JP3645800B2 - 測距装置 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、アナログ出力形式の測距センサを備えたパッシブ型測距装置に関する。
【0002】
【従来技術およびその問題点】
従来のカメラに搭載されている一般的なパッシブ型測距装置は、測距エリア内の被写体光束を分割光学系で二分割し、それぞれの分割被写体光束を左右一対の測距センサ上に結像させ、左右の測距センサの各光電変換素子で光電変換して、蓄積した電荷を画素信号(電圧)として出力し、これらの画素信号に基づいて測距演算を実行して被写体距離またはデフォーカス量など合焦に必要なデータを求めている。
しかしながら、このパッシブ型測距装置にアナログ出力形式の測距センサを用いた場合には、測距センサから出力されるアナログの画素信号をA/D変換して測距演算に用いただけでは適正な測距演算値が得られない場合があった。例えば測距エリア内の被写体が低輝度または低コントラストである場合は、低輝度部分の分解能が低いため、測距精度が低下し、適正な測距演算値が得られなかった。
【0003】
【発明の目的】
本発明は、測距精度を向上させることができる測距装置を提供することを目的とする。
【0004】
【発明の概要】
本発明は、被写体光を各測距エリア毎に受光して積分し、出力する受光手段と、該受光手段の出力を所定の変換レンジで対数変換する対数変換手段と、所定の基準輝度範囲に対応する前記受光手段の出力に基づいて、コントラストが所定値よりも低いか否かを各測距エリア毎に判定する判定手段と、前記判定手段によってコントラストが所定値よりも低いと判定された測距エリアについては、前記基準輝度範囲よりも狭く、且つ、該測距エリアの平均相対輝度を含む所定の輝度範囲に対応する前記受光手段の出力を、前記対数変換手段に再度対数変換させる制御手段と、を備えたことに特徴を有している。この構成によれば、低輝度または高輝度でコントラストが低い測距エリアでも、数値上、コントラストが明確な変換データを得ることができる。そのため、コントラストが明確な変換データに基づいて測距演算を実行することができ、測距精度の向上を図ることができる。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下図面に基づいて本発明を説明する。図1〜図3は、本発明を適用したレンズシャッタ式カメラの一実施の形態を示す外観図である。このレンズシャッタ式カメラのカメラボディ1は、図1に示すように、正面にズームレンズ2を備え、その上方には、パッシブAF受光窓4、ファインダ窓5、測光窓6を備えている。なお、これらの窓4〜6の後方カメラボディ1内には、図示しないが公知のように、パッシブ型測距センサ、ファインダ光学系、測光センサがそれぞれ配置されている。
【0006】
カメラボディ1の上飾り板7には、図2に示すように、レリーズボタン8が設けられている。レリーズボタン8は、測光スイッチSWSおよびレリーズスイッチSWRと連動していて、半押しで測光スイッチSWSがオンし、全押しでレリーズスイッチSWRがオンする。カメラボディ1の背面には、図3に示すように、中央部に電源をオン/オフするメインスイッチレバー10が設けられ、その上部にテレ側またはワイド側に倒すとズームレンズ2をテレ方向またはワイド方向にズーミングできるズームレバー9が設けられている。このズームレバー9は、テレスイッチSWTおよびワイドスイッチSWWと連動していて、ズームレバー9がテレ側に倒されるとテレスイッチSWTがオンし、ワイド側に倒されるとワイドスイッチSWWがオンする。また、カメラボディ1の背面のファインダ接眼窓12近傍には、点灯または点滅により測距結果を報知する緑ランプ11が設けられている。
【0007】
次に、カメラボディ1の制御系の構成について、図4に示したブロック図を参照してより詳細に説明する。CPU21は、カメラの機能に関するプログラム等が書き込まれたROM、制御用または演算用の各種パラメータなどを一時的に記憶するRAM21a、及びA/D変換器21bを内蔵している。CPU21は、カメラボディ1の動作を総括的に制御する制御手段として機能するほか、対数変換手段、判定手段、演算手段として機能する。
【0008】
CPU21には、スイッチ類として、メインスイッチレバー10に連動するメインスイッチSWM、ズームレバー9に連動するテレスイッチSWTおよびワイドスイッチSWW、レリーズボタン8に連動する測光スイッチSWSおよびレリーズスイッチSWRが接続されている。
メインスイッチレバー10がオン操作されてメインスイッチSWMがオンすると、CPU21は、電池23を電源として、各入出力ポートに接続されている周辺回路に電力供給を開始し、操作されたスイッチに応じた処理を実行する。
ズームレバー9に連動するテレスイッチSWTまたはワイドスイッチSWWがオンすると、CPU21はズームレンズ駆動回路29を介してズームモータ30を駆動させ、ズームレンズ2をテレズームまたはワイドズームさせる。CPU21は、電源がオフされたときにはズームレンズ2のレンズ鏡筒がカメラボディ1内に収まる収納位置までズームモータ30を駆動し、電源がオンされたときにはズームレンズ2がワイド端位置に移動するまでズームモータ30を駆動する。ズームレンズ2の焦点距離、レンズ位置は、ズームコード入力回路43によって検知される。
【0009】
レリーズボタン8が半押しされて測光スイッチSWSがオンすると、先ず、CPU21は測光回路37を介して被写体輝度を求める。測光回路37は、測光窓6から入射した被写体光を測光センサ37aで受光し、被写体輝度に応じた測光信号をCPU21に出力する回路である。測光センサ37aはいわゆる分割測光センサであり、撮影範囲を複数の測光エリアに分割した各測光エリア内の被写体について測光ができる。
【0010】
CPU21は、求めた被写体輝度およびDXコード入力回路45を介して入力したISO感度などに基づいて適正シャッタ速度および適正絞り値を演算する。DXコード入力回路45は、カメラボディ1に装填されたフィルムのパトローネに書き込まれたDXコードを読み込み、ISO感度、撮影枚数などの情報をCPU21に出力する回路である。また、CPU21は、測距回路35の出力に基づいて測距演算を実行し、所定条件を満たす測距演算値を選択できたときは、選択した測距値に基づいてフォーカスモータ32のフォーカシングレンズ駆動量を算出し、フォーカス駆動回路31を介してフォーカスモータ32を駆動するとともに、緑ランプ11を点灯させる。所定条件を満たす測距演算値を選択できなかったときは、緑ランプ11を点滅させて測距エラーを報知し、使用者に注意を促す。
【0011】
測距回路35は、各測距エリア内に含まれる被写体の焦点状態を検出する回路であり、受光した被写体光束を電気的な画素信号(アナログ信号)に変換して出力する測距センサ36(受光手段)を有している。測距センサ36は、図5に示すように、被写体像を形成する被写体光束を一対のセパレータレンズ(結像レンズ)36aによって分割して、Aセンサ及びBセンサからなる一対のラインセンサ36b上に結像する。このラインセンサ36bは、詳細は図示しないが、多数の光電変換素子(受光素子)を有している。この各光電変換素子が、それぞれ受光した被写体光束を光電変換して積分(蓄積)し、蓄積電荷を画素単位の画素信号(電圧)として順番に出力する。なお、本実施形態でラインセンサ36bは、撮影画面(不図示)の中央部に対応する測距エリアC、右側に対応する測距エリアR、および左側に対応する測距エリアLの3個の測距エリアについて測距できるように形成されている。
【0012】
レリーズボタン8が全押しされてレリーズスイッチSWRがオンすると、CPU21は、算出した適正絞り値に基づいて絞り制御回路25を作動させてズームレンズ2の絞りを絞り込み、適正シャッタ速度に基づいてシャッタ制御回路33を介してシャッタモータ34を駆動させて露出する。露出が終了すると、CPU21はフィルム給送回路27を介してフィルム給送モータ28を作動させ、フィルム給送信号入力回路41から出力されるフィルム給送信号を入力してフィルム給送量を検知しながらフィルムを1コマ分巻き上げるが、フィルム残量がない場合は、フィルム給送回路27を介してフィルム給送モータ28を巻き戻し作動させてフィルムの巻戻しを行う。
【0013】
以上は本カメラの主要部材であるが、本カメラは、セルフタイマ動作を表示するセルフランプ、CPU21の制御下でストロボを発光させるストロボ装置、各種情報を表示するLCD表示パネルなど、公知の部材を備えている。
【0014】
図6(A)には、ラインセンサ36bの光電変換素子が出力する画素信号Vx(電圧)と時間の関係の一例をグラフで示してある。同グラフにおいて、縦軸は電圧、横軸は積分時間であり、符号Vrefは基準電圧である。各光電変換素子の積分値(電荷量)は時間の経過とともに増大するので、画素信号Vxは各光電変換素子が積分した電荷量に応じて時間経過とともに基準電圧Vrefから下降する。CPU21は、いずれかの画素信号Vxが0Vに達した時に、ラインセンサ36bの全ての光電変換素子の積分を終了させる。ここで0Vは積分終了値(電圧)であり、輝度が高いほど積分終了値に達するまでの時間は短くなる。つまり、画素信号Vxの傾きは輝度に比例していて、高輝度ほど画素信号Vxの傾きの絶対値が大きいことが分かる。
なお、図6(A)では、最高輝度である画素信号Veを基準(0EV)とし、画素信号Vxが高い、即ち低輝度ほどEV値が大きくなるように、輝度値EVを画素信号Veに対する相対値で表している。画素信号Va〜Veは、それぞれ1EVの輝度差の場合として示してある。
【0015】
図6(A)において最初に積分終了した画素信号Veの積分時間を時間t1とし、時間t1における各画素信号Va〜Veを0〜Vref(V)レンジで10ビットA/D変換した画素データVa´〜Ve´を図6(B)に棒グラフで示した。図において縦軸は画素データVx´(A/D変換値)を示し、横軸はラインセンサ36bの各光電変換素子に付された符号を示していて、被写体輝度が高いほど棒軸が低くなっている。ΔEVは基準電圧Vrefに対応する輝度と画素データVx´に対応する輝度の差分である。基準電圧Vrefの10ビットA/D変換値をVref´とすれば、ΔEVは式;ΔEV=log2(Vref´−Vx´)で定義される。なお、電圧0Vから基準電圧Vrefまでの輝度範囲はΔ10EVに相当する。
そして、図6(B)において最も高輝度であった画素データVe´を基準0EVとし、この基準0EVとの輝度差がΔ0EV〜Δ4EV以内となる範囲の画素データ(0〜255)を4段階に対数変換(4EV対数変換)して求めた4EV変換データを図6(C)に棒グラフで示した。本実施形態の4EV対数変換では、各Δ1EVあたりの分解能を64階調とする8ビット(0〜255階調)の4EV変換データを求める。
【0016】
図6(B)の画素データ(A/D値)は、高輝度部分の分解能に比べて低輝度部分の分解能が低い。そこで、低輝度部分と高輝度部分の分解能をほぼ等しくするため、例えば、画素データを4EV対数変換し、求めた4EV変換データ(図6(C))に基づき測距演算を実行する。そして、この4EV変換データに基づく測距演算で適正な測距演算値が得られなかった場合には、適正な測距演算値が得られるまで、変換レンジの異なる変換データに基づき測距演算を繰り返すことも可能である。しかしながら、コントラストが低い場合には、変換レンジの異なる変換データを測距演算に使用しても適正な測距演算値を得られないことが多い。その場合に測距演算を繰返し実行するのは、演算時間が無駄となる。
【0017】
そこで本発明は、先ず、各測距エリアの平均相対輝度を求める。ここで「平均相対輝度」とは、測距センサ36が出力した画素信号を測距エリア毎に平均した値であるが、本実施形態では、4EV変換データをΔ4EV(最低輝度)からの差分に変換して各測距エリア毎に平均した値を「平均相対輝度」として求める。次に、4EV変換データに基づいて測距演算を実行する。そして、適正な測距演算値が得られなかった測距エリアについては、4EV変換データに基づいてコントラストをチェックし、コントラストが所定値よりも低ければ、測距エリアの平均相対輝度を含む所定の輝度範囲(本実施例ではΔ2EV)の画素データについて2EV対数変換を実行し、求めた2EV変換データを測距演算に使用する。
【0018】
このように、測距エリアの平均相対輝度を含む輝度範囲の分解能を高くした2EV変換データに基づき測距演算を実行すれば、低輝度または高輝度でコントラストが低い測距エリアについても適正な測距演算値を得ることができる。
【0019】
図7(A)は、求めた4EV変換データの一例であり、縦軸は最高輝度に対する輝度差ΔEVを示し、横軸は測距エリアを示している。CPU21は、各測距エリア毎に4EV変換データの最大値と最小値の差を求め、その差が所定値以下である場合(本実施形態では差が1EV以下である場合)をコントラストが低いと判定する。なお、コントラストの判定方法は任意であり、例えば隣り合う画素データの差の絶対値の和によって判断してもよい。
コントラストが十分あると判定された測距エリア、例えば測距エリアCでは、コントラストが十分明確な4EV変換データを得られたので、4EV変換データを測距演算に使用する(図7(C))。
【0020】
一方、コントラストが低いと判定された測距エリアでは、その測距エリアの平均相対輝度を含む所定の輝度範囲(本実施形態では2EV単位の輝度範囲)の画素データを対数変換(2EV対数変換)する。本実施形態の2EV対数変換では、各Δ1EVあたりの分解能を128とする8ビット(0〜255階調)の2EV変換データを求める。
例えば図7(A)の測距エリアRでは、平均相対輝度が約1EVで所定値2EV未満なので、平均相対輝度を含むΔ2EV〜Δ4EVの低輝度範囲の画素データを2EV対数変換し、2EV変換データを求める(図7(D))。また図7(A)の測距エリアLでは、平均相対輝度が約3.8EVで所定値2EV以上なので、平均相対輝度を含むΔ0EV〜Δ2EVの高輝度範囲の画素データを2EV対数変換し、2EV変換データを求める(図7(B))。
なお本実施形態では、平均相対輝度と比較する所定値を2EVに設定しているが、この所定値は任意であって複数の値を設定してもよく、測距センサ36の性能などに応じて適宜設定する。
【0021】
次に、カメラボディ1の動作について、図8〜図12に示したフローチャートを参照してより詳細に説明する。図8は、撮影処理に関するフローチャートであり、この処理は測光スイッチSWSがオンされたときに実行される。この処理に入ると先ず、測光処理を実行して測距エリアの被写体輝度(測光値Bv)を求め、測距処理を実行して測距演算値を求める(S11、S13)。測距処理は、詳細は後述するが、各測距エリア毎に測距演算値を求め、求めた全測距演算値から所定条件を満たす測距演算値を選択し、選択した測距演算値に基づいてフォーカシングモータ30を駆動させる処理である。
【0022】
測距処理後、測距エラーフラグがセットされているかどうかをチェックする(S15)。測距エラーフラグがセットされているときは、測距処理で所定条件を満たす測距演算値を求められなかったので、使用者に注意を促すため緑ランプ11を点滅し(S15;Y、S19)、測距エラーフラグがクリアされているときは、緑ランプ11を点灯して(S15;N、S17)、AE演算処理を実行する(S21)。AE演算処理では、測光回路37を介して求めた被写体輝度およびDXコード入力回路45から求めたISO感度などに基づいて適正シャッタ速度および適正絞り値を算出する。
【0023】
そして、測光スイッチSWSがオンしているかどうかをチェックする(S23)。測光スイッチSWSがオンしていないときは、緑ランプ11を消灯してリターンする(S23;N、S24)。測光スイッチSWSがオンしているときは、次にレリーズスイッチSWRがオンしているかどうかをチェックする(S23;Y、S25)。レリーズスイッチSWRがオンしていないときは、S23へ戻り、測光スイッチSWSがオフするかまたはレリーズスイッチSWRがオンするまで待機する(S25;N、S23)。レリーズスイッチSWRがオンしたときは、緑ランプ11を消灯し、算出した適正絞り値に基づいて絞り制御回路25を作動させてズームレンズ2の絞りを絞り込み、適正シャッタ速度に基づいてシャッタ制御回路33を介してシャッタモータ34を駆動させて露出する露出制御処理を実行する(S25;Y、S27、S29)。露出制御処理終了後は、フィルム給送回路27を介してフィルム給送モータ28を作動させてフィルムを1コマ分巻き上げるが、1コマ分を巻き上げることができず最終コマの撮影が終了していた場合は、フィルムをすべて巻戻し、撮影処理を終了する(S31)。
【0024】
次にS13で実行される測距処理について図9に示されるフローチャートを参照してより詳細に説明する。この処理に入ると先ず、測距センサ36に積分を開始させ(S101)、測距センサ36のいずれかの画素信号(電圧)が積分終了値(電圧)に達した時に、測距センサ36の積分を終了させて画素信号を入力し、A/D入力及び4EV対数処理を実行する(S103)。A/D入力及び4EV対数処理は、詳細は後述するが、測距センサ36が出力した画素信号を10ビットA/D変換して画素データを求め、さらに画素データを4EV対数変換して4EV変換データを求める処理である。本実施形態では、A/D変換した10ビットの画素データ(0〜1023)を8ビットの4EV変換データに対数変換している。なお、画素データ及び4EV変換データはRAM21aにメモリされる。
【0025】
A/D入力及び4EV対数処理を実行したら、各測距エリアを識別する変数jに0をセットし、測距エリア[j]の4EV変換データをΔ4EV(最低輝度)からの差に変換した値の平均値を求め、求めた平均値を平均相対輝度af_ave[j]としてメモリする(S105、S107)。そして変数jに+1加算し、変数jが総測距エリア数に達したか否かをチェックする(S109、S111)。変数jが総測距エリア数に達していないときは、S107へ戻り、変数jが総測距エリア数に達するまでS107〜S111の処理を繰返し、全ての測距エリアの平均相対輝度af_ave[j]を求める(S111;N)。
【0026】
変数jが総測距エリア数に達したら、変数jに0をセットし、4EV変換データに基づいて測距演算を実行する(S111;Y、S113、S115)。続いて、測距エリア[j]がローコンか否かを判定する(S117)。本実施形態では、4EV変換データ最大値と最小値の差が所定値以下である場合に、コントラストが低いと判定する。測距エリア[j]をローコンでないと判定したときは、S137へ進み、S137以降の処理を実行する(S117;N)。測距エリア[j]をローコンであると判定したときは、測距エリア[j]を測距する光電変換素子群(ラインセンサ36b)のスタートアドレスs_adr[j]を変数aにセットし、変数iに0をセットする(S117;Y、S119、S121)。そして、[a+i]番地の光電変換素子が出力した画素信号を10ビットA/D変換したAF_AD[a+i]値と基準電圧VrefのA/D変換値(1023)とを比較し(S123)、AF_AD[a+i]値が基準電圧Vref未満であったときは、基準電圧VrefのA/D変換値からAF_AD[a+i]値を減算した値をWDATA値としてメモリする(S123;Y、S125)。AF_AD[a+i]値が基準電圧VrefのA/D変換値以上であったときは、0をWDATA値としてメモリする(S123;N、S127)。
なお本実施形態では画素信号を、電圧0Vを0とし、基準電圧Vrefを1023とする 10ビットの値にA/D変換している。したがってAF_AD[a+i]値は高輝度ほど小さくなり、その結果、WDATA値は高輝度ほど大きくなり、低輝度ほど小さくなる。
【0027】
続いて、2EV対数処理を実行する(S129)。2EV対数処理は、詳細は後述するが、コントラストが所定値よりも低いと判定した測距エリアがある場合に、その測距エリアの平均相対輝度を含む所定の輝度範囲の画素データを2EVレンジで再度対数変換する処理である。
2EV対数変換処理を実行したら、変数iに+1加算し(S131)、変数iが測距エリア[j]を測距する光電変換素子の総数に達したか否かをチェックする(S133)。変数iが測距エリア[j]を測距する光電変換素子の総数に達していないときは、S123へ戻り、変数iが測距エリア[j]の測距に使用する光電変換素子の総数に達するまでS123〜S133の処理を繰返し(S133;N)、変数iが測距エリア[j]を測距する光電変換素子の総数に達したときは、S129で求めた2EV変換データに基づいて測距演算を実行する(S133;Y、S135)。
【0028】
続いてS137では変数jを+1加算し、変数jが測距エリア総数に達したか否かをチェックする(S139)。変数jが測距エリア総数に達していないときは、S115に戻り、変数jが測距エリア総数に達するまでS115〜S139の処理を繰返し、全測距エリアについて測距演算値を求める(S139;N)。そして変数jが測距エリア総数に達したら、求めた全測距演算値について各測距演算値が有効であるか否かをチェックする(S139;Y、S141)。本実施形態では、測距演算値の信頼性が所定値以上あれば、有効な測距演算値であると判断している。有効な測距演算値が1つも得られなかったときは、測距エラーフラグに1をセットしてリターンする(S141;N、S143)。有効な測距演算値が得られたときは、測距エラーフラグに0をセットし、所定条件を満たす測距演算値を選択して、選択した測距演算値からLLデータを算出し、求めたLLデータに基づきレンズ駆動処理を実行してリターンする(S141;Y、S145、S147、S151)。
【0029】
次に測距処理のS103で実行されるA/D入力及び4EV対数処理について、図10に示されるフローチャート及び図6を参照して詳細に説明する。
この処理に入ると先ず、変数iに0をセットし、A/D変換器21bを起動して測距回路35から出力された最初の画素信号を10ビットA/D変換し、画素データを求める(S201、S203)。画素信号(電圧)及び画素データは、低輝度ほど大きくなり、高輝度ほど小さくなる(図6(A)(B)参照)。画素信号のA/D変換が完了したら、求めた画素データをAF_AD[i]としてRAM21aにメモリし、メモリしたAF_AD[i]値と基準電圧Vref のA/D変換値を比較する(S205;Y、S207、S209)。
【0030】
AF_AD[i]値が基準電圧Vref のA/D変換値未満であるときは、基準電圧Vref のA/D変換値からAF_AD[i]値を減算した値をWDATA値としてメモリする(S209;Y、S211)。AF_AD[i]値が基準電圧Vref のA/D変換値以上であるときは、0をWDATA値としてメモリする(S209;N、S213)。AF_AD[i]値は高輝度ほど小さくなるので、WDATA値は高輝度ほど大きくなり、低輝度ほど小さくなる(図6(B)参照)。
【0031】
続いてA/D変換器21bを起動して次の画素信号のA/D変換を開始し、i番目のWDATA値を4EV対数変換してi番目の4EV変換データを求める4EV対数処理(WDATA,i)を実行して、変数iを+1加算する(S215、S217、S219)。そしてS215で開始したA/D変換が完了するまで待機し(S221;N)、A/D変換が完了したら、変数iがラインセンサ36bの光電変換素子総数に達したか否かをチェックする(S221;Y、S223)。変数iがラインセンサ36bの光電変換素子総数に達していなければ、S221で求めた画素データをAF_AD[i]値に上書きメモリし、AF_AD[i]値と基準電圧Vref のA/D変換値を比較する(S223;N、S225、S227)。AF_AD[i]値が基準電圧Vref のA/D変換値未満であれば基準電圧Vref のA/D変換値からAF_AD[i]値を減算した値をWDATA値としてメモリし(S227;Y、S229)、AF_AD[i]値が基準電圧Vref のA/D変換値以上であれば0をWDATA値としてメモリして(S227;N、S231)、S215に戻る。
変数iがラインセンサ36bの光電変換素子総数に達したときは、全光電変換素子について、各光電変換素子が出力した画素信号に基づき画素データ及び4EV変換データを求めたので、リターンする(S223;Y)。
【0032】
次にA/D入力及び4EV対数処理のS217で実行される4EV対数処理について、図11に示されるフローチャート及び図6(C)を参照して詳細に説明する。この処理では、基準0EV(最高輝度)との輝度差がΔ0EV〜Δ4EVとなる基準輝度範囲の画素データ(10ビットA/D値)を4段階に対数変換(4EV対数変換)し、8ビットの4EV変換データを求める。なお、求めた4EV変換データは、RAM21aにメモリする。
【0033】
WDATA値が512以上であるとき、即ちΔ0EV〜Δ1EV範囲の画素データを4EV対数変換するときは、次式;192+(WDATA−512)/8により算出した値をWDATA´とし、255からWDATA´を減算した値を4EV変換データとしてメモリし、リターンする(S301;Y、S303、S319)。この4EV対数変換により、Δ0EV〜Δ1EV範囲の分解能は64階調となる。
WDATA値が256以上512未満であるとき、即ちΔ1EV〜Δ2EV範囲の画素データを4EV対数変換するときは、次式;128+(WDATA−256)/4により算出した値をWDATA´とし、255からWDATA´値を減算した値を4EV変換データとしてメモリし、リターンする(S301;N、S305;Y、S307、S319)。この4EV対数変換により、Δ1EV〜Δ2EV範囲の分解能は64階調となる。
【0034】
WDATA値が128以上256未満であるとき、即ちΔ2EV〜Δ3EV範囲の画素データを4EV対数変換するときは、次式;64+(WDATA−128)/2により算出した値をWDATA´とし、255からWDATA´値を減算した値を4EV変換データとしてメモリし、リターンする(S305;N、S309;Y、S311、S319)。この4EV対数変換により、Δ2EV〜Δ3EV範囲の分解能は64階調となる。
WDATA値が64以上128未満であるとき、即ちΔ3EV〜Δ4EV範囲の画素データを4EV対数変換するときは、次式;WDATA−64により算出した値をWDATA´とし、255からWDATA´を減算した値を4EV変換データとしてメモリし、リターンする(S309;N、S313;Y、S315、S319)。この4EV対数変換により、Δ3EV〜Δ4EV範囲の分解能は64階調となる。
【0035】
WDATA値が64未満であるとき、即ち基準0EVとの輝度差がΔ4EV以上となる低輝度範囲の画素データを4EV対数変換するときは、WDATA´に0をメモリし、255からWDATA´値を減算した値、つまり255を4EV変換データとしてメモリし、リターンする(S313;N、S317、S319)。この4EV対数変換により、基準0EVとの輝度差がΔ4EV以上となる低輝度範囲の4EV変換データは全て255となる。
【0036】
以上の4EV対数変換により、Δ0EV〜Δ4EV範囲の分解能がほぼ等しい4EV変換データを得ることができ、被写体の焦点状態を容易に判別することができる。
【0037】
次に測距処理のS129で実行される2EV対数処理について、図12に示されるフローチャート及び図7を参照して詳細に説明する。この処理は、4EV変換データからコントラストが低いと判定した測距エリアについて実行される処理であって、測距エリアの平均相対輝度を含む所定の輝度範囲の分解能が高くなるように、その平均相対輝度を含む輝度範囲の画素データを2EVレンジで対数変換する処理である。
【0038】
この処理に入ると先ず、平均相対輝度af_ave[j]と所定値2EVとを比較する(S401)。平均相対輝度af_ave[j]が2EV未満であるとき(S401;Y)、即ち低輝度でコントラストが低い測距エリアについては、平均相対輝度af_ave[j]を含む低輝度範囲(図6のWDATA値では最小値64、最大値256の範囲;図7ではΔ4〜Δ2EV範囲)の分解能を高くするため、S403〜S417の処理を実行する。
WDATA値が256以上であるとき、即ちΔ0EV〜Δ2EV範囲の画素データを2EV対数変換するときは、WDATA´に255をメモリし、255からWDATA´を減算した値、つまり0を2EV変換データとしてAF_2EV[i]にメモリする(S403;Y、S405、S417)。これにより、基準値0EVとの輝度差がΔ2EV未満となる高輝度範囲の2EV変換データは全て0に圧縮される。
【0039】
WDATA値が128以上256未満であるとき、即ちΔ2EV〜Δ3EV範囲の画素データを2EV対数変換するときは、WDATA´にWDATA値をメモリし、255からWDATA´を減算した値を2EV変換データとしてAF_2EV[i]にメモリする(S403;N、S407;Y、S409、S417)。これにより、Δ2EV〜Δ3EV範囲の分解能は128階調になり、4EV変換データの2倍となる。
WDATA値が64以上128未満であるとき、即ちΔ3EV〜Δ4EV範囲の画素データを2EV対数変換するときは、次式;2×(WDATA−64)より算出した値をWDATA´としてメモリし、255からWDATA´を減算した値を2EV変換データとしてAF_2EV[i]にメモリする(S407;N、S411;Y、S413、S417)。これにより、Δ3EV〜Δ4EV範囲の分解能は128階調となり、4EV変換後データの2倍となる。
WDATA値が64未満であるとき、即ちΔ4EV以上の範囲の画素データを2EV対数変換するときは、WDATA´に0をメモリし、255から0を減算した値、つまり255を2EV変換データとしてAF_2EV[i]にメモリする(S411;N、S415、S417)。これにより、基準値0EVとの輝度差がΔ4EV以上となる低輝度範囲の2EV変換データは全て255に圧縮される。
【0040】
以上の処理により、平均相対輝度af_ave[j]を含む輝度範囲の分解能を高くすることができるので、図7(A)の測距エリアRのように低輝度でコントラストが低い測距エリアについても、数値上、コントラストの明確な2EV変換データを得ることができる(図7(D))。
【0041】
平均相対輝度af_ave[j]が2EV未満でないとき(S401;N)、即ち高輝度でコントラストが低い測距エリアについては、平均相対輝度af_ave[j]を含む高輝度範囲(図6のWDATA値では最小値255、最大値1023の範囲;図7(A)ではΔ0〜Δ2EV範囲)の分解能を高くするため、S419〜S429の処理を実行する。
【0042】
WDATA値が512以上であるとき、即ちΔ0EV〜Δ1EV範囲の画素データを2EV対数変換するときは、次式;128+(WDATA−512)/4より算出した値をWDATA´とし、255からWDATA´値を減算した値を2EV変換データとしてAF_2EV[i]にメモリする(S419;Y、S421、S429)。これにより、Δ0EV〜Δ1EV範囲の分解能は128階調となり、4EV変換データの2倍となる。
WDATA値が256以上512未満であるとき、即ちΔ1EV〜Δ2EV範囲の画素データを2EV対数変換するときは、次式;(WDATA−256)/2により算出した値をWDATA´とし、255からWDATA´値を減算した値を2EV変換データとしてAF_2EV[i]にメモリする(S419;N、S423;Y、S425、S429)。これにより、Δ1EV〜Δ2EV範囲の分解能は128階調となり、4EV変換データの2倍となる。
WDATA値が256未満であるとき、即ちΔ2EV以上の範囲の画素データを2EV対数変換するときは、0をWDATA´とし、255からWDATA´値を減算した値、つまり255を2EV変換データとしてAF_2EV[i]にメモリする(S423;N、S427、S429)。これにより、基準値0EVとの輝度差がΔ2EV以上となる低輝度範囲の2EV変換データは全て255に圧縮される。
【0043】
以上の処理により、平均相対輝度af_ave[j]を含む輝度範囲の分解能を高くすることができるので、図7(A)の測距エリアRのように高輝度でコントラストが低い測距エリアについても、数値上、コントラストが明確な2EV変換データを得ることができる(図7(D))。
【0044】
以上のように本実施形態では、4EV変換データに基づく測距演算で適正な測距演算値が得られず、且つコントラストが低い測距エリアについては、その測距エリアの平均相対輝度を含む所定の輝度範囲の画素データのみを2EV対数変換を実行するので、数値上、コントラストが明確な2EV変換データを得られる。そのため、低輝度または高輝度でコントラストが低い場合にも適正な測距演算値を得ることができるとともに、対数変換レンジの異なる変換データを用いて何度も測距演算を実行する必要がなく測距演算時間の短縮化が図れる。
【0045】
以上、レンズシャッタ式カメラに搭載したパッシブ型AF測距装置に適用した実施形態について説明したが、本発明は一眼レフカメラに搭載されるパッシブ型AF測距装置などにも適用できる。
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、コントラストが低いと判定した測距エリアについては、基準輝度範囲よりも狭く、且つ、該測距エリアの平均相対輝度を含む所定の輝度範囲に対応する受光手段の出力のみを再度対数変換するので、低輝度または高輝度でコントラストが低い測距エリアでも、コントラストが明確な変換データを得ることができる。そのため、コントラストの明確な変換データに基づいて測距演算を実行でき、測距精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の測距装置を搭載したレンズシャッタ式カメラの一実施形態を示す正面図である。
【図2】 同レンズシャッタ式カメラの上面図である。
【図3】 同レンズシャッタ式カメラの背面図である。
【図4】 同レンズシャッタ式カメラの回路構成の主要部を示すブロック図である。
【図5】 同レンズシャッタ式カメラの測距センサの概要を説明する図である。
【図6】 (A)は、同測距センサの画素信号と時間の関係を示す図であり、(B)は、時間t1における同測距センサの画素信号をA/D変換して求めた画素データを示す図であり、(C)は(B)の各画素データを4EV対数変換して求めた4EV変換データを示す図である。
【図7】 同レンズシャッタ式カメラの測距処理の概要を説明する図であり、(A)は4EV変換データの一例を示す図であり、(B)、(D)は測距エリアL、Rについて2EV対数変換を実行した結果を示す図であり、(C)は(A)に示した測距エリアCの4EV変換データを示す図である。
【図8】 同レンズシャッタ式カメラの撮影処理に関するフローチャートを示す図である。
【図9】 同レンズシャッタ式カメラの測距処理に関するフローチャートを示す図である。
【図10】 同レンズシャッタ式カメラのA/D入力及び4EV対数処理に関するフローチャートを示す図である。
【図11】 同レンズシャッタ式カメラの4EV対数処理に関するフローチャートを示す図である。
【図12】 同レンズシャッタ式カメラの2EV対数処理に関するフローチャートである。
【符号の説明】
1 カメラボディ
2 ズームレンズ
11 緑ランプ
21 CPU
21a RAM
21b A/D変換器
35 測距回路
36 測距センサ
36a セパレータレンズ
36b ラインセンサ
37 測光回路
37a 測光センサ
Claims (6)
- 被写体光を各測距エリア毎に受光して積分し、出力する受光手段と、
各測距エリア毎に、所定の基準輝度範囲に対応する前記受光手段の出力を所定の変換レンジで対数変換する対数変換手段と、
前記受光手段の出力に基づいて、コントラストが所定値より低いか否かを各測距エリア毎に判定する判定手段と、
前記判定手段によってコントラストが所定値よりも低いと判定された測距エリアについては、前記基準輝度範囲よりも狭く且つ該測距エリアの平均相対輝度を含む所定の輝度範囲に対応する前記受光手段の出力を、前記対数変換手段に再度対数変換させる制御手段と、
を備えたことを特徴とする測距装置。 - 請求項1記載の測距装置において、前記制御手段は、前記受光手段の出力に基づいて前記各測距エリアの平均相対輝度を求める測距装置。
- 請求項2記載の測距装置において、前記制御手段は、前記対数変換手段が対数変換して求めた変換データを前記受光手段の出力とし、該変換データを所定の基準値からの差に変換し、該変換値を各測距エリア毎に平均して前記各測距エリアの平均相対輝度を求める測距装置。
- 請求項3記載の測距装置において、前記判定手段は、前記対数変換手段が対数変換して求めた変換データに基づいて、コントラストが所定値よりも低いか否かを各測距エリア毎に判定する測距装置。
- 請求項1から4のいずれか一項に記載の測距装置において、前記制御手段は、前記対数変換手段に対数変換を再実行させるときは、前記所定の変換レンジとは異なる変換レンジで対数変換させる測距装置。
- 請求項1から5のいずれか一項に記載の測距装置において、前記対数変換手段によって対数変換された変換データに基づいて測距演算を実行する演算手段を備え、
該演算手段は、
前記判定手段によってコントラストが所定値よりも低くないと判定された測距エリアについては、基準輝度範囲に対応する前記受光手段の出力を対数変換した第1変換データに基づいて測距演算を実行し、
前記判定手段によってコントラストが所定値よりも低いと判定された測距エリアについては、前記基準輝度範囲よりも狭い、該測距エリアの平均相対輝度を含む所定の輝度範囲に対応する前記受光手段の出力を対数変換した第2変換データに基づいて測距演算を実行する測距装置。
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