基材に付着したフッ素ポリマー粒子を乾燥させて塗膜化するためには、高温での熱処理が必須である。この熱処理の温度は、プラスチック部分を有するほとんどの部品の耐熱温度以上になるため、実際には熱処理ができない問題がある。一方、熱処理をしないと、白色固体のフッ素ポリマー粒子が、白色固体として電子部品に付着するおそれがあり、また処理表面の光沢が損なわれる欠点もある。
(4)の組成物は、表面張力が高く、基材である電子部品表面への濡れ性が悪く、実際に電子部品に塗布した際、塗布むらを生じる問題がある。また、該組成物が電気接点部分に付着した場合には導通が不良になる問題がある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、下記重合単位(a1)を含む重合体(A)、フッ素系界面活性剤(B1)、および水系媒体(C)を含む組成物であって、上記組成物中の重合体(A)の濃度が0.01〜3重量%、フッ素系界面活性剤(B 1 )の量が20〜2000ppmであり、水系媒体(C)が水または水に水溶性有機溶剤を含ませたもので、水系媒体(C)中の水の割合が50重量%以上であることを特徴とする半田用フラックスの這い上がりを防止する組成物。
重合単位(a1):ポリフルオロアルキル基を含む不飽和エステルの重合単位、または、炭素−炭素結合間にエーテル性酸素原子が挿入されたポリフルオロアルキル基を含む不飽和エステルの重合単位。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明における重合体(A)は、特定の構成単位、すなわち重合単位(a1 )を含む重合体である。
なお、以下においてポリフルオロアルキル基と炭素−炭素結合間にエーテル性酸素原子が挿入されたポリフルオロアルキル基とを総称して「Rf 基」と記す。アルキル基と炭素−炭素結合間にエーテル性酸素原子が挿入されたアルキル基を総称して「エーテル性酸素原子を含んでいてもよいアルキル基」と記す。アクリレートとメタアクリレートを総称して(メタ)アクリレートと記し、他の(メタ)アクリル酸などについても同様である。
【0009】
重合単位(a1 )は、Rf 基を含む不飽和エステルの重合単位である。
Rf 基は、エーテル性酸素原子を含んでいてもよいアルキル基、の水素原子の2個以上がフッ素原子に置換された基を意味する。Rf 基中のフッ素原子数は、[(Rf 基中のフッ素原子数)/(Rf 基に対応する構造を有するエーテル性酸素原子を含んでいてもよいアルキル基中に含まれる水素原子数)]×100%で表現した場合に、60%以上が好ましく、特に80%以上が好ましい。
【0010】
また、エーテル性酸素原子を有するRf 基としては、オキシポリフルオロエチレン、オキシポリフルオロプロピレン等のオキシポリフルオロアルキレン部分を含有するRf 基が挙げられる。
Rf 基の炭素数は4〜14が好ましく、特に6〜12が好ましい。Rf 基は直鎖構造または分岐構造のいずれであってもよく、直鎖構造が好ましい。分岐構造である場合には、分岐部分がRf 基の末端部分に存在し、かつ、炭素数1〜3程度の短鎖である場合が好ましい。また、Rf 基は末端部分に塩素原子が存在してもよい。Rf 基の末端部分の構造としては、CF3 CF2 −、CF2 H−、CF2 Cl−、(CF3 )2 CF−等の構造が挙げられる。
【0011】
本発明におけるRf 基は、エーテル性の酸素原子を含んでいてもよいアルキル基、の水素原子の実質的にすべてが、フッ素原子に置換された、エーテル性の酸素原子を含んでいてもよいペルフルオロアルキル基(以下RF 基と記す。)が好ましい。RF 基の炭素数は4〜14が好ましく、6〜12が特に好ましい。またRF 基は直鎖構造または分岐構造のいずれであってもよく、直鎖構造の基が好ましい。
RF 基は、アルキル基の水素原子の実質的に全てがフッ素原子に置換された基(すなわち、エーテル性酸素原子を含まない基)が好ましく、特にF(CF2 )n −[nは6〜12の整数]で表される直鎖の基が好ましい。
【0012】
Rf 基の具体例としては、以下の構造が挙げられるがこれらに限定されない。なお、以下の具体例中には、構造異性の基に相当する基も含まれる。
エーテル性酸素原子を含まないRf 基の例。
C2 F5 −、C3 F7 −[F(CF2 )3 −、および(CF3 )2 CF−の両者を含む]、C4 F9 −[F(CF2 )4 −、(CF3 )2 CFCF2 −、(CF3 )3 C−、F(CF2 )2 CF(CF3 )−を含む]、C5 F11−[F(CF2 )5 −、(CF3 )2 CF(CF2 )2 −、(CF3 )3 CCF2 −、F(CF2 )2 CF(CF3 )CF2 −などの構造異性の基を含む]、C6 F13−[F(CF2 )3 C(CF3 )2 −などの構造異性の基を含む]、C8 F17−、C10F21−、C12F25−、C15F31−、HCt F2t−(tは1〜18の整数)、(CF3 )2 CFCs F2s−(sは1〜15の整数)など。
【0013】
エーテル性酸素原子を含むRf 基の例。
F(CF2 )5 OCF(CF3 )−、F[CF(CF3 )CF2 O]s CF(CF3 )CF2 CF2 −、F[CF(CF3 )CF2 O]t CF(CF3 )−、F[CF(CF3 )CF2 O]u CF2 CF2 −、F(CF2 CF2 CF2 O)v CF2 CF2 −、F(CF2 CF2 O)w CF2 CF2 −(sおよびtは、それぞれ独立に1〜10の整数であり、1〜3の整数が好ましい。uは2〜6の整数。vは1〜11の整数であり、1〜4の整数が好ましい。wは1〜11の整数であり、1〜6の整数が好ましい。)など。
【0014】
本発明における重合単位(a1 )は、下式(1)で表されるRf 基含有(メタ)アクリレートの重合単位が好ましい。
CH2 =CR1 COO−Q1 −Rf ・・式(1)
ただし、式中の記号は、以下の意味を示す。
Q1 :単結合または2価連結基。
R1 :水素原子またはメチル基。
Rf :Rf 基。
【0015】
式中のQ1 は2価有機連結基が好ましく、特に、後述の具体例中に挙げるものが好ましい。式中のRf は、エーテル性酸素原子を含まないポリフルオロアルキル基が好ましく、特にエーテル性の酸素原子を含まないペルフルオロアルキル基が好ましい。式(1)で表されるRf 基含有(メタ)アクリレートの具体例としては、下記化合物が挙げられる。
【0016】
【化1】
【0017】
重合体(A)中の重合単位(a1 )は、1種のみであっても2種以上であってもよい。2種以上である場合には、Rf 基部分の炭素数が異なる2種以上の単量体の重合単位であるのが好ましい。
重合体(A)は、重合単位(a1 )以外の重合単位を含んでいてもよい。重合単位(a1 )以外の重合単位としては、Rf 基を持たず重合性の不飽和基を有する単量体(以下、他の単量体という。)の重合単位であれば特に限定されない。他の単量体としては、公知または周知の化合物から採用され、1種または2種以上を使用できる。他の単量体の重合単位を含む重合体(A)を採用した場合には、レベリング性が向上し、塗膜の均一性も向上することから好ましい。
【0018】
他の単量体としては、アクリル酸エステル等のポリオレフィン系不飽和エステル、エポキシ基を有する不飽和エステル、ビニル基を有する化合物、アミノ基と重合性不飽和基を有する化合物、および置換アミノ基と重合性不飽和基を有する化合物から選ばれるのが好ましい。
【0019】
さらに、重合体(A)は、重合単位(a1 )とともに、下記重合単位(a2 )および/または下記重合単位(a3 )を含む重合体であるのが好ましい。
重合単位(a2 ):エチレン、塩化ビニル、スチレン、(メタ)アクリル酸、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレンジオールのモノ(メタ)アクリル酸エステル、およびグリシジル(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上の不飽和化合物の重合単位。
重合単位(a3 ):アミノ基と重合性不飽和基を有する化合物の重合単位、または、置換アミノ基と重合性不飽和基を有する化合物の重合単位。
【0020】
重合単位(a2 )は、重合体(A)の軟化点を下げて、適当な温度に調節する効果がある。また、重合単位(a3 )は、本発明の組成物の濡れ性、重合体(A)の展着性や塗膜のレベリング性を改良する性質がある。なお、重合体(A)が他の単量体の重合単位を含まない場合には、満足するレベリングが得られず、塗膜が均一にならないおそれがある。
【0021】
重合単位(a3 )における置換アミノ基とは、アミノ基の水素原子の1個または2個が1価置換基で置換された基をいう。該1価置換基としては脂肪族炭化水素基が好ましく、特にアルキル基が好ましく、とりわけ炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。なお、以下において、アミノ基と置換アミノ基とを総称して「置換されていてもよいアミノ基」と記す。置換されていてもよいアミノ基としては、ジメチルアミノ基、モノメチルアミノ基、モノエチルアミノ基、ジエチルアミノ基等が好ましい。
【0022】
重合単位(a3 )は、置換されていてもよいアミノ基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物の重合単位が好ましく、特に下式(2)で表される化合物の重合単位が好ましい。
CH2 =CR2 CO−Q2 −NR10R11・・式(2)
ただし、式中の記号は、以下の意味を示す。
R2 :水素原子またはメチル基。
R10、R11:それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基。
Q2 :単結合または2価連結基。
【0023】
式(2)のR10およびR11が炭素数1〜6のアルキル基である場合、メチル基、エチル基、またはイソプロピル基が好ましい。R10およびR11はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、またはエチル基が好ましく、とりわけR10およびR11の一方がメチル基、またはエチル基であるのが好ましい。Q2 の具体例としては下記化合物中の例が挙げられ、単結合またはオキシエチレン基が好ましい。
式(2)の具体例を以下に挙げる。
【0024】
【化2】
CH2 =CHCOO(CH2 )2 N(CH3 )2 、
CH2 =CHCOO(CH2 )2 N(CH2 CH3 )2 、
CH2 =CHCON(CH3 )2 、
CH2 =C(CH3 )CON(CH2 CH3 )2 、
CH2 =CHCONH(CH2 )3 N(CH3 )2 、
CH2 =CHCONHCH(CH3 )2 。
【0025】
重合体(A)が重合単位(a2 )を含む共重合体である場合には、重合体(A)中の重合単位(a1 )の割合は60〜99重量%が好ましく、特に70〜95重量%が好ましい。重合体(A)が重合単位(a3 )を含む共重合体である場合には、重合体(A)中の重合単位(a1 )の割合は50〜99重量%が好ましく、特に70〜90重量%が好ましい。重合単位(a1 )の割合が低いと、塗膜表面の表面張力が下がらず、フラックス這い上がり防止性能が不充分になるおそれがある。
重合体(A)中の重合単位(a2 )の割合は、1〜40重量%が好ましく、特に10〜30重量%が好ましい。重合体(A)中の重合単位(a3 )の割合は、1〜50重量%が好ましく、特に10〜30重量%が好ましい。
【0026】
重合単位(a2 )としては、(メタ)アクリル酸、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレンジオールのモノ(メタ)アクリル酸エステル、またはグリシジル(メタ)アクリレートの重合単位が好ましく、特にアルキル(メタ)アクレートの重合単位が好ましい。アルキル(メタ)アクレートとしては、アルキル基部分の炭素数が6以上であるアルキル(メタ)アクレートが好ましく、特に2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0027】
本発明の重合体(A)は、重合単位(a1 )とともに、重合単位(a2 )および重合単位(a3 )を含む重合体であるのが好ましい。重合体(A)は、重合単位(a1 )、重合単位(a2 )、および重合単位(a3 )以外の重合単位を含んでいてもよいが、本発明においては、含まないのが好ましい。
【0028】
重合体(A)中のフッ素含量は30重量%以上が好ましく、特に45重量%以上が好ましく、とりわけ45〜80重量%が好ましい。フッ素含量が50重量%未満となると、処理後に形成される塗膜表面の臨界表面張力が高くなり、満足するフラックス這い上がり防止性能が得られないおそれがある。
【0029】
重合体(A)の平均分子量は1×103 〜1×107 が好ましく、特に1×104 〜1×105 が好ましく、とりわけ2×104 〜5×104 が好ましい。また、重合体(A)が2種以上の重合単位を含む重合体である場合は、各重合単位の連なり方はブロックでもランダムでもよく、特にランダムが好ましい。
【0030】
本発明の組成物は、重合体(A)とともに、フッ素系界面活性剤(B1 )、および水系媒体(C)を含む。組成物中の重合体(A)は、後述する水系媒体中に粒子となって分散しているのが好ましい。組成物中の分散粒子の粒子径としては、0.01〜1μmが好ましい。本発明の組成物中の重合体(A)の濃度は0.01〜3重量%が好ましく、0.03〜1重量%が特に好ましい。該重合体(A)の濃度が0.01重量%未満では満足するフラックス這い上がり防止の効果が得られないおそれがあり、また、濃度が3重量%より高い場合には、処理した際に形成される該重合体(A)の被膜が厚すぎて半田が付きにくくなるおそれがある。
【0031】
本発明の組成物は、上記重合体(A)を必須とする。通常の処理方法で該組成物を処理する場合、電子部品表面に組成物を付着後、乾燥して重合体(A)を軟化させ均一な塗膜にする。
【0032】
本発明の組成物が汎用性であるためには、重合体(A)の軟化点は低いのが好ましい。電子部品に使用されるプラスチックの耐熱温度は、大部分が150℃程度であることから、重合体(A)の軟化点は150℃未満であるのが好ましい。また乾燥しやすさも考慮すると、重合体(A)の軟化点は、40℃以上150℃未満が好ましく、80〜120℃が特に好ましい。
【0033】
本発明においては、組成物中に、上記重合体(A)とフッ素系界面活性剤(B1 )とを組み合わせて含有させることにより、組成物の表面張力を10〜25dyn/cm(20〜30℃)にできる。フッ素系界面活性剤(B1 )を含まない重合体(A)の水系分散液の通常の表面張力は、40〜70dyn/cm(20〜30℃)程度である。一方、本発明の組成物を適用しうる基材の臨界表面張力は、通常は25〜40dyn/cm程度になる。したがって、フッ素系界面活性剤(B1 )を含む本発明の組成物の表面張力は、基板の表面張力より低くなり、基材への濡れ性や付着性にすぐれ、かつフラックス這い上がり防止性能を発揮する。
【0034】
重合単位(a3 )を含む重合体(A)の水系分散液は、フッ素系界面活性剤(B1 )を含まなくても低表面張力になりうるが、フッ素系界面活性剤(B1 )を添加することによって、さらに表面張力が低下しうる。
【0035】
フッ素系界面活性剤(B1 )としては、フッ素原子を有するイオン性界面活性剤またはフッ素原子を有するノニオン性界面活性剤が挙げられる。
さらに、フッ素系界面活性剤(B1 )としては、Rf 基とアニオン性基とを併有するアニオン性フッ素系界面活性剤、Rf 基とカチオン性基とを併有するカチオン性フッ素系界面活性剤、Rf 基とカチオン性基とアニオン性基とを併有する両性界面活性剤、Rf 基と親水性基とを併有するノニオン性界面活性剤のいずれでもよい。
【0036】
フッ素系のカチオン性界面活性剤の商品名としては、旭硝子社製「サーフロンS−121」、スリーエム社製「フロラードFC−134」、大日本インキ化学工業社製「メガファックF−150」が挙げられる。
フッ素系のアニオン性界面活性剤の商品名としては、旭硝子社製「サーフロンS−111」、スリーエム社製「フロラードFC−143」、大日本インキ化学工業社製「メガファックF−120」が挙げられる。
フッ素系の両性界面活性剤の商品名としては、旭硝子社製「サーフロンS−132」、スリーエム社製「フロラードFX−172」、大日本インキ化学工業社製「メガファックF−120」が挙げられる。
フッ素系のノニオン性界面活性剤の商品名としては、旭硝子社製「サーフロンS−145」、スリーエム社製「フロラードFC−170」、大日本インキ化学工業社製「メガファックF−141」が挙げられる。
【0037】
フッ素系界面活性剤(B1 )量は、組成物中に20〜2000ppmが好ましく、特に100〜1000ppmが特に好ましい。フッ素系界面活性剤(B1 )量を20ppm以上にすることにより、基材に対する組成物の濡れ性、フラックス這い上がり防止性能が向上する。一方、2000ppm以下とすることによって、形成された塗膜の臨界表面張力が低くなり、フラックス這い上がり防止性能も満足に得られる。フッ素系界面活性剤(B1 )を多くした場合には、フッ素系界面活性剤(B1 )が塗膜表面に残存し、臨界表面張力が高く、目的の性能が得られない場合もある。この場合、水を用いて処理基板をリンスして、塗膜表面の界面活性剤を除去してもよいが、リンス、再乾燥の2工程が増えることになり望ましくない。
【0038】
また、本発明の組成物は、水系媒体(C)を含む。水系媒体(C)としては、水、または水に水溶性有機溶剤を含ませたものが挙げられる。水溶性有機溶剤としては、ケトン類、エステル類、グリコール類、グリコールエーテル類、またはアルコール等が挙げられる。水系媒体(C)が、水溶性有機溶剤を含む場合には水系媒体(C)中の水の割合は50〜95重量%が好ましく、一方、水溶性有機溶剤の割合は5〜50重量%が好ましい。
【0039】
さらに水溶性有機溶剤は、乾燥しやすさの点から沸点が40〜200℃であるものが好ましい。また、水系媒体(C)は、20℃における水への溶解度が1重量%以上の有機溶剤であるのが好ましい。さらに組成物中の水系媒体(C)量は5〜50重量%が好ましく、特に10〜30重量%が好ましい。
【0040】
本発明の重合体(A)の製造方法としては、特に限定されない。乳化重合法で合成した場合には、直接本発明の組成物を得られるため好ましい。乳化重合法で実施する場合には、下記方法1または方法2で実施するのが好ましい。
[方法1]媒体および乳化剤の存在下に単量体を乳化させ、つぎに撹拌しながら重合させる方法。
[方法2]重合開始剤を添加する前に、媒体および乳化剤の存在下で単量体をホモミキサーまたは高圧乳化装置により乳化して、つぎに、重合開始源を作用させて重合する方法。
【0041】
上記のいずれの方法においても、単量体として塩化ビニルなどのガス状の単量体を採用する場合には、圧力容器を用いて、加圧下に連続供給してもよい。重合開始源としては、特に限定されず、有機過酸化物、アゾ化合物、過硫酸塩等の通常の重合開始剤、または、γ線のような電離性放射線等が採用できる。媒体としては、水系媒体(C)と同じものを採用するのが好ましい。
【0042】
すなわち、本発明の組成物を乳化重合法で製造する場合には、式(1)で表される化合物と必要に応じた他の単量体を、乳化剤の存在下に、水系媒体(C)中で乳化重合する方法を採用するのが好ましい。
また、上記の方法の全てにおいて、乳化剤はフッ素系界面活性剤(B1 )であっても、また、非フッ素系界面活性剤(B2 )であってもよく、非フッ素系界面活性剤(B2 )を用いるのが乳化作用に優れるため好ましい。
本発明の組成物は、非フッ素系界面活性剤(B2 )も含むのが好ましいことから、乳化重合後に非フッ素系界面活性剤(B2 )を除去することなく、フッ素系界面活性剤(B1 )を加えて調製するのが好ましい。
【0043】
非フッ素系界面活性剤(B2 )としては、HLB値が7以上の非フッ素系非イオン性界面活性剤、炭素数6以上のアルキル基を分子内に有する非フッ素系カチオン性界面活性剤、または、炭素数6以上のアルキル基を分子内に有する非フッ素系アニオン性界面活性剤が好ましい。
【0044】
HLB値が7以上の非フッ素系非イオン性界面活性剤としては、オキシアルキレン単位を分子中に5個以上含有する公知の非イオン性界面活性剤が好ましい。オキシアルキレン単位としては、オキシエチレンまたはオキシプロピレンが好ましい。また、炭素数6以上のアルキル基を分子内に有する非フッ素系カチオン性界面活性剤としては、アルキルアンモニウム塩等が挙げられ、炭素数6以上のアルキル基を分子内に有する非フッ素系アニオン性界面活性剤としては、アルキル硫酸塩等が挙げられる。
【0045】
本発明における非フッ素系界面活性剤(B2 )の具体例を以下に挙げる。
ポリオキシエチレンラウリルエーテル(HLB=14.5、オキシエチレン付加モル数=9)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル(HLB=9.5、オキシエチレン付加モル数=1、オキシプロピレン付加モル数=8)、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(HLB=11.5、オキシエチレン付加モル数=10)、ポリオキシオキシエチレンノニルフェニルエーテル(HLB=8.0、オキシエチレン付加モル数=5)、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジオクチルジメチルアンモニウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ジメチルオクタデシルアミン酢酸塩。
これらのうち、非フッ素系界面活性剤(B2 )としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ジメチルオクタデシルアミン酢酸塩等が好ましい。
【0046】
また、乳化重合時に界面活性剤を用いる場合には、フッ素系界面活性剤(B1 )および非フッ素系界面活性剤(B2 )のいずれを用いてもよく、イオン性の異なる界面活性剤を2種以上併用してもよい。ただし、イオン性の異なる界面活性剤を用いる場合には、カチオン性と非イオン性、アニオン性と非イオン性、または非イオン性と両性とを組合わせるのが好ましい。
【0047】
本発明の組成物はフッ素系界面活性剤(B1 )とともに非フッ素系界面活性剤(B2 )を含むのが好ましく、非フッ素系界面活性剤(B2 )量は、フッ素系界面活性剤(B1 )と非フッ素系界面活性剤(B2 )との合計量に対して50〜80重量%であるのが好ましい。非フッ素系界面活性剤(B2 )は、乳化重合時に用いたものであってもよく、重合後に添加したものであってもよい。
【0048】
また、重合体(A)は、含フッ素溶剤を用いて溶液重合させてもよい。含フッ素溶剤としては、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、2,3−ジヒドロデカフルオロ(n−)ペンタン等のHFC、C3 HF5 Cl2 (旭硝子社製商品名「AK−225」)等のHCFCが挙げられる。該含フッ素溶剤は重合後に除去し、重合体(A)をフッ素系界面活性剤(B1 )の存在下で水系媒体(C)に分散させて本発明の組成物とするのが好ましい。
【0049】
本発明の組成物は、目的や用途に応じて、任意の濃度に希釈されて、被処理物に処理される。処理方法としては、一般的な被覆加工方法が採用できる。たとえば、浸漬塗布、スプレー塗布、または本発明の組成物を充填したエアゾール缶による塗布等の方法がある。
【0050】
被処理物としてはコネクタ、スイッチ、ボリューム、または半固定抵抗等の電気接点を有する電子部品、電気接点を有するプリント基板が挙げられる。本発明の組成物によって処理される箇所としては、プリント基板にコネクタ等の電子部品を半田づけする際に、フラックスの這い上がりがおこりうる箇所が挙げられる。より詳しくは、プリント基板に取り付けるコネクタ等の電子部品の付け根部分、プリント基板の電子部品本体が実装される側の基板表面、または電子部品を取り付けるためのプリント基板に設けられたスルーホール等が挙げられる。本発明の組成物を処理することによって、不要な箇所への半田用フラックスの付着が防止できる。
【0051】
また、本発明の組成物は、接点部分に付着しても、電気特性(たとえば導通性等)および部品の外観を損なわない利点がある。したがって、電子部品またはプリント基板の表面全体に処理してもよく、上記以外の処理方法が採用できる。たとえば、処理効率のよい全浸漬または半浸漬による処理方法も採用でき、好ましい。
【0052】
本発明の組成物を全浸漬で処理する場合には、被処理物である電子部品の種類ごとに重合体(A)の最適濃度がある。全浸漬で処理する場合の、組成物中の重合体(A)の最適濃度範囲としては、電子部品の種類ごとに表1に示すことができる。
【0053】
【表1】
【0054】
表1に示す最適濃度が存在するのは、以下の理由による。すなわち、組成物を全浸漬で処理する場合には、該組成物は、目的とする箇所だけ(たとえばリード線部分だけ)ではなく、それ以外の場所にも付着し、組成物由来の被膜が形成されうる。一方、被処理物となりうる電子部品は、種類または形状により、導通に必要な電気接点の接点荷重が異なる。したがって、本発明の組成物の濃度を調節することにより、電子部品の設置時の各荷重により被膜がはがれる膜厚に調節される。
【0055】
また、本発明の組成物中に、処理が必要な電子部品のみ浸漬する半浸漬による方法では、電子部品における重合体(A)の最適濃度範囲は、いずれの電子部品においても、組成物中に3重量%以下とするのが好ましく、0.01〜0.3重量%とするのが特に好ましい。
【0056】
本発明の組成物は、電子部品またはプリント基板の半田づけをする表面に処理し、つぎに乾燥することにより、該表面に被膜を形成させる。処理後には、乾燥させ、さらにキュアリングさせるのが好ましく、キュアリングにより被処理物表面により均一な被膜を形成させうる。キュアリングの温度は重合体(A)の軟化点超の温度が好ましい。
【0057】
本発明の組成物中には、分散安定性、フラックス這い上がり防止性、絶縁性、または外観等に悪影響を与えない範囲で、他の化合物を含ませてもよい。他の化合物としては、腐食を防止するためのpH調節剤、防錆剤、液中の重合体の濃度を管理するための染料、染料の安定剤、難燃剤、または帯電防止剤等が挙げられる。
【0058】
本発明の組成物は、電子部品またはプリント基板の表面に被膜を形成させ、半田用フラックスの這い上がりを防止する。そして、フラックスによる腐食が防止された電子部品またはプリント基板が提供されうる。
本発明の組成物を乾燥させてなる被膜が表面に形成された電子部品またはプリント基板は、つぎに半田用フラックスで処理され、さらに半田づけが行われ、半田づけがされた電子部品またはプリント基板が提供される。そして該電子部品またはプリント基板は種々の電気製品に用いられる。該電気製品は、フラックスによる腐食が原因で起こり得る障害が防止された、すぐれた品質の電気製品となりうる。該電気製品の具体例としては、コンピュータ用機器、テレビ、オーディオ用機器(ラジオカセット、コンパクトディスク、ミニディスク等に用いられる機器用、携帯電話などが挙げられる。
【0059】
【作用】
本発明の組成物が優れた性能を示す機構は必ずしも明確ではないが、以下のように推測される。すなわち、組成物中に含まれる重合体(A)とフッ素系界面活性剤(B1 )の相互作用により液の表面張力が下がり、濡れ性が改良され、組成物から均一な塗膜が形成される。また、重合体(A)の軟化点が適度に調節されているために、塗膜の質が改良される。また、組成物の乾燥時に重合体(A)中のRf 基は膜表面に規則的に配向し、効率的に性能を発揮する。
【0060】
【実施例】
以下に、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
なお、分子量はゲル透過クロマトグラフィ(GPC)により測定し、ポリスチレン換算した値である。軟化点はDurransの水銀法により測定した値である。
【0061】
[例1]重合体Aの合成例
1リットルのガラス製オートクレーブにF(CF2 )8 (CH2 )2 OCOCH=CH2 167g、シクロヘキシルメタクリレート42g、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(オキシエチレン付加モル数=10、HLB=11.5)21g、ドデシルメルカプタン1g、アセトン52g、イオン交換水365gを加え、50℃で1時間の前乳化を行った。その後2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)塩酸塩2gを加え、オートクレーブを窒素置換した。
【0062】
撹拌しながら60℃に昇温して15時間重合を行い、冷却後、ガスクロマトグラフィ(GC)で分析した結果、F(CF2 )8 (CH2 )2 OCOCH=CH2 およびシクロヘキシルメタクリレートの反応率はともに99%以上であり、重合反応が順調に進行したことがわかった。その後、孔径6μmのフィルタでろ過して乳白色エマルションを得た。エマルションの固形分濃度は30%、分散粒子の粒子径は0.4μmであった。また、共重合体の平均分子量は3×104 、軟化点は130℃、フッ素含量は49重量%であった。
【0063】
[例2]重合体Aの合成例
シクロヘキシルメタクリレートをベヘニルメタクリレートに変更した以外は例1と同様の条件で重合反応を行い、冷却後、GCで分析した結果、F(CF2 )8 (CH2 )2 OCOCH=CH2 およびベヘニルメタクリレートの反応率はともに99%以上であり、重合反応が順調に進行したことがわかった。その後、孔径6μmのフィルタでろ過して乳白色エマルションを得た。エマルションの固形分濃度は34%、分散粒子の粒子径は0.3μmであった。また、共重合体の平均分子量は2×104 、軟化点は100℃、フッ素含量は47重量%であった。
【0064】
[例3]重合体Aの合成例
シクロヘキシルメタクリレートをCH2 =C(CH3 )COO(CH2 CH2 O)4 Hに変更し、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルをジメチルオクタデシルアミン酢酸塩に変更した以外は例1と同様の条件で重合反応を行い、冷却後、GCで分析した結果、F(CF2 )8 (CH2 )2 OCOCH=CH2 およびCH2 =C(CH3 )COO(CH2 CH2 O)4 Hの反応率はともに99%以上であり、重合反応が順調に進行したことがわかった。その後、孔径6μmのフィルタでろ過し乳白色エマルションを得た。エマルションの固形分濃度は32%、分散粒子の粒子径は0.2μmであった。また共重合体の平均分子量は2×104 、軟化点は110℃、フッ素含量は48重量%であった。
【0065】
[例4]重合体Aの合成例
1リットルのガラス製オートクレーブにCF3 (CF2 )7 (CH2 )2 OCOCH=CH2 167g、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート42g、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(オキシエチレン付加モル数=10、HLB=11.5)21g、ドデシルメルカプタン1g、アセトン52g、イオン交換水365gを加え、50℃で1時間の前乳化を行った。その後アゾビス(メチルプロピオンアミジン)塩酸塩2gを加え、オートクレーブを窒素置換した。撹拌しながら60℃に温して15時間重合を行い、冷却後、GC分析した結果、CF3 (CF2 )7 (CH2 )2 OCOCH=CH2 およびN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートの反応率はともに99%以上であり、重合反応が順調に進行したことがわかった。その後、孔径6μmのフィルタでろ過して乳白色エマルションを得た。エマルションの固形分濃度は34%、分散粒子の粒子径は0.1μmであった。また、共重合体の平均分子量は3×104 、軟化点は110℃であった。
【0066】
[例5]比較重合体の合成例
1リットルのガラス製ビーカーに、平均分子量が1×104 かつ軟化点が200℃以上の四フッ化エチレン樹脂20g、展着剤としてカゼインカルシウムを10g、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(オキシエチレン付加モル数=10、HLB=11.5)3g、イオン交換水80gを加え、50℃で1時間乳化操作を行ったところ、固形分濃度33%、粒子径0.5μmの白色エマルションが得られた。
【0067】
[組成物1〜8の調製]
例1〜5で調製したエマルションに、それぞれ表2に示す種類および量(単位:重量%)のフッ素系界面活性剤組成物およびイオン交換水を調合して共重合体濃度が1重量%である組成物1〜8を得た。なお、組成物5〜8は比較組成物である。ただし、サーフロンS−145は、水およびフッ素系非イオン性界面活性剤(30重量%)を含む組成物、サーフロンS−121は、水およびフッ素系カチオン性界面活性剤(30重量%)を含む組成物である。
【0068】
【表2】
【0069】
[性能評価方法および評価結果]
(1)濡れ性
組成物1〜8の濡れ性を評価するために常温での表面張力をウィルヘルミー表面張力計で測定した。結果(単位:dyn/cm)を表3に示す。
(2)造膜性の評価
組成物1〜8を、2000穴/枚のスルーホールを有するプリント基板の非半田面に塗布した後、120℃で5分間加熱処理して水を除去し、塗膜を形成させた。塗膜の表面状態を目視で判定し、以下の基準で判断した。結果を表3に示す。
A:表面に光沢があり、均一な厚さの膜。
B:表面に光沢がなく、厚さが不均一な膜。
C:全体が白くなった膜。
【0070】
(3)フラックス這い上がり防止性能の評価(その1)
容器に約2mmの深さまでフラックスを入れ、その上に(2)で作成した表面に塗膜が形成されたプリント基板5個を乗せ、1分間放置した。1分後にプリント基板のスルーホールを通してフラックスが這い上がったかどうか目視で判定し、這い上がりのあった穴の総数を数えた。結果を表3に示す。
(4)フラックスの付着性(接触角)の評価
組成物1〜8を、それぞれ10重量%エタノール水溶液で共重合体濃度ポリマー濃度が0.2重量%となるように希釈した。通常のスイッチ用材料である、銀めっきリン青銅板を20個用意し、希釈した組成物1〜8にそれぞれ浸漬した。さらに、120℃で5分間加熱処理を行い、表面に塗膜を形成させた。
銀めっきリン青銅板を5個選び、それらの表面におけるフラックスの接触角を協和界面科学社製の液滴式投影形接触角計で測定した。接触角の平均値を表4に示す。
【0071】
(5)接触抵抗の評価
(4)で作成した塗膜の形成された銀めっきリン青銅板を15個選び、ケーエス(KS)部品研究所製の接触抵抗計により、1mmの半球状測定プローブを用いて3端子法で接触抵抗を測定した。測定は、エアコンにより23℃に温度調節がされている部屋で行い、接点荷重10gf、測定ポイント数を1個に対して5箇所(計75箇所)とした。接触抵抗が100mΩ以下を合格とし、合格した測定ポイントの数を求めた。結果を表4に示す。
【0072】
(6)導通性の評価
(4)における銀めっきリン青銅板の代わりに20個のタクトスイッチを用いること以外は同様に希釈された組成物1〜8を浸漬塗布した。これをプリント基板に半田づけした後、導通不良の有無を検査した。導通不良があったものの個数を表4に示す。
(7)フラックス這い上がり防止性能の評価(その2)
(6)の評価に用いたタクトスイッチをプリント基板からはずし、リード線部分の表面状態をそこなわないように分解して、フラックス這い上がりの有無を目視で判定した。這い上がりがあるリード線を有するタクトスイッチ数を数えた。結果を表4に示す。
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】
【0075】
【発明の効果】
本発明の組成物は、オゾン層破壊、地球温暖化の心配がなく、不燃性である水系の組成物である。該組成物においては、臭気の問題もほとんどないため、作業環境上も大変有利である。
該組成物は、効率的な浸漬塗布で処理した場合においても、形成される被膜は、外観が優れ、膜厚の均一性にも優れる。したがって、組成物の成分濃度を調製するたけで、適度な膜厚の被膜を形成でき、導通不良を防ぎうる。また、フラックスの濡れ性にも優れることから、汎用の処理方法を採用できる。さらに、本発明の組成物は、優れたフラックス這い上がり防止性能を示す。
Claims (3)
- 下記重合単位(a1)を含む重合体(A)、フッ素系界面活性剤(B1)、および水系媒体(C)を含む組成物であって、上記組成物中の重合体(A)の濃度が0.01〜3重量%、フッ素系界面活性剤(B 1 )の量が20〜2000ppmであり、水系媒体(C)が水または水に水溶性有機溶剤を含ませたもので、水系媒体(C)中の水の割合が50重量%以上であることを特徴とする半田用フラックスの這い上がりを防止する組成物。
重合単位(a1):ポリフルオロアルキル基を含む不飽和エステルの重合単位、または、炭素−炭素結合間にエーテル性酸素原子が挿入されたポリフルオロアルキル基を含む不飽和エステルの重合単位。 - 重合単位(a1)が、下式(1)で表される化合物の重合単位である請求項1に記載の組成物。
CH2=CR1COO−Q1−Rf・・式(1)
ただし、式(1)においてQ1、R1、およびRfは以下の意味を示す。
Q1:単結合または2価連結基。
R1:水素原子またはメチル基。
Rf:ポリフルオロアルキル基、または、炭素−炭素結合間にエーテル性酸素原子が挿入されたポリフルオロアルキル基。 - 電子部品またはプリント基板の表面に、請求項1または2に記載の組成物を乾燥させてなる被膜を形成させ、つぎに該被膜が形成された表面を半田用フラックスで処理し、つぎに半田づけを行うことを特徴とする電子部品またはプリント基板の半田づけ方法。
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