JP3619417B2 - カメラの測距装置 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、複数の測距エリアについて測距するパッシブ型測距装置に関する。
【0002】
【従来技術およびその問題点】
従来のカメラに搭載されている一般的なパッシブ型測距装置は、測距エリア内の被写体光束を分割光学系で二分割し、それぞれの分割被写体光束を左右一対の測距センサ上に結像させ、左右の測距センサの各光電変換素子で光電変換して、蓄積した電荷を画素信号(電圧)として出力し、これらの画素信号に基づいて測距演算を実行して被写体距離またはデフォーカス量など合焦に必要なデータを求めている。しかしながら、このパッシブ型測距装置にアナログ出力形式の測距センサを用いた場合には、測距センサから出力されるアナログの画素信号をA/D変換して測距演算に用いただけでは、例えば、低輝度部分は分解能が低いため、測距エリア内の被写体が低輝度または低コントラストである場合は、測距精度が低下し、適正な測距演算値が得られなかった。
【0003】
【発明の目的】
本発明は、測距精度を向上させることができ、かつ測距時間を短縮することができる測距装置を提供することを目的とする。
【0004】
【発明の概要】
本発明は、複数の測光エリアについて測光可能な測光手段を有するカメラに搭載され、複数の測距エリアを有する測距装置であって、前記各測距エリア内の被写体光をそれぞれが受光して電気的な画素信号として出力する複数の光電変換素子を備えた受光手段と、前記画素信号を所定の変換レンジで対数変換する変換手段と、前記各測距エリアと重複する前記測光エリアの測光値の差が小さくなるほど前記変換レンジを狭く設定し、同測光値の差が大きくなるほど前記変換レンジを広く設定する変換レンジ設定手段とを備えたことに特徴を有する。この構成によれば、測距エリアと重複する測光エリアの測光値の差が小さくなるほど狭い(大きくなるほど広い)変換レンジで対数変換するので、コントラストの明確なセンサデータに基づいて測距演算でき、測距精度の向上を図れる。
【0005】
このカメラの測距装置には、前記各光電変換素子に積分を開始させ、前記光電変換素子のいずれかの積分値が所定の積分終了値に達したときに前記光電変換素子すべての積分を終了させる積分制御手段を設けるのが好ましい。前記変換レンジ設定手段は、前記各測距エリアと重複する前記測光エリアの各測光値の中から最大値と最小値を求め、該最大値と該最小値の差分が小さくなるほど前記変換レンジを狭く、同差分が大きくなるほど前記変換レンジを広く設定すれば、各測距エリアについて明確なコントラストのあるセンサデータを得ることができるので好ましい。さらに、前記変換レンジ設定手段は、前記受光手段が積分を実行している間に前記変換レンジを設定すれば、時間のロスを無くせるのでより好ましい。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下図面に基づいて本発明を説明する。図1〜図3は、本発明を適用したレンズシャッタ式カメラの一実施の形態を示す外観図である。このレンズシャッタ式カメラのカメラボディ1は、図1に示すように、正面にズームレンズ2を備え、その上方には、パッシブAF受光窓4、ファインダ窓5、測光窓6を備えている。なお、これらの窓4〜6の後方カメラボディ1内には、図示しないが公知のように、パッシブ型測距センサ、ファインダ光学系、測光センサがそれぞれ配置されている。
【0007】
カメラボディ1の上飾り板7には、図2に示すように、レリーズボタン8が設けられている。レリーズボタン8は、測光スイッチSWSおよびレリーズスイッチSWRと連動していて、半押しで測光スイッチSWSがオンし、全押しでレリーズスイッチSWRがオンする。カメラボディ1の背面には、図3に示すように、中央部に電源をオン/オフするメインスイッチレバー10が設けられ、その上部にテレ側またはワイド側に倒すとズームレンズ2をテレ方向またはワイド方向にズーミングできるズームレバー9が設けられている。このズームレバー9は、テレスイッチSWTおよびワイドスイッチSWWと連動していて、ズームレバー9がテレ側に倒されるとテレスイッチSWTがオンし、ワイド側に倒されるとワイドスイッチSWWがオンする。また、カメラボディ1の背面のファインダ接眼窓12近傍には、点灯または点滅により測距結果を報知する緑ランプ11が設けられている。
【0008】
次に、カメラボディ1の制御系の構成について、図4に示したブロック図を参照してより詳細に説明する。CPU21は、カメラの機能に関するプログラム等が書き込まれたROM、制御用または演算用の各種パラメータなどを一時的に記憶するRAM21a、A/D変換器21b及びカウンタ21cを内蔵しており、カメラボディ1の動作を総括的に制御する制御手段として機能する。
【0009】
CPU21には、スイッチ類として、メインスイッチレバー10に連動するメインスイッチSWM、ズームレバー9に連動するテレスイッチSWTおよびワイドスイッチSWW、レリーズボタン8に連動する測光スイッチSWSおよびレリーズスイッチSWRが接続されている。
メインスイッチレバー10がオン操作されてメインスイッチSWMがオンすると、CPU21は、電池23を電源として、各入出力ポートに接続されている周辺回路に電力供給を開始し、操作されたスイッチに応じた処理を実行する。
ズームレバー9に連動するテレスイッチSWTまたはワイドスイッチSWWがオンすると、CPU21はズームレンズ駆動回路29を介してズームモータ30を駆動させ、ズームレンズ2をテレズームまたはワイドズームさせる。ズームモータ30は、電源オフ時にはズームレンズ2のレンズ鏡筒がカメラボディ1の外観内に収まる収納位置まで駆動し、電源オン時にはズームレンズ2がワイド端位置に移動するまで駆動する。ズームレンズ2の焦点距離、レンズ位置は、ズームコード入力回路43によって検知される。
【0010】
レリーズボタン8が半押しされて測光スイッチSWSがオンすると、先ず、CPU21は測光回路37を介して被写体輝度を求める。測光回路37は、測光窓6から入射した被写体光を測光センサ37aで受光し、被写体輝度に応じた測光信号をCPU21に出力する回路である。測光センサ37aはいわゆる分割測光センサであり、撮影範囲を複数のエリアに分割して各測光エリア内の被写体について測光ができる。本実施形態では、図5に示すように、撮影範囲を9個の測光エリアに分割して測光する。これらの測光エリアのうち3個の測光エリアa,b,cはそれぞれ測距エリアA、B、Cと重複する部分を有している。つまり、測光エリアa,b,cの測光値によって、測距エリアA,B,C内の被写体のおおよその輝度(平均輝度)を知ることができる。
【0011】
CPU21は、求めた被写体輝度およびDXコード入力回路45を介して入力したISO感度などに基づいて適正シャッタ速度および適正絞り値を演算する。DXコード入力回路45は、カメラボディ1に装填されたフィルムのパトローネに書き込まれたDXコードを読み込み、ISO感度、撮影枚数などの情報をCPU21に出力する回路である。また、CPU21は、測距回路35から入力したセンサデータに基づいて測距演算を実行し、所定条件を満たす測距演算値を選択できたときは、フォーカスモータ32のフォーカシングレンズ駆動量を算出し、フォーカス駆動回路31を介してフォーカスモータ32を駆動するとともに、緑ランプ11を点灯させる。所定条件を満たす測距演算値を選択できなかったときは、緑ランプ11を点滅させて測距エラーを報知し、使用者に注意を促す。
【0012】
測距回路35は、各測距エリア内に含まれる被写体の焦点状態を検出する回路であり、被写体光束を受光し電気的な画素信号(電圧)に変換して出力する測距センサ36を有している。本実施形態の測距センサ36は、図6に示すように、被写体像を形成する被写体光束を一対のセパレータレンズ(結像レンズ)36aによって分割して、Aセンサ及びBセンサからなる一対のラインセンサ36b上に結像する。このラインセンサ36bは、詳細は図示しないが、多数の光電変換素子(受光素子)を有し、センサ上に結像された被写体光束を各光電変換素子が受光して光電変換し、光電変換した電荷を積分(蓄積)して、積分した電荷を画素単位の画素信号(電圧)として順番に出力する。本実施形態では、ラインセンサ36bは3個の測距エリアA,B,Cについて測距できるように形成されている(図5参照)。CPU21は、ラインセンサ36bの光電変換素子のいずれかの積分値が予め設定されている積分終了値に達した時に、ラインセンサ36bのすべての光電変換素子の積分を終了させ、各光電変換素子の画素データを一斉に入力する。
また、測距回路35は、ラインセンサ36bの積分値をモニタするモニタセンサ(図示せず)を備えていて、CPU21は、このモニタセンサの出力を検知しながらラインセンサ36bの積分終了を制御する。
【0013】
レリーズボタン8が全押しされてレリーズスイッチSWRがオンすると、CPU21は、算出した適正絞り値に基づいて絞り制御回路25を作動させてズームレンズ2の絞りを絞り込み、適正シャッタ速度に基づいてシャッタ制御回路33を介してシャッタモータ34を駆動させて露出する。露出が終了すると、CPU21はフィルム給送回路27を介してフィルム給送モータ28を作動させ、フィルム給送信号入力回路41から出力されるフィルム給送信号を入力してフィルム給送量を検知しながらフィルムを1コマ分巻き上げるが、フィルム残量がない場合は、フィルム給送回路27を介してフィルム給送モータ28を作動させてフィルムの巻戻しを行なう。
【0014】
以上は、本カメラの主要部材であるが、本カメラは、図示しないが、セルフタイマ動作を表示するセルフランプ、CPU21の制御下でストロボを発光させるストロボ装置、各種情報を表示するLCD表示パネルなど、公知の部材を備えている。
【0015】
図7(A)には、ラインセンサ36bの光電変換素子が出力する画素信号Vx(電圧)と時間の関係の一例をグラフで示してある。図においてVrefは基準電圧である。画素信号Vxは、各光電変換素子が積分した電荷分だけ時間経過とともに基準電圧Vrefから下降する。CPU21は、いずれかの画素信号Vxが0Vに達した時に、ラインセンサ36bの全ての光電変換素子の積分を終了させる。ここで0Vは積分終了値(電圧)であり、輝度が高いほど積分終了値に達するまでの時間は短くなる。つまり、画素信号Vxの傾きは輝度に比例していて、高輝度ほど画素信号Vxの傾きの絶対値が大きいことが分かる。なお、図7(A)では、最高輝度である画素信号Veを基準(0EV)とし、画素信号Vxが高い、即ち低輝度ほどEV値が大きくなるように、輝度値EVを画素信号Veに対する相対値で表している。画素信号Va〜Veは、それぞれ1EVの輝度差の場合として示してある。
【0016】
図7(A)において最初に積分終了した画素信号Veの積分時間を時間t1とし、時間t1における各画素信号Va〜Veを0(V)〜Vref レンジで10ビットA/D変換した画素データa〜eを図7(B)に棒グラフで示した。図7(B)において、ΔEVは基準電圧Vrefに対応する輝度と画素信号Vxに対応する輝度の差分であり、ΔEVは下記の式で定義される。表1には、ΔEVと画素データa〜eとの関係を示した。
ΔEV=log2(基準電圧Vref−画素信号Vx)
【表1】
【0017】
図7(C)〜(E)には、図7(B)に示したA/D変換した各画素データa〜eをさらに8ビットの0〜255階調に異なる対数変換レンジで対数変換した結果を棒グラフで示してある。図7(C)は1EVを64分割して対数変換(4EV対数変換)した結果である。図7(D)は1EVを128分割して対数変換(2EV対数変換)した結果である。図7(E)は1EVを256分割して対数変換(1EV対数変換)した結果である。
【0018】
A/D変換した画素データ(図7(B))では、高輝度部分の分解能に比べて低輝度部分の分解能が低いため、分解能を平均化すべく画素データを所定の変換レンジで対数変換し、対数変換した画素データに基づき測距演算を実行する。そして、この演算で適正な測距演算値が得られなかった場合に、異なる変換レンジで対数変換し、その画素データに基づき測距演算を再実行することも可能である。しかしながら、この場合は最初の測距演算時間が無駄となってしまう。特に、複数の測距エリアについて測距する場合には、通常は各測距エリアの輝度が異なるため、全ての測距エリアについて適正な測距演算値を得るまで、複数回対数変換及び測距演算を実行しなければならない。
そこで、本実施形態では、測距エリアと重複する各測光エリアの測光値の差、即ち輝度差に対応した適切な対数変換レンジを設定している。ここで、測距エリアと重複する各測光エリアの各々の輝度の差を対数変換レンジの設定基準に採用するのは、各測光エリアの輝度差から測距エリア内の被写体の輝度、即ち各測距エリアの画素データの大きさを把握すれば、適切な対数変換レンジを設定できるからである。
【0019】
具体的には、各測距エリアA,B,Cと重複する測光エリアa,b,cのそれぞれの測光値(測光データ)の中から最大値と最小値を求め、その最大値から最小値を引いた差分(輝度差)を基準レベルXEVとし、この基準レベルXEVが小さくなるほど狭い(大きくなるほど広い)対数変換レンジで対数変換を行なう。例えば、基準レベルXEVが2EVよりも大きい場合には、各測距エリアA,B,Cの平均輝度差が大きく、各測距エリアの画素データの差が大きいと推定されるので、低輝度部分の分解能を高めるべく4EV対数変換する(図7(C))。この場合には、4EV対数変換により高輝度部分の分解能は低下するが、各測距エリアA,B,Cについて十分明確なコントラストのあるセンサデータを得ることができる。対数変換レベルXEVが1EVよりも大きく2EV以下である場合は、4EV対数変換すると低輝度部分の分解能に対して高輝度部分の分解能が低下し過ぎるおそれがあるので、2EV対数変換する(図7(D))。変換レンジを4EVよりも狭い2EVとすれば、低輝度部分と高輝度部分の分解能がほぼ同等となり、各測距エリアA,B,Cについて明確なコントラストのあるセンサデータを得ることができる。対数変換レベルXEVが1EV以下である場合は、各測距エリアA,B,Cの平均輝度差が小さいため、1EV対数変換を実行する(図7(E))。変換レンジを2EVよりもさらに狭い1EVとすれば、高輝度部分の分解能が高くなり、各測距エリアA,B,Cについて明確なコントラストのあるセンサデータを得ることができる。以上により得た、コントラストが明確なセンサデータに基づいて測距演算するので、測距精度の向上が図れるとともに異なる対数変換レンジで対数変換した画素データを用いて何度も測距演算を実行する必要がなく、演算時間の短縮にもつながる。
【0020】
図8(A)には、測光センサ37aが出力した測光データの一例を示してある。この場合には、測距エリアと重複する測光エリアの測光データの最大値、最小値はそれぞれ6eV(測光データb)、4eV(測光データc)であるから、基準レベルXEVは2EVとなる。したがって、A/D変換した画素データ(図8(B))を2EV対数変換し、2EVセンサデータを得る(図8(C))。
【0021】
本実施形態では、測距エリアと重複する各測光エリアの夫々の測光値(測光データ)の中から最大値と最小値を求め、その差分(輝度差)を基準レベルXEVとし、基準レベルXEVの大きさが小さくなるほど狭い(大きくなるほど広い)対数変換レンジを設定する構成としているが、これに限定されず、測距エリアと重複する各測光エリアの夫々の測光値に応じて対数変換レンジを各測距エリア毎に設定してもよい。また、設定する対数変換レンジ及び対数変換レンジの段階数はこれに限定されるものではない。なお、A/D変換及び対数変換した各画素データは、RAM21aに書き込まれ一時的に記憶されている。
【0022】
次に、カメラボディ1の動作について、図9〜図13に示したフローチャートを参照してより詳細に説明する。図9は、撮影処理に関するフローチャートであり、この処理は測光スイッチSWSがオンされたときに実行される。この処理に入ると先ず、測光処理及び測距処理を実行する(S11、S13)。測光処理は、撮影画面内全体の明るさ(以下「メイン測光値Bv」という。)と測距エリアと重複する各測光エリアの明るさ(以下「測光データ」という。)を求める処理であり、測距処理は、詳細は後述するが、各測距エリア毎に測距演算値を求め、求めた全測距演算値から所定条件を満たす測距演算値を選択し、選択した測距演算値に基づいてフォーカシングモータ30を駆動させる処理である。なお、求めたメイン測光値Bv、各測光データはRAM21aにメモリされる。
【0023】
測距処理後、測距エラーフラグがセットされているかどうかをチェックする(S15)。測距エラーフラグがセットされているときは、測距処理で所定条件を満たす測距演算値を求められなかったので、使用者に注意を促すため緑ランプ11を点滅し(S15;Y、S19)、測距エラーフラグがクリアされているときは、緑ランプ11を点灯して(S15;N、S17)、AE演算処理を実行する(S21)。AE演算処理では、測光回路37を介して求めた被写体輝度およびDXコード入力回路45から求めたISO感度などに基づいて適正シャッタ速度および適正絞り値を算出する。
【0024】
そして、測光スイッチSWSがオンしているかどうかをチェックする(S23)。測光スイッチSWSがオンしていないときは、緑ランプ11を消灯してリターンする(S23;N、S24)。測光スイッチSWSがオンしているときは、次にレリーズスイッチSWRがオンしているかどうかをチェックする(S23;Y、S25)。レリーズスイッチSWRがオンしていないときは、S23へ戻り、測光スイッチSWSがオフするかまたはレリーズスイッチSWRがオンするまで待機する(S25;N、S23)。レリーズスイッチSWRがオンしたときは、緑ランプ11を消灯し、算出した適正絞り値に基づいて絞り制御回路25を作動させてズームレンズ2の絞りを絞り込み、適正シャッタ速度に基づいてシャッタ制御回路33を介してシャッタモータ34を駆動させて露出する露出制御処理を実行する(S25;Y、S27、S29)。露出制御処理終了後は、フィルム給送回路27を介してフィルム給送モータ28を作動させてフィルムを1コマ分巻き上げるが、1コマ分を巻き上げることができず最終コマの撮影が終了していた場合は、フィルムをすべて巻戻しリターンする(S31)。
【0025】
次にS13で実行される測距処理について図10に示されるフローチャートを参照してより詳細に説明する。この処理に入ると先ず、測距センサ36に積分を開始させる(S101)。そして、測距センサ36が積分を実行している間に、基準レベル決定処理を実行し(S103)、いずれかの画素データが積分終了値に達した時に、センサデータ入力処理を実行し(S105)、対数変換した画素データに基づき測距演算を実行する(S107)。
【0026】
基準レベル決定処理は、詳細は後述するが、測距エリアと重複する各測光エリアの夫々の測光値の差に応じて基準レベルXEVを決定する処理である。センサデータ入力処理は、これも詳細は後述するが、センサデータを10ビットA/D変換し、さらにS103で設定した基準レベルXEVに応じて対数変換レンジを設定し、その対数変換レンジで対数変換する処理である。本実施形態では、A/D変換した10ビットのセンサデータを8ビットのセンサデータに対数変換している。
【0027】
次に、測距演算で求めた全ての測距演算値について、各測距演算値が有効であるか否かをチェックする(S109)。本実施形態では、測距演算値の信頼性が所定値以上あれば、有効な測距演算値であると判断している。有効な測距演算値が1つも得られなかったときは、測距エラーフラグをセットしてリターンする(S109;N、S111)。有効な測距演算値が得られたときは、測距エラーフラグをクリアし、所定条件を満たす測距演算値を選択して、選択した測距演算値からLLデータを算出し、求めたLLデータに基づきレンズ駆動処理を実行してリターンする(S109;Y、S113、S115、S117、S119)。
【0028】
次にS107で実行される基準レベル決定処理について図11に示されるフローチャートを参照して詳細に説明する。この処理は、S11でRAM21aにメモリした測光データの中から最大値MAX(最高輝度)、最小値MIN(最低輝度)となる測光データを検出し、最大値MAXと最小値MINの差を基準レベルXEVとして設定する処理である。
この処理に入ると先ず、RAM21aから測光データ[0]を読み出して、最大値MAX及び最小値MINとして設定し(S151)、変数iに1を設定する(S153)。ここで、変数iは測光エリアa,b,cのいずれの測光データであるかを識別するための番号であり、RAM21aにメモリしたi番目の測光データを測光データ[i]とする。
次に、最大値MAXと最小値MINを検出するため、変数iと測光エリア総数が等しくなるまでS155〜S165の処理を繰り返す(S155〜S161、S163;N、S165、S155)。すなわち、S155では、測光データ[i]が最大値MAXにメモリされている測光データよりも大きいかどうかをチェックし(S155)、測光データ[i]が最大値MAXよりも大きいときは、最大値MAXに測光データ[i]を上書メモリしてS159へ進む(S155;Y、S157)。一方、測光データ[i]が最大値MAXよりも大きくないときは、S157をスキップして(S155;N)、S159へ進む。S159では、測光データ[i]が最小値MINにメモリされている測光データよりも小さいかどうかをチェックし、測光データ[i]が最小値MINよりも小さいときは、最小値MINに測光データ[i]を上書メモリして(S159;Y、S161)、測光データ[i]が最小値MINよりも小さくないときは、S161をスキップして(S159;N)、変数iとRAM21aに予めメモリされている測距エリアと重複している測光エリア数を比較し(S163)、両数値が等しくなければ変数iに1加算してS155へ戻る(S163;N、S165、S155)。
そして、変数iと測距エリアと重複している測光エリア数が等しくなったときは、最大値MAXから最小値MINを引いた値を求め、その値を基準レベルXEVとしてRAM21aにメモリする(S163;Y、S167)。
【0029】
次にS109で実行されるセンサデータ入力処理について図12に示されるフローチャート及び図7(B)を参照して詳細に説明する。本実施形態では、1個の画素信号をA/D変換して対数変換する間に、次の画素信号をA/D変換する構成にしている。この処理に入ると先ず、A/D変換器21bを起動して測距回路35から出力された最初の画素信号を10ビットA/D変換して画素データを求める(S201)。画素信号(電圧)及び画素データは、輝度が低いものほど大きくなる。画素信号のA/D変換が完了したら、求めた画素データと基準電圧Vref のA/D変換値を比較する(S203;Y、S205)。なお、本実施形態では、電圧0Vを0、基準電圧Vref の10ビットA/D変換値を1023としている。
画素データが基準電圧Vref のA/D変換値よりも小さいときは、基準電圧Vref のA/D変換値から画素データを引いた値をWDATAとしてメモリする(S205;Y、S207)。画素データが基準電圧Vref のA/D変換値以上であるときは、0をWDATAとしてメモリする(S205;N、S209)。したがって、輝度が低いものほどWDATAの値は小さくなる。
次に、カウンタ21cに画素信号の総数をセットし、A/D変換器21bを起動して、次の画素信号をA/D変換して画素データを求め、対数変換処理を行なう(S211、S213、S215)。対数変換処理は、詳細は後述するが、S167で求めた基準レベルXEVに応じて、S207またはS209でメモリしたWDATA値を8ビットデータに対数変換する処理である。
画素信号のA/D変換が完了したら、S205〜S209と同様に、基準電圧Vref のA/D変換値及び画素データからWDATAを求め、メモリする(S217;Y、S219、S221、S223)。WDATA値をメモリしたら、カウンタ21cのカウンタ値を1減算し、カウンタ値が0になるまでS213からS225の処理を繰り返す(S225、S227;N、S213〜S225)。カウンタ値が0になったときは、対数変換処理を実行し、カウンタ値が1のときに求めた画素データ、すなわち最後の画素データを基準レベルXEVに応じて対数変換する(S227;Y、S229)。
【0030】
次にS215、S229で実行される対数変換処理について図13に示されるフローチャート及び図7(B)〜(E)を参照してより詳細に説明する。本実施形態では、この処理により、10ビットA/D変換された各画素データを基準レベル決定処理(図11)で設定した基準レベルXEVに応じて4EV、2EVまたは1EV対数変換して、8ビットの4EVセンサデータ、2EVセンサデータ、又は1EVセンサデータを求めRAM21aにメモリする。
【0031】
この処理に入ると先ず、基準レベルXEVが2EVよりも大きいかどうかをチェックする(S301)。基準レベルXEVが2EVよりも大きいときは、低輝度部分の分解能を高めるため、4EV対数変換を実行する(S301;Y、S303〜S321)。すなわちWDATA値が512以上であるときは、次式;192+(WDATA−512)/8により算出した値をWDATA´とし、255からWDATA´値を減算した値を4EVセンサデータとしてメモリし、リターンする(S303;Y、S305、S321)。WDATA値が256以上512未満であるときは、次式;128+(WDATA−256)/4により算出した値をWDATA´とし、255からWDATA´値を減算した値を4EVセンサデータとしてメモリし、リターンする(S303;N、S307;Y、S309、S321)。WDATA値が128以上256未満であるときは、次式;64+(WDATA−128)/2により算出した値をWDATA´とし、255からWDATA´値を減算した値を4EVセンサデータとしてメモリし、リターンする(307;N、S311;Y、S313、S321)。WDATA値が64以上128未満であるときは、次式;WDATA−64により算出した値をWDATA´とし、255からWDATA´値を減算した値を4EVセンサデータとしてメモリし、リターンする(S311;N、S315;Y、S317、S321)。WDATA値が64未満であるときは、WDATA´を0とし、255からWDATA´値を減算した値、つまり255を4EVセンサデータとしてメモリし、リターンする(S315;N、S319、S321)。したがって、図7(C)では、画素データaよりも低輝度である画素データの4EVセンサデータは、全て255となる。以上の処理により、低輝度部分の分解能が高くなり、各測距エリアについて被写体の焦点状態を容易に判別できるようになる。
【0032】
基準レベルXEVが2EVよりも大きくないときは、次に1EVよりも大きいかどうかをチェックする(S301;N、S323)。基準レベルXEVが1EVよりも大きいときは、低輝度部分の分解能が低い反面、4EV対数変換すると逆に高輝度部分の分解能が低下し過ぎるおそれがあるので、4EV対数変換よりも変換レンジの狭い2EV対数変換を実行する(S323;Y、S335〜S335)。すなわち、WDATA値が512以上であるときは、次式;128+(WDATA−512)/4より算出した値をWDATA´とし、255からWDATA´値を減算した値を2EVセンサデータとしてメモリし、リターンする(S325;Y、S327、S335)。WDATA値が256以上512未満であるときは、次式;(WDATA−256)/2より算出した値をWDATA´とし、255からWDATA´値を減算した値を2EVセンサデータとしてメモリし、リターンする(S325;N、S329;Y、S331、S335)。WDATA値が256未満であるときは、0をWDATA´にメモリし、255からWDATA´値を減算した値、すなわち255を2EVセンサデータとしてメモリし、リターンする(S329;N、S333、S335)。したがって、図7(D)に示すように、画素データc及び画素データcよりも低輝度な画素データa、bの2EVセンサデータは、全て255となる。S323〜S333の処理により、低輝度部分と高輝度部分の分解能がほぼ等しくなり、各測距エリアについて被写体の焦点状態を容易に判別できるようになる。
【0033】
基準レベルXEVが1EVよりも小さいときは、各測距エリアの輝度差があまりないと考えられるので、2EV対数変換よりもさらに変換レンジの狭い1EV対数変換を実行する(S323;N、S337〜S343)。即ちWDATA値が512以上であるときは、次式;(WDATA−512)/2より算出した値をWDATA´とし、255からWDATA´値を減算した値を1EVセンサデータとしてメモリし、リターンする(S337;Y、S339、S343)。WDATA値が512未満であるときは、0をWDATA´にメモリし、255からWDATA´値を減算した値、即ち255を1EVセンサデータとしてメモリし、リターンする(S337;N、S341、S343)。S337〜S343の処理により、高輝度部分の分解能が高くなり、各測距エリアについて被写体の焦点状態を容易に判別できるようになる。
【0034】
以上のように、本実施形態では、測距エリアと重複する各測光エリアの夫々の測光データの中から最大値と最小値を求め、その差(基準レベルXEV)に応じて画素データの分解能を高めることができる対数変換レンジ、すなわち、基準レベルXEVが小さくなるほど狭い(大きくなるほど広い)対数変換レンジを設定するので、どの測距エリアについてもコントラストの明確なセンサデータを得ることができる。そして、コントラストの明確なセンサデータに基づいて測距演算するので、測距精度の向上が図れるとともに対数変換レンジの異なるセンサデータを用いて何度も測距演算を実行する必要がなく、測距演算時間の短縮化が図れる。
【0035】
以上、レンズシャッタ式カメラに搭載したパッシブ型AF測距装置に適用した実施形態について説明したが、本発明は一眼レフカメラに搭載されるパッシブ型AF測距装置などにも適用できる。
【0036】
【発明の効果】
本発明は、測距エリアと重複する測光エリアの測光値の差が小さくなるほど狭い(大きくなるほど広い)変換レンジで対数変換するので、コントラストの明確なセンサデータに基づいて測距演算でき、測距精度の向上を図れるとともに対数変換レンジの異なるセンサデータを用いて何度も測距演算を実行する必要がなく、測距演算時間の短縮化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の測距装置を搭載したレンズシャッタ式カメラの一実施形態を示す正面図である。
【図2】同レンズシャッタ式カメラの上面図である。
【図3】同レンズシャッタ式カメラの背面図である。
【図4】同レンズシャッタ式カメラの回路構成の主要部を示すブロック図である。
【図5】同レンズシャッタ式カメラの測光エリアと測距エリアの関係を示す図である。
【図6】同レンズシャッタ式カメラの測距センサの概要を説明する図である。
【図7】(A)は、同測距センサの画素信号と時間の関係を示す図であり、(B)は、時間t1における同測距センサの画素信号をA/D変換して示す図であり、(C)〜(D)は(B)の各画素データをそれぞれ4eV、2eV、1eV対数変換して示す図である。
【図8】同レンズシャッタ式カメラの測光センサの出力に基づいて変換レンジを設定する様子を説明する図である。
【図9】同レンズシャッタ式カメラの撮影処理に関するフローチャートを示す図である。
【図10】同レンズシャッタ式カメラの測距処理に関するフローチャートを示す図である。
【図11】同レンズシャッタ式カメラの対数変換レベル決定処理に関するフローチャートを示す図である。
【図12】同レンズシャッタ式カメラのセンサデータ入力処理に関するフローチャートを示す図である。
【図13】同レンズシャッタ式カメラの対数処理に関するフローチャートである。
【符号の説明】
1 カメラボディ
2 ズームレンズ
21 CPU
21a RAM
21b A/D変換器
21c カウンタ
35 測距回路
36 測距センサ
36a セパレータレンズ
36b ラインセンサ
37 測光回路
37a 測光センサ
Claims (4)
- 複数の測光エリアについて測光可能な測光手段を有するカメラに搭載され、複数の測距エリアを有する測距装置であって、
前記各測距エリア内の被写体光をそれぞれが受光して電気的な画素信号として出力する複数の光電変換素子を備えた受光手段と、
前記画素信号を所定の変換レンジで対数変換する変換手段と、
前記各測距エリアと重複する前記測光エリアの測光値の差が小さくなるほど前記変換レンジを狭く設定し、同測光値の差が大きくなるほど前記変換レンジを広く設定する変換レンジ設定手段と、
を備えたことを特徴とするカメラの測距装置。 - 請求項1記載のカメラの測距装置において、前記各光電変換素子に積分を開始させ、前記光電変換素子のいずれかの積分値が所定の積分終了値に達したときに、前記光電変換素子すべての積分を終了させる積分制御手段を有するカメラの測距装置。
- 請求項1または2記載のカメラの測距装置において、前記変換レンジ設定手段は、前記各測距エリアと重複する前記測光エリアの各測光値の中から最大値と最小値を求め、該最大値と該最小値の差分が小さくなるほど前記変換レンジを狭く設定し、同差分が大きくなるほど前記変換レンジを広く設定するカメラの測距装置。
- 請求項1から3いずれか一項に記載のカメラの測距装置において、前記変換レンジ設定手段は、前記受光手段が積分を実行している間に、前記変換レンジを設定するカメラの測距装置。
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