JP3624803B2 - 車両の衝撃吸収部材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は車両の衝撃吸収部材に係り、特に、自動車等の車両におけるサイドメンバ等の車両骨格部材の先端に配設される車両の衝撃吸収部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車等の車両におけるサイドメンバ等の車両骨格部材の先端に配設される車両の衝撃吸収部材としては、その例が特表平6−503782号公報、USP4152012に開示されている。
【0003】
図10に示される如く、特表平6−503782号公報の車両の衝撃吸収部材では、衝撃吸収部材としてのアルミニウム押し出し成形部品70が、鋳造部品72の形成された円筒状の収容部74内に挿入されており、収容部74の前端部74Aにおいて溶接されている。
【0004】
また、図11に示される如く、USP4152012の車両の衝撃吸収部材では、板厚の異なる複数の衝撃吸収部材80、82、84が連結され、車両骨格部材としてのサイドメンバ86の前端部に配設されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの車両の衝撃吸収部材では、軸方向に圧縮変形させたい衝撃吸収部材の外周壁部に重合部90(図10参照)または連結フランジ92(図11参照)がある。この結果、軸方向(図10、図11の矢印F方向)に荷重が作用した場合に、重合部90または連結フランジ92が、衝撃吸収部材における他の部位に比べて変形し難い、または、変形しない。このため、衝撃吸収部材が重合部90または連結フランジ92との境を起点に座屈変形し易く、エネルギー吸収能力が低下する。また、重合部90または連結フランジ92により、衝撃吸収部材の重量増加及びコスト増加を招いている。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、重量増加及びコスト増加を招くことなく、エネルギ吸収能力を確実に向上できる車両の衝撃吸収部材を得ることが目的である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明は、車両骨格部材の端部に配設される車両の衝撃吸収部材において、
押出し成形され中空部を形成する外周壁部と、鍛造成形され前記外周壁部と略直交する座部と、を有し、
前記座部が、前記外周壁部の外側へ向かう外側フランジと、前記外周壁部の内側へ向かう内側フランジと、前記車両骨格部材側へ突出し、前記外周壁部の延長線上に配置され前記外周壁部と同じ断面形状とされた突出壁と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
従って、外周壁部を押出し成形し、座部を鍛造成形したため、衝撃吸収部材の全体を鋳造により成形する場合に比べて、柔らかい材料を使えると共に、溶接熱等による材料特性の変化もない。また、外周壁部の板厚を自由に可変できるので、板厚の境となる部位に従来構造のような連結フランジが形成されず、この連結フランジに起因する座屈変形も発生しない。この結果、衝撃吸収部材のエネルギ吸収能力を確実に向上できる。
また、衝撃吸収部材の外周壁部と座部との間に従来構造のような重合部が存在しないため、重合部を起点とする衝撃吸収部材の座屈変形を防止できると共に、重合部により重量増加及びコスト増加を招くこともない。また、座部に形成した外周壁部の外側へ向かう外側フランジと、外周壁部の内側へ向かう内側フランジとによって、外周壁部の端部において、荷重作用時に外周壁部が倒れ難くなる。この結果、外周壁部の端部が座屈変形するのを防止でき、外周壁部が軸方向に確実に圧縮変形するため、エネルギ吸収能力を確実に向上できる。
また、突出壁により、高いエネルギー収部特性を確保した上で、座部と車両骨格部材との間に別部品の組付けが可能となる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明における車両の衝撃吸収部材の第1実施形態を図1〜図3に従って説明する。
【0018】
なお、図中矢印FRは車体前方方向を、矢印UPは車体上方方向を、矢印INは車幅内側方向を示す。
【0019】
図3に示される如く、本実施形態では、自動車車体における前部の車幅方向両端下部近傍に車体前後方向に沿って配設された車両骨格部材としての左右一対のフロントサイドメンバ10の先端部(前端部)に、衝撃吸収部材としてのクラッシュボックス12を介して、バンパリインフォースメント14が取り付けられている。なお、フロントサイドメンバ10とクラッシュボックス12との連結部には、樹脂材で成形されたフロントエンドモジュール16の取付部16Aが挟持されている。
【0020】
フロントサイドメンバ10は、断面矩形状の閉断面構造とされており、前端部には、前端開口部を閉塞する矩形板状の座部10Aが配設されており、この座部10Aの四隅に形成された凸部には、取付孔18が延設されている。また、これらの取付孔18と対向するフロントエンドモジュール16の取付部16Aの各部位にも取付孔20が形成されている。
【0021】
図2に示される如く、クラッシュボックス12は、アルミニウムの押出し成形品から成り、中空部22を形成する外周壁部24と、この外周壁部24の後端部に形成した座部26と、を有している。また、外周壁部24は矩形状の閉断面構造とされており、外周壁部24と略直交している座部26は矩形板状とされ、その四隅に形成された凸部には、取付孔28が形成されている。なお、クラッシュボックス12は、マグネシウム等の他の金属の押出し成形品としても良い。
【0022】
図3に示される如く、クラッシュボックス12の取付孔28、フロントエンドモジュール16の取付孔20、及びフロントサイドメンバ10の取付孔18には、車両前方側から締結部材としてのボルト30がそれぞれ挿入されており、各ボルト30の螺子部には、車両後方側からナット32が螺合されている。
【0023】
図1に示される如く、クラッシュボックス12の座部26は、外周壁部24の後端部を、冷間鍛造(金属が再結晶する温度より低い温度条件での鍛造)することで成形しており、座部26は、外周壁部24の外側へ向かう外側フランジ26Aと、外周壁部24の内側へ向かう内側フランジ26Bとを備えている。
【0024】
また、座部26には、フロントサイドメンバ10側、即ち車両後方側へ向けて突出壁26Cが突出形成されている。突出壁26Cは、外周壁部24と同じ断面形状とされており、外周壁部24の延長線上に配設されている。
【0025】
また、突出壁26Cは、フロントサイドメンバ10への取付け状態(図1に示す状態)で、フロントサイドメンバ10との間に間隙40が形成されており、クラッシュボックス12に前方(図1の矢印A方向)から所定値以上の荷重が作用した場合には、クラッシュボックス12の座部26とフロントサイドメンバ10の座部10Aとの間に挟持されたフロントエンドモジュール16の取付部16Aが潰れ、突出壁26Cがフロントサイドメンバ10の座部10Aに当接するようになっている。
【0026】
なお、クラッシュボックス12における外周壁部24の前端部24Aは、バンパリインフォースメント14の取付面14A(図3参照)に対応して平面視において傾斜面となっている。
【0027】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0028】
本実施形態では、クラッシュボックス10の外周壁部24と座部26との間に、図10に示す従来構造のような重合部90が存在しないため、重合部を起点とするクラッシュボックス10の座屈変形を防止できると共に、重合部により重量増加及びコスト増加を招くこともない。
【0029】
また、本実施形態では、クラッシュボックス10の座部26に形成した外側フランジ26Aと内側フランジ26Bとによって、外周壁部24における上下左右の各壁部が、略前方(図1の矢印A方向)から荷重に対して倒れ難くなっている。即ち、座部26によって、外周壁部24の後端部において、発生する曲げモーメント(図1の矢印S1、S2)を抑制できるので、この点においても、クラッシュボックス10の座屈変形を防止できる。この結果、外周壁部24が軸方向に確実に圧縮変形するため、エネルギーを効果的に吸収できる。
【0030】
また、本実施形態では、クラッシュボックス12を鋳造により成形する場合に比べて、柔らかい材料を使えると共に、別部材を溶接によって連結する場合に比べて、溶接熱により材料のエネルギー吸収特性が低下することもない。また、鍛造によりクラッシュボックス12の外周壁部24の板厚を自由に可変できるので、板厚の境となる部位に図11に示す従来構造のような連結フランジ92が形成されず、この連結フランジ92に起因する座屈変形も発生しない。この結果、クラッシュボックス12のエネルギ吸収能力を確実に向上できると共に、板厚の調整も容易である。
【0031】
また、本実施形態では、クラッシュボックス12における座部26に形成した、突出壁26Cにより、座部26とフロントサイドメンバ10との間にフロントエンドモジュール16の組付けが可能となる。
【0032】
また、本実施形態では、フロントサイドメンバ10への取付け状態(図1に示す状態)で、突出壁26Cとフロントサイドメンバ10との間に間隙40が形成されているため、フロントエンドモジュール16の取付部16Aの厚さが、突出壁26Cの高さよりも常に大きく、締結の軸力確保の妨げにならない。一方、クラッシュボックス12に前方から所定値以上の荷重が作用した場合には、クラッシュボックス12の座部26とフロントサイドメンバ10の座部10Aとの間に挟持されたフロントエンドモジュール16の取付部16Aが潰れ、突出壁26Cがフロントサイドメンバ10の座部10Aに当接する。この結果、荷重をフロントサイドメンバ10へ確実に伝達できる。
【0033】
次に、本発明における車両の衝撃吸収部材の第2実施形態を図4に従って説明する。
【0034】
なお、第1実施形態と同一部材に付いては、同一符号を付してその説明を省略する。
【0035】
図4に示される如く、本実施形態では、クラッシュボックス12の外周壁部24は、2つの異なる板厚M1、M2からなり、車体前部24Bの板厚M1が車体後部24Cの板厚M2に比べて薄くなっている(M1<M2)。なお、車体前部24Bと車体後部24Cとの境となる傾斜部24Dの傾斜角度αは45度に設定されている。
【0036】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0037】
本実施形態では、第1実施形態の作用に加えて、外周壁部24の板厚M1、M2及び、傾斜部24Dの前後方向の位置を変えることで、所望のエネルギー吸収特性が容易に得られる。
【0038】
また、荷重が車体前方(図4の矢印A方向)から作用した場合に、板厚を薄くした外周壁部24の車体前部24B側からクラッシュボックス12を潰していくことができる。この結果、車体前部24Bに比べ潰れ難い車体後部24Cの近傍に周辺部品を配設する等の構成とすることによって、損傷個所を低減でき修理または交換する部品を低減できる。
【0039】
なお、本実施形態では、板厚をM1、M2の2種類としたが、図5に示される如く、板厚をM1、M2、M3の3種類としても良く、更には、4種類以上(図示省略)の板厚としても良い。また、図6に示される如く、外周壁部24における、前後上下左右の各板厚、例えば、車幅方向外側壁部24Eの板厚M4、M5と車幅方向内側壁部24Fの板厚M6、M7とを異ならせた構成としても良い。また、外周壁部24における、前後上下左右の一部、例えば、左右の壁部のみの板厚を変えた構成としたも良い。更には、座部26における外側フランジ26Aの板厚M8と内側フランジ26Bの板厚M9を異ならせても良い。
【0040】
次に、本発明における車両の衝撃吸収部材の第3実施形態を図7〜図9に従って説明する。
【0041】
なお、第2実施形態と同一部材に付いては、同一符号を付してその説明を省略する。
【0042】
図7に示される如く、本実施形態では、外周壁部24における車体前部24Bと車体後部24Cとの境となる傾斜部24Dの傾斜角度αが小さく、なだらかな板厚変化になっている。この結果、図8に示す比較例のように、車体前部24Bと車体後部24Cとの境となる傾斜部24Dの傾斜角度αを90度とした場合、即ち段差部24Dを設けた構成の荷重特性と、本実施形態の荷重特性を比較すると、図9のようになる。
【0043】
即ち、外周壁部24に段差部24D(図8の構成)がある場合には、図9に二点鎖線で示すように、クラッシュボックス12が軸圧縮変形する際に、段差部24Dに起因するピーク値Pが発生する。一方、外周壁部24がなだらかに板厚変化にする(図7の構成)場合には、図9に実線で示すように、クラッシュボックス12が軸圧縮変形する際に、ピーク値が発生しないようにできる。
【0044】
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記各実施形態では、車両骨格部材としての左右一対のフロントサイドメンバ10に本発明の車両の衝撃吸収部材を適用し例について説明したが、本発明の車両の衝撃吸収部材は、フロントサイドメンバ以外のリヤサイドメンバ、ロッカ、ピラー等の他の車両骨格部材にも適用可能である。また、本実施形態では、フロントサイドメンバ10及びクラッシュボックス12の断面形状を矩形状としたが、フロントサイドメンバ10及びクラッシュボックス12の断面形状は矩形状(四角形)に限定されず、三角形、五角形、六角形等の多角形、円形等の他の形状としても良い。
【0045】
【発明の効果】
請求項1記載の本発明は、車両骨格部材の端部に配設される車両の衝撃吸収部材において、押出し成形され中空部を形成する外周壁部と、鍛造成形され外周壁部と略直交する座部と、を有し、座部が、外周壁部の外側へ向かう外側フランジと、外周壁部の内側へ向かう内側フランジと、車両骨格部材側へ突出し、外周壁部の延長線上に配置され外周壁部と同じ断面形状とされた突出壁と、を備えたため、重量増加及びコスト増加を招くことなく、エネルギ吸収能力を確実に向上できるという優れた効果を有する。また、座部と車両骨格部材との間に別部品の組付けが可能となるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両の衝撃吸収部材を示す平断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る車両の衝撃吸収部材を示す車体斜め前方内側から見た斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る車両の衝撃吸収部材が適用された車体前部を示す車体斜め前方から見た分解斜視図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る車両の衝撃吸収部材を示す平断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態の変形例に係る車両の衝撃吸収部材を示す平断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態の他の変形例に係る車両の衝撃吸収部材を示す平断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る車両の衝撃吸収部材を示す平断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態の比較例に係る車両の衝撃吸収部材を示す平断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る車両の衝撃吸収部材の荷重特性と比較例の荷重特性を示すグラフである。
【図10】従来の車両の衝撃吸収部材を示す側断面図である。
【図11】従来の車両の衝撃吸収部材を示す平面図である。
【符号の説明】
10 フロントサイドメンバ(車両骨格部材)
12 クラッシュボックス(衝撃吸収部材)
14 バンパリインフォースメント
16 フロントエンドモジュール
22 クラッシュボックスの中空部
24 クラッシュボックスの外周壁部
26 クラッシュボックスの座部
26A 座部の 外側フランジ
26B 座部の 内側フランジ
26C 座部の突出壁
40 間隙
Claims (1)
- 車両骨格部材の端部に配設される車両の衝撃吸収部材において、
押出し成形され中空部を形成する外周壁部と、鍛造成形され前記外周壁部と略直交する座部と、を有し、
前記座部が、前記外周壁部の外側へ向かう外側フランジと、前記外周壁部の内側へ向かう内側フランジと、前記車両骨格部材側へ突出し、前記外周壁部の延長線上に配置され前記外周壁部と同じ断面形状とされた突出壁と、を備えたことを特徴とする車両の衝撃吸収部材。
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