JP3612832B2 - イミド基含有ポリアミック酸の製造方法並びに液晶配向剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、イミド基含有ポリアミック酸の製造方法並びに液晶配向剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、液晶表示素子としては、透明電極が設けられている基板の表面に液晶配向膜を形成して液晶表示素子用基板とし、その2枚を対向配置して、その間隙内に正の誘電異方性を有するネマチック型液晶の層を形成してサンドイッチ構造のセルとし、当該液晶分子の長軸が一方の基板から他方の基板に向かって連続的に90度捻れるようにした、いわゆるTN型(Twisted Nematic)液晶セルを有するTN型液晶表示素子が知られている。また、最近においては、TN型液晶表示素子に比してコントラストが高くて、その視野角依存性の小さいSTN(Super Twisted Nematic)型液晶表示素子が開発されている。このSTN型液晶表示素子は、ネマチック型液晶に光学活性物質であるカイラル剤をブレンドしたものを液晶として用い、当該液晶分子の長軸が基板間で180度以上にわたって連続的に捻れる状態となることにより生じる複屈折効果を利用するものである。
これらTN型液晶表示素子およびSTN型液晶表示素子において、液晶分子の配向は、基板の表面に形成された液晶配向膜によって発現される。この液晶配向膜は、通常、有機高分子材料を適宜の溶媒に溶解して液晶配向剤を調製し、この液晶配向剤を、液晶セルを構成する基板の表面に塗布して被覆膜を形成し、この被覆膜の表面にラビングなどの配向処理を施すことにより形成することができる。
【0003】
ここに、配向処理が施されて液晶配向膜となる被覆膜としては、配向の安定性などの観点から、下記〔I〕および〔II〕に示すようにして形成されるポリイミドからなる被覆膜が一般的に採用されている。
〔I〕ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を適宜の溶媒に溶解してポリアミック酸タイプの液晶配向剤(以下、「ポリアミック酸系配向剤」ともいう。)を調製し、このポリアミック酸系配向剤を基板の表面に塗布し、塗膜を加熱することによりポリアミック酸を脱水閉環(イミド化反応)させて被覆膜を形成する。
〔II〕可溶性ポリイミドを適宜の溶媒に溶解して可溶性ポリイミドタイプの液晶配向剤(以下、「可溶性ポリイミド系配向剤」ともいう。)を調製し、この可溶性ポリイミド系配向剤を基板の表面に塗布し、塗膜から溶媒を除去することにより被覆膜を形成する。
【0004】
ここで、ポリアミック酸系配向剤を使用して実行される上記〔I〕の方法は、下記(1)〜(3)の点で有利である。
(1)ポリアミック酸系配向剤は良好な塗布特性を有するので、基板表面に均質な塗膜(被覆膜)を形成することができる。
(2)基板表面においてポリアミック酸を熱的に脱水閉環させるので、形成される被覆膜は基板に対する密着性に優れ、ラビング処理によって当該被覆膜が基板から剥離することはない。
(3)ラビング条件を変化させても、液晶配向膜による液晶分子のプレチルト角が変化しにくい。
しかしながら、上記〔I〕の方法においては、ポリアミック酸を脱水閉環させるために、ポリアミック酸系配向剤よりなる塗膜を高温で加熱する必要があり、この加熱条件が変化することによって、形成される液晶配向膜による液晶分子のプレチルト角が大きく変化するという問題がある。また、このポリアミック酸系配向剤は保存安定性に劣るという欠点を有する。
【0005】
一方、可溶性ポリイミド系配向剤を使用して実行される上記〔II〕の方法は、下記(4)〜(6)の点で有利である。
(4)可溶性ポリイミド系配向剤よりなる塗膜から溶剤を除去するだけで被覆膜を形成することができるので、当該塗膜を高温で加熱する必要はない。
(5)基板表面に塗布形成された塗膜を加熱する場合において、加熱条件を変化させても、液晶配向膜による液晶分子のプレチルト角が変化しにくい。
(6)可溶性ポリイミド系配向剤は保存安定性に優れている。
しかしながら、上記〔II〕の方法においては、可溶性ポリイミド系配向剤の塗布特性がポリアミック酸系配向剤に比べて劣ることから、塗膜(被覆膜)の均質性が損なわれることがある。また、形成される被覆膜は、基板に対する密着力が比較的小さいため、ラビング処理によって当該被覆膜が基板から剥離することがある。さらに、ラビング条件が変化することにより、液晶配向膜による液晶分子のプレチルト角が大きく変化するという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
以上のような事情から、ポリイミドからなる液晶配向膜を形成するための液晶配向剤として、ポリアミック酸系配向剤による利点〔上記(1)〜(3)〕および可溶性ポリイミド系配向剤による利点〔上記(4)〜(6)〕をバランスよく兼ね備えた液晶配向剤の開発が望まれている。
そこで、ポリアミック酸系配向剤および可溶性ポリイミド系配向剤の両者の特性を発現させるために、液晶配向剤に含有される重合体として、アミック酸部位の一部がイミド化されてなるイミド基含有ポリアミック酸を使用することが考えられる。
しかしながら、▲1▼ ポリアミック酸系配向剤に含有されるポリアミック酸のように、加熱することにより容易にイミド化されるポリアミック酸は、イミド化されることによって、溶媒に不溶なポリイミド(不溶性ポリイミド)となること、▲2▼ 可溶性ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸は、加熱するだけではイミド化されにくいことなどの理由から、液晶配向剤の構成成分として好適に使用することのできるイミド基含有ポリアミック酸は提供されるに至っていない。
【0007】
本発明は、以上のような技術的状況に基づいてなされたものであって、本発明の第1の目的は、通常の手段では同時に得ることができない所期の複数の特性をバランスよく有し、液晶配向剤の構成成分として特に有用なイミド基含有ポリアミック酸を、確実かつ容易に製造することのできる製造方法を提供することにある。本発明の第2の目的は、ポリアミック酸系配向剤および可溶性ポリイミド系配向剤がそれぞれ有する利点を兼ね備えた液晶配向剤を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のイミド基含有ポリアミック酸(以下、「特定ポリアミック酸A」ともいう。)の製造方法は、下記一般式(2)で表されるテトラカルボン酸二無水物と、下記一般式(3)で表されるイミド基含有ジアミン化合物(以下、「特定ジアミン化合物」ともいう。)とを反応させることにより、下記一般式(1)で表されるイミド基含有ポリアミック酸を製造する方法であって、
前記イミド基含有ジアミン化合物は、特定のテトラカルボン酸二無水物群から選ばれたテトラカルボン酸二無水物と、アミノニトロベンゼン、特定のジアミン化合物群から選ばれたジアミン化合物またはニトロフェニルイソシアネートとを反応させることを含む方法によって得られるものであることを特徴とする。
【0009】
【化3】
【0012】
【化4】
【0013】
(式中、R1 およびR3 はそれぞれ4価の有機基を示し、R2 およびR4 はそれぞれ2価の有機基を示し、nは繰り返し単位数を示す。)
【0014】
本発明の液晶配向剤は、上記イミド基含有ポリアミック酸(特定ポリアミック酸A)、および特定ポリアミック酸Aのアミック酸部位の少なくとも一部を脱水閉環して得られるポリイミド(以下、「特定ポリイミドB」ともいう。)から選ばれる少なくとも1種の重合体を含有することを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明の特定ポリアミック酸Aは、上記一般式(2)で表されるテトラカルボン酸二無水物と、上記一般式(3)で表される特定ジアミン化合物とを反応させることによって合成することができる。
【0016】
<テトラカルボン酸二無水物>
本発明の特定ポリアミック酸Aの合成反応に用いられる、上記一般式(2)で表されるテトラカルボン酸二無水物としては、例えばブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボルナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物などの脂肪族または脂環式テトラカルボン酸二無水物;
ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物;
1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、下記一般式(4)で表される化合物、下記一般式(5)で表される化合物などの芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0017】
【化5】
【0018】
(式中、R5 は芳香環を有する2価の有機基を示し、R6 およびR7 はそれぞれ水素原子またはアルキル基を示す。)
【0019】
【化6】
【0020】
(式中、R8 は芳香環を有する2価の有機基を示し、R9 およびR10はそれぞれ水素原子またはアルキル基を示す。)
【0021】
これらのうち、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、下記化学式(1)のA01〜A04で表される化合物が、液晶配向膜としたときの液晶配向性の観点から好ましい。
【0022】
【化7】
【0023】
本発明のイミド基含有ポリアミック酸は、加熱されることにより、アミック酸部位が容易に脱水閉環されるものであることが特に好ましい。このようなイミド基含有ポリアミック酸を合成する観点から好適なテトラカルボン酸二無水物としては、上記一般式(2)において、有機基R1 と無水カルボン酸基(−CO−O−CO−)とから形成される環状部分(複素環)が5員環である化合物を挙げることができる。
このような構造を有するテトラカルボン酸二無水物としては、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。
【0024】
<特定ジアミン化合物>
本発明のイミド基含有ポリアミック酸は、その合成反応に供されるジアミン化合物として、上記一般式(3)で表される特定ジアミン化合物を使用する点に特徴を有する。斯かる特定ジアミン化合物は、例えば、以下に示す合成法1〜3に従って得ることができる。
【0025】
<合成法1>
下記一般式(6)で表されるテトラカルボン酸二無水物1モルと、下記一般式(7)で表されるニトロ基含有モノアミン化合物2モル以上とを、N−メチル−2−ピロリドンなどの極性溶媒中において混合し、−15〜100℃で反応させることにより、下記一般式(8)で表されるジニトロ化合物を合成する。
次いで、得られたジニトロ化合物が溶解されている極性溶媒中に、前記テトラカルボン酸二無水物1モルに対し、2モル以上のピリジンと、2モル以上の無水酢酸を添加し、40℃〜150℃で脱水閉環させることにより、下記一般式(9)で表されるイミド基含有ジニトロ化合物を得る。その後、得られたイミド基含有ジニトロ化合物をエチルアルコールなどの溶媒中に溶解させ、水素ガスなどを用いてニトロ基を還元することにより、目的とする特定ジアミン化合物を得ることができる。
【0026】
【化8】
【0027】
(式中、R11は4価の有機基を示し、R12は2価の有機基を示す。)
【0028】
<合成法2>
下記一般式(10)で表されるテトラカルボン酸二無水物1モルと、下記一般式(11)で表されるジアミン化合物3モル以上とを、N−メチル−2−ピロリドンなどの極性溶媒中において混合し、−15〜100℃で反応させることにより、下記一般式(12)で表されるジアミン化合物を合成する。
次いで、得られたジアミン化合物が溶解されている極性溶媒中に、前記テトラカルボン酸二無水物1モルに対し、4モル以上のピリジンと、4モル以上の無水酢酸を添加し、40℃〜150℃で脱水閉環させることにより、下記一般式(13)で表されるイミド基含有ジアセトアミド化合物を得る。その後、得られたイミド基含有ジアセトアミド化合物を、塩酸またはp−トルエンスルホン酸などの酸で処理することにより、目的とする特定ジアミン化合物を得ることができる。
【0029】
【化9】
【0030】
(式中、R13は4価の有機基を示し、R14は2価の有機基を示す。)
【0031】
<合成法3>
下記一般式(14)で表されるテトラカルボン酸二無水物1モルと、下記一般式(15)で表されるニトロ基含有モノイソシアネート化合物2モル以上とを、N−メチル−2−ピロリドンなどの極性溶媒中において混合し、60〜150℃で反応させることにより、下記一般式(16)で表されるイミド基含有ジニトロ化合物を合成する。
次いで、得られたジニトロ化合物をエチルアルコールなどの溶媒中に溶解させ、水素ガスなどを用いてニトロ基を還元することにより、目的とする特定ジアミン化合物を得る。
【0032】
【化10】
【0033】
(式中、R15は4価の有機基を示し、R16は2価の有機基を示す。)
【0034】
合成法1〜合成法3において用いられる上記一般式(6)、上記一般式(10)および上記一般式(14)で表されるテトラカルボン酸二無水物としては、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、および上記化学式(1)のA01〜A04で表される化合物から選ばれたものが用いられる。
さらに、これらのうち、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオンは、これらを用いて合成される特定ジアミン化合物から最終的に得られる液晶配向剤において、優れた塗布特性を示すため、特に好ましい。なお、上記利点を発揮させることのできるテトラカルボン酸二無水物は、これにより誘導されるアミック酸が熱的に脱水閉環されにくいものとなるが、当該アミック酸(部位)は予め脱水閉環された状態、すなわち、特定ポリアミック酸Aを構成するイミド基として液晶配向剤中に含有されるので、熱的に脱水閉環されにくいものであることは何ら不利となるものではない。
【0035】
合成法1において、上記一般式(6)〜(9)に示される4価の有機基〔R11〕および2価の有機基〔R12〕は、それぞれ、上記一般式(3)に示される4価の有機基〔R3 〕および2価の有機基〔R2 〕,〔R4 〕に相当するものである。上記一般式(7)で表されるニトロ基含有モノアミン化合物の具体例としては、例えば1−アミノ−4−ニトロベンゼン、1−アミノ−3−ニトロベンゼンなどを挙げることができる。
【0036】
合成法2において、上記一般式(10)〜(13)に示される4価の有機基〔R13〕および2価の有機基〔R14〕は、それぞれ、上記一般式(3)に示される4価の有機基〔R3 〕および2価の有機基〔R2 〕,〔R4 〕に相当するものである。上記一般式(11)で表されるジアミン化合物としては、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,5−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4.4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、下記化学式(2)のB01〜B02で表される化合物、および下記化学式(3)で表される化合物から選ばれたものが用いられる。
【0039】
【化12】
【0041】
【化13】
【0042】
合成法3において、上記一般式(14)〜(16)に示される4価の有機基〔R15〕および2価の有機基〔R16〕は、それぞれ、上記一般式(3)に示される4価の有機基〔R3 〕および2価の有機基〔R2 〕,〔R4 〕に相当するものである。上記一般式(15)で表されるニトロ基含有モノイソシアネート化合物の具体例としては、例えばp−ニトロフェニルイソシアネートなどを挙げることができる。
以上のようにして合成することのできる特定ジアミン化合物の具体例としては、下記化学式(4)のC01〜C04で表される化合物〔以下、「特定ジアミン化合物(C01)」〜「特定ジアミン化合物(C04)」という。〕などを挙げることができ、これらの特定ジアミン化合物は、単独でまたは2種以上組み合わせて、特定ポリアミック酸Aの合成に用いることができる。
【0043】
【化14】
【0044】
本発明においては、特定ポリアミック酸Aの合成に用いるジアミン化合物として、上記特定ジアミン化合物以外のジアミン化合物を併用することもできる。
ここで、併用可能なジアミン化合物としては、特定ジアミン化合物を得るための合成法2において用いられるジアミン化合物〔上記一般式(11)で表されるジアミン化合物〕として例示したジアミン化合物、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,5−ジアミノ安息香酸、下記一般式(18)で表されるジアミノオルガノシロキサンなどを挙げることができる。これらのジアミン化合物は、単独でまたは2種以上組み合わせて、特定ポリアミック酸Aの合成に用いることができる。
【0045】
【化15】
(式中、R19は炭素数1〜12の炭化水素基を示し、pは1〜3の整数であり、qは1〜20の整数である。)
【0046】
これらのうち、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,5−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4.4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、上記化学式(2)のB01〜B02で表される化合物が好ましい。
【0047】
<特定ポリアミック酸A>
本発明の特定ポリアミック酸Aは、上記一般式(2)で表されるテトラカルボン酸二無水物と、上記一般式(3)で表される特定ジアミン化合物とを反応させることにより得られる。
ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物(特定ジアミン化合物および併用されるジアミン化合物)の使用割合は、ジアミン化合物に含まれるアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、さらに好ましくは0.3〜1.2当量となる割合である。
特定ポリアミック酸Aの合成反応は、有機溶媒中において、通常0〜150℃、好ましくは0〜100℃の温度条件下で行われる。この合成反応に用いられる有機溶媒としては、反応生成物である特定ポリアミック酸Aを溶解し得るものであれば特に制限はなく、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミドなどの非プロトン系極性溶媒;m−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノールなどのフェノール系溶媒を挙げることができる。有機溶媒の使用量は、通常、テトラカルボン酸二無水物およびジアミン化合物の総量が、反応溶液の全量に対して0.1〜30重量%になるような量であることが好ましい。
なお、この有機溶媒には、特定ポリアミック酸Aの貧溶媒であるアルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類または炭化水素類を、生成する特定ポリアミック酸Aが析出しない程度の割合で併用することができる。かかる貧溶媒としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、ジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、トリクロロエタン、クロルベンゼン、o−ジクロルベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどを挙げることができる。
【0048】
<特定ポリイミドB>
特定ポリイミドBは、下記方法(1)または方法(2)により、特定ポリアミック酸Aのアミック酸部位を脱水閉環することにより得られる。
方法(1):
特定ポリアミック酸Aを加熱する方法。この方法における加熱温度は、通常60〜300℃とされ、好ましくは100〜250℃とされる。加熱温度が60℃未満ではアミック酸部位のイミド化反応が十分に進行せず、加熱温度が300℃を超えると得られる特定ポリイミドBの分子量が低下することがある。
方法(2):
特定ポリアミック酸Aを有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤およびイミド化触媒を添加し必要に応じて加熱することにより、アミック酸部位を脱水閉環(イミド化)させる方法。この方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、特定ポリアミック酸Aの繰り返し単位1モルに対して1.6〜20モルとするのが好ましい。また、イミド化触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミンなどの第3級アミンを用いることができるが、これらに限定されるものではない。イミド化触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.5〜10モルとするのが好ましい。なお、脱水閉環に用いられる有機溶媒としては、特定ポリアミック酸Aの合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環の反応温度は、通常0〜180℃、好ましくは40〜150℃とされる。また、上記脱水閉環の反応条件をコントロールすることによって、イミド化率を任意に調整することができる。
【0049】
特定ポリアミック酸Aおよび特定ポリイミドBは、末端修飾型のものであってもよい。この末端修飾型の特定ポリアミック酸Aおよび特定ポリイミドBは、その分子量が好適な範囲に調節され、液晶配向剤に含有させることにより、本発明の効果が損われることなく液晶配向剤の塗布特性などを改善することができる。このような末端修飾型のものは、特定ポリアミック酸Aを合成する際に、酸一無水物、モノアミン化合物などを反応系に添加することにより合成することができる。ここで、酸一無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、コハク酸などを挙げることができ、また、モノアミン化合物としては、例えばアニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミン、n−エイコシルアミンなどを挙げることができる。
【0050】
特定ポリアミック酸Aおよび特定ポリイミドBは、その対数粘度(ηln)の値が通常0.05〜10dl/gであることが好ましく、さらに好ましくは0.05〜5dl/gとされる。なお、この明細書における対数粘度(ηln)の値は、N−メチル−2−ピロリドンを溶媒として用い、濃度が0.5g/100ミリリットルである溶液について30℃で粘度の測定を行い、下記数式によって求められるものである。
【0051】
【数1】
【0052】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、上記特定ポリアミック酸Aおよび上記特定ポリイミドBから選ばれる少なくとも1種の重合体が有機溶媒中に均一に溶解されて構成される。ここに、当該有機溶媒としては、これらの重合体を溶解できるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、特定ポリアミック酸Aの合成に用いられるものとして例示した溶媒を挙げることができる。
本発明の液晶配向剤には、基板に対する密着性をさらに向上させることを目的として官能性シラン含有化合物が含有されていてもよい。かかる官能性シラン含有化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシイシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシランなどを挙げることができる。
本発明の液晶配向剤における固形分濃度〔重合体および添加剤の合計濃度〕は、粘性、揮発性などを考慮して選択されるが、好ましくは0.1〜20重量%の範囲とされる。固形分濃度が0.1重量%未満である場合には、塗膜(被覆膜)の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜を得ることができず、固形分濃度が20重量%を超える場合には、塗膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜を得難く、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布特性が劣るものとなる場合がある。
【0053】
<液晶表示素子>
本発明の液晶配向剤を用いて得られる液晶表示素子は、例えば次の方法によって製造することができる。
【0054】
(1)パターニングされた透明導電膜が設けられている基板の一面に、本発明の液晶配向剤を例えばロールコーター法、スピンナー法、印刷法などの方法によって塗布し、次いで、塗布面を加熱することにより被覆膜を形成する。ここに、基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネートなどのプラスチックからなる透明基板を用いることができる。また、基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO2 )からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In2 O3 −SnO2 )からなるITO膜などを用いることができ、これらの透明導電膜のパターニングには、フォト・エッチング法や予めマスクを用いる方法が用いられる。液晶配向剤の塗布に際しては、基板表面および透明導電膜と液晶配向剤の被覆膜との接着性をさらに良好にするために、基板の該表面に、官能性シラン含有化合物、官能性チタン含有化合物などを予め塗布することもできる。また加熱温度は80〜300℃とされ、好ましくは100〜250℃とされる。形成される被覆膜の膜厚は、通常0.001〜1μmであり、好ましくは0.005〜0.5μmである。なお、ポリアミック酸を含有する本発明の液晶配向剤は、塗布後に有機溶媒を除去することによって液晶配向膜となる被覆膜を形成するが、さらに加熱することによって脱水閉環を進行させ、イミド化された被覆膜とすることもできる。
【0055】
(2)形成された被覆膜面に、例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦るラビングや、偏光紫外線照射などによる配向処理を行うことにより、液晶分子の配向能が被覆膜に付与されて液晶配向膜となる。なお、ラビングにより配向処理を行った場合、ラビング時に発生する微粉体(異物)を除去して表面を清浄な状態とするために、イソプロピルアルコールまたは水系の洗浄剤などによって液晶配向膜を洗浄することが好ましい。液晶配向膜は、上記の方法以外に、一軸延伸法、ラングミュア・ブロジェット法などで樹脂膜を得ることにより、形成することもできる。
【0056】
(3)上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚作製し、それぞれの液晶配向膜における配向処理方向が直交または逆平行となるように、2枚の基板を、間隙(セルギャップ)を介して対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面およびシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填し、注入孔を封止して液晶セルを構成する。そして、液晶セルの外表面、すなわち、液晶セルを構成するそれぞれの基板の他面側に、偏光板を、その偏光方向が当該基板の一面に形成された液晶配向膜の配向処理方向と一致または直交するように貼り合わせることにより、液晶表示素子が得られる。
【0057】
ここに、シール剤としては、例えば硬化剤およびスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂などを用いることができる。
液晶としては、ネマティック型液晶およびスメクティック型液晶を挙げることができ、その中でもネマティック型液晶が好ましく、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶などを用いることができる。また、これらの液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネートなどのコレステリック型液晶や商品名「C−15」「CB−15」(メルク社製)として販売されているようなカイラル剤などを添加して使用することもできる。さらに、p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメートなどの強誘電性液晶も使用することができる。
また、液晶セルの外表面に貼り合わされる偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながら、ヨウ素を吸収させたH膜と称される偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板またはH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。
【0058】
【実施例】
以下、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、以下の実施例および比較例により調製された液晶配向剤の評価項目および評価方法を下記に示す。
〔液晶配向膜の密着性および強靱性〕
被覆膜にラビング処理を施すことにより形成された液晶配向膜の表面状態を観察して、密着性(液晶配向膜の剥離の有無)および強靱性(顕微鏡観察によるラビング傷の有無)を評価した。
〔液晶の配向性〕
液晶表示素子に電圧を印加し解除したときの液晶セル中における配向不良(異常ドメイン)の有無を偏光顕微鏡で観察し、異常ドメインのない場合を「良好」と判定した。
〔液晶分子のプレチルト角〕
「T.J.Schffer,et al.,J.Appl.Phys.,vol.19,2013(1980)」に記載の方法に準拠し、He−Neレーザー光を用いる結晶回転法により行った。
【0059】
<特定ジアミン化合物の合成>
〔合成例1〕
2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物30.00g(0.135mol)と1−アミノ−4−ニトロベンゼン39.00g(0.27mol)とをN−メチル−2−ピロリドン900gに溶解させ、この溶液を80℃で48時間反応させた。続いて、得られた反応溶液に、ピリジン54.00g(0.69mol)と無水酢酸42.00g(0.42mol)とを添加して110℃で4時間脱水閉環させた。その後、得られた反応溶液を多量のメチルアルコールに注いで反応生成物を沈澱させた。この反応生成物をエチルアルコールで2回再結晶を行ってイミド基含有ジニトロ化合物55.36gを得た。その後、得られたイミド基含有ジニトロ化合物50.00gをエチルアルコール5000gに溶解させ、この溶液中に、パラジウムのカーボン担持触媒(エヌ・イー・ケムキャット社製:パラジウム濃度5重量%)17.5gを添加し、水素ガスを吹き込みながら6時間にわたり加熱還流を行った。その後、熱時濾過により触媒を除去し濾液を室温まで冷却した。析出物を濾別し、エチルアルコールで再結晶を行うことにより、特定ジアミン化合物(C01)21.48gを得た。
【0060】
〔合成例2〕
1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン65.00g(0.208mol)と1−アミノ−4−ニトロベンゼン65.00g(0.455mol)とをN−メチル−2−ピロリドン2000gに溶解させ、80℃で48時間反応させた。続いて、得られた反応溶液に、ピリジン84.50g(1.04mol)と無水酢酸65.00g(0.65mol)とを添加して110℃で4時間脱水閉環させた。その後、得られた反応溶液を多量のメチルアルコールに注いで反応生成物を沈澱させた。この反応生成物をエチルアルコールで2回再結晶を行ってイミド基含有ジニトロ化合物90.85gを得た。その後、得られたイミド基含有ジニトロ化合物80.00gをエチルアルコール8000gに溶解させ、この溶液中に、パラジウムのカーボン担持触媒(エヌ・イー・ケムキャット社製:パラジウム濃度5重量%)28.0gを添加し、水素ガスを吹き込みながら6時間にわたり加熱還流を行った。その後、熱時濾過により触媒を除去し濾液を室温まで冷却した。析出物を濾別し、エチルアルコールで再結晶を行うことにより、特定ジアミン化合物(C02)26.34gを得た。
【0061】
〔合成例3〕
ピロメリット酸二無水物10.00g(0.046mol)と1−アミノ−4−ニトロベンゼン13.00g(0.09mol)とをN−メチル−2−ピロリドン300gに溶解させ、80℃で48時間反応させた。続いて、得られた反応溶液に、ピリジン18.00g(0.23mol)と無水酢酸14.00g(0.14mol)とを添加して110℃で4時間脱水閉環させた。その後、得られた反応溶液を多量のメチルアルコールに注いで反応生成物を沈澱させた。この反応生成物をジメチルホルムアミドで3回再結晶を行ってイミド基含有ジニトロ化合物17.55gを得た。その後、得られたイミド基含有ジニトロ化合物10.00gをエチルアルコール1000gに溶解させ、この溶液中に、パラジウムのカーボン担持触媒(エヌ・イー・ケムキャット社製:パラジウム濃度5重量%)3.5gを添加し、水素ガスを吹き込みながら6時間にわたり加熱還流を行った。その後、熱時濾過により触媒を除去し濾液を室温まで冷却した。析出物を濾別し、ジメチルホルムアミドで再結晶を行うことにより、特定ジアミン化合物(C03)5.38gを得た。
【0062】
〔合成例4〕
1,3−ジメル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物20.00g(0.090mol)と1−アミノ−4−ニトロベンゼン26.00g(0.18mol)とをN−メチル−2−ピロリドン300gに溶解させ、80℃で48時間反応させた。続いて、得られた反応溶液に、ピリジン36.00g(0.46mol)と無水酢酸28.00g(0.28mol)とを添加して110℃で4時間脱水閉環させた。その後、得られた反応溶液を多量のメチルアルコールに注いで反応生成物を沈澱させた。この反応生成物をジメチルホルムアミドで3回再結晶を行ってイミド基含有ジニトロ化合物27.11gを得た。その後、得られたイミド基含有ジニトロ化合物20.00gをエチルアルコール2000gに溶解させ、この溶液中に、パラジウムのカーボン担持触媒(エヌ・イー・ケムキャット社製:パラジウム濃度5重量%)7.0gを添加し、水素ガスを吹き込みながら6時間にわたり加熱還流を行った。その後、熱時濾過により触媒を除去し濾液を室温まで冷却した。析出物を濾別し、ジメチルホルムアミドで再結晶を行うことにより、特定ジアミン化合物(C04)8.92gを得た。
【0063】
<ポリマーの合成>
〔ポリマー合成例1〕
1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン11.76g(37.42mmol)と4,4’−ジアミノジフェニルメタン3.71g(18.71mmol)と上記化学式(2)のB01で表されるジアミン化合物1.20g(1.87mmol)と合成例2で得られた特定ジアミン(C02)8.33g(16.84mmol)とをN−メチル−2−ピロリドン100gに溶解させ、この溶液を25℃で4時間反応させた。次いで、得られた反応溶液を大過剰のメチルアルコールに注いで、反応生成物を沈澱させた。その後、固形物を分離してメチルアルコールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させることにより、対数粘度(ηln)が0.43dl/gである特定ポリアミック酸A〔これを「特定ポリアミック酸(A1)」とする。〕16.40gを得た。
【0064】
〔ポリマー合成例2〕
ピロメリット酸二無水物8.40g(38.49mmol)と2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン7.90g(19.25mmol)と上記化学式(2)のB01で表されるジアミン化合物2.47g(3.85mol)と合成例1で得られた特定ジアミン(C01)6.23g(15.40mmol)とをN−メチル−2−ピロリドン100gに溶解させ、この溶液を25℃で4時間反応させた。次いで、ポリマー合成例1と同様にして、反応生成物の沈殿・分離・洗浄・乾燥を行うことにより、対数粘度(ηln)が0.76dl/gである特定ポリアミック酸A〔これを「特定ポリアミック酸(A2)」とする。〕19.31gを得た。
【0065】
〔ポリマー合成例3〕
ピロメリット酸二無水物を7.95g(36.47mmol)と2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン7.49g(18.24mmol)と上記化学式(2)のB01で表されるジアミン化合物2.34g(3.65mol)と合成例2で得られた特定ジアミン(C02)7.21g(14.59mmol)とをN−メチル−2−ピロリドン100gに溶解させ、この溶液を25℃で4時間反応させた。次いで、ポリマー合成例1と同様にして、反応生成物の沈殿・分離・洗浄・乾燥を行うことにより、対数粘度(ηln)が0.72dl/gである特定ポリアミック酸A〔これを「特定ポリアミック酸(A3)」とする。〕18.03gを得た。
【0066】
〔ポリマー合成例4〕
1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物10.43g(46.52mmol)と4,4’−ジアミノジフェニルメタン4.61g(23.26mmol)と上記化学式(2)のB01で表されるジアミン化合物1.50g(2.33mmol)と合成例1で得られた特定ジアミン(C01)8.47g(20.93mmol)とをN−メチル−2−ピロリドン100gに溶解させ、この溶液を25℃で4時間反応させた。次いで、ポリマー合成例1と同様にして、反応生成物の沈殿・分離・洗浄・乾燥を行うことにより、対数粘度(ηln)が0.69dl/gである特定ポリアミック酸A〔これを「特定ポリアミック酸(A4)」とする。〕15.45gを得た。
【0067】
〔ポリマー合成例5〕
1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物9.69g(43.26mmol)と4,4’−ジアミノジフェニルメタン4.29g(21.63mmol)と上記化学式(2)のB01で表されるジアミン化合物1.39g(2.16mmol)と合成例2で得られた特定ジアミン(C02)9.63g(19.47mmol)とをN−メチル−2−ピロリドン100gに溶解させ、この溶液を25℃で4時間反応させた。次いで、ポリマー合成例1と同様にして、反応生成物の沈殿・分離・洗浄・乾燥を行うことにより、対数粘度(ηln)が0.72dl/gである特定ポリアミック酸A〔これを「特定ポリアミック酸(A5)」とする。〕16.55gを得た。
【0068】
〔ポリマー合成例6〕
ピロメリット酸二無水物8.56g(39.23mmol)と2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン11.27g(27.46mmol)と上記化学式(2)のB01で表されるジアミン化合物1.26g(1.96mol)と合成例3で得られた特定ジアミン(C03)3.91g(9.81mmol)とをN−メチル−2−ピロリドン100gに溶解させ、この溶液を25℃で4時間反応させた。次いで、ポリマー合成例1と同様にして、反応生成物の沈殿・分離・洗浄・乾燥を行うことにより、対数粘度(ηln)が0.85dl/gである特定ポリアミック酸A〔これを「特定ポリアミック酸(A6)」とする。〕18.60gを得た。
【0069】
〔ポリマー合成例7〕
1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物11.29g(50.39mmol)と4,4’−ジアミノジフェニルメタン6.99g(35.27mmol)と上記化学式(2)のB01で表されるジアミン化合物1.62g(2.52mmol)と合成例4で得られた特定ジアミン(C04)5.09g(12.60mmol)とをN−メチル−2−ピロリドン100gに溶解させ、この溶液を25℃で4時間反応させた。次いで、ポリマー合成例1と同様にして、反応生成物の沈殿・分離・洗浄・乾燥を行うことにより、対数粘度(ηln)が0.77dl/gである特定ポリアミック酸A〔これを「特定ポリアミック酸(A7)」とする。〕16.55gを得た。
【0070】
〔比較ポリマー合成例1〕
ピロメリット酸二無水物5.11g(23.41mmol)と2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物5.25g(23.41mmol)と2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン9.61g(23.41mmol)と上記化学式(2)のB01で表されるジアミン化合物3.01g(4.68mmol)とp−フェニレンジアミン2.03g(18.73mmol)とをN−メチル−2−ピロリドン200gに溶解させ、この溶液を25℃で24時間反応させた。次いで、ポリマー合成例1と同様にして、反応生成物の沈殿・分離・洗浄・乾燥を行うことにより、対数粘度(ηln)が0.71dl/gであるポリアミック酸〔これを「ポリアミック酸(a8)」とする。〕15.40gを得た。
【0071】
〔比較ポリマー合成例2〕
ピロメリット酸二無水物4.71g(21.59mmol)と1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン6.78g(21.59mmol)と2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン8.86g(21.59mmol)と上記化学式(2)のB01で表されるジアミン化合物2.78g(4.32mmol)とp−フェニレンジアミン1.87g(17.27mmol)とをN−メチル−2−ピロリドン200gに溶解させ、この溶液を25℃で24時間反応させた。次いで、ポリマー合成例1と同様にして、反応生成物の沈殿・分離・洗浄・乾燥を行うことにより、対数粘度(ηln)が0.69dl/gであるポリアミック酸〔これを「ポリアミック酸(a9)」とする。〕15.55gを得た。
【0072】
〔比較ポリマー合成例3〕
1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物6.50g(29.01mmol)と2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物6.50g(29.01mmol)と4,4’−ジアミノジフェニルメタン5.75g(29.01mmol)と上記化学式(2)のB01で表されるジアミン化合物3.73g(5.80mmol)とp−フェニレンジアミン2.51g(23.21mmol)とをN−メチル−2−ピロリドン200gに溶解させ、この溶液を25℃で24時間反応させた。次いで、ポリマー合成例1と同様にして、反応生成物の沈殿・分離・洗浄・乾燥を行うことにより、対数粘度(ηln)が0.65dl/gであるポリアミック酸〔これを「ポリアミック酸(a10)」とする。〕18.19gを得た。
【0073】
〔比較ポリマー合成例4〕
1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物13.01g(58.01mmol)と4,4’−ジアミノジフェニルメタン5.75g(29.02mmol)と上記化学式(2)のB01で表されるジアミン化合物3.73g(5.80mmol)とp−フェニレンジアミン2.51g(23.21mmol)とをN−メチル−2−ピロリドン100gに溶解させ、この溶液を25℃で24時間反応させた。次いで、ポリマー合成例1と同様にして、反応生成物の沈殿・分離・洗浄・乾燥を行うことにより、対数粘度(ηln)が0.84dl/gであるポリアミック酸〔これを「ポリアミック酸(a11)」とする。〕18.99gを得た。続いて、このポリアミック酸(a11)15.00gをN−メチル−2−ピロリドン300gに溶解させ、ピリジン3.00gと無水酢酸3.00gとを添加してイミド化反応を試みたが、反応の途中で重合体が析出して重合体溶液(ワニス)を得ることができなかった。
【0074】
〔比較ポリマー合成例5〕
2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物13.01g(58.02mmol)と4,4’−ジアミノジフェニルメタン5.75g(29.01mmol)と上記化学式(2)のB01で表されるジアミン化合物3.73g(5.80mmol)とp−フェニレンジアミン2.51g(23.21mmol)とをN−メチル−2−ピロリドン100gに溶解させ、この溶液を25℃で24時間反応させた。次いで、ポリマー合成例1と同様にして、反応生成物の沈殿・分離・洗浄・乾燥を行うことにより、対数粘度(ηln)が0.64dl/gであるポリアミック酸〔これを「ポリアミック酸(a12)」とする。〕19.99gを得た。続いて、ポリアミック酸(a12)15.00gをN−メチル−2−ピロリドン300gに溶解させ、ピリジン12.00gと無水酢酸10.00gとを添加して110℃で4時間イミド化反応させた。次いで、ポリマー合成例1と同様にして、反応生成物の沈殿・分離・洗浄・乾燥を行うことにより、対数粘度(ηln)が0.67dl/gであるポリイミド〔これを「可溶性ポリイミド(b12)」とする。〕10.78gを得た。
【0075】
〔比較ポリマー合成例6〕
1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン15.08g(47.99mmol)と4,4’−ジアミノジフェニルメタン4.76g(23.99mmol)と上記化学式(2)のB01で表されるジアミン化合物3.09g(4.80mmol)とp−フェニレンジアミン2.08g(19.20mmol)とをN−メチル−2−ピロリドン100gに溶解させ、この溶液を25℃で24時間反応させた。次いで、ポリマー合成例1と同様にして、反応生成物の沈殿・分離・洗浄・乾燥を行うことにより、対数粘度(ηln)が0.57dl/gであるポリアミック酸〔これを「ポリアミック酸(a13)」とする。〕16.70gを得た。続いて、ポリアミック酸(a13)15.00gをN−メチル−2−ピロリドン300gに溶解させ、ピリジン12.00gと無水酢酸10.00gとを添加して110℃で4時間イミド化反応させた。次いで、ポリマー合成例1と同様にして、反応生成物の沈殿・分離・洗浄・乾燥を行うことにより、対数粘度(ηln)が0.53dl/gであるポリイミド〔これを「可溶性ポリイミド(b13)」とする。〕9.65gを得た。
【0076】
<実施例1>
(1)液晶配向剤の調製:
ポリマー合成例1で得られたポリアミック酸(A1)6.0gをγ−ブチロラクトン120gに溶解させて、固形分濃度が5.0重量%の溶液を得、この溶液を孔径1μmのフィルターで濾過することにより、本発明の液晶配向剤を調製した。
【0077】
(2)液晶表示素子の作製:
▲1▼ 厚さ1mmのガラス基板の一面に設けられたITO膜からなる透明導電膜上に、上記のようにして調製された液晶配向剤をスピンナーを用いて塗布(回転数:2000rpm,塗布時間:1分間)し、180℃で1時間にわたって塗膜を乾燥することにより、乾燥膜厚0.08μmの被覆膜が形成された基板を得た。また、乾燥温度を210℃および240℃に変更したこと以外は上記と同様にして、乾燥膜厚0.08μmの被覆膜がそれぞれ形成された基板を得た。
【0078】
▲2▼ 上記▲1▼のようにして得られた3種類の基板の各々について、形成された被覆膜の表面を、レーヨン製の布を巻き付けたロールを備えてなるラビングマシーンを用いてラビング処理を施すことにより、当該被覆膜に配向能を付与して液晶配向膜を形成した。ここで、被覆膜表面へのラビング処理は、毛足押し込み長0.4mm、ロール回転数400rpm、ラビング回数2回の条件〔これを「ラビング条件(b)」とする。〕で行った。さらに、210℃で塗膜を乾燥して形成された被覆膜については、毛足押し込み長0.2mm、ロール回転数400rpm、ラビング回数2回の条件〔これを「ラビング条件(a)」とする。〕、および毛足押し込み長0.6mm、ロール回転数400rpm、ラビング回数2回の条件〔これを「ラビング条件(c)」とする。〕によってもラビング処理を施した。なお、ラビング処理を施した後、形成された液晶配向膜をイソプロピルアルコールによって洗浄した。
次いで、「塗膜の乾燥条件(温度)」および「被覆膜表面のラビング条件」を異にして形成された液晶配向膜〔乾燥温度180℃−ラビング条件(b),乾燥温度210℃−ラビング条件(b),乾燥温度240℃−ラビング条件(b),乾燥温度210℃−ラビング条件(a)および乾燥温度210℃−ラビング条件(c)による5種類の液晶配向膜〕の各々について、表面状態を観察したところ、何れの乾燥条件および何れのラビング条件で形成された液晶配向膜においても、基板からの剥離およびラビング傷の発生は認められず、この実施例により形成された液晶配向膜は、塗膜の乾燥条件およびラビング条件に関わらず、基板に対する密着性および強靱性に優れていることが確認された。
【0079】
▲3▼ 同一の乾燥条件および同一のラビング条件の下で液晶配向膜を形成して作製された2枚の基板(液晶表示素子用基板)のそれぞれの外縁部に、直径6μmの酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂系接着剤をスクリーン印刷法により塗布した後、それぞれの液晶配向膜における配向処理方向、すなわちラビング方向が逆平行となるように2枚の基板を間隙を介して対向配置し、外縁部同士を圧着して接着剤を硬化させた。その後、当該2枚の基板の表面および外縁部の接着剤により区画されたセルギャップ内に、ネマティック型液晶「MLC−2001」(メルク社製)を注入充填し、次いで、注入孔をエポキシ系接着剤で封止して液晶セルを構成した。その後、液晶セルの外表面に、偏光方向が当該基板の一面に形成された液晶配向膜のラビング方向と一致するように偏光板を貼り合わせることにより、5種類の液晶表示素子を作製した。これらの液晶表示素子について、液晶の配向性を評価し、液晶分子のプレチルト角の測定を行った。結果を下記表1および表2に示す。
【0080】
<実施例2〜7>
下記表1および表2に示す処方に従って、ポリマー合成例2〜7で得られた特定ポリアミック酸(A2)〜(A7)の各々6.0gをγ−ブチロラクトン120gに溶解させて、固形分濃度が5.0重量%の溶液を得、この溶液を孔径1μmのフィルターで濾過することにより、本発明の液晶配向剤を調製した。
このようにして調製された液晶配向剤の各々を用い、実施例1と同様にして、塗膜の乾燥条件を変えて乾燥膜厚0.08μmの被覆膜を基板の一面に形成し、形成された被覆膜の各々について、ラビング条件(b)〔210℃の乾燥加熱により形成された被覆膜については、さらにラビング条件(a)およびラビング条件(c)〕によりラビング処理を施して液晶配向膜を形成し、当該液晶配向膜が形成された2枚の基板を用いて液晶表示素子を作製した。そして、各工程において、液晶配向膜の密着性および強靱性の評価、液晶の配向性の評価、液晶分子のプレチルト角の測定を行った。これらの結果を下記表1および表2に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
<比較例1〜4>
下記表3および表4に示す処方に従って、比較ポリマー合成例1〜4で得られたポリアミック酸(a8)〜(a11)の各々6.0gをγ−ブチロラクトン120gに溶解させて、固形分濃度が5.0重量%の溶液を得、この溶液を孔径1μmのフィルターで濾過することにより、比較用の液晶配向剤を調製した。
このようにして調製された液晶配向剤の各々を用い、実施例1と同様にして、塗膜の乾燥条件を変えて乾燥膜厚0.08μmの被覆膜を基板の一面に形成し、形成された被覆膜の各々について、ラビング条件(b)〔210℃の乾燥加熱により形成された被覆膜については、さらにラビング条件(a)およびラビング条件(c)〕によりラビング処理を施して液晶配向膜を形成し、当該液晶配向膜が形成された2枚の基板を用いて液晶表示素子を作製した。そして、各工程において、液晶配向膜の密着性および強靱性の評価、液晶の配向性の評価、液晶分子のプレチルト角の測定を行った。結果を下記表3および表4に示す。
【0084】
<比較例5〜6>
下記表3および表4に示す処方に従って、比較ポリマー合成例5〜6で得られた可溶性ポリイミド(b12)〜(b13)の各々6.0gをγ−ブチロラクトン120gに溶解させて、固形分濃度が5.0重量%の溶液を得、この溶液を孔径1μmのフィルターで濾過することにより、比較用の液晶配向剤を調製した。
このようにして調製された液晶配向剤の各々を用い、実施例1と同様にして、塗膜の乾燥条件を変えて乾燥膜厚0.08μmの被覆膜を基板の一面に形成し、形成された被覆膜の各々について、ラビング条件(b)〔210℃の乾燥加熱により形成された被覆膜については、さらにラビング条件(a)およびラビング条件(c)〕によりラビング処理を施して液晶配向膜を形成し、当該液晶配向膜が形成された2枚の基板を用いて液晶表示素子を作製した。そして、各工程において、液晶配向膜の密着性および強靱性の評価、液晶の配向性の評価、液晶分子のプレチルト角の測定を行った。結果を下記表3および表4に示す。
【0085】
【表3】
【0086】
【表4】
【0087】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、通常の手段では同時に得ることができない所期の複数の特性をバランスよく有し、液晶配向剤の構成成分として特に有用なイミド基含有ポリアミック酸を提供することができる。
請求項2記載の発明によれば、このようなイミド基含有ポリアミック酸を、確実かつ容易に製造することのできる製造方法を提供することができる。
請求項3記載の発明によれば、ポリアミック酸系配向剤および可溶性ポリイミド系配向剤がそれぞれ有する利点を兼ね備えた液晶配向剤を提供することができる。すなわち、請求項3に係る液晶配向剤によれば、塗膜の乾燥条件およびラビング条件に関わらず、基板に対する密着性に優れた強靱な被覆膜を形成することができ、当該被覆膜の表面にラビング処理を施すことにより、液晶分子の配向性に優れ、塗膜の乾燥条件およびラビング条件を変化させることによる液晶分子のプレチルト角の変化が小さくて、当該液晶分子に所期の大きさのプレチルト角を安定的に発現させることが可能な液晶配向膜を形成することができる。
また、請求項3の液晶配向剤により形成された液晶配向膜に、例えば特開平6−222366号公報や特開平6−281937号公報に示されているような、紫外線を照射することによってプレチルト角を変化させるような処理、あるいは特開平5−107544号公報に示されているような、ラビング処理を施した液晶配向膜表面にレジスト膜を部分的に形成して、先のラビング処理と異なる方向にラビング処理を行った後にレジスト膜を除去し、液晶配向膜の配向能を変化させるような処理を行うことによって、液晶表示素子の視界特性を改善することが可能である。
請求項3に係る液晶配向剤により形成される液晶配向膜は、TN型液晶表示素子およびSTN型液晶表示素子のみならずSH(Super Homeotropic)型液晶表示素子や強誘電性液晶表示素子など種々の液晶表示素子を構成するために好適に使用することができる。また、当該液晶配向膜を備えた液晶表示素子は、液晶の配向性および信頼性にも優れ、種々の装置に有効に使用することができ、例えば卓上計算機、腕時計、置時計、計数表示板、ワードプロセッサ、パーソナルコンピュータ、液晶テレビなどの表示装置として好適に用いることができる。
Claims (4)
- 下記一般式(2)で表されるテトラカルボン酸二無水物と、下記一般式(3)で表されるイミド基含有ジアミン化合物とを反応させることにより、下記一般式(1)で表されるイミド基含有ポリアミック酸を製造する方法であって、
前記イミド基含有ジアミン化合物は、下記の特定のテトラカルボン酸二無水物群から選ばれたテトラカルボン酸二無水物と、アミノニトロベンゼン、下記の特定のジアミン化合物群から選ばれたジアミン化合物またはニトロフェニルイソシアネートとを反応させることを含む方法によって得られるものであることを特徴とするイミド基含有ポリアミック酸の製造方法。
〔特定のテトラカルボン酸二無水物群〕
1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物および下記の化学式(1)のA01〜A04で表される化合物。
p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,5−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4.4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、下記化学式(2)のB01〜B02で表される化合物および下記化学式(3)で表される化合物。
- 特定のテトラカルボン酸二無水物群が、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオンおよび請求項1に記載の化学式(1)のA01〜A04で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載のイミド基含有ポリアミック酸の製造方法。
- 特定のテトラカルボン酸二無水物群が、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオンおよび1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオンであることを特徴とする請求項1に記載のイミド基含有ポリアミック酸の製造方法。
- 請求項1〜請求項3のいずれかに記載の方法によって製造されたイミド基含有ポリアミック酸およびこのイミド基含有ポリアミック酸のアミック酸部位の少なくとも一部を脱水閉環して得られるポリイミドから選ばれる少なくとも1種の重合体を含有することを特徴とする液晶配向剤。
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