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JP3629849B2 - 刺繍ミシン - Google Patents

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JP3629849B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、加工布に対して多色縫いの刺繍を形成することができる刺繍ミシンに関するものである。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
近年、例えば家庭用の刺繍ミシンにあっては、加工布に対して、比較的複雑で大形の絵模様を、多色の刺繍糸を用いて刺繍することができるものが供されてきている。このような刺繍ミシンは、内蔵するメモリあるいは外部メモリカードに記憶されている模様データに基づいて動作するのであるが、多色縫いを行う刺繍模様に関しては、前記模様データは、刺繍模様の図柄を色毎に1以上の色別領域に分割した色別領域データと、前記各色別領域に対応した刺繍糸の糸色(推奨する色)を示す糸色データとを含んで構成される。
【0003】
そして、このような刺繍ミシンにあっては、ミシン本体(アーム部)の前面にLCD1(図8参照)等の表示装置を備え、使用者が多色縫いに係る刺繍模様を選択すると、刺繍模様がどのような色別領域から構成されるかや各色別領域に対して何色の刺繍糸を用いるかを使用者に教えるべく、表示装置に、その刺繍模様を色別領域に分解した図柄及び対応する色を表示するようにしていた。
【0004】
具体例をあげると、図8に示すように、使用者が、例えば「チューリップ」の刺繍模様を選択すると、LCD1の画面には、刺繍模様全体の図柄A1、刺繍順序A2、色別領域の図柄A3(この場合、茎及び葉の部分,花の部分,輪郭の3つの色別領域に分解)、各色別領域に関する刺繍糸の色A4が表示されるようになるのである(特開平4−319386号公報参照、他にも特開平7−116365号,特開平7−155487号公報等)。
【0005】
しかしながら、上記従来のもののように、LCD1のひとつの画面に色別領域の図柄A3及び刺繍糸の色A4を表示させるものでは、個々の表示に使用できる画面上の領域(大きさ)が小さくなってしまうため、使用者にとって見にくいものとなっていた。特に、近年では、複雑で大形の模様も刺繍可能となってきており、また、LCD1の表面にタッチパネルを設けて画面上の一部に操作キー部を構成することも多くなってきており、1個の色別領域の図柄の表示に用いることができるLCD1上のスペースがより一層狭くなる傾向にあった。
【0006】
この場合、大形のLCD1を設けることも考えられるが、それでは高価となると共に、ミシン本体全体の大形化を招いてしまうことになる。さらには、カラー表示可能なLCDを用いて糸色の表示を文字でなく実際の色で示すことも考えられるが、やはり高価となる欠点は解消されない。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、多色縫いの刺繍を可能としたものにあって、表示装置の大形化を抑えながらも、刺繍模様の色別領域の図柄及び各色別領域に対応する糸色を判りやすく表示することができる刺繍ミシンを提供するにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1の刺繍ミシンは、刺繍模様の図柄を色毎に1以上の色別領域に分割した色別領域データと、前記各色別領域に対応した刺繍糸の糸色を示す糸色データとを含む模様データに基づいて、加工布に対する刺繍形成動作を実行するものにあって、ミシン本体に設けられた表示装置と、前記模様データに基づいて、前記表示装置に、前記各色別領域の図柄を表示する刺繍模様表示画面及び前記各色別領域に対応した糸色を表示する糸色表示画面を別々に表示させる表示制御手段と、前記表示装置における表示を刺繍模様表示画面と糸色表示画面との間で切換えるための表示切換指定手段とを具備している。
【0009】
これによれば、表示制御手段により、刺繍模様表示画面においては表示装置に各色別領域の図柄が表示され、糸色表示画面においては表示装置に各色別領域に対応した糸色が表示される。このように、色別領域の図柄と糸色とが別々に表示されるので、一画面に両者を同時に表示する場合に比べて個々の表示領域を大きく確保することができる。そして、その画面の切換えは、使用者が表示切換指定手段を操作することによって行うことができ、使用者が見たいと所望する情報を表示装置に表示させることができる。
【0010】
この場合、前記表示装置を、モノクロ表示を行うLCDから構成することができる(請求項2の発明)。これによれば、必要な情報を表示装置に表示しながらも、表示装置自体を安価に済ませることができる。また、前記刺繍模様表示画面及び糸色表示画面においては、色別領域が全部で何色あるかが併せて表示されるように構成することもでき(請求項3の発明)、これによれば、使用者にとって有用な情報を、併せて表示することができる。
【0011】
さらには、前記表示制御手段を、刺繍形成動作の実行中に、現在刺繍形成動作を行っている色別領域が何番目の色別領域かを、前記表示装置に表示させるように構成しても良い(請求項3の発明)。これによれば、刺繍形成動作の実行中にも表示装置の表示を有効に用いることができ、使用者の使い勝手が良くなる。
【0012】
ところで、模様データに含まれる糸色データは、あくまでもデータの供給側が望ましいと推奨するものであるので、実際にどの色の刺繍糸を用いるかは使用者の自由に任せられるものであり、また、多色縫いに係る刺繍模様を一色の刺繍糸を用いて形成することも可能である。この場合、多色縫いにおいては、一の色別領域の縫製が終了した後、次の色別領域の縫製に移る際に、ミシン自体が色替え動作を行ったり、使用者が色替え作業を行う必要がある。
【0013】
そこで、各色別領域を別々の刺繍糸で刺繍する多色縫いモードと、刺繍模様を1種類の刺繍糸で刺繍する単色縫いモードとを切換えるためのモード切換指定手段を設けるようにすれば(請求項5の発明)、使用者が多色縫いに係る刺繍模様について単色縫いを行いたい場合に、モード切換指定手段により単色縫いモードに切換えることができ、このときミシン自体の色替え動作や使用者による色替え作業を省くことができて、効率の良い刺繍形成動作を行うことができるようになる。
【0014】
また、このように単色縫いモードに切換えられたときに、表示制御手段を、刺繍模様表示画面において全色別領域を合成した状態に対応する図柄を表示させると共に、糸色表示画面において糸色を使用者が自由に選択できる旨を表示させるように構成することもできる(請求項6の発明)。これによれば、単色縫いモードにふさわしい表示を行うことができて、使用者が勘違いしたり戸惑ったりすることを未然に防止することができる。
【0015】
そして、前記表示切換指定手段あるいは前記モード切換指定手段を、前記表示装置の画面上に設けられたタッチパネルから構成することもできる(請求項7の発明)。これによれば、表示装置の外部に操作キーを設ける場合と比較して、操作性の向上を図ることができると共に、省スペース化を図ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を家庭用の刺繍ミシンに適用した一つの実施の形態について、図1ないし図7を参照しながら説明する。図6は本実施の形態に係る刺繍ミシンの正面からの外観を示しており、ここで、ミシン本体11は、ミシンベッド12の上方にアーム部13を一体に有して構成されている。前記アーム部13の先端部には、縫針14を有する針棒15が設けられている。
【0017】
一方、前記ミシンベッド12の上面には、前記針棒15に対応して図示しない針板が設けられると共に、その針板の下面側に位置して図示しない釜機構が設けられている。前記針棒15及び釜機構等は、メインモータ16(図7参照)により図示しない駆動機構を介して同期駆動され、以て、縫製動作を実行するようになっている。
【0018】
また、前記ミシンベッド12の上面部には、図示しない加工布を保持するための刺繍枠17と、この刺繍枠17ひいては加工布を水平方向(前後及び左右方向)に自在に移動させるための刺繍枠移動機構18が設けられている。詳しく図示はしないが、前記刺繍枠17は、外枠と内枠とから構成されており、それらの間に加工布を挟み込むことにより、加工布を前記針板の上面部分において枠内に張渡した状態に保持するようになっている。
【0019】
前記刺繍枠移動機構18は、前記刺繍枠17をY方向パルスモータ19(図7にのみ図示)により前後(Y軸)方向に自在に移動させるように構成された移動体20を、X方向パルスモータ21(図7にのみ図示)により左右(X軸)方向に自在に移動させるように構成されている。これにて、刺繍枠17に保持された加工布は、刺繍枠移動機構18により、固有のXY座標系に基づく任意の位置に移動されるのである。
【0020】
このように、刺繍枠移動機構18により、針棒15に対して加工布を自在に移動させながら、前記駆動機構により針棒15などを駆動することにより、刺繍縫い動作が実行されるのである。尚、図6及び図7に示すように、前記アーム部13の先端側の前面部には、スタート・ストップキー22及び針上下キー23が設けられている。
【0021】
さて、前記アーム部13の前面部には、各種の模様やメッセージ等を画面に表示するための表示装置24が設けられている。この場合、この表示装置24は、モノクロ表示を行うLCDからなり、アーム部13に沿って横長に構成された比較的小さいものとされている。この表示装置24には、使用者が刺繍を実行させるにあたって、刺繍模様を選択するための模様種類選択画面が表示されたり、後述するような刺繍模様表示画面(図5(a),(c)参照)や糸色表示画面(図5(b),(d)参照)が表示されるようになっている。
【0022】
また、この表示装置24の表面には、タッチパネル25(図7にのみ示す)が設けられ、このタッチパネル25上に各種の操作キーが設定されるようになっている。このタッチパネル25は、周知のように、透明電極を縦横に並べて構成され、使用者が手指で触れた位置を検出できるようになっている。さらには、アーム部13の前面部には、前記表示装置24の側方に位置して、刺繍模様の呼出し等を指示するための各種のキー26が設けられている。
【0023】
そして、ミシン本体11内には、図7に示すように、各機構を制御するための制御装置27が設けられている。この制御装置27は、CPU28、ROM29及びRAM30等を有するマイクロコンピュータを主体として構成されている。この制御装置27は、前記メインモータ16や刺繍枠移動機構18のX方向パルスモータ21及びY方向パルスモータ19並びに表示装置24等を制御するようになっている。また、この制御装置27には、前記スタート・ストップキー22,針上下キー23,タッチパネル25及び各種キー26からの信号が入力されるようになっている。
【0024】
前記ROM29には、ミシン本体11の刺繍形成動作を制御するための制御プログラム、表示装置24の表示制御用の制御プログラム、模様データの読出し及び刺繍データの作成等のデータ処理を行うためのプログラムなどが記憶されている。そして、これと共に、ROM29には、多数個の刺繍模様に関する模様データが記憶されている。また、制御装置27には、前記ROM29とは別の刺繍模様に関する模様データを記憶する外部ROMカード31(図7にのみ図示)が接続可能とされている。
【0025】
本実施の形態においては、前記ROM29あるいは外部ROMカード31に記憶された模様データは、刺繍模様の図柄を確定するデータ等からなるのであるが、このとき、多色縫いの刺繍模様に関しては、刺繍模様を1以上の色別領域に分割した色別領域データ及び各色別領域に対応した刺繍糸の糸色(推奨する色)を示す糸色データを含んでいる。また、各模様(色別領域)を表示装置24に表示するために必要な表示データ(ビットマップデータ)をも含んでいる。
【0026】
この場合、刺繍形成動作を実行するには、最終的には、一針ごとの加工布のX,Y方向の移動量(針落ち位置)等を示す縫製データが必要となるが、この縫製データは、刺繍形成動作実行時にその模様データ(色別領域データ)から演算により作成されるようになっている。また、この縫製データには、刺繍枠17を駆動するための一針毎の駆動データの他、1個の色別領域に係る駆動データと次の色別領域に係る駆動データとの間に設けられる色替コード、縫製データの最後に設けられる終了コード等を含んでいる。尚、模様データと表示データとを共有したり、一方のみのデータを記憶し、そのデータから他方のデータを作成するようにすることも可能である。
【0027】
これにて、前記制御装置27は、使用者による各種キー26あるいはタッチパネル25の操作に基づき、所定のプログラムに従ってミシンの各機構を制御し、刺繍形成動作を実行させるようになっている。この場合、制御装置27は、使用者が刺繍を実行させたい模様を選択する初期モードでは、表示装置24の画面に多数個の模様を表示させ、使用者はその模様選択画面において、選択操作(タッチパネル25のタッチ操作)を行うことによって刺繍模様を選択することができるようになっている。
【0028】
そして、詳しくは後の作用説明にて述べるように、制御装置27は、そのソフトウエア構成により、選択された刺繍模様が多色縫いに係る刺繍模様であるときには、刺繍形成動作を実行するにあたって、表示装置24に、各色別領域の図柄を表示する刺繍模様表示画面、及び、各色別領域に対応した糸色を表示する糸色表示画面を別々に表示させるようになっている。この模様データ及び刺繍データは、後述する単色縫い用データと、多色縫い用データとの2種類が記憶されている。
【0029】
また、このとき、タッチパネル25に設定される操作キーのうち糸色キーB(図5参照)が使用者によりタッチ操作されることにより、その表示を、刺繍模様表示画面と糸色表示画面との間で切換えるように構成されている。従って、制御装置27が表示制御手段として機能し、タッチパネル25が表示切換指定手段として機能するようになっているのである。
【0030】
さらに、本実施の形態では、上記刺繍模様表示画面及び糸色表示画面においては、選択された刺繍模様の色別領域が全部で何色あるかが併せて表示されるようになっている。また、制御装置27は、刺繍形成動作の実行中において、現在刺繍形成動作を行っている色別領域が何番目の色別領域かを、表示装置27に表示させるようになっている。
【0031】
ところで、使用者は、多色縫いに係る刺繍模様についても一色の刺繍糸を用いた単色縫いを行いたい場合がある。そこで、上記刺繍模様表示画面及び糸色表示画面においては色替キーC(図5参照)がタッチパネル25上に構成されるようになっており、使用者がその色替キーC(図5参照)をタッチ操作することにより、各色別領域を別々の刺繍糸で刺繍する多色縫いモードと、刺繍模様を1種類の刺繍糸で刺繍する単色縫いモードとを切換えることができるようになっている。
【0032】
また、このように単色縫いモードに切換えられたときに、制御装置27は、刺繍模様表示画面においては、全色別領域を合成した図柄を表示させると共に、糸色表示画面においては、糸色を使用者が自由に選択できる旨(具体的には「色自由」)を表示させるようなっている。従って、前記タッチパネル25がモード切換指定手段としても機能するようになっている。
【0033】
次に、上記構成の作用について、図1ないし図5も参照しながら述べる。尚、ここでは、具体例として、図5に示すような「パンダ」の刺繍模様Dを選択した場合を例としてあげながら説明する。この「パンダ」の刺繍模様Dは、多色縫いに係る刺繍模様であり、図5(a)に示すように、「顔のうち白い毛の部分及び目」の領域D1と、「後足の部分」の領域D2と、「耳,目の周り,前足及び全体の輪郭」の領域D3との3つの色別領域に分割される。また、各色別領域の刺繍糸の糸色(推奨する色)は、順に、白,赤,黒とされている。
【0034】
図1のフローチャートは、制御装置27が実行する、使用者による刺繍模様の選択が行われた際の表示装置24の表示制御のメインルーチンを示している。今、ミシン本体11の電源がオンされると、図示はしないが表示装置24には刺繍模様選択用の画面が表示され、使用者は、その画面を見て所望の刺繍模様(この場合「パンダ」の刺繍模様D)を選択することができる。
【0035】
刺繍模様の選択操作が行われると(ステップS1にてYes)、選択された刺繍模様に係る模様データが、ROM29あるいは外部ROMカード31から読出され(ステップS2)、引続き、その刺繍模様の縫製データが設定される(ステップS3)。次に、糸色表示フラグがクリアされると共に(ステップS4)、単色縫いフラグがクリアされる(ステップS5)。後述するように、これら糸色表示フラグ及び単色縫いフラグは、それぞれ、表示装置24の表示を刺繍模様表示画面と糸色表示画面のいずれにするか、及び、表示装置24の表示を多色縫いモードあるいは単色縫いモードのいずれにするかを指し示すものである。
【0036】
そして、次のステップS6にて、表示装置24に刺繍模様表示画面が多色縫いモードで表示される。従って、刺繍模様を選択した直後の表示装置24の表示は、この多色縫いモードにおける刺繍模様表示画面となる。この多色縫いモードにおける刺繍模様表示画面は、図5(a)に示すようになる。
【0037】
この画面においては、上部に、前記色替キーCを含む各種操作キーが設定されるようになっていると共に、右端部に前記糸色キーBが設定され、その糸色キーBの上に、現在刺繍形成動作を行っている色別領域が何番目か(この場合まだ動作は開始されていないが「1」が表示される)の現行領域表示E、及び、色別領域が全部でいくつあるかの個数(この場合「3」)の色数表示Fが、スラッシュ「/」を挟んで示される。そして、残りの領域に、刺繍模様Dの色別領域D1〜D3の図柄が左から縫製順に表示される。
【0038】
このとき、表示装置24はモノクロ表示であるため、色別領域D1〜D3の図柄は、刺繍が形成される(刺繍糸が表面に現れる)部分が黒で表示される。尚、この場合、表示装置24の画面には色別領域の図柄を4個まで表示できる領域が確保されているが、5個以上の色別領域を備える刺繍模様の場合には、2画面以上に渡って各色別領域の図柄を表示したり、色別領域の図柄表示を1個ずつスクロールさせるように構成される。
【0039】
また、このとき、上記した色別領域が全部でいくつあるかの個数を示す色数表示Fは、後述する図3のフローチャートに従って制御されるようになっている(ステップS14)。さらに、上記した現在刺繍形成動作を行っている色別領域が何番目かの現行領域表示Eは、後述する図4のフローチャートに従って制御されるようになっている。
【0040】
そして、このように刺繍模様の選択が行われた後は、前記糸色表示フラグがセットされているか否か(ステップS7)、及び、前記単色縫いフラグがセットされているか否か(ステップS8及びステップS9)が常に監視される。これらフラグのセット及びクリアは、後に説明する図2に示す割込処理(キースキャンルーチン)においてなされるようになっている。
【0041】
ここで、糸色表示フラグがセットされた(単色縫いフラグはクリアのまま)ときには(ステップS8にてNo)、多色縫いモードのまま表示装置24の表示が糸色表示画面に切換えられる(ステップS10)。この多色縫いモードにおける糸色表示画面は、図5(b)に示す通りであり、上記刺繍模様表示画面における、色別領域D1〜D3の図柄部分が、対応する色別領域における糸色表示G(文字表示)に切換えられるのである。この場合、左から「シロ」(色別領域D1に対応)、「アカ」(色別領域D2に対応)、「クロ」(色別領域D3に対応)に切換えられるのである。これら色別領域D1〜D3と色の名称とは、同じ順序で同じ四角形内に表示され、容易に対応関係が視認できる。尚、このとき、糸色キーBの表示が反転されるようになっている。
【0042】
また、糸色表示フラグがクリアのままで単色縫いフラグがセットされたときには(ステップS9にてYes)、多色縫いモードから単色縫いモードに切換えられ、表示装置24は単色縫いモードの刺繍模様表示画面に切換わり、刺繍模様Dの全体の図柄表示がなされるようになるのである(ステップS11)。この図柄表示は、図5(c)に示す通りであり、表示装置24には、全部の色別領域を合成した状態に対応する刺繍模様Dの図柄が表示されるのである。尚、このとき、色替キーCの表示が、図5(a),(b)に対して白黒反転されるようになっている。
【0043】
さらに、単色縫いフラグがセットされた状態(単色縫いモード)で、糸色表示フラグがセットされたときには(ステップS8にてYes)、単色縫いモードの糸色表示画面に切換わり(ステップS12)、図5(d)に示すように、「色自由」の表示Hがなされるようになるのである。尚、いずれのフラグもセットされていないときには(ステップS9にてNo)、表示装置24の表示が、多色縫いモードにおける刺繍模様表示画面のままとなる(ステップS13)。
【0044】
図2のフローチャートは、使用者のキー操作により上記した糸色表示フラグ及び単色縫いフラグがセットされる割込処理の手順を示している。即ち、図1のメインルーチンの実行中には、常にキー操作(タッチパネル25のタッチ操作)があったかどうかがスキャンされており(ステップS21)、ここで、糸色キーBがタッチ操作されると(ステップS22にてYes)、現在の糸色表示フラグの状態が判断され(ステップS23)、クリアされている場合には(No)、糸色表示フラグがセットされ(ステップS24)、逆にセットされている場合には(ステップS23にてYes)、糸色表示フラグがクリアされるのである(ステップS25)。
【0045】
一方、色替キーCがタッチ操作されると(ステップS26にてYes)、現在の単色縫いフラグの状態が判断され(ステップS27)、クリアされている場合には(No)、単色縫いフラグがセットされ(ステップS28)、逆にセットされている場合には(ステップS27にてYes)、単色縫いフラグがクリアされるのである(ステップS29)。
【0046】
従って、図5に矢印で示すように、多色縫いモード及び単色縫いモードのいずれのモードにおいても、使用者がタッチパネル25上に設定される糸色キーBをタッチ操作すれば、表示装置24の表示は、その操作の都度、刺繍模様表示画面と糸色表示画面との間で切換えられる。また、刺繍模様表示画面及び糸色表示画面のいずれが表示されている場合でも、使用者が色替キーCをタッチ操作すれば、表示装置24の表示は、その操作の都度、多色縫いモードと単色縫いモードとの間で切換えられるのである。
【0047】
また、図3のフローチャートは、上記図1におけるステップS14の色別領域数表示のサブルーチンの内容を示している。即ち、まず、単色縫いフラグがセットされているかどうかが判断される(ステップS31)。そして、単色縫いフラグがセットされていないときつまり多色縫いモードのときには(No)、模様データから色数データを読出し(ステップS32)、画面の色数表示Fに、その色数(図5(a),(b)の例では3)が表示される(ステップS33)。一方、単色縫いフラグがセットされているときつまり単色縫いモードのときには(ステップS31にてYes)、図5(c),(d)の例に示すように、画面の色数表示Fに色数1が表示されるのである(ステップS34)。
【0048】
最後に、図4のフローチャートは、上記した現行領域表示Eの表示の制御手順を示している。即ち、まず、ステップS41にて、現在縫製中かどうかが判断され、停止中であるときには(No)、次のステップS42にて、模様選択中つまり縫製開始前であるかどうかが判断される。ここで、縫製開始前であるときには(Yes)、上述のように、模様データが読出され(ステップS43)、その刺繍模様の縫製データが設定される(ステップS44)。そして、このときには、現在が何番目の色別領域かを示す変数Nに1がセットされ、表示装置24の現行領域表示Eに「1」が表示される(ステップS45)。
【0049】
一方、模様選択が終了して使用者により刺繍形成動作開始が指示されると、制御装置は、所定のタイミングで縫製データを1データずつ順に読出しながら刺繍形成動作を実行するのであるが(ステップS46,S47)、そのとき、読出した縫製データが色替コードであるかどうかが判断され(ステップS48)、色替コードであるならば(Yes)、変数Nを1だけインクリメントし(ステップS49)、表示装置24の現行領域表示Eに第N色目が表示されるのである(ステップS50)。
【0050】
また、このときには、詳しく図示はしないが、表示装置24の画面において、色別領域D1〜D3の図柄表示あるいは糸色表示Gが、1個ずつ左側にスクロールされ、現在刺繍を行っている(これから開始する)色別領域が左端部に来るように表示が切換えられるのである(ステップS51)。
【0051】
尚、詳しい説明は省略するが、使用者は上記した表示装置24の糸色表示Gを見て、指定された色の刺繍糸をミシン本体11にセットするようにする。また、上述のように縫製データが色替コードであったときには、刺繍形成動作が一旦停止され、表示装置24に刺繍糸の交換を促す旨の表示がなされる。そして、使用者が次の色の刺繍糸をセットした後再びスタートを指示することにより、次の色別領域に対する刺繍形成動作が開始されるようになっている。
【0052】
また、読出した縫製データが終了コードであるときには(ステップS52にてYes)、変数Nに1がセットされ、表示装置24の現行領域表示Eが「1」に戻されるようになっている(ステップS53)。さらに、読出した縫製データが色替コードでも終了コードでもないときつまり駆動データであるときには(ステップS52にてNo)、その駆動データがセットされて1針分の刺繍形成動作が実行されるようになるのである(ステップS54)。
【0053】
このように本実施の形態によれば、表示装置24に、各色別領域の図柄を表示する刺繍模様表示画面、及び、各色別領域に対応した糸色を表示する糸色表示画面を別々に表示させるようにし、その表示の切換えをタッチパネル25に構成される糸色キーBが使用者によりタッチ操作されることにより行うように構成した。これにより、従来のようなLCD1のひとつの画面に色別領域の図柄A3及び刺繍糸の色A4を表示させるものと異なり、個々の表示に使用できる領域を比較的大きく確保することができた。
【0054】
この結果、表示装置24の大形化を抑えつつ、刺繍模様Dの色別領域D1〜D3の図柄及び各色別領域D1〜D3に対応する糸色表示Gを、使用者にとって判りやすく表示することができるものである。この場合、実施の形態では、前記表示装置24を、モノクロ表示を行う比較的小形のLCDから構成し、しかもタッチパネル25を設けるようにしたので、表示装置24自体を安価且つ小形で済ませることができてミシン本体11の大形化も防止でき、しかも、操作性の向上及び省スペース化を図ることができるものである。
【0055】
また、特に本実施の形態では、表示装置24に、現行領域表示E及び色数表示Fを併せて行うようにしたので、使用者にとって有用な情報を、併せて表示することができると共に、刺繍形成動作の実行中にも表示装置24の表示を有効に用いることができ、使用者の使い勝手を良好とすることができる。
【0056】
さらには、使用者が多色縫いに係る刺繍模様について単色縫いを行いたい場合に、単色縫いモードに容易に切換えることができるように構成したので、より使い勝手が良くなる。しかも、単色縫いモードに切換えられたときに、表示装置24の刺繍模様表示画面において全色別領域を合成した状態に対応する図柄を表示させ、糸色表示画面において「色自由」の表示Hを行うように構成したので、単色縫いモードにふさわしい表示を行うことができて、使用者が勘違いしたり戸惑ったりすることを未然に防止することができるといった利点を得ることができるものである。
【0057】
尚、上述した実施の形態においては、1乃至3色の領域を示す図柄D1乃至D3を単純に重ね合わせると、模様の内側がすべて黒色の表示となってしまうため、パンダてあるか否かが識別不能になってしまうので、単色用の模様データに基づいて色別領域を合成した状態に対応する図柄D(白抜き部分がある図柄:顔の部分が抜けている)を表示している。しかしながら、画面での識別の為に、領域毎に濃淡を変更したりやカラーディスプレイを用いる場合は、そのような対応する図柄ではなく、全色別領域を組み合わせた図柄と完全一致する図柄であっても良い。その他、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得るものである。
【0058】
【発明の効果】
以上の説明にて明らかなように、本発明の刺繍ミシンによれば、多色縫いの刺繍を可能としたものにあって、表示装置に、各色別領域の図柄とそれら各色別領域に対応した糸色とを別々に表示させるように構成したので、表示装置の大形化を抑えながらも、刺繍模様の色別領域の図柄及び各色別領域に対応する糸色を判りやすく表示することができるという優れた実用的効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示すもので、刺繍模様選択時の表示装置の表示制御の手順を示すフローチャート
【図2】割込処理の手順を示すフローチャート
【図3】色別領域数表示のサブルーチンを示すフローチャート
【図4】現行領域表示の表示の手順を示すフローチャート
【図5】表示装置の画面の例を示す図
【図6】ミシン本体を示す正面図
【図7】電気的構成を概略的に示すブロック図
【図8】従来例を示すもので、表示装置の画面の例を示す図
【符号の説明】
図面中、11はミシン本体、17は刺繍枠、24は表示装置、25はタッチパネル(表示切換指定手段,モード切換指定手段)、27は制御装置(表示制御手段)、Bは糸色キー、Cは色替キー、Dは刺繍模様、D1〜D3は色別領域、Eは現行領域表示、Fは色数表示、Gは糸色表示を示す。

Claims (7)

  1. 刺繍模様の図柄を色毎に1以上の色別領域に分割した色別領域データと、前記各色別領域に対応した刺繍糸の糸色を示す糸色データとを含む模様データに基づいて、加工布に対する刺繍形成動作を実行する刺繍ミシンであって、
    ミシン本体に設けられた表示装置と、
    前記模様データに基づいて、前記表示装置に、前記各色別領域の図柄を表示する刺繍模様表示画面及び前記各色別領域に対応した糸色を表示する糸色表示画面を別々に表示させる表示制御手段と、
    前記表示装置における表示を刺繍模様表示画面と糸色表示画面との間で切換えるための表示切換指定手段とを具備することを特徴とする刺繍ミシン。
  2. 前記表示装置は、モノクロ表示を行うLCDからなることを特徴とする請求項1記載の刺繍ミシン。
  3. 前記刺繍模様表示画面及び糸色表示画面においては、色別領域が全部で何色あるかが併せて表示されることを特徴とする請求項1又は2記載の刺繍ミシン。
  4. 前記表示制御手段は、刺繍形成動作の実行中に、現在刺繍形成動作を行っている色別領域が何番目の色別領域かを、前記表示装置に表示させるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の刺繍ミシン。
  5. 前記各色別領域を別々の刺繍糸で刺繍する多色縫いモードと、全ての色別領域を1種類の刺繍糸で刺繍する単色縫いモードとを切換えるためのモード切換指定手段を具備することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の刺繍ミシン。
  6. 前記単色縫いモードに切換えられたときには、前記表示制御手段は、刺繍模様表示画面において全色別領域を合成した状態に対応する図柄を表示させると共に、糸色表示画面において糸色を使用者が自由に選択できる旨を表示させるように構成されていることを特徴とする請求項5記載の刺繍ミシン。
  7. 前記表示切換指定手段あるいは前記モード切換指定手段は、前記表示装置の画面上に設けられたタッチパネルからなることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の刺繍ミシン。
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