JP3743619B2 - 微生物数・微生物濃度測定装置および微生物数・微生物濃度測定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶液中の微生物数を測定するための微生物数・微生物濃度測定装置および微生物数・微生物濃度測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、溶液中の微生物数を測定する方法として特開昭57−50652号公報に記載されたもの等の多数の技術が知られている。しかし、従来の技術による微生物数の測定方法は、測定感度は比較的高いが微生物分野及び生化学分野に関する専門知識が必要であったり、また専用で高価な大型の測定装置が必要となり、さらには専任者による作業が必要となる等、とても一般的かつ簡易に微生物数を測定することができるものではなかった。そこで、特開昭59−91900号公報に記載されたものをはじめとする、物理的手段のみを使い、薬剤を一切用いないで、小型で、試料系に組み込んでの自動測定が可能な、簡易な微生物数検出装置が提案されたが、微生物数が10の8乗cells/ml(1ml中に微生物数が1億個)以上にならないと検出できないため、その応用範囲に著しい制限が加えられていた。さらに、これらの小型の簡易型装置では、試料の中の微生物の数を知ることはできるが、どのような種類の微生物がいるかとか、ある特定の微生物がどの程度の数存在しているかといった微生物の種類に関する情報は何も得ることができなかった。
【0003】
また、従来は、抗原抗体反応を行うには、抗体の構造を安定に保つために、緩衝液中で行う必要があり、誘電泳動による微生物の凝集では導電率が高いと凝集が起こりにくいため、塩濃度の高い緩衝液中の微生物を凝集することはできないと考えられる。抗原抗体反応を行うと同時に誘電泳動による凝集を行うことは条件が矛盾するため難しいと考えられる。よってこれまでは、抗原抗体反応後に透析、イオン交換などで脱塩の処理を行うことにより、抗原抗体反応と誘電泳動を同時に行うことを可能としていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来の技術による微生物数・微生物濃度測定装置では、専用の測定装置、専門知識を持った専任者による操作が必要であるという問題点を有していた。また、簡易型の装置では、専任者を必要とせず自動測定が可能になるが、微生物数が非常に多くないと測定が難しく、低感度の測定装置しか得られず、微生物数を知り得たとしても、特定の種類の微生物の数についてはわからないという問題点を有していた。
【0005】
この微生物数・微生物濃度測定装置および微生物数・微生物濃度測定方法では、簡易な構造でありながら、さまざまな試料中の特定の微生物の数を高感度に自動で測定できることが要求されている。
【0006】
本発明は、この要求を満たすため、簡易な構造でありながら、さまざまな試料中の特定の微生物の数を高感度に自動で測定できる微生物数・微生物濃度測定装置、および、さまざまな試料中の特定の微生物の数を簡単かつ高感度に自動で測定するための微生物数・微生物濃度測定方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明の微生物数・微生物濃度測定装置は、所定の抗原決定基をもつ微生物を含有した試料液と、抗原決定基と抗原抗体反応し且つ標識物質を結合した抗体を含有する検液と、溶液中で抗体の構造を安定に保つための安定溶液とを導入し、内部で抗原抗体反応させることができる反応セルと、反応セル内と連通路で連通され、抗原抗体反応した微生物を誘電泳動させて電界集中部に集めるための泳動電極が設けられた測定セルと、泳動電極に交流電圧を印加する泳動電源部と、電界集中部に集められた抗原抗体反応した微生物に結合された標識物質の濃度を測定する測定部と、標識物質の濃度から微生物数及び/または微生物濃度を算出する演算部と、泳動電源部と測定部と演算部とを制御する制御部とを有する構成を備えている。
【0008】
これにより、簡易な構造でありながら、さまざまな試料中の特定の微生物の数を高感度に自動で測定できる微生物数・微生物濃度測定装置が得られる。
【0009】
上記課題を解決するために本発明の微生物数・微生物濃度測定方法は、抗原決定基を備えた微生物含有の試料液と、抗原決定基と抗原抗体反応し且つ標識物質を結合した抗体を含有した検液とを混合して抗原抗体反応させ、試料液中の微生物を誘電泳動によって電界集中部に集めて前記標識物質の濃度から微生物数および/または微生物濃度を算出する構成を備えている。
【0010】
これにより、さまざまな試料中の特定の微生物の数を簡単かつ高感度に自動で測定するための微生物数・微生物濃度測定方法が得られる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の微生物数・微生物濃度測定装置は、所定の抗原決定基をもつ微生物を含有した試料液と、抗原決定基と抗原抗体反応し且つ標識物質を結合した抗体を含有する検液と、溶液中で抗体の構造を安定に保つための安定溶液とを導入し、内部で抗原抗体反応させることができる反応セルと、反応セル内と連通路で連通され、抗原抗体反応した微生物を誘電泳動させて電界集中部に集めるための泳動電極が設けられた測定セルと、泳動電極に交流電圧を印加する泳動電源部と、電界集中部に集められた抗原抗体反応した微生物に結合された標識物質の濃度を測定する測定部と、標識物質の濃度から微生物数及び/または微生物濃度を算出する演算部と、泳動電源部と測定部と演算部とを制御する制御部とを有し、前記反応セルが、前記試料液を導入する第1開口と、前記抗体を含有する検液を導入する第2開口と、前記安定溶液を導入する第3開口とを備え、前記試料液と前記検液と前記安定溶液とが、純水に非電解質を添加したものである測定装置である。
【0012】
この構成により、抗原抗体反応によって特定の微生物に特異的に標識の修飾を行い、誘電泳動によって試料中の微生物を電極付近に集中した後、標識を修飾した特定微生物の数だけを測定することができるため、簡易な構造でありながら試料中の特定種類の微生物の数および/または濃度を高感度に測定することができるという作用を有する。また、3つの開口を制御することにより安定した免疫反応を可能とし、試料液と検液と安定溶液とが純水に非電解質を任意の量添加したものであることから、導電率が低い状態で誘電泳動をさせることができ、さらに高感度な測定が可能となる。
【0017】
本発明の微生物数・微生物濃度測定装置は、前記非電解質が糖アルコールであるものを含む。
【0018】
この構成により、簡易な構造でありながら試料中の特定種類の微生物の数および/または濃度を短時間に高感度に測定することができるという作用を有する。
【0019】
本発明の微生物数・微生物濃度測定装置は、測定部が、光ファイバを含む光学系を有するものを含む。
【0020】
この構成により、簡易な光学系で高感度の微生物数・微生物濃度測定装置を構成することができるという作用を有する。
【0021】
本発明の微生物数・微生物濃度測定方法は、抗原決定基を備えた微生物含有の試料液と、抗原決定基と抗原抗体反応し且つ標識物質を結合した抗体を含有した検液とを混合して抗原抗体反応させ、試料液中の微生物を誘電泳動によって電界集中部に集めて標識の濃度から微生物数および/または微生物濃度を算出する微生物数・微生物濃度測定方法であって、前記試料液または前記検液は、純水に糖アルコールまたは糖類を添加したものである。
【0022】
この構成により、抗原抗体反応と誘電泳動を同時に行うことができるため、微生物を電界集中部に集めることができ、簡易な方法で短時間に高感度な測定が可能になるという作用を有する。
【0023】
本発明の微生物数・微生物濃度測定方法は、微生物含有の試料液と、微生物が有するアミノ基末端と化学反応し微生物を修飾するための標識を含有した検液とを混合して試料液中の微生物を誘電泳動によって電界集中部に集めて標識の濃度から微生物数および/または微生物濃度を算出する微生物数・微生物濃度測定方法であって、前記試料液または前記検液は、純水に糖アルコールまたは糖類を添加したものである。
【0024】
この構成により、抗原抗体による免疫反応が起こりにくい状況においても微生物に標識を修飾することができ、同時に誘電泳動を行うことができ、簡易な方法で短時間に高感度な測定が可能になるという作用を有する。
【0025】
本発明の微生物数・微生物濃度測定方法は、微生物含有の試料液と、微生物が有するチオール基末端とスルフイド結合により微生物を修飾するための標識を含有した検液とを混合して試料液中の微生物を誘電泳動によって電界集中部に集めて標識の濃度から微生物数および/または微生物濃度を算出する微生物数・微生物濃度測定方法であって、前記試料液または前記検液は、純水に糖アルコールまたは糖類を添加したものである。
【0026】
この構成により、免疫反応が起こりにくい状況においても、微生物に不可逆的に標識を修飾することができ、同時に誘電泳動を行うことができ、簡易な方法で短時間に高感度な測定が可能になるという作用を有する。
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図8を用いて説明する。
【0030】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における微生物数・微生物濃度測定装置を示す構成図であり、図2は本発明の実施の形態1における電極を示す説明図、図3は図1の微生物数・微生物濃度測定装置における動作を示すフローチャート、図4は蛍光強度の時間変化を示すグラフである。
【0031】
図1において、1は微生物数を測定するための測定セル、2は図2の電極が配置される電極基板、3は試料液と検液とが反応する反応セル、4は試料系への配管としての試料系配管(第1開口)、5は検液導入口(第2開口)、6は反応セルと測定セル1との連通路、7は排出口、8〜11は電磁弁、12は光源側光ファイバ、13は検出側光ファイバ、14は光源、15は検出器、16は全体を制御する制御部、17は泳動電源を与える泳動電源回路、18は光源14と検出器15に接続された測定部、19は演算部、20は表示部、21は安定溶液入口(第3開口)、22は電磁弁である。また、図2(a)において、31は薄膜電極、32は薄膜電極のギャップ、40は光源側光ファイバから放出された光束の広がる範囲、41は検出側光ファイバの受光範囲であり、図2(b)において、33は薄膜電極間に誘電泳動によって移動した微生物である。
【0032】
ここで、本実施の形態において検出対象としている微生物について説明する。本実施の形態で言う微生物とは一般に、細菌、真菌、放線菌、リケッチア、マイコプラズマ、ウィルスとして分類されているいわゆる微生物学の対象となっている生物のほかに、原生動物や原虫のうちの小型のもの、生物体の幼生、生物体の断片、分離または培養した動植物細胞、精子、花粉、卵、血球、核酸、蛋白質等も含む広い意味での生体または生体由来の微粒子である。また本実施の形態では、測定対象として液体中の微生物を想定している。
【0033】
図1及び図2に示すように、測定セル1内には誘電泳動によって試料液体中の微生物を所定位置に移動させるために、電極基板2上の2つの極からなる薄膜電極31が微小なギャップ32を介して対向して設けられている。本実施の形態1において薄膜電極31は2つの極からなり、図2に示すようにくさび型の電極が対向して配置されている。
【0034】
実施の形態1における電極基板2上の薄膜電極31が本実施の形態における泳動電極である。また、ギャップ32に近接して光源側光ファイバ12と検出側光ファイバ13の端面が配置されている。泳動電極としての薄膜電極31はスバッタリングや蒸着、メッキ等の方法によって電極基板2上に密着して形成された導電体からなり、二つの極からなる薄膜電極の間に形成されるギャップ32付近の電界がもっとも強くなるため、ギャップ32が本実施の形態における電界集中部になる。詳細は後述するが、微生物はもっとも電界が集中するこのギャップ32付近に向かって泳動される。
【0035】
薄膜電極31は極端に抵抗が高くない限りどのような材料から構成されてもよいが、液体中での使用、特に本実施の形態のように水中で使用されることを想定すると、なるべくイオン化傾向が低い金属が望ましい。誘電泳動時には電極間に強い電界が生じるため、印加する周波数と水中の電解質濃度によっては電気分解が生じることがある。電気分解が生じるとイオン化傾向の大きな金属から構成された電極では、電極の溶解が生じ、電極形状の崩れや極端な場合には電極の破断等が生じてしまうものである。このようなことを鑑み、本実施の形態では電極の主材料として白金を使用している。測定セル1は蛍光強度測定時の外部からの迷光の影響を避けるために全面が遮光されている。もちろん、これは蛍光強度検出に迷光の影響がなければよいのであって、系全体を遮光したり、測定セルのうち測定に関わる中部分を遮光したりしてもよいことは言うまでもない。
【0036】
光源側光ファイバ12は石英ガラスを主材料とし、コア径50ミクロン、クラツド径125ミクロンでコアの屈折率に分布を持ち、樹脂製の保護外皮すなわち絶縁性でかつ疎水性のフッソ系薄膜等の有機高分子コーティングが施されている。光源側光ファイバ12は一方を光源14側に、他方をギャップ32に近接して配置され、両端面は光学的に平坦に研磨されている。また図示しないが、光源14と光源側光ファイバ12の間にはレンズ等の光学素子が配置され、光源14の光を光源側光ファイバ12に効率よく入射させている。また、光源14と光源側光ファイバ12の間には、やはり図示しないが、光源が放出する光の長波長側、すなわち測定対象となる蛍光物質の蛍光スペクトルを含む領域の波長をカットするフィルタが挿入されている。本実施の形態では、光原として重水素ランプを用いている。
【0037】
光源側光ファイバ12のギャップ32側の端面からは光源側光ファイバ12内を伝わってくる光源14の光が図2の範囲40に示すように広がって出射する。本実施の形態においては、この光束の広がる範囲40と、少なくとも一方の薄膜電極31の先端とが互いに重なるように配置されている。いいかえるなら、薄膜電極31の端部が液中に入射された光の広がる光学的開口面上またはこの開口面内に配置されることになる。なお、本実施の形態では石英ガラスを主成分とする光ファイバを用いたが、有機高分子を主成分とする光ファイバを用いてもよい。
【0038】
有機高分子を主成分とする光ファイバは、石英ガラスを主成分とする光ファイバと比較して光の伝播時の減衰が大きく、また透過できる波長範囲も限られていることが知られているが、本実施の形態のように伝播距離が通信用途等と比較して極端に短い場合には大きな問題は生じない。但し、紫外域の光を用いる場合には有機高分子による光の吸収が著しく大きくなるため、石英ガラスを主成分とする光ファイバを使うことが望ましい。
【0039】
検出側光ファイバ13は、光源側光ファイバ12同様、石英ガラスを主材料としコア径50ミクロン、クラツド径125ミクロンでコアの屈折率に分布を持ち、樹脂製の保護外皮すなわち絶縁性でかつ疎水性のフッソ系薄膜等の有機高分子コーティングが施されている。検出側光ファイバ13は一方を検出器15側に、他方をギャップ32に近接して配置され、両端面は光学的に平坦に研磨されている。また図示しないが、検出器15と光源側光ファイバ12との間にもレンズ等の光学素子が配置され、光源側光ファイバ12を伝って来た光が効率よく検出器15で検出される。さらに、検出側光ファイバ13と検出器15の間には、検出側光ファイバ13を透過してきた光のうち対象となる蛍光物質の発光スペクトルよりも短波長側をカットするフィルタが挿入されている。光源側に挿入されたフィルタと受光側に挿入されたフィルタとが透過する光の波長域は互いに重なり合わないようになっている。これにより、ギャップ32付近で電極や泳動された微生物によって散乱される光源光が直接検出器15に入ることはなく、蛍光物質からの蛍光のみを高精度で検出することができる。
【0040】
また、検出側光ファイバ13のギャップ32側の端面では図2の受光範囲41の内側から検出側光ファイバ13に入射した光だけが検出器15で検出される。受光範囲41以外の範囲から検出側光ファイバ13に入射した光は検出側光ファイバ13内の光の伝播条件を満たすことができず、検出器15に至る以前に減衰して消滅してしまうものである。検出側光ファイバ13についても有機高分子を主成分とする光ファイバを用いることができる。
【0041】
本実施の形態においては、光源側光ファイバ12と検出側光ファイバ13は同一平面内で互いに135度の角度をもって配置される。この135度というのは望ましい角度の1つであって、後述するような微生物に付着した抗体上の標識物質からの蛍光を測定するのが容易な角度であれば他の角度でもよく、例えば90度付近から170度付近までの角度を採用することができる。さらに、受光範囲41と光束の広がる範囲40が少なくとも一方の薄膜電極31の先端部分と互いに重なるように配置される。いいかえると少なくとも一方の薄膜電極31の端部が光源側と受光側の光学的開口面上またはこの開口面内に配置されることになる。
【0042】
このように光ファイバを含む光学系を構成することにより、ギャップ32付近の蛍光の強度を効率よく測定することができる。反応セル3は、本実施の形態における第1開口としての試料系配管4と第2開口としての検液導入口5とを備え、連通路6を介して測定セル1と連通している。反応セル3内では、試料系配管4から導入される微生物を含んだ試料溶液と検液導入口5から導入される後述する組成の検液としての抗原抗体反応試薬とが混合され、抗原抗体反応が進行する。そして、反応終了後の溶液は連通路6を通って測定セル1内に移送される。試料系配管4、検疫導入口5、連通路6、排出口7はそれぞれ制御部16によって制御される電磁弁8〜11を備えており、後述する一連の手順に従って、電磁弁を解放して各溶液を導入したり、遮断して反応セル3または測定セル1を系から独立させたりといった動作を行うことができるようになっている。
【0043】
泳動電源回路17は誘電泳動を起こすための交流電流を電極基板2間に供給するものである。制御部16は、図示しないマイクロプロセッサや、予め設定されたプログラムを保存するためのメモリ、タイマ等から構成され、あらかじめ設定されたプログラムにしたがって電磁弁8〜11の開閉を行い、泳動電源回路17を制御して電極基板2へ特定の周波数と電圧をもった交流電圧を印加する。さらに、制御部16は測定部18と演算部19と信号の送受信を行ない適宜制御を行うことで測定動作全般の流れを管理する。
【0044】
次に、測定部18は、図示しないマイクロプロセッサ、光源14を点灯させるためのリレー、検出器15からの信号を検出する検出回路、制御部16との間の信号を伝える伝送路等から構成され、詳細は後述するが、微生物に付着した抗体に結合された標識物質からの蛍光強度を測定する。
【0045】
演算部19は、図示しないマイクロプロセッサ、メモリ等から構成され、詳細は後述するが、測定部18にて測定された結果から電極基板2のインピーダンスを解析し、電極基板2間の静電容量を演算する。そして、必要に応じて演算結果をメモリに格納したり、予め保存されているデータを読み出して比較を行なう等して、最終的に試料系配管4に含まれている微生物数を算出し、表示部20に表示を行うなどする。なお、測定部18と演算部19のマイクロプロセッサは制御部16のマイクロプロセッサと共用することができる。また、測定部18と演算部19は制御部16によって制御されており、予め設定されたプログラムに従って一連の測定動作を連携して円滑に進めることができる。
【0046】
表示部20は算出された微生物数を試料1mlあたりの微生物数としてデジタル表示する。表示部20の表示が本実施の形態における微生物数・微生物濃度測定装置の最終出力となる。本実施の形態では、使用者は測定された微生物数を試料1mlあたりの微生物数として直接知ることができるが、表示部20としてはたとえば多いまたは少ないなど、目的に応じてほかの表示方法であっても良い。さらに、試料中の微生物数を調べて投菌装置を制御するとか、温度などの培養条件を制御するなど、使用者が直接微生物数を知る必要がなく、本微生物数・微生物濃度測定装置を含む任意の装置の制御を行うために微生物数が明らかであれば良いような場合には、そのまま制御を行い表示部20は特に設ける必要がないのは言うまでもない。
【0047】
さて、ここで本実施の形態の主要な内容である抗原抗体反応と蛍光検出と誘電泳動についてその基本的な内容を説明する。
【0048】
まず抗原抗体反応について簡単に説明する。抗原抗体反応はある特定の抗原に対して特異的に結合する抗体が存在し、この両者の間で行われる化学反応のことである。抗原抗体反応は生体内における免疫応答機構の研究から明らかになつたものであり、生体内では、たとえば体外から進入した望ましくないウィルスや細菌と自らを構成する細胞との違いを見いだし、ウィルスや細菌のみを攻撃するための目印を付ける役目を担っている。この特異性を利用して特定物質の検出を行うことを目的とした生化学の一分野が免疫測定技術分野であり、免疫クロマト法や、Ε1ISA法は生体関連物質の検出法として広く利用されている。抗原抗体反応の特異的な結合作用について、レジオネラ・ニューモフィラ・セログループ1(以下レジオネラ菌という)を例にして説明するが、以下の説明はレジオネラ菌に限ったことではなく、微生物全般に共通していえることであることはいうまでもない。
【0049】
さて、レジオネラ菌の表面は細胞壁で覆われているが、全面が細胞壁で覆われているわけではなく、栄養分摂取等の外界との物質授受に作用するタンパク質が細胞壁表面に分散するように露出している。これらのタンパク質はレジオネラ菌以外の細菌やその他の微生物、動物細胞に至るまでにおいて共通なものもあるが、レジオネラ菌だけに特異的なものもある。この特異的なタンパク質が抗原として利用できる。このようなタンパク質の種類はただ一つに限られることはなく、レジオネラ菌に特異的なタンパク質、すなわち抗原になりうるタンパク質は複数存在する。また、抗原となりうるタンパク質の露出場所はレジオネラ菌表面に多数存在し、そのそれぞれが抗体と結合することができる。従って、抗原抗体反応が進行するとレジオネラ菌の表面には多量の抗体が結合することになる。
【0050】
一方、抗体も抗原と同様タンパク質様の物質から構成され、異なるタンパク質に対して結合する抗体であってもその基本骨格は同一である。抗体は、その構造の中部に特定タンパクとうまく結合する構造を2カ所持っている。抗体は免疫応答機構に従い生体細胞中で合成される。そして、合成の際に目標となる抗原に対して特異的に結合するような構造に作られる。このようにして得られた抗体と抗原を生体内に近い特定条件の水溶液中で混合すると、両者の結合反応が進行する。詳細は後述するが本実施の形態ではドイツPROGEN社製のマウスIg−G由来のモノクローナル抗体を用いてレジオネラ菌の検出を行っている。
【0051】
抗原と抗体の結合はいわゆる鍵と鍵穴の関係であるといえる。抗原となるタンパク質は炭素、酸素、水素、窒素、硫黄等からなるアミノ酸が多数結合した巨大な高分子であり、アミノ酸の配列の仕方によって特徴的な三次元的な高次横造をなす。この高次構造がタンパク質の機能と密接に関係しており、機能が異なるタンパクでは必ず一部の構造が互いに異なっている。抗体は特定のタンパク質の特徴的な高次構造とうまく嵌合するような構造を持つように作られ、官能基の結合位置がわずかに異なるだけの非常に類似したタンパク質が同時に存在していても高い特異性を持って特定タンパクだけと結合を生じる。さらに、前述したように抗体は特定タンパク質の高次構造と嵌合するような構造を2つずつ持っている。このような抗体の構造により、抗原−抗体−抗原−抗体・・・.という連鎖を生成することもできる。この連鎖が生じると抗原と抗体は凝集塊をつくり、目視でも確認できるような沈殿を生じる。しかしながら、レジオネラ菌の場合には抗体に比較してレジオネラ菌が大きいため巨視的な凝集塊を生じることは少ない。レジオネラ菌と抗体の反応の場合には、抗体は2カ所ある結合構造のうち片方をレジオネラ菌表面の抗原と結合させ、もう一方はなににも結合しないままにしているか、あるいは両方を一個のレジオネラ菌上の2カ所の抗原に結合しているかといった場合が多い。また抗体は分子量15万程度のタンパク質の高次構造体であるため、高次構造の形態が抗原抗体反応を行う上で重要で、この高次構造を安定に保つために任意のpHの緩衝液中で行う必要があり、たとえば純水中では高次構造が変化するために免疫反応が起こりにくいことが知られている。
【0052】
抗体の生産は近年においてはマウスやラットを使うほかに人工的に培養した動物細胞を利用して行うことができ、抗原を入手することができればそれに対して特異的に結合する抗体を生産することは工業的規模で可能となっている。
【0053】
以上、簡阜に抗原抗体反応について説明したが、さらに詳細については、たとえば「免疫学イラストレイテッド」(多田富雄監訳、南江堂)等に記載されている。
【0054】
さて、前述したようにこのような抗原と抗体の特異的な結合は様々な物質の中から特定の物質を検出するための手投として応用されている。抗原の検出を目的として抗原抗体反応を行う際には先に説明したような反応に伴う沈殿の生成を観察したり、固定化した抗体に抗原を反応させ、さらに詳しくは後述するが、検出時の指標となる何らかの標識物質を結合させた抗体を添加し、反応前後の標識物質の量を測定するなどして抗原の有無や定量を行っている。次に本実施の形態で用いている蛍光検出法について説明する。
【0055】
本実施の形態では、レジオネラ菌の表面に特異的に存在する抗原に対し特異的に結合する抗体に蛍光標識を行い、蛍光によるレジオネラ菌の検出を行う例を説明している。蛍光標識とは、レジオネラ菌と抗原抗体反応を行う前に、抗体に対して蛍光物質を化学的に結合させておくということである。蛍光標識を行つた後に、紫外光もしくは可視光の短波長側の光を励起光として抗体に照射することによって、蛍光物質が励起光より長波長側の蛍光を放射する。この蛍光の強度を観察することにより抗体の存在量を知ることができる。以下、蛍光物質を化学的に結合した抗体を標識抗体とする。この標識抗体を用いてレジオネラ菌と抗原抗体反応を行うということはレジオネラ菌表面への抗体の結合、すなわちレジオネラ菌表面への抗体を介した蛍光物質の結合を意味し、反応が進行すると、レジオネラ菌表面は多量の蛍光物質によって覆われることになる。通常、標識抗体は未知量の抗原に対して十分に過剰な量が添加される。本実施の形態においてもこの通例に従っている。十分な量の標識抗体の添加によって抗原となるレジオネラ菌の数に関わらず十分な量の標識抗体をレジオネラ菌に結合させることができる。
【0056】
さて、このような過程を経ることによりレジオネラ菌の表面にだけ特異的に抗体を集め、その結果レジオネラ菌を蛍光物質で修飾することができるが、この状態で試料全体に励起光を照射してもレジオネラ菌の数を調べることは難しい。それは、抗原抗体反応の有無に関わらず試料内の標識抗体の数は変化しないため、試料から放射される蛍光の強度に変化がないからである。標識を修飾された抗体は抗原抗体反応によって試料中に均一に分散していた状態から、レジオネラ菌表面に移動したにすぎず、絶対数は変化していないし、前述したように標識抗体は抗原であるレジオネラ菌に対して十分に過剰な量が添加されているために未結合状態の標識抗体も試料中に多量に存在している。
【0057】
たとえば、励起光を照射した状態で蛍光の発光状態を画像として捕らえ、処理を施すことによって、レジオネラ菌を特に強く発光している輝点として捕らえることは可能であり、この輝点を計数してレジオネラ菌数(他の微生物に対しても応用できることは言うまでもない)を計測する装置も考案されているが、そのような装置は高価な光学系と画像処理のための高速なマイクロプロセッサとを必要とするなど非常に大がかりなものとなり、簡易なものとはとてもいえなくなってしまうものである。本実施の形態においては、詳細は後述するが、蛍光標識抗体によって修飾されたレジオネラ菌を誘電泳動を用いた微生物濃縮を用いることによって高精度、高感度に検出している。
【0058】
次に微生物の誘電泳動現象について簡単に説明するが、必要であれば詳細な説明は文献J.theor.Biol(1972)vol.37,1−13を参照されたい。
【0059】
高周波の交流電圧を印加すると、これによって発生する交流電界の作用で、測定セル1内の微生物はその誘電的な性質によって最も電場が強くかつ不均一な部分、すなわち電界集中部に泳動される。なお、ここで交流電圧というのは、正弦波のほか、ほぼ一定の周期で流れの向きを変える電圧のことであり、かつ両方向の電流の平均値が等しいものである。
【0060】
この時に微生物の誘電体微粒子としての双極子モーメントをμとすると、力Fは電場Eとの間に(数1)の関係を持つ。
【0061】
【数1】
【0062】
さらに、微生物の細胞質の比誘電率をε2、微生物を含んでいる液体の比誘電率をε1、微生物を球体と見なしたときの半径をa、円周率をπとすると、誘電泳動力Fは(数2)のように書き換えることができる。
【0063】
【数2】
【0064】
(数2)は放電泳動による力が電位勾配、媒質と誘電体微粒子としての微生物の比誘電率の差などの影響を受けることを示している。
【0065】
ところで、本実施の形態では電極基板2のギャップ32付近の構成が電界集中部にあたり、中でも最も電界が集中するのはギャップ32である。従ってギャップ32部分にもっとも強く微生物が泳動される。図2に示すギャップ32はくさび状の薄膜電極31の先端が対向している部分である。ギャップ32付近に浮遊する微生物は電極基板2間に生じるこのような電界作用によってギャップ32に引き寄せられ、電気力線に沿って整列する。この時、ギャップ32付近の微生物の移動状態は、試料液体中に存在する微生物数とギャップ32の間隔とに依存するが、十分に微生物数が多い時にはギャップ32が微生物から構成される鎖によって架橋されるほどになる。この際、当初からギャップ32付近に浮遊していた微生物は直ちにギャップ32部分へ移動するし、ギャップ32から離れたところに浮遊していた微生物は距離に応じて所定時間経過後にギャップ32部に至るため、一定時間後にギャップ32付近の所定領域に集まっている微生物の数は測定セル1内の微生物数にも比例する。これは当然のことながら試料系配管4から供給された試料溶液中に存在する微生物数に比例するものである。さて、抗原抗体反応を行う溶液は一般に緩衝液でありイオン濃度も高くよって導電率は非常に高い。これは誘電泳動を効率的に生じさせるためには望ましくない条件である。これについて以下に説明する。
【0066】
本実施の形態においては、詳細は後述するが、誘電泳動を生じさせるために交流の電界を用いる。交流印加の条件下では、誘電率εは複素誘電率ε′で表され、導電率σの影響を受ける。例えば微生物を含んでいる液体の複素誘電率は液体の導電率σ1との関係において(数3)の様になる。
【0067】
【数3】
【0068】
今、微生物を含んでいる液体の導電率σ1が高くなる方向に変化した場合について考えてみると、複素誘電率で考えた(数2)の中の項(ε2−ε1)/(ε2+2ε1)(claucius−Mossoti式と呼ばれている)の値が非常に小さくなり誘電泳動力Fの値は小さくなる。そしてその結果、微生物を電極付近に集めることができなくなり、測定感度は低下することになる。液体の導電率を決定するのはほとんどが液体中に溶解している導電性物質イオンであるので、液体中からイオンを除去してやれば液体の導電率は低下し、その結果誘電泳動力が増大して感度が向上する事になる。液体中からイオンを除去するためには透析やイオン交換などの処理を行うのが望ましい方法である。
【0069】
ところで、本実施の形態におけるギャップ32の間隔は100μmに設定されているが、ギャップ32の間隔は測定対象となる試料溶液中の微生物の濃度の影響を受けるため必要に応じて調節される。本実施の形態のように標識が修飾された抗体からの蛍光を検出して微生物を測定する場合には、誘電泳動によって移動してきた微生物はなるべく塊を作らない方がよい。なぜなら、ギャップ32付近で微生物が塊を作ることにより検出対象の微生物すなわち、標識が修飾された抗体が結合した微生物が塊の中に埋もれてしまい、励起光があたる可能性が低くなってしまうからである。従って、試料溶液中の総微生物濃度が大きな場合にはギャップ32の間隔を広くするのがよい。ギャップ32の間隔が広ければ試料溶液中に多数の微生物が存在していたとしても、電気力線に沿って整列する十分な隙間を確保できるために塊になることがない。こうすることにより、試料中の複数の種類の微生物の中から検出対象である微生物に結合している抗体の標織物質を効率よく励起することができ、検出対象の微生物が少ないときでも高感度に測定を行うことができる。
【0070】
以上のようなことを鑑み、本実施の形態においては、ギャップ32の間隔を100μmとしているが、この値は試料溶液中の微生物主に合わせて0.2〜300μmの範囲で適宜調節されることが望ましい。
【0071】
さて、以下試料の導入から反応セル3内での抗原抗体反応、測定セル1内への移送、測定セル1内の微生物の濃縮、測定、洗浄にいたるまでの一連の流れを説明するが、抗原抗体反応に必要となる試薬の詳細、及び反応条件、測定手順を図3に記載する。そして、本実施の形態では複数の種類の微生物を含む試料溶液中からレジオネラ菌を測定対象として検出を行う場合を例にして説明する。初期状態では電磁弁8、電磁弁10、電磁弁11、電磁弁22は開放状態であり、試料系配管4から流入した複数の微生物を含む試料液と安定溶液系配管21から流入する安定溶液は反応セル3で混合され、測定セル1を自由に通過している。所定のタイミングで、予めプログラムによって設定された測定動作に入ると制御部16は電磁弁8と電磁弁10を閉状態にし、反応セル3を系から独立させる。本実施の形態では反応セル3内の試料液量は900マイクロリットルである(S1)。次いで、制御部16は、電磁弁9を所定時間解放して反応セル3内に検液としての抗原抗体反応試薬を100マイクロリットル導入する(S2)。実施の形態1においては検液にはレジオネラ菌の表面タンパクと特異的に結合する抗体であるドイツPROGEN社製Ant−Legionella SGI,MouseIg−G,Monoclonal抗体が混入されている。さらに、この抗体には蛍光標織物質としてFluorescein(フルオレツセイン)が修飾されている。そしてこのとき電磁弁9を解放する時間によって反応セル3内の試薬の濃度が抗原抗体反応に最適となるようにあらかじめプログラムがなされており、前述したように、測定するレジオネラ菌の数に比較して十分過剰な量の標識抗体が添加される。本実施の形態では反応セル内の標識抗体数が10の12乗個以上になるように検液を調製している。反応セル3内では検液の導入によって、試料液と検液が混ざり合い抗原抗体反応が始まる(S3)。抗原抗体反応は摂氏25度付近の常温でも十分進行するが、より積極的に反応を進めるために摂氏37度付近の恒温に保つことも望ましい。なお、使用する検液は、(化1)で示す化合物18.2gとFITC標識抗体0.1gとを蒸留水1リットルで溶解したものである。
【0072】
【化1】
【0073】
さて、このとき、抗原抗体反応の特異性によって、試料中に複数の種類の微生物が混在していても、その中にレジオネラ菌が含まれていれば、標識抗体はレジオネラ菌表面のタンパク質と特異的に結合し、レジオネラ菌表面の標識抗体の濃度のみが非常に大きくなる。だが、レジオネラ菌が存在しない場合には、標識抗体はレジオネラ菌以外の微生物と特異的な結合を作ることはなく、単に微生物表面への少量の物理吸着を行うのみで、大部分の標識抗体は溶液中にとどまる。所定時間の抗原抗体反応が終了すると制御部16は電磁弁10を一時的に解放し、試料液を測定セル1内に導入する。試料導入後は再び電磁弁10を閉鎖して、測定セル1を系から独立させ、測定部18に測定開始の指示を送って測定動作に入る(S4)。測定部18は直ちに光源14を点灯させ、測定器15からの信号の強度すなわちギャップ32における蛍光の強度を測定する。光源である重水素ランプから放出される光(以下励起光という)のうち485nmよりも長波長側は光源14に挿入されたフィルタにて吸収される。光源側光ファイバ12を透過してきた励起光はギャップ32で光束の広がる範囲に存在する蛍光物質であるフルオレツセインイソチオシアネートを励起する。フルオレツセインイソチオシアネートは励起によって530nm付近にピークを持つ蛍光を発する。
【0074】
検出側光ファイバ13にはこの蛍光と同時にギャップ32付近で散乱された励起光も入射するが、本実施の形態における受光器15内には500nmより短い波長を透過しないフィルタが挿入されているために、受光器には蛍光のみが検出されることになる。測定部18は得られた値を演算部19に送る。演算部19はこの値を初期値としてメモリに格納し、初期値の測定が終了したことを信号を送って制御部16に伝える(S5)。以下、制御部16と測定部18と演算部19は必要に応じて適宜信号のやり取りを行い、予め設定されたプログラムに従った円滑な動作を行う。
【0075】
次いで制御部16は、泳動電源回路17を制御して薄膜電極31間に周波数100kHzでピーク間電圧10Vの正弦波交流電圧を印加させ誘電泳動による試料中の微生物の濃縮が開始される。ここで言うピーク間電圧とは、交番する正弦波交流のプラスとマイナスの振幅の最大値の差である。ここで、(数2)に示されているように、誘電泳動力は電極配置が変化しない場合には印加電圧の二乗に比例して強くなるので、感度の高い測定を行なうためにはなるべく電圧を高くする事が望ましい。しかしながら、あまりに電圧を高くし過ぎると電極近傍の強い電位差の為に泳動された微生物が破壊されてしまう。印加電圧は測定対象とする微生物の種類によって適宜選択されるべきものであり、本実施の形態ではピーク間電圧10Vとしたが、例えば酵母のようにしっかりした細胞壁をもつものでは高めに設定する事ができるし、反対に植物細胞から細胞壁を薬品処理で除去したプロトプラストのようなデリケートな物については印加電圧を低めに設定する必要があるものである。
【0076】
さて、予め設定された所定時間が経過した後に送出される制御部16からの信号により測定部18は再び蛍光強度を測定し、その値を演算部19に送る。演算部19はその値をメモリに格納する。以下、予め設定された時間毎に、制御部16と測定部18は連携して蛍光強度の測定を繰り返す。演算部19は測定された蛍光強度をその都度メモリに格納する(S6)。このように、誘電泳動による微生物のギャップ32付近への移動を行ないながら蛍光強度の測定を繰り返すことによって、蛍光強度の時間変化を調べることができる。
【0077】
誘電泳動のための交流電圧印加開始後予めプログラムされた所定の回数の蛍光強度の測定を行うと、演算部19はメモリに格納されている複数の蛍光強度測定結果から、その時点までの薄膜電極31間の蛍光強度の時間変化の傾きを計算し、後述する変換式に従って試料系の微生物数を算出する(S7)。
【0078】
ここで、図は蛍光強度の時間変化を表すグラフで、ギャップ32付近の蛍光強度の時間変化について図4を用いて説明する。まず、初期状態においては薄膜電極31に電圧は印加されていないため、測定セル1内の試料液は均一な状態にある。よって、ギャップ32付近の蛍光強度は添加される標識抗体の量に応じたバックグラウンドの蛍光すなわち図4に初期値として示した値が観察されるのみである。前述したように、標識抗体は測定されるレジオネラ菌に比較して十分過剰な量が添加されるため、バックグラウンドの値は試料中のレジオネラ菌の数に対して大きな変動をすることはない。また、光ファイバはギャップ32に近接して配置されており、ギャップ32付近の蛍光強度のみを検出できるようになっているので、たまたまギャップ32付近を浮遊している標識抗体で修飾されたレジオネラ菌をバックグラウンドとして検出する可能性は低い。さらに、より正確な測定のために数回のバックグラウンド測定を行うことによって、このような確率的な影響は簡単に排除できるものであることは言うまでもない。薄膜電極31に電圧が印加され誘電泳動による細菌の移動が始まると、ギャップ32の近傍には試料溶液中の微生物が集められてくる。誘電泳動による微生物の移動の際は、微生物の表面に標識抗体が結合しているか否かには関係がなく、試料溶液中のすべての微生物が泳動されてくる。このとき、標識抗体は非常に小さいために誘電泳動による力も小さく、電極近傍に泳動されることはない。
【0079】
さて、誘電泳動開始後の時間経過に伴うギャップ32付近の蛍光強度の変化は試料溶液中にレジオネラ菌が存在する場合としない場合で大きく異なってくる。まず、試料溶液中にレジオネラ菌が存在しない場合、既述したように試料溶液中のレジオネラ菌の有無に関わらず誘電泳動による微生物の移動は進行する。しかしながら、ギャップ32付近での蛍光強度すなわち抗体に結合した標識物質である蛍光物質の濃度はレジオネラ菌以外の微生物の移動と何ら相関しない。なぜなら、抗体自身は誘電泳動によってギャップ32近傍に移動することはなく、またレジオネラ菌以外の微生物に標識抗体が結合することはほとんどないからである。従って、この場合のギャップ32付近の蛍光強度変化はほとんどないか、泳動されてくる微生物に物理的に吸着された少量の抗体に修飾された蛍光物質によるわずかな変化のみである。
【0080】
一方、試料溶液中にレジオネラ菌が存在する場合、誘電泳動によってギャップ32近傍に微生物が集まってくるに従い、ギャップ32付近の蛍光強度は著しく増大する。それは、泳動されてくる微生物中のレジオネラ菌だけが測定に先立つて行われた抗原抗体反応によって、標識抗体による修飾を受けているからである。このとき蛍光強度の変化は、泳動されてくるレジオネラ菌の数に比例し、図4に示すように試料中のレジオネラ菌数が多いほど蛍光強度とその時間変化は大きくなる。この蛍光強度変化を演算することによって複数の微生物が混在する試料溶液中からレジオネラ菌の数だけを算出することが可能になる。
【0081】
さて、蛍光強度変化と試料溶液中のレジオネラ菌の数を関連付けるためには蛍光強度とレジオネラ菌数間の変換式が必要である。この変換式はレジオネラ菌の数が明らかな校正用試料を、本実施の形態で説明した微生物数・微生物濃度測定装置の測定系を用いて予め測定し、その時のレジオネラ菌の数と蛍光強度の間の相関関係からばらつきを回帰分析して得られる曲線をあらわす関数をもちいる。この変換式を演算部19のメモリに記憶させ、微生物数が未知の試料を測定する場合には、所定時間内における蛍光強度変化の値を代入することにより試料溶液中の微生物数を算出できる。
【0082】
ここで本実施の形態の例としてレジオネラ菌用いた説明を行ったが、既述したように抗原と抗体の反応は特異的であり、抗体を産生する事は容易である。よって、レジオネラ菌の代わりに、他の微生物とその微生物に特異的に反応する抗体との組み合わせを用いることにより、本実施の形態で説明した方法で特定の微生物の数を測定することは容易である。
【0083】
試料溶液中のレジオネラ菌数を算出後、演算部19は、測定終了の通知を制御部16に送る。これを受け、制御部16は電極基板2への通電を停止するとともに電磁弁8、10、11を開放して洗津に入る。ギャップ32付近に集まった微生物は、電磁弁8、10、11の開放により流入する試料系配管10の液体によって洗い流され、一連の測定動作が終了する。
【0084】
このように本実施の形態では、微生物数測定に先立って試料液中の特定の微生物を対象とした抗原抗体反応を行うことにより、簡易な構造でありながら、複数の微生物が混在する試料から特定の微生物の数のみを測定することができ、自動測定も可能でメンテナンスフリーの微生物数測定装置を提供することができる。
【0085】
ここで本実施の形態における実施の形態について以下に述べる。
【0086】
試験条件として測定対象をレジオネラ菌、安定溶液をマンニトール溶液0.1M、標識抗体溶液はドイツPROGEN社製Ant−Legionella SGI,Mouse Ig−G,Monoclonal抗体10mg/ml、電極に対して100kHz、ピーク電圧10Vの条件で正弦電圧を印加する。免疫反応時間は15分間でおこない、十分洗浄した後、励起光490nm、蛍光530nmで測定を行った。図5は、横軸に対数表示で細菌数、縦軸に光の強度を256段階で示すグラフである。糖アルコールであるマンニトール溶液中で標識を修飾することにより細菌濃度1000cells/mlまで測定することができ、何も含まない場合と比較するとマンニトールを添加することによる効果が確認された。
【0087】
以上のように、本実施の形態によれば、所定の抗原決定基をもつ微生物を含有した試料液と、抗原決定基と抗原抗体反応し且つ標識物質を結合した抗体を含有する検液と、溶液中で抗体の構造を安定に保つための安定溶液とを導入し、内部で抗原抗体反応させることができる反応セル3と、反応セル3内と連通路6で連通され、抗原抗体反応した微生物を誘電泳動させて電界集中部に集めるための薄膜電極31が設けられた測定セル1と、薄膜電極31に交流電圧を印加する泳動電源部17と、電界集中部に集められた抗原抗体反応した微生物に結合された標識物質の濃度を測定する測定部18と、標識物質の濃度から微生物数および/または微生物濃度を算出する演算部19と、泳動電源部17と測定部18と演算部19とを制御する制御部16とを有することにより、抗原抗体反応によって特定の微生物に特異的に標識の修飾を行い、誘電泳動によって試料中の微生物を電極付近に集中した後、標識を修飾した特定微生物の数および/または濃度だけを測定することができるため、簡易な構造でありながら試料中の特定種類の微生物の数を高感度に測定することができる。
【0088】
また、所定の抗原決定基をもつ微生物を含有した試料液を導入する第1開口4と、抗原決定基と抗原抗体反応し且つ標識物質を結合した抗体を含有する検液を導入する第2開口5と、溶液中で抗体の構造を安定に保つための安定溶液を導入する第3開口21とを備えたことにより、3つの開口を制御することにより安定した免疫反応を可能とし、簡易な構造でありながら試料中の特定種類の微生物の数および/または濃度を高感度に測定することができる。
【0089】
さらに、試料液と検液と安定溶液とが純水に非電解質を添加したものであることにより、簡易な構造でありながら試料中の特定種類の微生物の数および/または濃度を高感度に測定することができる。
【0090】
さらに、純水に添加する非電解質が糖アルコールまたは糖類であることにより、簡易な構造でありながら試料中の特定種類の微生物の数および/または濃度を短時間に高感度に測定することができる。
【0091】
さらに、標識物質が蛍光物質であることにより、測定に感度の高い蛍光法を用いた微生物数測定が可能になる。
【0092】
さらに、測定部18は、光ファイバを含む光学系を有することにより、簡易な光学系で高感度の微生物数・微生物濃度測定装置を構成することができる。
【0093】
(実施の形態2)
図6は本発明の実施の形態2における微生物数・微生物濃度測定装置を示す構成図である。
【0094】
図6において、測定セル1、電極基板2、検液導入口5、電磁弁9、11、21、制御部16、安定溶液入口21は図1と同様のものであり、同一符号を付し、その説明は省略する。62は安定溶液としてのマンニトール溶液、63は試料液と検液の混合液、64は後述の水銀ランプ67を光源として490nmのフィルタを持つ蛍光光源と530nmのフィルタを備えたCCDカメラとを持つ測定装置、65はCCDカメラで取り込まれた映像を取り込み、蛍光の強度を数値化するPC、66は使用済みの移送液、試料液、検液をためるための廃液溜、67は蛍光光源のための水銀ランプである。
【0095】
このように構成された微生物数・微生物濃度測定装置について、その動作を図7〜図9を用いて説明する。図7は図6の微生物数・微生物濃度測定装置の動作を示すフローチャート、図8はアミド結合とマレイミド結合の反応を示す説明図、図9は本発明の実施の形態2における微生物数・微生物濃度測定装置による測定の結果を示すグラフである。実施の形態2の微生物数・微生物濃度測定装置は実施の形態1と重複する部分があるため、実施の形態1と異なる部分について詳細な説明を加える。実施の形態2が実施の形態1と最も異なる部分は抗原と抗体の特異的反応により標識を微生物に修飾する方法に対して、微生物表面の遊離のアミノ基やシステインに含まれるチオール基に対して化学的に標識を修飾する方法であることであり、以下に反応について基本的な内容を説明する。
【0096】
図8の反応の図を見るとわかるように、まず遊離のアミノ基に修飾する方法は、イミド基を末端に持つ標織のエステル体を微生物と溶液中で混合することにより微生物表面の遊離アミノ基、特にε−アミノ基に対して特異的に反応し、アミノ基のHとエステル体のイミド基末端が外れ、−NH−CO−を形成するアミド結合により標識の微生物への修飾が行われる。
【0097】
具体的な例を図7を用いて説明する。なお、図7において、検液は、(化1)の化合物の18.2gとFLUOSの0.05gとDTTの0.01gとFluorescein−5−maleimideの0.1gとを蒸留水1リットルで溶解したものである。図7に示すように、実施の形態1で使用したレジオネラ菌とフアルマシア社製5(6)−Carboxyfluorescein−N−hydroxysuccinimide(FLUOS)による修飾で、試料溶液および安定溶液を測定セルに導入(S11)後、検液であるFLUOSを導入(S12)、FLUOSと微生物の反応(S13)後、蛍光の測定(S14)を行う。またチオール基への修飾は、微生物と還元剤であるジチオスレイトール(DTT)を混合して微生物表面にあるチオール基を遊離化する。その後、マレイミドを末端に持つ標識体を混合することにより遊離化された微生物末端のSと標識体のマレイミド基の−C=C−の2重結合が解離して、−(S)C−C−が形成され標織が微生物に修飾される。具体的にはレジオネラ菌とPIERCECHEMICAL社のFluorescein−5−maleimideによる修飾で、試料溶液と安定溶液を測定反応セルに導入(S11)後、DTTを添加して遊離のチオール基を形成した(S131)後、マレイミドを末端に持つ標識を導入することにより、マレイミド結合を形成し(S132)、標識の修飾が行われる。マレイミド末端を持つ標識と微生物の反応(S13)後、微生物の凝集後、蛍光の測定(S14)を行う。ステップS15、S16は図3のステップS6、S7と同様であるので、その説明は省略する。
【0098】
本実施の形態における実施の形態について、図6、図9を用いて述べる。
【0099】
測定は、準備として電磁弁9を閉じ、電磁弁10、11を開放する。移送液62を流し、配管、セル内の空気を排出する。電磁弁10を閉じ、電磁弁9を開放して、移送液を流し、配管内の空気を排出する。全セル及び配管の空気を排出したら電磁弁9を閉じ電磁弁10、11を開放する。次に、水銀ランプ67に電源を投入して、蛍光光源を安定させ、泳動電源回路17である波形発生装置で正弦波を発生させる。
【0100】
セル内の流れが安定したところで電磁弁10を閉じて電磁弁9を開き、一定量の試料溶液をセル内に流し電極上に細菌を捕集する。試料溶液を流し終わると、電磁弁9を閉じて電磁弁10を開いて不要な細菌を洗い流す。次に、電磁弁10を閉じ電磁弁9を開いて検液をセル内に流し込み、セル内が検液で満たされたところですべての電磁弁を閉じ検液と細菌を反応させる。ここで使用する検液として遊離のアミノ基とアミド結合により結合する活性エステル型のベーリンガー・マンハイム社製の5.(c)−carboxyfluorescein−N−hydroxysuccinimide(FLUOS)が挙げられ、誘電泳動により集められた細菌に試薬を添加することにより免疫反応とは異なり不可逆的に結合する。また、蛍光標織に関してもリッサローダミン、フェノールフタレイン、マラカイトグリーン、テキサスレッドなどがあり、ここではフルオレセイン(黄色201号)を使用する。励起、蛍光のフィルタをそれぞれの蛍光標識に合わせることにより複数の同時測定も可能である。ここでは励起光490nm、蛍光530nmが得られるようなフィルタを使用する。一定時間反応させた後、電磁弁10、11を開いて検液を洗い流す。十分に洗い流したところで490nmの蛍光で励起し530nmの蛍光の光をCCDカメラで捉えて、PC65に取り込み蛍光の強度を画像ソフトで256段階で数値化する。
【0101】
以上の手順により測定を行った結果を図9に示す。測定条件は試料溶液はマンニトール溶液0.1Mに大腸菌を懸濁させたものを1ml流し、電極間隔5μmに100KHzでピーク電圧で10Vの正弦波電圧を電極に印加して細菌の捕捉を行い、第1抗体として13mg/mlのウサギ由来の抗大腸菌抗体を15分間反応させた後に、算2抗体として11mg/mlのFITCヤギ由来の抗ウサギをセルに満たし15分間反応させた。十分洗浄した後、励起光490nm、蛍光530nmで測定を行った。図9は横軸に対数表示で細菌濃度、縦紬に光の強度を256段階で表示している。糖アルコールであるマンニトール溶液中で標識することにより細菌濃度100/mlまで測定することができ、何も含まない場合と比較するとマンニトールを添加することによる効果が確認された。
【0102】
以上のように本実施の形態によれば、微生物含有の試料液63と、微生物が有するアミノ基末端と化学反応し微生物を修飾するための標識を含有した検液63とを混合して試料液中の微生物を誘電泳動によって電界集中部に集めて標識の濃度から微生物数および/または微生物濃度を算出することにより、抗原抗体による免疫反応が起こりにくい状況においても微生物に標識を修飾することができ、同時に誘電泳動を行うことができ、簡易な方法で高感度な測定が可能になる。
【0103】
また、微生物含有の試料液63と、微生物が有するチオール基末端とスルフイド結合により微生物を修飾するための標識を含有した検液63とを混合して試料液中の微生物を誘電泳動によって電界集中部に集めて標識の濃度から微生物数および/または微生物濃度を算出することにより、免疫反応が起こりにくい状況においても、微生物に不可逆的に標識を修飾することができ、同時に誘電泳動を行うことができ、簡易な方法で高感度な測定が可能になる。
【0104】
さらに、試料液または検液が純水に糖アルコールまたは糖類を添加したものであることにより、簡易な構造でありながら試料中の特定種類の微生物の数または微生物濃度を短時間に高感度に測定することができる。
【0105】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の微生物数測定装置によれば、所定の抗原決定基をもつ微生物を含有した試料液と、抗原決定基と抗原抗体反応し且つ標識物質を結合した抗体を含有する検液と、溶液中で抗体の構造を安定に保つための安定溶液とを導入し、内部で抗原抗体反応させることができる反応セルと、反応セル内と連通路で連通され、抗原抗体反応した微生物を誘電泳動させて電界集中部に集めるための泳動電極が設けられた測定セルと、泳動電極に交流電圧を印加する泳動電源部と、電界集中部に集められた抗原抗体反応した微生物に結合された標識物質の濃度を測定する測定部と、標識物質の濃度から微生物数及び/または微生物濃度を算出する演算部と、泳動電源部と測定部と演算部とを制御する制御部とを有し、前記反応セルは、前記試料液を導入する第1開口と、前記抗体を含有する検液を導入する第2開口と、前記安定溶液を導入する第3開口とを備え、前記試料液と前記検液と前記安定溶液とは、純水に非電解質を添加したものとすることにより、抗原抗体反応によって特定の微生物に特異的に標識の修飾を行い、誘電泳動によって試料中の微生物を電極付近に集中した後、標識を修飾した特定微生物の数だけを測定することができるため、簡易な構造でありながら試料中の特定種類の微生物の数および/または濃度を高感度に測定することができるという有利な効果が得られる。
【0108】
また、本発明の微生物数・微生物濃度測定装置によれば、前記非電解質を糖アルコールでとすることにより、簡易な構造でありながら試料中の特定種類の微生物の数および/または濃度を短時間に高感度に測定することができるという有利な効果が得られる。
【0109】
また、本発明の微生物数・微生物濃度測定装置によれば、前記測定部を、光ファイバを含む光学系を有するものとすることにより、簡易な光学系で高感度の微生物数・微生物濃度測定装置を構成することができるという有利な効果が得られる。
【0110】
本発明の微生物数・微生物濃度測定方法によれば、抗原決定基を備えた微生物含有の試料液と、抗原決定基と抗原抗体反応し且つ標識物質を結合した抗体を含有した検液とを混合して抗原抗体反応させ、試料液中の微生物を誘電泳動によって電界集中部に集めて標識の濃度から微生物数および/または微生物濃度を算出するに際して、前記試料液または前記検液は、純水に糖アルコールまたは糖類を添加したものとすることにより、抗原抗体反応と誘電泳動を同時に行うことができるため、微生物を電界集中部に集めることができ、簡易な方法で高感度な測定が可能になるという有利な効果が得られる。
【0111】
また、本発明の微生物数・微生物濃度測定方法によれば、微生物含有の試料液と、微生物が有するアミノ基末端と化学反応し微生物を修飾するための標識を含有した検液とを混合して試料液中の微生物を誘電泳動によって電界集中部に集めて標識の濃度から微生物数および/または微生物濃度を算出するに際して、前記試料液または前記検液は、純水に糖アルコールまたは糖類を添加したものとすることにより、抗原抗体による免疫反応が起こりにくい状況においても微生物に標識を修飾することができ、同時に誘電泳動を行うことができ、簡易な方法で高感度な測定が可能になるという有利な効果が得られる。
【0112】
また、本発明の微生物数・微生物濃度測定方法によれば、微生物含有の試料液と、微生物が有するチオール基末端とスルフイド結合により微生物を修飾するための標識を含有した検液とを混合して試料液中の微生物を誘電泳動によって電界集中部に集めて標識の濃度から微生物数および/または微生物濃度を算出するに際して、前記試料液または前記検液は、純水に糖アルコールまたは糖類を添加したものとすることにより、免疫反応が起こりにくい状況においても、微生物に不可逆的に標識を修飾することができ、同時に誘電泳動を行うことができ、簡易な方法で高感度な測定が可能になるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1における微生物数・微生物濃度測定装置を示す構成図
【図2】本発明の実施の形態1における電極を示す説明図
【図3】図1の微生物数・微生物濃度測定装置における動作を示すフローチャート
【図4】蛍光強度の時間変化を表すグラフ
【図5】横軸に対数表示で細菌濃度、縦軸に光の強度を256段階で示すグラフ
【図6】本発明の実施の形態2における微生物数・微生物濃度測定装置を示す構成図
【図7】図6の微生物数・微生物濃度測定装置の動作を示すフローチャート
【図8】アミド結合とマレイミド結合の反応を示す説明図
【図9】本発明の実施の形態2における微生物数・微生物濃度測定装置による測定の結果を示すグラフ
【符号の説明】
1 測定セル
2 電極基板
3 反応セル
4 試料系配管
5 検液導入口
6 連通路
7 排出口
8、9、10、11、22 電磁弁
12 光源側光ファイバ
13 検出側光ファイバ
14 光源
15 検出器
16 制御部
17 泳動電源回路
18 測定部
19 演算部
20 表示部
21 安定溶液導入口
31 薄膜電極
32 ギャップ
33 微生物
40 光束の広がる範囲
41 受光範囲
62 移送液
63 試料液
84 CCDカメラ
65 PC
66 廃液溜
67 水銀ランプ
Claims (6)
- 所定の抗原決定基をもつ微生物を含有した試料液と、前記抗原決定基と抗原抗体反応し且つ標識物質を結合した抗体を含有する検液と、溶液中で抗体の構造を安定に保つための安定溶液とを導入し、内部で抗原抗体反応させることができる反応セルと、
前記反応セル内と連通路で連通され、前記抗原抗体反応した微生物を誘電泳動させて電界集中部に集めるための泳動電極が設けられた測定セルと、
前記泳動電極に交流電圧を印加する泳動電源部と、
前記電界集中部に集められた抗原抗体反応した微生物に結合された標識物質の濃度を測定する測定部と、
前記標識物質の濃度から微生物数及び/または微生物濃度を算出する演算部と、
前記泳動電源部と前記測定部と前記演算部とを制御する制御部と
を有し、
前記反応セルは、前記試料液を導入する第1開口と、前記抗体を含有する検液を導入する第2開口と、前記安定溶液を導入する第3開口とを備え、
前記試料液と前記検液と前記安定溶液とは、純水に非電解質を添加したものであることを特徴とする微生物数・微生物濃度測定装置。 - 前記非電解質は、糖アルコールであることを特徴とする請求項1に記載の微生物数・微生物濃度測定装置。
- 前記測定部は、光ファイバを含む光学系を有することを特徴とする請求項1または2に記載された微生物数・微生物濃度測定装置。
- 抗原決定基を備えた微生物含有の試料液と、前記抗原決定基と抗原抗体反応し且つ標識物質を結合した抗体を含有した検液とを混合して抗原抗体反応させ、
試料液中の微生物を誘電泳動によって電界集中部に集めて前記標識物質の濃度から微生物数および/または微生物濃度を算出する微生物数・微生物濃度測定方法であって、
前記試料液または前記検液は、純水に糖アルコールまたは糖類を添加したものであることを特徴とする微生物数・微生物濃度測定方法。 - 微生物含有の試料液と、前記微生物が有するアミノ基末端と化学反応し前記微生物を修飾するための標識を含有した検液とを混合して前記試料液中の微生物を誘電泳動によって電界集中部に集めて前記標識の濃度から微生物数および/または微生物濃度を算出する微生物数・微生物濃度測定方法であって、
前記試料液または前記検液は、純水に糖アルコールまたは糖類を添加したものであることを特徴とする微生物数・微生物濃度測定方法。 - 微生物含有の試料液と、前記微生物が有するチオール基末端とスルフイド結合により前記微生物を修飾するための標識を含有した検液とを混合して前記試料液中の微生物を誘電泳動によって電界集中部に集めて前記標識の濃度から微生物数および/または微生物濃度を算出する微生物数・微生物濃度測定方法であって、
前記試料液または前記検液は、純水に糖アルコールまたは糖類を添加したものであることを特徴とする微生物数・微生物濃度測定方法。
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